JP2008161730A - アスベスト含有物処理システム - Google Patents
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Abstract
【課題】ロータリーキルンの内周面にクロムが含有されていても、六価クロムの生成を抑制することができるアスベスト含有物処理システムを提供することを課題とする。
【解決手段】アスベスト含有物処理システム1は、軸方向一端からアスベスト含有物Gが供給され、軸方向他端からアスベスト含有物Gが排出され、内周面の少なくとも一部がクロムを含有し、内部に熱処理室300を持つ管体30と、熱処理室300のアスベスト含有物Gに熱処理を施す加熱部31と、を備えてなるロータリーキルン3と、熱処理の際、クロムが酸化して六価クロムが生成するのを抑制する酸化抑制手段320、330、332、720、731、4、6a、6b、5と、を備えてなることを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】アスベスト含有物処理システム1は、軸方向一端からアスベスト含有物Gが供給され、軸方向他端からアスベスト含有物Gが排出され、内周面の少なくとも一部がクロムを含有し、内部に熱処理室300を持つ管体30と、熱処理室300のアスベスト含有物Gに熱処理を施す加熱部31と、を備えてなるロータリーキルン3と、熱処理の際、クロムが酸化して六価クロムが生成するのを抑制する酸化抑制手段320、330、332、720、731、4、6a、6b、5と、を備えてなることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、例えば家屋やビルなどの解体時に排出されるアスベストを熱処理するためのアスベスト含有物処理システムに関する。
近年、アスベストの人体に対する有害性が問題視されている。アスベストを無害化する処理方法としては、溶融処理、埋立処理などが挙げられる。例えば、特許文献1、2には、アスベストを含有する折版屋根やスレート廃材を溶融させることにより無害化する処理方法が開示されている。また、特許文献3には、アスベストを含有する廃材を、セメントの原料と混合して、ロータリーキルンで加熱する処理方法が開示されている。
特開2006−43620号公報
特開2004−101178号公報
特開平9−86982号公報
ところで、ロータリーキルンの管体は、ステンレスやインコネルなど、クロムを含有する金属製である場合が多い。また、アスベスト含有物に溶融処理を施す際の処理温度は、比較的高温である場合が多い。このため、管体のクロムが酸化可能な雰囲気下でアスベスト含有物の熱処理を行うと、クロムが酸化して、有害な六価クロム(Cr6+)が生成するおそれがあった。すなわち、仮にアスベストの無害化が達成できても、新たに六価クロムという有害物質が生成するおそれがあった。
本発明のアスベスト含有物処理システムは、上記課題に鑑みて完成されたものである。したがって、本発明は、ロータリーキルンの内周面にクロムが含有されていても、六価クロムの生成を抑制することができるアスベスト含有物処理システムを提供することを目的とする。
(1)上記課題を解決するため、本発明のアスベスト含有物処理システムは、軸方向一端からアスベスト含有物が供給され、軸方向他端から該アスベスト含有物が排出され、内周面の少なくとも一部がクロムを含有し、内部に熱処理室を持つ管体と、該熱処理室の該アスベスト含有物に熱処理を施す加熱部と、を備えてなるロータリーキルンと、該熱処理の際、該クロムが酸化して六価クロムが生成するのを抑制する酸化抑制手段と、を備えてなることを特徴とする。
本発明のアスベスト含有物処理システムによると、熱処理の際、管体の内周面の少なくとも一部に表出したクロムが酸化するのを抑制することができる。このため、アスベスト含有物の無害化(低害化を含む。以下同じ。)と、有害な六価クロム生成の抑制と、を両立することができる。
また、無害化したアスベスト含有物は、処理前のアスベスト含有物と比較して、取扱いが簡単である。例えば、無害化の程度によっては、特殊な容器、袋等にアスベスト含有物を収容しなくてもよい。
(2)好ましくは、前記加熱部は、前記管体の外径側に配置され、前記アスベスト含有物に、該管体の管壁を介して、間接的に熱処理を施す外熱部である構成とする方がよい。つまり、本構成は、本発明のアスベスト含有物処理システムに、いわゆる外熱式のロータリーキルンを用いるものである。
