JP2008169535A - 炭素繊維前駆体繊維用重合体組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】
製糸可紡性、焼成工程における延伸性、および炭素繊維の物性を損なうことなく、炭化収率が優れた炭素繊維を製造すること。
【解決手段】
動的光散乱式粒度分布測定法による平均粒径が200nm以下のカーボンブラック5〜50重量部および該カーボンブラックの分散剤の存在下、アクリロニトリルを90モル%以上含有する重合モノマー100重量部を溶液重合することを特徴とする炭素繊維前駆体組成物の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、紡糸性を損なうことなく、焼成工程後の炭化収率を向上させることが可能な炭素繊維前駆体繊維用重合体組成物の製造方法、ならびにそれを用いた炭素繊維前駆体繊維および炭素繊維の製造方法に関するものである。
炭素繊維は、強度や弾性率などの機械特性が優れるため、航空機部材、鉄道車両部材、船舶部材、スポーツ用品用途などに利用され、さらに近年は自動車部材やCNGタンク、建造物の耐震補強など一般産業用途への利用が増加している。炭素繊維は、工業的にはポリアクリロニトリルなどを紡糸、焼成して製造されるが、焼成工程とは前駆体繊維を200〜300℃の空気中で熱処理する耐炎化工程、300〜3000℃の不活性雰囲気中で熱処理する炭化工程からなる。
この耐炎化工程および炭化工程は、炭素繊維の物性特性、および生産性を左右する重要な工程である。すなわちアクリル系繊維の耐炎化工程により、該繊維を構成する高分子鎖を酸化すると共に高分子鎖に結合したニトリル基を環化することにより、引き続く炭化工程を通過しうる程度に熱的に安定な構造を有する繊維に転換させ、炭化工程においてさらに高温の不活性雰囲気化で酸化を促進させ構造を緻密化することにより、強度、弾性率の優れた炭素繊維となる。
しかし、この焼成工程を経て製造された炭素繊維は、耐炎化工程の後に行う炭化工程の収率が低く、生産性が悪くなるなどの問題がある。ここでいう炭化工程の収率とは、焼成工程において、加わる熱エネルギーによって繊維が焼き飛ばされ重量減少した後の炭素繊維重量と、焼成工程前のアクリル系繊維の重量との比(%)を指し、炭素繊維の生産性を示す指標として用いられる。炭素繊維製造コストを引き下げる見地から、この焼成工程における炭化収率を向上させる技術を確立し、炭素繊維の生産性を向上させることが望まれている。
ポリアクリロニトリルの場合、炭化工程の収率は理論的には69%程度であるが、現状の製造工程で生産される炭素繊維の収率は50%程度であり、黒鉛化繊維の炭化収率は46%程度である。耐炎化工程においてポリアクリロニトリルのニトリル基は隣接したニトリル基と反応し、ナフチリジン環、アクリドン環が縮合した構造が形成され、次の炭化工程でも消失しない耐炎化構造となる。しかしながら、現状の製造工程で生産される耐炎化糸は未環化のアクリロニトリル構造が残存し、炭化工程で消失するために収率の低下を引き起こす。
耐炎化糸の段階で炭素比率の高い炭素繊維前駆体とすれば炭化工程において、焼き飛ばされる繊維の量は減少し、炭化の収率は向上できる。炭素比率の高い炭素繊維前駆体を得るにはポリアクリロニトリル系重合体と炭素系微粒子を混合することによって達成される。ここでいう炭素系微粒子としては、カーボンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブなどが挙げられるが、フラーレン、カーボンナノチューブは炭化収率向上用途に用いるには価格が高価である。一方カーボンブラックは安価で微細構造であることから炭化収率向上の用途に適している。
アクリロニトリル系重合体にカーボンブラックを混合する技術はこれまでにもいくつかの方法が開示されている。
アクリロニトリルのラジカル重合過程において、少量の炭素系微粒子をあらかじめ重合槽内に添加した状態で重合反応を行い、炭素繊維前駆体組成物を得る方法がある(特許文献1参照)。本技術を用いれば炭素系微粒子がポリマーに対して1重量%以下の含有量で混合する場合には良好な分散が得られるが、炭素系微粒子を大量に添加した場合は分散が不均一となり、引き続く紡糸の際に口金フィルターの目詰まりや、吐出時の糸切れなどが起こりやすくなる。
またアクリルニトリル系重合体とカーボンナノファイバーと、該カーボンナノファイバーの分散剤の混合物からアクリル繊維、炭素繊維を得る方法が開示されている(特許文献2参照)。この方法を用いればカーボンナノファイバーが分散したポリアクリロニトリル系ポリマーを得ることができる。
しかしながらカーボンブラックの表面には酸性官能基が存在するため、少量の分散剤の混合で分散性が大きく向上するが、カーボンナノチューブには表面官能基がないため、混合比率を上げ、かつ分散性を向上させるためには大量の分散剤を添加する必要があり、このアクリル繊維を焼成して生成した炭素繊維はその物性が大きく低下してしまい、炭化収率向上の用途に用いることはできない。
特開昭60−59116号公報 特開2006−200114号公報
本発明の課題は、製糸可紡性、焼成工程における延伸性、および炭素繊維の物性を損なうことなく、炭化収率が優れた炭素繊維を製造することにある。
