以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図4を参照して、本発明の一実施の形態に係るバンドパスフィルタの回路構成について説明する。図4に示したように、本実施の形態に係るバンドパスフィルタ1は、入力端子2と、出力端子3と、3つの共振器4,5,6と、接続部41,42と、キャパシタ19とを備えている。
共振器4は、インダクタ11とキャパシタ14とを有している。共振器5は、インダクタ12とキャパシタ15とを有している。共振器6は、インダクタ13とキャパシタ16とを有している。共振器4は入力端子2に接続され、共振器6は出力端子3に接続されている。共振器5は、共振器4と共振器6との間に配置されている。また、インダクタ12は、インダクタ11とインダクタ13との間に配置されている。インダクタ11,12は隣接し、誘導性結合している。インダクタ12,13も隣接し、誘導性結合している。図4では、インダクタ11,12間の誘導性結合と、インダクタ12,13間の誘導性結合を、それぞれ記号Mを付した曲線で表している。
接続部41は、直列に接続されたインダクタ7とキャパシタ17とを含み、共振器4と共振器5とを接続している。接続部42は、直列に接続されたインダクタ8とキャパシタ18とを含み、共振器5と共振器6とを接続している。
インダクタ7,11の一端とキャパシタ14,19の各一端は、入力端子2に接続されている。インダクタ11の他端とキャパシタ14の他端はグランドに接続されている。キャパシタ17の一端はインダクタ7の他端に接続されている。インダクタ12の一端とキャパシタ15,18の各一端は、キャパシタ17の他端に接続されている。インダクタ12の他端とキャパシタ15の他端はグランドに接続されている。インダクタ8の一端はキャパシタ18の他端に接続されている。インダクタ13の一端、キャパシタ16の一端、キャパシタ19の他端および出力端子3は、インダクタ8の他端に接続されている。インダクタ13の他端とキャパシタ16の他端はグランドに接続されている。
共振器4,5,6はいずれも、開放端と短絡端とを有する1/4波長共振器である。共振器4,5,6は、それぞれ本発明における第1の共振器、第2の共振器、第3の共振器に対応する。隣接する共振器4,5は、誘導性結合していると共に、接続部41によって接続されている。隣接する共振器5,6は、誘導性結合していると共に、接続部42によって接続されている。接続部41は、共振器4,5の開放端同士を接続している。接続部42は、共振器5,6の開放端同士を接続している。接続部41は本発明における第1の接続部に対応し、インダクタ7は本発明における第1のインダクタに対応し、キャパシタ17は本発明における第1のキャパシタに対応する。接続部42は本発明における第2の接続部に対応し、インダクタ8は本発明における第2のインダクタに対応し、キャパシタ18は本発明における第2のキャパシタに対応する。
本実施の形態に係るバンドパスフィルタ1では、入力端子2に信号が入力されると、そのうちの所定の周波数帯域内の周波数の信号が選択的に、共振器4,5,6を用いて構成されたバンドパスフィルタ1を通過し、出力端子3から出力される。
次に、図1および図2を参照して、バンドパスフィルタ1の構造の概略について説明する。図1は、バンドパスフィルタ1の主要部分を示す斜視図である。図2は、バンドパスフィルタ1の外観を示す斜視図である。
バンドパスフィルタ1は、バンドパスフィルタ1の構成要素を一体化するための積層基板20を備えている。後で詳しく説明するが、積層基板20は、積層された複数の誘電体層と複数の導体層とを含んでいる。インダクタ7,8,11〜13は、いずれも、積層基板20内の1つ以上の導体層を用いて構成されている。キャパシタ14〜19は、積層基板20内の導体層と誘電体層を用いて構成されている。
図2に示したように、積層基板20は、外周部として、上面と、底面と、4つの側面を有する直方体形状をなしている。積層基板20における1つの側面20aには、入力端子22と、その両側に配置された2つのグランド用端子24,25が設けられている。積層基板20において、入力端子22が設けられた側面20aと反対側の側面20bには、出力端子23と、その両側に配置された2つのグランド用端子26,27が設けられている。入力端子22は図4における入力端子2に対応し、出力端子23は図4における出力端子3に対応する。グランド用端子24,25,26,27はグランドに接続される。
