JP2008163598A - 建物 - Google Patents

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Abstract

【課題】全館空調又は全館換気システムが設けられた場合には、そのシステムを構成する空調換気ユニット等が好適に設置され、たとえそのようなシステムが設けられなくても、建物の通気性や換気性が高められた建物を得る。
【解決手段】建物10の二階部分13に設けられたスキップ床27と境界部15との間に収納室26が形成されている。その収納室26には、スキップ床27に吊り下げられた空調ユニット41やダクト類(送風ダクト43a〜43c等)が収納されている。この構成によれば、空調ユニット41等を収納するために小屋裏スペースが要求されたり、境界部15を広く形成したりする必要がなくなる。また、空調ユニット41等が設けられない場合でも、収納室26を通気室として利用すれば、建物の通気性や換気性が高められる。
【選択図】図1

Description

本発明は、住宅等の建物であって、全館空調又は全館換気システムや居室間を連通する通気路によって通気性や換気性が高められた建物に関するものである。
住宅等の建物においては、建物内での快適な環境を維持したり、湿気等による建物への悪影響を回避したりするため、通気性や換気性を高めるための工夫がなされる場合が多い。その場合、建物の間取りや窓の設置箇所等を適宜工夫するだけで足りることもある。しかしながら、中には、敷地の狭さや隣家との関係等といった各種事情により間取りや窓の設置箇所に制約があり、間取り等を工夫しただけでは通気性や換気性が不十分な場合もある。
そこで、その対応策の一つとして、共通の空調換気ユニットなどを用いて全館空調や全館換気を行うシステムが実用化されている。かかるシステムが勾配屋根を有する建物に設けられた場合、空調換気ユニット等の収納には小屋裏スペースが利用される。ところが、この構成では、特に下階部分の居室までの通気ダクトの長さが長くなる。そのため、ダクト取り回しが煩雑なものとなったり、空調などの効率が低下したりするなどの問題が生じる。また、陸屋根を有する建物の場合には収納スペースが無いという問題もある。
そこで、従来、下階の天井とその直上階の床との間の隙間空間に空調装置等を設置する技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平11−218342号公報
しかしながら、上記先行技術では、下階部分と上階部分との間の境界部という狭小スペースに空調装置等を設置する構成であるため、スペース上の制約が大きく、使用できる空調装置などに制限が生じてしまう。このため、境界部を広く形成することにより、このような制限をなくすことが対応策として考えられる。すると、この場合には建物全体の高さが高くなり、斜線規制等による弊害が生じてしまうという別の問題が生じる。また、下階部分の居室の天井高さを低くしたり、上階部分の床面高さを高くしたりして境界部を広く形成する構成では、下階部分又は上階部分の居室の室内スペースが狭くなってしまう。
このように、全館空調又は換気システムが設けられる場合には、従来の技術が既存のスペースを利用して空調換気ユニット等を収納するものであるため、前述したような各種の課題が存在する。
その一方で、コスト面等の理由により、全館空調又は全館換気システムの設置それ自体がそもそもなされない場合も考えられる。したがって、そのような場合でも通気性や換気性を高めることも大きな課題の一つである。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、全館空調又は全館換気システムが設けられた場合には、そのシステムを構成する空調換気ユニット等が好適に設置され、たとえそのようなシステムが設けられなくても、建物の通気性や換気性が高められた建物を得ることを主たる目的とするものである。
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。
手段1.互いに隣接する上下階部分のいずれか一方にスキップ床が設けられた建物であって、
前記スキップ床と上下階の境界部との間に形成された空調スペースと、
その空調スペースと該空調スペースに対して横並びとなるようにして隣接する居室空間との間を連通する第1開口部と、
前記空調スペースと該空調スペースに対して上下並びとなるようにして隣接する他方の階部分との間を連通する第2開口部と
を備えたことを特徴とする建物。