本発明は、かかる課題を解決するために、次の構成を有する。すなわち動的光散乱式粒度分布測定法による平均粒径が200nm以下のカーボンブラック5〜50重量部および該カーボンブラックの分散剤の存在下、アクリロニトリルを90モル%以上含有する重合モノマー100重量部を溶液重合することを特徴とする炭素繊維前駆体組成物の製造方法である。
また、本発明の前記目的を達成するために、本発明の炭素繊維前駆体繊維の製造方法は次の構成を有する。すなわち、前記した炭素繊維前駆体組成物を湿式または乾湿式法により紡糸し、乾燥熱処理後、スチーム延伸する炭素繊維前駆体繊維の製造方法である。
さらには、本発明の前記目的を達成するために、本発明の炭素繊維の製造方法は次の構成を有する。すなわち、前記した方法により製造される炭素繊維前駆体繊維を、200〜300℃の空気中において耐炎化処理した後、300〜800℃の不活性雰囲気中において予備炭化処理し、1000〜2000℃の不活性雰囲気中において後炭化処理する炭素繊維の製造方法である。
本発明によれば、製糸における可紡性を損なうことなく、炭化収率に優れた炭素繊維を低コストで製造できる。
本発明における炭素繊維前駆体組成物は、含窒素塩基性化合物と平均粒径が200nm以下のカーボンブラックの存在下、重合モノマーを溶液重合することによって得られ、アクリロニトリル系重合体にカーボンブラックが分散してなる。
平均粒径が200nm以下となるカーボンブラックとは、通常、有機溶媒や水に分散させたときの平均粒径が200nm以下となるものをいう。ここでいう粒径とは、カーボンブラックの分散液について動的光散乱式粒度分布測定法により測定される値であり、測定原理は以下のようになる。懸濁液中に分散した微粒子は通常ブラウン運動をしているが、このブラウン運動の速さは粒子の粒径の大きさに左右される。ブラウン運動の速さを散乱強度の揺らぎとして測定することによって微粒子の粒径を測定することができ、この揺らぎを基にキュムラント法を用いることによって平均粒子径が算出され、ヒストグラム法によって粒度分布が算出される。より具体的には後述する方法で測定することができる。それにより、重合体中に均一に分散し、それを用いた炭素繊維は、弾性率、強度を保持できる。かかる平均粒径が大きすぎると、前駆体組成物中での分散性が悪くなり、炭素繊維前駆体繊維を製造する際の可紡性が損なわれるばかりでなく、炭素繊維を製造する際の延伸性不良、得られる炭素繊維の弾性率、強度低下の原因となる。また、かかる平均粒子径は、小さければ小さい程好ましく、現実的に入手可能なものは、現状50nm程度までであるが、さらに、平均粒子径が小さいもの例えば、その平均粒径が5nm程度のものがあれば好ましく適用できる。
本発明におけるカーボンブラックは表面酸化処理の度合いがカーボンブラックを水に濃度5%となるように分散したときの水分散液のpHが7未満、好ましくは4未満となるものがよい。かかるpHが7よりも大きいと、表面酸化処理が不十分であることを意味し、上記溶媒に対する分散性が不十分となる可能性がある。かかるpHは後述する方法で測定することができる。なお、かかるpHが1.0未満であると、表面酸化処理が過剰であることを意味し、水との相互作用が強くなりすぎて紡糸溶液を湿式紡糸する際に凝固浴中に炭素系微粒子が流出してしまう可能性があることから、pHは1.0以上が好ましい。
本発明におけるカーボンブラックは水素含有表面官能基量Cが3(μeq/m)以上であることが好ましい。水素含有表面官能基量Cが3(μeq/m)未満であると表面酸化処理が不十分であり、分散性が悪化し、紡糸する際の口金フィルター詰まり、炭素繊維の物性低下の原因となることがある。カーボンブラックの水素含有表面官能基量は特開平11−148027号に記載されている方法に従って求めることができる。なお、かかる水素含有表面官能基量C(μeq/m)が15以上であると、表面酸化処理が過剰であることを意味し、水との相互作用が強くなりすぎて紡糸溶液を湿式紡糸する際に凝固浴中に炭素系微粒子が流出してしまう可能性があることから、かかる水素含有表面官能基量は15未満が好ましい。
本発明におけるカーボンブラックの添加量は、重合モノマー100重量部に対して5〜50重量部、好ましくは7〜40重量部、より好ましくは10〜35重量部であることが必要である。かかるカーボンブラックの添加量が5重量部よりも少ないと炭化収率の向上効果が得られず、添加量が50重量部よりも多いとカーボンブラックの分散状態が不均一となり、紡糸する際に口金フィルター詰まりや糸切れが起こる原因となる。
本発明で用いるカーボンブラックの分散剤はカーボンブラックの凝集を抑制し、溶媒中に分散させるものであれば特に限定されないが、含窒素塩基性化合物、中和されたカチオン系モノマー共重合ポリマー、アニオン系界面活性剤が好ましく用いられる。
本発明で用いる含窒素塩基性化合物は、カーボンブラックの表面官能基を中和できるものであれば特に限定はされないが、アンモニア、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、モノヒドロキシアルキルアミン、ジヒドロキシアルキルアミン、トリヒドロキシアルキルアミン、含窒素ヘテロ環、およびグアニジン誘導体が挙げられ、中でも、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、1,6−ヘキサンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ピペラジン、ホモピペラジン、テトラメチルグアニジン、グアニジン炭酸塩が好ましく、さらにはアンモニア、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミンがより好ましく用いられる。
