JP2008169455A - 部材の強度向上方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来の疲労強度の向上方法とは異なる方法、即ち、曲げ加工によって疲労強度の向上を図る新規な加工方法を提案する。
【解決手段】圧縮応力を作用させることで部材の特定部位の疲労強度の向上を図る、部材の強度向上方法であって、前記特定部位とは異なる位置にあって、荷重を付加して除荷すると、その弾性回復力によって、前記特定部位に圧縮応力を作用させる荷重被作用部位を対象とし、前記荷重被作用部位に荷重を付加させる第一工程と、前記第一工程にて前記荷重被作用部位に作用させた荷重を除荷することにより、前記荷重被作用部位に前記第一工程にて作用させた荷重とは反対方向に作用する力を、前記荷重被作用部位の有する弾性回復力により生じさせる第二工程と、を含む部材の強度向上方法とするものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、部材に圧縮方向の応力状態を作用させることで、部材の強度を向上させることとする技術に関するものである。
従来、部材の屈曲部内側等の疲労強度が低い部位にショットピーニングを施して、屈曲部内側での座屈や割れの発生の防止を図る技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、疲労強度を向上させる方法としては、ショットピーニングの他に、焼鈍(引張残留応力を低減)、アーク溶接(溶接部が冷却時に収縮することで近傍の応力状態を圧縮方向に推移させる)、等の方法が知られている。
ここで、以上に述べた三種類の方法を実施するに際しては、専用の工程が必要となり、そのための設備投資が必要となる。また、溶接材の材料費による製品コストの増加や、溶接材の重量による製品重量の増加といった問題もある。また、部材によって溶接可能な箇所が限られることがあり、疲労強度を向上させたい箇所が溶接不可である場合では、溶接による方法は適用できないこととなる。また、設備の大型化、作業時間が長くなるという問題もある。
特開平10−329519号公報
そこで、本発明は、従来の疲労強度の向上方法とは異なる方法、即ち、曲げ加工によって疲労強度の向上を図る新規な方法を提案するものである。
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
即ち、請求項1に記載のごとく、
圧縮応力を作用させることで部材の特定部位の疲労強度の向上を図る、部材の強度向上方法であって、
前記特定部位とは異なる位置にあって、荷重を付加して除荷すると、その弾性回復力によって、前記特定部位に圧縮応力を作用させる荷重被作用部位を対象とし、
前記荷重被作用部位に荷重を付加させる第一工程と、
前記第一工程にて前記荷重被作用部位に作用させた荷重を除荷することにより、前記荷重被作用部位に前記第一工程にて作用させた荷重とは反対方向に作用する力を、前記荷重被作用部位の有する弾性回復力により生じさせる第二工程と、
を含む部材の強度向上方法とするものである。
また、請求項2に記載のごとく、
前記部材は、管状部材を断面視略U字に屈曲形成して構成された部材であって、前記特定部位を前記U字の両端の屈曲部である耳部の内側とし、前記荷重被作用部位を前記耳部の近傍の内辺・外辺とするものであり、
前記第一工程においては、管内に内圧をかけて拡管させて、前記荷重被作用部位に、前記耳部の屈曲の度合いに影響する荷重を作用させ、
前記第二工程においては、前記内圧を除荷することにより、前記第一工程にて内辺・外辺に生じていた前記荷重とは反対方向に作用する力を前記荷重被作用部位に付与する、こととするものである。
また、請求項3に記載のごとく、
前記第一工程の前工程におけるU字成形の際に、U字の底部位における曲率を第一工程終了後におけるU字の底部位における曲率よりも大きく形成する、こととするものである。
また、請求項4に記載のごとく、
前記部材は、溶接にて二つの構造体を接合してなる部材であって、