手段1によれば、空調スペースが設けられたことにより、全館空調又は全館換気システムが設けられる場合には、システムを構成する空調・換気装置等の収納スペースとして空調スペースを利用できる。これにより、空調・換気装置等が既存のスペースに収納されることによって生じる問題を解消し、空調・換気装置等を好適に設置できる。また、そのようなシステムが設けられない場合でも、空調スペース、第1開口部及び第2開口部を介して上下の居室間が連通されているため、これを通気路として利用できる。これにより、居室間の通気性や換気性を高めることができる。
この手段1において、前記スキップ床は横並びとなるようにして隣接する居室間の仕切り部分に設けられていることが好ましい(手段2)。これにより、スキップ床を設けた場合でもそのスキップ床の存在によって居室空間の活用に制約が大きくなることはなく、居室空間を広く活用することができる。なお、この場合、両居室それぞれについて居室空間と空調スペースと連通する第1開口部が設けられることが好ましい。
手段3.手段1又は2において、前記スキップ床は上階部分に設けられ、前記空調スペースには前記スキップ床に吊り下げられた空調・換気装置と、その空調・換気装置を起点として建物内の各居室に延びる通気ダクトとが設けられていることを特徴とする建物。
手段3によれば、空調・換気装置や通気ダクトの収納スペースとして空調スペースが利用されている。この場合、空調スペースはスキップ床の下方に形成されるから、たとえ小屋裏スペースの無い陸屋根タイプの建物であっても空調・換気装置等を好適に配置することができる。また、空調・換気装置等の設置スペースを確保するために、上下階の境界部全体を広く形成する必要がなくなる。このため、建物全体の高さを高くする必要はないし、各居室の高さを十分に確保することもできる。以上により、全館空調又は全館換気のためのシステムを備える建物において、空調・換気用設備を好適なる態様で設置することができる。
なお、「空調・換気装置」は、全館空調システムを実現するための空調機能、又は全館換気システムを実現するための換気機能のうち、少なくともいずれかを有するものであればよい。
また、この手段3の構成は次のような構成とすることが好ましい。
すなわち、前記スキップ床は上階天井よりも上階床側に近い位置に配設されている構成とする(手段4)。スキップ床に吊り下げられた空調・換気装置や通気ダクトの収納に必要な高さ方向のスペースは限られているため、スキップ床を上階天井寄りに設けた場合、その下方には無駄なスペースが広がってしまう。この点、本構成によれば、スキップ床の上方に広がるスキップスペースも居室の収納空間等に利用することが可能となり、スキップ床を設けた領域の上下のスペースを無駄にすることなく有効利用することができる。
また、前記空調・換気装置の下方に前記第2開口部が配され、その第2開口部の内周部にも前記空調・換気装置の一部を収納可能とされている構成とする(手段5)。これにより、空調スペースだけでなく、第2開口部の内周部のスペースも利用して空調・換気装置を収納することができるため、吊り下げられる空調・換気装置の大きさに関する制約を緩和することができる。
また、前記空調・換気装置には前記スキップ床と相対向する面に少なくとも一つの装置吹出口が設けられており、当該装置吹出口に接続される通気ダクトを挿通する挿通孔が前記スキップ床に設けられている構成とする(手段6)。これにより、空調・換気装置の側方又は下方に設けられる通気ダクトを減らすことが可能となり、空調・換気装置の側方又は下方における通気ダクトの取り回しがさらに容易になる。
また、前記第1開口部及び第2開口部はそれぞれ通気部材によって目隠しされ、それら各通気部材に前記通気ダクトが接続されて第1開口部及び第2開口部が吸気口又は吹出口として用いられている構成とする(手段7)。これにより、第1開口部及び第2開口部を用いて、空調・換気用設備を居室の美観上好適なる態様で設置することができる。また、第2開口部が吹出口として用いられると、下階には空調・換気装置からの空気が天井より吹き出されることになる。この構成では、空調・換気によって下階床面にたまった塵埃の舞い上がりを抑えることができる。
建物の構造躯体を構成する主架構の上階天井梁に、該上階天井梁から吊り下げられるように連結させてスキップ架構が構築され、当該スキップ架構により前記スキップ床が上階部分に設けられている構成とする(手段8)。
これにより、上階天井梁とスキップ架構とを一体の上階天井構造体とみなすことができる。したがって、主架構の構造計算上、スキップ架構を上階天井梁の付属部分とみなすことができるため、スキップ架構の追加によって主架構の構造計算が複雑になることがなく、量産化に適している。また、上階天井梁とスキップ架構とを一体の上階天井構造体とみなせるように構成するには、スキップ架構のスキップ床梁と上階天井梁とを耐力壁で繋ぐことによって容易に実現することができる。
手段9.手段1において、建物の外壁のうち、向かい合う外壁にそれぞれ外気を導入可能な窓が設けられ、
