JP2008181905A - 複合磁性体、その製造方法、それを用いた回路基板、及びそれを用いた電子機器 - Google Patents

複合磁性体、その製造方法、それを用いた回路基板、及びそれを用いた電子機器 Download PDF

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Abstract

【課題】複合磁性体を高周波回路基板等として使用する場合、渦電流による磁気特性の劣化を避けることができなかった。
【解決手段】磁性粉末を凝集させることなく絶縁性材料中に分散させ、1GHzにおいて比透磁率μrが1より大きく、損失正接tanδが0.1以下である複合磁性体を得る。磁性粉末と絶縁性材料とを溶媒と共に混合してスラリーを形成する際、分散媒体が添加され、添加された状態で混合が行なわれた後、分散媒体を混合体から分離し、これによって、磁性粉末の凝集を避けることができる。
【選択図】 図2

Description

本発明は高周波回路基板及び高周波電子部品に関し、特に、かかる高周波回路基板及び高周波電子部品の材料として好適な複合磁性体及びその製造方法に関するものである。
情報通信機器の高速化、高密度化に伴い、電子機器に搭載される電子部品や回路基板の小型化及び低消費電力化が強く求められている。一般に、材料内を伝播する電磁波の波長λgは、真空中を伝播する電磁波の波長λ0と材料の比誘電率εr及び比透磁率μrを用いて、
λg=λ0/(εr・μr)1/2
で表すことができるため、比誘電率εr及び比透磁率μrが大きいほど波長短縮率が大きくなり電子部品や回路基板の小型化が可能となることが知られている。
また、材料の特性インピーダンスZgは真空の特性インピーダンスZ0を用いて、
Zg=Z0・(μr/εr)1/2
で表すことができ、例えば、比透磁率μrを大きくして特性インピーダンスZg及び終端抵抗の抵抗値を増加し、配線を流れる電流を低減することによって電子部品や回路基板の消費電力を低下させる試みが報告されている。
ところが、情報通信機器等が使用する高周波帯では磁性材料の表面に渦電流が生じ、この渦電流は印加した磁界の変化を打ち消す向きに磁界を生成するため、材料の見かけ上の透磁率の低下を招いていた。また、渦電流の増大はジュール熱によるエネルギー損失を生ずるため、回路基板や電子部品等の材料として使用することは困難であった。渦電流を低減するためには、
d = 1/(π・f・μ0・μr・σ)1/2
で表される表皮深さdよりも磁性粉末の直径を小さくすることが効果的である。ここで、fは信号周波数、σは磁性粉末の導電率、μ0は真空の透磁率である。近年、ナノテクノロジーの進歩に伴い磁性粒子の微細化が進み、高周波での材料の比透磁率μrの低下を抑制した事例が幾つか報告されている。
特許文献1では、扁平状磁性体粉末を樹脂中に分散することで、比透磁率および損失を上昇させ電磁波吸収シートとして用いることが開示されている。
また、特許文献2では、スクリュー攪拌及び超音波攪拌による分散混合方法を用いて複数の粒径の磁性体粒子を樹脂中に分散することで、300MHz程度以下において損失の少ない複合磁性体を提供している。
特開平11−354973号公報 特開2006−269134号公報
しかしながら、特許文献1では、磁性粒子の分散方法についての具体的な記述がなく、また、電磁波を遮蔽吸収することが目的なので使用周波数において磁気損失の大きい材料を提供するものであって、本発明に示すように回路基板や電子部品等に使用することを目的として磁気損失の小さな材料を提供するものではない。
また、特許文献2に示されるように、球状の磁性体粉末を用いる場合、磁性体粒子個々における反磁界係数が大きくなるため比透磁率μrの低下を招く。この場合、比透磁率μrを大きくするためにはより混合濃度を大きくしなければならず、混合濃度を大きくすると均一な分散性が得にくいなど、製造上の困難が生じる傾向がある。