次に、図5ないし図8を参照して、積層基板20における誘電体層と導体層について詳しく説明する。図5において(a)〜(c)は、それぞれ、上から1層目ないし3層目の誘電体層の上面を示している。図6において(a)〜(c)は、それぞれ、上から4層目ないし6層目の誘電体層の上面を示している。図7において(a)〜(c)は、それぞれ、上から7層目ないし9層目の誘電体層の上面を示している。図8において(a)は、上から10層目の誘電体層の上面を示している。図8において(b)は、上から10層目の誘電体層およびその下の導体層を、上から見た状態で表したものである。
図5(a)に示した1層目の誘電体層31の上面には導体層は形成されていない。図5(b)に示した2層目の誘電体層32の上面には、グランドに接続されるグランド用導体層321が形成されている。この導体層321は、グランド用端子24〜27に接続される。図5(c)に示した3層目の誘電体層33の上面には導体層は形成されていない。
図6(a)に示した4層目の誘電体層34の上面には、共振器用導体層111,121,131が形成されている。導体層111と導体層131は、それぞれ一方向に長い形状を有している。導体層111は積層基板20における側面20aの近傍に配置され、導体層131は積層基板20における側面20bの近傍に配置されている。導体層111における長手方向の一端部はグランド用端子25に接続される。導体層131における長手方向の一端部はグランド用端子27に接続される。導体層121は、二股分岐形状の共振器用導体層である。本実施の形態では特に、導体層121はT字形状になっている。導体層121は、一方向に長い第1の部分121aと、それぞれの長手方向の一端部が第1の部分121aにおける長手方向の一端部に接続された第2部分121bおよび第3の部分121cとを有している。第2部分121bは、第1の部分121aにおける一端部から積層基板20における側面20aに向けて延びている。第2部分121bにおける他端部はグランド用端子24に接続される。第3部分121cは、第1の部分121aにおける一端部から積層基板20における側面20bに向けて延びている。第3部分121cにおける他端部はグランド用端子26に接続される。導体層121における第1の部分121aは、導体層111,131の間に配置されている。また、第1の部分121aと導体層111,131のそれぞれの長手方向は平行である。導体層111,121は隣接し、誘導性結合している。導体層121,131も隣接し、誘導性結合している。本実施の形態では特に、導体層121における第1の部分121aは、導体層111,131のそれぞれに対してインターデジタル結合している。すなわち、第1の部分121aにおける開放側の端部(図6(a)における右側の端部)とグランド側の端部(図6(a)における左側の端部)の位置関係は、導体層111,131における開放側の端部(図6(a)における左側の端部)とグランド側の端部(図6(a)における右側の端部)の位置関係とは逆になっている。
また、誘電体層34には、導体層111における他端部に接続されたスルーホール341と、導体層121の第1の部分121aにおける他端部に接続されたスルーホール342と、導体層131における他端部に接続されたスルーホール343とが形成されている。
図6(b)に示した5層目の誘電体層35の上面には、共振器用導体層112,122,132が形成されている。導体層112,122,132の形状、配置および相互の関係は、導体層111,121,131と同様である。すなわち、導体層112と導体層132は、それぞれ一方向に長い形状を有している。導体層112は積層基板20における側面20aの近傍に配置され、導体層132は積層基板20における側面20bの近傍に配置されている。導体層112における長手方向の一端部はグランド用端子25に接続される。導体層132における長手方向の一端部はグランド用端子27に接続される。導体層122は、二股分岐形状の共振器用導体層である。本実施の形態では特に、導体層122はT字形状になっている。導体層122は、一方向に長い第1の部分122aと、それぞれの長手方向の一端部が第1の部分122aにおける長手方向の一端部に接続された第2部分122bおよび第3の部分122cとを有している。第2部分122bは、第1の部分122aにおける一端部から積層基板20における側面20aに向けて延びている。第2部分122bにおける他端部はグランド用端子24に接続される。第3部分122cは、第1の部分122aにおける一端部から積層基板20における側面20bに向けて延びている。第3部分122cにおける他端部はグランド用端子26に接続される。導体層122における第1の部分122aは、導体層112,132の間に配置されている。また、第1の部分122aと導体層112,132のそれぞれの長手方向は平行である。導体層112,122は隣接し、誘導性結合している。導体層122,132も隣接し、誘導性結合している。本実施の形態では特に、導体層122における第1の部分122aは、導体層112,132のそれぞれに対してインターデジタル結合している。