本発明に用いる含窒素塩基性化合物の添加量はカーボンブラックの分散性が良好になる量であれば特に限定されないが、カーボンブラック100重量部に対して0.001重量部〜100重量部、好ましくは0.01重量部〜50重量部、より好ましくは0.1重量部から20重量部とするのが良い。該含窒素塩基性化合物の混合量が0.001重量部未満であると効果が低く、100重量部よりも多いと得られる炭素繊維の物性が低下することがある。
本発明で用いる中和されたカチオン系モノマー共重合ポリマーとは、カチオン基を有する成分を共重合成分として含有するポリマーであって、カチオン基が中和された構造を有するものである。カチオン基とは、正の電荷を帯びた基質のことをいう。本発明で用いる中和されたカチオン系モノマー共重合ポリマーは、カチオン基を中和する塩基性の化合物が、カーボンブラックの表面官能基に相互作用し、カーボンブラック同士の接近を抑制するものであれば特に限定されないが、アクリル酸系重合体、メタアクリル酸系共重合体、マレイン酸系共重合体が好ましい。
カチオン系モノマー含有ポリマーのカチオン基を中和する金属、または、化合物としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、アンモニア、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、ジプロパノールアミン、ブタノールアミン、ジブタノールアミン、1,6−ヘキサンジアミン、ピペラジンが好ましく、ナトリウム、カリウム、アンモニア、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンがより好ましい。
本発明に用いる中和されたカチオン系モノマー含有ポリマーの添加量はカーボンブラックの分散性が良好になる量であれば特に限定されないが、カーボンブラック100重量部に対して0.001重量部〜100重量部、好ましくは0.1重量部〜50重量部、より好ましくは1重量部から20重量部である。該含窒素塩基性化合物の混合量が0.001重量部以下であると効果が見られず、100重量部よりも多いと得られる炭素繊維の物性が低下する。
本発明で用いるアニオン系界面活性剤は水中で乖離したときに陰イオンとなるものであれば特に限定されないが、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリール硫酸塩、アルキルナフタレン硫酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルアリールリン酸塩が挙げられる。これらのうち炭素数が6から30の化合物が好ましく、8から20の化合物がより好ましい。炭素数が6より小さいか20よりも大きい場合は十分な分散性は得られなくなる。
本発明では通常、重合に際して重合開始剤を用い、それは重合に用いられるものであれば特に限定されないが、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビスシクロヘキサン−1−カルボニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(N,N−ジメチルホルムアミド)、 等のアゾ化合物、ベンゾリルパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、tert−ブチルパーオクトエート等の過酸化物等が挙げられ、これらは重合体100重量部に対して0.01〜0.1重量部、好ましくは0.04〜0.08重量部用いられる。
カーボンブラックを重合溶媒、含窒素塩基性化合物と混合した後、超音波照射、ホモミキサー、スタティックミキサー、ハイミキサー、ボールミル等によって分散性を高めることも可能である。
本発明で用いる重合モノマーとしては、炭素繊維前駆体繊維の耐熱性や緻密性の観点から、アクリロニトリル(以下、ANと略記)が90モル%以上、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98.5モル%以上含有されるものが用いられる。
本発明で用いる重合モノマーを重合して得られるAN系重合体は、共重合成分、分子量分布、立体規則性などに制約は無いが、炭素繊維となすための耐炎化処理を促進させるために、重合モノマーには、共重合成分として、耐炎化促進作用を有する単量体(以下、耐炎化促進成分という)を0.1〜1モル%含有させるのが良い。耐炎化促進成分としては、カルボキシル基またはアミド基を一つ以上有するものが好ましく用いられる。また耐炎化反応が促進するほど、短時間で耐炎化処理でき、生産性を高めることができることから耐炎化促進成分の共重合量を多くすることが好ましい。しかし一方で、該共重合量が多くなるほど、発熱速度が大きくなり暴走反応の危険が生じることがあるため、1モル%を超えない範囲とすることが好ましく、0.15〜0.7モル%がより好ましく0.2〜0.6モル%とすることがさらに好ましい。
