JP2008172952A - 電圧変換装置および車両 - Google Patents
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Abstract
【課題】応答性が改善された電圧変換装置およびそれを搭載する車両を提供する。
【解決手段】DC/DCコンバータ30は、リアクトルLと、DC−CPU31とを備える。DC−CPU31は、リアクトルLを通過させる電流の平均値を指令する指令値に基づいて信号GATEBAのデューティー比を決定する。DC−CPU31は、指令値が第1の指令値から第2の指令値に変化する過渡時において、信号GATEBAのデューティー比を第1、第2の指令値にそれぞれ対応する第1、第2のデューティー比とは異なる第3のデューティー比に設定する。第1のデューティー比から第3のデューティー比への変化量は、第1のデューティー比から第2のデューティー比への変化量よりも大きい。
【選択図】図2
【解決手段】DC/DCコンバータ30は、リアクトルLと、DC−CPU31とを備える。DC−CPU31は、リアクトルLを通過させる電流の平均値を指令する指令値に基づいて信号GATEBAのデューティー比を決定する。DC−CPU31は、指令値が第1の指令値から第2の指令値に変化する過渡時において、信号GATEBAのデューティー比を第1、第2の指令値にそれぞれ対応する第1、第2のデューティー比とは異なる第3のデューティー比に設定する。第1のデューティー比から第3のデューティー比への変化量は、第1のデューティー比から第2のデューティー比への変化量よりも大きい。
【選択図】図2
Description
この発明は、電圧変換装置および車両に関し、特に2つの電圧系の間に設置され双方向に電流供給が可能な電圧変換装置およびそれを備える車両に関する。
特開2003−250276号公報(特許文献1)には、出力電流値、出力電圧値などから、リアクトル電流を推定し、推定したリアクトル電流のパターンに基づいてデッドタイムを補正するPWM(パルス幅変調)インバータが開示されている。
特開2003−250276号公報
特開平10−164850号公報
特開2006−115647号公報
特開平9−84385号公報
インバータや電圧コンバータでは、電圧指令値(目標電圧)と入力電圧の差に応じて内部素子の制御を行なうフィードフォワード制御と、電圧指令値と出力電圧の差に応じて内部素子の制御を行なうフィードバック制御とを組み合わせて用いる場合がある。フィードバック制御では、PID(比例積分微分)制御などが用いられる場合が多い。
近年、電気自動車、ハイブリッド自動車および燃料電池自動車等のように、車両推進用の駆動源として交流式モータを採用し、この交流式モータを駆動するインバータ装置を搭載する自動車が登場している。
このような車両では、車両推進用モータを駆動するための高電圧バッテリと低電圧の補機用バッテリなどの2つ以上の異なる電圧のバッテリを搭載するケースがある。
また、燃料電池を搭載する自動車では、稼動開始から安定出力にいたるまで燃料電池の出力電圧が変動する。このため駆動用の電力を安定的に確保するには燃料電池と二次電池とを組み合わせ、電圧変換器で接続して使用することが検討されている。
車両状態に応じて燃料電池の出力電圧も二次電池の出力電圧も変動するので、この間に接続される電圧変換器は、車両に必要とされるパワーに応じて、二次電池側から燃料電池側に電流を供給したり、逆に燃料電池側から二次電池に充電したりする動作を行なう。
このため、車両の加速、道路の傾斜等に応じて必要な電圧を速やかに出力できる応答性の良い電圧変換器が要求される。
しかしながら、リアクトルを含むインバータや電圧コンバータにおいて、リアクトル電流が複数の状態間を遷移するとき、固定ゲインのPID制御では応答性が悪く、電圧指令値が変化する過渡時における電圧誤差が生じてしまう。
この発明の目的は、応答性が改善された電圧変換装置およびそれを搭載する車両を提供することである。
この発明は、要約すると、電圧変換装置であって、リアクトルと、第1、第2の電流通過部と、制御部とを備える。第1の電流通過部は、第1の活性化信号に応じて導通する第1のスイッチング素子を少なくとも含み、リアクトルの一方端と第1の電源ノードとの間に設けられる。第2の電流通過部は、第1の電源ノードとは電位の異なる第2の電源ノードとリアクトルの一方端との間に設けられ、少なくとも第1の整流素子を含む。制御部は、リアクトルを通過させる電流の平均値を指令する指令値に基づいて第1の活性化信号のデューティー比を決定する。制御部は、指令値が第1の指令値から第2の指令値に変化する過渡時において、第1の活性化信号のデューティー比を第1、第2の指令値にそれぞれ対応する第1、第2のデューティー比とは異なる第3のデューティー比に設定する。第1のデューティー比から第3のデューティー比への変化量は、第1のデューティー比から第2のデューティー比への変化量よりも大きい。
好ましくは、制御部は、第1の指令値から第2の指令値の変化量がしきい値を超えた場合に、第2の指令値に対応するデューティー比に所定値を乗じて第3のデューティー比を算出する。
好ましくは、制御部は、第1の活性化信号のデューティー比を決定するために指令値と出力電圧値との偏差に基づいてフィードバック制御を行っており、第1の指令値から第2の指令値への変化を検出するとフィードバック制御のフィードバックゲインを増加させる。
好ましくは、制御部は、第1の活性化信号のデューティー比を決定するために指令値と出力電圧値との偏差に基づいてフィードバック制御を行っており、かつその偏差に応じてフィードバック制御のフィードバックゲインを変化させる。
好ましくは、第1の指令値から第2の指令値への変化は、増加方向の変化であり、第2のデューティー比は第1のデューティー比よりも大きく、第3のデューティー比は、第2のデューティー比よりもさらに大きい。
好ましくは、第1の指令値から第2の指令値への変化は、減少方向の変化であり、第2のデューティー比は第1のデューティー比よりも小さく、第3のデューティー比は、第2のデューティー比よりもさらに小さい。