また、誘電体層35には、導体層112における他端部に接続されたスルーホール351と、導体層122の第1の部分122aにおける他端部に接続されたスルーホール352と、導体層132における他端部に接続されたスルーホール353とが形成されている。スルーホール351,352,353は、それぞれスルーホール341,342,343に接続されている。
図6(c)に示した6層目の誘電体層36の上面には、共振器用導体層113,123,133が形成されている。導体層113,123,133の形状、配置および相互の関係は、導体層111,121,131と同様である。すなわち、導体層113と導体層133は、それぞれ一方向に長い形状を有している。導体層113は積層基板20における側面20aの近傍に配置され、導体層133は積層基板20における側面20bの近傍に配置されている。導体層113における長手方向の一端部はグランド用端子25に接続される。導体層133における長手方向の一端部はグランド用端子27に接続される。導体層123は、二股分岐形状の共振器用導体層である。本実施の形態では特に、導体層123はT字形状になっている。導体層123は、一方向に長い第1の部分123aと、それぞれの長手方向の一端部が第1の部分123aにおける長手方向の一端部に接続された第2部分123bおよび第3の部分123cとを有している。第2部分123bは、第1の部分123aにおける一端部から積層基板20における側面20aに向けて延びている。第2部分123bにおける他端部はグランド用端子24に接続される。第3部分123cは、第1の部分123aにおける一端部から積層基板20における側面20bに向けて延びている。第3部分123cにおける他端部はグランド用端子26に接続される。導体層123における第1の部分123aは、導体層113,133の間に配置されている。また、第1の部分123aと導体層113,133のそれぞれの長手方向は平行である。導体層113,123は隣接し、誘導性結合している。導体層123,133も隣接し、誘導性結合している。本実施の形態では特に、導体層123における第1の部分123aは、導体層113,133のそれぞれに対してインターデジタル結合している。
また、誘電体層36には、導体層113における他端部に接続されたスルーホール361と、導体層123の第1の部分123aにおける他端部に接続されたスルーホール362と、導体層133における他端部に接続されたスルーホール363とが形成されている。スルーホール361,362,363は、それぞれスルーホール351,352,353に接続されている。
導体層111,112,113は、それぞれインダクタンス成分を有している。導体層111,112,113は、スルーホール341,351とグランド用端子25を介して互いに接続されている。導体層111,112,113は、図4におけるインダクタ11を構成する。
導体層121,122,123は、それぞれインダクタンス成分を有している。導体層121,122,123は、スルーホール342,352とグランド用端子24,26を介して互いに接続されている。導体層121,122,123は、図4におけるインダクタ12を構成する。
導体層131,132,133は、それぞれインダクタンス成分を有している。導体層131,132,133は、スルーホール343,353とグランド用端子27を介して互いに接続されている。導体層131,132,133は、図4におけるインダクタ13を構成する。
図7(a)に示した7層目の誘電体層37の上面には導体層は形成されていない。誘電体層37には、スルーホール371,372,373が形成されている。スルーホール371,372,373は、それぞれスルーホール361,362,363に接続されている。