同一階の居室間を仕切る仕切り部分が前記両外壁の窓と対峙するように設定され、その仕切り部分に前記スキップ床が設けられ、前記両居室に向けて開口するようにしてそれぞれ前記第1開口部が設けられており、各第1開口部及び前記空調スペースにより、居室間を連通する居室間通気路が構成されていることを特徴とする建物。
手段9によれば、スキップ床が設けられた階部分では、向かい合う壁面のそれぞれに設けられた窓のうち、一方の窓から流入した外気は居室間通気路を経て、仕切り部分で仕切られた隣接する居室に流入し、さらに他方の窓から排気される。このため、敷地の狭さや隣家との関係等といった各種事情により、向かい合う壁面に設けられた窓と対峙する仕切り部分が設定されている建物であっても、居室間通気路を介して居室間の通気性や換気性を高めることができる。
この手段9の構成は次のような構成とすることが好ましい。
すなわち、前記スキップ床の非設置階に外気を導入可能な窓が設けられ、前記空調スペース、前記各第1開口部及び前記第2開口部により、上下階部分の各居室間を連通する上下通気路が構成されているものとする(手段10)。この構成によると、上階部分又は下階部分のうち前記スキップ床の非設置階に設けられた窓から流入した外気の一部は、上下通気路を経て前記スキップ床の設置階である他階の居室に流入し、その他階における他方の窓から排気される。このため、上下通気路を介して上下階部分の居室間の通気性や換気性を高めることができる。
また、前記スキップ床が上階部分に設けられ、前記第1開口部は上階床寄りに近接させて設けられている構成とし(手段11)、または前記スキップ床が下階部分に設けられ、前記第1開口部は下階天井寄りに近接させて設けられている構成とする(手段12)。なお、ここでいう「近接」とは、床面又は天井を一部に利用して第1開口部が形成されている場合も含むものとする。これらの構成によると、第1開口部が第2開口部の近くに配置されることになり、第1開口部又は第2開口部から空調スペースに流入した空気は、その流れを維持しながら他方の開口部を経て他階の居室へ円滑に導かれる。これにより、効率的な通気性及び換気性を確保することができる。
以下に、発明を具体化した一実施形態である建物について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、建物10,110として陸屋根タイプの二階建て住宅を例示している。また、建物10,110は、骨組として鋼材が利用された骨組構造を有し、この骨組構造に外壁その他の各種建築材が設けられて構築されるものとなっている。
[第1実施形態]
図1は第1実施形態の建物全体を示す概略縦断面図であり、図2はその要部を拡大した図である。そして、この第1実施形態では、建物10には全館空調システムが備え付けられている。なお、以下では、図1における建物10の右側を正面側、左側を裏側として説明する。
(建物の全体構成についての説明)
図1に示すように、建物10は、基礎11上に形成された下階部分としての一階部分12と、その一階部分12の上方に隣接して形成された上階部分としての二階部分13と、その二階部分13の上方に形成された屋根部分14とを備えている。なおここでは詳細な説明は省略するが、一階部分12と二階部分13との境界部15は、周知のように一階天井面と二階床面とを含むそれらの間にある各部材によって構成されている。
建物10の一階部分12には、例えば第1居室21及び第2居室22がそれぞれ形成され、同二階部分13には、例えば第3居室23、第4居室24、スキップスペース25及び収納室26が形成されている。
建物10の二階部分13には、スキップ床27が設けられている。スキップ床27と屋根部分14との間には前記スキップスペース25が形成され、スキップ床27と境界部15との間には空調スペースとしての前記収納室26が形成されている。したがって、スキップスペース25及び収納室26は二階部分13においてスキップ床27を境にして上下に配置されている。
このスキップ床27は二階床側で、かつ正面側と裏側との間の中央部に配置されている。これにより、側面視における建物10の中心部(間取りの中心)に収納室26が配置される。そして、スキップ床27が設けられた部分が仕切り部分となって、スキップスペース25及び収納室26の正面側には前記第3居室23が配置され、裏側には第4居室24が配置されている。
図2に示すように、スキップ床27の下面と二階床面との間において、第3居室23及び第4居室24の内壁にはそれぞれ第1開口部28が設けられている。居室23,24ごとに設けられた第1開口部28を介して、第3居室23及び第4居室24はそれぞれ収納室26と連通されている。そして、各第1開口部28には通気部材としての通気用ガラリ29が取り付けられ、この通気用ガラリ29によって開口部30は通気性を保った状態で目隠しされる。
