JP2008172709A - 車載通信装置、車載通信システム及び車載通信方法 - Google Patents
車載通信装置、車載通信システム及び車載通信方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】メッセージの送受信において優先度の低いIDを有するメッセージの送出が極端に遅延することを回避することができる車載通信装置、車載通信システム及び車載通信方法を提供する。
【解決手段】車載通信装置の制御部は、送出を試みようとするメッセージについて新たな送出である場合は(S12:YES)、送出を試みるメッセージのアービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値を所定値に設定し(S13)、送出を開始する(S14)。車載通信装置の制御部は、送出を開始したにも拘わらず調停に負け(S15:NO)、メッセージを送出することができなかった場合はメッセージのアービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値を減じて(S17)メッセージの優先度を高め、再度送出を試みる。
【選択図】図2
【解決手段】車載通信装置の制御部は、送出を試みようとするメッセージについて新たな送出である場合は(S12:YES)、送出を試みるメッセージのアービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値を所定値に設定し(S13)、送出を開始する(S14)。車載通信装置の制御部は、送出を開始したにも拘わらず調停に負け(S15:NO)、メッセージを送出することができなかった場合はメッセージのアービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値を減じて(S17)メッセージの優先度を高め、再度送出を試みる。
【選択図】図2
Description
本発明は、車載通信装置が優先順位が付与されたデジタルデータを優先順位に基づいて送出する車載通信装置、車載通信システム及び車載通信方法に関し、特に、高い優先順位が割り振られているデジタルデータに送出機会が極端に偏ることを回避することができる車載通信装置、車載通信システム及び車載通信方法に関する。
近年、電子制御装置(ECU;Electronic Control Unit)を使用した車載通信装置の機能の増加に伴い、車輌に配される車載通信装置の数及び種類も増加する傾向にある。
車載通信装置の機能によっては、一の車載通信装置が検知した各物理量についての測定値、計算によって得られた計算値、制御によって得られた制御値等を複数の車載通信装置で共有する必要がある。複数の車載通信装置で測定値、計算値、制御値等を共有するためには、各車載通信装置を車内通信回線で接続し、一の車載通信装置は測定値、計算値、制御値を含むデータを送出し、他の車載通信装置が一の車載通信装置から送出されたデータを受信して共有を実現する。
車載通信装置間のデータの送受信は車載通信装置間を接続する車内通信回線を介して行なわれるが、近年ではデータの送受信の規約としてCAN(Controller Area Network)(非特許文献1、非特許文献2)が多くの車種で採用されている。CANの規約による場合、車内通信回線は差動信号を伝送するツイストペアケーブルからなるCANバスで構成され、車載通信装置は差動信号によって表されるデジタルデータを送受信する。なお、CANでは車載通信装置が送受信するデジタルデータをメッセージと称し、デジタルデータで送出する測定値、計算値、制御値等の具体的な数値情報をデータとして区別している。したがって以降、CANを採用したシステムにおいて車載通信装置が送受信するデジタルデータはメッセージと称して説明する。
CANの規約にあるように、CANバスで送受信されるメッセージを表すデジタルデータは、CANバスにより伝送される差動信号が示す二つの電位状態(ドミナントレベル/レセッシブレベル)によって表される。ドミナントレベル及びレセッシブレベルは夫々デジタルデータの「0」及び「1」を表し、CANバスに接続されている車載通信装置はCANバスにドミナントレベル又はレセッシブレベルの電位を発生させることにより「0」,「1」のデジタルデータで表されるメッセージを送出する。なお、CANバスにメッセージが送出されていない場合のCANバスの電位はレセッシブレベルである。ドミナントレベルはレセッシブレベルよりも優先的であってCANバスに接続されている各車載通信装置の内のいずれか一の車載通信装置がドミナントレベルの電位を発生させた場合はCANバスの電位はドミナントレベルになる。
CANはシリアル通信のプロトコルであり、CANバスに接続されている車載通信装置の内の一の車載通信装置のみがメッセージを送出することができ、他の車載通信装置は一の車載通信装置がCANバスへのメッセージの送出を終了するまで待機するように制御される。
CANバスに接続されている複数の車載通信装置が同時にメッセージの送出を試みる場合、CANバスにおいてメッセージの送出が競合するときがある。このとき、CANの規約に従って車載通信装置は他の車載通信装置とビット単位の調停(アービトレーション)を行ない送出権を得てメッセージを送出するようにしてある。
CANの規約に従い送出の調停は以下のように行なわれる。CANの規約にあるように、各メッセージは、データの種類を識別するためにデータの種類夫々に割り振られたID(Identifier)を先頭部分に有している。CANバスでは「0」を表すドミナントレベルの電位の発生が優先されるので、「0」ビットが最も連続するIDを有するメッセージの送出が優先されるように調停が行なわれる。メッセージが有するIDによって送出権の調停が行なわれるので、CANの規約では、データの種類に割り振られたIDを含むビット列はアービトレーションフィールドと呼ばれる。なお、CANの規約による場合、アービトレーションフィールドは標準フォーマットでは11ビットのIDを含む12ビットからなり、拡張フォーマットでは29ビットのIDを含む31ビットからなる。
各車載通信装置はCANバスの電位を監視する機能を備え、自ら送出するメッセージについてアービトレーションフィールドに該当するビット列を送出している間、CANバスの電位を監視する。各車載通信装置は、自らが送出するメッセージのビット列(「0」,「1」)と実際にCANバスに発生している電位で表されるビット列とが一致しない場合は、他の車載通信装置からのメッセージの優先度が高く、優先的に送出されていると判断することができる。したがって車載通信装置はメッセージの送出を停止し、メッセージの送出終了を表すビット列がCANバスに他の車載通信装置から送出されていることを検知するまで待機する。