外熱式のロータリーキルンの場合、内熱式のロータリーキルンと比較して、排ガス量が少ない。このため、熱処理室からのアスベスト飛散量が少なくなる。また、排ガス量が少ないため、排ガス中からアスベストを除去するための集塵装置を、小型化することができる。したがって、集塵装置延いてはアスベスト含有物処理システム全体の設置コストを削減することができる。また、設置スペースを小さくすることができる。
(3)好ましくは、前記アスベスト含有物は、セメントと混合されている構成とする方が硬化の点から良く、アスベスト含有物はセメントと混合されている場合が多い。仮に、酸化抑制手段を配置しない場合、セメントの含有する酸化カルシウム(CaO)により、管体素材が含有するクロム(Cr)の酸化が促進される。この時に、クロムを含む化合物(CaCrO4)を作り、この中の六価クロムが溶出してくるおそれがある。
この点、本発明のアスベスト含有物処理システムによると、酸化抑制手段が配置されているため、セメントの酸化カルシウムにより促進される管体素材のクロムの酸化を、抑制することができる。本発明のアスベスト含有物処理システムは、六価クロムの生成を抑制できるため、セメントと混合されたアスベスト含有物を処理するのに、特に適している。
(4)好ましくは、前記酸化抑制手段は、前記熱処理室に表出しクロムを含有しないセラミック溶射層を備える積層被膜である構成とする方がよい。つまり、本構成は、管体の内周面のクロムを、セラミック溶射層により被覆するものである。本構成によると、管体内周面のクロムが、熱処理室に表出しない。このため、クロムが酸化するのを抑制することができる。
好ましくは、本構成と上記(3)の構成とを組み合わせる場合、セラミック溶射層は、スピネル(マグネシア(MgO)−アルミナ(Al2O3))製とする方がよい。セラミック溶射をすると、管体素材中のクロムと、セメントに含有される酸化カルシウムと、の反応を抑制することができる。さらに、マグネシアを含むスピネルによりセラミック溶射層を形成することにより、マグネシアがアルカリ土類であり、同じアルカリ土類の酸化カルシウムとは反応し難く、反応によるセラミック溶射層の劣化を抑制することができる。
(5)好ましくは、上記(4)の構成において、前記積層被膜は、さらに、前記セラミック溶射層と前記管体の内周面との間に介在し、該セラミック溶射層と該内周面との間の熱膨張差を緩和する中間層を備える構成とする方がよい。
金属製の管体とセラミック溶射層とは、比較的、熱膨張率の較差が大きい。本構成によると、管体とセラミック溶射層との間に介在する中間層が当該熱膨張差を緩和する。このため、管体あるいはセラミック溶射層が受ける熱応力を緩和することができる。
(6)好ましくは、前記酸化抑制手段は、前記熱処理室に非酸化性のガスを供給するガス供給部と、供給された該ガスによる該熱処理室の非酸化雰囲気を確保するシール部と、を備える非酸化手段である構成とする方がよい。
つまり、本構成は、非酸化雰囲気下でアスベスト含有物に熱処理を施すものである。本構成によると、上記(4)あるいは上記(5)の積層被膜を配置しなくても(勿論配置してもよい)、管体のクロムの酸化を抑制することができる。好ましくは、熱処理時における熱処理室内の酸素濃度は、0.1体積%以下である方がよい。こうすると、より確実にクロムの酸化を抑制することができる。
(7)好ましくは、前記アスベスト含有物は、粒度50mm以下の粒状を呈している構成とする方がよい。本構成によると、アスベスト含有物の表面積が大きくなる。このため、より迅速に熱処理を施すことができる。また、搬送にも有利である。
(8)好ましくは、前記熱処理の際、前記熱処理室の温度は、800℃以上1100℃以下に設定されている構成とする方がよい。ここで、熱処理室の温度を800℃以上としたのは、800℃未満の場合、熱処理後もアスベストの針状繊維が残留する可能性があるからである。つまり、熱処理が不充分になるからである。一方、熱処理室の温度を1100℃以下としたのは、1100℃超過の場合、よりクロムの酸化が促進されるからである。つまり、六価クロムが生成しやすくなるからである。
本発明によると、ロータリーキルンの内周面にクロムが含有されていても、六価クロムの生成を抑制することができるアスベスト含有物処理システムを提供することができる。