好ましくは、第1の電流通過部は、第1のスイッチング素子と並列にリアクトルの一方端と第1の電源ノードとの間に設けられる第2の整流素子をさらに含む。第2の電流通過部は、第1の整流素子と並列にリアクトルの一方端と第2の電源ノードとの間に設けられる第2のスイッチング素子をさらに含む。
好ましくは、電圧変換装置は、リアクトルの他方端と第3の電源ノードとの間に設けられる第3の電流通過部と、第2の電源ノードとリアクトルの他方端との間に設けられる第4の電流通過部とをさらに備える。第3、第4の電流通過部のいずれか一方は、少なくとも制御部に制御される第2のスイッチング素子を含む。第3、第4の電流通過部のいずれか他方は、少なくとも第2の整流素子を含む。電圧変換装置は、第1の電源ノードと第3の電源ノードとの間で電圧変換を行なう。
より好ましくは、第3の電源ノードと第2の電源ノードとの間には、モータ駆動用のインバータが接続され、第1の電源ノードと第2の電源ノードとの間には、蓄電装置が接続される。
さらに好ましくは、第3の電源ノードには、さらに整流素子を介して燃料電池が接続される。
この発明は、他の局面においては、上記いずれかの電圧変換装置を搭載する車両である。
本発明によれば、電圧変換装置の応答性が改善される。またこれにより、車両の走行性能が向上する。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
[車両の全体構成]
図1は、本発明の実施の形態に係る電圧変換器を搭載した車両の構成を示す説明図である。一例として、車両が燃料電池自動車である例が示されるが、これに限らず、電気自動車、ハイブリッド自動車にも本発明は適用可能である。
図1は、本発明の実施の形態に係る電圧変換器を搭載した車両の構成を示す説明図である。一例として、車両が燃料電池自動車である例が示されるが、これに限らず、電気自動車、ハイブリッド自動車にも本発明は適用可能である。
図1を参照して、この車両は、車輪63L,63Rに連結された同期モータ61を駆動力源として走行する。同期モータ61の電源は、電源システム1である。電源システム1から出力される直流は、インバータ60で三相交流に変換され同期モータ61に供給される。同期モータ61は、制動時に発電機として機能することもできる。
電源システム1は、燃料電池40、バッテリ20、DC/DCコンバータ30等から構成される。燃料電池40は、水素と酸素の電気化学反応によって発電する装置である。一例としては、固体高分子型の燃料電池を用いることができる。これに限らず、燃料電池40には、燐酸型、溶融炭酸塩型など種々のタイプの燃料電池を適用可能である。発電に利用される水素ガスは、アルコール等の原料を改質して生成される。本実施の形態では、発電を行なうスタック、燃料ガスを生成する改質器等を含めて燃料電池40と称する。なお、改質器に代えて、水素吸蔵合金、水素ボンベなどを利用して水素ガス自体を貯蔵する構成を採ることも可能である。
バッテリ20は、充放電可能な二次電池であり、一例としては、ニッケル水素バッテリを用いることができる。その他、種々のタイプの二次電池を適用可能である。また、バッテリ20に代えて、二次電池以外の充放電可能な蓄電器、例えば電気二重層コンデンサ等の蓄電容量が大きなものを内蔵するキャパシタを用いても良い。
燃料電池40とバッテリ20とはインバータ60に並列接続されている。燃料電池40からインバータ60への回路には、バッテリ20からの電流または同期モータ61で発電された電流が逆流するのを防止するためのダイオード42が設けられている。並列に接続された電源の電力を適切に使い分けるためには、両者の相対的な電圧差を制御する必要がある。本実施の形態では、この目的から、バッテリ20とインバータ60との間にDC/DCコンバータ30が設けられている。DC/DCコンバータ30は直流電圧同士を変換する電圧変換器である。DC/DCコンバータ30は、バッテリ20から入力されたDC電圧を調整してインバータ60側に出力する機能、燃料電池40またはモータ61から入力されたDC電圧を調整してバッテリ20に出力する機能を奏する。DC/DCコンバータ30の機能により、バッテリ20の充放電が実現される。
バッテリ20とDC/DCコンバータ30との間には、車両補機50およびFC補機51が接続されている。つまり、バッテリ20は、これらの補機の電源となる。車両補機50とは、車両の運転時に使用される種々の電力機器を言い、照明機器、空調機器、油圧ポンプなどが含まれる。FC補機51とは、燃料電池40の運転に使用される種々の電力機器を言い、燃料ガスや改質原料を供給するためのポンプ、改質器の温度を調整するヒータ等が含まれる。
上述した各要素の運転は、制御ユニット10によって制御される。制御ユニット10は、内部にCPU、RAM、ROMを備えたマイクロコンピュータとして構成されている。制御ユニット10は、インバータ60のスイッチングを制御して、要求動力に応じた三相交流を同期モータ61に出力する。要求動力に応じた電力が供給されるよう、燃料電池40およびDC/DCコンバータ30の運転を制御する。
これらの制御を実現するために、制御ユニット10には、種々のセンサ信号が入力される。これらのセンサには、例えば、アクセルペダルセンサ11、バッテリ20の充電状態SOC(State Of Charge)を検出するSOCセンサ21、燃料電池40のガス流量を検出する流量センサ41、車速を検出する車速センサ62が含まれる。図示しないが、制御ユニット10には、その他種々のセンサが接続されている。
図2は、図1のDC/DCコンバータ30について詳細な構成を示した回路図である。なお、動作の理解の容易のために、図2にはDC/DCコンバータ30の周辺部についても一部構成が示されている。
図2を参照して、この車両には、バッテリ20と、バッテリ20の端子間に接続される平滑用コンデンサ6と、インバータ60と、インバータ60によって駆動されるモータ61と、インバータに直流電圧を供給する直列に接続されるダイオード42および燃料電池40と、インバータの電源端子間に接続される平滑用コンデンサ14とが設けられる。ダイオード42は、燃料電池40に電流が流入するのを防止するための保護素子である。
