JP2008159571A - 銀粒子担持多孔質セラミックス電極及び集電体の製造方法 - Google Patents

銀粒子担持多孔質セラミックス電極及び集電体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】500〜800℃の温度域で作動させるIT−SOFCの発電性能を改善するために好適な多孔質セラミックス電極及び集電体を製造する。
【解決手段】銀塩と、銀イオンと結合して錯体を生成すると共にセラミックス表面との結合能を有する水溶性の表面修飾剤と、銀イオンを還元する水溶性の還元剤とを少なくとも含み、銀塩の濃度は1mol/L超〜5mol/L未満とし、表面修飾剤の濃度は少なくとも銀イオンの全量と反応して錯体を生成し得る濃度とし、還元剤の濃度は少なくとも銀イオンの全量を還元し得る濃度とした水系溶剤に、中温作動用固体酸化物型燃料電池の多孔質セラミックス電極を浸漬するようにした。また、銀塩の濃度を少なくとも2.5mol/L超とした上記水系溶剤に、中温作動用固体酸化物型燃料電池の多孔質セラミックス集電体を浸漬するようにした。
【選択図】図15

Description

本発明は、銀粒子担持多孔質セラミックス電極及び集電体の製造方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、中温作動用固体酸化物型燃料電池の出力密度を高めて発電効率を向上させるために好適な多孔質セラミックス電極及び多孔質セラミックス集電体を製造する方法に関する。
環境に優しい燃料電池を最大限に活用した社会構築の取り組みが始まっている。中温作動用固体酸化物型燃料電池(以下、IT−SOFCと呼ぶこともある。)の実現は、様々なエネルギー関連機器の高効率化を可能にし、燃料電池社会の構築に大きく寄与できると考えられる。例えば、コンパクト性を必要とされる家庭用コージェネレーション、自動車用動力源、移動用電源などの用途では、燃料電池本体の効率とともに急速起動・停止などの特性も重要になるが、高い性能を維持したまま燃料電池の作動温度を低下できれば、起電力が高くなるとともに燃料電池本体での発電効率も向上し、急速起動・停止特性を付与し易くなる。そこで、作動温度の低い燃料電池の研究が各種行われている。例えば、例えば、特許文献1では、セリウム酸化物固溶体を電解質として用いた作動温度800℃以下の固体酸化物型燃料電池が開示されている。
ここで、IT−SOFCにおいて、最も電気抵抗が高いセル部材は、酸化物イオン(O2−)導電体として機能する電解質材料である。例えば、ジルコニア固溶体であるスカンジア安定化ジルコニア(以下、ScSZと呼ぶ。)が、化学的安定性、機械的強度の高さ、豊富な資源量及び低コスト性から、IT−SOFCの電解質材料として用いられている。
また、機械的強度の低さや、還元雰囲気下における電子伝導性及び還元膨張の発現などの問題点が指摘されているものの、その豊富な資源量や高い酸化物イオン導電性から、セリウム酸化物系固溶体もまた、IT−SOFCの電解質材料として用いられている。
セリウム酸化物系固溶体は高い酸化物イオン導電性を有するものの、550℃以上の作動温度域では電子伝導性が発現する。したがって、セリウム酸化物系固溶体を電解質材料として採用する場合には、電子伝導性の発現の影響が少ない600℃以下の作動温度域とすることが考えられている。一方、ScSZは、電子伝導性が発現は見られないものの、セリウム酸化物系固溶体と比べて酸化物イオン導電性が低いため、ScSZを電解質材料として採用する場合には、600℃以上の作動温度域とすることが考えられている。
特開2004−143023
しかしながら、酸化物イオン導電性が高いセリウム酸化物系固溶体やScSZを電解質材料として用いても、500〜800℃で作動させることを目的とするIT−SOFCの発電効率を充分に高めることができていないのが現状である。その原因の一つに、IT−SOFCを500〜800℃で作動させた際の空気極と燃料極の過電圧の上昇が挙げられる。酸素(O)を酸素イオン(O2−)に還元させる特性が空気極に求められ、水素等の燃料を酸化させる特性が燃料極に求められる。このように供給ガス分子をイオンに変化させる特性は触媒活性と呼ばれる。触媒活性は、電極の過電圧の指標として表され、触媒活性が低下するとセル電圧も低下してしまう。触媒活性は温度上昇に伴って高くなり、触媒活性は温度低下に伴って低下することから、燃料電池の作動温度の低下に伴って電極の過電圧が上昇し、発電性能が著しく低下してしまう。したがって、500〜800℃の温度域で作動させるIT−SOFCの発電性能を改善するためには、電極の過電圧の上昇を抑える技術、即ち、500〜800℃において電極の触媒活性の低下を抑える技術の確立が望まれる。
また、図2に示す縦縞円筒方式の固体酸化物型燃料電池の場合、構成要素となる単セル1の空気極3がその直上の単セルの燃料極4とインターコネクタ5を介して接続され、電気的に直列接続している。また、単セル1とその横の単セルの空気極同士が接続されて、並列接続している。つまり、電池の構成要素となる単セルを複数本束ねて直並列に接続し、円周方向に電流を流して集電することにより、電池電極間のパスを短くして電池内部抵抗を下げることができる。しかしながら、最終工程で形成する外周部の電極をスラリーコーティング法などの湿式法により形成する場合、その厚さを厚くすることができないため、集電ロスが生じやすくなる問題がある。また、近年、小型且つ発電効率の高い固体酸化物型燃料電池の実現の要請に応えるべく、図19と図22に示すようなミクロサイズのチューブ構造の単セルを集積する技術が検討されつつある。このように小型の円筒状単セルを作製する場合、インターコネクタを単セル内に設けることが困難であるため、単セル同士を直列接続することができない。つまり、集積した単セル同士は全て並列接続されることになるため、セルの長さが長くなるとともに集電抵抗が増大し電池の内部抵抗が上昇してしまう。また、単セル外周部の電極の厚さを厚くできないという上記と同様の問題がこの場合にも生じる。したがって、500〜800℃の温度域で作動させるIT−SOFCの発電性能を改善するためには、空気極同士の接触抵抗や燃料極同士の接触抵抗を低減させると共に、集電ロスを抑制する技術の確立が望まれる。
本発明は、500〜800℃の温度域で作動させるIT−SOFCの発電性能を改善するために好適な多孔質セラミックス電極および多孔質セラミックス集電体の製造方法を提供することを目的とする。
かかる課題を解決するため、本願発明者等はIT−SOFCの作動温度域である500℃〜800℃においても触媒活性を有すると共に高い導電率を有する物質である銀に着目し、多孔質セラミックス電極や多孔質セラミックス集電体の性能を高めて、IT−SOFCの発電効率の向上を図るべく鋭意検討を行った。その結果、多孔質セラミックス電極や多孔質セラミックス集電体にナノサイズレベルの銀粒子を分散担持させて、触媒活性や導電率を高めることができる条件を知見し、本願発明に至った。
かかる知見に基づく請求項1に記載の銀粒子担持多孔質セラミックス電極の製造方法は、銀塩と、銀イオンと結合して錯体を生成すると共にセラミックス表面との結合能を有する水溶性の表面修飾剤と、銀イオンを還元する水溶性の還元剤とを少なくとも含み、銀塩の濃度は1mol/L超〜5mol/L未満とし、表面修飾剤の濃度は少なくとも銀イオンの全量と反応して錯体を生成し得る濃度とし、還元剤の濃度は少なくとも銀イオンの全量を還元し得る濃度とした水系溶剤に、中温作動用固体酸化物型燃料電池の多孔質セラミックス電極を浸漬する工程を少なくとも含むものである。
したがって、銀塩が水系溶剤に溶解して発生する銀イオンと表面修飾剤との結合により銀イオン錯体が生成され、この銀イオン錯体の表面修飾剤側と多孔質セラミックス電極とが付着して、銀イオンが多孔質セラミックス電極に分散担持される。この銀イオンは160〜200℃の温度域で還元剤と反応して銀に還元される。つまり、浸漬処理した多孔質セラミックス集電体をIT−SOFCの作動温度まで昇温する際に、または、焼成処理を行う際に、銀イオンが還元剤と反応して銀に還元される。銀塩、表面修飾剤及び還元剤の濃度を上記範囲として、この一連の反応過程を進行させることにより、多孔質セラミックス電極に銀粒子を分散担持させて、触媒活性を向上させることができる。また、銀塩濃度を2.5mol/L超〜5mol/L未満とした場合には、触媒活性の向上だけでなく、導電率も上昇させることができる。