耐炎化促進成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、エタクリル酸、マレイン酸、メサコン酸、アクリルアミド、メタクリルアミドなどが好ましく用いられる。少量でより高い耐炎化促進効果を得るという観点から、アミド基よりもカルボキシル基を有する単量体を用いることが好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、エタクリル酸、マレイン酸、メサコン酸がより好ましく用いられる。また含有されるアミド基、カルボキシル基の数については1つよりも2つ以上であることがより好ましく、その観点からはイタコン酸、マレイン酸、メサコン酸がさらに好ましく用いられる。
本発明において重合モノマーを重合する方法としては、共重合成分を均一に重合するために溶液重合を用いることが必須である。溶液重合とは、溶媒に重合モノマーを溶解して溶液となし、その重合モノマーを重合することである。
重合に用いる溶媒は特に限定はされないが、AN系重合体の溶解性の観点からホルムアミド、グリセロール、エチレングリコール、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、シクロヘキサノール、n−ヘキサノール、ピリジン、酢酸、1−メチル−2−ピロリドン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、ジオキサン、ジメチルスルホン、スルホランなどを用いることが好しくDMSO、DMFがより好ましく用いられる。
このようにして、溶媒にAN系重合体が溶解し、カーボンブラックが分散したポリアクリロニトリル系炭素繊維前駆体組成物が製造される。本発明では、かかる前駆体組成物をそのまま、または適宜調整した後、紡糸原液として用いる。
紡糸原液を、湿式紡糸法または乾湿式紡糸法により口金から紡出し、凝固浴に導入して繊維を凝固せしめる。得られる炭素繊維前駆体繊維の緻密性を高め、また得られる炭素繊維の力学物性を高める目的からは、乾湿式紡糸法を用いることがより好ましい。
本発明において、前記凝固浴には、紡糸原液の溶媒として用いたDMSO、DMF、ジメチルアセトアミドなどの溶媒と、いわゆる凝固促進成分を含ませることが好ましい。凝固促進成分としては、前記重合体を溶解せず、かつ紡糸原液に用いる溶媒と相溶性があるものが使用できる。具体的には、水を使用するのが好ましい。凝固浴中に導入して糸条を凝固せしめた後、必要に応じて、水洗工程、浴中延伸工程、油剤付与工程を経た後、乾燥熱処理工程、スチーム延伸工程を経ることによって、炭素繊維前駆体繊維が得られる。ただし、凝固後の糸条は、水洗工程を省略して直接浴中延伸を行っても良いし、溶媒を水洗工程により除去した後に浴中延伸を行っても良い。浴中延伸は、通常、30〜98℃に温調された単一又は複数の延伸浴中で行うことが好ましい。延伸倍率は、1〜5倍であることが好ましく、2〜4倍であることがより好ましい。
油剤付与工程では、単繊維同士の接着を防止する目的から、糸条にシリコーン等からなる油剤を付与することが好ましい。かかるシリコーン油剤は、変性されたシリコーンを用いることが好ましく、耐熱性の高いアミノ変性シリコーンを含有するものを用いることがより好ましい。
乾燥熱処理工程では、水分などを含む糸条を熱処理して乾燥する。特に、油剤を付与した糸条の場合には、速やかに乾燥させるのがよく、加熱された複数のローラーに直接接触させる方法が好ましく用いられる。乾燥温度が高いほど、シリコーン油剤の架橋反応が促進され、また生産性の観点からも好ましいので、単繊維間の融着が生じない範囲で高く設定できる。具体的には150℃以上が好ましく、180℃以上であればさらに好ましい。通常乾燥温度の上限は200℃程度である。乾燥時間は膨潤糸条が十分乾燥する時間をとることが好ましい。また糸条への加熱状態が均一になるように、糸条をできるだけ拡幅した状態でローラーに接触させるのがよい。
スチーム延伸工程では、通常加圧状態のスチーム中で延伸する。延伸倍率は、生産性および得られる炭素繊維の力学物性の観点から、好ましくは3〜12倍、より好ましくは4〜8倍である。
本発明において、得ようとする炭素繊維前駆体繊維の単繊維繊度は、好ましくは0.5〜1.5デシテックス(以下、dtexと表記)、より好ましくは0.55〜1.0dtex、さらに好ましくは0.6〜0.8dtexであることが良い。かかる単繊維繊度が小さすぎると、可紡性の低下、ローラー、ガイドとの接触による糸切れ発生などにより、製糸工程および焼成工程の工程通過安定性が低下することがある一方で、大きすぎると、耐炎化後の各単繊維における内外構造差が大きくなり、つづく炭化工程での工程通過性低下や、得られる炭素繊維の引張強度、引張弾性率が低下することがある。
また、本発明において、炭素繊維前駆体繊維は、通常複数本のフィラメントから構成される糸条であるが、その1糸条当たりのフィラメント数は、好ましくは1,000〜3,000,000、より好ましくは12,000〜3,000,000、さらに好ましくは24,000〜2,500,000、最も好ましくは36,000〜2,000,000であるのが良い。かかるフィラメント数は、生産性の向上の目的からは、多い方が好ましいが、多すぎると、束内部まで均一に耐炎化処理できないことがある。