また、微小磁性微粒子は、電気二重層の相互作用とvan der Waalsの引力エネルギーの他に磁気的相互作用も加わるために凝集を引き起こし、凝集体を形成しやすい。複合磁性体中における凝集体は、一つの大きな磁性粒子として振舞うため、高周波では渦電流を生じやすく磁気特性低下の原因となる。特許文献2に示される混合方法ではこれらの凝集体を解砕するには不充分であり、数百MHz〜1GHzにおける損失低減にはいたらないことが分かった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、磁性粉末を絶縁性材料中に分散して構成される複合磁性体において、前記磁性粉末の形状は球状または扁平状であって、1GHzの周波数おいて比透磁率μrが1よりも大きく、かつ損失正接tanδが0.1以下であることを特徴とする複合磁性体とその製造方法及びそれを用いた電子機器を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、磁性粉末の分散を好適に実施することにより500MHz〜1GHzの周波数帯でも損失の低減が可能であるということを見出した。
すなわち、本発明の第1の態様によれば、磁性粉末を絶縁性材料中に分散して構成される複合磁性体において、前記磁性粉末の形状は球状または扁平状であって、1GHzの周波数おいて比透磁率μrが1よりも大きく、かつ、損失正接tanδが0.1以下であることを特徴とする複合磁性体が得られる。
本発明の第2の態様によれば、磁性粉末を絶縁性材料中に分散して構成される複合磁性体において、前記磁性粉末の形状は球状または扁平状であって、500MHzの周波数おいて比透磁率μrが1よりも大きく、かつ損失正接tanδが0.1以下であることを特徴とする複合磁性体が得られる。
本発明の第3の態様によれば、前記磁性粉末の材質はニッケル(Ni)、パーマロイ(Fe−Ni合金)または銅(Cu)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)のいずれか一種類以上を含むパーマロイであることを特徴とする第1又は2の態様に記載の複合磁性体が得られる。
本発明の第4の態様によれば、前記磁性粉末の形状は扁平状であり、その厚さが0.1〜1μm、長さが0.2〜10μm、かつアスペクト比(長さ/厚み)が2以上であることを特徴とする第11〜3の態様のいずれかに記載の複合磁性体が得られる。
本発明の第5の態様によれば、前記扁平状磁性粉末は分散溶媒中に磁性粉末を混合する工程において、球状磁性粉末を機械的に扁平状に変形させたものであることを特徴とする第4の態様に記載の複合磁性体が得られる。
本発明の第6の態様によれば、前記絶縁性材料は、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリベンゾシクロブテン樹脂、ポリアリーレンエーテル樹脂、ポリシロキサン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、およびポリスチレン樹脂のうち少なくとも一つを含む合成樹脂もしくは液相樹脂、または、Al、SiO、TiO、2MgO・SiO、MgTiO、CaTiO、SrTiO、およびBaTiOのセラミックスからなる群より選ばれる少なくとも一つのセラミックスの原料であることを特徴とする第1〜5の態様のいずれかに記載の複合磁性体が得られる。
本発明の第7の態様によれば、絶縁性材料と球状または扁平状磁性粉末とを溶剤中に分散させて混合しスラリーを製造する工程と、前記スラリーを塗布、乾燥、焼成する工程とを含む複合磁性体の製造方法であって、前記スラリーの製造工程は、溶剤に界面活性剤を添加した分散溶媒を製造する工程と、該分散溶媒に前記磁性粉末を混合する工程とを含み、前記磁性粉末を混合する工程は分散媒体を添加する工程と、自転公転式混合を行う工程とを含むことを特徴とする複合磁性体の製造方法が得られる。
本発明の第8の態様によれば、前記自転公転式混合は、公転速度500rpm以上、自転速度200rpm以上で行うことを特徴とする第7の態様に記載の複合磁性体の製造方法が得られる。
本発明の第9の態様によれば、前記スラリーの製造工程は、さらに絶縁性材料をスラリーに添加し混合する工程と、前記溶剤、前記界面活性剤、前記磁性粉末、前記分散媒体、および前記絶縁性材料の混合体から前記分散媒体を分離する工程とを含むことを特徴とする第7又は8の態様に記載の複合磁性体の製造方法が得られる。
