以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における車載通信システムの構成を模式的に示す構成図である。実施の形態1における車載通信システムは、電子制御装置(ECU)を用いた車載通信装置11a,11b,12a,12b,13a,13bと、車載通信装置11a,11b,12a,12b,13a,13b間を夫々接続する車内通信回線21,22,23と、車内通信回線21,22,23を接続する中継装置3a,3bとを備える。
実施の形態1における車載通信システムはCANのプロトコルに準じて構成されている。なお、LIN(Local Interconnect Network)、BEAN(Body Electronics Area Network)、さらにはFlexRay等のプロトコルに基づいて構成されていてもよい。
車載通信装置11a,11bは、車内通信回線21に夫々バス型で接続されており、車載通信装置11a,11bから車内通信回線21へ送出されるメッセージは共通して車載通信装置11a,11bで受信することが可能である。また、車内通信回線21には中継装置3aが接続されており、中継装置3aは、車載通信装置11a,11bから送出されるメッセージを受信することができる。
同様にして車載通信装置12a,12bは、車内通信回線22に夫々バス型に接続されており、車載通信装置12a,12bから車内通信回線22へ送出されるメッセージは共通して車載通信装置12a,12bで受信することが可能である。また、車内通信回線22には中継装置3a,3bが接続されており、中継装置3a,3bは、車載通信装置12a,12bから送出されるメッセージを受信することができる。
さらに、車載通信装置13a,13bは、車内通信回線23に夫々バス型に接続されており、車載通信装置13a,13bから車内通信回線23へ送出されるメッセージは共通して車載通信装置13a,13bで受信することが可能である。また、車内通信回線23には中継装置3bが接続されており、中継装置3bは、車載通信装置13a,13bから送出されるメッセージを受信することができる。
車載通信装置11a,11b,12a,12b,13a,13bは、電子制御装置(ECU)を用いて例えば接続しているセンサが検知した温度、角度、速度等の各種物理量の測定値、計算値、制御値等を含むメッセージの送出、又はエンジン、ブレーキ等の各種装置のマイクロコンピュータによる制御が可能である。例えば、車載通信装置11aは、操舵角を検知する図示しないセンサに接続されている。車載通信装置11aは、センサから入力された操舵角の測定値を含むメッセージを車内通信回線21へ送出し、他の車載通信装置11b又は中継装置3aが受信する。
図2は、本発明の実施の形態1における車載通信システムを構成する車載通信装置11a及び中継装置3aの内部構成を示すブロック図である。車載通信装置11aは、以下に示す各構成部の動作を制御する制御部100と、各構成部へ電力を供給する電源回路101と、制御に必要なデータを記憶する記憶部102と、車内通信回線21との通信を制御する通信制御部103と、図示しないセンサ等からの信号を入力する入力部104と、図示しない制御対象装置へ制御信号を出力する出力部105とを備える。他の車載通信装置11b,12a,12b,13a,13bも車載通信装置11aと同様の構成であることから詳細な説明を省略する。なお、車載通信装置11a,11b,12a,12b,13a,13bの全て又はいずれか一方は入力部104及び出力部105のいずれか一方のみ備える構成でもよい。
車載通信装置11aの制御部100は、電源回路101を介して図示しない車輌のオルタネータから電力の供給を受け、入力部104を介してセンサからの信号を検出し、出力部105を介して制御対象装置へ制御信号を送出する。
車載通信装置11aの記憶部102は揮発性のメモリからなり、制御部100の処理の過程で発生する各種情報及びセンサから入力された信号が表す物理量の測定値のデータを一時的に記憶する。なお、車載通信装置11aは、必ずしもセンサと接続する必要はないので、制御のために計算処理で得られた計算値、制御によって得られた制御値等のデータを記憶しておく構成でもよい。また、記憶部102はEEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)、フラッシュメモリ等の揮発性メモリで構成してもよい。
車載通信装置11aの通信制御部103は、ネットワークコントローラチップを有しており、車内通信回線21を介した通信を実現する。車載通信装置11aの制御部100は、通信制御部103を介して後述の車内通信回線2へメッセージを送出し、他の車載通信装置11bから送出されたメッセージを受信する。
車内通信回線21は、CANのプロトコルに基づく通信回線であり、車載通信装置11a,11bは車内通信回線21を介してCAN仕様に基づく信号の発生/検出によりメッセージの送受信が可能である。車内通信回線22,23についても同様の構成であるので、以下の詳細な説明を省略する。なお、実施の形態1では車内通信回線21,22,23としてCAN仕様に基づく通信回線を例に説明する。しかしながら本発明に係る車載通信システムの車内通信回線21,22,23はこれに限らず、LIN(Local Interconnect Network)、BEAN(Body Electronics Area Network)等のプロトコルに基づく通信回線であってもよい。