次に、本発明の炭素繊維や黒鉛化繊維の製造方法について説明する。本発明において、前記した方法により得られた炭素繊維前駆体繊維を、200〜300℃の空気中において耐炎化処理した後、300〜800℃の不活性雰囲気中において予備炭化処理し、1000〜2000℃の不活性雰囲気中において後炭化処理することにより、炭素繊維を製造することができる。後炭化処理に引き続き、不活性雰囲気中、2,000〜3,000℃で黒鉛化処理することによって、より高い弾性率を有した黒鉛化繊維とすることもできる。なお、本発明においては、予備炭化処理工程、後炭化処理工程、黒鉛化処理工程を総称して炭化工程といい、耐炎化工程と炭化工程を総称して焼成工程という。また、本発明において、炭素繊維とは、後炭化処理されてなるものを指し、黒鉛化処理されていない、いわゆる炭化繊維と、黒鉛化処理されてなる、いわゆる黒鉛化繊維とを総称したものである。
このように焼成工程を段階的に行うことで、熱エネルギーによって繊維が分解、焼き飛ばされることによる重量減少を極力抑制することにより、得られる炭素繊維の炭化収率は50%以上と高いものとなる。特に、炭化繊維の場合、その炭化収率は53%以上と従来の技術では達成困難な高いものとすることができる。なお、炭化収率の上限は69%程度であり、それを上回ることは通常困難である。
本発明では、耐炎化処理する際に、好ましくは0.9〜1.2、より好ましくは0.95〜1.15、さらに好ましくは0.97〜1.1の延伸比で延伸するのが良い。ここでの延伸比が小さすぎると、得られる耐炎化繊維の配向度が不十分となり、また得られる炭素繊維の力学物性が低下することがある一方で、大きすぎると、毛羽発生、糸切れ発生により工程通過性が低下することがある。
本発明において、耐炎化の処理時間は、10〜100分の範囲で適宜選択することができるが、得られる耐炎化繊維の比重が1.3〜1.38の範囲となるよう設定することが、続く予備炭化工程の工程通過性、および得られる炭素繊維の力学物性向上の目的から好ましい。
本発明において、予備炭化処理工程、後炭化処理工程、黒鉛化処理工程は不活性雰囲気中で行うが、かかる雰囲気を得るに用いる気体としては、窒素、アルゴン、キセノンなどが好ましく例示でき、経済的な観点からは窒素を好ましく用いることができる。
本発明において、予備炭化工程では、前記した温度範囲における昇温速度を500℃/分以下に設定することが好ましい。
本発明では、予備炭化処理を行う際に、好ましくは1.00〜1.30、より好ましくは1.05〜1.25、さらに好ましくは1.08〜1.20の延伸比で延伸するのが良い。ここでの延伸比が小さすぎると、得られる予備炭化繊維の配向度が不十分となり、炭素繊維の力学物性が低下することがある一方で、大きすぎると、毛羽発生、糸切れ発生により工程通過性が低下することがある。
本発明において、後炭化処理工程における最高温度は、所望する炭素繊維の力学物性に応じて適宜設定するのがよい。一般に炭化工程の最高温度が高いほど、得られる炭素繊維の引張弾性率が高くなるものの、引張強度は通常1500℃付近で極大となる。引張強度と引張弾性率の両方を高めるという目的からは、後炭化の最高温度は1200〜1700℃がより好ましく、1300〜1600℃であるのがさらに好ましい。
また、本発明では、後炭化処理を行う際に、好ましくは0.97〜1.1、より好ましくは0.975〜1.005、さらに好ましくは0.98〜1の延伸比で延伸するのが良い。ここでの延伸比が小さすぎると、得られる炭素繊維の配向度や緻密性が不十分となり、力学物性が低下することがある一方で、大きすぎると毛羽発生、糸切れ発生により工程通過性が低下することがある。
本発明において、黒鉛化処理を行う場合には、好ましくは1.005〜1.150、より好ましくは1.010〜0.1.100の延伸比で延伸するのが良い。ここでの延伸比が小さすぎると、得られる炭素繊維(黒鉛化繊維)の配向度や緻密性が不十分となり、力学物性が低下することがある一方で、大きすぎると、毛羽発生、糸切れ発生により工程通過性が低下することがある。
さらに得られた炭素繊維はその表面改質のため、硫酸、硝酸および塩酸等の酸性溶液や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、炭酸アンモニウムおよび重炭酸アンモニウムのようなアルカリまたはそれらの塩を水溶液として電解処理され、繊維強化複合材料において炭素繊維マトリックスとの接着性が適正化することができる。また、電解処理の後、炭素繊維に集束性を付与するため、サイジング処理を施すこともできる。サイジング剤には、使用する樹脂の種類に応じて、マトリックス樹脂等との相溶性の良いサイジング剤を適宜選択することができる。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが本発明は以下の実施例に限定されるものではない。本実施例においては、各種特性を次のようにして測定した。
<カーボンブラックの平均粒径>
カーボンブラックをDMSO10mlに濃度0.5重量%となるように加え、5分間手で撹拌して分散させ測定液を得る。この測定液を、温度を25℃として、動的光散乱式粒度分布測定装置を用いて、平均粒径を測定する。なお、本実施例では、動的光散乱式流度分布測定装置として、大塚電子(株)製 FPAR―1000を用いた。