ここで、少なくとも銀イオンの全量と反応して錯体を生成し得る表面修飾剤の濃度は、請求項2に記載したように、クエン酸、イソクエン酸、プロパ−1−エン−1,2,3−トリカルボン酸及びポリビニルピロリドンからなる群より選ばれた1種または2種以上を表面修飾剤として用いる場合、銀塩1molに対して少なくとも0.5molであることが好ましい。
次に、請求項3に記載の中温作動用固体酸化物型燃料電池は、請求項1または2に記載の製造方法により製造された銀粒子担持多孔質セラミックス電極を空気極及び燃料極のいずれか一方あるいは両方として含むものである。
したがって、この中温作動用固体酸化物型燃料電池によれば、銀粒子が分散担持されて高性能化された多孔質セラミックス電極を空気極及び燃料極のいずれか一方あるいは両方を用いて燃料電池が構成されているので、高性能化された多孔質セラミックス電極の寄与により燃料電池全体の性能が向上して発電効率が高まる。
次に、請求項4に記載の銀粒子担持多孔質セラミックス集電体の製造方法は、銀塩と、銀イオンと結合して錯体を生成すると共にセラミックス表面との結合能を有する水溶性の表面修飾剤と、銀イオンを還元する水溶性の還元剤とを少なくとも含み、銀塩の濃度は少なくとも2.5mol/L超とし、表面修飾剤の濃度は少なくとも銀イオンの全量と反応して錯体を生成し得る濃度とし、還元剤の濃度は少なくとも銀イオンの全量を還元し得る濃度とした水系溶剤に、中温作動用固体酸化物型燃料電池の多孔質セラミックス集電体を浸漬する工程を少なくとも含むものである。
この場合も請求項1に記載の発明と同様に、銀塩が水系溶剤に溶解して発生する銀イオンと表面修飾剤との結合により銀イオン錯体が生成され、この銀イオン錯体の表面修飾剤側と多孔質セラミックス集電体とが付着して、銀イオンが多孔質セラミックス集電体に分散担持される。この銀イオンは160〜200℃の温度域で還元剤と反応して銀に還元される。つまり、浸漬処理した多孔質セラミックス集電体をIT−SOFCの作動温度まで昇温する際に、または、焼成処理を行う際に、銀イオンが還元剤と反応して銀に還元される。銀塩、表面修飾剤及び還元剤の濃度を上記範囲として、この一連の反応過程を進行させることにより、多孔質セラミックス集電体に銀粒子を分散担持させて、導電率を上昇させることができる。
ここで、少なくとも銀イオンの全量と反応して錯体を生成し得る表面修飾剤の濃度は、請求項5に記載したように、クエン酸、イソクエン酸、プロパ−1−エン−1,2,3−トリカルボン酸及びポリビニルピロリドンからなる群より選ばれた1種または2種以上を表面修飾剤として用いる場合、銀塩1molに対して少なくとも0.5molであることが好ましい。
請求項6に記載の中温作動用固体酸化物型燃料電池は、請求項4または5に記載の製造方法により製造された銀粒子担持多孔質セラミックス集電体を含むものである。
したがって、この中温作動用固体酸化物型燃料電池によれば、銀粒子が分散担持されて高性能化された多孔質セラミックス集電体を含んで燃料電池が構成されているので、高性能化された多孔質セラミックス集電体の寄与により燃料電池全体の性能が向上して発電効率が高まる。
請求項7に記載の中温作動用固体酸化物型燃料電池は、請求項6に記載の中温作動用固体酸化物型燃料電池において、請求項1または2に記載の製造方法により製造された銀粒子担持多孔質セラミックス電極を含むものである。
したがって、この中温作動用固体酸化物型燃料電池によれば、銀粒子が分散担持されて高性能化された多孔質セラミックス集電体と多孔質セラミックス電極を含んで燃料電池が構成されているので、高性能化された多孔質セラミックス集電体と多孔質セラミックス電極の双方の寄与により燃料電池全体の性能が向上して発電効率が高まる。
本発明の銀粒子担持多孔質セラミックス電極の製造方法によれば、水系溶剤に可溶な出発原料を用いることができるので、有機系溶剤を用いる場合のように、排気設備等の特殊な設備を備えることなく、簡易且つ低コストに銀粒子担持多孔質セラミックス電極を製造することができる。また、多孔質セラミックス電極に銀をナノレベルからサブミクロンレベルの粒子状態で分散担持させることができるので、少量の銀を用いるだけで銀が有している触媒活性能や導電性を最大限に発揮させて、多孔質セラミックス電極の性能を高めることができ、製造にかかるコストを抑えることができる。
また、この銀粒子多孔質セラミックス電極を空気極とした本発明の中温作動用固体酸化物型燃料電池によれば、銀粒子が空気極全体に均一に分散担持されているので、500〜800℃の作動温度域において低下する虞のある空気極の酸素還元能が銀の有する酸素還元能により補われると共に、空気極/電解質/気相の接触面積が増大するので、三相界面で起こる酸素還元反応が効率的に進行する。したがって、500〜800℃の作動温度域における発電効率を高めることができる。さらに、空気極/空気極界面の接触面積と、集電体/空気極界面の接触面積を増大させて接触抵抗を低減させることができると共に、銀塩濃度を2.5mol/超として空気極に銀粒子を分散担持させた場合には、空気極自体の導電率の上昇も見込める。したがって、集電時の電圧ロスを抑えて、発電効率を改善することができる。
また、この銀粒子多孔質セラミックス電極を燃料極とした本発明の中温作動用固体酸化物型燃料電池によれば、銀粒子が燃料極全体に均一に分散担持されているので、500〜800℃の作動温度域において低下する虞のある燃料極の水素酸化能が銀の有する水素酸化能により補われると共に、燃料極/電解質/気相の接触面積が増大するので、三相界面で起こる水素酸化反応が効率的に進行する。したがって、500〜800℃の作動温度域における発電効率を高めることができる。さらに、燃料極/燃料極界面の接触面積と、集電体/燃料極界面の接触面積を増大させて接触抵抗を低減させることができると共に、銀塩濃度を2.5mol/超として燃料極に銀粒子を分散担持させた場合には、燃料極自体の導電率の上昇も見込める。したがって、集電時の電圧ロスが抑えて、発電効率を改善することができる。
また、この銀粒子多孔質セラミックス電極を空気極及び燃料極とした本発明の中温作動用固体酸化物型燃料電池によれば、この銀粒子多孔質セラミックス電極を空気極とした場合の効果と、この銀粒子多孔質セラミックス電極を燃料極とした場合の効果との寄与により、発電効率をさらに高めることができる。
次に、本発明の銀粒子担持多孔質セラミックス集電体の製造方法によれば、銀粒子担持多孔質セラミックス電極の製造方法の場合と同様、水系溶剤に可溶な出発原料を用いているので、有機系溶剤を用いる場合のように、排気設備等の特殊な設備を備えることなく、簡易且つ低コストに銀粒子担持多孔質セラミックス集電体を製造することができる。また、銀を多孔質セラミックス集電体にナノレベルからサブミクロンレベルの粒子状態で分散担持させることができるので、少量の銀を用いるだけで銀が有している導電性を最大限に発揮させて、多孔質セラミックス集電体の導電性を高めることができ、製造にかかるコストを抑えることができる。
また、この銀粒子担持多孔質セラミックス集電体を含む本発明の中温作動用固体酸化物型燃料電池によれば、銀粒子が多孔質セラミックス集電体全体に均一に分散担持されて、その導電性能が高められているので、集電時の電圧ロスが抑えて、発電効率を改善することができる。しかも、電極/集電体界面の接触面積を増大させることもできるので、集電時の電圧ロスをさらに抑えて、発電効率を高めることができる。
さらに、上記銀粒子担持多孔質セラミックス電極と銀粒子担持多孔質セラミックス集電体を含む本発明の中温作動用固体酸化物型燃料電池によれば、銀粒子担持多孔質セラミックス電極と銀粒子担持多孔質セラミックス集電体の双方の寄与により、発電効率をさらに高めることができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の銀粒子担持多孔質セラミックス電極の製造方法は、銀塩と、銀イオンと結合して錯体を生成すると共にセラミックス表面との結合能を有する水溶性の表面修飾剤と、銀イオンを還元する水溶性の還元剤とを少なくとも含み、銀塩の濃度は1mol/L超〜5mol/L未満とし、表面修飾剤の濃度は少なくとも銀イオンの全量と反応して錯体を生成し得る濃度とし、還元剤の濃度は少なくとも銀イオンの全量を還元し得る濃度とした水系溶剤に、IT−SOFC用の多孔質セラミックス電極を浸漬する工程を少なくとも含むようにしている。