なお、第1開口部28は、図示したようにスキップ床27の下面と二階床面との間の全体にわたって設けられた構成ではなく、両者の間の一部に設けられた構成であってもよい。いずれにせよ、第1開口部28は二階床面と近接した位置に設けられている。
建物10の境界部15には、その境界部15をスキップ床27の下方で貫通して、一階部分12の室内(本実施形態では第2居室22の室内)と二階部分13の収納室26とを連通する第2開口部30が設けられている。前述したように収納室26は建物10の中心部に配置されているため、この第2開口部30も概ね建物10の中心部に位置する。第2居室22の天井において、第2開口部30には通気部材としての天井用ガラリ31が取り付けられている。この天井用ガラリ31によって、第2開口部30が通気性を保った状態で目隠しされる。
図示を省略するが、前記スキップスペース25は複数に区画され、各区画が第3居室23又は第4居室24に面した押入れや天袋等の収納スペース、いわゆるロフトと呼ばれるスペース(屋根裏部分、中二階部分又は据付ベッドの上段部分等)等として利用される。
一方、前記収納室26には、全館空調システムを構成する空調ユニット(室内機)41が設けられ、その空調ユニット41はスキップ床27に吊り下げられている。空調ユニット41はスキップ床27の下面のうち、下方に第2開口部30が設けられている箇所で吊り下げられており、空調ユニット41の大きさによってはその一部が第2開口部30にまで至るようになっている。空調ユニット41には建物10内の居室から吸気された空気を送る吸気ダクト42と、建物10内の居室に温風又は冷風を給送する複数の送風ダクト43a〜43cと、屋外に通じる排気ダクト44とが接続されている。
前記吸気ダクト42は空調ユニット41とともに収納室26に設けられ、二階床面と近接した位置にある通気用ガラリ29に接続されている。そして、第3居室23及び第4居室24内の空気は吸気ダクト42を通じて空調ユニット41に導入される。このため、通気用ガラリ29が設けられた第1開口部28は吸気口として利用されている。
前記第1送風ダクト43aは境界部15に設けられ、第1居室21の天井に設けられた吹出口32に接続されている。また、前記第2送風ダクト43bは天井用ガラリ31に接続されている。そして、第1送風ダクト43aを通じて第1居室21に、第2送風ダクト43bを通じて第2居室22に温風や冷風が吹き出される。このため、天井用ガラリ31が設けられた第2開口部30は、第2居室22の吹出口として利用されている。
また、前記第3送風ダクト43cは空調ユニット41の上面に設けられた装置吹出口45に接続され、スキップ床27に形成されたダクト挿通孔33に挿通されるとともに屋根部分14まで延設されている。第3送風ダクト43cは屋根部分14で第3居室23及び第4居室24に向けて二つに分岐され、その先は第3居室23及び第4居室24の天井に設けられた吹出口34,35に接続されている。そして、この第3送風ダクト43cを通じて第3居室23及び第4居室24に温風や冷風が吹き出される。なお、第3送風ダクト43cがスキップスペース25に設けられたように図示されているが、実際のところ、第3送風ダクト43cは壁の内側に設けられてスペースの有効利用が図られている。
さらに、前記排気ダクト44は境界部15に設けられており、この排気ダクト44を通じて汚れた空気や湿気等が屋外に排出される。
(架構モデルの説明)
次に、上記建物10において、スキップスペース25及び収納室26に関する構造について説明する。ただ、具体的構造の説明は省略し、以下では架構モデルについて説明する。
本実施形態の建物10では、その全体構造を構成する主架構K1と、収納スペース構築のためのスキップ架構K2とを備えている。図3は、建物の一階部分12と二階部分13とを単純化して表した架構モデルを示している。
図3の架構モデルでは、基礎11上に主架構K1を設定するとともに、主架構K1の内部に、その主架構K1とは独立してスキップ架構K2を設定している。具体的には、主架構K1の上階天井梁51に吊り下げられるようにして、スキップ架構K2が上階天井梁51に連結されている。そして、スキップ架構K2の側面の少なくとも一面が耐力壁によって構成されており、これにより上階天井梁51とスキップ架構K2とを一体化した耐力壁が構成されている。この場合、主架構K1の構造計算上、スキップ架構K2を上階天井梁51の付属部分とみなすことができるため、従来の二階建ての建物と主架構K1を同一のものとして設計することができる利点がある。つまり、スキップ架構K2の追加に伴い主架構K1の構造計算が複雑になるといった不都合が生じることはなく、量産化やレイアウトの多様化に適したものとなる。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