この車両には、さらに、バッテリ20の電圧VBを検出する電圧センサ22と、バッテリ20に流れる電流IBを検出する電流センサ23と、インバータの電圧VINVを検出する電圧センサ44と、インバータ側に流れる電流IINVを検出する電流センサ43と、バッテリの電圧VBとインバータの電圧VINVとの間で相互に電圧変換を行なうDC/DCコンバータ30とが搭載されている。
DC/DCコンバータ30は、バッテリ20の端子間に接続される第1のアームと、インバータ60の電源端子間に接続される第2のアームと、第1、第2のアーム間に接続されるリアクトルLとを含む。
第1のアームは、バッテリ20の正極と負極との間に直列に接続されるIGBT素子TR1,TR2と、IGBT素子TR1と並列に接続されるダイオードD1と、IGBT素子TR2と並列に接続されるダイオードD2とを含む。
IGBT素子TR1のコレクタはバッテリ20の正極に接続され、エミッタはノードN1に接続される。ダイオードD1はノードN1からバッテリ20の正極に向かう向きを順方向として接続される。
IGBT素子TR2のコレクタはノードN1に接続され、エミッタはバッテリ20の負極に接続される。ダイオードD2はバッテリ20の負極からノードN1に向かう向きを順方向として接続される。
第2のアームは、インバータの正負電源端子間に直列に接続されるIGBT素子TR3,TR4と、IGBT素子TR3と並列に接続されるダイオードD3と、IGBT素子TR4と並列に接続されるダイオードD4とを含む。
IGBT素子TR3のコレクタはインバータ60の正電源端子に接続され、エミッタはノードN2に接続される。ダイオードD3はノードN2からインバータ60の正電源端子に向かう向きを順方向として接続される。
IGBT素子TR4のコレクタはノードN2に接続され、エミッタはインバータ60の負電源端子に接続される。ダイオードD4はインバータ60の負電源端子からノードN2に向かう向きを順方向として接続される。
リアクトルLは、ノードN1とノードN2との間に接続される。
バッテリ20の電圧VBと燃料電池40の出力電圧とは、取り得る範囲が一部重なっている。たとえばバッテリはニッケル水素バッテリなどが使用され、その電源電圧はたとえば200V〜300Vの範囲で変動するとする。一方、燃料電池40の出力電圧はたとえば240V〜400Vの範囲で変動するとする。したがってバッテリ20の電圧が燃料電池40の出力電圧よりも高い場合と低い場合とがあるので、DC/DCコンバータ30は先に説明したように第1、第2のアームを有するような構成となっている。この構成により、バッテリ20側からインバータ60側に昇圧および降圧が可能となり、かつインバータ60側からバッテリ20側に昇圧および降圧が可能となる。
バッテリ20の電圧VBと燃料電池40の出力電圧とは、取り得る範囲が一部重なっている。たとえばバッテリはニッケル水素バッテリなどが使用され、その電源電圧はたとえば200V〜300Vの範囲で変動するとする。一方、燃料電池40の出力電圧はたとえば240V〜400Vの範囲で変動するとする。したがってバッテリ20の電圧が燃料電池40の出力電圧よりも高い場合と低い場合とがあるので、DC/DCコンバータ30は先に説明したように第1、第2のアームを有するような構成となっている。この構成により、バッテリ20側からインバータ60側に昇圧および降圧が可能となり、かつインバータ60側からバッテリ20側に昇圧および降圧が可能となる。
DC/DCコンバータ30は、さらに、DC−CPU31と、バッファ32と、反転バッファ34,35,36,38,39と、デッドタイム生成部33,37と、リアクトルLの電流値ILを検知する電流センサSEとを含む。
DC−CPU31は、電圧指令値Vfcrおよび電流値ILに応じてコンバータのスイッチングデューティー比の基準となる信号GATEBAを出力する。信号GATEBAは、バッファ32によってデッドタイム生成部33に伝達される。デッドタイム生成部33は、出力信号の立ち上がりを遅延させて、相補な2つの出力信号の活性期間の間に2つの出力信号が双方とも不活性となるデッドタイムを設ける。
デッドタイム生成部33の相補な出力信号は、それぞれ反転バッファ34,35に与えられる。反転バッファ34はIGBT素子TR1に対してゲート信号MUPを出力する。反転バッファ35はIGBT素子TR1に対してゲート信号MDNを出力する。
また、信号GATEBAは、反転バッファ36によってデッドタイム生成部37に伝達される。デッドタイム生成部37は、入力信号の立ち上がり又は立下りを遅延させて、相補な2つの出力信号の活性期間の間に、2つの出力信号が双方とも不活性となるデッドタイムを設ける。
デッドタイム生成部37の相補な出力信号は、それぞれ反転バッファ38,39に与えられる。反転バッファ38はIGBT素子TR3に対してゲート信号GUPを出力する。反転バッファ39はIGBT素子TR4に対してゲート信号GUNを出力する。
図3は、スイッチング素子のデューティー比が50%より小さい場合のリアクトルに流れる電流の変化を説明するための図である。
図4は、スイッチング素子のデューティー比が50%より大きい場合のリアクトルに流れる電流の変化を説明するための図である。
ここで、デューティー比とは、スイッチング素子のオン時間をTon、オフ時間をToffとするとD=Ton/(Ton+Toff)で表される。
また、リアクトル電流の傾きはΔI/Δt=V/Lで決まるが、図3、図4では理解の容易のためコンバータの入口側と出口側の電圧が等しい場合について、リアクトル電流ILを示している。
図3に示すようにIL基準パルスのデューティー比D<50%の場合には、次第にリアクトル電流ILが減少していく。逆に図4に示すようにIL基準パルスのデューティー比D>50%の場合には、次第にリアクトル電流ILが増加していく。
図2のバッテリ20からの放電時には、IGBT素子TR1,TR4がオン状態に制御されることによってリアクトルLにエネルギが蓄積される。続いてIGBT素子TR1,TR4がともにオフ状態に制御されるとリアクトルLに蓄積されたエネルギがダイオードD2→リアクトルL→ダイオードD3の電流経路で放出される。