<カーボンブラックのpH>
カーボンブラック5gを水100gに加え、撹拌しながら、pH試験機を用いてpHを測定する。なお、本実施例では、pH試験機として、DKK・TOA社製AUTO TITRATOR AUT―501を用いた。
<炭化収率>
まず、重合体または重合体組成物がDMSOなどの溶媒に溶解している場合には、それに水に加えて溶媒を除去して、重合体または重合体組成物を単離する。重合体または重合体組成物を、240℃で40分加熱し、さらに251℃で40分加熱して耐炎化物となし、それを粉砕して試験体を作製する。この試験体を示差熱熱重量(TG/DTA)測定器を用いて50℃/分の昇温速度で1100℃まで加熱した。このとき加熱後の試験体の重量a、測定前の試験体重量bとし、重量比a/b×100(%)を、その試験体の炭化収率とした。なお、本実施例では、TG/DTA測定器として、BLUKER社製TG−DTA2000SAを用いた。
<可紡性評価>
重合体または重合体組成物を、その濃度が20重量%となるようにDMSOに溶解して調製した紡糸原液を作製し、その紡糸原液を、口金ホール数500、口金孔径0.12mmの口金から、吐出量を10L/hr、口金と凝固浴液面との距離を3mmに調整し、DMSO30重量%、水70重量%の凝固浴に吐出する乾湿式紡糸を行う。その際、引き取り速度を徐々に上げていき、糸切れした糸が凝固浴中で観察されたときの速度を限界凝固浴速度として、可紡性の指標とする。
<炭素繊維のストランド引張強度およびストランド引張弾性率>
JIS R7601(1986)「樹脂含浸ストランド試験法」に従って求める。測定する炭素繊維の樹脂含浸ストランドは、3、4−エポキシシクロヘキシルメチル−3、4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(100重量部)/3フッ化ホウ素モノエチルアミン(3重量部)/アセトン(4重量部)を、炭素繊維または黒鉛化繊維に含浸させ、130℃、30分で硬化させて作製する。また、ストランドの測定本数は6本とし、各測定結果の平均値を、引張弾性率、引張強度とする。なお、本実施例では、3、4−エポキシシクロヘキシルメチル−3、4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートとして、ユニオンカーバイド(株)製“ベークライト(登録商標)”ERL4221を用いた。
(実施例1)
カーボンブラック(“SUNBLACK(登録商標)”X45、旭カーボン(株)製)11重量部をアンモニアとDMSOの溶液で分散させた後、重合モノマー100重量部(モノマーのモル比:AN99.5モル%、イタコン酸0.5モル%)を加え、DMSO中でアゾビスイソブチロニトリルを重合開始剤として溶液重合し、炭素繊維前駆体組成物を得た。得られた前駆体組成物中の重合体の濃度が、25重量%となるよう調製した後、アンモニアガスをpHが8.5になるまで吹き込むことで、イタコン酸を中和して紡糸原液を作製した。得られた紡糸原液を、目開き0.5μmのフィルター通過後、40℃で、単孔の直径0.15mm、孔数6,000の紡糸口金を用い、一旦空気中に吐出し、約4mmの空間を通過させた後、3℃にコントロールした35重量%DMSOの水溶液からなる凝固浴に導入する乾湿式紡糸法により凝固糸条とした。この凝固糸条を、常法により水洗した後、温水中で3.5倍に延伸し、さらにアミノ変性シリコーン系シリコーン油剤を付与して単繊維繊度2.6dtexの浴中延伸糸を得た。この浴中延伸糸を、165℃に加熱したローラーを用いて乾燥熱処理を行い、次に145℃の加圧スチーム中で3.7倍延伸し、全延伸倍率13倍、単繊維繊度0.7dtex、フィラメント数6,000の炭素繊維前駆体繊維を得た。得られた炭素繊維前駆体繊維を4本合糸し、トータルフィラメント数24,000とした上で、240〜260℃の空気中において延伸比1.0で延伸しながらで耐炎化処理し耐炎化繊維を得た。
続いて300〜700℃の窒素雰囲気中において、延伸比1.15で延伸しながら予備炭化処理を行い、さらに最高温度1500℃の窒素雰囲気中において、延伸比を0.99に設定して後炭化処理を行い炭素繊維(炭化繊維)を得た。炭化収率は54.6%と高く、また可紡性は 20m/分で十分に高かった。得られた炭素繊維のストランド引張強度およびストランド引張弾性率を、表1に併せて示す。
その結果ストランド引張強度、ストランド引張弾性率共に十分高い値を示した。
(実施例2)
カーボンブラックを11重量部から25重量部に変更した以外は実施例1と同じ方法で紡糸原液および炭素繊維を得た。なお用いたカーボンブラックの平均粒径およびpHと、炭化収率および可紡性の測定結果を表1に併せて示す。炭化収率は59.7%と高く、また可紡性は18m/分で十分に高かった。得られた炭素繊維のストランド引張強度およびストランド引張弾性率を表1に併せて示す。その結果ストランド引張強度、ストランド引張弾性率共に十分高い値を示した。 (実施例3)