以下、本発明のアスベスト含有物処理システムの実施の形態について説明する。まず、本実施形態のアスベスト含有物処理システム(以下、適宜「処理システム」と略称する。)の構成について説明する。図1に、本実施形態の処理システムの概要図を示す。図1に示すように、処理システム1は、主に、ホッパー2とロータリーキルン3と雰囲気ガス配管4とロータリーバルブ6a、6bとロータリークーラー7と連結管80と排出管81とを備えている。
ホッパー2は、下方に縮径するテーパ筒状を呈している。ホッパー2は、密閉式である。ホッパー2には、セメントと混合されたアスベスト含有物Gが貯蔵されている。アスベスト含有物Gは、予め粉砕処理されている。アスベスト含有物Gの粒度は、50mm以下に調整されている。ホッパー2の下部にはスクリューフィーダー20が配置されている。ホッパー2の底部から流下したアスベスト含有物Gは、スクリューフィーダー20により、水平方向に搬送される。
ロータリーキルン3は、主に、管体30と外熱部31と上流側フード32と下流側フード33とを備えている。管体30は、クロム含有金属製であって、略水平方向に延びた長軸円筒状を呈している。管体30は、自身の軸を中心に、周方向に回転可能である。管体30の内周面は、積層被膜5により覆われている。積層被膜5については、後で詳しく説明する。管体30の内部には、熱処理室300が配置されている。管体30の軸方向一端(上流端)には、スクリューフィーダー20の下流端が挿入されている。一方、管体30の軸方向他端(下流端)には、周方向に90°ずつ離間して、合計四つの排出口301が開設されている。
図2に、管体30の下流端付近の分解斜視図を示す。なお、説明の便宜上、部分的に断面で示す。図2に示すように、排出口301の軸方向両側には、一対の流量規制リング302、303が配置されている。流量規制リング302、303は、クロム含有金属製である。また、流量規制リング302、303の表面は、管体30の内周面同様に、積層被膜5により覆われている。流量規制リング302により、熱処理室300から流動してくるアスベスト含有物Gの流量は、調整されている。管体30の下流端外面には、シリコーンとカーボンとを含有した材料からなるシールリング332が配置されている。シールリング332は、後述する下流側フード33の内面に当接している。シールリング332により、管体30下流端と下流側フード33との間は、回転可能に、かつ気密的にシールされている。管体30の外周面には、フランジ35が配置されている。フランジ35は、一対のローラー350(図2では片方のみ示す。)上に搭載されている。一対のローラー350は、各々、軸受351により回転可能に支持されている。一対のローラー350のうち、片方のローラー350が駆動することにより、管体30は軸回りに回転する。
図1に戻って、管体30の上流側の外周面には、フランジ35に対向して、フランジ34が配置されている。フランジ34は、一対のローラー340上に搭載されている。一対のローラー340は、各々、軸受341により回転可能に支持されている。
外熱部31は、直方体箱状を呈している。外熱部31の内面には、電気式のヒーター310a、310bが、ジグザグに配索されている。外熱部31の内部には、管体30の軸方向中間部(つまり熱処理室300)が配置されている。
上流側フード32は、直方体箱状を呈している。上流側フード32の側壁には、開口部321が開設されている。開口部321には、管体30の上流端が収容されている。開口部321の口縁には、シールリング320が配置されている。シールリング320は、シリコーン製であって、周溝を有するリング状を呈している。シールリング320の周溝には、開口部321の口縁が圧入されている。また、シールリング320の内周面は、管体30上流端の外周面に圧接している。シールリング320により、管体30上流端と上流側フード32との間は、回転可能に、かつ気密的にシールされている。また、上流側フード32の頂壁には、排ガス配管9が接続されている。排ガス配管9には、上流側から下流側に向かって、排ガス処理炉90、集塵装置91、ブロワ92、ガス排出口93が配置されている。