データの種類毎に割り振られるIDは、車載通信システムの設計により定められる。車内通信回線では「0」を表すドミナントレベルの電位の発生が優先されるので、ゼロビットがより多く連続するIDを有するメッセージの送出が優先される。したがって一般的に、車載通信システムにおいて優先的に送出されるべき情報には、より小さな数値を表すIDが割り振られる。
図5は、CANに基づいて車内通信回線へ送出されるメッセージのアービトレーションフィールドを模式的に示す説明図である。図5には、標準フォーマットによる「26」(00000011010b)のIDを有するメッセージ及び「98」(00001100010b)のIDを有するメッセージ夫々のアービトレーションフィールドを表す信号を示している。夫々のメッセージが車内通信回線に送出された場合、アービトレーションフィールドの先頭から5ビット目で「26」のIDを有するメッセージの方がドミナントレベルが多く続く。したがって、ドミナントレベルが多く続く「26」のIDを有するメッセージの送出が優先され続行される一方、「98」のIDを有するメッセージの送出は停止される。
ISO 11898−1:2003 Road vehicles--Controller area network(CAN)--Part1:Data link layer and physical signaling ISO 11519−1:1994 Road vehicles--Low-speed serial data communication--Part1:General and difinitions
ISO 11898−1:2003 Road vehicles--Controller area network(CAN)--Part1:Data link layer and physical signaling ISO 11519−1:1994 Road vehicles--Low-speed serial data communication--Part1:General and difinitions
アービトレーションフィールドに含まれ、データの種類に割り振られたIDを単に優先度を表すビット列として使用し送出権の調停を行なう場合、低い優先度のメッセージの送出に遅延が発生する。低い優先度のメッセージを送出する車載通信装置は、高い優先度のメッセージを送出する他の車載通信装置と調停の上で送出権を得ることができないからである。低い優先度のメッセージを送出する車載通信装置がメッセージを送出するために待機している間に続々と優先度の高いメッセージが更に送出される場合、先に送出されたはずの優先度の低いメッセージの送出が更に後になり、遅延が極端に大きくなる可能性がある。
図6は、従来のデータの種類に割り振られたIDを単に優先度を表すビット列として使用し送出権の調停を行なう場合のメッセージ間の送出順位を模式的に示す説明図である。図6(a)は一の車内通信回線4に車載通信装置3a,3b,3cがバス型に接続されていることを示している。車載通信装置3a,3b,3cは夫々車内通信回線4へメッセージを送出する際に他の車載通信装置3a,3b,3cと送出権の調停を行なう場合がある。
図6(b)は各車載通信装置3a,3b,3cから送出が試みられるメッセージと、車内通信回線4に実際に伝送されるメッセージの順序を模式的に示している。横軸に時間の経過を示している。図6(b)に示されている実線のブロックは夫々メッセージを表しており、数字はメッセージが有するIDである。破線のブロックは夫々の時点で調停が行なわれるメッセージを表しており、数字はアービトレーションフィールドで表される数値である。車載通信装置3aからは「23」「78」「43」のIDを夫々有するメッセージの送出が試みられ、車載通信装置3bからは「98」のIDを有するメッセージの送出が試みられ、さらに車載通信装置3cからは「26」「65」のIDを夫々有するメッセージの送出が試みられる。
図6(b)に示されるように、車載通信装置3aから「23」のIDを有するメッセージの送出が試みられて送出処理が行なわれている間、車載通信装置3bからは「98」のIDを有するメッセージの送出が試みられ、車載通信装置3cからは「26」のIDを有するメッセージの送出が試みられる。しかし、車内通信回線4は「23」のIDを有するメッセージの送出に使用されているので、車載通信装置3b及び車載通信装置3cはメッセージの送出を行なうことができず、車載通信装置3aからの「23」のIDを有するメッセージの送出が終了するまで待機する。
車載通信装置3aからの「23」のIDを有するメッセージの送出が終了した場合、車載通信装置3b及び車載通信装置3cはメッセージの送出が終了したことを示す信号が車内通信回線4に送出されたことを検知する。したがってt2 の時点で車載通信装置3b及び車載通信装置3cは夫々「98」のIDを有するメッセージと「26」のIDを有するメッセージの送出を試みる。車載通信装置3b及び車載通信装置3cからのメッセージの送出は同時に開始されるので、車載通信装置3b,3c間では送出権の調停が行なわれる。この場合、IDは車載通信装置3cから送出される「26」の方が小さく優先度が高いので、車載通信装置3cが送出権を得ることになる。
さらに、車載通信装置3cから「26」のIDを有するメッセージが送出されている間に車載通信装置3aから「78」のIDを有するメッセージの送出が試みられる。車載通信装置3cから「26」のIDを有するメッセージの送出が終了したt3 の時点では、「98」のIDを有するメッセージを送出しようとする車載通信装置3bと、「78」のIDを有するメッセージを送出しようとする車載通信装置3aとの間で送出権の調停が行なわれる。ここでも、「78」のIDを有するメッセージを送出しようとする車載通信装置3aが、「98」のIDを有するメッセージを送出しようとする車載通信装置3bとの調停の結果送出権を得ることとなる。したがって、「98」のIDを有するメッセージを送出しようとする車載通信装置3bはメッセージを送出することができない。その後も更に、「98」よりも小さいIDを有するメッセージの送出が他の車載通信装置3a,3cにより試みられ、車載通信装置3bは各時点での調停によって送出権を得ることができず、「98」のIDを有するメッセージの車内通信回線4への送出はt6 の時点まで極端に遅延する。