図7(b)に示した8層目の誘電体層38の上面には、接続部用導体層381,383が形成されている。導体層381は積層基板20における側面20aの近傍に配置され、導体層382は積層基板20における側面20bの近傍に配置されている。導体層381は、一方向に長いインダクタ形成部381aと、このインダクタ形成部381aにおける長手方向の一端部より、側面20aから遠ざかる方向に突出するように形成されたキャパシタ形成部381bとを有している。導体層383は、一方向に長いインダクタ形成部383aと、このインダクタ形成部383aにおける長手方向の一端部より、側面20bから遠ざかる方向に突出するように形成されたキャパシタ形成部383bとを有している。インダクタ形成部381aにおける他端部の近傍の部分は、入力端子22に接続される。インダクタ形成部383aにおける他端部の近傍の部分は、出力端子23に接続される。接続部用導体層381は本発明における第1の接続部用導体層に対応し、インダクタ形成部381aは本発明における第1のインダクタ形成部に対応し、キャパシタ形成部381bは本発明における第1のキャパシタ形成部に対応する。また、接続部用導体層383は本発明における第2の接続部用導体層に対応し、インダクタ形成部383aは本発明における第2のインダクタ形成部に対応し、キャパシタ形成部383bは本発明における第2のキャパシタ形成部に対応する。
また、誘電体層38には、インダクタ形成部381aにおける他端部およびスルーホール371に接続されたスルーホール384と、スルーホール372に接続されたスルーホール385と、インダクタ形成部383aにおける他端部およびスルーホール373に接続されたスルーホール386とが形成されている。
図7(c)に示した9層目の誘電体層39の上面には、キャパシタ用導体層391が形成されている。また、誘電体層39には、スルーホール384に接続されたスルーホール394と、スルーホール385に接続されたスルーホール395と、スルーホール386に接続されたスルーホール396とが形成されている。
図8(a)に示した10層目の誘電体層40の上面には、キャパシタ用導体層401,402,403が形成されている。導体層401,402,403には、それぞれ、スルーホール394,395,396が接続されている。
図8(b)に示したように、10層目の誘電体層40の下面には、グランドに接続されるグランド用導体層411と、入力端子用導体層412と、出力端子用導体層413とが形成されている。この導体層411はグランド用端子24〜27に接続され、導体層412は入力端子22に接続され、導体層413は出力端子23に接続される。
図7(b)に示した導体層381は、複数のスルーホールを介して、導体層111,112,113に接続されている。導体層383は、複数のスルーホールを介して、導体層131,132,133に接続されている。インダクタ形成部381aは、図4におけるインダクタ7を構成する。インダクタ形成部383aは、図4におけるインダクタ8を構成する。キャパシタ形成部381bは、図4におけるキャパシタ17の一部を構成する。キャパシタ形成部383bは、図4におけるキャパシタ18の一部を構成する。キャパシタ形成部381b,383bは、誘電層38,39を介して導体層402に対向している。導体層402は、複数のスルーホールを介して、導体層121,122,123に接続されている。キャパシタ形成部381bと導体層402と、これらの間に配置された誘電層38,39によって、図4におけるキャパシタ17が構成されている。また、キャパシタ形成部383bと導体層402と、これらの間に配置された誘電層38,39によって、図4におけるキャパシタ18が構成されている。
図7(c)に示した導体層391は、誘電層39を介して導体層401,403に対向している。導体層401は、複数のスルーホールを介して、導体層111,112,113に接続されている。導体層403は、複数のスルーホールを介して、導体層131,132,133に接続されている。導体層391,401,403および誘電層39は、図4におけるキャパシタ19を構成している。
また、導体層401,402,403は、誘電体層40を介して導体層411に対向している。導体層401,411および誘電体層40は、図4におけるキャパシタ14を構成している。導体層402,411および誘電体層40は、図4におけるキャパシタ15を構成している。導体層403,411および誘電体層40は、図4におけるキャパシタ16を構成している。
上述の1層目ないし10層目の誘電体層31〜40および導体層が積層されて、図1および図2に示した積層基板20が形成される。図2に示した端子22〜27は、この積層基板20の外周部に形成される。
なお、本実施の形態において、積層基板20としては、誘電体層の材料として樹脂、セラミック、あるいは両者を複合した材料を用いたもの等、種々のものを用いることができる。しかし、積層基板20としては、特に、高周波特性に優れた低温同時焼成セラミック多層基板を用いることが好ましい。