下流側フード33は、底部が下方に尖った直方体箱状を呈している。下流側フード33において、管体30の軸方向に対向する一対の側壁のうち一方には、開口部331が開設されている。開口部331には、管体30の下流端が収容されている。開口部331の口縁には、シールリング330が配置されている。シールリング330は、シリコーン製であって、周溝を有するリング状を呈している。シールリング330の周溝には、開口部331の口縁が圧入されている。また、シールリング330の内周面は、管体30下流端の外周面に圧接している。シールリング330により、管体30下流端外周面と下流側フード33との間は、回転可能に、かつ気密的にシールされている。また、下流側フード33において、管体30の軸方向に対向する一対の側壁のうち他方(つまり開口部331が配置されていない方)には、二股に分岐した雰囲気ガス配管4の枝管40、41のうち、枝管41が接続されている。枝管41接続部の外径側に、前記シールリング332が配置されている。すなわち、枝管41は、管体30の熱処理室300と連通する位置に接続されている。
連結管80は、下流側フード33の底部と、後述するロータリークーラー7の管体70と、を連結している。連結管80の途中には、雰囲気ガス配管4の枝管40が接続されている。
ロータリークーラー7は、主に、管体70と冷却部71と上流側フード72と下流側フード73とを備えている。管体70は、ステンレス製であって、略水平方向に延びた長軸円筒状を呈している。管体70は、自身の軸を中心に、周方向に回転可能である。管体70の外周面には、軸方向に所定間隔離間して、一対のフランジ74、75が配置されている。フランジ74は一対のローラー740上に、フランジ75は一対のローラー750上に、それぞれ搭載されている。また、フランジ74はローラー740により、フランジ75はローラー750により、それぞれ回転駆動されている。
冷却部71は、直方体箱状を呈している。冷却部71には、クーリングタワー710が接続されている。冷却部71とクーリングタワー710との間には、冷却水が循環している。冷却部71の内部には、管体70の軸方向中間部が配置されている。
上流側フード72は、直方体箱状を呈している。上流側フード72の側壁には、開口部721が開設されている。開口部721には、管体70の上流端が収容されている。開口部721の口縁には、シールリング720が配置されている。シールリング720は、シリコーン製であって、周溝を有するリング状を呈している。シールリング720の周溝には、開口部721の口縁が圧入されている。また、シールリング720の内周面は、管体70上流端の外周面に圧接している。シールリング720により、管体70上流端と上流側フード72との間は、回転可能に、かつ気密的にシールされている。
下流側フード73は、底部が下方に尖った直方体箱状を呈している。下流側フード73の側壁には、開口部732が開設されている。開口部732には、管体70の下流端が収容されている。開口部732の口縁には、シールリング731が配置されている。シールリング731は、シリコーン製であって、周溝を有するリング状を呈している。シールリング731の周溝には、開口部732の口縁が圧入されている。また、シールリング731の内周面は、管体70下流端の外周面に圧接している。シールリング731により、管体70下流端外周面と下流側フード73との間は、回転可能に、かつ気密的にシールされている。下流側フード73の底部には、クーラー排出口730が開設されている。
排出管81は、クーラー排出口730の下方に接続されている。排出管81の途中には、二つのロータリーバルブ6a、6bが連設されている。排出管81の下流端には、バルブ排出口810が配置されている。二つのロータリーバルブ6a、6bにより、バルブ下流側(バルブ排出口810側)に対して、バルブ上流側(クーラー排出口730側)の気密性が確保されている。一方、無害化されたアスベスト含有物Gは、二つのロータリーバルブ6a、6bを介して、バルブ排出口810から排出可能である。
ここで、雰囲気ガス配管4は本発明のガス供給部に含まれる。並びに、シールリング320、330、332、720、731およびロータリーバルブ6a、6bは、本発明のシール部に含まれる。つまり、これらの部材により、本発明の非酸化手段が構成されている。
次に、本実施形態の処理システム1の積層被膜5の構成について説明する。図3に、本実施形態の処理システムのロータリーキルンの管体の斜視拡大断面図を示す。図3に示すように、積層被膜5は、セラミック溶射層50と中間層51とを備えている。なお、図3においては、説明の便宜上、各層の層厚を強調して示している。
中間層51は、管体30の内周面を、全面に亘り覆っている。中間層51は、ニッケル−クロム合金製である。中間層51の層厚は、約100μmである。中間層51は、プラズマ溶射により、管体30の内周面上に形成される。