これによりバッテリ20から供給される電力によってインバータ60が駆動されモータ61が回転する。このときに同期して、ダイオードD2、D3における損失を減らすために、IGBT素子TR2,TR3を導通させて抵抗を減らしている。ただし、IGBT素子はスイッチング時にターンオフ遅れが生ずるので、ゲート制御信号にデッドタイムが設けられている。
図2のDC−CPU31がPWM制御して発生する基準信号GATEBAに対して、IGBT素子のゲートを駆動するドライブ信号を作成する際に、素子のオン指令を遅らせるなどの構成を追加することで上下アームの短絡の危険性を回避している。この短絡防止のために設ける、上下アームのIGBT素子の両方がオフとなる期間をデッドタイムと呼んでいる。
図示しないが、モータ61には車輪が減速機を介して接続されている。このようなバッテリ20からの放電は、燃料電池40からの電力だけでは必要なパワーに満たないような高パワー領域でモータ61を運転させる場合や、停車時や低負荷走行時など燃料電池40の効率が低い領域での運転を行なう場合に行なわれる。
図2のバッテリ20への充電時には、IGBT素子TR2,TR3がオン状態に制御されることによってリアクトルLにエネルギが蓄積される。続いてIGBT素子TR2,TR3がともにオフ状態に制御されるとリアクトルLに蓄積されたエネルギがダイオードD4→リアクトルL→ダイオードD1の電流経路で放出される。
このようにバッテリ20に対して充電が行なわれるのは、バッテリ20の充電状態(SOC)が低下している場合で燃料電池40の出力に余裕がある場合である。または、走行時に車両を制動させた場合においてモータ61が回生運転を行なうことにより電気エネルギを回収してバッテリ20に蓄積する場合である。
この動作により、燃料電池40で発電された直流電力が供給され、または回生運転によりモータ61で発電された交流電力がインバータ60で直流電力に変換されて供給されてバッテリ20に対する充電が行なわれる。
バッテリ20への充電時にも、上下アームの短絡を防止するためにデッドタイムが設けられている。
図5は、リアクトル電流が3状態に分類されることを説明するための波形図である。
図5を参照して、状態Aは、スイッチングの1サイクルにおいてリアクトル電流ILが常に負(マイナス)である状態である。このときリアクトル電流の向きは、図2においてリアクトル電流ILの矢印で示した向きを正とする。つまり、状態Aは、バッテリ20に燃料電池40またはインバータ60から充電が行なわれている状態である。
図5を参照して、状態Aは、スイッチングの1サイクルにおいてリアクトル電流ILが常に負(マイナス)である状態である。このときリアクトル電流の向きは、図2においてリアクトル電流ILの矢印で示した向きを正とする。つまり、状態Aは、バッテリ20に燃料電池40またはインバータ60から充電が行なわれている状態である。
状態Cは、スイッチングの1サイクルにおいてリアクトル電流ILが常に正(プラス)である状態である。つまり、状態Cは、バッテリ20からインバータ60に放電が行なわれている状態である。
状態Bは、スイッチングの1サイクルにおいてリアクトル電流ILの最大値Imaxが正で、最小値Iminが負である状態であり、リアクトル電流がゼロを横切って変化する(ゼロクロス)状態である。つまり状態Bは、バッテリ20に充電される電流とバッテリ20から放電される電流とがほぼ拮抗している状態である。
図6は、図5の状態Aにおける基準信号GATEBAとリアクトル電流の変化との関係を示した動作波形図である。
図2、図6を参照して、DC−CPU31から出力された基準信号GATEBAは、デッドタイム生成部33,37によってデッドタイムが付加された結果、IGBT素子TR1〜TR4を図6の波形図に示すようにON・OFFさせる。
すなわち、時刻t1の基準信号GATEBAの立下りに応じてIGBT素子TR1,TR4がオン状態からオフ状態に非活性化され、デッドタイムTdt1が経過した後の時刻t3においてIGBT素子TR2,TR3がオフ状態からオン状態に活性化される。
続いて、時刻t4の基準信号GATEBAの立上りに応じてIGBT素子TR2,TR3がオン状態からオフ状態に非活性化され、デッドタイムTdt2が経過した後の時刻t6においてIGBT素子TR1,TR4がオフ状態からオン状態に活性化される。
ここで、IGBT素子TR1〜TR4には、それぞれダイオードD1〜D4が並列接続されている。したがって、デッドタイムにおいてもダイオードの順方向には電流が流れうる。
状態Aにおいては、リアクトル電流ILが負すなわち図2のノードN2からノードN1に向けて流れている。したがってIGBT素子TR1〜TR4がすべてオフ状態であるデッドタイム時には、ダイオードD1、D4が導通する。
つまり時刻t6〜t7のIGBT素子TR1,TR4が導通している時間にデッドタイムTdt1,Tdt2を加えた時間、つまり時刻t4〜t9の間は1サイクルにおいてリアクトル電流ILが増加し、1サイクル中リアクトル電流が減少する時間は時刻t3〜t4のIGBT素子TR2,TR3が導通している時間のみとなる。
したがって、仮に、基準信号GATEBAのデューティー比が50%であるとすると、状態Aでは、次第にリアクトル電流ILが増加していく傾向となる。
図7は、図5の状態Cにおける基準信号GATEBAとリアクトル電流の変化との関係を示した動作波形図である。
図7の基準信号GATABAとIGBT素子TR1〜TR4のオン/オフ状態については、図6の場合と同様であるので説明は繰返さない。
図2、図7を参照して、状態Cにおいては、リアクトル電流ILが正すなわち図2のノードN1からノードN2に向けて流れている。したがってIGBT素子TR1〜TR4がすべてオフ状態であるデッドタイム時には、ダイオードD2、D3が導通する。
つまり時刻t3〜t4のIGBT素子TR2,TR3が導通している時間にデッドタイムTdt1,Tdt2を加えた時間、つまり時刻t1〜t6の間は1サイクルにおいてリアクトル電流ILが減少し、1サイクル中リアクトル電流が増加する時間は時刻t6〜t7のIGBT素子TR1,TR4が導通している時間のみとなる。
