JP2004165620A - プリント配線用基板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基材1の表面に、金属酸化物からなる接着層2を介して、
(a) 平均粒径1〜150nmの磁性体粉末31を多数、電気絶縁材料32によって電気的に絶縁した状態で、層中に分散した構造を有する磁性体層3と、
(b) 電気絶縁層4と、
を交互に積層して、2層以上の積層構造を有する電磁波吸収体層EMを形成した。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば携帯電話やモバイルコンピュータなどの、ギガヘルツ以上の高周波を利用する機器類からの、不要輻射ノイズの放射を低減する機能を有する新規なプリント配線用基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話やモバイルコンピュータなどの、ギガヘルツ以上の高周波を利用する機器類からの不要輻射ノイズの放射を低減するために、磁性体の磁気損失を利用する方法が注目されている。
磁性体の磁気損失を利用した電磁波吸収(不要輻射ノイズ減衰)のメカニズムは、ノイズ源と磁性体との位置関係などによって異なるものの、磁性体がノイズ伝送路のすぐ近くにあることによって、高周波電流の発生が抑制されることが判っている。
【0003】
また、この場合において等価的な抵抗成分の大きさは、磁性体の複素透磁率μ=μ'−jμ"の虚数成分である磁気損失項μ"の大きさに依存し、磁性体の面積が一定である場合は、上記磁気損失項μ"の大きさにほぼ比例することも知られている。
かかる磁性体の機能を利用した、不要輻射ノイズ減衰のために用いる電磁波吸収体の一例として、磁性体の微細な粉末を樹脂等の結着剤中に分散した複合材料を、種々の成形方法によって、シート状などの所定の形状に成形したものがある。
【0004】
そのような複合材料からなる電磁波吸収体について記載した文献としては、例えば特許文献1、2、非特許文献1等を挙げることができる。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−200305号公報(第0030欄)
【特許文献2】
特開2002−158484号公報(第0015欄〜第0017欄、図1)
【非特許文献1】
橋本修監修「新電波吸収体の最新技術と応用 エレクトロニクス材料・技術シリーズ」〔(株)シーエムシー、1999年3月1日発行、第134頁第6行〜第8行、同頁図1g〕
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、現時点で実用化されている複合材料はいずれも、ギガヘルツ以上の高周波数領域での磁気損失項μ"が5〜6程度と小さいため、当該複合材料を用いて、例えば厚み1mm程度のシート状の電磁波吸収体を形成したとしても、電磁波を数10%程度しか遮蔽できないのが現状である。
前記機器類は近年、ますます小型化される傾向にあり、電磁波吸収体についても、配置できるスペースが大きく制約を受ける傾向にある。
【0007】
このため電磁波吸収体としては、これまでよりも極めて薄い上、ギガヘルツ以上の高周波数領域での磁気損失項μ"がこれまでよりも大きいものが求められている。
そこでこれらの要求に対応すべく、前記の複合材料においては、電磁波吸収特性を向上する観点から、磁性体粉末の含有割合を増加させることが試みられた。
また発明者は、薄型化による省スペースの観点から、上記機器類の内部回路を構成するプリント配線用基板の表面に、複合材料からなる電磁波吸収体層を形成することを検討した。
【0008】
しかし上記の機器類は近年、より一層、高出力化される傾向にあり、それに伴って特定周波数領域の電磁波をさらに強力に吸収することが必要となりつつある。
このため、従来の複合材料にて形成した電磁波吸収体では、この要求に対応しきれなくなってきているのが現状である。
すなわち電磁波吸収特性を向上すべく、磁性体粉末の含有割合を増加させるほど、相対的に結着剤の含有割合が減少し、それに伴って電磁波吸収体の物理的な強度や成形性などが低下してしまうため、この方法によって電磁波吸収特性を向上できる範囲には限界がある。
【0009】
プリント配線用基板の表面に形成する電磁波吸収体層においても同様である。結着剤の含有割合が小さすぎると製膜性が低下して、薄肉でかつ均一な電磁波吸収体層を形成できない上、製膜後の膜強度も低下するため、磁性体粉末の含有割合をあまり増加させることができず、電磁波吸収特性を向上できる範囲には限界がある。
この発明の目的は、従来の複合材料にて形成したものに比べて、薄肉で、なおかつギガヘルツ以上の高周波数領域での電磁波吸収特性が飛躍的に向上した電磁波吸収体層を備えた、新規なプリント配線用基板を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、基材の表面に、金属酸化物からなる接着層を形成し、その上に、
(a) 平均粒径1〜150nmの磁性体粉末を多数、それぞれ個別に電気絶縁材料によって絶縁した状態で含有する磁性体層と、
(b) 電気絶縁層と、
を交互に積層して、2層以上の多層構造を有する電磁波吸収体層を形成したことを特徴とするプリント配線用基板である。
【0011】
請求項2記載の発明は、磁性体粉末を、Fe、CoおよびNiからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属、またはその酸化物にて形成したことを特徴とする請求項1記載のプリント配線用基板である。
請求項3記載の発明は、磁性体粉末の表面を電気絶縁被膜で被覆した構造を有する複合粉末を形成し、この複合粉末を多数、結合して磁性体層を形成したことを特徴とする請求項1記載のプリント配線用基板である。
【0012】
請求項4記載の発明は、電気絶縁被膜を、Si、Al、TiおよびZrからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属の酸化物、アミン誘導体、アルカンチオール誘導体、または樹脂にて形成したことを特徴とする請求項3記載のプリント配線用基板である。
請求項5記載の発明は、電気絶縁被膜の被覆率を、複合粉末の総量に対して10〜50体積%としたことを特徴とする請求項3記載のプリント配線用基板である。
【0013】
請求項6記載の発明は、多数の複合粉末を、結着剤にて結着して磁性体層を形成したことを特徴とする請求項3記載のプリント配線用基板である。
請求項7記載の発明は、接着層を、少なくともTiを含む金属の酸化物にて形成したことを特徴とする請求項1記載のプリント配線用基板である。
請求項8記載の発明は、接着層の厚みを3〜150nmとしたことを特徴とする請求項1記載のプリント配線用基板である。
【0014】
請求項9記載の発明は、電気絶縁層を、Si、Al、TiおよびZrからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属の酸化物、または硬化性樹脂にて形成したことを特徴とする請求項1記載のプリント配線用基板である。
請求項10記載の発明は、電磁波吸収体層における、複素透磁率μの実数成分μ'と虚数成分μ"とを、2GHzまでの高周波数領域内の、特定の周波数領域においてμ'>μ"としたことを特徴とする請求項1記載のプリント配線用基板である。