境界部15とスキップ床27との間に形成される収納室26に、スキップ床27に吊り下げられた空調ユニット41や、ダクト類(吸気ダクト42、送風ダクト43a〜43c、排気ダクト44)が設けられている。この場合、収納室26はスキップ床27の下方に形成されるスペースであるから、上記の陸屋根タイプの建物10であっても空調ユニット41等を好適に配置できる。また、境界部15の全域を広く形成したり、建物全体の高さを高くしたりしなくても、各居室の高さを十分に確保することもできる。以上により、全館空調又は全館換気のためのシステムを備える建物において、空調ユニット41やダクト類を好適なる態様で設置できる。
スキップ床27は第3居室23と第4居室24との間を仕切る仕切り部分に設けられている。これにより、スキップ床27の存在によって居室空間の活用に制約がかかることはなく、居室空間を広く有効に活用できることになる。その結果、スキップ床27が設けられた二階部分13の間取りを好適な態様で設定することができる。
スキップ床27が二階床側に設けられ、そのスキップ床27と屋根部分14との間に、スキップスペース25が形成されている。そして、スキップ床27に吊り下げられた空調ユニット41の下方に第2開口部30が配置され、空調ユニット41の大きさによってはその第2開口部30にその一部が収納されるようになっている。
ここで、空調ユニット41やダクト類の収納に所定の高さが必要とはいえ、その高さを必要以上に確保すると収納室26内には無駄なスペースが広がってしまう一方、スキップスペース25を確保することが困難となり、スペースの有効利用を図れない。そこで、スキップ床27が二階床側に設けられたことにより、前述のような問題は解消される。もっとも、これにより空調ユニット41の大きさに関する制約が増すことになるが、第2開口部30に一部が収納可能となっていることで、その制約を緩和できる。したがって、スキップ床27を設けた領域の上下のスペースを無駄にすることなく有効利用できる。
空調ユニット41にはその上面に装置吹出口45が設けられ、その装置吹出口45に接続される送風ダクト43cは、スキップ床27に設けられたダクト挿通孔33に挿通されている。これにより、空調ユニット41の側方又は下方の領域に設けられるダクト類を減らすことが可能となり、当該領域におけるダクト類の取り回しがさらに容易になる。
(その他の実施形態)
上記実施形態の建物10では、スキップ架構K2を主架構K1の上階天井梁51に吊り下げられるようにして、その上階天井梁51に連結される構造としたが、図4に示す架構モデルのように、主架構K1の上階床梁52上に設置されるようにして、スキップ架構K2が上階床梁51に連結される構造としてもよい。この構造でも、主架構K1の構造計算上、スキップ架構K2を上階床梁52の付属部分としてみなすことができるため、従来の二階建ての建物と主架構K1を同一のものとして設計することができる。なお、この構成においても、空調ユニット41はスキップ床27に吊り下げられる。
上記実施形態の建物10では、第1開口部28を吸気口として利用したが、吸気口を他に設定し、通気用ガラリ29に送風ダクト43を接続して第1開口部28を吹出口として利用してもよい。また、第2開口部30を第2居室22の吹出口として利用したが、その吹出口を別に設定し、天井用ガラリ31に吸気ダクト42を接続して第2開口部30を吸気口として利用してもよい。さらに、天井に設けられた吹出口32,34,35についても、そのうちいずれかを吸気口として吹出口を別途設定する構成であってもよい。すなわち、吸気口及び吹出口に関する構成は、他の適宜の構成を採用することができる。
上記実施形態では、スキップ床27と屋根部分14との間に形成されるスペースはスキップスペース25として構成されているが、居室とすることも可能である。その具体的構成を図5に示す。
図5では、建物60において、一階部分61に第1居室71が形成され、二階部分62に第2居室72、第3居室73及び収納室74が形成されている。二階部分62にはスキップ床75が設けられており、そのスキップ床75と一階/二階部分の境界部63との間に、空調スペースとしての前記収納室74が形成されている。
収納室74には、全館空調システムを構成する空調ユニット(室内機)76が吊り下げられるとともに、その空調ユニット76を起点として各居室に延びる送風ダクト77a〜77cが設けられている。
上記建物60にあっても、境界部63を広く形成したり、建物全体の高さを高くしたりしなくても、各居室の高さを十分に確保することができる。
