JP2008163559A - 杭頭接合構造及びそれに用いる接合材 - Google Patents

杭頭接合構造及びそれに用いる接合材 Download PDF

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Abstract


【課題】 アンボンド処理を行わずとも杭頭接合部の固定度を低減する。
【解決手段】本発明に係る接合材1は、端板2と該端板に立設されたアンカーボルト3とからなり、本実施形態に係る杭頭接合構造4は、端板2をPHC杭である杭5の頭部6(以下、杭頭6)に設けるとともに、杭5で支持される上部構造物8の基礎部材である基礎梁9にアンカーボルト3を埋設して構成してあり、かかる構成により、地震時水平力が上部構造物9から杭頭6に作用したとき、端板2が面外に曲げ変形するとともに、それに伴って杭頭6に回転変形が生じる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、杭頭接合構造及びそれに用いる接合材に関する。
杭基礎には支持杭形式と摩擦杭形式とがあり、前者は、良質な支持層が地下深くにある場合に該支持層まで打ち込んだ杭の上に上部構造物を構築することによって、構造物重量を支持層で安定支持する形式であり、後者は、良質な支持層がない場合に周辺地盤との摩擦力によって上部構造物を支持する形式の基礎形式である。
これらの杭は、その杭頭にて上部構造物の基礎スラブや基礎梁に接合されるが、かかる接合部においては、長期荷重として圧縮力などが作用するほか、地震時には、上部構造物の転倒モーメントに起因する引抜き力、水平力に起因するせん断力あるいは曲げモーメントが作用する。
そして、上部構造物がきわめて大きな地震に遭遇した場合には、杭頭に過大なせん断力や曲げモーメントが作用し、杭の破壊ひいては上部構造物の倒壊といった事態を招くおそれがある。
また、杭頭接合部を設計する際、一般的には剛接とみなすことが多いが、杭の頭部と上部構造物とを完全に剛接合にすることは困難であって実際の固定度は1未満、例えば0.8〜0.9程度になることが多い。そのため、杭本体に生じる曲げモーメント分布が設計段階で予想していたものと異なるものとなり、杭の頭部に発生する曲げモーメントは設計値よりも小さくなるものの、杭の中間部においては曲げモーメントが大きくなるといった事態も想定され、上述した大地震時の過大な曲げモーメントと相まって、不測の箇所で杭が破壊する懸念もある。
そこで、最近では、杭頭で発生する曲げモーメントを低減すべく、杭頭の端板に立設された異形スタッドの一部を切削加工したり、杭頭鉄筋の一部を筒体(シース管、スリーブ)内に配置したり、アンカーボルトにアスファルトを塗布したりすることで、基礎スラブを構成するコンクリートと異形スタッドや杭頭鉄筋あるいはアンカーボルトとの付着力を弱めあるいは付着を切る、いわゆるアンボンド処理が行われるようになってきた。
かかるアンボンド処理を行うことにより、杭頭に発生する曲げモーメントを低減することが可能となる。
特開2000−144763
特開2002−317454
しかしながら、このようなアンボンド処理によって杭頭接合部の固定度を緩和し発生曲げモーメントを低減することができたとしても、固定度を算出するにあたっては、アンカーの本数、径、定着板の形状その他様々な条件を考慮せねばならないため、その手順は複雑となり、それゆえ適切な設計手法が未だ確立できていないのが現状である。
また、上述したアンボンド処理は、異形スタッドを切削加工したり筒体を配置したりするのに手間とコストがかかり、経済的な観点で改善の余地があった。そして何より、異形スタッド、鉄筋あるいはアンカーボルトといった鋼棒がコンクリートの中性化等によって経年的に腐食膨張するとともに該腐食膨張に起因してコンクリートとの付着が生じ、その結果、アンボンド状態を長期間維持することが困難であるという問題も生じていた。