【0015】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、電磁波吸収体層を、(a)の磁性体層と、(b)の電気絶縁層とを交互に積層した多層構造に形成してあるため、高周波数領域での電磁波吸収特性を、これまでよりも飛躍的に向上することができる。
すなわち、電磁波吸収体層を多層構造に形成したことによって、先に説明した非特許文献1の第135頁にも記載されているように、渦電流損失を抑制するとともに、還流磁区を有効に除去することが可能となる。このため電磁波吸収体層は、特にギガヘルツ以上の高周波数領域で、電磁波を良好に吸収できるものとなる。
【0016】
また、各磁性体層中に分散させた磁性体粉末の平均粒径を1〜150nmとしたことと、個々の磁性体粉末を、電気絶縁材料によって電気的に絶縁した状態で層中に含有させたこととの相乗効果によって、個々の磁性体粉末について、磁性体としての磁化を維持しつつ、その電気比抵抗を飛躍的に大きくすることが可能となる。
これは、個々の磁性体粉末の平均粒径が、上記のように1〜150nmの範囲内であって、電子の平均自由行程に近いためである。また、2つ以上の磁性体粉末が互いに接触して実質的な粒径が大きくなり、それによって電気比抵抗が小さくなるのを、磁性体粉末間を電気絶縁材料によって電気的に絶縁することで防止しているためである。
【0017】
そして、ギガヘルツ以上の高周波数領域で磁性を失うことなく高い透磁率を維持した状態で、効率よく電磁波を吸収、減衰できるようになる。つまり、高周波磁界および電界によって磁性体粉末の内部に誘導電流が発生すると、それに追従して発生する磁化を制動することができるため、電磁波を効率よく吸収、減衰することができる。
さらに、上記のように磁性体粉末の粒径を小さくしたことと、個々の磁性体粉末を、電気絶縁材料によって電気的に絶縁した状態で層中に含有させたこととの相乗効果によって、前記の多層構造に由来して発生する変位電流による透磁率特性の阻害を防止することもできる。
【0018】
よって前記の構造を有する電磁波吸収体層は、従来の、磁性体粉末を単に結着剤中に分散させただけの複合材料にて形成したものに比べて、特にギガヘルツ以上の高周波数領域での電磁波吸収特性を、飛躍的に向上させることができる。
したがって請求項1記載の発明によれば、特にEMI(Electro Magnetic Interference、不要輻射または電磁波によって発生するノイズ)対策用として、携帯電話などのクロストークの防止などに優れた効果を発揮しうるプリント配線用基板を得ることが可能となる。
【0019】
また電磁波吸収体層を形成する個々の磁性体層は、最も単純には、多数の磁性体粉末が層の厚み方向に重ならずに、面方向にのみ分布した構造とすることができ、その場合の磁性体層の厚みは、磁性体粉末の粒径より少し大きい程度、具体的にはサブミクロンオーダーとすることができる。
また同様に電気絶縁層の厚みは、上下の磁性体層中の磁性体粉末間を電気的に絶縁できる程度、具体的にはこれもサブミクロンオーダーであればよい。
【0020】
よって上記の電磁波吸収体層は、2層以上の多層構造を有するにもかかわらず、極めて薄肉化することができる。
したがって請求項1記載の発明によれば、かかる薄肉の電磁波吸収体層を基材と一体化したことによって、省スペースの点でも優れたプリント配線用基板を得ることが可能となる。
さらに電磁波吸収体層は、基材の表面に形成した、金属酸化物からなる接着層の上に形成してあるため、基材に対して高い接着性を有している。
【0021】
すなわち基材の表面が、ポリイミドやポリアミドイミド、エポキシ樹脂等の樹脂からなる場合、その表面は有機性の官能基を有するため、磁性体粉末を含む磁性体層などとは密着しがたい。また基材の表面が、ステンレス等の金属からなる場合、その表面には不安定な自己酸化膜が存在するため、磁性体層などとは密着しがたい。
これに対し、金属酸化物からなる接着層は、下地である有機高分子製の表面や金属製の表面などとの接着性に優れる上、磁性体層中の磁性体粉末との接着性にも優れている。
【0022】
このため接着層を介在させることによって磁性体層の、ひいては電磁波吸収体層の、基材に対する接着性を向上することができる。
したがって請求項1記載の発明によれば、電磁波吸収体層が、前記のように複雑な多層構造を有するにもかかわらず、その接着性を向上して、当該電磁波吸収体層のはく離などを生じにくい、耐久性に優れたプリント配線用基板を得ることも可能となる。
【0023】
なお請求項2に記載したように、磁性体層中に含有させる磁性体粉末を、Fe、CoおよびNiからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属、またはその酸化物などの、磁気特性に優れた軟磁性体材料によって形成すると、磁性体層の飽和磁束密度を高めて、電磁波吸収体層の電磁波吸収特性をさらに向上することができる。
また請求項3に記載したように、磁性体粉末の表面を電気絶縁被膜で被覆した構造を有する複合粉末を形成し、この複合粉末を多数、結合して磁性体層を形成した場合には、個々の磁性体粉末をいずれも、その表面を被覆した電気絶縁被膜によってより確実に、他の磁性体粉末と絶縁した状態で、磁性体層を形成することができる。このため、電磁波吸収体層の電磁波吸収特性をさらに向上することができる。
【0024】
また請求項4に記載したように、電気絶縁被膜を、Si、Al、TiおよびZrからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属の酸化物、アミン誘導体、アルカンチオール誘導体、または樹脂にて形成した場合には、磁性体粉末間をより確実に絶縁することができる。このため、例えば磁性体粉末の充てん密度を高めるなどして、電磁波吸収体層の電磁波吸収特性をさらに向上することができる。
また請求項5に記載したように、電気絶縁被膜の被覆率を、複合粉末の総量に対して10〜50体積%とするのが好ましいのは下記の理由による。
【0025】
すなわち電気絶縁被膜の被覆率が10体積%未満では、上述した、磁性体粉末間を電気絶縁被膜によって絶縁する効果が不十分になるおそれがある。また被覆率が50体積%を超える場合には、相対的に磁性体粉末の量が少なくなって、磁性体層における磁性体粉末の充てん率が低下するおそれがある。
これに対し、被覆率が10〜50体積%の範囲内であれば、磁性体層における磁性体粉末の充てん率を低下させることなく、磁性体粉末間を、電気絶縁被膜によってより確実に絶縁することが可能となる。
【0026】
また請求項6に記載したように多数の複合粉末を、結着剤にて結着して磁性体層を形成した場合には、磁性体層、ひいては電磁波吸収体層の膜強度を高めることができる。
また請求項7に記載したように、接着層を、少なくともTiを含む金属の酸化物にて形成した場合には、当該Tiを含む金属の酸化物が、磁性体粉末との接着性や安定性に特に優れるため、電磁波吸収体層の、基材に対する接着性をさらに向上することが可能となる。
【0027】
また請求項8に記載したように、接着層の厚みを3〜150nmとするのが好ましい理由は下記のとおりである。