上記実施形態では、陸屋根タイプの建物10に具体化した事例を説明したが、切妻等の勾配屋根タイプの建物に適用することができる。かかる場合にも前記同様、全館空調又は全館換気のためのシステムを備える建物において、空調ユニットやダクト類を好適なる態様で設置することができる。勾配屋根タイプの建物では、収納室26以外に、小屋裏スペースに空調ユニット等を設置することも可能であるが、収納室26に設置した方が空調ユニットやダクト類を好適なる態様で設置できると考えられる。
また、ユニット式建物に適用してもよい。すなわち、ユニット式建物を構成する複数の建物ユニットにそれぞれ梁と柱とを含む骨組構造を採用し、スキップ架構を所定の建物ユニットに組み込んだり別途取り付けたりしてもよい。例えば、所定の上階用建物ユニットの天井梁にスキップ架構を吊り下げるようにして予め固定しておくことにより、現場施工の作業性を向上させつつ上記した各効果が得られる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。図6は第2実施形態の建物全体を示す概略縦断面図である。そして、この第2実施形態では、建物110には建物全体の通気性を高める通気路が備えられている。なお、以下では、図6における建物110の右側を正面側、左側を裏側として説明する。また、第1実施形態と重複する構成及び効果については適宜その説明を省略する。
図6に示すように、建物110は、基礎111、下階部分としての一階部分112、上階部分としての二階部分113及び屋根部分114を備えている。建物110の一階部分112には、例えば第1居室121が形成され、同二階部分113には、例えば第2居室122、第3居室123、スキップスペース125及び通気室126が形成されている。
建物110の二階部分113には、第1実施形態と同様、二階床側にスキップ床127が設けられている。そのスキップ床127と屋根部分114との間には前記スキップスペース125が形成され、スキップ床127と境界部115との間には空調スペースとしての前記通気室126が形成されている。スキップスペース125の用途例は第1実施形態と同じである。通気室126は第1実施形態の収納室26に相当し、その配置構成は収納室26と同じである。ただ、通気室126には空調設備等が収納されておらず、この点で収納室26と相違している。そして、スキップ床127が設けられた部分が仕切り部分となって、スキップスペース125及び通気室126の正面側には前記第2居室122が配置され、裏側には第3居室123が配置されている。
ここで、前記第1居室121には、正面側及び裏側にそれぞれ正面窓141aと裏窓141bとが設けられている。また、前記第2居室122には、スキップスペース125及び通気室126とは反対側となる正面側に正面窓142が設けられている。さらに、第3居室123にはスキップスペース125及び通気室126とは反対側となる裏側に裏窓143が設けられている。
この第2実施形態でも、第1開口部128と第2開口部130が設けられている。第1開口部128には通気用ガラリ129が設けられ、第2開口部130には天井用ガラリ131が設けられている。そして、第1開口部128及び通気室126を通じ、二階部分113の第2居室122と第3居室123との間が互いに連通されている。このため、各居室の第1開口部128及び通気室126によって居室間通気路が構成されている。また、第1開口部128、通気室126及び第2開口部130を通じて、一階部分112の第1居室121は二階部分113の第2居室122及び第3居室123と連通されている。このため、第1開口部128、通気室126及び第2開口部130によって上下通気路が構成されている。通気室126は第1実施形態の収納室26と同じ配置構成を有するため、この上下通気路も側面視における建物110の略中心部に配置される。
なお、上記建物110のスキップ床127に関する架構モデルは、第1実施形態におけるスキップ床27に関する架構モデルと同じであり、その説明は省略する。
以上のような構成を備えた建物110では、図6において一点鎖線の矢印で示したように、一階部分112の第1居室121は、上下通気路(第2開口部130、通気室126及び各居室の第1開口部128)を介して、二階部分113の第2居室122及び第3居室123と間の通気性が確保される。また、二階部分113では、居室間通気路(各居室の第1開口部128及び通気室126)を介して、第2居室122と第3居室123との間の通気性も確保される。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
上記実施形態では、スキップ床127が設けられた二階部分113において、そのスキップ床127の設置によって形成された空間(通気室126)を利用して、第2居室122と第3居室123との間を連通する居室間通気路が構成されている。これにより、第2居室122の正面窓142又は第3居室123の裏窓143から流入した外気はその居室間通気路を経て、他方の居室に流入し、さらに他方の窓から排気される。