前記特定部位を一方の構造体の溶接部の近傍とするとともに、前記荷重被作用部位を他方の構造体に設けることとし、
前記溶接部の溶接前に行われる前記第一工程において、前記他方の構造体の前記荷重被作用部位に荷重を作用させ、
前記溶接部の溶接後に行われる前記第二工程において、
前記第一工程において作用させた荷重を除荷することにより、前記第一工程において作用させた荷重とは反対方向に作用する力を、前記一方の構造体の前記特定部位に付与することとするものである。
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
請求項1、2、4においては、疲労強度の向上について、専用の工程を不要にでき、疲労強度向上のための別部材が不要であり、また、強度向上のみを目的とする溶接が不要であることから、その効果として、設備投資増加、製品コスト増加、製品質量増加、といった問題が生じることがない。また、溶接不可能な場所においても適用可能であり、その適用範囲は広いものとなる。
また、請求項3においては、特定部位における圧縮方向の応力状態を確実に確保することが可能となる。
次に、発明の実施の形態を説明する。
発明の実施の形態は、
圧縮応力を作用させることで部材の特定部位の疲労強度の向上を図る、部材の強度向上方法であって、
前記特定部位とは異なる位置にあって、荷重を付加して除荷すると、その弾性回復力によって、前記特定部位に圧縮応力を作用させる荷重被作用部位を対象とし、
前記荷重被作用部位に荷重を付加させる第一工程と、
前記第一工程にて前記荷重被作用部位に作用させた荷重を除荷することにより、前記荷重被作用部位に前記第一工程にて作用させた荷重とは反対方向に作用する力を、前記荷重被作用部位の有する弾性回復力により生じさせる第二工程と、
を含む部材の強度向上方法とするものである。
図1、及び、図2に示される実施例1は、金属製等の管状部材を断面視略U字に屈曲形成して構成され、車両のサスペンションの構造に用いられるトーションビーム1について示すものであり、通称「耳部」といわれるU字の両端の屈曲部(以降、「耳部2」とする)を特定部位として、この耳部2の疲労強度の向上を図ることとするものである。
この耳部2の疲労強度を向上させる目的は、より具体的には、耳部2の内側2aの座屈や割れの発生の防止を図るものであり、このために、耳部2の内側2aの所望の範囲3(図2参照)に圧縮方向の応力状態を形成するものである。
そして、前記範囲3に圧縮方向の応力状態M(図2参照)を形成するために、本実施例では、図1に示すごとく、前記第一工程においては、チューブハイドロフォーミングを実施することとし、前記耳部2の屈曲の度合いに影響することとなる、耳部2の近傍の内辺4・外辺5を前記第一工程における荷重被作用部位とし、この内辺4・外辺5が互いが離れる方向に荷重F1を作用させることとしている。そして、前記第二工程においては、内辺4・外辺5に、前記荷重F1の方向とは反対方向、即ち、前記内辺4・外辺5が互いに近づく方向に力F2を作用させるようにしている。
尚、前記内辺4・外辺5の対象となる範囲については、トーションビーム1の断面形状や、素材によって異なるものであるが、互いに離れ合い、その後、近づき合う際に、耳部2の屈曲の度合いに影響を与える部位として定義することができる。
そして、第二工程において、前記力F2が作用すると、前記耳部2の屈曲の度合いが大きくなるため、前記耳部2の内側2aの所望の範囲3には、圧縮方向の応力状態が形成され、これにより、前記範囲3の疲労強度の向上を図ることが可能となる。
ここで、前記力F2は、トーションビーム1の材料の弾性回復力(スプリングバック)に起因するものであり、前記耳部2から遠い部位、即ち、U字の底を形成する部位(底部位6)において、前記第一工程において広い範囲7で塑性変形を生じさせることで、前記荷重F1が大きくなるようにすることで、これに伴って、弾性回復力によって生じる力F2を大きく確保することが可能となる。
これにより、前記耳部2の内側2aに生じる圧縮方向の応力状態を確保することができる。
また、前述の広い範囲7は、例えば、前記耳部2、前記内辺4・外辺5の対象となる部位を除いた範囲とすることができる。