また、本発明の銀粒子担持多孔質セラミックス集電体の製造方法は、銀塩と、銀イオンと結合して錯体を生成すると共にセラミックス表面との結合能を有する水溶性の表面修飾剤と、銀イオンを還元する水溶性の還元剤とを少なくとも含み、銀塩の濃度は少なくとも2.5mol/L超とし、表面修飾剤の濃度は少なくとも銀イオンの全量と反応して錯体を生成し得る濃度とし、還元剤の濃度は少なくとも銀イオンの全量を還元し得る濃度とした水系溶剤に、IT−SOFC用の多孔質セラミックス集電体を浸漬する工程を少なくとも含むようにしている。
銀塩は、水系溶剤中に溶解して銀イオンを発生する物質である。例えば、硝酸銀(AgNO)、塩化銀(AgCl)、ヨウ化銀(AgI)、酢酸銀(CHCOOAg)が挙げられるが、これらに限定されない。硝酸銀を例に挙げて説明すると、硝酸銀は以下に示す化学反応式1により水系溶剤に溶解して銀イオンを発生する。
[化学反応式1] AgNO → Ag + NO
本発明で用いられる表面修飾剤は、銀イオンと結合して錯体を生成すると共にセラミックス表面との結合能を有する水溶性の物質である。例えば、クエン酸、イソクエン酸、プロパ−1−エン−1,2,3−トリカルボン酸(アコニット酸)が挙げられるが、これらに限定されない。化1にクエン酸の化学構造式を、化2にイソクエン酸の化学構造式、化3にプロパ−1−エン−1,2,3−トリカルボン酸の化学構造式を示す。
また、ポリビニルピロリドン(PVP)を表面修飾剤として用いてもよい。ポリビニルピロリドンは物質は表面修飾剤としての上記特性に加え、銀粒子の形状を制御する機能を有しており、粒子の形状を繊維状にしたりキューブ状にしたりすることで、銀粒子の分散状態を変化させて、触媒活性や三相界面を増加させる効果を有している。化4にポリビニルピロリドンの化学構造式を示す。
表面修飾剤は上記のうちの1種類のみを用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
本発明で用いられる還元剤は、銀イオンを還元する水溶性の物質である。より詳細には、表面修飾剤と結合した銀イオンを0価の銀に還元する水溶性の物質である。例えば、エチレングリコールが挙げられるが、これに限定されるものではない。
銀塩、表面修飾剤及び還元剤は、水系溶剤に添加される。本発明で用いることができる水系溶剤としては、水や、アルコールなどの親水基を有する物質が挙げられるが、銀塩、表面修飾剤及び還元剤を溶解させ得る溶剤であって、多孔質セラミックス電極及び集電体への銀粒子の分散担持を阻害しない溶剤であれば特に限定されない。尚、環境にかかる負荷を低減する観点からは、水系溶剤として水を用いることが特に好ましい。
多孔質セラミックス電極に銀粒子を分散担持させる場合、水系溶剤に添加する銀塩の濃度は1mol/L超〜5mol/L未満とすることが好ましい。銀塩の濃度が1mol/Lの場合には多孔質セラミックス電極に銀粒子がほとんど担持されないので、銀塩の濃度を1mol/L以下とするのは好ましくない。また、銀塩の濃度を5mol/Lとすると銀粒子の粒径が2μm程度の大きさとなるため、多孔質セラミックス電極に分散担持させた銀粒子の比表面積を充分に増加させることができないので、銀塩の濃度を5mol/L以上とするのは好ましくない。つまり、銀塩の濃度を1mol/L超〜5mol/L未満とすることで、2μm未満の粒子サイズの銀粒子が分散担持された多孔質セラミックス電極が得られる。尚、銀塩の濃度は、2.5mol/L近傍の濃度範囲、例えば1.5mol/L超〜4mol/L未満とすることがより好ましく、2mol/L超〜3mol/L未満とすることがさらに好ましい。この場合には、多孔質セラミックス電極にサブミクロンサイズからナノサイズの銀粒子、特に粒径100nm以下の銀ナノ粒子を分散担持させて、触媒活性を大幅に向上させることができる。ここで、触媒活性だけでなく、導電率も向上させて多孔質セラミックス電極の性能をさらに高めたい場合には、銀粒子同士が繋がってネットワークが形成される銀塩濃度とすればよい。具体的には、2.5mol/L超〜5mol/L未満とすることが好ましい。つまり、この濃度範囲とすることで、2μm未満の粒子サイズの銀粒子が分散担持され、且つ銀粒子同士が繋がってネットワークが形成されている多孔質セラミックス電極が得られる。そして、銀塩濃度をこの濃度範囲内で2.5mol/Lに近づけるにしたがって、銀粒子のサイズがサブミクロンから100nm以下のナノサイズまで小さくすることができ、且つ銀粒子同士が繋がってネットワークが形成されている多孔質セラミックス電極が得られる。
多孔質セラミックス集電体に銀粒子を分散担持させる場合、水系溶剤に添加する銀塩の濃度は少なくとも2.5mol/Lを超える濃度であることが好ましい。銀塩の濃度が2.5mol/L以下の場合には、導電率を充分に高めることができないので、銀塩の濃度を2.5mol/L以下とするのは好ましくない。尚、銀塩の濃度は、2.5mol/L超〜7mol/Lとすることがより好ましく、2.5mol/L超〜5mol/Lとすることがさらに好ましい。この場合には、使用した銀塩の量に対して導電率を最大限に上昇させることができ、銀塩の使用を抑えてコストを低減できるとともに、集電体に要求されるガス流通性を阻害する虞もない。尚、2.5mol/L超〜5mol/L未満の銀塩濃度範囲とすることで、上記と同様、2μm未満の粒子サイズの銀粒子が分散担持され、且つ銀粒子同士が繋がってネットワークが形成されている多孔質セラミックス電極が得られる。また、5mol以上の銀塩濃度とした場合には、2μm以上の粒子サイズの銀粒子が分散担持され、且つネットワークが形成されている多孔質セラミックス電極が得られる。
水系溶剤に添加する表面修飾剤の濃度は、銀塩1molに対して1.3mol以上となる濃度とすれば銀粒子を多孔質セラミックス電極及び集電体に分散担持させることが可能なことが本発明者等の実験により確認されている。しかしながら、理論的には、少なくとも銀イオン全量と反応して錯体を生成し得る濃度の表面修飾剤を用いればよいと考えられる。表面修飾剤としてクエン酸を用いる場合、クエン酸は2つの銀イオンを取り込んで1つの錯体を生成することから、クエン酸の濃度を銀塩1molに対して0.5mol以上となる濃度にすることで、銀イオンの全量がクエン酸と反応して錯体を生成し得ると考えられ、1mol以上とすることがより好ましく、1.3mol以上とすることがさらに好ましい。クエン酸と化学的性質が類似しているイソクエン酸、プロパ−1−エン−1,2,3−トリカルボン酸についても、この濃度範囲とすることが好ましいと考えられる。また、表面修飾剤としてPVPを用いる場合、PVPのモノマーユニットが銀塩1molに対して0.5mol以上となる濃度にすればよく、1mol以上とすることがより好ましく、1.3mol以上とすることがさらに好ましい。
表面修飾剤濃度の上限値は、水系溶剤に対する表面修飾剤の最大溶解量により規定される。例えばクエン酸の場合には、純水1Lに対して最大8.7mol溶解することが本発明者等の実験により確認されている。また、PVPの場合には、純水1Lに対して最大5mol溶解することが本発明者等の実験により確認されている。したがって、表面修飾剤としてクエン酸を用いた場合、表面修飾剤濃度の上限値は8.7mol/Lとなる。また、表面修飾剤としてPVPを用いた場合、表面修飾剤濃度の上限値は5mol/Lとなる。しかしながら、銀イオンとの反応に関与する表面修飾剤の量は、水系溶剤に存在している銀イオンの量に規定されることから、銀イオンとの反応に関与する量を超える量の表面修飾剤を用いるのは無駄である。表面修飾剤の濃度を銀塩1molに対して1.3molとなる濃度にすれば銀粒子を多孔質セラミックス電極及び集電体に分散担持させることが可能であることが本発明者等の実験により確認されていることから、例えば、銀塩の濃度が2.5mol/Lの場合、表面修飾剤の濃度を3.2mol/Lとすれば、銀粒子を確実に分散担持させることができると考えられる。
水系溶剤に添加する還元剤の濃度は、銀塩1molに対して3mol以上となる濃度とすれば銀粒子を多孔質セラミックス電極に分散担持させることができる。しかしながら、理論的には、錯体中の銀イオンの全量を還元しうる濃度の還元剤濃度とすればよいと考えられる。例えば還元剤としてエチレングリコールを用いる場合、銀イオン1molを還元するために必要なエチレングリコールの量は1molであることから、エチレングリコールの濃度は銀塩と同濃度以上とすればよく、好ましくは銀塩1molに対してエチレングリコール2mol以上、さらに好ましくは銀塩1molに対してエチレングリコール3mol以上である。