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、接続している通信線へデジタルデータを調停によって送出することができなかった場合は送出の優先度を高めて送出を試みる構成とすることにより、優先度の低いIDを有するデジタルデータの送出が極端に遅延することを回避することができる車載通信装置、車載通信システム及び車載通信方法を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、デジタルデータを表すビット列についてはゼロビットが優先的に送出されるようにしてある通信線へデジタルデータの送出を新たに試みる際、優先度を表すビット列の内の上位ビット列が表す数値を所定値に設定し、優先度が低いことによって送出に失敗する都度数値を小さくして送出を試みる構成とすることにより、優先度の低いIDを有するデジタルデータの送出が極端に遅延することを回避することができる車載通信装置、車載通信システム及び車載通信方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、デジタルデータを表すビット列についてはゼロビットが優先的に送出されるようにしてある通信線へデジタルデータの送出を新たに試みる際、優先度を表すビット列の内の上位ビット列が表す数値を所定値に設定し、優先度が低いことによって送出に失敗する都度数値を1減じて送出を試みる構成とすることにより、優先度の低いIDを有するデジタルデータの送出が極端に遅延することを回避することができる車載通信装置、車載通信システム及び車載通信方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、デジタルデータの送出を新たに試みる際に、優先度を表すビット列の内の上位ビット列が表す数値として通信線に接続されている車載通信装置の数から1減じた数値を所定値として設定して送出する構成とすることにより、優先度の低いIDを有するデジタルデータも、送出することができないと判断してから少なくとも通信線に接続されている車載通信装置の数に相当する回数後に送出機会が確保されるようにし、優先度の低いIDを有するデジタルデータの送出が極端に遅延することを回避することができる車載通信装置、車載通信システム及び車載通信方法を提供することにある。
第1発明に係る車載通信装置は、車輌に配されており、通信線へ送出の優先度を表すビット列を含むデジタルデータを前記通信線へ送出する送出手段、前記通信線へ伝送が試みられている他のデジタルデータの優先度を検知する検知手段、及び、前記送出手段により送出中のデジタルデータの優先度が前記検知手段により検知した優先度よりも高いか否かを判断する判断手段を備え、前記判断手段により優先度が低いと判断した場合にデジタルデータの送出を停止するようにしてある車載通信装置において、前記判断手段により優先度が低いと判断した場合、送出を停止したデジタルデータの優先度を高める手段と、優先度を高めたデジタルデータの送出を試みる手段とを備えることを特徴とする。
第2発明に係る車載通信装置は、デジタルデータの送出を新たに試みる場合、優先度を表すビット列の内の上位ビット列が表す数値に所定値を設定する手段と前記判断手段により優先度が低いと判断した場合、前記上位ビット列が表す数値を小さくする手段とを備えることを特徴とする。
第3発明に係る車載通信装置は、前記判断手段により優先度が低いと判断する都度、前記上位ビット列が表す数値を1減ずるようにしてあることを特徴とする。
第4発明に係る車載通信装置は、前記所定値は、自らが接続されている通信線に接続されている車載通信装置の総数から1減じた数値としてあることを特徴とする。
第5発明に係る車載通信システムは、車輌に配されている通信線と、該通信線に接続しており、前記通信線への送出の優先度を表すビット列を含むデジタルデータを前記通信線へ送出する送出手段を備える複数の車載通信装置とを含み、前記車載通信装置は更に、前記通信線へ他の車載通信装置から送出が試みられているデジタルデータの優先度を検知する検知手段、及び前記送出手段により送出中のデジタルデータの優先度が前記検知手段により検知した優先度よりも高いか否かを判断する判断手段を備え、前記判断手段により優先度が低いと判断した場合にデジタルデータの送出を停止するようにしてある車載通信システムにおいて、前記車載通信装置は、前記判断手段により優先度が低いと判断した場合、送出を停止したデジタルデータの優先度を高める手段と、優先度を高めたデジタルデータの送出を試みる手段とを特徴とする。
第6発明に係る車載通信システムは、前記通信線ではデジタルデータの各ビットはゼロビットが優先的に送出されるようにしてあり、前記車載通信装置は、デジタルデータの送出を新たに試みる場合、前記上位ビット列が表す数値に所定値を設定する手段と、前記判断手段により優先度が低いと判断した場合、優先度を表すビット列の内の上位ビット列が表す数値を小さくする手段とを特徴とする。
第7発明に係る車載通信システムは、前記車載通信装置は、前記判断手段により優先度が低いと判断する都度、前記上位ビット列が表す数値を1減ずるようにしてあることを特徴とする。
第8発明に係る車載通信システムは、前記所定値は、前記車載通信装置が接続されている通信線に接続されている車載通信装置の総数から1減じた数値としてあることを特徴とする。
第9発明に係る車載通信方法は、車輌に配されている通信線に接続されており、前記通信線への送出の優先度を表すビット列を含むデジタルデータを前記通信線へ送出する車載通信装置が、前記通信線へ送出が試みられている他のデジタルデータの優先度を検知し、自らが送出中のデジタルデータが含む優先度が検知した優先度よりも高いか否かを判断し、低いと判断した場合にデジタルデータの送出を停止する車載通信方法において、前記車載通信装置は、自らが送出中のデジタルデータが含む優先度が検知した優先度よりも低いと判断した場合、送出を停止したデジタルデータの優先度を高め、優先度を高めたデジタルデータの送出を試みることを特徴とする。
第10発明に係る車載通信方法は、前記通信線ではデジタルデータの各ビットはゼロビットが優先的に送出されるようにしてあり、前記車載通信装置は、デジタルデータの送出を新たに試みる場合、前記上位ビット列が表す数値に所定値を設定し、デジタルデータの送出を試みた場合に送出中のデジタルデータの優先度が検知した優先度よりも低いと判断したときは、優先度を表すビット列の内の上位ビット列が表す数値を小さくすることを特徴とする。
第11発明に係る車載通信方法は、前記車載通信装置は、送出中のデジタルデータの優先度が検知した優先度よりも低いと判断する都度、前記上位ビット列が表す数値を1減ずることを特徴とする。
第12発明に係る車載通信方法は、前記所定値は、前記車載通信装置が接続されている通信線に接続されている車載通信装置の総数から1減じた数値であること特徴とする。
第1発明、第5発明及び第9発明では、車載通信装置は通信線に接続している場合、通信線で送出が試みられているデジタルデータの優先度を検知し、自らが送出中のデジタルデータの優先度が通信線で伝送中のデジタルデータの優先度よりも高いか否かを判断し、同一でないと判断した場合は送出権がないので、デジタルデータの送出を停止する。送出を停止したデジタルデータについては優先度が高められて送出が試みられる。