本発明の第10の態様によれば、前記分散媒体を分離する工程は、前記混合体を静置または遠心分離して前記混合体を前記分散媒体が含まれている部分と含まれていない部分とに分離する工程を含むことを特徴とする第9の態様に記載の複合磁性体の製造方法が得られる。
本発明の第11の態様によれば、前記磁性粉末はニッケル(Ni)、パーマロイ(Fe−Ni合金)、および銅(Cu)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)のいずれか一種類以上を含むパーマロイから選ばれたものであることを特徴とする第7〜10の態様のいずれかに記載の複合磁性体の製造方法が得られる。
本発明の第12の態様によれば、前記絶縁性材料は、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリベンゾシクロブテン樹脂、ポリアリーレンエーテル樹脂、ポリシロキサン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、およびポリスチレン樹脂のうち少なくとも一つを含む合成樹脂もしくは液相樹脂、または、Al、SiO、TiO、2MgO・SiO、MgTiO、CaTiO、SrTiO、およびBaTiOのセラミックスからなる群より選ばれる少なくとも一つのセラミックスの原料であることを特徴とする第7又は8の態様に記載の複合磁性体の製造方法が得られる。
本発明の第13の態様によれば、前記磁性粉末を分散溶媒中に混合する工程において、球状磁性粉末を機械的に扁平状に変形させることを特徴とする第10〜12の態様のいずれかに記載の複合磁性体の製造方法が得られる。
本発明の第14の態様によれば、前記磁性体粉末の混合工程において添加される分散媒体は、金属、金属酸化物、酸化物焼結体、窒化物焼結体、珪化物焼結、およびガラスからなる群より選ばれる少なくとも一つの粒体であることを特徴とする第10〜13の態様のいずれかに記載の複合磁性体の製造方法が得られる。
本発明の第15の態様によれば、前記分散媒体は、アルミニウム、スチール、鉛、鉄酸化物、アミルナ、ジルコニア、二酸化ケイ素、チタニア、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ソーダガラス、鉛ガラス、および高比重ガラスの少なくとも一つを含むことを特徴とする第14の態様に記載の複合磁性体の製造方法が得られる。
本発明の第16の態様によれば、前記分散媒体は、比重が6以上であることを特徴とする第14又は15の態様に記載の複合磁性体の製造方法が得られる。
本発明の第17の態様によれば、前記分散媒体は、ジルコニア、スチール、ステンレスのいずれかを含むことを特徴とする第16の態様に記載の複合磁性体の製造方法が得られる。
本発明の第18の態様によれば、前記分散媒体は、平均粒径が0.1mm以上、3.0mm以下の粒体であることを特徴とする第10〜17の態様のいずれかに記載の複合磁性体の製造方法が得られる。
本発明の第19の態様によれば、第1〜6の態様のいずれか一つに記載の複合磁性体を少なくとも含むことを特徴とする回路基板が得られる。
本発明の第20の態様によれば、第10〜18の態様のいずれか一つに記載の製造方法によって作られた複合磁性体を少なくとも含むことを特徴とする回路基板が得られる。
本発明の第21の態様によれば、第1〜6の態様のいずれか一つに記載の複合磁性体を少なくとも含むことを特徴とする電子部品が得られる。
本発明の第22の態様によれば、第10〜18の態様のいずれか一つに記載の製造方法によって作られた複合磁性体を少なくとも含むことを特徴とする電子部品が得られる。
本発明の第23の態様によれば、第19又は20の態様のいずれかに記載の回路基板を少なくとも有することを特徴とする電子機器が得られる。
本発明の第24の態様によれば、第21又は22の態様に記載の電子部品を少なくとも有することを特徴とする電子機器が得られる。