還元剤濃度の上限値もまた、純水に対する還元剤の最大溶解量により規定されるが、還元反応に関与する還元剤の量は錯体中の銀イオンの量に規定されることから、還元反応に関与する量を超える量の還元剤を用いるのは無駄である。上記の結果から、還元剤としてエチレングリコールを用いた場合、エチレングリコールの濃度を銀塩1molに対して3molとなる濃度にすれば、銀粒子を多孔質セラミックス電極に分散担持させることが可能であったことから、例えば、銀塩の濃度が2.5mol/Lの場合、表面修飾剤の濃度を7.5mol/Lとすれば、銀粒子を多孔質セラミックス電極に確実に分散担持させることができると考えられる。
本発明に用いられる多孔質セラミックス電極としては、IT−SOFC用として公知のあるいは新規の多孔質セラミックス空気極材料や多孔質セラミックス燃料極材料である多孔質セラミックス導電体材料が挙げられる。
多孔質セラミックス空気極材料としては、例えばLaCoO系ペロブスカイト酸化物やLaFeO系ペロブスカイト酸化物が挙げられる。より具体的には、例えばLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.83+δ(「δ」は、組成や温度等で種々変化する酸素量であり、規定することに意味の無い数値である)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
多孔質セラミックス燃料極材料としては、例えば、650℃付近で運転するジルコニア電解質型SOFCでは、酸化ニッケル−ジルコニア系酸化物の混合物が挙げられる。より具体的には、例えばNiO−(ZrO0.89(Sc0.1(CeO0.01が挙げられるが、これに限定されない。また、500℃付近で運転するセリウム酸化物電解質型SOFCでは、酸化ニッケル-セリウム系酸化物の混合物が挙げられる。より具体的には、例えばNiO−Ce0.9Gd0.11.95が挙げられるが、これに限定されない。
本発明に用いられる多孔質セラミックス集電体としては、IT−SOFC用として公知の材料あるいは新規の多孔質セラミックス導電体を用いることができる。例えば、空気極材料と同様のペロブスカイト酸化物、パイロクロア酸化物、金属酸化物、ペロブスカイト酸化物あるいはパイロクロア酸化物と金属酸化物の複合体を用いることができる。
次に、IT−SOFCの形状及びモジュール構造について、図1〜図3に基づいて説明する。
図1に示す空気極支持型構造の円筒状IT−SOFC用単セルは、比較的大きい空気極円筒管への適用が考えられ、単セルにインターコネクタを有しているケースである。単セルが大きい場合、インターコネクタを単セルに設けることが容易となる。このIT−SOFC用単セル1は、円筒型の空気極管3と固体電解質層2と燃料極4とにより同心状に形成されており、固体電解質層3と燃料極4とを分断するように空気極管3上に形成されたインターコネクタ5によって空気極管3の電流が取り出せるように設けられている。インターコネクタ5と燃料極4との間には固体電解質層2が露出しており、当該露出部分においてインターコネクタ5と燃料極4とは電気的に絶縁されている。この円筒型IT−SOFC用単セルにおいては、空気が空気極管3の内側を流れ、燃料極4の外側には燃料(水素、炭化水素等)が流れる。燃料極4の外側を流れる燃料には酸素が含まれていないので、インターコネクタ5が設けられているこの単セルを電気的に直列・並列に接続する金属材料からなる緻密集電体が酸化せず、長期に亘って安定に集電することができる。この場合、空気極管3の厚みを厚くすることが可能になるので、空気極管3に内部電気抵抗が発生するのを防いで、集電ロスを少なくすることが可能となる。尚、燃料極を円筒管とした場合には燃料極支持型セル構造となる。そして、空気極と電解質の反応を防ぐためにインターレイヤーを設けているタイプのセルは、空気極層と電解質層の間にインターレイヤー層を設けている。
図2に示すモジュール構造は、空気極支持型セル構造の円筒状IT−SOFC単セルを集積した例である。単セル1の空気極3がその直上の単セルの燃料極4とインターコネクタ5を介して接続され、電気的に直列接続している。また、単セル1に隣接する単セルの燃料極同士が接続されて、電気的に並列接続している。図3に示すモジュール構造は、燃料極支持型セル構造の円筒状IT−SOFC単セルを集積した例である。単セル1の燃料極がその直上の単セルの空気極3とインターコネクタ5及び集電体6を介して直列接続している。また、単セル1に隣接する単セルの空気極3同士が集電体6を介して並列接続している。空気極の厚さが薄い場合には、集電ロスが大きくなるので、このように、空気極3の外側表面に多孔質セラミックス集電体6を設けて空気極同士の接触抵抗を低減することにより、集電ロスを抑えることができる。尚、集電体6は空気極表面全体を覆うように備えるようにしても良いし、隣接する単セルとの接触部にのみ備えるようにしてもよい。また、空気極支持型セルの場合にも、多孔質セラミックス集電体6を燃料極表面全体あるいは隣接する単セルとの接触部に備えるようにして集電ロスを抑えるようにしてもよい。つまり、集電体6は、電極同士を電気的に接続して接触抵抗を低減し、集電ロスを抑える電気的接続部材とも呼ぶことができる。
比較的小さい空気極円筒管、例えば50〜500μmのチューブ径の円筒管の場合、単セルにインターコネクタを設けることが極めて困難になる。この場合には、図19に示すように、単セルを電気的に並列に配置して、立方体形状としたサブモジュール10を形成し、このサブモジュール10を複数個集積させて、図22に示すようなモジュール構造40とすることが考えられる。
図19は、IT−SOFCサブモジュールの分解斜視図であり、図20は、IT−SOFCサブモジュールの外観斜視図である。図19に示すように、IT−SOFCサブモジュール10は、固体酸化物型燃料電池部11と、第1導電性マニホールド12と、第1シール部材13と、インターコネクタ14と、第2導電性マニホールド15と、第2シール部材16と、集電部材17とを備えている。
固体酸化物型燃料電池部11は、複数本の電解質電極接合管18と、管接合電極部19とを備えている。図21に、電解質電極接合管18の拡大図を示す。尚、図19では図示省略しているが、図22に示すように、固体酸化物型燃料電池部11の電解質電極接合管18と平行な対向する2面にガスシール材8を設けるようにしても良い。
電解質電極接合管18は、多孔質燃料極管4または多孔質空気極管3の外側表面に、薄膜状に形成された固体電解質層2が接合されて形成されたものである。多孔質燃料極管4または多孔質空気極管3の一端には、固体電解質層2が接合されることなく多孔質燃料極管4または多孔質空気極管3の一部がむき出し状態とされることにより、露出部23が形成されている。この露出部23は、燃料極または空気極の外部引き出し電極として機能する。なお、固体電解質層2の外側表面に、多孔質空気極3や多孔質燃料極4を形成するようにしてもよい。
管接合電極部19は、空気極材料または燃料極材料より形成された通気性のある多孔質体である。管接合電極部19の外形としては、SOFCサブモジュール10を集積し易いなどの観点から、立方体形状または直方体形状に形成されることが好ましいが、特に限定されるものではなく、直方体、円柱、三角柱形状など、他の形状に形成されていても良い。
管接合電極部19は、電解質電極接合管18が多孔質燃料極管4を有している場合には空気極材料より形成されて空気極3として機能し、電解質電極接合管が多孔質空気極管3を有している場合には燃料極材料より形成されて燃料極4として機能する。この場合、管接合部材は単に電極として機能するに留まらず、複数の電解質電極接合管18を電気的に並列接続して、電気的出力を集電する集電体(電気的接続部材)としても機能する。また、固体電解質層2の外側表面に多孔質空気極3や多孔質燃料極4が既に形成されている場合には、管接合電極部19は、電解質電極接合管18を並列接続して集電する集電体(電気的接続部材)として機能する。つまり、管接合電極部19は、多孔質セラミックス集電体として機能する部材である。
また、管接合電極部19は、複数本の電解質電極接合管18を互いに長手方向に平行に配列固定し、隣り合う電解質電極接合管18同士を電気的に接続する役割も有している。