第2発明、第6発明及び第10発明では、車載通信装置はデジタルデータの送出を新たに試みる際に優先度を表すビット列の内の上位ビット列が表す数値に所定値を設定する。車載通信装置は、送出中のデジタルデータが含む優先度が、他の車載通信装置から送出が試みられているデジタルデータの優先度よりも高いか否かを判断し、低いと判断した場合は優先度を表すビット列の内の上位ビット列が表す数値を小さくする。通信線でデジタルデータの送出が競合した場合にデジタルデータのゼロビットが優先的に送出されるようにしてあるときは、優先度を表すビット列の内の上位ビット列が表す数値が小さくされることにより、優先的に送出されるゼロビットがデジタルデータの先頭からより多く連続するようになるので、デジタルデータの優先度が高められる。
第3発明、第7発明及び第11発明では、車載通信装置はデジタルデータの送出を新たに試みる際に優先度を表すビット列の内の上位ビット列が表す数値に所定値を設定する。車載通信装置は、送出中のデジタルデータが含む優先度が、他の車載通信装置から送出が試みられているデジタルデータの優先度よりも高いか否かを判断し、低いと判断して送出を停止する都度、優先度を表すビット列の内の上位ビット列が表す数値を1減じる。通信線でデジタルデータの送出が競合した場合、デジタルデータのゼロビットが優先的に送出されるようにしてある場合は、優先度を表すビット列の内の上位ビット列が表す数値が1減じられることにより、優先的に送出されるゼロビットがデジタルデータの先頭からより多く連続するようになるので、デジタルデータの優先度が高められる。
第4発明、第8発明及び第12発明では、車載通信装置はデジタルデータの送出を新たに試みる際に優先度を表すビット列の内の上位ビット列が表す数値に、通信線に接続されている車載通信装置の総数から1減じた数が設定される。車載通信装置は、送出中のデジタルデータが含む優先度が、他の車載通信装置から送出が試みられているデジタルデータの優先度よりも高いか否かを判断し、低いと判断して送出を停止する都度、優先度を表すビット列の内の上位ビット列が表す数値を減少させる。車載通信装置から送出されるデジタルデータの優先度を表すビット列の内の上位ビット列が表す数値の最大値、即ち新たに送出が試みられる際の数値は、車載通信装置が接続されている通信線に接続されている車載通信装置の総数である。したがって、通信線に接続されている車載通信装置全てから同時にデジタルデータの送出が試みられた場合、少なくとも車載通信装置は接続されている車載通信装置の総数に相当する回数分待機することによりデジタルデータを送出することができ、待機中に後から送出が新たに試みられた優先度の高いデジタルデータが送出されることはない。
第1発明、第5発明及び第9発明による場合は、通信線に接続している車載通信装置は、デジタルデータの送出権を得ることができずに送出を停止した場合は当該デジタルデータの優先度を高めて送出を試みる。したがって、デジタルデータが含む、各種物理量の測定値、計算値、制御値等のデータの種類に割り振られたIDの優先度が低い場合も送出に失敗した後はデジタルデータの優先度が高められ、送出が極端に遅延することを回避することができる。
第2発明、第6発明及び第10発明による場合は、後から新たに送出が試みられたデータよりも、先に送出が試みられたにも拘わらず送出権を得ることができずに送出が停止されたデータの方が、ゼロビットが優先的に送出される通信線に対し送出の優先度が高められる。これにより、優先度が低いIDを有するデータが後に送出された優先度の高いIDを有するデータよりもさらに後に送出されて極端に遅延することを回避することができる。
第3発明、第7発明及び第11発明による場合は、後から新たに送出が試みられたデータよりも、先に送出が試みられたにも拘わらず送出権を得ることができずに送出が停止されたデータの方が、ゼロビットが優先的に送出される通信線に対し送出の優先度が高められる。これにより、優先度が低いIDを有するデータが後に送出された優先度の高いIDを有するデータよりもさらに後に送出されて極端に遅延することを回避することができる。また、下位ビット列ではデータの種類に割り振られたIDを表すことにより、従来からデータの種類に割り振られたIDを破壊することなく上位ビット列のみで優先度の高低を制御することができる。さらに、同時に送出されて競合したデータどうしで、上位ビット列が表す数値が等しい場合は従来のIDの優先度によって送出の前後が決まるので、データの種類に対応して定められた優先度を有効にすることができる。
第4発明、第8発明及び第12発明による場合は、後から新たに送出が試みられたデジタルデータよりも、先に送出が試みられたにも拘わらず送出権を得ることができずに送出を停止したデータの優先度の方が全体として高くなる。また、通信線に接続されている全車載通信装置が同時にデータの送出を試み、最も優先度が低いIDを有するデータには、車載通信装置の総数から1減じた数に相当する回数後には送出機会が確保される。したがって、優先度の低いIDを有するデータの送出が極端に遅延することを回避することができる。また、最大値を少なくとも通信線に接続している車載通信装置の総数から1減じた数とするので、できるだけ上位ビット列の桁数を低減させることができる。さらに、総数から1減じた数に相当する回数後には送出機会が確保されるので、一のデータの送出開始から送出終了までにかかる時間に所定の回数を乗じた時間が最大遅延時間であると見積もることができる。
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
図1は、本発明に係る車載通信装置を複数備える車載通信システムの構成を示すブロック図である。車載通信システムは、各種物理量の測定値、計算値、制御値等を含むメッセージを送受信する車載通信装置1a,1b,1cと、各車載通信装置間1a,1b,1cを接続する車内通信回線2とを備える。本車載通信システムはCANのプロトコルに準じて構成されている。なお、LIN(Local Interconnect Network)、BEAN(Body Electronics Area Network)、さらにはFlexRay等のプロトコルに基づいて構成されていてもよい。
車載通信装置1a,1b,1cは車内通信回線2に夫々バス型に接続されており、車内通信回線2に送出されたメッセージを共通して受信することができる。車載通信システム間のメッセージの交換はシリアル通信のプロトコルであるCANに準じているので、車載通信装置1a,1b,1cは同時に車内通信回線2へメッセージを送出することはできず、いずれか一つのみ車内通信回線2へメッセージを送出することができる。
車載通信装置1a,1b,1cは、電子制御装置(ECU)を用いて例えば接続しているセンサが検知した温度、角度、速度等の各種物理量の測定値、計算値、制御値等のデータを含むメッセージの送出、又はエンジン、ブレーキ等の各種装置のマイクロコンピュータによる制御が可能である。例えば、車載通信装置1aは、操舵角を検知する図示しないセンサに接続されている。車載通信装置1aは、センサから入力された操舵角の測定値を含むメッセージを車内通信回線2へ送出し、他の車載通信装置1b,1cが受信する。