図3は、側面20aからより見た積層基板20の内部を示す説明図である。本実施の形態では、例えば、誘電体層33〜36は、いずれも第1の誘電率を有し、誘電体層31,32,37〜40は、いずれも、第1の誘電率よりも大きな第2の誘電率を有している。例えば、誘電体層33〜36の比誘電率は3〜45の範囲内であり、誘電体層31,32,37〜40の比誘電率は50〜100の範囲内である。以下、誘電体層33〜36を低誘電率誘電体層と呼び、誘電体層31,32,37〜40を高誘電率誘電体層と呼ぶ。
インダクタ11を構成する導体層111〜113、インダクタ12を構成する導体層121〜123およびインダクタ13を構成する導体層131〜133は、複数の低誘電率誘電体層によって囲まれている。一方、接続部用導体層381,383およびキャパシタ用導体層391,402〜403は、複数の高誘電率誘電体層によって囲まれている。すなわち、インダクタ7,8およびキャパシタ14〜19は、複数の高誘電率誘電体層によって囲まれている。
本実施の形態では、共振器4は、インダクタ11を構成する共振器用導体層111〜113と、キャパシタ14とを有している。共振器5は、インダクタ12を構成する共振器用導体層121〜123と、キャパシタ15とを有している。共振器6は、インダクタ13を構成する共振器用導体層131〜133と、キャパシタ16とを有している。
ここで、図9を参照して、共振器用導体層111〜113と、共振器用導体層121〜123と、共振器用導体層131〜133の形状、配置および相互の関係について詳しく説明する。図9は、これら共振器用導体層を示す平面図である。なお、以下、導体層111,121,131について説明するが、以下の説明は、導体層112,122,132と、導体層113,123,133にも当てはまる。
前述のように、導体層111と導体層131は、それぞれ一方向に長い形状を有している。導体層111における長手方向の一端部はグランド用端子25に接続される。導体層131における長手方向の一端部はグランド用端子27に接続される。導体層121は、二股分岐形状の共振器用導体層であり、一方向に長い第1の部分121aと、それぞれの長手方向の一端部が第1の部分121aにおける長手方向の一端部に接続された第2部分121bおよび第3の部分121cとを有している。第2部分121bにおける他端部はグランド用端子24に接続される。第3部分121cにおける他端部はグランド用端子26に接続される。導体層121における第1の部分121aは、導体層111,131の間に配置されている。第1の部分121aと導体層111,131のそれぞれの長手方向は平行である。導体層111,121は隣接し、誘導性結合している。導体層121,131も隣接し、誘導性結合している。
ところで、本実施の形態のように、積層基板内に3個の共振器用導体層を一方向に並べて配置し、グランド用端子を、積層基板の外周部のうち、3個の共振器用導体層が並ぶ方向の両側の側面に配置する場合には、中央の共振器用導体層では、両側の共振器用導体層に比べて、共振器用導体層の主要部分と積層基板の側面との間の距離が大きくなるため、グランド用端子との接触面積を大きくすることが難しいと共に、主要部分とグランド用端子との間の距離が大きくなる。そのため、中央の共振器用導体層ではインダクタンス成分が大きくなりやすい。その結果、所望のフィルタの特性を実現することが困難になる場合がある。すなわち、中央の共振器用導体層のインダクタンス成分が所望の値よりも大きくなると、その共振器用導体層によって構成される共振器の共振周波数が所望の共振周波数よりも低くなり、その結果、例えばバンドパスフィルタの通過帯域外における減衰量が小さくなる等の問題が発生する。
本実施の形態では、中央の導体層121が二股分岐形状になっている。そして、導体層121の第2の部分121bがグランド用端子24に接続され、導体層121の第3の部分121cがグランド用端子26に接続されている。そのため、本実施の形態では、中央の導体層が1箇所でのみグランド用導体層に接続される場合に比べて、導体層121とグランド用端子との接触面積を大きくすることができる。これにより、本実施の形態によれば、導体層121とグランド用端子との接触面積が小さいことによる導体層121のインダクタンス成分の増加を抑制することが可能になる。これにより、本実施の形態によれば、所望のフィルタの特性を実現することが容易になる。