CAN仕様に基づく車内通信回線21は一対の信号線、具体的にはツイストペアケーブルからなり、車内通信回線21に接続する車載通信装置11a,11bはペア線間に発生する差動電圧を検出することにより信号を検出してメッセージを受信する。また、車載通信装置11a,11bはペア線間の差動電圧を制御することにより信号を発生してメッセージを送出する。
車内通信回線21のツイストペアケーブルのペア線の電位は夫々CAN_Highレベル、CAN_Lowレベルに設定されている。ペア線の電位の差動電圧がゼロの状態又はCAN_Lowレベルの電位がCAN_Highレベルの電位よりも高い状態がデジタル信号の「1」(レセッシブ)を表し、CAN_Highレベルの電位がCAN_Lowレベルの電位よりも高い状態がデジタル信号の「0」(ドミナント)を表す。車内通信回線21に接続されている車載通信装置11a,11bは、車内通信回線21のペア線間の差動電圧を制御することにより「0」,「1」で表される信号を発生し、メッセージを送出する。
中継装置3aは、車内通信回線21,22に夫々接続される車載通信装置11a,11b,12a,12bからのデータ信号(データフレーム)を検知してデータを含むメッセージを受信する。中継装置3bは、中継装置3aと同様又は対称な構成であるため以下の詳細な説明を省略する。なお、中継装置3aはデータの要求を示す送信要求を送信要求信号(リモートフレーム)によって各車載通信装置11a,11b,12a,12bに送信し、各車載通信装置11a,11b,12a,12bからは送信要求信号に応じたメッセージが送出される。
中継装置3aは、以下に示す各構成部の動作を制御する制御部30と、各構成部へ電力を供給する電源回路31と、各車載通信装置11a,11b,12a,12bから送出されたデータを記憶する記憶部32と、車内通信回線21と接続する第1通信部33と、車内通信回線22と接続する第2通信部34とを備える。
記憶部32は揮発性のメモリからなり、制御部30の処理によって発生する各種情報のみならず車載通信装置11a,11b,12a,12bから送出されたメッセージに含まれるデータが記憶される。中継装置3aの制御部30は、車輌のオルタネータから電源回路31を介して電力の供給を受けてメッセージを受信し、受信したメッセージを中継する。なお、記憶部32は揮発性メモリであるが図示しない電池を内蔵し、記憶しているデータを保持することが可能である。
中継装置3aの第1通信部33及び第2通信部34は、ネットワークコントローラチップを有して車内通信回線21,22との通信を実現する。中継装置3aの制御部30は、第1通信部33を介して車内通信回線21の信号線間の差動電圧を検出して信号を検知し車載通信装置11a,11bから送出されたメッセージを受信する。同様にして中継装置3aの制御部30は、第2通信部34を介して車内通信回線22の信号線間の差動電圧を検出して信号を検知し車載通信装置12a,12bから送出されたメッセージを受信する。
車載通信装置11a,11bの制御部100は、車内通信回線21へCANに基づくメッセージを表すデジタルデータを通信制御部103により送出する。CANの規約による場合、車載通信装置11a,11bから測定値、計算値、制御値等の各種データを含むとき又は各種情報を要求するときに送出されるメッセージには、メッセージ送出開始を示すビットに引き続き、データの種類に割り振られたIDを表すビット列を含むアービトレーションフィールドが含まれる。
車載通信装置11aの制御部100は、「57」のIDを有するメッセージの送出を通信制御部103により試みる。車載通信装置11bの制御部100は、「23」のIDを有するメッセージの送出を通信制御部103により試みる。車載通信装置12aの制御部100は、「26」のIDを有するメッセージを通信制御部103により送出する。車載通信装置13bの制御部100は、「48」のIDを有するメッセージを通信制御部103により送出する。
本発明に係る車載通信装置11a,11b,12a,12b,13a,13b夫々の制御部100は、メッセージを送出する際にメッセージが含むアービトレーションフィールドの内の上位ビット列に「中継ポイント」を示す数値を表し、下位ビット列にはメッセージが含むデータの種類に割り振られたIDを表す。「中継ポイント」を示す数値は、中継装置3a,3bが異なる車内通信回線21,22,23間でメッセージを中継する際に減じる数値である。例えば、車内通信回線21に接続されている車載通信装置11aから送出された「57」のIDを有するメッセージが中継装置3aによって受信され、他の車内通信回線22へ送出される場合、中継装置3aの制御部30は、メッセージのアービトレーションフィールドの内の上位ビット列で表される「中継ポイント」を1減ずる。
