JP2008163727A - 振動低減機構およびその諸元設定方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】構造物における主構造体1に対してその周囲に跳ね出す剛性部材2を主構造体と一体に設け、主構造体の周囲には該主構造体に対して独立している軸力部材3を並設してその一端部を固定し、軸力部材の他端部と前記剛性部材との間に回転慣性質量ダンパー4を介装し、それにより生じる回転慣性質量Ψと軸力部材の軸剛性kvとにより定まる固有振動数を主構造体の固有振動数に同調させる。軸力部材に直列に付加バネ5を設置することにより軸力部材の総合的な軸剛性を適切に調整することもできる。
【選択図】図1
Description
また、特許文献2には、構造物をコア(主構造体)と外周フレーム(または外周壁)とにより構成し、それらのいずれか一方の頂部にトップガーダーを張り出すように設けて、コアと外周フレームとの間にトップガーダーを介して制震装置を架設することにより、コアが曲げ変形した際には制震装置を作動させてその振動を減衰させるという曲げ変形制御型制震構造物の提案がある。
また、特許文献2に示される曲げ変形制御型制震構造物では、頂部の曲げ戻しを利用することから大きな減衰を付与する割には振動低減効果は限定的で小さなものにしかならない。
本発明においては、必要に応じて、軸力部材の軸剛性を調整するための付加バネを該軸力部材と直列に設置しても良い。
曲げ変形の卓越する構造物における主構造体に対し剛性部材を跳ね出させて設けるとともに軸力部材と直列に回転慣性質量ダンパーを付加するだけで、主構造体の共振特性を十分に改善でき、大幅な応答低減効果が得られ、地震動のみならず風や交通振動などの外乱に対しても振動を有効に抑制でき、居住性の改善に寄与する。
回転慣性質量と軸力部材の軸剛性とにより定まる振動数を主構造体の固有振動数に同調させることで、構造物の応答を大幅に低減できる。また、高振動領域においてもダンパー反力や軸力部材の反力が増大しない。
回転慣性質量ダンパーは実際の錘の質量の10〜500倍もの回転慣性質量が得られ、したがって小質量の錘による小型軽量かつ小容量の回転慣性質量ダンパーであっても大きな質量を有するTMD等の他の振動低減機構と同等ないしそれ以上の性能が得られ、コスト的にも設置スペースの点でも有利である。
必要に応じて軸力部材に付加バネを直列に設置することにより、それらの全体の軸剛性を最適にかつ容易に設定することができ、振動数同調を確実にかつ精度良く行うことができる。
本実施形態は、曲げ変形が卓越する塔状の高層建物への適用例であって、図1(a)は全体の概要図、(b)はその振動モデルである。
本実施形態における振動低減対象の構造物としての高層建物は、コア部を構成している主構造体1と、その頂部から周囲に跳ね出す形態で構造的には主構造体1と一体に設けられている剛性部材2と、主構造体1の周囲に構造的には独立に立設されて外周フレームを構成している軸力部材3とからなり、軸力部材3の上端部と剛性部材2の先端部との間に回転慣性質量ダンパー4を介装したことを主眼とするものである。
これは基本的には特許文献2に示されている曲げ変形制御型制震構造物と同様の構造のものであり、本実施形態における主構造体1、剛性部材2、軸力部材3、回転慣性質量ダンパー4は、それぞれ特許文献2に示される制震構造物におけるコア、トップガーダー、外周フレーム(ないし外周壁)、制震装置に相当するものである。
具体的には、回転慣性質量ダンパー4に生じる加力(加振)方向の相対変位をx、その際の錘の回転角をφとし、それら相対変位xと回転角φとの間に x=αφ の関係があるとき、摩擦等による回転ロスを無視すると、この回転慣性質量ダンパー4の変位方向の慣性力(制御力)Pは次式で表される。
しかも、回転慣性質量Ψの大きさは、錘の質量のみならずその径寸法および径方向の質量分布により決定されるものであり、錘の質量が大きいほど、径寸法が大きいほど、質量が内周部よりも外周部に分布しているほど回転慣性質量Ψは大きくなるから、それらを適正に設定することによって回転慣性質量Ψを所望の大きさに設定することができ、所望の振動低減効果を得られる。
すなわち、一般に質量mとバネkによる振動系における固有角振動数ωは
ω2=k/m
なる関係で定まるのと同様に、本発明のような回転慣性質量ダンパー4と軸力部材3とによる振動系においては、その固有角振動数ω0は回転慣性質量Ψおよび軸力部材の軸剛性kvから
ω0 2=kv/Ψ
なる関係で定まる。したがって、その固有角振動数ω0を主構造体1の固有1次角振動数ω1にほぼ一致させれば、つまり
ω0 2=kv/Ψ≒ω1 2