本発明によれば、球状磁性粉末または扁平状磁性粉末を絶縁性材料中に好適に混合分散することにより、1GHzの周波数おいて比透磁率μrが1よりも大きく、かつ損失正接tanδが0.1以下であることを特徴とする複合磁性体を提供することができる。本発明に係る複合磁性体を回路基板及び/または電子部品の材料として適用することにより、誘電体のみを利用した回路基板や電子部品では実現困難であった数百MHz〜1MHz帯域における情報通信機器の小型化、低消費電力化を実現することが可能となる。
まず、本発明の実施の形態に係る複合磁性体を構成する磁性粉末について説明する。
前記磁性粉末の材質としては、ニッケル(Ni)、パーマロイ(Fe−Ni合金)または銅(Cu)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)のいずれか一種類以上を含むパーマロイであることが好ましいが、その他の合金、例えば、Fe−Si−Al合金、Fe−Si合金、Fe−Co合金、Fe−Cr合金、Fe−Cr−Si合金等であっても良い。
上記した材質の磁性粉末としては、球状或いは扁平形状のものを使用できるが、以下では、扁平状磁性粉末を使用する場合について説明する。扁平状磁性粉末は、分散溶媒中に磁性粉末を混合する工程において、球状磁性粉末を分散媒体のせん断応力により機械的に扁平状に変形させたものであって、0.1〜1μmの厚みを有するものであることが好ましい。扁平状磁性粉末の厚さを0.1μm未満とすることは製造上困難であり、取り扱いも難しくなる。また、扁平状磁性粉末の厚さが1μmを超えると、渦電流を生じ高周波での磁気特性の低下を招くので好ましくない。また、前記扁平状磁性粉末のアスペクト比(長さ/厚み)が2より小さいと粉末の反磁界係数が大きくなり、複合磁性体の比透磁率μrが低下するので好ましくない。
次に、複合磁性体を構成する絶縁性材料について説明する。
前記複合磁性体を回路基板の材料として用いる場合、特性インピーダンスを上昇させる観点からは誘電率が低いことが好ましく、前記絶縁性材料として、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリベンゾシクロブテン樹脂、ポリアリーレンエーテル樹脂、ポリシロキサン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスチレン樹脂などの低誘電率の合成樹脂が好適に選択される。
コンデンサやアンテナ素子など高誘電率性が要求される場合には、Al、SiO、TiO、2MgO・SiO、MgTiO、CaTiO、SrTiO、BaTiOなどのセラミックもしくはこれら無機物と有機物の混合物などを適宜使用できる。
以下、本実施の形態に係る複合磁性体の具体的な作製方法について説明する。
まず、比較評価のため、従来方法として本発明者らにより開示されている特許文献2に挙げられている方法を検証した。平均粒径0.15μmの78−パーマロイ磁性粉末(Ni:78%−Fe:22%合金)1gと、キシレンおよびシクロペンタノン4:1混合液10gに界面活性剤として窒素含有のグラフトポリマーを溶解した分散液とを、自転公転攪拌および超音波照射攪拌により混合し、スラリー液を作製した。該スラリー液と、ポリシクロオレフィン樹脂を固形分比率40%に希釈して得た樹脂ワニス0.5gとを、自転公転攪拌および超音波照射攪拌により混合することにより得られたペーストを、濃縮、塗布、乾燥、熱処理およびプレス成形を実施することにより複合磁性体を形成する。該複合磁性体の複素透磁率をパラレルライン法により測定したところ、1GHzの周波数において、比透磁率μr=4、磁気損失tanδ=0.3であり、磁気特性は2〜300MHz程度の周波数までは良好な値を示すものの、300MHz以上の周波数では磁気損失が大きくなっていることが分かった(図5参照)。また、該複合磁性体シート中での磁性粉末の分散性を走査型電子顕微鏡で確認したところ、球状の粒子が凝集して1μm強の凝集体を形成していることがわかった(図6参照)。