したがって、仮に、基準信号GATEBAのデューティー比が50%であるとすると、状態Cでは、次第にリアクトル電流ILが減少していく傾向となる。
図8は、図5の状態Bにおける基準信号GATEBAとリアクトル電流の変化との関係を示した動作波形図である。
図8の基準信号GATABAとIGBT素子TR1〜TR4のオン/オフ状態については、図6の場合と同様であるので説明は繰返さない。
図2、図8を参照して、状態Bにおいては、リアクトル電流ILが正すなわち図2のノードN1からノードN2に向けて流れている期間と、リアクトル電流ILが負すなわち図2のノードN2からノードN1に向けて流れている期間とが繰返される。
この場合は、時刻t3〜t4のIGBT素子TR2,TR3が導通している時間にデッドタイムTdt1を加えた時間、つまり時刻t1〜t4の間は1サイクルにおいてリアクトル電流ILが減少し、時刻t6〜t7のIGBT素子TR1,TR4が導通している時間にデッドタイムTdt2を加えた時間、つまり時刻t4〜t7の間は1サイクルにおいてリアクトル電流ILが増加する。
したがって、仮に、基準信号GATEBAのデューティー比が50%であるとすると、デッドタイムTdt1,Tdt2が等しければ、状態Bでは、リアクトル電流ILは現状を維持する傾向となる。
以上図6〜図8で説明したように、基準信号GATEBAのデューティー比と実際にリアクトルで電流の増加減少が行なわれるデューティーとはリアクトルの電流状態で異なる。
したがって、精度よく制御を行なうためにはリアクトルの電流状態に応じて、基準信号GATEBAのデューティー比を補正してやる必要がある。
つまり、状態Aでは目標よりも基準信号GATEBAのデューティー比を小さく補正する必要があり、状態Cでは目標よりも基準信号GATEBAのデューティー比を大きく補正する必要がある。
[実施の形態1]
図9は、図2におけるDC−CPU31の構成を示したブロック図である。
図9は、図2におけるDC−CPU31の構成を示したブロック図である。
図9を参照して、DC−CPU31は、指令電圧値Vfcrとインバータ電圧値VINVとの偏差ΔVfcを演算する演算部72と、偏差ΔVfcの微分処理を行なう処理部74と、処理部74の出力に微分項ゲインKdVを掛ける演算部76と、偏差ΔVfcの積分処理を行なう処理部80と、処理部80の出力に積分項ゲインKiVを掛ける演算部82と、偏差ΔVfcに比例項KpVを掛ける演算部78と、演算部76,78,82の出力の和を演算する演算部84とを含む。演算部84は和信号Vfcを出力する。
DC−CPU31は、さらに、偏差ΔVfcに対応するゲインKdV,KpV,KiVをマップとして記憶しているマップ記憶部73をさらに含む。マップ記憶部73は、偏差ΔVfcが与えられると、マップから対応するゲインKdV,KpV,KiVを読み出してそれぞれ演算部76,78,82に設定する。
DC−CPU31は、さらに、指令電圧値Vfcrとバッテリ電圧値VBとを受けてVfcr/(VB+Vfcr)を演算してこれを電圧値Vfcreqとして出力するフィードフォワード処理部86と、電圧指令値Vfcrが前回の指令値から大きく変化したときにデューティー比の補正を行なうデューティー補正部87と、デューティー補正部87の出力と電圧値Vfcとを加算して電圧値V1を出力する加算処理部88と、電圧値V1を受けて基準信号GATABAを出力するPWM処理部92とを含む。
PWM処理部92は、加算処理部88で加算された結果の電圧値V1に対応するスイッチング基準タイミングを示す信号GATEBAを図2のバッファ32および反転バッファ36に出力する。
図10は、DC−CPU31のデューティー補正部87で行なわれる処理構造を示したフローチャートである。この処理は、制御のメインルーチンから所定時間毎または所定の条件が成立する毎に呼び出されて実行される。
図10を参照して、まず処理が開始されると、ステップS1において、電圧指令値Vfcrと前回の電圧指令値Vfcr_oldの差の絶対値、すなわち変化量がしきい値Vfcr_thより大きいか否かが判断される。
この変化量がしきい値Vfcr_th以下であれば、処理はステップS5に進み、デューティー補正部87はフィードフォワード処理部86の出力を補正せずに加算処理部88に出力する。したがって、デューティー補正部87によるデューティーの補正は行なわれず、ステップS6に処理が進み制御はメインルーチンに移される。
ステップS1において、電圧指令値の変化量がしきい値Vfcr_thより大きかった場合には、ステップS2に処理が進む。ステップS2は電圧指令値Vfcrが増加したのか否かが判断される。つまりVfcr−Vfcr_old>0であるか否かが判断される。
ステップS2において、電圧指令値Vfcrが前回値よりも増加していた場合にはステップS3に処理が進む。ステップS3では、デューティー比がA倍(A>1)に補正されるようにデューティー補正部87が出力を変更する。すなわちステップS3ではデューティー比を増加させる処理が行なわれる。
一方ステップS2において、電圧指令値Vfcrが前回値よりも増加していなかった場合には、ステップS4に処理が進む。この場合は、電圧指令値Vfcrが前回値よりも減少していた場合である。ステップS4では、デューティー比がB倍(0<B<1)に補正されるようにデューティー補正部87が出力を変更する。すなわちステップS4ではデューティー比を減少させる処理が行なわれる。
ステップS3またはステップS4の処理が終了するとステップS6において制御がメインルーチンに移される。
図11は、DC−CPU31のマップ記憶部73で行なわれる処理構造を示したフローチャートである。この処理は、制御のメインルーチンから所定時間毎または所定の条件が成立する毎に呼び出されて実行される。
図11を参照して、まず処理が開始されると、ステップS11において、差分ΔVfcに応じた比例ゲインKpVを比例ゲインマップから読出して、演算部78に設定する処理が実行される。
続いて、ステップS12において、差分ΔVfcに応じた積分ゲインKiVを積分ゲインマップから読出して、演算部78に設定する処理が実行される。