なお、本発明に係る車載通信装置11a,11b,12a,12b,13a,13b夫々の制御部100は、例えば新たにメッセージの送出を試みる場合、アービトレーションフィールドの上位ビット列が表す「中継ポイント」を示す数値を所定値に設定する。実施の形態1では、所定値は車載通信システムの構成が考慮され、中継回数の最大値「2」を所定値としてある。最も中継回数の多いメッセージが必ず調停で勝つようにするためである。
次に、車載通信装置11a,11bの制御部100がメッセージの送出を新たに試みる際にアービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値を所定値に設定し、中継装置3aがメッセージを中継する際に、アービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値を減じる処理について説明する。図3は、本発明に係る車載通信装置11aの制御部100によるメッセージの送出及び中継装置3aの制御部30によるメッセージの中継の処理手順を示すフローチャートである。他の車載通信装置11b,12a,12b,13a,13b及び中継装置3bについても同様の処理を行なうため詳細な説明を省略する。
なお、車載通信装置11aの記憶部102には自らが送出するメッセージに含まれるデータの種類に割り振られたIDと、送出タイミングとが記憶されている。したがって、車載通信装置11aの制御部100は記憶部102に記憶されているIDが割り振られたデータについての送出タイミングに相当する時点となった場合、以下に示すようにメッセージの送出を試みる。
車載通信装置11aの制御部100は、通信制御部103により車内通信回線21で他の車載通信装置11bからメッセージが送出されているか否かによって、送出が可能であるか否かを判断する(ステップS101)。車載通信装置11aの制御部100は、車内通信回線21の電位がドミナントレベルであって、他の車載通信装置11bからメッセージの送出が行なわれているので自らのメッセージの送出が不可能であると判断した場合(S101:NO)、処理をステップS101へ戻して送出が可能であると判断するまで待機する。
車載通信装置11aの制御部100は、メッセージの送出が可能であると判断した場合(S101:YES)、送出を試みようとするメッセージについて新たな送出か否かを判断する(ステップS102)。新たな送出か否かの判断は、送出を試みようとするメッセージの送出権を調停によって得ることができなかった回数、即ち調停に負けた回数を記憶部102に記憶するようにしておき、いずれかが1以上であるか否かにより判断することができる。
車載通信装置11aの制御部100は、ステップS102において新たな送出であると判断した場合(S102:YES)、送出を試みるメッセージのアービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値に所定値を設定し(ステップS103)、メッセージの送出を開始する(ステップS104)。所定値は上述の通り、車載通信システムの構成から中継回数の最大値「2」としてある。所定値は車載通信装置11aの記憶部102に記憶されており、車載通信装置11aの制御部100は記憶部102から所定値を読み出してアービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値として設定する。
車載通信装置11aの制御部100は、ステップS102において最初の送出でないと判断した場合(S102:NO)、そのままメッセージの送出を開始する(S104)。
次に車載通信装置11aの制御部100は、自らが送出を開始しているメッセージのアービトレーションフィールドを表すビット列と、通信制御部103を介して検知した車内通信回線21で伝送中のビット列とが一致するか否かを判断することにより、調停に勝ったか否かを判断する(ステップS105)。
車載通信装置11aの制御部100は、調停に負けたと判断した場合(S105:NO)、開始していたメッセージの送出を停止し(ステップS106)、メッセージの送出を再度試みるために処理をステップS101へ戻し、車内通信回線21で送出が可能であると判断するまで待機する。
車載通信装置11aの制御部100は、調停に勝ったと判断した場合(S105:YES)、メッセージの送出を継続する(ステップS107)。
車内通信回線21に接続されている中継装置3aの制御部30は、車内通信回線21へ送出されているメッセージを第1通信部33を介して受信し(ステップS108)、メッセージのアービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値を減じる(ステップS109)。実施の形態1では、中継装置3aの制御部30は、ステップS109においてアービトレーションフィールドの上位ビット列でが表す数値を1減じる。中継装置3aの制御部30は、上位ビット列が表す数値を減じたメッセージを他の車載通信装置12a,12bへ中継するために車内通信回線22へ送出し(ステップS110)、処理を終了する。
中継装置3aの制御部30による前述のような処理手順によって、中継装置3aを経由したメッセージについては優先度が高められる。