また、前述の広い範囲7において、前記第一工程で塑性変形をさせることに関し、本実施例では、第一工程でチューブハイドロフォーミングにより拡管をさせることから、第一工程を実施する前工程で、U字の底を形成する部位(底部位6)における曲率を大きく設計し、第一工程における塑性変形の範囲を広く確保する、換言すれば、U字の底を形成する部位(底部位6)の変形量を大きく確保することが望ましい。
つまり、図3に示すごとく、前記第一工程の前工程におけるU字成形の際に、U字の底部位6における曲率を第一工程終了後におけるU字の底部位6における曲率よりも大きく形成する。これにより、前記第一工程にて前記底部位6に生じさせる塑性変形の範囲(広い範囲7)が広く確保され、前記底部位6における変形量が大きく確保される。これにより、前記荷重F1を大きく確保することができ、これに伴って、前記第二工程において弾性回復力によって生じる力F2を大きく生じさせることができる。そして、前記U字の両端の屈曲部である耳部2の内側2aに生じる圧縮方向の応力状態M(図2参照)を確実に確保することが可能となる。尚、管内に内圧をかけて拡管を実施する方法は、チューブハイドロフォーミングの他、液封によるものが考えられる。
以上のように、図1乃至図3に示すごとく、本実施例1では、前記部材は、管状部材を断面視略U字に屈曲形成して構成された部材であって、前記特定部位を前記U字の両端の屈曲部である耳部2の内側2aとし、前記荷重被作用部位を前記耳部2の近傍の内辺4・外辺5とするものであり、前記第一工程においては、管内に内圧をかけて拡管させて、前記荷重被作用部位に、前記耳部の屈曲の度合いに影響する荷重F1を作用させ、前記第二工程においては、前記内圧を除荷することにより、前記第一工程にて内辺・外辺に生じていた前記荷重F1とは反対方向に作用する力F2を前記荷重被作用部位に付与することとするものである。これにより、前記耳部2の内側2aに生じる圧縮方向の応力状態を確保し、疲労強度の向上を図るものである。
以上のようにすることで、チューブハイドロフォーミングによる拡管によって、前記内辺4・外辺5に大きな力F2を生じさせることができ、この内辺4・外辺5に別工程で直接的に外力を付与させる等の必要もなく、トーションビーム1の材料の弾性回復力(スプリングバック)のみで、前記耳部2の内側2aの疲労強度を向上させることが可能となる。つまり、別工程・別装置を必要とすることなく、チューブハイドロフォーミング後において、疲労強度の向上を図ることができるのである。
また、このように、疲労強度の向上について、専用の工程を不要にでき、疲労強度向上のための別部材が不要であり、また、強度向上のみを目的とする溶接が不要であることから、その効果として、設備投資増加、製品コスト増加、製品質量増加、といった問題が生じることがない。また、溶接不可能な場所においても適用可能であり、その適用範囲は広いものとなる。
また、本実施例のように、特に、トーションビーム1の適用においては、最弱部位でない部分である内辺4・外辺5の弾性回復力(スプリングバック)を用いて最弱部位となる耳部2の応力状態を圧縮方向に推移させ、疲労強度を向上させることが可能となることから、サスペンション構造への適用において、トランピング等の過大な路面入力に対する耐性の観点からも、有効な曲げ加工方法となる。
図4に示すごとく、本実施例は、
アーク溶接等の溶接にて二つの構造体(コ字状部材11・板状部材14)を接合した場合に、前記特定部位となる一方の構造体(板状部材14)の溶接部15・15の近傍13・13を前記特定部位とする場合における実施例であり、
前記特定部位を一方の(板状部材14)の溶接部15・15の近傍とするとともに、前記荷重被作用部位を他方の構造体(コ字状部材11)に設けることとし、
前記溶接部15・15の溶接前に行われる前記第一工程において、前記他方の構造体(コ字状部材11)の前記荷重被作用部位に荷重F3を作用させ、
前記溶接部15・15の溶接後に行われる前記第二工程において、