続いて、ステップS13において、差分ΔVfcに応じた微分ゲインKdVを微分ゲインマップから読出して、演算部78に設定する処理が実行される。
ステップS13の処理が終了すると、ステップS14において制御はメインルーチンに移される。
図12は、マップ記憶部73が記憶しているマップの一例を示した図である。
図12を参照して、横軸が電圧偏差ΔVfcであり、縦軸が比例ゲインKpV,積分ゲインKiV,微分ゲインKdVのいずれかを示す。
図12を参照して、横軸が電圧偏差ΔVfcであり、縦軸が比例ゲインKpV,積分ゲインKiV,微分ゲインKdVのいずれかを示す。
電圧偏差が0〜aの場合はゲインがcであり、電圧偏差がa〜bの間はゲインがc〜dまで直線的に増加する。電圧偏差がb以上の場合はゲインがdである。電圧偏差が負の場合は、電圧偏差がゼロの縦軸に対して左右対称になるようにゲインが規定されている。
このようなマップが比例ゲインKpV,積分ゲインKiV,微分ゲインKdVのいずれにも規定されている。偏差の絶対値が拡大すればゲインも拡大するので、出力が目標値に早く近づくようになる。
図13は、電圧指令値が増加した場合の指令デューティーの変化を説明するための動作波形図である。
図13を参照して、時刻t1〜t2においては、電圧指令値VfcrはVfcr1であり指令デューティー比が50%に設定されている。これに対応するように、IL基準パルスがPWM処理部92で発生される。IL基準パルスに基づきIGBT素子がスイッチングされた結果、リアクトル電流ILは平均電流P1付近で増加減少を繰返す。
時刻t2において、電圧指令値VfcrがVfcr1からVfcr2まで増加する。この変化では、電圧指令値の変化量は、図10に記載されているしきい値Vfcr_thを超える変化量となる。すると、図9のデューティー補正部87はデューティー比を増加させる補正を行なう。また、指令値Vfcrが大きく変化すれば、偏差ΔVfcの絶対値も大きくなるので、図9のマップ記憶部73によってフィードバックゲインKdV,KpV,KiVも増大される。
したがって、過渡時において、指令デューティー比は、変化前から最終安定時までの変化量よりも大きく変化する。つまり、時刻t2〜t3の過渡時において、指令デューティー比は50%から一旦70%まで増加する。そしてリアクトル電流が目標値P2付近に到達すると、図9のデューティー補正部87による補正やマップ記憶部73によるゲインの増大は行なわれないようになり、指令デューティー比が指令電圧値Vfcr2に対応する値である60%となるように制御が行なわれる。
図14は、電圧指令値が減少した場合の指令デューティーの変化を説明するための動作波形図である。
図14を参照して、時刻t1〜t2においては、電圧指令値VfcrはVfcr2であり指令デューティー比が60%に設定されている。これに対応するように、IL基準パルスがPWM処理部92で発生される。IL基準パルスに基づきIGBT素子がスイッチングされた結果、リアクトル電流ILは平均電流P2付近で増加減少を繰返す。
時刻t2において、電圧指令値VfcrがVfcr2からVfcr1まで減少する。この変化では、電圧指令値の変化量は、図10に記載されているしきい値Vfcr_thを超える変化量となる。すると、図9のデューティー補正部87はデューティー比を減少させる補正を行なう。また、指令値Vfcrが大きく変化すれば、偏差ΔVfcの絶対値も大きくなるので、図9のマップ記憶部73によってフィードバックゲインKdV,KpV,KiVも増大される。
したがって、過渡時において、指令デューティー比は、変化前から最終安定時までの変化量よりも大きく変化する。つまり、時刻t2〜t3の過渡時において、指令デューティー比は60%から一旦40%まで減少する。そしてリアクトル電流が目標値P1付近に到達すると、図9のデューティー補正部87による補正やマップ記憶部73によるゲインの増大は行なわれないようになり、指令デューティー比が指令電圧値Vfcr1に対応する値である50%となるように制御が行なわれる。
このように、実施の形態1によれば、コンバータの通過パワーが急に増加または減少し、リアクトル電流の平均値も上昇または下降するような過渡時には、変化後の安定時におけるデューティー比に至るよりもデューティー比を一旦大きく変化させ、リアクトルの直流変化分の変化を促進させる。したがって、電圧指令値に対する追従性が向上した電圧変換装置を実現することができる。
なお、実施の形態1においては、図9においてマップ記憶部73でフィードバックゲインを可変とし、デューティー補正部87で指令値が急変したときに指令値に早く到達するようにフィードフォワード項を補正した。しかし、両方の処理を行なわなくてもよく、いずれか一方の処理を行なうだけでも応答性は改善される。
[実施の形態2]
実施の形態2では、DC−CPU31に代えてDC−CPU31Aを含む。
実施の形態2では、DC−CPU31に代えてDC−CPU31Aを含む。
図15は、実施の形態2において図2におけるDC−CPU31に代えて用いられるDC−CPU31Aの構成を示したブロック図である。
図13を参照して、DC−CPU31Aは、指令電圧値Vfcrとインバータ電圧値VINVとの偏差ΔVfcを演算する演算部72と、偏差ΔVfcの微分処理を行なう処理部74と、処理部74の出力に微分項ゲインKdVを掛ける演算部76と、偏差ΔVfcの積分処理を行なう処理部80Aと、処理部80Aの出力に積分項ゲインKiVを掛ける演算部82と、偏差ΔVfcに比例項KpVを掛ける演算部78と、演算部76,78,82の出力の和を演算する演算部84とを含む。演算部84は和信号Vfcを出力する。
DC−CPU31Aは、さらに、判定された状態に対応する積分項が予め記憶されている積分項記憶部81を含む。積分項記憶部81は、リアクトル電流値ILの状態を判定し、対応する積分項を処理部80Aに設定する。
DC−CPU31Aは、さらに、指令電圧値Vfcrとバッテリ電圧値VBとを受けてVfcr/(VB+Vfcr)を演算してこれを電圧値Vfcreqとして出力するフィードフォワード処理部86と、電圧値Vfcと電圧値Vfcreqとを加算して電圧値V1Aを出力する加算処理部88と、電圧値V1Aを受けて基準信号GATABAを出力するPWM処理部92とを含む。