そこで、本発明者らは、上記に鑑み鋭意検討を重ねた結果、以下のような製造方法を用いて混合することによって、1GHz以下の周波数おいて比透磁率μrが1よりも大きく、かつ損失正接tanδが0.1以下である複合磁性体を得ることが出来ることを見出した。
本発明に係る製造工程の最大の特徴は、上記と同分量の原材料を使用して混合攪拌を行う際、混合容器に分散媒体を投入して高速(公転速度500rpm以上、自転速度200rpm以上)で自転公転攪拌を行うため、分散媒体により生じる強いせん断応力により磁性粒子が扁平化されると同時に凝集粒子が解砕され、分散性が向上することである。
具体的に説明すると、本発明に係る製造方法は、磁性粉末を溶剤中に分散させて混合しスラリーを製造する工程中に、溶剤に界面活性剤を添加した分散溶媒を製造する工程と、分散溶媒中に磁性粉末を混合する混合工程とを含み、当該磁性粉末を分散溶媒中に混合する際、分散媒体が添加され、分散媒体が添加された状態で、自転公転式混合が行なわれ、磁性粉末を扁平化することを特徴としている。その後、これに絶縁性材料が添加、混合される。
このように、溶剤、界面活性剤、磁性粉末、分散媒体、及び、絶縁性材料の混合体からなるスラリーが生成され、自転公転式混合が終了すると、当該混合体から分散媒体を分離する工程が行なわれる。なお、分散媒体を分離する工程は絶縁性材料の添加・混合前に行われても良い。分散媒体を分離する工程は、分散媒体が他の溶剤等から分離するまで混合体を静置する工程であっても良いし、混合体に遠心分離を施すことによって、混合体から分散媒体を分離する工程であっても良い。
溶剤、界面活性剤、磁性粉末、分散媒体、及び、絶縁性材料を混合する上記した混合工程に用いることが出来る装置としては、ニーダ、ロールミル、ピンミル、サンドミル、ボールミル、遊星ボールミル等があるが、本発明に係る分散媒体を使用するためにはサンドミル、ボールミル、遊星ボールミル等が適している。
また、分散媒体としては、アルミニウム、スチール、鉛等の金属類あるいは金属酸化物類、アミルナ、ジルコニア、二酸化ケイ素、チタニア等の酸化物焼結体、窒化ケイ素等の窒化物焼結体、炭化ケイ素等の珪化物焼結、ソーダガラス、鉛ガラス、高比重ガラス等のガラス類等が挙げられるが、本発明に係る分散媒体としては、比重6以上のジルコニア、スチール、ステンレス等が混合効率の点から好ましい。この分散媒体は、磁性粉末よりも硬度が大きいことが特徴である。
また、上記混合は分散媒体の衝突の衝撃によって行われるため、衝突回数が増すと分散性も向上する。従って、分散媒体の平均粒径が小さいほど単位体積あたりに充填される個数が増えて衝突回数が多くなり分散性も良くなるが、一方、あまり粒径が小さいとスラリーから分離することが困難となる。従って少なくとも0.1mm以上の平均粒径を有することが必要である。また、分散媒体の粒径が大きくなり過ぎると上記の衝突回数が減って分散性能が低下するため、平均粒径の上限値は3.0mmである。
また、混合攪拌時間は、短すぎると球状磁性粒子が充分に扁平化されず、また長すぎると扁平化した磁性粒子がさらに磨砕されて適切なアスペクト比(長さ/厚み)を保てなくなるため、高周波における磁気特性が劣化する。従って混合攪拌時間は30分程度が好ましいが、これは原材料の初期投入量、攪拌の自転公転速度により適宜調節する必要がある。
次に、得られたスラリーの塗布方法について述べる。塗布方法はこれを公知の成形方法、例えばプレス法、ドクターブレード法、射出成形法により任意のシート形状に成形し、ドライフィルムを作製することができる。これらの方法の中で、複合磁性体の積層体を形成のためにはドクターブレード法によってシート状に成形することが望ましい。スラリーは上記の塗布方法に適した粘度調整のために、溶剤を揮発させて濃縮後に塗布を行う。必要があれば、スラリー塗布の後、乾燥前に磁場の配向により扁平状磁性粉末をシートと平行方向に配向する配向処理が行われる。
最後に、このようにして得られたドライフィルムを、還元性雰囲気或いは真空中で熱処理及びプレス成型することにより、複合磁性体を得る。
以上のような本発明の製造方法においては、複合磁性体中における局所的な磁性粒子の凝集を緩和することができるため、高周波における比透磁率μrの向上と磁気損失tanδの低減を同時に達成することが可能となる。