すなわち接着層の厚みが3nm未満では、当該接着層を設けたことによる、電磁波吸収体層の、基材に対する接着性を向上する効果が不十分になるおそれがある。また接着層の厚みが150nmを超える場合には、層の内部応力が大きくなって、接着層に歪みや亀裂等を生じやすくなるおそれがある。
【0028】
これに対し、接着層の厚みが3〜150nmの範囲内であれば、歪みや亀裂等の発生を抑制しながら、電磁波吸収体層の、基材に対する接着性を十分に向上することが可能となる。
また請求項9に記載したように、電気絶縁層を、Si、Al、TiおよびZrからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属の酸化物、または硬化性樹脂にて形成した場合には、上下の磁性体層間を、より確実に絶縁することができる。このため、例えば電気絶縁層の厚みをできるだけ小さくして、その総厚みをさらに小さくすることなどが可能となる。
【0029】
さらに請求項10に記載したように、電磁波吸収体層における、複素透磁率μの実数成分μ'と虚数成分μ"とを、2GHzまでの高周波数領域内の、特定の周波数領域においてμ'>μ"とした場合には、前述したEMI対策用としてだけでなく、SAR(Specific Absorption Rate、比吸収率)対策用としても優れた効果を発揮しうるプリント配線用基板を得ることができる。
近時、携帯電話などの移動体通信機器類において、アンテナやRF発信機の周辺から漏洩する磁化が、人体に対して悪影響を及ぼすことが懸念されている。例えば携帯電話の場合、耳に当てた通話状態において、アンテナから漏洩した高周波磁界成分によって脳内に渦電流が流れる。そしてこの渦電流によって脳が発熱するなど、人体にさまざまな悪影響を生じると考えられている。
【0030】
かかる高周波磁界による悪影響から人体を保護するために求められるのがSAR、すなわち生体が電磁波にさらされることによって、単位質量の組織に、単位時間あたりに吸収されるエネルギー量(具体的には6分間における人体局所の任意の組織10gにわたり平均化した値)を、できるだけ小さくする対策である。
SAR対策の具体的な方法としては、高周波でも複素透磁率μが高い材料を配置し、機器類から放射される高周波磁界の形を変形させて電磁波吸収体層内に収束させることで、人体に放射される量を低減することが考えられる。
【0031】
そのためには2GHzまでの高周波数領域内の、機器が使用する特定の周波数領域において、複素透磁率μの実効成分のうち、外部磁界から時間的な遅れを持つために損失に寄与する虚数成分μ"よりも、損失には寄与しないものの、複素透磁率μを高めて、高周波磁界の形を変形させて電磁波吸収体層内に収束させるために寄与する実数成分μ'を大きくする、つまり両成分を、前記のようにμ'>μ"とするのが好ましい。
【0032】
両成分が逆にμ'≦μ"の関係にあるときには、複素透磁率μを高めようとすると虚数成分μ"が大きくなりすぎるため、それに伴って損失が大きくなりすぎて、アンテナから放射されるべき電磁波の、出力の低下を引き起こす。このため通信そのものが阻害されるおそれがある。
これに対し、2GHzまでの高周波数領域内の、機器類が使用する特定の周波数領域において、両成分がμ'>μ"の関係にあれば、アンテナから放射される電磁波の出力の低下を引き起こすことなしに複素透磁率μを高めて、人体に放射される高周波磁界の量を低減することが可能となる。
【0033】
以下に、この発明を詳細に説明する。
図1は、この発明のプリント配線用基板の、実施の形態の一例を示す拡大断面図である。
図に見るようにこの例のプリント配線用基板は、基材1の表面に、金属酸化物からなる接着層2を形成し、その上に、
(a) 平均粒径1〜150nmの磁性体粉末31を多数、それぞれ個別に電気絶縁材料32によって絶縁した状態で含有する磁性体層3と、
(b) 電気絶縁層4と、
を交互に積層して、2層以上の多層構造を有する電磁波吸収体層EMを形成したものである。
【0034】
なお図では、接着層2の直上の、2層ずつの磁性体層3、電気絶縁層4と、電磁波吸収体層EMの最上部の、2層の磁性体層3、および3層の電気絶縁層4のみ記載して、途中の記載を省略しているが、この間でも磁性体層3と電気絶縁層4とを交互に積層していることは言うまでもない。
〔基材〕
上記のうち基材1としては、プリント配線用基板の用途において従来公知の種々の材料からなる、種々の形状、構造を有する基材を、いずれも使用することができる。
【0035】
例えば樹脂を主体とする基材としては、樹脂からなる単層のフィルムやシート、当該フィルムまたはシートを強化繊維層などと積層して強化した積層体、樹脂中に強化繊維などを分散させた複合体、あるいは表面に上記樹脂をコーティングした複合体等を挙げることができる。また基材1の表面には、ステンレス等の金属からなる遮蔽層などを形成してもよい。
基材1を形成する樹脂としては、従来公知の種々の樹脂を挙げることができるが、特に耐熱性、耐候性、耐薬品性、機械的強度等を向上することを考慮すると、これらの特性に優れたポリイミド(全芳香族ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリマレイミドアミンその他)、ポリエチレンナフタレート、ポリアミドイミド、ポリエチレンテレフタレート、全芳香族ポリアミド、液晶ポリエステル、エポキシなどが好ましい。
【0036】
電磁波吸収体層EMは、上記基材1の樹脂製の表面や、あるいは基材1の表面に積層した遮蔽層等の、金属製の表面などに形成することができる。このいずれの場合にも電磁波吸収体層EMは、次に述べる接着層2を介して形成されるため、前記のように基材1に対して高い接着性を有するものとなる。
基材1の、接着層2を介して電磁波吸収体層EMを形成する面には、接着層2の接着性を向上するために、例えばプラズマ処理、粗面化処理などの前処理を施してもよい。
【0037】
〔接着層〕
接着層2は、上記のように金属酸化物、特に好ましくはTiを含む金属の酸化物にて形成する。Tiを含む金属の酸化物としてはチタニア(酸化チタン)の他、Tiと他の金属との複合酸化物や、これらの酸化物、複合酸化物と、他の金属の酸化物との混合物等を挙げることができる。
接着層2は、例えば反応性スパッタリング法、反応性イオンプレーティング法などによって形成することもできるが、いわゆるゾルゲル法によって形成するのが、生産性や製造コスト等の工業的な観点から好ましい。
【0038】
ゾルゲル法においては、接着層2を形成する金属酸化物のもとになる、少なくともTiを含む金属のアルコキシドを加水分解してゾル液を生成し、このゾル液を、種々の塗布法によって基材1の、電磁波吸収体層EMを形成する面に塗布した後、加熱して脱水反応を進行させるとともに、水分の蒸発によって金属酸化物の生成を促進させることによって、所定の金属酸化物からなる接着層2を形成することができる。
【0039】
接着層2の厚みは3〜150nm程度であるのが好ましい。この理由は先に述べたとおりである。
〔磁性体層〕
接着層2の上に形成する電磁波吸収体層EMのうち磁性体層3は、磁性体粉末31を多数、電気絶縁材料32によって電気的に絶縁した状態で、層中に含有する構造を有する。
【0040】
(磁性体粉末)