ここで、敷地の狭さや隣家との関係等の各種事情により、正面窓142及び裏窓143がそれぞれ、第2居室122と第3居室123との間の仕切り部分と対峙する建物110では、正面側から裏側への通気路の確保が困難となる。これによって、建物110内での通気性や換気性が悪くなり、建物の耐久年数が少なくなってしまうという問題がある。その点、本実施形態によれば、居室間通気路を介して居室間の通気性や換気性を高めることができる。
上記実施形態では、一階部分112の第1居室121と二階部分112の第2居室122及び第3居室123との間を連通する上下通気路が設けられている。これにより、正面側又は裏側の窓から各居室121〜123に流入した外気の一部は、上下通気路を経て他方の階の居室に流入し、その階における他方の側の窓から排気される。このため、上下階部分の居室間の通気性や換気性を高めることができる。そして、前述した居室間通気路とあいまって、建物110全体の通気性や換気性を高めることができる。
上記実施形態では、側面視における建物110の概ね中心部に上下通気路が配置されている。これにより、効率的な通気や換気を行うことができる。
上記実施形態では、第1開口部128は二階床面と近接した位置に設けられている。これにより、第1開口部128が第2開口部130の近くに配置されることになり、第1開口部128又は第2開口部130から通気室126に流入した空気は、その流れを維持しながら他方の開口部を経て他階の居室へスムーズに導かれる。これにより、効率的な通気性及び換気性を確保できる。
(その他の実施形態)
第1実施形態で説明したのと同様、第2実施形態でも、スキップ架構K2が上階床梁51に連結される構造とすること、切妻等の勾配屋根タイプの建物に適用すること、ユニット式建物に適用することが可能である。
上記実施形態では、通気室126が空気の通り道としてのみ利用されているが、第1実施形態のように、通気室126に全館空調システムを構成する空調ユニットやダクト類を収納するように構成してもよい。この場合、第1開口部128及び第2開口部130は通気室26と各居室121〜123との間を連通する部分と、吸気口又は吹出口として利用される部分とに区分される。また、開口部128,130を利用せず、各居室の内壁や天井に吸気口や吹出口が別途設けられた構成とすることも考えられる。
上記実施形態では、二階部分113にスキップ床127が設けられているが、図7に示すように、これを一階部分に設けられるように構成してもよい。
図7では、建物150において、一階部分152に第1居室161、第2居室162、スキップスペース165及び通気室166が形成され、二階部分153に第3居室163が形成されている。
建物150の一階部分152には、その天井側にスキップ床167が設けられている。そのスキップ床167と基礎151との間には前記スキップスペース165が形成され、スキップ床167と境界部154との間には、前記通気室166が形成されている。また、スキップ床167の上面と一階天井面との間に、第1居室161又は第2居室162と通気室166との間を連通する第1開口部168が設けられている。第1開口部168は一階天井と近接した位置に設けられることが好ましい。さらに、境界部154には、スキップ床167の上方において、第1居室161及び第2居室162と第3居室163との間を連通する第2開口部169が設けられている。
この構成でも、第1開口部168、第2開口部169及び通気室166によって上下通気路が構成されて、一階部分152の第1居室161及び第2居室162と二階部分の第3居室163との間の通気性が確保される。また、一階部分152では、第1開口部168及び通気室166により居室間通気路が構成され、第1居室161と第2居室162との間の通気性も確保される。
また、この構成では、スキップ床167が一階部分152の天井側に設けられているため、二階部分153の居室の床面を統一した高さに設定することが可能となる。これにより、二階部分153も一つの居室によって構成することが可能となり、間取り設計の自由度が高められる。
なお、上記構成におけるスキップ床167に関する架構モデルとしては、主架構K1とは別個に、基礎151から自立するスキップ架構K2を設定する構成を採用することが可能である。こうすることで主架構K1の構造計算上、スキップ架構K2を考慮に入れなくて済む。また、これに代えて、主架構K1の上階床梁52に対し、スキップ架構K2を吊り下げるようにして連結し、スキップ架構K2の側面の少なくとも一面を耐力壁によって構成することで、上階床梁52とスキップ架構K2とを一体化した耐力壁を構成するようにしてもよい。こうすることで、主架構K1の構造計算上、スキップ架構K2を上階床梁52の付属部分とみなすことができる。