アンモニアをテトラメチルグアニジンに変更し、重合モノマーにおけるモノマーのモル比をAN99.5モル%、イタコン酸0.5モル%からAN99.4モル%、イタコン酸0.6モル%に変更した以外は実施例1と同様の方法で紡糸原液および炭素繊維を得た。なお用いたカーボンブラックの平均粒径およびpHと、炭化収率および可紡性の測定結果を表1に併せて示す。炭化収率は54.7%と高く、また可紡性は21m/分で十分に高かった。得られた炭素繊維のストランド引張強度およびストランド引張弾性率を表1に併せて示す。その結果ストランド引張強度、ストランド引張弾性率共に十分高い値を示した。
(実施例4)
用いるカーボンブラックを、“SUNBLACK(登録商標)”X45(旭カーボン(株)製)から“SUNBLACK(登録商標)”X15(旭カーボン(株)製)に変更し、重合モノマーにおけるモノマーのモル比をAN99.5モル%、イタコン酸0.5モル%からAN99.4モル%、イタコン酸0.6モル%に変更し、アンモニアをエチルアミンに変更した以外は実施例2と同様の方法で紡糸原液および炭素繊維を得た。なお用いたカーボンブラックの平均粒径およびpHと、炭化収率および可紡性の測定結果を表1に併せて示す。炭化収率は59.7%と高く、また可紡性は17m/分で十分に高かった。得られた炭素繊維のストランド引張強度およびストランド引張弾性率を表1に併せて示す。その結果ストランド引張強度、ストランド引張弾性率共に十分高い値を示した。
(実施例5)
重合モノマーにおけるモノマーのモル比をAN99.4モル%、イタコン酸0.6モル%からAN99.6モル%、イタコン酸0.4モル%に変更し、エチルアミンをエタノールアミンに変更した以外は実施例4と同様の方法で紡糸原液および炭素繊維を得た。なお用いたカーボンブラックの平均粒径およびpHと、炭化収率および可紡性の測定結果を表1に併せて示す。炭化収率は58.9%と高く、また可紡性は17m/分で十分に高かった。得られた炭素繊維のストランド引張強度およびストランド引張弾性率を表1に併せて示す。その結果ストランド引張強度、ストランド引張弾性率共に十分高い値を示した。
(実施例6)
カーボンブラックを11重量部から33重量部に変更し、重合モノマーにおけるモノマーのモル比をAN99.5モル%、イタコン酸0.5モル%からAN99.8モル%、イタコン酸0.2モル%に変更した以外は実施例1と同じ方法で紡糸原液および炭素繊維を得た。なお用いたカーボンブラックの平均粒径およびpHと、炭化収率および可紡性の測定結果を表1に併せて示す。炭化収率は62%と高く、また可紡性は16m/分で十分に高かった。得られた炭素繊維のストランド引張強度およびストランド引張弾性率を表1に併せて示す。その結果ストランド引張強度、ストランド引張弾性率共に十分高い値を示した。
(実施例7)
用いるカーボンブラックを、“SUNBLACK(登録商標)”X45(旭カーボン(株)製)から“SUNBLACK(登録商標)”X15(旭カーボン(株)製)に変更し、重合モノマーにおけるモノマーのモル比をAN99.8モル%、イタコン酸0.2モル%からAN99.6モル%、イタコン酸0.4モル%に変更し、アンモニアをプロピルアミンに変更した以外は実施例6と同様の方法で紡糸原液および炭素繊維を得た。なお用いたカーボンブラックの平均粒径およびpHと、炭化収率および可紡性の測定結果を表1に併せて示す。炭化収率は62.1%と高く、また可紡性は15m/分で十分に高かった。得られた炭素繊維のストランド引張強度およびストランド引張弾性率を表1に併せて示す。その結果ストランド引張強度、ストランド引張弾性率共に十分高い値を示した。
(実施例8)
用いるカーボンブラックを(“SUNBLACK(登録商標)”X45、旭カーボン(株)製)から#2650(三菱化学(株)製)に変更し、分散剤をアンモニアからアニオン系界面活性剤である2−(N−メチルドデカンアミド)アセテートナトリウム塩に変更した以外は実施例1と同様の方法で紡糸原液および炭素繊維を得た。なお用いたカーボンブラックの平均粒径およびpHと、得られた重合体組成物の炭化収率および可紡性の測定結果を表1に併せて示す。炭化収率は55.1%と高く、また可紡性は18m/minで十分に高かった。得られた炭素繊維のストランド引張強度およびストランド引張弾性率を表1に併せて示す。その結果ストランド引張強度、ストランド引張弾性率共に十分高い値を示した。
(実施例9)
用いるカーボンブラックを(“SUNBLACK(登録商標)”X45、旭カーボン(株)製)から#2650(三菱化学(株)製)に変更し、分散剤をアンモニアから中和されたカチオン系モノマー共重合ポリマーであるポリアクリル酸のモノエタノールアミン塩に変更した以外は実施例1と同様の方法で紡糸原液および炭素繊維を得た。なお用いたカーボンブラックの平均粒径およびpHと、得られた重合体組成物の炭化収率および可紡性の測定結果を表1に併せて示す。炭化収率は60.1%と高く、また可紡性は16m/minで十分に高かった。得られた炭素繊維のストランド引張強度およびストランド引張弾性率を表1に併せて示す。その結果ストランド引張強度、ストランド引張弾性率共に十分高い値を示した。
(実施例10)