図4は、本発明に係る車載通信システムを構成する車載通信装置11a,12aから送出されるメッセージのアービトレーションフィールドを模式的に示す説明図である。図4(a)に示されているメッセージのアービトレーションフィールドは、車載通信装置11aから送出され、中継装置3aにより車内通信回線22へ中継され送出が試みられる「57」のIDを有するメッセージのアービトレーションフィールドである。図4(b)に示されているメッセージのアービトレーションフィールドは車載通信装置12aから車内通信回線22へ送出が試みられる「26」のIDを有するメッセージのアービトレーションフィールドである。
図4に示すように、車載通信装置11aから送出され中継装置3aにより中継された「57」のIDを有するメッセージでは、アービトレーションフィールドの下位ビット列ではID「57」(000111001b)が表されており、上位ビット列では中継装置3aによって所定値「2」から1減じられた数値「1」(01b)が表されている。中継装置3aにより中継される際に減じられたためである。また、車載通信装置12aから送出が試みられる「26」のIDを有するメッセージでは、アービトレーションフィールドの下位ビット列ではID「26」(000011010b)が表されており、上位ビット列では新たに設定される所定値「2」(10b)が表されている。
図4に示されるようなアービトレーションフィールドを夫々有するメッセージの送出が、車内通信回線22で競合した場合、アービトレーションフィールドの1ビット目でドミナントレベルが優先されるため、「57」のIDを有する車載通信装置11aからのメッセージの送出が優先される。
図5は、実施の形態1における車載通信システムにおいて車載通信装置11a,11b,12a,13bから送出が試みられるメッセージと、車内通信回線21,22,23に実際に送出されるメッセージの順序とを模式的に示す説明図である。横軸に時間の経過を示している。図5に示されている実線のブロックはメッセージを夫々表しており、数字はメッセージが有するIDであってアービトレーションフィールドの下位ビット列で表される数値である。破線のブロックは夫々の時点で調停が行なわれるメッセージを表している。破線のブロック内の数字はアービトレーションフィールドで表される数値であり、上位ビット列で表される「中継ポイント」及び下位ビット列で表されるIDを夫々表す数値である。
図5に示すように、車載通信装置11aから「57」のIDを有するメッセージの送出が試みられた時点t1 においては、車載通信装置11bからも車内通信回線21への「23」のIDを有するメッセージの送出が試みられる。この場合、車載通信装置11a及び車載通信装置11bによる「57」及び「23」のIDを夫々有するメッセージの送出については新たな試みであるため、いずれのメッセージでもアービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値は所定値である「2」である。
したがって、車載通信装置11a及び車載通信装置11b間での送出権の調停は、上位ビット列が表す数値が同一であるので下位ビット列が表すIDによって行なわれる。したがって、「23」のIDを有するメッセージの送出を試みる車載通信装置11bが車内通信回線21への送出権を得る。「57」のIDを有するメッセージの送出を試みる車載通信装置11aの制御部100は、送出権を得ることができず調停に負けるので、車内通信回線21が送出可能となるまで待機する。
車載通信装置11bから「23」のIDを有するメッセージの送出が終了するt2 の時点では、他の車載通信装置11bからの送出の試みはないので、車載通信装置11aによって「57」のIDを有するメッセージが車内通信回線21へ送出される。
中継装置3aの制御部30は第1通信部33を介して「57」のIDを有するメッセージを受信し、中継するための処理に時間を要した後t3 の時点で第2通信部34を介して車内通信回線22への送出を試みる。しかしt3 の時点では、車載通信装置12bによるメッセージの送出が行なわれており、中継装置3aの制御部30は「57」のIDを有するメッセージを送出することができない。
中継装置3aの制御部30は、車載通信装置12bによる送出終了後t4 の時点で再度「57」のIDを有するメッセージの送出を試みる。t4 の時点では、それ以前に一度「26」のIDを有するメッセージの送出を試みた車載通信装置12aにより再度送出が試みられるのでアービトレーションフィールドによる調停が行なわれる。車載通信装置12aによる「26」のIDを有するメッセージの送出は車内通信回線22への直接的な送出であるのでアービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値は「2」である一方、「57」のIDを有するメッセージの送出は中継装置3aを経由することにより、アービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値が1減じられ、数値は「1」である。したがって、ドミナントレベルが多く連続するので、「57」のIDを有するメッセージは調停の結果t4 の時点で車内通信回線22へ送出される。