上記のうち磁性体粉末31は、種々の磁性材料にて形成することができるが、特に前述したように、磁性体層3の飽和磁束密度を高めて電磁波吸収特性をさらに向上するためには、Fe、CoおよびNiからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属、またはその酸化物にて形成するのが好ましい。中でも特に、FeとNiの合金であるパーマロイ合金や、Feの酸化物であるフェライトにて形成するのがさらに好ましい。これにより、磁性体層3における磁性体粉末31の密度にもよるが、例えばその飽和磁束密度を0.5T以上として、良好な電磁波吸収特性を得ることが可能となる。
【0041】
磁性体粉末31の平均粒径は、1〜150nmである必要がある。
この理由も先に述べたとおりであるが、さらに詳しく説明すると、磁性体粉末31の平均粒径が150nmを超える場合には電気比抵抗が低下して、当該磁性体粉末31を形成する磁性材料の固有抵抗値(μΩcm程度)まで低下する。このため、高周波磁界および電界によって磁性体粉末31の内部に誘導電流が発生しても、高周波に追従して発生する磁化を制動することができないため、電磁波を効率よく吸収、減衰することができなくなってしまう。
【0042】
一方、磁性体粉末31の平均粒径が1nm未満では、電子の平均自由行程にさらに近づくため電気比抵抗は無限大近く発散するが、磁化が急激に小さくなって、磁性体としての機能が失われてしまう。
したがって磁性体粉末31の平均粒径は、1〜150nmである必要がある。
かかる磁性体粉末31は、従来公知の種々の製造方法によって製造することができるが、特に磁性体粉末31のもとになる1種または2種以上の金属のイオンを含む水溶液中で、当該イオンを還元剤によって金属に還元することで液中に析出させる、還元析出法によって形成するのが好ましい。
【0043】
還元析出法によって製造される磁性体粉末31は、個々の粒径が揃っており、粒度分布がシャープである。
電磁波吸収体層EMの周波数特性は、磁性体粉末31の粒径に依存する。そして磁性体粉末31の粒度分布のばらつきが大きいと、周波数特性が粉末間で平均化されるため、電磁波吸収体層は、特定周波数の電磁波に対して先鋭なピークを有するのでなく、幅広い周波数領域にわたるブロードな分布を有するものとなる。このため特定周波数の電磁波に対する吸収効率が低下する。
【0044】
これに対し、還元析出法によって製造された、粒度分布がシャープな磁性体粉末31を使用した場合には、電磁波吸収体層EMは、特定周波数の電磁波に対して先鋭なピークを有するものとなり、特定周波数の電磁波に対する吸収効率が向上する。
還元析出法に用いる還元剤としては、3価のチタンイオン(Ti3+)が好ましい。
【0045】
還元剤として3価のチタンイオンを用いた場合には、磁性体粉末31を形成した後の、チタンイオンが4価に酸化した水溶液を電解再生して、チタンイオンを再び3価に還元することによって繰り返し、磁性体粉末31の製造に利用可能な状態に再生できるという利点がある。
また還元剤として3価のチタンイオンを用いた還元析出法としては、四塩化チタンなどの、4価のチタン化合物の水溶液を電解して、4価のチタンイオンの一部を3価に還元して還元剤水溶液を調製した後、この還元剤水溶液と、磁性体粉末のもとになる金属のイオンを含む水溶液(反応液)とを混合して、3価のチタンイオンが4価に酸化する際の還元作用によって金属のイオンを還元、析出させて磁性体粉末を製造する方法が好ましい。
【0046】
この方法においては、還元析出時に、あらかじめ系中に存在する4価のチタンイオンが、磁性体粉末31の成長を抑制する成長抑制剤として機能する。
また還元剤水溶液中で、3価のチタンイオンと4価のチタンイオンとは、複数個ずつがクラスターを構成して、全体として水和および錯体化した状態で存在する。
このため1つのクラスター中で、3価のチタンイオンによる、磁性体粉末31を成長させる機能と、4価のチタンイオンによる、磁性体粉末31の成長を抑制する機能とが、1つの同じ磁性体粉末31に作用しながら、磁性体粉末31が形成される。
【0047】
したがって前述した、平均粒径が150nm以下という微細な磁性体粉末31を、容易に製造することができる。
しかもこの製造方法では、電解条件を調整して、還元剤水溶液中における、3価のチタンイオンと4価のチタンイオンとの存在比率を調整することによって、上述した、クラスター中での両イオンの、相反する機能の強弱の度合いを変更できるため、製造される磁性体粉末31の粒径を任意に制御することも可能である。
【0048】
(複合粉末)
磁性体粉末31を多数、電気絶縁材料32によって電気的に絶縁した状態で、層中に含有させた構造を有する磁性体層3は、種々の方法によって形成することができる。しかし、個々の磁性体粉末31間をより確実に絶縁するためには、前述したように、磁性体粉末31の表面を電気絶縁被膜32aで被覆した複合構造を有する複合粉末33を作製し(図2)、それを多数、結合、一体化させて磁性体層3を形成するのが好ましい。
【0049】
また、かかる構造の磁性体層3において磁性体粉末31の表面を被覆する電気絶縁被膜32aは、金属の酸化物、アミン誘導体、アルカンチオール誘導体、または樹脂にて形成するのが好ましい。
このうち金属の酸化物としては、Si、Al、TiおよびZrからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属の酸化物、具体的にはシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなどの他、上記4種のうち2種以上の金属の複合酸化物や、これらの酸化物、複合酸化物の2種以上の混合物等を挙げることができる。
【0050】
金属の酸化物からなる電気絶縁被膜32aは、接着層2と同様に、ゾルゲル法によって形成するのが、生産性や製造コスト等の工業的な観点から好ましい。
ゾルゲル法においては、まず電気絶縁被膜32aを形成する金属酸化物のもとになる金属のアルコキシドを加水分解してゾル液を生成し、このゾル液中に磁性体粉末31を分散する。
そしてこの分散液を、スプレードライヤによって所定温度の雰囲気中に噴霧して乾燥させると、磁性体粉末31の表面で脱水反応が進行するとともに、水分の蒸発によって金属酸化物の生成が促進されるため、所定の金属酸化物からなる電気絶縁被膜32aを形成することができる。
【0051】
また流動床法などの、従来公知の種々の、粉体への被覆方法を利用して、ゾル液を磁性体粉末31の表面に被覆するとともに金属酸化物を生成させて、電気絶縁被膜32aを形成することもできる。
またアミン誘導体としては、ヘキサエチレンジアミン、オクチルアミン等を挙げることができる。
アミン誘導体からなる電気絶縁被膜32aは、磁性体粉末31を、当該アミン誘導体で処理することで形成できる。具体的には、磁性体粉末31を、アミン誘導体と、その溶剤(主にアルコール等)とともに、アトライタ等の粉末加工機や、あるいはホモジナイザー等に供給して均一に混合させると、アミン誘導体中のアミノ基のNが、磁性体粉末31の表面の金属原子と結合することによって、アミン誘導体からなる電気絶縁被膜32aを形成することができる。
【0052】
アルカンチオール誘導体としては、例えばn−ドデカンチオール、n−ヘキサデンカンチオール、n−オクタデンカンチオール、n−エイコサンチオール等の、炭素数が10〜20程度であるアルカンチオール化合物を挙げることができる。