また、第1ないし第3の部分121a,121b,121cをそれぞれ別個のインダクタとみなすと、導体層121全体によって構成されるインダクタのインダクタンスは、第1ないし第3の部分121a,121b,121cのそれぞれによって構成されるインダクタのインダクタンスの合成となる。第2の部分121bによって構成されるインダクタと第3の部分121cによって構成されるインダクタは、第1の部分121aによって構成されるインダクタの一端とグランドとの間に並列に設けられる。従って、導体層121全体によって構成されるインダクタのインダクタンスは、導体層121から第2の部分121bと第3の部分121cのうちの一方を除いた導体層のインダクタンスよりも小さくなる。このことから、本実施の形態によれば、第1の部分121aとグランド用端子との間の距離が大きいことによる導体層121のインダクタンス成分の増加を抑制することができる。これにより、本実施の形態によれば、所望のフィルタの特性を実現することが容易になる。導体層122,123についても同様のことが言える。
また、導体層121〜123によって構成されるインダクタ12は、図10に示したように表すことができる。すなわち、インダクタ12は、第1の部分121a〜123aによって構成される第1のインダクタ12aと、第2の部分121b〜123bによって構成される第2のインダクタ12bと、第3の部分121c〜123cによって構成される第3のインダクタ12cとを含む。インダクタ12b,12cは、インダクタ12aの一端とグランドとの間に並列に設けられる。インダクタ12bはグランド用端子24に接続され、インダクタ12cはグランド用端子26に接続される。このように、本実施の形態では、インダクタ12aの一端とグランドとが、並列に設けられたインダクタ12b,12cによって接続される。
ここで、本実施の形態におけるインダクタ12に対する比較例として、図10に示したインダクタ12からインダクタ12b,12cのうちの一方を除いた構成のインダクタを考える。この比較例のインダクタは、導体層121〜123から第2の部分121b〜123bと第3の部分121c〜123cのうちの一方を除いた構成の3つの導体層によって構成されるインダクタである。インダクタ12のインダクタンスは、比較例のインダクタのインダクタンスよりも小さくなる。従って、本実施の形態によれば、バンドパスフィルタ1の構造や共振器5の配置に起因した共振器5のインダクタンス成分の増加、具体的には第1の部分121a〜123aとグランド用端子との間の距離が大きいことによるインダクタ12のインダクタンスの増加を抑制することができる。これにより、本実施の形態によれば、所望のフィルタの特性を実現することが容易になる。
また、本実施の形態では、図9に示したように、導体層121における第1の部分121aは、導体層111,131のそれぞれに対してインターデジタル結合している。そのため、本実施の形態では、第1の部分121aにおけるグランド側の端部(図9における左側の端部)と、導体層111,131におけるグランド側の端部(図9における右側の端部)は、第1の部分121aの長手方向について互いに反対側に配置される。これにより、本実施の形態によれば、積層基板20内の限られた空間を効率よく利用して、導体層111,121,131を配置することが可能になる。
また、本実施の形態では、図9に示したように、導体層121は、第1の部分121aを通り第1の部分121aの長手方向に平行な仮想の直線CLを中心として線対称となる形状を有している。また、導体層111と導体層131は、仮想の直線CLを中心として線対称となる形状を有している。このような構成とすることにより、積層基板20の内部の構成が簡単になると共に、フィルタの特性の調整が容易になる。
ここで、図9に示したように、第1の部分121aと導体層111とが互いに対向する領域、すなわち、第1の部分121aの長手方向に直交する方向(図9における上方または下方)から見たときに、第1の部分121aと導体層111とが重なる領域の長さをL4とする。また、第1の部分121aと導体層131とが互いに対向する領域、すなわち、第1の部分121aの長手方向に直交する方向(図9における上方または下方)から見たときに、第1の部分121aと導体層131とが重なる領域の長さをL5とする。本実施の形態では、長さL4,L5は、第1の部分の長さL2、導体層111の長さL1および導体層131の長さL3のいずれよりも小さい。長さL4,L5は、長さL1,L2,L3のうちの最も小さいものの25%以上75%以下であることがより好ましい。