PWM処理部92は、加算処理部88で加算された結果の電圧値V1に対応するスイッチング基準タイミングを示す信号GATEBAを図2のバッファ32および反転バッファ36に出力する。
図16は、DC−CPU31Aの積分項記憶部81で行なわれる処理を示したフローチャートである。この処理は、制御のメインルーチンから所定時間毎または所定の条件が成立する毎に呼び出されて実行される。
図16を参照して、まず処理が開始されると、ステップS21において積分項記憶部81は、図2の電流センサSEの出力するリアクトル電流値ILを取得して、現在のリアクトル電流状態が、図5の状態A,B,Cのいずれであるかを検知する。なお、リアクトル電流値ILは、他のセンサの出力から推定することもできるのでその推定値を用いても良い。たとえば、バッテリ電流と指令デューティー比に基づいてリアクトル電流値ILを推定し、現在のリアクトル電流状態の検知を行なっても良い。
そして、ステップS22において、積分項記憶部81は、リアクトル電流状態が、安定状態であり、かつ前回判定したリアクトル電流状態とは異なっているものであるか否かを判断する。ここで、「安定状態」とは、図17の状態A(マイナス)、状態B(ゼロクロス)、状態C(プラス)のいずれかにリアクトル電流状態が属しており、不感帯に無いことを意味する。
ステップS22の条件が成立した場合には、ステップS23に処理が進み、偏差積分項をリアクトル状態の安定値に補正する。すなわち、積分項が安定値に落ち着くためには時間がかかるので、リアクトル状態が変化した場合に、積分項に安定値に相当する予め記憶された値をセットする。
ステップS22において、条件が成立しない場合およびステップS23の処理が終了した場合には、ステップS24に処理が進み制御はメインルーチンに移される。
図17は、図16のステップS23で設定される偏差積分項の安定値について説明するための図である。
図17を参照して、コンバータ通過パワーが増加するに従って、リアクトル電流値ILも変化し、リアクトル電流値の平均値もマイナス側からプラス側に直線的に変化する。
図5で説明した状態A,B,Cという表現を用いると、コンバータパワーが増加するにつれて、リアクトル電流ILが完全にマイナスとなる状態A、マイナス側不感帯、ゼロクロスする状態B、プラス側不感帯、完全にプラスとなる状態Cの順にリアクトル電流状態が変化する。
また、コンバータパワーが増加するにつれて、積分項も変化する。リアクトル電流状態が状態Aの領域においては積分項はC1となり、状態Bの領域においては積分項はC2となり、状態Cの領域においては積分項はC3となることが予め実験的に求められている。
したがって、積分項C1,C2,C3を図15の積分項記憶部81に記憶しておいて、リアクトル電流状態が変化したことが検出されたら変化後のリアクトル電流状態に対応する積分項を処理部80Aに設定することによって応答性を早めることができる。
このような処理を行なうことによりリアクトル電流の状態変化が起こった場合でも早期に出力電圧を目標値に収束させることができる。
最後に、主として図2を参照して本実施の形態について総括的に再度説明をする。電圧変換装置(30)は、リアクトルLと、第1、第2の電流通過部と、制御部(31)とを備える。第1の電流通過部は、第1の活性化信号に応じて導通する第1のスイッチング素子(TR1)を少なくとも含み、リアクトルLの一方端(N1)と第1の電源ノードとの間に設けられる。第2の電流通過部は、第1の電源ノードとは電位の異なる第2の電源ノードとリアクトルの一方端(N1)との間に設けられ、少なくとも第1の整流素子(D2)を含む。制御部(31)は、リアクトルLを通過させる電流の平均値を指令する指令値に基づいて第1の活性化信号(GATEBA)のデューティー比を決定する。図13、図14に示されるように、制御部(31)は、指令値が第1の指令値から第2の指令値に変化する過渡時(t2〜t3)において、第1の活性化信号のデューティー比を第1、第2の指令値にそれぞれ対応する第1、第2のデューティー比とは異なる第3のデューティー比に設定する。第1のデューティー比から第3のデューティー比への変化量は、第1のデューティー比から第2のデューティー比への変化量よりも大きい。
好ましくは、図9、図10に示されるように、制御部(31)は、第1の指令値(Vfcr_old)から第2の指令値(Vfcr)の変化量がしきい値(Vfcr_th)を超えた場合に、第2の指令値に対応するデューティー比に所定値(AまたはB)を乗じて第3のデューティー比を算出する。
好ましくは、図9、図11に示されるように、制御部(31)は、第1の活性化信号のデューティー比を決定するために指令値(Vfcr)と出力電圧値(VINV)との偏差ΔVfcに基づいてフィードバック制御を行っており、第1の指令値から第2の指令値への変化を検出するとフィードバック制御のフィードバックゲイン(KpV,KiV,KdV)を増加させる。
好ましくは、図13に示されるように、第1の指令値から第2の指令値への変化は、増加方向の変化であり、第2のデューティー比(60%)は第1のデューティー比(50%)よりも大きく、第3のデューティー比(70%)は、第2のデューティー比(60%)よりもさらに大きい。
好ましくは、図14に示されるように、第1の指令値から第2の指令値への変化は、減少方向の変化であり、第2のデューティー比(50%)は第1のデューティー比(60%)よりも小さく、第3のデューティー比(40%)は、第2のデューティー比(50%)よりもさらに小さい。
好ましくは、第1の電流通過部は、第1のスイッチング素子(TR1)と並列にリアクトルの一方端(N1)と第1の電源ノードとの間に設けられる第2の整流素子(D1)をさらに含む。第2の電流通過部は、第1の整流素子(D2)と並列にリアクトルの一方端(N1)と第2の電源ノードとの間に設けられる第2のスイッチング素子(TR2)をさらに含む。