以降同様に、中継装置3bの制御部30は第1通信部33を介して「57」のIDを有するメッセージを受信し、中継するための処理に時間を要した後t5 の時点で第2通信部34を介して車内通信回線23への送出を試みる。しかしt5 の時点では、車載通信装置13aによるメッセージの送出が行なわれており、中継装置3bの制御部30は「57」のIDを有するメッセージを送出することができない。
中継装置3bの制御部30は、車載通信装置13aによる送出終了後t6 の時点で再度「57」のIDを有するメッセージの送出を試みる。t6 の時点では、それ以前に一度「48」のIDを有するメッセージの送出を試みた車載通信装置13bにより再度送出が試みられるのでアービトレーションフィールドによる調停が行なわれる。車載通信装置13bによる「48」のIDを有するメッセージの送出は車内通信回線23への直接的な送出であるのでアービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値は「2」である一方、「57」のIDを有するメッセージの送出は中継装置3bを経由することにより、アービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値が更に1減じられ、数値は「0」である。したがって、ドミナントレベルが多く連続するので、「57」のIDを有するメッセージは調停の結果t6 の時点で車内通信回線23へ送出される。
本発明の実施の形態1における車載通信システムの構成により、中継装置3a,3bを経由したメッセージは、アービトレーションフィールド全体が表す数値を小さくすることで優先度が高められる。したがって、中継装置3a,3bを経由することによってメッセージの送出が極端に遅延することを回避することができる。なお、車内通信回線21,22,23に夫々接続している車載通信装置11a,11b,12a,12b,13a,13bから直接的に送出されるメッセージよりも中継装置3a,3bを経由して送出されるメッセージの方が優先度は必ず高いので、中継装置3a,3bでの受信及び中継の処理に要する時間に相当する時間に遅延時間を抑えることができる。
さらに、車載通信装置11a,11b,12a,12b,13a,13bから直接的に送出が試みられる際、アービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値に中継回数の最大値が設定され、中継される都度1減じられる。したがって、中継装置3a,3bを経由した回数によって数値が段階的に区別され、且つ経由した回数が多いほど上位ビット列が表す数値が小さく優先度が高められ、中継装置3a,3bを経由することによって極端に遅延することを防止することができる。
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2における車載通信システムの構成を示すブロック図である。実施の形態2における車載通信システムは、電子制御装置(ECU)を用いた車載通信装置11a,11b,12a,12b,13a,13b,14a,14bと、車載通信装置11a,11b,12a,12b,13a,13b,14a,14b間を夫々接続する車内通信回線21,22,23,24と、車内通信回線21,22,23,24を接続する中継装置3aとを備える。
実施の形態2においては、車載通信装置11a,11b,12a,12b,13a,13bは、実施の形態1における車載通信装置11a,11b,12a,12b,13a,13b同様、夫々車内通信回線21,22,23にバス型に接続されている。実施の形態2における車載通信システムを構成する車載通信装置14a,14bも他の車載通信装置11a,11b,12a,12b,13a,13bと同様に車内通信回線24にバス型に接続されている。実施の形態2における車載通信システムが実施の形態1における車載通信システムと異なる点は、中継装置3aが車内通信回線23,24とさらに接続しており、4つの車内通信回線21,22,23,24夫々に送出されたメッセージを同時に受信することが可能な点である。
実施の形態2における車載通信システムを構成する各車載通信装置11a,11b,12a,12b,13a,13b,14a,14bの内部構成は処理手順も含め、実施の形態1における各車載通信装置11a,11b,12a,12b,13a,13bと同様であるので、詳細な説明を省略する。車内通信回線21,22,23,24も、実施の形態1における車内通信回線21,22,23と同様の構成であるので詳細な説明を省略する。さらに中継装置3aも第1通信部33及び第2通信部34の他に、車内通信回線23と接続する第3通信部35及び車内通信回線24と接続する第4通信部36を備えること以外は、処理手順も含めて実施の形態1における中継装置3a,3bと同様の構成であるため詳細な説明を省略する。
中継装置3aの第3通信部35及び第4通信部36は夫々車内通信回線23,24を介した通信を実現するものであって第1通信部33及び第2通信部34と同一の機能を有する。