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、アンボンド処理を行わずとも杭頭接合部の固定度を低減させることが可能な杭頭接合構造及びそれに用いる接合材を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る接合材は請求項1に記載したように、杭の頭部に設けられた端板と、該端板に立設され前記杭で支持される上部構造物の基礎部材に埋設されるアンカーボルトとからなるとともに、地震時水平力が前記上部構造物から前記杭の頭部に作用したとき、前記端板が面外に曲げ変形して前記杭の頭部が回転するように前記端板及び前記アンカーボルトを構成したものである。
また、本発明に係る接合材は、前記杭の断面中心から前記杭の中空内面までの距離をr1、前記杭の外面までの距離をr2としたとき、前記杭の断面中心から前記アンカーボルトの材軸までの距離Rが、
R<r1 又は r2<R
となるように、前記アンカーボルトを前記端板に立設したものである。
また、本発明に係る接合材は、前記端板を円環状に構成したものである。
また、本発明に係る接合材は、前記端板を、全体が円環状でそれぞれ扇状をなす複数の分割片で構成するとともに該分割片のそれぞれに前記アンカーボルトを立設したものである。
また、本発明に係る接合材は、前記端板を円環状に形成するとともに内側縁部から半径方向外側に向かって延びるスリットを複数形成して構成し、該スリットで挟まれた舌状体に前記アンカーボルトを立設したものである。
また、本発明に係る接合材は、前記端板を円環状に形成するとともに外側縁部から半径方向内側に向かって延びるスリットを複数形成して構成し、該スリットで挟まれた舌状体に前記アンカーボルトを立設したものである。
また、本発明に係る杭頭接合構造は請求項7に記載したように、請求項1乃至請求項6のいずれか一記載の接合材を構成するアンカーボルトが前記杭で支持される上部構造物の基礎部材に埋設されるようにしたものである。
本発明に係る杭頭接合構造及びそれに用いる接合材は、地震時水平力が上部構造物から杭の頭部に作用したとき、該杭頭に設けられた端板が面外に曲げ変形して杭頭が回転するように接合材を構成してある。
このようにすると、杭頭の回転変形に対する発生曲げモーメント、換言すれば回転剛性は、端板の面外曲げ剛性として評価することができるため、端板の平面形状、厚み及び鋼材種類や、端板の変形拘束位置、すなわちアンカーボルトの設置位置といった端板及びアンカーボルトに関する諸データだけで杭頭の回転剛性を算出することが可能となり、かくして杭頭における固定度低減の程度を容易に把握することができる。
地震時水平力が杭頭に作用したとき、杭頭に設けてある端板が面外に曲げ変形して杭頭が回転するようになっている限り、アンカーボルトの形態やそのアンカーボルトが端板に立設される位置など特に限定されるものではなく、また、端板をどのように構成するかについても任意であるが、前記杭の断面中心から前記杭の中空内面までの距離をr1、前記杭の外面までの距離をr2としたとき、前記杭の断面中心から前記アンカーボルトの材軸までの距離Rが、
R<r1 又は r2<R
となるように、前記アンカーボルトを前記端板に立設したならば、端板の面外曲げ変形は、杭の中空内部又は外側で生じることとなり、その変形量を大きくとることができる。
端板は上述したように、面外に曲げ変形して杭頭が回転するようになっている限り、形状や構造をどのようにするかは任意であり、例えば円環状に構成することができるが、かかる端板を、全体が円環状でそれぞれ扇状をなす複数の分割片で構成し、円環状に形成するとともに内側縁部から半径方向外側に向かって延びるスリットを複数形成して構成し、又は円環状に形成するとともに外側縁部から半径方向内側に向かって延びるスリットを複数形成して構成したならば、アンカーボルトが立設される分割片やスリット間の舌状体がそれぞれ個別に面外曲げ変形するため、端板の曲げ変形が生じやすくなり、固定度の低減が容易になるとともに、個別に変形するがゆえに面外曲げ挙動が把握しやすくなり、杭頭の曲げ剛性をより正確に把握することが可能となる。
以下、本発明に係る杭頭接合構造及びそれに用いる接合材の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