好ましくは、電圧変換装置は、リアクトルの他方端(N2)と第3の電源ノードとの間に設けられる第3の電流通過部(TR3およびD3)と、第2の電源ノードとリアクトルの他方端(N2)との間に設けられる第4の電流通過部(TR4およびD4)とをさらに備える。第3、第4の電流通過部のいずれか一方は、少なくとも制御部に制御される第2のスイッチング素子(TR4)を含む。第3、第4の電流通過部のいずれか他方は、少なくとも第2の整流素子(D4)を含む。電圧変換装置は、第1の電源ノードと第3の電源ノードとの間で電圧変換を行なう。
より好ましくは、第3の電源ノードと第2の電源ノードとの間には、モータ(61)駆動用のインバータ60が接続され、第1の電源ノードと第2の電源ノードとの間には、蓄電装置(20)が接続される。
さらに好ましくは、第3の電源ノードには、さらに整流素子(42)を介して燃料電池40が接続される。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 電源システム、6,14 平滑用コンデンサ、10 制御ユニット、11 アクセルペダルセンサ、20 バッテリ、21 SOCセンサ、22,44 電圧センサ、23,43 電流センサ、30 DC/DCコンバータ、32 バッファ、33,37 デッドタイム生成部、34,35,36,38,39 反転バッファ、40 燃料電池、41 流量センサ、42,D1〜D4 ダイオード、50 車両補機、51 FC補機、60 インバータ、61 モータ、62 車速センサ、63L,63R 車輪、72,76,78,82,84 演算部、73 マップ記憶部、74,80,80A,92 処理部、81 積分項記憶部、86 フィードフォワード処理部、87 デューティー補正部、88 加算処理部、TR1〜TR4 IGBT素子。
Claims (11)
- リアクトルと、
第1の活性化信号に応じて導通する第1のスイッチング素子を少なくとも含み、前記リアクトルの一方端と第1の電源ノードとの間に設けられる第1の電流通過部と、
前記第1の電源ノードとは電位の異なる第2の電源ノードと前記リアクトルの前記一方端との間に設けられ、少なくとも第1の整流素子を含む第2の電流通過部と、
前記リアクトルを通過させる電流の平均値を指令する指令値に基づいて前記第1の活性化信号のデューティー比を決定する制御部とを備え、
前記制御部は、前記指令値が第1の指令値から第2の指令値に変化する過渡時において、前記第1の活性化信号のデューティー比を前記第1、第2の指令値にそれぞれ対応する第1、第2のデューティー比とは異なる第3のデューティー比に設定し、
前記第1のデューティー比から前記第3のデューティー比への変化量は、前記第1のデューティー比から前記第2のデューティー比への変化量よりも大きい、電圧変換装置。 - 前記制御部は、前記第1の指令値から前記第2の指令値の変化量がしきい値を超えた場合に、前記第2の指令値に対応する前記デューティー比に所定値を乗じて前記第3のデューティー比を算出する、請求項1に記載の電圧変換装置。
- 前記制御部は、前記第1の活性化信号のデューティー比を決定するために前記指令値と出力電圧値との偏差に基づいてフィードバック制御を行っており、前記第1の指令値から前記第2の指令値への変化を検出すると前記フィードバック制御のフィードバックゲインを増加させる、請求項1に記載の電圧変換装置。
- 前記制御部は、前記第1の活性化信号のデューティー比を決定するために前記指令値と出力電圧値との偏差に基づいてフィードバック制御を行っており、かつ前記偏差に応じて前記フィードバック制御のフィードバックゲインを変化させる、請求項1に記載の電圧変換装置。
- 前記第1の指令値から前記第2の指令値への変化は、増加方向の変化であり、
前記第2のデューティー比は前記第1のデューティー比よりも大きく、
前記第3のデューティー比は、前記第2のデューティー比よりもさらに大きい、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電圧変換装置。 - 前記第1の指令値から前記第2の指令値への変化は、減少方向の変化であり、
前記第2のデューティー比は前記第1のデューティー比よりも小さく、
前記第3のデューティー比は、前記第2のデューティー比よりもさらに小さい、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電圧変換装置。 - 前記第1の電流通過部は、
前記第1のスイッチング素子と並列に前記リアクトルの前記一方端と前記第1の電源ノードとの間に設けられる第2の整流素子をさらに含み、
前記第2の電流通過部は、
前記第1の整流素子と並列に前記リアクトルの前記一方端と前記第2の電源ノードとの間に設けられる第2のスイッチング素子をさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電圧変換装置。 - 前記リアクトルの他方端と第3の電源ノードとの間に設けられる第3の電流通過部と、
前記第2の電源ノードと前記リアクトルの前記他方端との間に設けられる第4の電流通過部とをさらに備え、
前記第3、第4の電流通過部のいずれか一方は、少なくとも前記制御部に制御される第2のスイッチング素子を含み、
前記第3、第4の電流通過部のいずれか他方は、少なくとも第2の整流素子を含み、
前記電圧変換装置は、前記第1の電源ノードと前記第3の電源ノードとの間で電圧変換を行なう、請求項1に記載の電圧変換装置。 - 前記第3の電源ノードと前記第2の電源ノードとの間には、モータ駆動用のインバータが接続され、
前記第1の電源ノードと前記第2の電源ノードとの間には、蓄電装置が接続される、請求項8に記載の電圧変換装置。 - 前記第3の電源ノードには、さらに整流素子を介して燃料電池が接続される、請求項9に記載の電圧変換装置。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の電圧変換装置を搭載する車両。
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Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
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