アルカンチオール誘導体からなる電気絶縁被膜32aは、上記と同様にして形成することができる。すなわち磁性体粉末31を、アルカンチオール誘導体と、その溶剤(主にアルコール等)とともに、アトライタ等の粉末加工機や、あるいはホモジナイザー等に供給して均一に混合させると、アルカンチオール誘導体中のチオール基のSが、磁性体粉末31の表面の金属原子と結合することによって、当該アルカンチオール誘導体の単分子膜からなる電気絶縁被膜32aを形成することができる。
【0053】
上記アミン誘導体やアルカンチオール誘導体の添加量は、磁性体粉末の表面を、これらの誘導体で均一に処理することを考慮すると、例えば磁性体粉末の重量をx(g)、平均粒子径をy(nm)として、平均粒子径yが100nm以上である場合は0.6x(g)から1.4x(g)の範囲で、また平均粒子径yが100nm未満である場合は(400/y)×0.6x(g)から(400/y)×1.4x(g)の範囲で添加するのが好ましい。
【0054】
樹脂としては、電気絶縁性を有する種々の樹脂を挙げることができる。
樹脂からなる電気絶縁被膜32aは、前記と同様にスプレードライヤや流動床法などを利用して、磁性体粉末31の表面に樹脂の溶液を被覆した後、乾燥させて形成してもよい。
しかし、例えばポリビニルピロリドンなどの水溶性の樹脂を、前述した還元析出法による磁性体粉末31の製造方法に用いる反応液中にあらかじめ溶解しておき、還元反応による磁性体粉末31の析出と同時に、その表面に被覆するのが、生産性や製造コスト等の工業的な観点から好ましい。
【0055】
磁性体粉末31の表面を、上記いずれかの電気絶縁被膜32aによって被覆した複合構造を有する複合粉末33において、当該電気絶縁被膜32aの被覆率は、10〜50体積%であるのが好ましい。この理由は前述したとおりである。
被覆率は、下記式によって求めることができる。
【0056】
【数1】
【0057】
(磁性体層の形成)
上記複合粉末33を用いて磁性体層3を形成するには、まず複合粉末33を適当な分散媒中に分散するとともに、当該分散媒に溶解する樹脂等の結着剤を加えて磁性体層用の塗布液を調製する。
そしてこの塗布液を、スプレーコート法などの塗布法によって塗布した後、加熱して分散媒を乾燥、除去するとともに、多数の複合粉末33を結着剤によって一体に固着することによって、磁性体層3を形成することができる。
【0058】
なお電気絶縁被膜32aを樹脂によって形成した複合粉末33を用いる場合は、樹脂が溶解して磁性体粉末31が露出するのを防止するために、分散媒として、上記樹脂の貧溶媒を用いるのが好ましい。
かかる塗布法において、特にスプレーコート法を採用すると、塗装条件などを調整することによって、図1に示すように、多数の磁性体粉末31が層の厚み方向に重ならずに、面方向にのみ分布した構造を有する磁性体層3を形成することができる。
【0059】
磁性体層3の形成方法は、上記の方法には限定されない。磁性体粉末31を多数、個々に、電気絶縁材料32によって電気的に絶縁した状態で層中に含有させた構造を有する磁性体層3を形成できる、種々の形成方法を採用することができる。
他の形成方法としては、例えばスパッタリング法を応用して、多数の磁性体粉末31と、その間を絶縁する無機の電気絶縁材料32の粉末とを交互に成長させる方法を挙げることができる。
【0060】
この方法では、例えばスパッタリング装置のチャンバー内に、磁性体粉末31のもとになるターゲットと、電気絶縁材料32のもとになるターゲットとをセットし、連続した膜を形成する条件よりもチャンバー内の内圧を高めに、またターゲットと基材との距離を長めに設定する。
そしてこの設定下で、連続した膜が形成されないようにごく短時間ずつ、交互に、磁性体および電気絶縁材料のスパッタリングを繰り返すと、前記のように多数の磁性体粉末31と、その間を絶縁する無機の電気絶縁材料32の粉末とが交互に成長して、磁性体層3が形成される。
【0061】
また、このスパッタリング法において、磁性体のスパッタリングを1回のみとすると、前記と同様に多数の磁性体粉末31が層の厚み方向に重ならずに、面方向にのみ分布した構造を有する磁性体層3を形成することができる。
磁性体層3の厚みは特に限定されない。
しかし、電磁波吸収体層EMの全体としての厚みをできるだけ小さくすることを考慮すると、磁性体層3は、上記のように多数の磁性体粉末31が層の厚み方向に重ならずに、面方向にのみ分布した構造に形成するのが好ましく、その場合の磁性体層3の厚みは、層中に分散される磁性体粉末31の粒径より少し大きい程度とすることができる。より具体的には、磁性体粉末31の平均粒径が1〜150nmに限定されるため、電気絶縁被膜32aの厚み等を考慮しても、磁性体層3の厚みはおよそ250nm以下程度とすることが可能である。
【0062】
(電気絶縁層)
磁性体層3と交互に積層されて電磁波吸収体層EMを形成する電気絶縁層4は、金属の酸化物、または硬化性樹脂にて形成するのが好ましい。
このうち金属の酸化物としては、複合粉末において電気絶縁被膜32aを形成したのと同じ、Si、Al、TiおよびZrからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属の酸化物、具体的にはシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなどの他、上記4種のうち2種以上の金属の複合酸化物や、これらの酸化物、複合酸化物の2種以上の混合物等を挙げることができる。
【0063】
その形成方法としても、やはり生産性や製造コスト等の工業的な観点から、ゾルゲル法が好ましい。
ゾルゲル法においては、電気絶縁層4を形成する金属酸化物のもとになる金属のアルコキシドを加水分解してゾル液を生成し、このゾル液を、種々の塗布法によって塗布した後、加熱して脱水反応を進行させるとともに、水分の蒸発によって金属酸化物の生成を促進させることによって、所定の金属酸化物からなる電気絶縁層4を形成することができる。
【0064】
また硬化性樹脂としては、従来公知の種々の熱硬化性樹脂や、あるいは紫外線等の光の照射によって硬化する光硬化性樹脂等を挙げることができ、特に磁性体層3中での磁性体粉末31の分散状態等に影響を及ぼすおそれのある高温の加熱を伴わずに硬化できる光硬化性樹脂が好ましい。
光硬化性樹脂にて電気絶縁層4を形成するには、液状である光硬化性樹脂を、種々の塗布法によって塗布した後、紫外線等の光を照射して樹脂を硬化反応させればよい。
【0065】
電気絶縁層4の厚みは、前述したように上下の磁性体層3中の磁性体粉末31間を電気的に絶縁できる程度であればよく、特に1〜50nmであるのがさらに好ましい。
(電磁波吸収体層)
接着層2上に、以上で説明した磁性体層3と電気絶縁層4とを2層以上、交互に積層することで、電磁波吸収体層EMを形成することができる。
【0066】
磁性体層3と電気絶縁層4の形成順序は特に限定されないが、先に述べた電気絶縁層4の機能を考慮すると、当該電気絶縁層4は、上下の磁性体層3間に介在させるのが好ましい。したがって図1に示すように、接着層2上に、まず磁性体層3、次いで電気絶縁層4の順に交互に積層するのが好ましい。
両層の合計の積層数は、磁性体層3と電気絶縁層4とを1層ずつ積層した2層でもよいが、前述した積層構造の効果を発揮させるためには、磁性体層3を2層以上、積層するのが好ましい。また積層構造の最上層は、図1に示すように電気絶縁層4で覆って、外部から絶縁するのが好ましい。したがって接着層2上に、まず磁性体層3、次いで電気絶縁層4の順に交互に積層する場合の、全体の積層数は4層以上とするのが好ましい。