図1及び図2は、本実施形態に係る杭頭接合構造及びそれに用いる接合材を示した図である。同図でわかるように、本実施形態に係る接合材1は、端板2と該端板に立設されたアンカーボルト3とからなるとともに、本実施形態に係る杭頭接合構造4は、端板2をPHC杭である杭5の頭部6(以下、杭頭6)に設けるとともに、杭5で支持される上部構造物8の基礎部材である基礎梁9にアンカーボルト3を埋設して構成してある。
端板2は、外半径R2が杭5の外半径r2と等しく、内半径R1が杭5の内半径r1よりも小さな円環状の鋼材で形成してあり、該端板は、杭5を製造する際に公知の手段によって杭頭6に固定してある。
端板2には、アンカーボルト3が挿通されるボルト孔13を設けてあり、該ボルト孔にアンカーボルト3を挿通してナット14,14を螺合することでアンカーボルト3を端板2に立設できるようになっている。
ここで、ボルト孔13は、杭5の断面中心からの距離、換言すればアンカーボルト3の取付け半径Rが杭5の内半径r1よりも小さくなるように位置決めしてある。そして、かかる構成により、アンカーボルト3の立設位置は、杭5の内周面よりも内側となる。
本実施形態に係る杭頭接合構造4及びそれに用いる接合材1は、上述した構成により、地震時水平力が上部構造物8から杭頭6に作用したとき、杭頭6に設けてある端板2は、図3に示すように面外に曲げ変形するとともに、それに伴って杭頭6に回転変形が生じる。
したがって、基礎梁9に対する杭頭6の固定度は緩和され、いわゆる半剛接合となる。加えて、杭頭6の回転角θに対する発生曲げモーメントM、換言すれば杭頭6における回転剛性は、端板2の面外曲げ剛性として評価することが可能となる。
以上説明したように、本実施形態に係る杭頭接合構造4及びそれに用いる接合材1によれば、従来のような複雑で手間のかかるアンボンド処理を行わなくても、基礎梁9に対する杭頭6の固定度が従来よりも大幅に緩和され、いわゆる半剛接合を実現することが可能となる。
また、本実施形態に係る杭頭接合構造4及びそれに用いる接合材1によれば、杭頭6の回転角θに対する発生曲げモーメントM、換言すれば杭頭6における回転剛性は、端板2の面外曲げ剛性として評価することが可能となる。
そのため、端板2の平面形状、厚み及び鋼材種類や、端板2の変形拘束位置、すなわちアンカーボルト3の設置位置といった端板2及びアンカーボルト3に関する諸データだけで杭頭6の回転剛性を算出することが可能となり、かくして杭頭6における固定度低減の程度を容易に把握することができる。
本実施形態では、ナット14,14を用いたボルト接合でアンカーボルト3を端板2に立設するようにしたが、これに代えて、アンカーボルト3の下端を端板2の上面に溶接することでアンカーボルト3を端板2に立設するようにしてもかまわない。
また、本実施形態では、アンカーボルト3の立設位置を、杭5の内周面よりも内側に設定したが、これに代えて杭5の外周面よりも外側に設定してもかまわない。すなわち、アンカーボルト3が挿通されるボルト孔13aを、杭5の断面中心からの距離、換言すればアンカーボルト3の取付け半径Rが杭5の外半径r2よりも大きくなるように位置決めする。
図4は、このようにボルト孔13aが位置決めされた端板42がどのように面外曲げ変形を生じるかを示した図である。同図でわかるように、かかる変形例においても、杭頭6における回転剛性は、端板42の面外曲げ剛性として評価することが可能であり、上述の実施形態と同様、端板42及びアンカーボルト3に関する諸データだけで杭頭6の回転剛性を算出し、杭頭6における固定度低減の程度を容易に把握することができる。
また、本実施形態では特に言及しなかったが、端板2は一枚板である必要はなく、例えば図5及び図6に示すように、全体が円環状でそれぞれが扇状をなす4枚の分割片53で端板52を構成するとともに、各分割片53のそれぞれにアンカーボルト3を立設するようにしてもかまわない。
かかる構成においても、上述した実施形態と同様の作用効果を奏するほか、各分割片53が個別に面外曲げ変形を生じるため、全体の面外曲げ変形を把握しやすくなり、杭頭6における固定度の低減評価がさらに容易になる。