また、管接合電極部19中において、各電解質電極接合管18は、管の一端に形成された露出部23とこの露出部23に隣接する固体電解質層22の一部とが、管接合電極部19の面19aより外側に突出されて固定され、管接合電極部19と露出部23とが電気的に接触してショートするのを回避するようにしている。管の他端も、管接合電極部19の面19bより外側に向かって僅かに突出されて固定されている。なお、管の他端は、管接合電極部19の面19bと一致していても構わない。
第1導電性マニホールド12は、LaCrOなどの導電性セラミックス、ステンレスなどの耐熱性金属などにより内部が空洞とされた箱状に形成されており、管接合電極部19の面19b側に設けられる。なお、この第1導電性マニホールド12は、電解質電極接合管18と平行な方向に列設される他のSOFCサブモジュール10の第2導電性マニホールド15との間で電気的接続を担う必要があることから、導電性が要求される。
また、第1導電性マニホールド12の面12aの下方には、アルミナ、ジルコニアなどの絶縁性セラミックスなどにより形成された絶縁性の管体24が設けられ、マニホールド12内部と連通されている。この管体24は、第1導電性マニホールド12内に燃料ガスまたは酸化剤ガスを供給する役割や、電解質電極接合管18と垂直な方向に一定間隔離れて列設される他のSOFCサブモジュール10の第2導電性マニホールド15(直列接続時)、あるいは、第1導電性マニホールド12(並列接続時)に連通接続する役割を果たす。
また、第1導電性マニホールド12の面12aに対向する面12bの下方には、接続孔25が形成され、電解質電極接合管18と垂直な方向に列設される他のSOFCサブモジュール10の第2導電性マニホールド15に設けられた絶縁性の管体29(直列接続時)、あるいは、第1導電性マニホールド12に設けられた絶縁性の管体24(並列接続時)を接続することができるようになっている。
また、第1導電性マニホールド12の固体酸化物型燃料電池部11側の面12cには、電解質電極接合管18の開口端の位置に対応してガス孔26が形成されており、管体24から第1導電性マニホールド12内に供給された燃料ガスまたは酸化剤ガスを電解質電極接合管18内に供給することができるようになっている。
第1シール部材13は、マイカガラス、スピネル(MgAl)などのセラミックスなどの材料より形成されており、管接合電極部19の面19bにおける電解質電極接合管18の周縁部および管18同士の隙間に相当する部分に設けられる。なお、第1シール部材13は、管接合電極部19の熱膨張係数に整合している必要がある。
第1シール部材13は、第1導電性マニホールド12から電解質電極接合管18内に導入される燃料ガスまたは酸化剤ガスが、管接合電極部19内を通らないようにシールするとともに、電解質電極接合管18の多孔質燃料極管4または多孔質空気極管3と第1導電性マニホールド12との間で導通しないようにシールする役割を果たす。
インターコネクタ14は、LaCrO、LaCoOなどの導電性セラミックス、ステンレスなどの耐熱性金属などにより形成されており、第1シール部材13の周囲に設けられている。このインターコネクタ14は、管接合電極部19の集電を行うためのものであり、管接合電極部19と第1導電性マニホールド12との間に介在される。そのため、インターコネクタ14と管接合電極部19との間にこの第1シール部材13が介在されることはない。
第2導電性マニホールド15は、上記第1導電性マニホールド12と同様に、LaCrOなどの導電性セラミックス、ステンレスなどの耐熱性金属などにより内部が空洞とされた箱状に形成されており、管接合電極部19の面19a側に設けられている。なお、この第2導電性マニホールド15は、電解質電極接合管18と平行な方向に列設される他のSOFCサブモジュール10の第1導電性マニホールド12との間で電気的接続を担う必要があることから、導電性が要求される。
第2導電性マニホールド15の面15bの下方には、アルミナ、ジルコニアなどの絶縁性セラミックスなどにより形成された絶縁性の管体29が設けられ、マニホールド15内部と連通されている。この管体29は、第2導電性マニホールド15内の燃料ガスまたは酸化剤ガスを排出する役割や、電解質電極接合管18と垂直な方向に一定間隔離れて列設される他のSOFCサブモジュール10の第1導電性マニホールド12(直列接続時)、あるいは、第2導電性マニホールド15(並列接続時)に連通接続する役割を果たすものである。
また、第2導電性マニホールド12の面15bに対向する面15aには、接続孔30が形成され、電解質電極接合管18と垂直な方向に列設される他のSOFCサブモジュール10の第1導電性マニホールド12に設けられた絶縁性の管体24(直列接続時)、あるいは、第2導電性マニホールド15に設けられた絶縁性の管体29(並列接続時)を接続することができるようになっている。
第2導電性マニホールド15の電池部19側の面15cには、電解質電極接合管18の露出部23の位置に対応して挿通孔39が形成されており、露出部23を第2導電性マニホールド15内に挿通することができるようになっている。
第2シール部材16は、マイカガラス、スピネル(MgAl)などのセラミックスなどの材料より形成されており、管接合電極部19の面19aにおける露出部23以外の部分を覆うようにして設けられる。なお、第2シール部材16は、管接合電極部19の熱膨張係数に整合している必要がある。
この第2シール部材16は、第2導電性マニホールド15内の燃料ガスまたは酸化剤ガスが、管接合電極部19内を通らないようにシールするとともに、管接合電極部19と第2導電性マニホールド15との間で導通しないようにシールする役割を果たす。
集電部材17は、第2導電性マニホールド15の内部に設けられるものであり、第2導電性マニホールド15の内壁面と接触して電気的に接続されるとともに、第2導電性マニホールド15内に貫通された露出部23と接触して電気的に接続されるものである。
集電部材17を形成する具体的な材料としては、電解質電極接合管18が多孔質燃料極20を有する場合には、ニッケルフェルト、ニッケルメッシュなどの通気可能な形態を有する金属を好適に用いることができる。また、電解質電極接合管18が多孔質空気極21を有する場合には、銀や白金などの貴金属メッシュなど、通気可能な形態を有する金属であって、酸化雰囲気下でも導電性が損なわれにくいものを好適に用いることができる。また、LaCrO、LaCoOなどの多孔質導電性セラミックスなどを用いても良い。多孔質導電性セラミックスを用いる場合には、本発明を適用して、銀塩濃度を少なくとも2.5mol/L超として銀粒子を担持させて用いるようにしてもよい。
上記のような構造を有するIT−SOFCに本発明を適用する。その一例として、燃料極支持型のIT−SOFCの単セルに空気極に銀粒子を分散担持させる方法ついて、図4に基づいて説明する。
燃料極支持型の円筒形IT−SOFCの単セルの両端は、燃料極及び電解質に銀粒子が付着するのを防ぐためにテフロン(登録商標)製のテープを巻き付けて保護し、銀塩、表面修飾剤及び還元剤を上述した範囲で添加した水溶液に浸漬する。つまり、銀粒子を分散担持させたくない部分をテフロン(登録商標)製のテープなどを用いてマスクし、銀粒子を分散担持させたい部分のみを水溶液と接触させて選択的に銀粒子を分散担持することができる。ここで、浸漬時間が短すぎると充分に銀粒子を分散担持させることができないので、浸漬時間は20分間以上とすることが好適であり、30分以上とするとより好適である。また、長時間浸漬し続けると、水溶液の底に銀を含む物質が沈殿する可能性があるため、浸漬時間は50分以下とすることが好適である。水溶液の温度は10〜50℃程度とすればよい。浸漬処理終了後は120℃程度の温度で乾燥処理を行う。錯体中の銀イオンは160℃〜200℃の温度域で還元剤と反応して還元される。また、表面修飾剤は600℃〜800℃の温度域において十分に分解する。したがって、IT−SOFC単セルをそのまま作動温度域まで昇温して用いることで、また、モジュールを構成する際の熱処理等により、錯体中の銀イオンの還元と表面修飾剤の分解が十分に起こり、IT−SOFCとして充分な性能が発揮される。
尚、上記の説明では、燃料極支持型の円筒形IT−SOFCの空気極に銀粒子を分散担持させたが、空気極支持型の円筒形IT−SOFCの単セルの両端をテフロン(登録商標)製のテープで巻き付けて保護し、燃料極のみに銀粒子を分散担持させても良い。逆に、外側表面全体をテフロン(登録商標)製のテープで保護して、空気極のみに銀粒子を分散担持させてもよい。また、電解質部分のみをテフロン(登録商標)製のテープで保護して、空気極と燃料極の両方に銀粒子を分散担持させるようにしてもよい。また、集電体の部分のみを露出して銀粒子を分散担持させても良いし、銀塩濃度の範囲を2.5mol/L超〜5mol/L未満として、電極と集電体の双方に銀粒子を同時に担持させるようにしてもよい。この場合には、電極に求められる触媒性能と導電性を高めると同時に集電体の導電性も高めることができる。