本実施の形態では、導体層111と導体層121が誘導性結合し、導体層131と導体層121が誘導性結合している。ここで、上記の長さL4,L5が小さいほど、導体層111と導体層121との誘導性結合の大きさと、導体層131と導体層121との誘導性結合の大きさが小さくなる。従って、本実施の形態によれば、長さL4,L5を調整することによって、導体層111と導体層121との誘導性結合の大きさと導体層131と導体層121との誘導性結合の大きさを調整することができる。これにより、本実施の形態によれば、隣接する共振器4,5間の誘導性結合の大きさと、隣接する共振器5,6間の誘導性結合の大きさを容易に調整することが可能になる。その結果、本実施の形態によれば、バンドパスフィルタの特性を容易に調整することが可能になる。
また、本実施の形態によれば、長さL4,L5が長さL1,L2,L3より小さいことから、長さL4,L5が長さL1,L2,L3のいずれかと等しい場合に比べて、共振器4,5間の誘導性結合の大きさおよび共振器5,6間の誘導性結合の大きさを小さくすることができる。これにより、本実施の形態によれば、長さL4,L5が長さL1,L2,L3のいずれかと等しい場合に比べて、バンドパスフィルタの通過・減衰特性を示す曲線のうちの減衰極の近傍の部分における傾きを大きくすることができる。そのため、本実施の形態によれば、通過帯域における通過・減衰特性と通過帯域外における通過・減衰特性とを明確に区別することが可能になる。
本実施の形態に係るバンドパスフィルタ1は、例えば、2.4〜2.5GHzの周波数帯域における減衰量を小さくし、2.17GHzの近傍の周波数帯域における減衰量を大きくしたい場合に有効である。2.4〜2.5GHzという周波数帯域は、ブルートゥース規格の通信装置や無線LAN用の通信装置において用いられるバンドパスフィルタの通過帯域である。2.17GHzの近傍の周波数帯域は、広帯域符号分割多元接続(W−CDMA)方式の携帯電話で使用される周波数帯域である。
また、本実施の形態によれば、バンドパスフィルタ1の小型化、薄型化に伴って隣接する共振器間の距離を短くせざるを得ない場合であっても、隣接する共振器間の誘導性結合の大きさを小さくすることができるので、バンドパスフィルタ1の小型化、薄型化が容易になる。
また、本実施の形態では、直列に接続されたインダクタ7とキャパシタ17とを含む接続部41によって共振器11と共振器12とが接続され、直列に接続されたインダクタ8とキャパシタ18とを含む接続部42によって共振器12と共振器13とが接続されている。これにより、本実施の形態によれば、バンドパスフィルタ1の通過・減衰特性において、通過帯域よりも高周波側に存在するノッチの周波数を調整することが可能になる。そのため、本実施の形態によれば、通過帯域よりも高周波側に存在するノッチの周波数を調整することによって、バンドパスフィルタ1の通過信号に対する高調波等のスプリアスを容易に低減することが可能になる。
以下、シミュレーションの結果を参照して、上記の効果について詳しく説明する。このシミュレーションでは、本実施の形態に係るバンドパスフィルタ1と図11に示した比較例のバンドパスフィルタとで、通過・減衰特性を比較した。図11に示した比較例のバンドパスフィルタの回路構成は、図4に示した本実施の形態に係るバンドパスフィルタ1からインダクタ7,8を除いて、共振器4,5をキャパシタ17のみによって接続し、共振器5,6をキャパシタ18のみによって接続した構成である。
図12は、図11に示した比較例のバンドパスフィルタの通過・減衰特性を示している。図13は、図4に示した本実施の形態に係るバンドパスフィルタ1の通過・減衰特性を示している。なお、図12および図13に示した通過・減衰特性は、シミュレーションによって求めたものである。このシミュレーションでは、比較例のバンドパスフィルタと本実施の形態に係るバンドパスフィルタ1のいずれについても、通過帯域がおよそ2.4〜2.5GHzになり、2.17GHzの近傍に、通過帯域よりも低周波側に存在するノッチ(減衰極)が形成されるように設計されている。図12、図13において、符号101を付した矢印は、通過帯域よりも高周波側に存在する第1のノッチ(減衰極)を示している。また、図13において、符号102を付した矢印は、通過帯域よりも高周波側に存在する第2のノッチ(減衰極)を示している。第1のノッチ101は、通過帯域よりも高周波側において、通過帯域に最も近い位置に存在するノッチである。第2のノッチ102は、通過帯域よりも高周波側において、第1のノッチ101の次に通過帯域に最も近い位置に存在するノッチである。なお、比較例のバンドパスフィルタの通過・減衰特性においては、第2のノッチは、図12に示した周波数範囲よりも高周波側に存在するため、図12には現れていない。