車載通信装置1aは、以下に示す各構成部の動作を制御する制御部10と、各構成部へ電力を供給する電源回路11と、制御に必要なデータを記憶する記憶部12と、車内通信回線2との通信を制御する通信制御部13と、図示しないセンサ等からの信号を入力する入力部14と、図示しない制御対象装置へ制御信号を出力する出力部15とを備える。他の車載通信装置1b,1cも車載通信装置1aと同様の構成であることから詳細な説明を省略する。なお、車載通信装置1b,1cの双方又はいずれか一方は入力部14及び出力部15のいずれか一方のみ備える構成でもよい。
車載通信装置1aの制御部10は、電源回路11を介して図示しない車輌のオルタネータから電力の供給を受けており、入力部14を介してセンサからの信号を検出し、出力部15を介して制御対象装置へ制御信号を送出する。
車載通信装置1aの記憶部12は揮発性のメモリからなり、制御部10の処理の過程で発生する各種情報及びセンサから入力された信号が表す物理量の測定値を一時的に記憶する。なお、車載通信装置1aは、必ずしもセンサと接続する必要はないので、制御のために計算処理で得られた計算値、制御によって得られた制御値等を記憶しておく構成でもよい。また、記憶部12はEEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)、フラッシュメモリ等の揮発性メモリで構成してもよい。
車載通信装置1aの通信制御部13は、ネットワークコントローラチップを有しており、車内通信回線2を介した通信を実現する。車載通信装置1aの制御部10は、通信制御部13を介して後述の車内通信回線2の一対の信号線間に差動電圧を発生させることによりメッセージを送出し、信号線間の差動電圧を検出することによりメッセージを受信する。
車内通信回線2は、CAN(Contorol Area Network)のプロトコルに基づく通信回線であり、車載通信装置1a,1b,1cは車内通信回線2を介してCAN仕様に基づく信号の発生/検出によりメッセージの送受信が可能である。なお、本実施の形態では車内通信回線2としてCAN仕様に基づく通信回線を例に説明する。しかしながら本発明に係る車載通信システムの車内通信回線2はこれに限らず、LIN(Local Interconnect Network)、BEAN(Body Electronics Area Network)等のプロトコルに基づく通信回線であってもよい。
CAN仕様に基づく車内通信回線2は一対の信号線、具体的にはシールドツイストペアケーブルからなり、車内通信回線2に接続する車載通信装置1a,1b,1cはペア線間に発生する差動電圧を検出することにより信号を検出してメッセージを受信する。また、車載通信装置1a,1b,1cはペア線間に差動電圧を発生させることにより信号を発生してメッセージを送出する。
車内通信回線2のシールドツイストペアケーブルのペア線の電位は夫々CAN_Highレベル、CAN_Lowレベルに設定されている。ペア線の電位の差動電圧がゼロの状態又はCAN_Lowレベルの電位がCAN_Highレベルの電位よりも高い状態がデジタル信号の「1」(レセッシブ)を表し、CAN_Highレベルの電位がCAN_Lowレベルの電位よりも高い状態がデジタル信号の「0」(ドミナント)を表す。車内通信回線2に接続されている車載通信装置1a,1b,1cは、車内通信回線2のペア線間の差動電圧を制御することにより「0」,「1」で表される信号を発生し、メッセージを送出する。
車載通信装置1a,1b,1cの制御部10は、車内通信回線2へCANに基づくデータを表す信号を通信制御部13により送出する。CANの規約による場合、車載通信装置1a,1b,1cから物理量等の各種情報を含むとき又は各種情報を要求するときに送出されるメッセージには、メッセージ送出開始を示すビットに引き続き、データの種類に割り振られたIDを表すビット列を含むアービトレーションフィールドが含まれる。
車載通信装置1aの制御部10は、「23」「78」「43」のIDを夫々有するメッセージを通信制御部13により送出する。車載通信装置1bの制御部10は、「98」のIDを有するメッセージを通信制御部13により送出する。また、車載通信装置1cの制御部10は、「26」「65」のIDを夫々有するメッセージを通信制御部13により送出する。
本発明に係る車載通信装置1a,1b,1cの制御部10は、メッセージを送出する際に、メッセージが含むアービトレーションフィールドの内の上位ビット列に「ライフタイム」を示す数値を表し、下位ビット列にはデータの種類に割り振られたIDを表す。「ライフタイム」を示す数値は、車載通信装置1a,1b,1cが他の車載通信装置1a,1b,1cと送出権の調停を行ない、他の車載通信装置1a,1b,1cから送出が試みられているメッセージの方が優先度が高く優先され、自らの送出を停止する都度減じる数値である。例えば、車載通信装置1aの制御部10は、メッセージの送出を試みた場合に、調停の結果他の車載通信装置1b,1cによるメッセージの送出が優先されて送出を停止したときは、送出を試みたメッセージのアービトレーションフィールドの内の上位ビット列で表される数値を1減ずる。この場合車載通信装置1aの制御部10は、他の車載通信装置1b,1cによるメッセージの送出が終了したことを示す信号が車内通信回線2に送出されることを検知するまで待機し、検知した場合は「ライフタイム」を1減じたアービトレーションフィールドを有するメッセージの送出を再度試みる。
なお、本発明に係る車載通信装置1a,1b,1cの制御部10は、例えばメッセージ送出周期の到来によって新たにメッセージの送出を試みる場合、アービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値を所定値に設定する。本実施の形態では、所定値は車内通信回線2に接続されている車載通信装置1a,1b,1cの総数「3」から1減じた数値である「2」を所定値としてある。車載通信装置1a,1b,1cが全て同時にメッセージの送出を新たに試みた場合、最も優先度の低いIDを有するメッセージも少なくとも車載通信装置1a,1b,1cの総数に相当する回数後の調停では勝つようにするためである。
次に、車載通信装置1a,1b,1cの制御部10がメッセージの送出を新たに試みる際にアービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値を所定値に設定し、調停によってメッセージを送出することができずに送出を停止する都度、アービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値を減じる処理について説明する。図2は、本発明に係る車載通信装置1aの制御部10がメッセージを送出する場合の処理手順を示すフローチャートである。他の車載通信装置1b,1cについても同様の処理を行なうため詳細な説明を省略する。