用いるカーボンブラックを(“SUNBLACK(登録商標)”X15、旭カーボン(株)製)から#2700(三菱化学(株)製)に変更し、分散剤をエタノールアミンからアニオン系界面活性剤である2−(N−メチルドデカンアミド)アセテートナトリウム塩に変更した以外は実施例1と同様の方法で紡糸原液および炭素繊維を得た。なお用いたカーボンブラックの平均粒径およびpHと、得られた重合体組成物の炭化収率および可紡性の測定結果を表1に併せて示す。炭化収率は58.9%と高く、また可紡性は15m/minで十分に高かった。得られた炭素繊維のストランド引張強度およびストランド引張弾性率を表1に併せて示す。その結果ストランド引張強度、ストランド引張弾性率共に十分高い値を示した。
(実施例11)
用いるカーボンブラックを(“SUNBLACK(登録商標)”X45、旭カーボン(株)製)から#2650(三菱化学(株)製)に変更した以外は実施例1と同様の方法で紡糸原液および炭素繊維を得た。なお用いたカーボンブラックの平均粒径およびpHと、得られた重合体組成物の炭化収率および可紡性の測定結果を表1に併せて示す。炭化収率は55.6%と高く、また可紡性は20m/minで十分に高かった。得られた炭素繊維のストランド引張強度およびストランド引張弾性率を表1に併せて示す。その結果ストランド引張強度、ストランド引張弾性率共に十分高い値を示した。
(比較例1)
カーボンブラックの使用量を11重量部から67重量部に変更した以外は実施例1と同様の方法で紡糸原液を得たが、塊状のカーボンブラックが観察され、紡糸はできなかった。
(比較例2)
エチルアミンを未添加とした以外は実施例4と同様の方法で紡糸原液を得たが、塊状のカーボンブラックが観察され、紡糸はできなかった。 (比較例3)
カーボンブラックを、“SUNBLACK(登録商標)”X45(旭カーボン(株)製)から、“SUNBLACK(登録商標)”605(旭カーボン社製)に変更した以外は実施例6と同様の方法で紡糸原液を得たが、塊状のカーボンブラックが観察され、紡糸はできなかった。
Figure 2008169535
Figure 2008169535

Claims (12)

  1. 動的光散乱式粒度分布測定法による平均粒径が200nm以下のカーボンブラック5〜50重量部および該カーボンブラックの分散剤の存在下、アクリロニトリルを90モル%以上含有する重合モノマー100重量部を溶液重合することを特徴とする炭素繊維前駆体組成物の製造方法。
  2. 前記カーボンブラックは、それを水に濃度5重量%となるように分散したときの水分散液のpHが7.0未満となる、請求項1に記載の炭素繊維前駆体組成物の製造方法。
  3. 前記カーボンブラックは、その水素含有表面官能基量Cが3(μeq/m)以上である、請求項1または2に記載の炭素繊維前駆体組成物の製造方法。
  4. 前記カーボンブラックの分散剤が含窒素塩基性化合物、中和されたカチオン系モノマー共重合ポリマー、界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1から3のいずれかに記載の炭素繊維前駆体組成物の製造方法。
  5. 前記含窒素塩基性化合物がアンモニア、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、モノヒドロキシアルキルアミン、ジヒドロキシアルキルアミン、トリヒドロキシアルキルアミン、含窒素ヘテロ環、およびグアニジン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項4に記載の炭素繊維前駆体組成物の製造方法。
  6. 前記中和されたカチオン系モノマー共重合ポリマーがアクリル酸系重合体、メタアクリル酸系共重合体、およびマレイン酸系共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の共重合体の、アミン塩および/または金属塩である請求項4に記載の炭素繊維前駆体組成物の製造方法。
  7. 前記界面活性剤がアニオン系界面活性剤である請求項4に記載の炭素繊維前駆体組成物の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法によって製造される炭素繊維前駆体組成物を湿式または乾湿式紡糸法により紡糸し、乾燥熱処理後、スチーム延伸する炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
  9. 請求項8に記載の方法により製造される炭素繊維前駆体繊維を200〜300℃の空気中において耐炎化処理した後、300〜800℃の不活性雰囲気中において予備炭化処理し、1000℃〜2000℃の不活性雰囲気中において後炭化処理して炭素繊維を得る炭素繊維の製造方法。
  10. 後炭化処理後に、さらに、2000℃〜3000℃の不活性雰囲気中において黒鉛化処理する、請求項9に記載の炭素繊維の製造方法。
  11. 得られる炭素繊維は、その炭化収率が50%以上である、請求項9または10に記載の黒鉛化繊維の製造方法。
  12. 得られる炭素繊維は、炭化繊維であり、その炭化収率が53%以上である、請求項9に記載の炭素繊維の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2016540131A (ja) * 2013-06-21 2016-12-22 コーロン インダストリーズ インク 炭素繊維用ポリアクリロニトリル系前駆体繊維及びその製造方法

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