第1実施形態の建物全体を示す概略縦断面図。 図1の要部を拡大した図。 スキップ床に関する架構モデルを示す説明図。 架構モデルの別例を示す説明図。 第1実施形態の別形態として建物全体を示す概略縦断面図。 第2実施形態の建物全体を示す概略縦断面図。 第2実施形態の別形態として建物全体を示す概略縦断面図。
符号の説明
10…建物、12…下階部分としての一階部分、13…上階部分としての二階部分、15…境界部、23…第3居室、24…第4居室、26…空調スペースとしての収納室、27…スキップ床、28…第1開口部、29…通気部材としての通気用ガラリ、30…第2開口部、31…通気部材としての天井用ガラリ、33…ダクト挿通孔、41…空調・換気装置としての空調ユニット、42…吸気ダクト、43a〜43c…送風ダクト、44…排気ダクト、45…装置吹出口、51…上階天井梁、110…建物、112…下階部分としての一階部分、113…上階部分としての二階部分、115…境界部、122…第2居室、123…第3居室、126…通気室、127…スキップ床、128…第1開口部、130…第2開口部、142…正面窓(第2居室)、143…裏窓(第3居室)、K1…主架構、K2…スキップ架構。

Claims (12)

  1. 互いに隣接する上下階部分のいずれか一方にスキップ床が設けられた建物であって、
    前記スキップ床と上下階の境界部との間に形成された空調スペースと、
    その空調スペースと該空調スペースに対して横並びとなるようにして隣接する居室空間との間を連通する第1開口部と、
    前記空調スペースと該空調スペースに対して上下並びとなるようにして隣接する他方の階部分との間を連通する第2開口部と
    を備えたことを特徴とする建物。
  2. 前記スキップ床は横並びとなるようにして隣接する居室間の仕切り部分に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建物。
  3. 前記スキップ床は上階部分に設けられ、前記空調スペースには前記スキップ床に吊り下げられた空調・換気装置と、その空調・換気装置を起点として建物内の各居室に延びる通気ダクトとが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建物。
  4. 前記スキップ床は上階天井よりも上階床側に近い位置に配設されていることを特徴とする請求項3に記載の建物。
  5. 前記空調・換気装置の下方に前記第2開口部が配され、その第2開口部の内周部にも前記空調・換気装置の一部を収納可能とされていることを特徴とする請求項3又は4に記載の建物。
  6. 前記空調・換気装置には前記スキップ床と相対向する面に少なくとも一つの装置吹出口が設けられており、当該装置吹出口に接続される通気ダクトを挿通する挿通孔が前記スキップ床に設けられていることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の建物。
  7. 前記第1開口部及び第2開口部はそれぞれ通気部材によって目隠しされ、それら各通気部材に前記通気ダクトが接続されて第1開口部及び第2開口部が吸気口又は吹出口として用いられていることを特徴とする請求項3乃至6のいずれかに記載の建物。
  8. 建物の構造躯体を構成する主架構の上階天井梁に、該上階天井梁から吊り下げられるように連結させてスキップ架構が構築され、当該スキップ架構により前記スキップ床が上階部分に設けられていることを特徴とする請求項3乃至7のいずれかに記載の建物。
  9. 建物の外壁のうち、向かい合う外壁にそれぞれ外気を導入可能な窓が設けられ、
    同一階の居室間を仕切る仕切り部分が前記両外壁の窓と対峙するように設定され、その仕切り部分に前記スキップ床が設けられ、前記両居室に向けて開口するようにしてそれぞれ前記第1開口部が設けられており、各第1開口部及び前記空調スペースにより、居室間を連通する居室間通気路が構成されていることを特徴とする請求項1に記載の建物。
  10. 前記スキップ床の非設置階に外気を導入可能な窓が設けられ、
    前記空調スペース、前記各第1開口部及び前記第2開口部により、上下階部分の各居室間を連通する上下通気路が構成されていることを特徴とする請求項9に記載の建物。
  11. 前記スキップ床が上階部分に設けられ、前記第1開口部は上階床寄りに近接させて設けられていることを特徴とする請求項9又は10に記載の建物。
  12. 前記スキップ床が下階部分に設けられ、前記第1開口部は下階天井寄りに近接させて設けられていることを特徴とする請求項9又は10に記載の建物。
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