【0067】
積層数の上限は特に限定されない。積層すればするほど、電磁波吸収特性を向上できる。
しかし、あまりに積層数が多すぎると電磁波吸収体層EM、ひいてはプリント配線用基板の生産性が低下し、製造コストが増大するおそれがある。また積層数が多すぎると、層の内部応力が大きくなって、歪みや亀裂等を生じやすくなるおそれもある。さらに電磁波吸収体層EMの総厚みが大きくなって、省スペース等のメリットが得られなくなるおそれもある。
【0068】
したがって磁性体層3と電気絶縁層4の合計の積層数は、20層以下であるのが好ましく、16層以下であるのがさらに好ましい。
電磁波吸収体層EMは、基材1の、回路が形成される側と反対側の表面の一部または全面に形成したり、回路が形成される側の表面に設けた形成領域内に形成したりすることができる。また基材1の、回路を形成した表面上に絶縁層を介して、あるいは直接に、接着層2を形成した上に電磁波吸収体層EMを形成してもよい。
【0069】
さらには基材1の、電磁波吸収体層EMを形成した上にさらに別の基材を1層または2層以上、積層して多層基材としてもよい。その場合、電磁波吸収体層EMは、基材間の回路を接続するスルーホールを避けた形状に形成するのが好ましい。
かかる電磁波吸収体層EMを備えたプリント配線用基板は、先に述べたように、特にギガヘルツ以上の高周波数領域の電磁波に対するEMI対策用として有効に機能することができる。
【0070】
また、これも先に述べたように電磁波吸収体層EMの、2GHzまでの高周波数領域内の、機器類が使用する特定の周波数領域において、複素透磁率μの実数成分μ'と虚数成分μ"とがμ'>μ"の関係になるように調整すると、プリント配線用基板を、EMI対策用としてだけでなく、SAR対策用としても有効に機能させることが可能となる。
磁性体の物理現象として、例えば図3に示すように実数成分μ’は、周波数fが一定値f0以上になると、それ以上の高周波磁界に追従できずに低下を開始する。またそれに代わって、虚数成分μ"が急激に大きくなって、上記周波数f0の近傍の、周波数frの位置でピーク値を示す。この周波数frを磁気共鳴周波数という。
【0071】
かかる周波数f0、frは、前記磁性体層中に分散した磁性体粉末の異方性磁界Haを調整することによって変化させることができる。
すなわち磁性体の磁気共鳴周波数frと異方性磁界Haとは式:
fr=νHa/2π
〔式中νはジャイロ磁気定数、πは円周率である。〕
に示す関係にあり、異方性磁界Haを大きくすると、磁気共鳴周波数frを大きくすることができる。またそれに伴って周波数f0を大きくすることもできる。そしてそれによって、図中に示した破線に相当する、μ’=μ"となる周波数をも変化させることができる。つまり図上で、周波数f0、fr、および破線を、それぞれ横軸方向に移動させることができる。
【0072】
したがって周波数f0、frを調整することによって破線を移動させて、SAR対策の対象である、2GHzまでの高周波数領域内の、機器類が使用する特定の周波数領域が、破線の左側の、μ’>μ"の関係を示す範囲内(破線自体は含まない)に入るように調整してやると、電磁波吸収体を、上記特定周波数領域の高周波に対するSAR対策用として有効に機能させることが可能となる。
なお異方性磁界Haを変化させるためには、たとえば磁性体粉末31の組成や形状、結晶構造等を変化させたり、磁性体粉末31の作製工程における外部磁場の強さなどを調整したりすればよい。
【0073】
【実施例】
以下にこの発明を、実施例、比較例に基づいて説明する。なお、各実施例のうち実施例1〜7、9においては、磁性体層を形成するために、下記(i)〜(vi)のいずれかの複合粉末を使用した。
複合粉末(i)
(還元剤水溶液の調製)
四塩化チタンの20%塩酸酸性水溶液を作製した。四塩化チタンの量は、当該水溶液を次工程で陰極電解処理して得た還元剤水溶液を、次項で述べる反応液と所定の割合で混合するとともに、pH調整剤や、あるいは必要に応じてイオン交換水を加えて所定量の混合液を作製した際に、当該混合液の総量に対する、3価および4価のチタンイオンの、合計のモル濃度が0.2mol/Lとなるように設定した。液のpHは4であった。
【0074】
次にこの水溶液を、旭硝子(株)製の陰イオン交換膜で仕切った2槽式の電解槽の、片方の槽に注入した。また上記電解槽の、反対側の槽にはモル濃度0.1mol/Lの硫酸ナトリウム水溶液を入れた。
そしてそれぞれの液にカーボンフェルト電極を浸漬して、四塩化チタンの水溶液側を陰極、硫酸ナトリウム水溶液側を陽極として、3.5Vの直流電流を、定電圧制御で通電して水溶液を陰極電解処理することで、還元剤水溶液を調製した。
【0075】
陰極電解処理により、還元剤水溶液中の、4価のチタンイオンの約60%が3価に還元され、液のpHは1となった。
(反応液の調製)
塩化ニッケルと硫酸鉄とクエン酸三ナトリウムとをイオン交換水に溶解し、さらにポリビニルピロリドンを加えて反応液を調製した。各成分の量は、前述した混合液の総量に対するモル濃度が、塩化ニッケル:0.04mol/L、硫酸鉄:0.12mol/L、クエン酸三ナトリウム:0.3mol/Lとなるように調整した。またポリビニルピロリドンの量は、上記各成分中の金属(NiおよびFe)の総量に対して10体積%とした。
【0076】
(複合粉末の作製)
前記還元剤水溶液を反応槽に入れ、液温を50℃に維持しつつ、かく拌下、pH調整剤としての炭酸ナトリウムの飽和水溶液を加えて液のpHを5.2に調整するとともに、反応液を徐々に加えた後、さらに必要に応じてイオン交換水を加えて所定量の混合液を作製した。反応液およびイオン交換水は、あらかじめ50℃に暖めておいたものを用いた。
【0077】
そして混合液の液温を50℃に維持しながら数分間、かく拌を続けると沈殿が析出したので、かく拌を停止して沈殿を直ちにロ別、水洗した後、乾燥させて粉末を得た。
得られた粉末は、磁性体粉末の表面を、ポリビニルピロリドンからなる電気絶縁被膜によって被覆した複合構造を有していた。
このうち磁性体粉末の組成をICP発光分析法によって測定したところ、52Ni−48Fe合金であることが確認された。
【0078】
また磁性体粉末の平均粒径を、動的光散乱法による粒子径測定装置〔マルバーン社製の商品名マルバーンHPPS〕を用いて測定したところ60nmであった。
さらに電気絶縁被膜の被覆率を、比重の測定結果から求めたところ、約3体積%であった。
複合粉末(ii)
(反応液の調製)
塩化コバルトと硫酸鉄とクエン酸三ナトリウムとをイオン交換水に溶解し、さらにポリビニルピロリドンを加えて反応液を調製した。各成分の量は、前述した混合液の総量に対するモル濃度が、塩化コバルト:0.04mol/L、硫酸鉄:0.04mol/L、クエン酸三ナトリウム:0.18mol/Lとなるように調整した。またポリビニルピロリドンの量は、上記各成分中の金属(CoおよびFe)の総量に対して0.4体積%とした。
【0079】
(複合粉末の作製)
上記で調製した反応液を使用したこと以外は複合粉末(i)の作製と同条件で、粉末を得た。
得られた粉末は、磁性体粉末の表面を、ポリビニルピロリドンからなる電気絶縁被膜によって被覆した複合構造を有していた。