次に、本発明に係る実施例について説明する。
以下、実施例1ないし4により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
平均粒径0.15μmの78−パーマロイ磁性粉末(Ni:78%−Fe:22%合金)1gを、キシレンおよびシクロペンタノン4:1混合液10gに界面活性剤として窒素含有のグラフトポリマーを溶解した分散液に混合し、さらに分散媒体として平均粒径が200μmのジルコニアビーズを添加し、この状態で遊星攪拌を30分間実施して磁性粉末を扁平状にした。このようにして得られたスラリーにポリシクロオレフィン樹脂を固形分比率40%に希釈して得た樹脂ワニス0.5gを添加しさらに遊星攪拌で5分間混合した。さらに分散媒体としてジルコニアビーズを添加し遊星攪拌で5分間混合した。遊星攪拌時の公転速度はいずれも2000rpm、自転速度は800rpmとした。
次に、得られた混合液を静置して分散媒体を沈降させ(磁性粉末の比重は7〜8、ジルコニアの比重は6〜7であるが、ジルコニアビーズの粒径が200μmに対して磁性粉末の粒径は0.15μmであるので、ジルコニアビーズの方が重いためジルコニアビーズが沈降する)、上澄みをロータリーエバポレーターに導入し、50℃、2.7kPaの減圧下で(減圧のため溶剤の沸点が下がる)溶剤を蒸発させ、ドクターブレードにて塗布できる粘度とした。上記によって得られた混合液をドクターブレード法によってフィルム状に成型した後、1.6×10A/mの磁場をかけて磁性粒子を配向させながら、常温で乾燥させた。このようにして得られたドライフィルムを、減圧プレス装置によってプレス焼成を行った。プレス条件は常圧のまま130℃まで20分で昇温させ、その後2MPaの圧力をかけて5分間保持し、その後160℃まで昇温させて40分間保持し、樹脂を硬化させて面積30mm角、厚さ約60μmの複合磁性体を得た。この複合磁性体の複素透磁率をパラレルライン法により測定したところ 1GHzにおいて比透磁率μr=6、磁気損失tanδ=0.08であった(図1参照)。この複合磁性体の構造を示す顕微鏡写真を図2示す。磁性粒子は扁平化され、印加磁場の方向に配向していることが分かる。
平均粒径0.15μmの45−パーマロイ磁性粉末(Ni:45%−Fe:55%合金)1gを用いて上記実施例1と同様の条件で複合磁性体を作製し、面積30mm角、厚さ60μmの複合磁性体を得た。この複合磁性体の複素透磁率をパラレルライン法により測定したところ、1GHzにおいて比透磁率μr=5、磁気損失tanδ=0.05であった(図3参照)。この複合磁性体の構造を示す顕微鏡写真を図4示す。
本複合磁性体を回路基板に応用した実施例を示す。まず、実施例1に示す過程において得られる厚さ約60μmの複合磁性ドライフィルムを6枚積層してプレス焼成することにより、厚さ約350μmの複合磁性材料を作製した。さらに該複合磁性材料を低誘電率樹脂のフィルムで挟んでから加熱して樹脂を硬化させたのち、樹脂表面に銅めっきを施し長さ30mm、幅0.9mmの配線パターン(マイクロストリップ線路)を形成した。図7に本回路基板の外観図を示す。また、図8に本回路基板の通過特性および反射特性を示してあるが、実測定結果および電磁界シミュレータHFSSによる計算値はよく一致しており、高周波において所望の比透磁率および損失が得られていることが分かる。
本複合磁性体を電子部品に応用した一例として、複合磁性体を用いたモバイル機器用アンテナの事例を示す。図9に示すように、アンテナ素子は長さ42mm、幅5mm、厚さ0.35mmの本複合磁性材料2枚で長さ44mm、幅1.5mmの導体線を挟みこんだ構造とし、該アンテナ素子を長さ80mm、幅35mm、厚さ1mmの導体板に接続し、接続点において50Ω給電した。図10に該アンテナの入力反射特性を示すが、実測定結果と電磁界シミュレータHFSSによる計算値はよく一致しており、高周波において所望の比透磁率および損失が得られていることが分かる。