なお、車載通信装置1aの記憶部12には自らが送出するメッセージのIDと、送出タイミングとが記憶されている。したがって、車載通信装置1aの制御部10は記憶部12に記憶されているIDを有するメッセージの送出タイミングに相当する時点となった場合、以下に示すようなメッセージの送出を試みる。
車載通信装置1aの制御部10は、通信制御部13により車内通信回線2で他の車載通信装置1b,1cからメッセージが送出されているか否かによって、送出が可能であるか否かを判断する(ステップS11)。車載通信装置1aの制御部10は、車内通信回線2の電位がドミナントレベルであって、他の車載通信装置1b,1cからメッセージの送出が行なわれているので自らのメッセージの送出が不可能であると判断した場合(S11:NO)、処理をステップS11へ戻して送出が可能であると判断するまで待機する。
車載通信装置1aの制御部10は、メッセージの送出が可能であると判断した場合(S11:YES)、送出を試みようとするメッセージについて新たな送出か否かを判断する(ステップS12)。新たな送出か否かの判断は、送出を試みようとするメッセージの送出権を調停によって得ることができなかった回数、即ち調停に負けた回数を記憶部12に記憶してメッセージを送出することができた場合は夫々をゼロに設定するようにしておき、調停に負けた回数が1以上であるか否かにより判断することができる。
車載通信装置1aの制御部10は、ステップS12において新たな送出であると判断した場合(S12:YES)、送出を試みるメッセージのアービトレーションの上位ビット列が表す数値を所定値に設定し(ステップS13)、メッセージの送出を開始する(ステップS14)。所定値は上述の通り、車内通信回線2に接続されている車載通信装置1a,1b,1cの総数から1減じた数「2」としてある。所定値は車載通信装置1aの記憶部12に記憶されており、車載通信装置1aの制御部10は記憶部12から所定値を読み出してアービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値として設定する。
車載通信装置1aの制御部10は、ステップS12において新たな送出でないと判断した場合(S12:NO)、そのままメッセージの送出を開始する(S14)。
次に車載通信装置1aの制御部10は、自らが送出を開始しているメッセージのアービトレーションフィールドを表すビット列と、通信制御部13を介して検知した車内通信回線2で伝送中のデータのビット列とに基づいて優先度の高低を判断することにより、調停に勝ったか否かを判断する(ステップS15)。
車載通信装置1aの制御部10は、調停に負けたと判断した場合(S15:NO)、開始していたメッセージの送出を停止し(ステップS16)、アービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値を減じる(ステップS17)。アービトレーションフィールド全体のビット列で表される数値が減じられ、ゼロビットがより多く連続するのでメッセージの優先度が高められる。なお、本実施の形態では、車載通信装置1aの制御部10は、ステップS17においてアービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値を1減じる。車載通信装置1aの制御部10は、ステップS17で優先度を高めたメッセージの送出を再度試みるために処理をステップS11へ戻し、車内通信回線2で送出が可能であると判断するまで待機する。
車載通信装置1aの制御部10は、調停に勝ったと判断した場合(S15:YES)、メッセージの送出を継続して処理を終了する。
車載通信装置1aの制御部10による前述のような処理手順によって、調停の結果送出権を得ることができなかったメッセージについては優先度が高められ、再度送出が試みられる。
図3は、本発明に係る車載通信装置1b,1cから送出されるメッセージのアービトレーションフィールドを模式的に示す説明図である。図3に示されているメッセージのアービトレーションフィールドは夫々、車載通信装置1cから送出される「26」のIDを有するメッセージのアービトレーションフィールド及び車載通信装置1bから送出される「98」のIDを有するメッセージのアービトレーションフィールドである。
図3に示すように、車載通信装置1cから送出が試みられる「26」のIDを有するメッセージでは、アービトレーションフィールドの下位ビット列ではID「26」(000011010b)が表されており、上位ビット列では新たにメッセージを送出する際に設定される所定値「2」(10b)が表されている。また、車載通信装置1bから送出が試みられる「98」のIDを有するメッセージでは、アービトレーションフィールドの下位ビット列ではID「98」(001100010b)が表されており、上位ビット列では新たに設定される所定値「2」から1減じた数値「1」(01b)が表されている。
図3に示されるようなアービトレーションフィールドを夫々有するメッセージの送出が、車内通信回線2で競合した場合、アービトレーションフィールドの1ビット目でドミナントレベルが優先されるため、「98」のIDを有するメッセージの送出が優先される。
図4は、本発明に係る車載通信装置1a,1b,1cから送出が試みられるメッセージと、車内通信回線2に実際に送出されるメッセージの順序とを模式的に示す説明図である。横軸に時間の経過を示している。図4に示されている実線のブロックはメッセージを夫々表しており、数字はメッセージが有するIDであってアービトレーションフィールドの下位ビット列で表される数値である。破線のブロックは夫々の時点で調停が行なわれるメッセージを表している。破線のブロック内の数字はアービトレーションフィールドで表される数値であり、上位ビット列で表される「ライフタイム」及び下位ビット列で表されるIDを夫々表す数値である。
車載通信装置1aからは「23」「78」「43」のIDを夫々有するメッセージの送出が試みられ、車載通信装置1bからは「98」のIDを有するメッセージの送出が試みられ、さらに車載通信装置1cからは「26」「65」のIDを夫々有するメッセージの送出が試みられる。
車載通信装置1aから「23」のIDを有するメッセージについて新たに送出が試みられ、送出処理が行なわれている間に、車載通信装置1bからは「98」のIDを有するメッセージの送出が試みられ、車載通信装置1cからも「26」のIDを有するメッセージの送出が試みられる。車内通信回線2は車載通信装置1aからの「23」のIDを有するメッセージの送出に使用されているので、車載通信装置1b及び車載通信装置1cはメッセージの送出を行なうことができず待機する。