このうち磁性体粉末の組成をICP発光分析法によって測定したところ、52Co−48Fe合金であることが確認された。
【0080】
また磁性体粉末の平均粒径を、前出の粒子径測定装置〔マルバーン社製の商品名マルバーンHPPS〕を用いて測定したところ30nmであった。
さらに電気絶縁被膜の被覆率を、比重の測定結果から求めたところ、約1.0体積%であった。
複合粉末(iii)
(反応液の調製)
塩化コバルトと塩化ニッケルとクエン酸三ナトリウムとをイオン交換水に溶解して反応液を調製した。各成分の量は、前述した混合液の総量に対するモル濃度が、塩化コバルト:0.01mol/L、塩化ニッケル:0.03mol/L、クエン酸三ナトリウム:0.1mol/Lとなるように調整した。
【0081】
(磁性体粉末の作製)
上記で調製した反応液を使用したこと以外は複合粉末(i)の作製と同条件で、電気絶縁被膜によって被覆していない裸の磁性体粉末を作製した。
磁性体粉末の組成をICP発光分析法によって測定したところ、80Co−20Ni合金であることが確認された。
また磁性体粉末の平均粒径を、前出の粒子径測定装置〔マルバーン社製の商品名マルバーンHPPS〕を用いて測定したところ100nmであった。
【0082】
(複合粉末の作製)
イソプロピルアルコールに、テトラエチルオルソシリケートと、水と、硝酸とを加えた混合液を15分間、還流させることによって加水分解反応を進行させて、シリコンゾル液を生成した。各成分の量は、混合液の総量に対するモル濃度が、テトラエチルオルソシリケート:0.1mol/L、水:0.3mol/Lとなるように調整した。また硝酸の量は、混合液1リットルあたり数滴とした。
【0083】
次に、このシリコンゾル液に先の磁性体粉末を分散した後、スプレードライヤを用いて噴霧、乾燥させて粉末を得た。乾燥温度は160℃とした。
得られた粉末は、コバルト−ニッケル合金製の磁性体粉末の表面を、シリカからなる電気絶縁被膜によって被覆した複合構造を有していた。
電気絶縁被膜の被覆率を、比重の測定結果から求めたところ、約30体積%であった。
【0084】
複合粉末(iv)
気相法で製造された市販のマンガンフェライト粉末(平均粒径150nm)を磁性体粉末として、n−オクタデカンチオールで処理して粉末を得た。
得られた粉末は、マンガンフェライト粉末の表面を、n−オクタデカンチオールの単分子膜からなる電気絶縁被膜によって被覆した複合構造を有していた。
電気絶縁被膜の被覆率を、比重の測定結果から求めたところ、約20体積%であった。
【0085】
実施例1
〔基材〕
基材としては、厚み50μmのポリイミドシートの片側の表面を、酸素プラズマ処理(出力300W)したものを用意した。
〔接着層の形成〕
下記表1の各成分を混合し、相対湿度30%の大気雰囲気下で5時間、かく拌することによって大気中の水分により加水分解反応を進行させて、チタンゾル液を生成した。
【0086】
【表1】
【0087】
次にこのチタンゾル液に、酸素プラズマ処理した表面を露出し、反対面をマスキングした先のポリイミドシートを浸漬した後、0.5cm/分の速度で引き上げることによって、厚み約10nmのチタニアゾル処理膜を形成した。
そしてこのポリイミドシートを150℃の恒温槽中で2時間、加熱してチタニアゾル処理膜の脱水反応を進行させるとともに、水分の蒸発によってチタニア生成を促進させて、厚み10nmのチタニア製の接着層を形成した。
【0088】
〔磁性体層の形成〕
前記複合粉末(i)をパラキシレンに分散するとともに、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを加えて、磁性体層用の塗布液を調製した。ポリフッ化ビニリデンの添加量は、固形分の総量、すなわちポリフッ化ビニリデンと複合粉末(i)との総量に対して4重量%とした。
次にこの塗布液を、スプレーコート法によって、先のポリイミドシートの接着層の上に塗布(塗布厚み約100nm)した後、180℃の恒温槽中で2時間、加熱して乾燥、固着処理することによって、厚み100nmの磁性体層を形成した。磁性体層は、前述したように多数の磁性体粉末が層の厚み方向に重ならずに、面方向にのみ分布した構造を有していた。
【0089】
〔電気絶縁層の形成〕
前記複合粉末(iii)の製造で使用したのと同じシリコンゾル液に上記のポリイミドシートを浸漬した後、0.5cm/分の速度で引き上げることによって、磁性体層の上に、厚み約150nmのシリカゾル処理膜を形成した。
そしてこのポリイミドシートを150℃の恒温槽中で2時間、加熱してシリカゾル処理膜の脱水反応を進行させるとともに、水分の蒸発によってシリカ生成を促進させて、厚み70nmのシリカ製の電気絶縁層を形成した。
【0090】
〔プリント配線基板の製造〕
上記の、磁性体層の形成と電気絶縁層の形成とを交互に、それぞれ6回ずつ繰り返すことによって、基材としてのポリイミドシートの、酸素プラズマ処理した表面に、チタニア製の接着層を介して、12層の積層構造を有する電磁波吸収層が積層されたプリント配線基板を製造した。
実施例2
接着層を下記の工程によって形成したこと以外は実施例1と同様にして、基材としてのポリイミドシートの、酸素プラズマ処理した表面に、シリカチタニア製の接着層を介して、12層の積層構造を有する電磁波吸収層が積層されたプリント配線基板を製造した。
【0091】
〔接着層の形成〕
下記表2の各成分を混合し、相対湿度30%の大気雰囲気下で5時間、かく拌することによって大気中の水分により加水分解反応を進行させて、シリコンチタンゾル液を生成した。
【0092】
【表2】
【0093】
次にこのシリコンチタンゾル液に、酸素プラズマ処理した表面を露出し、反対面をマスキングしたポリイミドシートを浸漬した後、1cm/分の速度で引き上げることによって、その表面に、厚み約50nmのシリカチタニアゾル処理膜を形成した。
そしてこのポリイミドシートを150℃の恒温槽中で2時間、加熱して、シリカチタニアゾル処理膜の脱水反応を進行させるとともに、水分の蒸発によってシリカチタニア生成を促進させて、厚み50nmのシリカチタニア製の接着層を形成した。
【0094】
実施例3
基材として厚み500μmのガラスエポキシ基板を用いるとともに、その表面の酸素プラズマ処理を省略したこと以外は実施例1と同様にして、当該ガラスエポキシ基板の片側の表面に、チタニア製の接着層を介して、12層の積層構造を有する電磁波吸収層が積層されたプリント配線基板を製造した。
実施例4
電気絶縁層を下記の工程によって形成するとともに、磁性体層の形成と電気絶縁層の形成とを交互に、それぞれ4回ずつ繰り返したこと以外は実施例1と同様にして、基材としてのポリイミドシートの、酸素プラズマ処理した表面に、チタニア製の接着層を介して、8層の積層構造を有する電磁波吸収層が積層されたプリント配線基板を製造した。
【0095】
〔電気絶縁層の形成〕
粘度を0.02Pa・s以下に調整したアクリル系の紫外線硬化性樹脂液にポリイミドシートを浸漬した後、0.1cm/分の速度で引き上げることによって、磁性体層の上に、厚み約160nmの樹脂膜を形成した。
そしてこの樹脂膜に紫外線を照射して樹脂を硬化反応させることによって、厚み150nmの電気絶縁層を形成した。
【0096】
実施例5