セラミック溶射層50は、中間層51の表面を、全面に亘り覆っている。セラミック溶射層50は、スピネル(マグネシア(MgO)−アルミナ(Al2O3))製である。セラミック溶射層50の層厚は、約100〜200μmである。セラミック溶射層50は、プラズマ溶射により、中間層51の表面上に形成される。なお、流量規制リング302、303の表面を覆う積層被膜5の構成も、上記積層被膜5の構成と同様である。
次に、本実施形態の処理システム1におけるアスベスト含有物Gの流れについて説明する。前出図1に示すように、アスベスト含有物Gは、密閉式のホッパー2に収容されている。ホッパー2内のアスベスト含有物Gは、ホッパー2の底部から、スクリューフィーダー20により、ロータリーキルン3の管体30の上流端に投入される。ここで、管体30は、上流端から下流端に向かって、若干下向きに傾斜している。このため、アスベスト含有物Gは、管体30の回転により、管体30内を徐々に下流側に移動する。管体30内の熱処理室300の温度は、約1000℃に設定されている。熱処理室300を通過する際、アスベスト含有物Gに熱処理が施される。当該熱処理により、アスベストの針状繊維が崩壊する。すなわち、アスベスト含有物Gが無害化される。無害化されたアスベスト含有物Gは、流量規制リング302を乗り越え、四つの排出口301のうち下方に回ってきた排出口301から、逐次下方に流下する。流下した無害化済みのアスベスト含有物Gは、連結管80を介してロータリークーラー7の管体70の上流端に投入される。管体70内を下流側に移動する際、高温の無害化済みアスベスト含有物Gは、冷却部71の冷却水と、管体70の管壁を介して、熱交換を行う。当該熱交換により無害化済みアスベスト含有物Gは冷却される。約80℃にまで冷却された無害化済みアスベスト含有物Gは、クーラー排出口730から排出管81に流れ込む。流れ込んだ無害化済みアスベスト含有物Gは、二つのロータリーバルブ6a、6bを通過し、バルブ排出口810から処理システム1外部に排出される。一方、熱交換により加熱された冷却水あるいは水蒸気は、クーリングタワー710に流入し、再度冷却される。
次に、本実施形態の処理システム1における雰囲気ガスおよび排ガスの流れについて簡単に説明する。本実施形態では、雰囲気ガスとして窒素ガスを用いている。前出図1に示すように、雰囲気ガスは、雰囲気ガス配管4の枝管40から、連結管80の途中に供給される。並びに、雰囲気ガスは、雰囲気ガス配管4の枝管41から、下流側フード33を介して、ロータリーキルン3の管体30下流端に供給される。供給された雰囲気ガスは、管体30内を、下流端から上流端に向かって、アスベスト含有物Gの流れ方向に対して逆流する。この際、雰囲気ガスは管体30内に充満する。具体的には、管体30内の酸素濃度が0.1体積%以下になるように、雰囲気ガスは管体30内を満たす。雰囲気ガスは、常時雰囲気ガス配管4から供給され続ける。このため、余剰の雰囲気ガス(つまり排ガス)は、上流側フード32の頂壁に接続された排ガス配管9に流入する。流入した排ガスは、排ガス処理炉90を通過する。排ガス処理炉90は、熱処理炉であり、排ガスの臭気を除去する。臭気除去後の排ガスは、集塵装置91を通過する。集塵装置91は、バグフィルターであり、排ガス中に分散したアスベストを除去する。アスベスト除去後の排ガスは、吸気用のブロワーを通過し、ガス排出口から外部に放出される。
次に、本実施形態の処理システム1の作用効果について説明する。本実施形態の処理システム1の場合、雰囲気ガス配管4、シールリング320、330、332、720、731およびロータリーバルブ6a、6bにより、ロータリーバルブ6a上流側の気密性が確保されている。そして、管体30内部が窒素ガス雰囲気に保持されている。並びに、管体30内部の酸素濃度が0.1体積%以下に保持されている。このため、クロム含有金属製の管体30および流量規制リング302、303が含有するクロムが、酸化するのを抑制することができる。つまり、六価クロムが生成するのを抑制することができる。
また、管体30内周面および流量規制リング302、303表面には、積層被膜5が形成されている。このため、管体30内周面および流量規制リング302、303表面と、管体30の内部空間とが、隔離されている。この点においても、クロム含有金属製の管体30および流量規制リング302、303が含有するクロムが、酸化するのを抑制することができる。つまり、六価クロムが生成するのを抑制することができる。また、積層被膜5は、中間層51を備えている。このため、管体30とセラミック溶射層50との熱膨張差を緩和することができる。したがって、セラミック溶射層50が剥離し、コンタミネーションが発生するのを抑制することができる。