実施の形態2における車載通信システムを構成する各装置は実施の形態1と同様であるので、以下に実施の形態1と同様の符号を用い、実施の形態2における車載通信装置11a,11b,12a,12b,13a,13b,14a,14b及び中継装置3aの処理によって、中継装置3aを経由することにより優先度が高められるメッセージについて説明する。
図7は、実施の形態2における車載通信システムにおいて車載通信装置11b,12a,13a,14bから送出が試みられるメッセージと、車内通信回線21,22,23,24に実際に送出されるメッセージの順序とを模式的に示す説明図である。横軸に時間の経過を示している。図7に示されている実線のブロックはメッセージを夫々表しており、数字はメッセージが有するIDであってアービトレーションフィールドの下位ビット列で表される数値である。破線のブロックは夫々の時点で調停が行なわれるメッセージを表している。破線のブロック内の数字はアービトレーションフィールドで表される数値であり、上位ビット列で表される「中継ポイント」及び下位ビット列で表されるIDを夫々表す数値である。
実施の形態2においては、車載通信装置11bからは「23」のIDを有するメッセージの送出が試みられる。車載通信装置12aからは「28」のIDを有するメッセージの送出が試みられる。また、車載通信装置13aからは「13」のIDを有するメッセージの送出が試みられ、車載通信装置14bからは「34」のIDを有するメッセージの送出が試みられる。
なお、実施の形態2において中継回数の最大値は1回であると考えられるので車載通信装置11b,12a,13a,14b夫々の制御部100により送出の際に設定される「中継ポイント」は「1」である。
図7に示すようにまず、t1 の時点で車載通信装置11bから車内通信回線21への送出が開始される。中継装置3aの制御部30は第1通信部33により、車内通信回線21へ送出された「23」のIDを有するメッセージを受信し、受信処理及び中継処理に時間を要した後のt2 の時点で、第2通信部34、第3通信部35及び第4通信部36によって夫々車内通信回線22,23,24へのメッセージの中継を試みる。この際、中継装置3aの制御部30の処理により、「23」のIDを有するメッセージのアービトレーションフィールドの内の上位ビット列が表す数値「中継ポイント」は所定値「1」から1減じられた「0」である。
まず、車内通信回線22では、t2 の時点で車載通信装置12bによってメッセージが先に送出されており、中継装置3aの制御部30はメッセージを送出することができない。また、t2 以前の車載通信装置12bによるメッセージの送出中には、車載通信装置12aの制御部100も、「28」のIDを有するメッセージの送出を試みている。したがって、車載通信装置12bによるメッセージの送出が終了したt3 の時点で、中継装置3aの制御部30と車載通信装置12aの制御部100との間でメッセージのアービトレーションフィールドによる送出権の調停が行なわれる。ここで、「28」のIDを有するメッセージのアービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値は「1」である一方、「23」のIDを有するメッセージのアービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値は中継装置3aの制御部30により1減じられて「0」である。したがって、ドミナントレベルが多く連続する「23」のIDを有するメッセージは調停の結果t3 の時点で優先的に車内通信回線22へ送出される。
車内通信回線23では、t2 の時点で車載通信装置13bによってメッセージが先に送出されており、中継装置3aの制御部30はメッセージを送出することができない。また、t2 以前の車載通信装置13bによるメッセージの送出中には、車載通信装置13aの制御部100も、「13」のIDを有するメッセージの送出を試みている。したがって、車内通信回線23でも同様に、車載通信装置13bによるメッセージの送出が終了したt4 の時点で、中継装置3aの制御部30と車載通信装置13aの制御部100との間で送出権の調停が行なわれる。「13」のIDを有するメッセージのアービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値は「1」であり、「23」のIDを有するメッセージのアービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値は中継装置3aの制御部30により1減じられて「0」である。したがって、ドミナントレベルが多く連続する「23」のIDを有するメッセージは調停の結果t4 の時点で優先的に車内通信回線23へ送出される。
一方車内通信回線24では、t2 の時点では車載通信装置14bによる「34」のIDを有するメッセージの送出も試みられる。しかし、「34」のIDを有するメッセージのアービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値は「1」であり、「23」のIDを有するメッセージのアービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値は中継装置3aの制御部30により1減じられて「0」である。したがって、ドミナントレベルが多く連続する「23」のIDを有するメッセージは調停の結果t2 の時点で優先的に車内通信回線24へ送出される。