また、図19に示すサブモジュールの固体酸化物型燃料電池部11の管接合電極部19に銀粒子を担持させる場合にも、燃料極あるいは空気極が突出している側面をマスクし、銀塩濃度の範囲を2.5mol/L超〜5mol/L未満として、電極と集電体の双方に銀粒子を同時に担持させることで、電極に求められる触媒性能と導電性を高めると同時に集電体の導電性も高めることができる。また、固体電解質層2の外側表面に燃料極あるいは空気極が形成されている場合には、固体電解質層2の外側表面に燃料極あるいは空気極に銀粒子を担持させて、電極に求められる触媒性能と導電性を高めると共に、集電体(電気的接続部材)として機能する管接合電極部19の導電性を高めることができる。しかも、2.5mol/L超〜5mol/L未満の範囲においては、電極や空気極の気孔率の低下を10%以内に抑えることができる。したがって、サブモジュール1個の発電効率を従来よりも大幅に高めることができ、このサブモジュールをさらに集積してモジュール構造を形成することで非常に高い発電効率を有するIT−SOFCモジュールの形成が可能になる。
本発明により多孔質セラミックス電極及び集電体に分散担持させた銀粒子は、作動温度を800℃とした場合にも分散担持状態が充分に維持されると共に、粒径も触媒活性にほとんど影響を与えない程度に充分に維持されることが本発明者等の実験により確認されている。したがって、本発明により銀粒子を分散担持させたことによる効果はIT−SOFCの作動温度域である500〜800℃において長期に亘って維持することが可能となる。
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、本発明では銀粒子の分散担持をIT−SOFC用の多孔質セラミックス電極や集電体に対して行うようにしているが、アルミナやSiといった導電性を有しない多孔質セラミックスに本発明の製造方法を適用し、銀粒子を分散担持させて触媒活性を高めた銀粒子担持多孔質セラミックスを得、酸素を酸素イオンに還元する触媒や、水素を水素イオンに酸化する触媒として用いたり、あるいは銀の抗菌作用を利用した抗菌剤として利用することも可能である。
以下実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
IT−SOFC用空気極材料の代表的な組成の一例として知られているLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.83+δ(以下、LSCFと呼ぶ)により多孔質セラミックス電極を作製し、銀粒子を分散担持させるための条件について検討した。
(1)多孔質セラミックス電極の作製
LSCF粉体(セイミケミカル社製、比表面積4.5m/g、平均粒径2.5μm)に対し、バインダーとしてエチルセルロース(関東化学社製、100cp)を5重量%、造孔材としてPMMAビーズ(積水化成品工業、MB30X−5)を20体積%添加した。次に、この混合材料100gに対して水を20mLの割合で添加し、回転式ボールミルで24時間混合した。ボールミル処理した材料は、乾燥機により約80℃で乾燥させた後、100kgf/cmの圧力で加圧成形して、30mmφ、厚さ4〜10mmのペレット状とした。このペレットを電気炉により1200℃で10時間焼成することにより、約30%の気孔率を有する多孔質セラミックス電極を作製した。
尚、本実施例における「気孔率」とは、以下のように定義される値である。即ち、焼成したペレットの直径をノギスで測定し、厚さをマイクロメーターで測定して、試料の体積を計算する。次に、試料の重さを電子天秤で測定して、試料の体積との関係から、試料密度を計算する。そして、以下に示す数式1により相対密度を計算し、この計算結果を用いて以下に示す数式2により計算される。LSCFの理論密度は6.43g/cmである。
[数式1] (相対密度)=100×(試料密度)/(理論密度)
[数式2] (気孔率)=100−(相対密度)
上記により作製した多孔質セラミックス電極のミクロ構造を走査型電子顕微鏡(日立製 S−4300SE1N)により観察した結果を図5に示す。この多孔質セラミックス電極は、0.2μm程度の粒径を有し、1〜10μm程度の孔径を有していることが確認された。
(2)銀粒子の分散担持条件の検討
上記(1)により作製した多孔質セラミックス電極に対する銀粒子の分散担持条件について、以下の実験により検討した。
銀塩のみを用いて調製した水溶液に多孔質セラミックス電極を浸漬した場合の銀粒子の分散担持状態について検討した。銀塩として硝酸銀(ナカライテスク製、特級)を用い、これを純水(ヤマト科学株式会社Auto Still Model:WA-72)1L当たり2.5mol溶かして2.5mol/Lの硝酸銀水溶液を調整した。この水溶液に、多孔質セラミックス電極を30分間浸漬した後、120℃で乾燥させ、さらに600℃で1時間焼成した。以降の説明では、この試料を「試料A」と呼ぶ。
試料Aのミクロ構造を走査型電子顕微鏡により観察した結果を図6に示す。0.1μm程度の銀粒子が部分的に凝集している状態が確認されたが、銀粒子が多孔質セラミックス電極全体に分散担持されている状態は確認されなかった。
次に、表面修飾剤としてPVPを、還元剤としてエチレングリコールを添加して調製した2.5mol/Lの硝酸銀水溶液に多孔質セラミックス電極を浸漬した場合の銀粒子の分散担持状態について検討した。硝酸銀水溶液に添加したPVP(ナカライテスク製、一級)の量は、硝酸銀1molに対して1.3molとした。また、硝酸銀水溶液に添加したエチレングリコール(ナカライテスク製、一級)の量は硝酸銀1molに対して3molとした。この水溶液に、多孔質セラミックス電極を30分間浸漬した後、120℃で乾燥させ、さらに600℃で1時間焼成した。以降の説明では、この試料を「試料B」と呼ぶ。
試料Bのミクロ構造を走査型電子顕微鏡により観察した結果を図7に示す。銀粒子が多孔質セラミックス電極全体に分散担持されていることが確認された。また、多孔質セラミックス電極に担持されている銀粒子の大部分は粒径が50〜100nmの範囲にあり、さらに、これらの銀粒子同士が繋がって部分的にネットワークが形成されていることが確認された。
次に、表面修飾剤としてクエン酸を、還元剤としてエチレングリコールを併用して調製した銀塩水溶液に多孔質セラミックス電極を浸漬した場合の銀粒子の分散担持状態について検討した。硝酸銀水溶液に添加したクエン酸(関東科学製)の量は、硝酸銀1molに対して1.3molとした。また、硝酸銀水溶液に添加したエチレングリコールの量は硝酸銀1molに対して3molとした。この水溶液に、多孔質セラミックス電極を30分間浸漬した後、120℃で乾燥させ、さらに600℃で1時間焼成した。以降の説明では、この試料を「試料C」と呼ぶ。
試料Cのミクロ構造を走査型電子顕微鏡により観察した結果を図8(a)及び図8(b)に示す。図8(b)に示されるように、銀粒子が多孔質セラミックス電極全体に分散担持されていることが確認された。また、多孔質セラミックス電極に担持されている銀粒子の大部分は粒径が50nm程度であり、表面修飾剤としてPVPを用いた場合よりも銀粒子の粒径が小さくなることが確認された。尚、銀粒子同士の繋がりはほとんど見られず、ネットワークはほとんど形成されていなかった。
以上の結果から、銀粒子を多孔質セラミックス電極に分散担持させるためには、銀塩水溶液に表面修飾剤と還元剤とを添加する必要があることが明らかとなった。また、硝酸銀等の銀塩濃度を2.5mol/L、表面修飾剤の濃度を銀塩1molに対して1.3mol、還元剤の濃度を銀塩1molに対して3molとした水溶液を用いることで、粒径50〜100nmの銀ナノ粒子を多孔質セラミックス電極に分散担持させることが可能であることが明らかとなった。さらに、表面修飾剤であるPVPとクエン酸を比較した場合、クエン酸を用いた方が銀粒子の粒径を小さくでき、PVPを用いた方が銀粒子同士を繋げてネットワークを形成させ易いことが明らかとなった。
(3)銀塩水溶液の最適濃度の検討
最適な銀塩水溶液の濃度範囲について、銀塩として硝酸銀を用いて以下の実験により検討した。