また、本実施形態の処理システム1によると、バルブ排出口810から排出されたアスベスト含有物Gは無害化されている。このため、特殊な容器、袋等にアスベスト含有物を収容しなくてもよい。すなわち、取扱いが簡単である。
また、ロータリーキルン3は、いわゆる外熱式のロータリーキルンである。このため、内熱式のロータリーキルンと比較して、排ガス量が少ない。したがって、集塵装置91を小型化することができる。
また、アスベスト含有物Gは、セメントと混合されている。このため、セメントの含有する酸化カルシウムにより、管体30が含有するクロムの酸化が促進されるおそれがある。具体的には、クロムを含む化合物(CaCrO4)が形成され、この中の六価クロムが溶出してくるおそれがある。この点、本実施形態の処理システム1によると、非酸化手段(雰囲気ガス配管4、シールリング320、330、332、720、731、ロータリーバルブ6a、6b)および積層被膜5が配置されているため、セメントの酸化カルシウムにより促進される管体30のクロムの酸化を、抑制することができる。
また、セラミック溶射層50は、スピネル製である。セラミック溶射をすると、管体30中のクロムと、セメントに含有される酸化カルシウムと、の反応を抑制することができる。さらに、マグネシアを含むスピネルによりセラミック溶射層50が形成されているため、マグネシアがアルカリ土類であり、同じアルカリ土類の酸化カルシウムとは反応し難いので、反応によるセラミック溶射層50の劣化を抑制することができる。したがって、セラミック溶射層50の寿命が長くなる。
また、アスベスト含有物Gの粒度は50mm以下であり、アスベスト含有物Gの表面積は比較的大きい。このため、熱処理室300において、より迅速に熱処理を施すことができる。また、搬送にも有利である。
また、熱処理室300の温度は、1000℃に設定されている。このため、熱処理後にアスベストの針状繊維が残留するのを抑制することができる。並びに、クロムの酸化を抑制することができる。また、ロータリーバルブ6a、6bは、排出管81に直列に二つ連設されている。このため、ロータリーバルブを一つだけ配置した場合と比較して、よりシール性が高い。
以上、本発明のアスベスト含有物処理システムの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
例えば、上記実施形態においては、本発明のシール部として、シールリング320、330、332、720、731およびロータリーバルブ6a、6bを配置した。しかしながら、シール部の構成は、これらの部材に特に限定しない。例えば、二つのロータリーバルブ6a、6bは、いずれか単独で用いてもよい。また、シールリング320、330、332、720、731の配置数、配置場所、材質、形状なども特に限定しない。例えば、ロータリーキルン3の管体30のみをシールするように、シールリングやロータリーバルブを配置してもよい。こうすると、気密性を確保しなければならない領域が小さくなるため、設備コストを削減できる。
また、上記実施形態においては、雰囲気ガスとして窒素ガスを用いた。しかしながら、熱処理室300の酸素濃度を低く保てるものであれば、ガスの種類は特に限定しない。例えば、アルゴン、水素ガス、一酸化炭素ガスなどを用いてもよい。
また、上記実施形態においては、積層被膜5をプラズマ溶射により形成したが、燃焼ガス溶射、アーク溶射などにより形成してもよい。また、積層被膜5のセラミック溶射層50として、ジルコニア(ZrO2)やアルミナ(Al2O3)などを、単体あるいは複合材として用いてもよい。ただし、酸化雰囲気下で熱処理を行う場合、クロムを含む塩基性煉瓦(例えばクロム−マグネシア煉瓦)は、用いられない。また、積層被膜5の中間層51として、チタン−アルミニウム合金などを用いてもよい。
また、熱処理室300の温度も特に限定しない。アスベストの無害化をより重視するのであれば、あるいはクロムの酸化抑制が充分であれば、より高温に設定してもよい。例えば、1100℃、1200℃に設定してもよい。反対に、クロムの酸化抑制をより重視するのであれば、より低温に設定してもよい。例えば、900℃、800℃、700℃に設定してもよい。