車載通信装置1aからの「23」のIDを有するメッセージの送出が終了したt2 の時点で、車載通信装置1b及び車載通信装置1cの制御部10は夫々「98」のIDを有するメッセージと「26」のIDを有するメッセージの送出を試みる。この場合、車載通信装置1b及び車載通信装置1cによる「98」及び「26」のIDを夫々有するメッセージの送出については新たな試みであるため、いずれのメッセージでもアービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値は所定値である「2」である。
したがって、車載通信装置1b及び車載通信装置1c間での送出権の調停は、上位ビット列が表す数値が同一であるので下位ビット列が表すIDによって行なわれる。したがって、「26」のIDを有するメッセージの送出を試みる車載通信装置1cが送出権を得る。「98」のIDを有するメッセージの送出を試みる車載通信装置1bの制御部10は、送出権を得ることができず調停に負けるので、アービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値を1減じて「1」として送出可能となるまで待機する。
車載通信装置1cから「26」のIDを有するメッセージの送出が行なわれている間にはさらに、車載通信装置1aから「78」のIDを有するメッセージの送出が試みられる。車載通信装置1cから「26」のIDを有するメッセージの送出が終了するt3 の時点では、「98」のIDを有するメッセージの送出を試みる車載通信装置1bと「78」のIDを有するメッセージの送出を試みる車載通信装置1aとの間で送出権の調停が行なわれる。
この場合、「78」のIDを有するメッセージは車載通信装置1aから新たに送出が試みられるので、アービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値は「2」である。一方「98」のIDを有するメッセージは一度調停で負けているのでアービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値は「1」である。したがって、アービトレーションフィールド全体が表す数値は「98」のIDを有するメッセージの方が少なく、ドミナントレベルが多く連続し、「98」のIDを有するメッセージの送出を試みる車載通信装置1bは調停の結果送出権を得ることができ、t3 の時点で車内通信回線2へ送出される。
その後「98」のIDを有するメッセージが車内通信回線2へ送出されている間に車載通信装置1cから「65」のIDを有するメッセージの送出が試みられる。車載通信装置1aは「78」のIDを有するメッセージの送出を調停の結果行なうことができなかったので、「78」のIDを有するメッセージのアービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値は所定値の「2」から「1」へ減じられている。したがって、車載通信装置1aは、t4 の時点で車載通信装置1cから送出が試みられる「65」のIDを有するメッセージとの調停の結果送出権を得ることができる。
同様にして、t5 の時点では「43」、「98」及び「65」のIDを夫々有するメッセージの送出が車載通信装置1a,1b,1cの制御部10により試みられる。しかし、車載通信装置1aからの「43」のIDを有するメッセージの送出は新たな試みでありアービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値は「2」である。また、車載通信装置1bからの「98」のIDを有するメッセージの送出も新たな試みであり、アービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値は「2」である。一方、「65」のIDを有するメッセージは、アービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値が「1」であるので優先的に車内通信回線2へ送出される。
t6 の時点では「43」及び「98」のIDを夫々有するメッセージの調停が再度行なわれるが、いずれもアービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値は「2」から1減じられて「1」である。したがって、アービトレーションフィールドの下位ビット列が表すIDによって調停が行なわれ、「43」のIDを有するメッセージが車内通信回線2へ優先的に送出される。
本発明の車載通信装置1a,1b,1cの構成により、優先度の低いIDを有するメッセージの送出を試みた場合、調停によって送出することができないと判断したときはアービトレーションフィールド全体が表す数値を小さくすることで優先度を高める。したがって、優先度の低いIDを有するメッセージの送出が極端に遅延することを回避することができる。
また、全体として優先度を表すアービトレーションフィールドの上位ビット列を段階的に減じるようにすることで、下位ビット列については従来のIDをそのまま使用することができ、上位ビット列が表す数値が同値である場合は従来のIDに基づいて優先的に送出されるべきメッセージが車内通信回線2へ送出される。
また、アービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値が、調停の結果送出できないと判断される都度に1ずつ減じられるライフタイムを表すことにより、一のメッセージの送出開始から送出終了までにかかる時間にライフタイムの最大値を乗じた時間が最大遅延時間であると見積もることができる。
なお、本実施の形態では、「ライフタイム」を表すための上位ビット列は、アービトレーションフィールドの先頭のビット列とした。しかしながら、本発明ではこれに限らず、ゼロビットがより多く連続し優先的に送出されるようにすることができるのであれば、先頭のビット列を使用せずに例えばアービトレーションフィールドの3ビット目から2ビットを使用する構成でもよい。
なお、本実施の形態ではアービトレーションフィールドを上位ビット列と下位ビット列とに分別する場合、上位ビット列を車内通信回線2に接続されている車載通信装置1a,1b,1cの総数「3」から1減じた「2」を表現する最小ビット数である2ビットとした。しかしながら、上位ビット列の解釈はシステムの設計により変更可能な独自のものであるため、可能な限りビット数を少なくすることが望ましい。