本発明の実施の形態2における車載通信システムの構成により、中継装置3aを経由したメッセージは、アービトレーションフィールド全体が表す数値を小さくすることで優先度が高められる。中継装置3aを経由することによってメッセージの送出が極端に遅延することを回避することができる。車内通信回線21,22,23,24に夫々接続している車載通信装置11a,11b,12a,12b,13a,13b,14a,14bから直接的に送出されるメッセージよりも中継装置3aを経由して送出されるメッセージの方が優先度は必ず高い。したがって、中継装置3aでの受信及び中継の処理に要する時間に相当する時間に遅延時間を抑えることができる。
例えば図7に示したように車載通信装置11bから送出された「23」のIDを有するメッセージも、より優先度の高い「13」のIDを有するメッセージよりも先に送出され、車内通信回線21,22,23,24に夫々接続している車載通信装置11a,11b,12a,12b,13a,13b,14a,14bによる受信の同時性を高めることができる。各車載通信装置11a,11b,12a,12b,13a,13b,14a,14bによる受信の同時性の誤差は、最大で中継装置3aでの受信、即ち一のメッセージの車内通信回線21,22,23,24での伝送時間、中継装置3aでの中継の処理に要する時間、及びいずれか11a,11b,12a,12b,13a,13b,14a,14bによって既に送出されているメッセージの送出終了を待つ時間の合計に相当する時間とと見積もることができる。
(実施の形態3)
図8は、本発明の実施の形態3における車載通信システムの構成を示すブロック図である。実施の形態3における車載通信システムは、電子制御装置(ECU)を用いた車載通信装置11a,11b,12a,12b,13a,13b,14a,14b,15a,15b,16a,16bと、車載通信装置11a,11b,12a,12b,13a,13b,14a,14b,15a,15b,16a,16b間を夫々接続する車内通信回線21,22,23,24,25,26と、車内通信回線21,22,23,24,25,26を接続する中継装置3a,3b,3cと、中継装置3a,3b,3c間を接続する車内幹線4とを備える。
実施の形態3においては、車載通信装置11a,11b,12a,12b,13a,13bは、実施の形態1における車載通信装置11a,11b,12a,12b,13a,13b同様、車内通信回線21,22,23に夫々バス型に接続されている。実施の形態3における車載通信システムを構成する車載通信装置14a,14b,15a,15b,16a,16bも他の車載通信装置11a,11b,12a,12b,13a,13bと同様に車内通信回線24,25,26にバス型に接続されている。
実施の形態3における車載通信システムは、中継装置3aは支線としての車内通信回線21,22と接続しており、中継装置3b及び中継装置3cも夫々支線としての車内通信回線23,24、車内通信回線25,26と接続し、中継装置3a,3b,3c間は車内幹線4によって接続される幹線型のシステムを構成している点が実施の形態1及び2と異なる。
しかしながら、実施の形態3における車載通信システムを構成する各車載通信装置11a,11b,12a,12b,13a,13b,14a,14b,15a,15b,16a,16bの内部構成は処理手順も含め、実施の形態1における各車載通信装置11a,11b,12a,12b,13a,13bと同様であるので、詳細な説明を省略する。車内通信回線21,22,23,24,25,26も、実施の形態1における車内通信回線21,22,23と同様の構成であるので詳細な説明を省略する。さらに中継装置3a,3b,3cも第1通信部33及び第2通信部34の他に、車内幹線4と接続する幹線通信部37を備えること以外は、処理手順も含めて実施の形態1における中継装置3a,3bと同様の構成であるため詳細な説明を省略する。車内幹線4も、車内通信回線21,22,23,24,25,26と同様の構成でよい。
ただし、実施の形態3における中継装置3a,3b,3cの制御部30は夫々、各車載通信装置11a,11b,12a,12b、13a,13b,14a,14b、15a,15b,16a,16bからメッセージを受信し、受信したメッセージに含まれるデータを記憶部32に記憶する。中継装置3a,3b,3cは、データをデータベースとして記憶部32に記憶しておき、中継装置3a,3b,3c間でデータベースの同期をとるようにしてある。また、中継装置3a,3b,3cの記憶部32のデータベースには、データに対応付けて送出タイミングが記憶されており、送出タイミングが到来する都度各データを含むメッセージの送出を試みる。
なお、中継装置3a,3b,3cの制御部30は、送出タイミングが到来した場合にメッセージの送出を試みる際夫々、アービトレーションフィールドの上位ビットが表す数値を各車載通信装置11a,11b,12a,12b,13a,13b,14a,14b,15a,15b,16a,16bが新たに送出するメッセージのアービトレーションフィールドの上位ビットが表す数値に設定する値よりも減じられた値を設定する。