磁性体層用の塗布液に、複合粉末(i)に代えて、同量の複合粉末(ii)を配合したこと以外は実施例1と同様にして、基材としてのポリイミドシートの、酸素プラズマ処理した表面に、チタニア製の接着層を介して、12層の積層構造を有する電磁波吸収層が積層されたプリント配線基板を製造した。
この場合も磁性体層は、多数の磁性体粉末が層の厚み方向に重ならずに、面方向にのみ分布した構造を有していた。またその厚みは400nmであった。
【0097】
実施例6
磁性体層用の塗布液に、複合粉末(i)に代えて、同量の複合粉末(iii)を配合したこと以外は実施例1と同様にして、基材としてのポリイミドシートの、酸素プラズマ処理した表面に、チタニア製の接着層を介して、12層の積層構造を有する電磁波吸収層が積層されたプリント配線基板を製造した。
この場合も磁性体層は、多数の磁性体粉末が層の厚み方向に重ならずに、面方向にのみ分布した構造を有していた。またその厚みは600nmであった。
【0098】
実施例7
磁性体層用の塗布液に、複合粉末(i)に代えて、同量の複合粉末(iv)を配合したこと以外は実施例1と同様にして、基材としてのポリイミドシートの、酸素プラズマ処理した表面に、チタニア製の接着層を介して、12層の積層構造を有する電磁波吸収層が積層されたプリント配線基板を製造した。
この場合も磁性体層は、多数の磁性体粉末が層の厚み方向に重ならずに、面方向にのみ分布した構造を有していた。またその厚みは800nmであった。
【0099】
実施例8
磁性体層を下記の工程によって形成するとともに、磁性体層の形成と電気絶縁層の形成とを交互に、それぞれ4回ずつ繰り返したこと以外は実施例1と同様にして、基材としてのポリイミドシートの、酸素プラズマ処理した表面に、チタニア製の接着層を介して、8層の積層構造を有する電磁波吸収層が積層されたプリント配線基板を製造した。
【0100】
〔磁性体層の形成〕
基材としてのポリイミドシートの、接着層を形成した表面に、RFマグネトロンスパッタリング法によって、1秒間隔で、フェライトとシリカとを交互に堆積させた。スパッタリングの条件は、アルゴンガス圧:0.133Pa、ターゲットから基板までの距離20cm以上とした。
そうすると接着層上に、連続した膜ではなく、平均粒径約5nmのフェライト粉末と、平均粒径約2nmのシリカ粉末とが均一に分散した状態の磁性体層が形成された。磁性体層の厚みは60nmであった。
【0101】
実施例9
磁性体層用の塗布液に、複合粉末(i)に代えて、同量の複合粉末(ii)を配合したこと以外は実施例3と同様にして、基材としてのポリイミドシートの、酸素プラズマ処理した表面に、チタニア製の接着層を介して、12層の積層構造を有する電磁波吸収層が積層されたプリント配線基板を製造した。
この場合も磁性体層は、多数の磁性体粉末が層の厚み方向に重ならずに、面方向にのみ分布した構造を有していた。またその厚みは400nmであった。
【0102】
比較例1
磁性体粉末として、50Ni−50Fe合金製の扁平状の粉末(市販されている厚み1μmの扁平粉末を、粒径200μmメッシュでふるいにかけたもの)50重量部を用意し、この粉末を、ポリ塩化ビニル樹脂50重量部と混合し、溶融混練した後シート状に成形して、厚み0.5mmのシートを作製した。
そしてこのシートを、実施例3で使用したのと同じ、厚み500μmのガラスエポキシ基板の片面に、接着剤を用いて接着してプリント配線基板を製造した。
【0103】
上記各実施例、比較例で製造したプリント配線基板の特性を、ネットワークアナライザを用いた同軸導波管法によって測定した。そして周波数(GHz)と透磁率μとの関係を示すグラフを作成し、このグラフから、透磁率μの実数成分μ'が低下を開始する周波数f0と、虚数成分μ"がピーク値を示す周波数f1とを求めるとともに、周波数1.5GHzにおける、両成分μ'、μ"の値を求めた。
結果を表3に示す。
【0104】
【表3】
【0105】
表より、実施例1〜9のプリント配線基板はいずれも、比較例1に比べて、周波数1.5GHzにおける透磁率μの虚数成分(磁気損失項)μ"の値が8以上と大きいことから、ギガヘルツ以上の高周波領域での電磁波吸収特性に優れており、かかる高周波領域でのEMI対策用として有効に機能できるものであることが確認された。
また実施例1〜9のプリント配線基板はいずれも、周波数1.5GHzにおける透磁率μの実数成分μ'が虚数成分μ"よりも大きいことから、かかる特定の周波数とその前後の周波数領域において、SAR対策用としても有効に機能できるものであることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のプリント配線用基板の、実施の形態の一例を示す拡大断面図である。
【図2】上記例のプリント配線用基板において磁性体層に含有させる、磁性体粉末を含む複合粉末の拡大断面図である。
【図3】磁性体における、周波数fと複素透磁率μとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 基材
2 接着層
3 磁性体層
31 磁性体粉末
32 電気絶縁材料
4 電気絶縁層
EM 電磁波吸収体層
Claims (10)
- 基材の表面に、金属酸化物からなる接着層を形成し、その上に、
(a) 平均粒径1〜150nmの磁性体粉末を多数、それぞれ個別に電気絶縁材料によって絶縁した状態で含有する磁性体層と、
(b) 電気絶縁層と、
を交互に積層して、2層以上の多層構造を有する電磁波吸収体層を形成したことを特徴とするプリント配線用基板。 - 磁性体粉末を、Fe、CoおよびNiからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属、またはその酸化物にて形成したことを特徴とする請求項1記載のプリント配線用基板。
- 磁性体粉末の表面を電気絶縁被膜で被覆した構造を有する複合粉末を形成し、この複合粉末を多数、結合して磁性体層を形成したことを特徴とする請求項1記載のプリント配線用基板。
- 電気絶縁被膜を、Si、Al、TiおよびZrからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属の酸化物、アミン誘導体、アルカンチオール誘導体、または樹脂にて形成したことを特徴とする請求項3記載のプリント配線用基板。
- 電気絶縁被膜の被覆率を、複合粉末の総量に対して10〜50体積%としたことを特徴とする請求項3記載のプリント配線用基板。
- 多数の複合粉末を、結着剤にて結着して磁性体層を形成したことを特徴とする請求項3記載のプリント配線用基板。
- 接着層を、少なくともTiを含む金属の酸化物にて形成したことを特徴とする請求項1記載のプリント配線用基板。
- 接着層の厚みを3〜150nmとしたことを特徴とする請求項1記載のプリント配線用基板。
- 電気絶縁層を、Si、Al、TiおよびZrからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属の酸化物、または硬化性樹脂にて形成したことを特徴とする請求項1記載のプリント配線用基板。
- 電磁波吸収体層における、複素透磁率μの実数成分μ'と虚数成分μ"とを、2GHzまでの高周波数領域内の、特定の周波数領域においてμ'>μ"としたことを特徴とする請求項1記載のプリント配線用基板。
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