本発明は、半導体装置、回路素子、平板表示装置、その他高周波用電子部品に適用し、またこれらを搭載する高周波用回路基板に適用して、小型化、低消費電力化を可能にする。従って、本発明を適用した電子部品及び/又は回路基板を搭載した高周波電子機器すべてにおける小型化、低消費電力化を可能にするものである。
本発明の実施例1で得られた複合磁性体の磁気特性の値を周波数に対して示す図である。 本発明の実施例1で得られた複合磁性体の走査型電子顕微鏡写真である。 本発明の実施例2で得られた複合磁性体の磁気特性の値を周波数に対して示す図である。 本発明の実施例2で得られた複合磁性体の走査型電子顕微鏡写真である。 従来方法により得られた複合磁性体の磁気特性の値を周波数に対して示す図である。 従来方法により得られた複合磁性体の走査型電子顕微鏡写真である。 本発明の実施例3に係る高周波回路基板の構成を示す概略図である。 図7に示した高周波回路基板の通過特性および反射特性の値を周波数に対して示す図である。 本発明の実施例4に係るアンテナの構成を示す概略図である。 図9に示されたアンテナの入力反射特性を周波数に対して示す図である。
符号の説明
10 複合磁性体基板
12 導体線路
14 給電ポート
16 複合磁性体アンテナ

Claims (24)

  1. 磁性粉末を絶縁性材料中に分散して構成される複合磁性体において、前記磁性粉末の形状は球状または扁平状であって、1GHzの周波数おいて比透磁率μrが1よりも大きく、かつ損失正接tanδが0.1以下であることを特徴とする複合磁性体。
  2. 磁性粉末を絶縁性材料中に分散して構成される複合磁性体において、前記磁性粉末の形状は球状または扁平状であって、500MHzの周波数おいて比透磁率μrが1よりも大きく、かつ損失正接tanδが0.1以下であることを特徴とする複合磁性体。
  3. 前記磁性粉末の材質はニッケル(Ni)、パーマロイ(Fe−Ni合金)または銅(Cu)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)のいずれか一種類以上を含むパーマロイであることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合磁性体。
  4. 前記磁性粉末の形状は扁平状であり、その厚さが0.1〜1μm、長さが0.2〜10μm、かつアスペクト比(長さ/厚み)が2以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の複合磁性体。
  5. 前記扁平状磁性粉末は分散溶媒中に磁性粉末を混合する工程において、球状磁性粉末を機械的に扁平状に変形させたものであることを特徴とする請求項4に記載の複合磁性体。
  6. 前記絶縁性材料は、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリベンゾシクロブテン樹脂、ポリアリーレンエーテル樹脂、ポリシロキサン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、およびポリスチレン樹脂のうち少なくとも一つを含む合成樹脂もしくは液相樹脂、または、Al、SiO、TiO、2MgO・SiO、MgTiO、CaTiO、SrTiO、およびBaTiOのセラミックスからなる群より選ばれる少なくとも一つのセラミックスの原料であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の複合磁性体。
  7. 絶縁性材料と球状または扁平状磁性粉末とを溶剤中に分散させて混合しスラリーを製造する工程と、前記スラリーを塗布、乾燥、焼成する工程とを含む複合磁性体の製造方法であって、前記スラリーの製造工程は、溶剤に界面活性剤を添加した分散溶媒を製造する工程と、該分散溶媒に前記磁性粉末を混合する工程とを含み、前記磁性粉末を混合する工程は分散媒体を添加する工程と、自転公転式混合を行う工程とを含むことを特徴とする複合磁性体の製造方法。
  8. 前記自転公転式混合は、公転速度500rpm以上、自転速度200rpm以上で行うことを特徴とする請求項7に記載の複合磁性体の製造方法。