の関係が成り立つようにΨおよびkvの値を設定すれば、主構造体1の固有1次モードの振動に対する応答を大きく低減させることができる。
しかも、上記従来の制震構造物では、本発明における軸力部材3に相当する外周フレームないし外周壁の軸変形は制震効果を低下させるロスでしかなく、したがってそれらは十分に高軸剛性とする必要があるが、本発明においては軸力部材3の総合的な軸剛性kvを適切に設定して振動数同調に有効に利用するものであるし、必要に応じて軸力部材3自体の軸剛性kcを補完するように付加バネ5を設置してその総合的な軸剛性kvを最適に調整でき、それにより最適な振動数同調を容易に行い得るので構造的に極めて合理的である。
図1(b)に示す振動モデルにおいて、主構造体1の曲げ剛性EI、その等価質量m、回転慣性モーメントIθ、軸力部材3の総合的な軸剛性kv、軸力部材3自体の軸剛性kc、付加バネk0、回転慣性質量ダンパー4による回転慣性質量Ψ、付加減衰c0(回転慣性質量ダンパー4と並列に設置)とする。また、この構造物の全高H、主構造体1と軸力部材3との間の距離bとする。なお、主構造体1(具体的にはコア部)が全てのせん断力を負担し、軸力部材3(具体的には外周フレーム)は軸方向力のみを負担するものとする。
ω1 2=3EI/(mH3)とする。なお、ω1は剛性部材2の曲げ戻し効果を無視したときの構造物の固有1次角振動数である。
これに対する構造物の減衰定数h=c/(2mω1)とする。また、付加振動系に対して
Ψ/m=0.2、( ̄ω0)=ω0/ω1=1.01、付加減衰h0=c0/(2Ψω0)=0.07(これは、h01=c0/(2mω1)=( ̄Ψ)( ̄ω0)h0=0.014に相当)とした場合を例にとって、その場合の頂部応答倍率(加振振幅に対する頂部応答の比)を図2に示し、ダンパー反力倍率(軸力部材3の負担力でもある)を図3に示す。
また、図2〜図3には比較のために回転慣性質量ダンパーを使用せず減衰のみで構成した場合についても併せて示しているが、これは頂部の応答倍率が回転慣性質量ダンパー4を使用した場合と同等になるように減衰h01=0.7とした場合である。
また、図3に示すように、共振振動数におけるダンパー反力(回転慣性質量と減衰の合計)は、回転慣性質量ダンパー4を使用した場合も減衰のみを付与した場合と同等であるが、前者では共振点近傍以外ではほとんどダンパーが反力を負担しないのに対し、後者では加振振動数の増大に伴いダンパーの負担力が増大している。したがって、地震のように種々の振動数成分をもつ加振の場合は、本発明の方がダンパーや軸力部材に作用する反力が小さくなり、より合理的な設計ができる。
2 剛性部材
3 軸力部材
4 回転慣性質量ダンパー
5 付加バネ
6 付加減衰
Claims (4)
- 曲げ変形が卓越する高層建物等の構造物を対象とする振動低減機構であって、
振動低減対象の構造物における主構造体に対してその周囲に跳ね出す剛性部材を主構造体と一体に設け、
主構造体の周囲には、該主構造体に対して独立している軸力部材を並設してその一端部を固定するとともに、該軸力部材の他端部と前記剛性部材との間に、主構造体の曲げ変形が剛性部材を介して伝達されることにより錘が回転して回転慣性質量を生じる回転慣性質量ダンパーを介装し、
該回転慣性質量ダンパーにより生じる回転慣性質量と前記軸力部材の軸剛性とにより定まる固有振動数を前記主構造体の固有振動数に同調させてなることを特徴とする振動低減機構。 - 請求項1記載の振動低減機構であって、
軸力部材の軸剛性を調整するための付加バネを該軸力部材と直列に設置してなることを特徴とする振動低減機構。 - 曲げ変形が卓越する高層建物等の構造物を対象とする振動低減機構の諸元設定方法であって、
振動低減対象の構造物における主構造体に対してその周囲に跳ね出す剛性部材を主構造体と一体に設け、
主構造体の周囲には、該主構造体に対して独立している軸力部材を並設してその一端部を固定するとともに、該軸力部材の他端部と前記剛性部材との間に、主構造体の曲げ変形が剛性部材を介して伝達されることにより錘が回転して回転慣性質量を生じる回転慣性質量ダンパーを介装し、
該回転慣性質量ダンパーにより生じる回転慣性質量と前記軸力部材の軸剛性とにより定まる固有振動数を前記主構造体の固有振動数に同調させるように、回転慣性質量ダンパーと軸力部材の諸元を設定することを特徴とする振動低減機構の諸元設定方法。 - 請求項3記載の振動低減機構の諸元設定方法であって、
軸力部材に付加バネを直列に設置することによって軸力部材全体の軸剛性を調整することを特徴とする振動低減機構の諸元設定方法。
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