また、本実施の形態ではアービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値の所定値として車内通信回線2に接続されている車載通信装置1a,1b,1cの総数「3」から1減じた「2」とした。車載通信装置1a,1b,1cが全て同時にメッセージの送出を新たに試みた場合、最も優先度の低いIDを有するメッセージも少なくとも車載通信装置1a,1b,1cの総数に相当する回数後の調停では勝つようにするためである。しかしながら、本発明は新たにメッセージの送出を試みる際にアービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値の所定値を車載通信装置1a,1b,1cの総数から1減じた数値としない構成でもよい。同時に全車載通信装置1a,1b,1cがメッセージの送出を試みる可能性は現実的には低いので、全車載通信装置1a,1b,1cの内のメッセージを送出する頻度が高い車載通信装置1a,1b,1cのいずれかを考慮して定められる所定値でもよい。例えば、車内通信回線2に24台の車載通信装置が接続されている場合、所定値を「23」とすると最小でも5ビット使用し、本来のメッセージのIDのために使用できるビット数が少なくなる。頻繁にメッセージの送出を試みる車載通信装置が2、3台であり、同時に送出が試みられる可能性のあるメッセージの数が2又は3である場合は、車内通信回線2に24台の車載通信装置が接続されているときであってもライフタイムの最大値を「23」とする必要はなく、2ビットで表される最大値「3」としてもよい。
なお、本実施の形態では調停の結果によって送出を停止する都度、アービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値を1ずつ減ずる構成とした。しかしながら本発明はこれに限らず、優先度の高いIDを有するメッセージについて、可能な限り優先的に送出されるようにするべく、アービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値を1ずつでなく2ずつ減じる構成でもよい。また、段階的に減じる数値を大きくして他のメッセージよりも先にアービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値を早く減少させるような構成でもよい。
1a,1b,1c 車載通信装置
10 制御部
13 通信制御部
2 車内通信回線
10 制御部
13 通信制御部
2 車内通信回線
Claims (12)
- 車輌に配されており、通信線へ送出の優先度を表すビット列を含むデジタルデータを前記通信線へ送出する送出手段、前記通信線へ伝送が試みられている他のデジタルデータの優先度を検知する検知手段、及び、前記送出手段により送出中のデジタルデータの優先度が前記検知手段により検知した優先度よりも高いか否かを判断する判断手段を備え、前記判断手段により優先度が低いと判断した場合にデジタルデータの送出を停止するようにしてある車載通信装置において、
前記判断手段により優先度が低いと判断した場合、送出を停止したデジタルデータの優先度を高める手段と、
優先度を高めたデジタルデータの送出を試みる手段と
を備えることを特徴とする車載通信装置。 - デジタルデータの送出を新たに試みる場合、優先度を表すビット列の内の上位ビット列が表す数値に所定値を設定する手段と
前記判断手段により優先度が低いと判断した場合、前記上位ビット列が表す数値を小さくする手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の車載通信装置。 - 前記判断手段により優先度が低いと判断する都度、前記上位ビット列が表す数値を1減ずるようにしてあること
を特徴とする請求項2に記載の車載通信装置。 - 前記所定値は、自らが接続されている通信線に接続されている車載通信装置の総数から1減じた数値としてあること
を特徴とする請求項2又は3に記載の車載通信装置。 - 車輌に配されている通信線と、該通信線に接続しており、前記通信線への送出の優先度を表すビット列を含むデジタルデータを前記通信線へ送出する送出手段を備える複数の車載通信装置とを含み、前記車載通信装置は更に、前記通信線へ他の車載通信装置から送出が試みられているデジタルデータの優先度を検知する検知手段、及び前記送出手段により送出中のデジタルデータの優先度が前記検知手段により検知した優先度よりも高いか否かを判断する判断手段を備え、前記判断手段により優先度が低いと判断した場合にデジタルデータの送出を停止するようにしてある車載通信システムにおいて、
前記車載通信装置は、
前記判断手段により優先度が低いと判断した場合、送出を停止したデジタルデータの優先度を高める手段と、
優先度を高めたデジタルデータの送出を試みる手段と
を備えることを特徴とする車載通信システム。 - 前記通信線ではデジタルデータの各ビットはゼロビットが優先的に送出されるようにしてあり、
前記車載通信装置は、
デジタルデータの送出を新たに試みる場合、前記上位ビット列が表す数値に所定値を設定する手段と、
前記判断手段により優先度が低いと判断した場合、優先度を表すビット列の内の上位ビット列が表す数値を小さくする手段と
を備えることを特徴とする請求項5に記載の車載通信システム。 - 前記車載通信装置は、
前記判断手段により優先度が低いと判断する都度、前記上位ビット列が表す数値を1減ずるようにしてあること
を特徴とする請求項6に記載の車載通信システム。 - 前記所定値は、前記車載通信装置が接続されている通信線に接続されている車載通信装置の総数から1減じた数値としてあること
を特徴とする請求項6又は7に記載の車載通信システム。 - 車輌に配されている通信線に接続されており、前記通信線への送出の優先度を表すビット列を含むデジタルデータを前記通信線へ送出する車載通信装置が、前記通信線へ送出が試みられている他のデジタルデータの優先度を検知し、自らが送出中のデジタルデータが含む優先度が検知した優先度よりも高いか否かを判断し、低いと判断した場合にデジタルデータの送出を停止する車載通信方法において、
前記車載通信装置は、
自らが送出中のデジタルデータが含む優先度が検知した優先度よりも低いと判断した場合、送出を停止したデジタルデータの優先度を高め、
優先度を高めたデジタルデータの送出を試みること
を特徴とする車載通信方法。 - 前記通信線ではデジタルデータの各ビットはゼロビットが優先的に送出されるようにしてあり、
前記車載通信装置は、
デジタルデータの送出を新たに試みる場合、前記上位ビット列が表す数値に所定値を設定し、
デジタルデータの送出を試みた場合に送出中のデジタルデータの優先度が検知した優先度よりも低いと判断したときは、優先度を表すビット列の内の上位ビット列が表す数値を小さくすること
を特徴とする請求項9に記載の車載通信方法。 - 前記車載通信装置は、
送出中のデジタルデータの優先度が検知した優先度よりも低いと判断する都度、前記上位ビット列が表す数値を1減ずること
を特徴とする請求項10に記載の車載通信方法。 - 前記所定値は、前記車載通信装置が接続されている通信線に接続されている車載通信装置の総数から1減じた数値であること
を特徴とする請求項10又は11に記載の車載通信方法。
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-
2007
- 2007-01-15 JP JP2007006098A patent/JP2008172709A/ja active Pending
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