1mol/Lの硝酸銀濃度について検討した。硝酸銀を純水1L当たり1mol溶かして硝酸銀水溶液を調整した。硝酸銀水溶液に添加したクエン酸の量は、硝酸銀1molに対して1.3molとした。また、硝酸銀水溶液に添加したエチレングリコールの量は硝酸銀1molに対して3molとした。この水溶液に、上記(1)で作製した多孔質セラミックス電極を30分間浸漬した後、120℃で乾燥させ、さらに600℃で1時間焼成した。
この試料のミクロ構造を走査型電子顕微鏡により観察した結果を図9に示す。この結果からは、多孔質セラミックス電極中に分散担持されている銀粒子を確認することができなかった。したがって、多孔質セラミックス電極に銀粒子を分散担持させる場合、硝酸銀水溶液の濃度は1mol/L超とすることが好ましいことが明らかとなった。
次に、5mol/Lの硝酸銀濃度について検討した。硝酸銀を純水1L当たり5mol溶かして硝酸銀水溶液を調整した。硝酸銀水溶液に添加したクエン酸の量は、硝酸銀1molに対して1.3molとした。また、硝酸銀水溶液に添加したエチレングリコールの量は硝酸銀1molに対して3molとした。この水溶液に、上記(1)で作製した多孔質セラミックス電極を30分間浸漬した後、120℃で乾燥させ、さらに600℃で1時間焼成した。
この試料のミクロ構造を走査型電子顕微鏡により観察した結果を図10に示す。多孔質セラミックス電極に担持されている銀粒子の大部分は粒径が2μm程度の大きさであることが確認された。このように大きな銀粒子が担持されても、多孔質セラミックス電極の触媒活性を高める効果は期待できないと考えられる。したがって、多孔質セラミックス電極中に銀粒子を分散担持させる場合、触媒活性を充分に高める観点からは、硝酸銀水溶液の濃度は5mol/L未満とすることが好ましいことが明らかとなった。
以上の結果から、多孔質セラミックス電極に銀粒子を分散担持させてその性能を高めるためには、銀塩の濃度を1mol/L超〜5mol/L未満とすることが好ましいことが明らかとなった。
以上、上記(2)並びに(3)の実験結果から、銀塩の濃度は1mol/L超〜5mol/L未満とすることが好ましく、多孔質セラミックス電極に銀粒子、特に粒径100nm以下の銀ナノ粒子を分散担持させて、確実に触媒活性を向上させる観点からは、2.5mol/L近傍の濃度範囲、例えば1.5mol/L超〜4mol/L未満とすることがより好ましく、2mol/L超〜3mol/L未満とすることがさらに好ましいと考えられる。ここで、触媒活性だけでなく、導電率も向上させて多孔質セラミックス電極の性能をさらに高めたい場合には、銀粒子同士が繋がってネットワークが形成される銀塩濃度とすることが好ましい。具体的には、2.5mol/L超〜5mol/L未満とすることが好ましい。
表面修飾剤の濃度は、銀塩1molに対して1.3mol以上となる濃度とすれば銀粒子を多孔質セラミックス電極に分散担持させることができる。しかしながら、理論的には、少なくとも銀イオン1molと結合して錯体1molを形成しうる濃度の表面修飾剤を用いればよいと考えられる。したがって、表面修飾剤としてクエン酸を用いる場合、銀塩1molに対して0.5mol以上となる濃度にすればよく、1mol以上とすることがより好ましく、1.3mol以上とすることがさらに好ましい。また、表面修飾剤としてPVPを用いる場合、銀塩1molに対して0.5mol以上となる濃度にすればよく、1mol以上とすることがより好ましく、1.3mol以上とすることがさらに好ましい。
表面修飾剤濃度の上限値は、純水に対する表面修飾剤の最大溶解量により規定される。例えばクエン酸の場合には、純水1Lに対して最大8.7mol溶解することが確認されている。また、PVPの場合には、純水1Lに対して最大5mol溶解することが確認されている。したがって、表面修飾剤としてクエン酸を用いた場合、表面修飾剤濃度の上限値は8.7mol/Lとなる。また、表面修飾剤としてPVPを用いた場合、表面修飾剤濃度の上限値は5mol/Lとなる。しかしながら、銀粒子の分散に関与する表面修飾剤の量は、水溶液に存在している銀イオンの量に規定されることから、銀粒子の分散に関与する量を超える量の表面修飾剤を用いるのは無駄である。上記の結果から、表面修飾剤の濃度を銀塩1molに対して1.3molとなる濃度にすれば、銀粒子を多孔質セラミックス電極に分散担持させることが可能であったことから、例えば、銀塩の濃度が2.5mol/Lの場合、表面修飾剤の濃度を3.2mol/Lとすれば、銀粒子を多孔質セラミックス電極に確実に分散担持させることができると考えられる。
還元剤の濃度は、銀塩1molに対して3mol以上となる濃度とすれば銀粒子を多孔質セラミックス電極に分散担持させることができる。しかしながら、理論的には、表面修飾剤と錯体を形成している銀イオンの全量を還元しうる濃度の還元剤濃度とすればよいと考えられる。例えば還元剤としてエチレングリコールを用いる場合、銀イオン1molを還元するために必要なエチレングリコールの量は1molであることから、エチレングリコールの濃度は銀塩と同濃度以上とすればよく、好ましくは銀塩1molに対してエチレングリコール2mol以上、さらに好ましくは銀塩1molに対してエチレングリコール3mol以上である。
還元剤濃度の上限値もまた、純水に対する還元剤の最大溶解量により規定されるが、還元反応に関与する還元剤の量は水溶液に存在している銀イオンの量に規定されることから、還元反応に関与する量を超える量の還元剤を用いるのは無駄である。上記の結果から、還元剤としてエチレングリコールを用いた場合、エチレングリコールの濃度を銀塩1molに対して3molとなる濃度にすれば、銀粒子を多孔質セラミックス電極に分散担持させることが可能であったことから、例えば、銀塩の濃度が2.5mol/Lの場合、表面修飾剤の濃度を7.5mol/Lとすれば、銀粒子を多孔質セラミックス電極に確実に分散担持させることができると考えられる。
(4)高温焼成後の銀粒子の分散状態の検討
上記(2)で得られた試料A、試料B及び試料Cを、さらに800℃で1時間焼成して各試料のミクロ構造を走査型電子顕微鏡により観察し、IT−SOFCの動作温度域の上限付近における銀粒子の分散担持状態について検討した。
800℃で1時間焼成した試料Aのミクロ構造を走査型電子顕微鏡により観察した結果を図11に示す。多孔質セラミックス電極表面全体が銀粒子に覆われて、表面凹凸が観察され難くなったため、ピントを合わせることが困難であり、焦点のぼけた写真となった。
800℃で1時間焼成した試料Bのミクロ構造を走査型電子顕微鏡により観察した結果を図12に示す。800℃で1時間焼成する前と比べて銀粒子の若干の粒成長が確認されたものの、銀粒子の粒径は200nm以下に維持されており、多孔質セラミックス電極への均一分散担持状態が十分に維持されていることが確認された。尚、銀粒子の形状は球形ではないことが確認された。
800℃で1時間焼成した試料Cのミクロ構造を走査型電子顕微鏡により観察した結果を図13に示す。800℃で1時間焼成する前と比べて銀粒子の若干の粒成長が確認されたものの、200nm以下の粒径が維持され、均一分散状態が十分に維持されていることが確認された。尚、銀粒子の形状は丸い形状であった。
以上の結果から、800℃以下の動作温度であれば、銀粒子の凝集が生じることなく、銀粒子を分散担持させたことによる多孔質セラミックス電極の電極特性向上効果(触媒活性の向上、導電率の向上)を維持できることが明らかとなった。
(5)IT−SOFC単セルの出力評価
スカンジア安定化ジルコニアを電解質としたIT−SOFC単セルを作製し、この単セルの空気極に銀粒子を分散担持させて、単セルの出力を評価した。
燃料極チューブは以下の手順により作製した。NiO(住友金属鉱山社製、NiO−F)3kgに対して、(ZrO89(Sc(CeO01(第一稀元素社製、比表面積12m/g、以下ScSZと呼ぶ)を1.537kg混合した。この混合材料に、バインダーとしてエチルセルロース(ユケン工業製YB−132A)を680g、造孔材としてグラファイト(関東化学株式会社 平均粒径200μm)を454g添加し、これに純水を1.9L加えて1時間程度混合機(ダルトン製、5DMV−01−r)により混合した。混合後、3本ロール(ノリタケカンパニーリミテッド製NR−42A)で混錬し、均質な粘土を得た。この粘土を押し出し成型機(石川時鉄工所製、EP−3D)により、外径約2mm、内径約1.6mm程度の金型で押し出し、乾燥して燃料極チューブを得た。