また、上記実施形態においては、非酸化手段(雰囲気ガス配管4、シールリング320、330、332、720、731、ロータリーバルブ6a、6b)と積層被膜5とを併用したが、これらは各々単独で用いてもよい。
また、上記実施形態においては、電気式のヒーター310a、310bを用いたが、例えばガスやマイクロ波を熱源とする加熱部を配置してもよい。また、これらの熱源を、数種類組み合わせて用いてもよい。また、ロータリーキルン3の管体30の材質(クロム含有金属)としては、例えばステンレスやインコネルなどが挙げられる。
また、上記実施形態においては、排ガス処理炉90として熱処理炉を配置したが、触媒式処理炉を配置してもよい。また、集塵装置91としてバグフィルターを配置したが、サイクロンを配置してもよい。また、熱処理後の無害化済みアスベスト含有物Gを冷却するクーラーの種類も特に限定しない。ロータリークーラー7でなくてもよい。また、冷却部71に循環させる作動流体は、冷却水の他、不凍液などであってもよい。
また、処理対象となるアスベスト含有物Gも特に限定しない。例えば、スレート、吹付け材、サイディング、セメント板、せっこう板、タイル、耐火被覆板、煙突用ライニング材、屋根折版用断熱材、シール材、ブレーキ部品、電気絶縁用部品など、種々のアスベスト含有物Gを処理システム1で処理することができる。
1:処理システム(アスベスト含有物処理システム)、2:ホッパー、20:スクリューフィーダー、3:ロータリーキルン、30:管体、300:熱処理室、301:排出口、302:流量規制リング、303:流量規制リング、31:外熱部、310a:ヒーター、310b:ヒーター、32:上流側フード、320:シールリング(シール部)、321:開口部、33:下流側フード、330:シールリング(シール部)、331:開口部、332:シールリング(シール部)、34:フランジ、340:ローラー、341:軸受、35:フランジ、350:ローラー、351:軸受、4:雰囲気ガス配管(ガス供給部)、40:枝管、41:枝管、5:積層被膜、50:セラミック溶射層、51:中間層、6a:ロータリーバルブ(シール部)、6b:ロータリーバルブ(シール部)、7:ロータリークーラー、70:管体、71:冷却部、710:クーリングタワー、72:上流側フード、720:シールリング(シール部)、721:開口部、73:下流側フード、730:クーラー排出口、731:シールリング(シール部)、732:開口部、74:フランジ、740:ローラー、75:フランジ、750:ローラー、80:連結管、81:排出管、810:バルブ排出口、9:排ガス配管、90:排ガス処理炉、91:集塵装置、92:ブロワ、93:ガス排出口、G:アスベスト含有物。
Claims (8)
- 軸方向一端からアスベスト含有物が供給され、軸方向他端から該アスベスト含有物が排出され、内周面の少なくとも一部がクロムを含有し、内部に熱処理室を持つ管体と、該熱処理室の該アスベスト含有物に熱処理を施す加熱部と、を備えてなるロータリーキルンと、
該熱処理の際、該クロムが酸化して六価クロムが生成するのを抑制する酸化抑制手段と、
を備えてなるアスベスト含有物処理システム。 - 前記加熱部は、前記管体の外径側に配置され、前記アスベスト含有物に、該管体の管壁を介して、間接的に熱処理を施す外熱部である請求項1に記載のアスベスト含有物処理システム。
- 前記アスベスト含有物は、セメントと混合されている請求項1に記載のアスベスト含有物処理システム。
- 前記酸化抑制手段は、前記熱処理室に表出しクロムを含有しないセラミック溶射層を備える積層被膜である請求項1に記載のアスベスト含有物処理システム。
- 前記積層被膜は、さらに、前記セラミック溶射層と前記管体の内周面との間に介在し、該セラミック溶射層と該内周面との間の熱膨張差を緩和する中間層を備える請求項4に記載のアスベスト含有物処理システム。
- 前記酸化抑制手段は、前記熱処理室に非酸化性のガスを供給するガス供給部と、供給された該ガスによる該熱処理室の非酸化雰囲気を確保するシール部と、を備える非酸化手段である請求項1に記載のアスベスト含有物処理システム。
- 前記アスベスト含有物は、粒度50mm以下の粒状を呈している請求項1に記載のアスベスト含有物処理システム。
- 前記熱処理の際、前記熱処理室の温度は、800℃以上1100℃以下に設定されている請求項1に記載のアスベスト含有物処理システム。
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