  9. 前記スラリーの製造工程は、さらに絶縁性材料をスラリーに添加し混合する工程と、前記絶縁性材料の添加前または後に前記スラリーから前記分散媒体を分離する工程とを含むことを特徴とする請求項7又は8に記載の複合磁性体の製造方法。
  10. 前記分散媒体を分離する工程は、前記混合体を静置または遠心分離して前記混合体を前記分散媒体が含まれている部分と含まれていない部分とに分離する工程を含むことを特徴とする請求項9に記載の複合磁性体の製造方法。
  11. 前記磁性粉末はニッケル(Ni)、パーマロイ(Fe−Ni合金)、および銅(Cu)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)のいずれか一種類以上を含むパーマロイから選ばれたものであることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の複合磁性体の製造方法。
  12. 前記絶縁性材料は、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリベンゾシクロブテン樹脂、ポリアリーレンエーテル樹脂、ポリシロキサン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、シアネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、およびポリスチレン樹脂のうち少なくとも一つを含む合成樹脂もしくは液相樹脂、または、Al、SiO、TiO、2MgO・SiO、MgTiO、CaTiO、SrTiO、およびBaTiOのセラミックスからなる群より選ばれる少なくとも一つのセラミックスの原料であることを特徴とする請求項7〜11のいずれかに記載の複合磁性体の製造方法。
  13. 前記磁性粉末を分散溶媒中に混合する工程において、球状磁性粉末を機械的に扁平状に変形させることを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載の複合磁性体の製造方法。
  14. 前記磁性体粉末の混合工程において添加される分散媒体は、金属、金属酸化物、酸化物焼結体、窒化物焼結体、珪化物焼結、およびガラスからなる群より選ばれる少なくとも一つの粒体であることを特徴とする請求項7〜13のいずれかに記載の複合磁性体の製造方法。
  15. 前記分散媒体は、アルミニウム、スチール、鉛、鉄酸化物、アミルナ、ジルコニア、二酸化ケイ素、チタニア、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ソーダガラス、鉛ガラス、および高比重ガラスの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項14に記載の複合磁性体の製造方法。
  16. 前記分散媒体は、比重が6以上であることを特徴とする請求項14又は15に記載の複合磁性体の製造方法。
  17. 前記分散媒体は、ジルコニア、スチール、ステンレスのいずれかを含むことを特徴とする請求項16に記載の複合磁性体の製造方法。
  18. 前記分散媒体は、平均粒径が0.1mm以上、3.0mm以下の粒体であることを特徴とする請求項7〜17のいずれかに記載の複合磁性体の製造方法。
  19. 請求項1〜6のいずれか一つに記載の複合磁性体を少なくとも含むことを特徴とする回路基板。
  20. 請求項7〜18のいずれか一つに記載の製造方法によって作られた複合磁性体を少なくとも含むことを特徴とする回路基板。
  21. 請求項1〜6のいずれか一つに記載の複合磁性体を少なくとも含むことを特徴とする電子部品。
  22. 請求項7〜18のいずれか一つに記載の製造方法によって作られた複合磁性体を少なくとも含むことを特徴とする電子部品。
  23. 請求項19又は20のいずれかに記載の回路基板を少なくとも有することを特徴とする電子機器。
  24. 請求項21又は22に記載の電子部品を少なくとも有することを特徴とする電子機器。
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