また、本実施形態では特に言及しなかったが、例えば図7に示すように、円環状に形成され内側縁部から半径方向外側に向かって延びるスリット73を90゜ごとに4カ所形成して端板72を構成するとともに該端板をSC杭の杭頭6に設け、該スリットで挟まれた4つの舌状体74にアンカーボルト3をそれぞれ立設するようにしてもかまわない。
かかる構成においても、上述した実施形態と同様の作用効果を奏するほか、各舌状体74が個別に面外曲げ変形を生じるため、全体の面外曲げ変形を把握しやすくなり、杭頭6における固定度の低減評価が容易になる。
図8は、スリット73で挟まれた4つの舌状体74にアンカーボルト3をそれぞれ2本ずつ合計8本立設した変形例を示したものであり、かかる変形例においても、上述した実施形態と同様の作用効果を奏するほか、各舌状体74が個別に面外曲げ変形を生じるため、全体の面外曲げ変形を把握しやすくなり、杭頭6における固定度の低減評価が容易になる。
図9は、円環状に形成され外側縁部から半径方向内側に向かって延びるスリット93を60゜ごとに6カ所形成して端板92を構成し、該スリットで挟まれた6つの舌状体94に6本のアンカーボルト3をそれぞれ立設した変形例を示したものである。
かかる変形例においても、上述した実施形態と同様の作用効果を奏するほか、各舌状体94が個別に面外曲げ変形を生じるため、全体の面外曲げ変形を把握しやすくなり、杭頭6における固定度の低減評価が容易になる。
本実施形態に係る接合材の分解斜視図。 本実施形態に係る杭頭接合構造の図であり、(a)は平面図、(b)はA−A線に沿う鉛直断面図。 本実施形態に係る杭頭接合構造4及びそれに用いる接合材1の作用を示した図。 変形例に係る杭頭接合構造の作用を示した図。 変形例に係る接合材の分解斜視図。 変形例に係る杭頭接合構造の図であり、(a)は平面図、(b)はB−B線に沿う鉛直断面図。 変形例に係る杭頭接合構造の図であり、(a)は平面図、(b)はC−C線に沿う鉛直断面図。 変形例に係る杭頭接合構造の図であり、(a)は平面図、(b)はD−D線に沿う鉛直断面図。 変形例に係る杭頭接合構造の図であり、(a)は平面図、(b)はE−E線に沿う鉛直断面図。
符号の説明
1 接合材
2,42,52,72,82,92 端板
3 アンカーボルト
5 杭
6 杭頭
8 上部構造物
9 基礎梁(基礎部材)
53 分割片
73,93 スリット
74,94 舌状体

Claims (7)

  1. 杭の頭部に設けられた端板と、該端板に立設され前記杭で支持される上部構造物の基礎部材に埋設されるアンカーボルトとからなるとともに、地震時水平力が前記上部構造物から前記杭の頭部に作用したとき、前記端板が面外に曲げ変形して前記杭の頭部が回転するように前記端板及び前記アンカーボルトを構成したことを特徴とする接合材。
  2. 前記杭の断面中心から前記杭の中空内面までの距離をr1、前記杭の外面までの距離をr2としたとき、前記杭の断面中心から前記アンカーボルトの材軸までの距離Rが、
    R<r1 又は r2<R
    となるように、前記アンカーボルトを前記端板に立設した請求項1記載の接合材。
  3. 前記端板を円環状に構成した請求項1又は請求項2記載の接合材。
  4. 前記端板を、全体が円環状でそれぞれ扇状をなす複数の分割片で構成するとともに該分割片のそれぞれに前記アンカーボルトを立設した請求項1又は請求項2記載の接合材。
  5. 前記端板を円環状に形成するとともに内側縁部から半径方向外側に向かって延びるスリットを複数形成して構成し、該スリットで挟まれた舌状体に前記アンカーボルトを立設した請求項1又は請求項2記載の接合材。
  6. 前記端板を円環状に形成するとともに外側縁部から半径方向内側に向かって延びるスリットを複数形成して構成し、該スリットで挟まれた舌状体に前記アンカーボルトを立設した請求項1又は請求項2記載の接合材。
  7. 請求項1乃至請求項6のいずれか一記載の接合材を構成するアンカーボルトが前記杭で支持される上部構造物の基礎部材に埋設されるようにしたことを特徴とする杭頭接合構造。
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