前記第一工程において作用させた荷重を除荷することにより、前記第一工程において作用させた荷重F3とは反対方向に作用する力F4を、前記一方の構造体の前記特定部位に付与することとするものである。
この実施例2においても、前記一方の構造体となる板状部材14において、特に疲労強度が弱いこととなる溶接部15・15の近傍13・13において、圧縮方向の応力状態を形成することができ、疲労強度の向上を図ることができる。
また、この例においては、前記コ字状部材11の立設部12・12(荷重被作用部位)について、前記第一工程の前工程において、互いに離れあうように曲げ加工を行い(力F6の付加)、第一工程においては、前記立設部12・12を両側から溶接治具でクランプすることにより、前記力F3を生じさせ、溶接後の第二工程において、前記クランプを解除することで前記力F4を発生させることが可能となる。
このように、簡易な工法によって、所望の特定部位の疲労強度を向上させることができる。尚、本実施例2の場合では、前記コ字状部材11の天板部11aに上下方向の繰り返し負荷F5が作用する場合に、前記板状部材14側における前記溶接部15・15の近傍13・13に特に亀裂16・16の発生が予想されるものであることから、溶接後において、立設部12・12において互いに離れ合う力F4が生じた状態とすることが好適なものとなる。
実施例1による曲げ加工方法について示す図。 特定部位の圧縮方向の応力状態の形成について示す図。 前工程におけるU字成形について示す図。 実施例2による曲げ加工方法について示す図。
符号の説明
1 トーションビーム
2 耳部
2a 内側
3 範囲
4 内辺
5 外辺
6 底部位
7 範囲
F1 力
F2 力

Claims (4)

  1. 圧縮応力を作用させることで部材の特定部位の疲労強度の向上を図る、部材の強度向上方法であって、
    前記特定部位とは異なる位置にあって、荷重を付加して除荷すると、その弾性回復力によって、前記特定部位に圧縮応力を作用させる荷重被作用部位を対象とし、
    前記荷重被作用部位に荷重を付加させる第一工程と、
    前記第一工程にて前記荷重被作用部位に作用させた荷重を除荷することにより、前記荷重被作用部位に前記第一工程にて作用させた荷重とは反対方向に作用する力を、前記荷重被作用部位の有する弾性回復力により生じさせる第二工程と、
    を含む部材の強度向上方法。
  2. 前記部材は、管状部材を断面視略U字に屈曲形成して構成された部材であって、前記特定部位を前記U字の両端の屈曲部である耳部の内側とし、前記荷重被作用部位を前記耳部の近傍の内辺・外辺とするものであり、
    前記第一工程においては、管内に内圧をかけて拡管させて、前記荷重被作用部位に、前記耳部の屈曲の度合いに影響する荷重を作用させ、
    前記第二工程においては、前記内圧を除荷することにより、前記第一工程にて内辺・外辺に生じていた前記荷重とは反対方向に作用する力を前記荷重被作用部位に付与する、
    ことを特徴とする、請求項1に記載の部材の強度向上方法。
  3. 前記第一工程の前工程におけるU字成形の際に、U字の底部位における曲率を第一工程終了後におけるU字の底部位における曲率よりも大きく形成する、
    ことを特徴とする、請求項2に記載の部材の強度向上方法。
  4. 前記部材は、溶接にて二つの構造体を接合してなる部材であって、
    前記特定部位を一方の構造体の溶接部の近傍とするとともに、前記荷重被作用部位を他方の構造体に設けることとし、
    前記溶接部の溶接前に行われる前記第一工程において、前記他方の構造体の前記荷重被作用部位に荷重を作用させ、
    前記溶接部の溶接後に行われる前記第二工程において、
    前記第一工程において作用させた荷重を除荷することにより、前記第一工程において作用させた荷重とは反対方向に作用する力を、前記一方の構造体の前記特定部位に付与することとする、
    ことを特徴とする、請求項1に記載の部材の強度向上方法。



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