なお、車内幹線4は、車内通信回線21,22,23,24,25,26とは異なり、パケット交換網等でもよい。その場合幹線通信部37はパケット交換によって中継装置3a,3b,3c間での通信を実現する。
以下に実施の形態1と同様の符号を用い、実施の形態3における車載通信装置11a,11b,12a,12b,13a,13b,14a,14b,15a,15b,16a,16b及び中継装置3a,3b,3cの処理によって、中継装置3a,3b,3cを経由することにより優先度が高められるメッセージについて説明する。
中継装置3a,3b,3cから送出タイミングに基づいて送出されるメッセージのアービトレーションフィールドの内の上位ビット列が表す数値は、各車載通信装置11a,11b,12a,12b、13a,13b,14a,14b,15a,15b,16a,16bが新たに送出するメッセージのアービトレーションフィールドの上位ビットが表す数値に設定する値よりも小さい値が設定されている。したがって、各車載通信回線21,22,23,24,25,26において、車載通信装置11a,11b,12a,12b,13a,13b,14a,14b,15a,15b,16a,16bによって既にメッセージが送出中でない場合は、中継装置3a,3b,3cの制御部30から送出が試みられるメッセージが優先されて送出される。
本発明の実施の形態3における構成により、中継装置3a,3b,3cを経由したメッセージは、アービトレーションフィールド全体が表す数値を小さくすることで優先度が高められる。また、車内通信回線21,22,23,24,25,26に夫々接続している車載通信装置11a,11b,12a,12b,13a,13b,14a,14b,15a,15b,16a,16bから直接的に送出されるメッセージよりも中継装置3a,3b,3cから送出されるメッセージの方が優先度は高い。したがって、各車内通信回線21,22,23,24,35,26で優先的に送出されるので、各中継装置3a,3b,3cから同期した送出タイミングによって送出されるメッセージは、車載通信装置11a,11b,12a,12b,13a,13b,14a,14b,15a,15b,16a,16bによってほぼ同時に受信することができる。この場合、同時性の誤差は最大でも、車載通信装置11a,11b,12a,12b,13a,13b,14a,14b,15a,15b,16a,16bのいずれかによって既に送出されているメッセージの送出終了を待つ時間に相当する時間と見積もることができる。
なお、実施の形態1乃至3では、「中継ポイント」を表すための上位ビット列は、アービトレーションフィールドの先頭のビット列とした。しかしながら、本発明ではこれに限らず、ゼロビットがより多く連続し優先的に送出されるようにすることができるのであれば、先頭のビット列を使用せずに例えばアービトレーションフィールドの3ビット目から2ビットを使用する構成でもよい。
また、実施の形態1乃至3では、新たにメッセージの送出を試みる際のアービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値の所定値として、車載通信システムの構成が考慮され、中継回数の最大値を設定する構成とした。最も中継回数の多いメッセージが必ず調停で勝つようにするためである。しかしながら、本発明は新たにメッセージの送出を試みる際、アービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値の所定値を中継回数の最大値としない構成でもよい。車載通信システムの構成を考慮し、中継装置を経由しても極端に送出が遅延しないように現実的な所定値を設定する構成でもよい。例えば、中継装置5台によって6つの車内通信回線を直列的に接続している場合であっても、新たに送出するメッセージのアービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値に中継回数の最大値「5」ではなく、「3」を設定してもよい。両端の車内通信回線に接続している車載通信装置間でメッセージを交換することが、現実の車載通信システムの構成上現実的でない場合もあるからである。上位ビット列の解釈はシステムの設計により変更可能な独自のものであるため、可能な限り使用するビット数を少なくすることが望ましい。
また、実施の形態1乃至3において、中継装置3a,3b,3cはメッセージを中継する際にアービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値を1ずつ減ずる構成とした。しかしながら本発明はこれに限らず、優先度の高いIDを有するメッセージについて、可能な限り優先的に送出されるようにするべく、アービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値を1ずつでなく2ずつ減じる構成でもよい。また、段階的に減じる数値を大きくして他のメッセージよりも先にアービトレーションフィールドの上位ビット列が表す数値を早く減少させるような構成でもよい。