図13に示した本実施の形態に係るバンドパスフィルタ1の通過・減衰特性では、図12に示した比較例のバンドパスフィルタの通過・減衰特性に比べて、第1のノッチ101の周波数が高くなり、第2のノッチ102の周波数が低くなっている。このことから、図11に示した回路構成に対してインダクタ7,8を加えることにより、通過帯域をほとんど変化させずに、第1のノッチ101の位置を高周波側に移動させ、第2のノッチ102の位置を低周波側に移動させることができることが分かる。ノッチ101,102の位置の移動量は、インダクタ7,8のインダクタンスの大きさによって調整することができる。インダクタ7,8のインダクタンスの大きさは、例えば、インダクタ形成部381a,383aの長さや幅によって調整することができる。
このように、本実施の形態によれば、通過帯域よりも高周波側に存在するノッチ101,102の周波数を調整でき、これにより、バンドパスフィルタ1の通過信号に対する高調波等のスプリアスを容易に低減することが可能になる。例えば、バンドパスフィルタ1の通過信号の周波数帯域が2.4〜2.5GHzの場合には、通過信号に対する第2高調波の周波数帯域は4.8〜5.0GHzとなり、通過信号に対する第3高調波の周波数帯域は7.2〜7.5GHzとなる。図13に示した例では、第1のノッチ101が上記の第2高調波の周波数帯域の近傍に存在し、第2のノッチ102が上記の第3高調波の周波数帯域の近傍に存在している。従って、この例では、バンドパスフィルタ1によって、通過信号に対する第2高調波および第3高調波を低減することが可能になる。
また、本実施の形態では、バンドパスフィルタ1に対して直列にノッチフィルタを設けることなく、バンドパスフィルタ1によって、バンドパスフィルタ1の通過信号に対する高調波等のスプリアスを容易に低減することが可能になる。そのため、本実施の形態によれば、バンドパスフィルタ1の通過帯域における挿入損失が大きくなることを防止することができる。
また、本実施の形態では、共振器11〜13を構成する共振器用導体層111〜113、121〜123、131〜133は複数の低誘電率誘電体層によって囲まれ、接続部41,42を構成する接続部用導体層381,383およびキャパシタ用導体層391は複数の高誘電率誘電体層によって囲まれている。これにより、本実施の形態によれば、接続部41,42による上述の効果を顕著にすることができる。
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、本発明のバンドパスフィルタにおいて、共振器の数は、2つでもよいし、4つ以上であってもよい。共振器の数が2つの場合のバンドパスフィルタの構成は、例えば、図4に示した構成から、共振器6と接続部42を除いた構成となる。共振器の数が4つ以上の場合のバンドパスフィルタの構成は、例えば、図4に示した構成において、共振器6と出力端子3との間に、1つ以上の新たな共振器と、隣接する共振器を接続する1つ以上の新たな接続部を挿入した構成となる。共振器の数が2つや4つ以上の場合においても、誘導性結合する2つの共振器を、直列に接続されたインダクタとキャパシタとを含む接続部によって接続することにより、実施の形態と同様に、通過帯域よりも高周波側に存在するノッチの周波数を調整することが可能になり、これにより、容易にスプリアスを低減することが可能になる。
また、実施の形態では、インダクタ11〜13をそれぞれ3つの共振器用導体層によって構成したが、インダクタ11〜13は、それぞれ、1つまたは2つの共振器用導体層によって構成してもよいし、4つ以上の共振器用導体層によって構成してもよい。
本発明のバンドパスフィルタは、特に、ブルートゥース規格の通信装置や無線LAN用の通信装置において用いられるバンドパスフィルタとして有用である。
1…バンドパスフィルタ、2…入力端子、3…出力端子、4〜6…共振器、7,8,11〜13…インダクタ、14〜19…キャパシタ、20…積層基板、22…入力端子、23…出力端子、24〜27…グランド用端子、31〜40…誘電体層、41…第1の接続部、42…第2の接続部、111〜113,121〜123,131〜133…共振器用導体層、381,383…接続部用導体層、381a,383a…インダクタ形成部、381b,383b…キャパシタ形成部、391,401〜403…キャパシタ用導体層。