次に、ディップコーターにより燃料極チューブの外側表面にScSZスラリーをコーティングした。スラリーは、ScSZ(比表面積10m/g)の粉末40gに対し、有機系溶剤(イソプロパノールとトルエンを8:2の体積比で混合した混合溶液)を40mL混合し、さらにバインダーとしてエスレック(積水化学社製)を2g、可塑剤はフタル酸(関東化学製)を0.6g、分散剤ノニオン(日本油脂社製)を0.3g入れて、回転式ボールミルで混合して調整した。ScSZスラリーが外側表面にコーティングされた燃料極チューブは、乾燥した後、1450℃で10時間焼成した。
ScSZ表面には、Ce0.8Gd0.21.95(セイミケミカル社製、比表面積10m/g、以下CGOと呼ぶ。)を1000℃、2時間で仮焼きし、スラリーにしをディップコーターによりコーティングして中間層を形成した。スラリーは、CGOの粉末40gに対し、有機系溶剤(イソプロパノールとトルエンを8:2の体積比で混合した混合溶液)を40mL混合し、さらにバインダーとしてエスレック(積水化学社製)を2g、可塑剤はフタル酸(関東化学製)を0.6g、分散剤ノニオン(日本油脂社製)を0.3g入れて、回転式ボールミルで混合して調整した。CGOスラリーがScSZの表面にコーティングされた燃料極チューブは、乾燥した後、1200℃で10時間焼成した。
CGO表面には、LSCF+CGOスラリーをディップコーターによりコーティングして空気極を形成した。スラリーは、LSCF(比表面積12m/g)の粉末26.8gとCGO(比表面積39m/g)の粉末13.2gに対し、有機系溶剤(イソプロパノールとトルエンを8:2の体積比で混合した混合溶液)を40mL混合し、さらにバインダーとして エスレック(積水化学社製)を2g、可塑剤はフタル酸(関東化学製)を0.6g、分散剤ノニオン(日本油脂社製)を0.3g入れて、回転式ボールミルで混合して調整した。空気極がCGOの表面にコーティングされた燃料極チューブは、乾燥した後、1000℃で1時間焼き付けた。
作製した単セルの形状は、外径約1.85mm、内径1.5mm、発電部の長さ20mm、発電面積1.2cmとした。以降の説明では、この単セルを「単セルA」と呼ぶ。
作製した単セルの発電性能を評価した。燃料極側の集電は、単セル端部の燃料極露出面に白金線を巻き付け、これを銀ペーストにより固定して行った。空気極側の集電は、空気極に白金メッシュを巻き付け、これを銀ペーストにより固定すると共に白金線を巻き付けて行った。単セルの両端は、燃料ガスを供給するアルミナ管とセラミック接着剤(アロンセラミックE、C、CC)で固定した。電流はカレントパルスジェネレータ(日厚計測NCPG−105S(5A))で流し、電圧測定にはエレクトロメータ(北斗電工 HC−104(入力インピーダンス1011W))を用いた。
単セルAの発電特性を550〜650℃の温度範囲で評価した。結果を図14に示す。尚、図14において、(a)は電流密度に対する電圧値を示す図であり、(b)は電流密度に対する出力密度を示す図である。最も高い出力は、650℃では0.54W/cm、600℃で0.31W/cmであった。
次に、単セルAの空気極に銀粒子を分散担持させて評価した。2.5mol/Lの硝酸銀水溶液に、硝酸銀1molに対してクエン酸を1.3mol、エチレングリコールを3mol溶かした。この水溶液に単セルAを30分間浸漬した。尚、単セルAは、図4に示すように、両端をテフロン(登録商標)製のテープでカバーして、硝酸銀水溶液が空気極以外の領域と接触するのを防いだ。浸漬後の試料は120℃で乾燥させた後、600℃で1時間焼成した。以降の説明では、この単セルを「単セルB」と呼ぶ。
単セルBの発電特性を500〜650℃の温度範囲で評価した。結果を図15に示す。図15において、(a)は電流密度に対する電圧値を示す図であり、(b)は電流密度に対する出力密度を示す図である。650℃では、1.06W/cm(1.43A/cm、0.74V)の出力密度が得られた。また、600℃では0.98W/cm(1.78A/cm、0.55V)、550℃では0.49W/cm(1.44A/cm、0.34V)の出力密度が得られた。これらの出力密度は、単セルAと比較して大幅に改善されていた。したがって、銀粒子を空気極中に分散担持させることにより、出力密度を高めて、発電効率を上昇させることが可能であることが明らかとなった。
次に、表面修飾剤と還元剤とを添加していない硝酸銀水溶液を用いて、空気極に銀粒子を担持させた場合について検討した。2.5mol/Lの硝酸銀水溶液に、単セルAを30分間浸漬した。尚、単セルAは、図4に示すように、両端をテフロン(登録商標)製のテープでカバーして、水溶液が空気極以外の領域と接触するのを防いだ。浸漬後の試料は120℃で乾燥させた後、600℃で1時間焼成した。以降の説明では、この単セルを「単セルC」と呼ぶ。
単セルCの発電特性を550〜650℃の温度範囲で評価した。結果を図16に示す。図16において、(a)は電流密度に対する電圧値を示す図であり、(b)は電流密度に対する出力密度を示す図である。650℃では、0.9W/cm(1.9A/cm、0.47V)の出力密度が得られた。また、600℃では0.6W/cm(1.75A/cm、0.34V)、550℃では0.39W/cm (1.5A/cm、0.26V)の出力密度が得られた。これらの出力密度は、単セルAと比較すれば改善されているものの、単セルBと比較すると極めて低かった。したがって、表面修飾剤と還元剤とを添加した銀塩水溶液を用いて空気極に銀粒子を分散担持させることが、出力密度を高めて発電効率を高める観点からは好ましいことが明らかとなった。
(6)元素分布測定
上記(5)で作製した単セルBの銀(Ag)、セリウム(Ce)、ランタン(La)、ストロンチウム(Sr)及びジルコニウム(Zr)の元素分布をEDX(日立製、S-3500H)により測定した。結果を図17に示す。この結果から、銀が空気極中に均一に分散していることが確認された。したがって、本発明により得られる銀粒子担持多孔質セラミックス電極及び集電体は、その内部にまで均一に銀粒子が分散担持されることが明らかとなった。
以上の結果から、IT−SOFC用空気極に銀粒子を分散担持させることで、IT−SOFC単セルの出力密度を向上させられることが明らかとなった。この効果は、酸素を酸素イオンに変換することができる銀粒子の触媒活性と、銀による導電率の向上に起因するものと考えられる。銀粒子は水素を酸化させる触媒活性も有しているので、IT−SOFC用燃料極に銀粒子を分散担持させた場合にも同様の効果が期待できる。
(実施例2)
LSCFにより多孔質セラミックス集電体を作製し、多孔質セラミックス集電体に銀粒子を分散担持させて、当該集電体の性能を高める条件について検討した。
実施例1で空気極材料として使用したLSCFを主原料として多孔質セラミックス集電体を作製した。LSCF粉体に対して、バインダーとしてエチルセルロース(関東化学社製、100cp)を5重量%、造孔材としてPMMAビーズ(積水化成品工業 MB30X−5)を50体積%添加し、混合した。次に、この混合材料100gに対して、水を20mLの割合で添加し、回転式ボールミルで24時間混合した。ボールミル処理した材料は、乾燥機により約80℃で乾燥させた後、100kgf/cmの圧力で加圧成形して、30mmφ、厚さ4〜10mmのペレット状とした。このペレットを電気炉により1200℃で10時間焼成することにより、約60%の気孔率を有する多孔質セラミックス集電体を作製した。
この多孔質セラミックス集電体を、以下の(a)〜(d)の濃度の硝酸銀水溶液にそれぞれ30分間浸漬した。浸漬後の試料は120℃で乾燥させた後、600℃で1時間焼成した。そして、これらの試料の導電率をカレントパルスジェネレータで電流を流し、エレクトロメータで電圧を測定し、評価した。尚、全ての水溶液に、硝酸銀1molに対してクエン酸を1.3mol、エチレングリコールを3mol添加した。
(a)1.0mol/L
(b)2.5mol/L
(c)5.0mol/L
(d)7.0mol/L
各試料の導電率を測定した結果を図18に示す。測定温度は450℃とした。水溶液の硝酸銀濃度が2.5mol/L未満の場合には導電率の上昇がほとんど見られなかったが、2.5mol/Lから5.0mol/Lまでは導電率が著しく上昇し、5mol/Lから7mol/Lでは若干の導電率の上昇が見られた。
多孔質セラミックス集電体に求められる性能の一つは、高導電性である。上記結果を考慮すると、多孔質セラミックス集電体中に銀粒子を分散させて導電率を上昇させるための好ましい硝酸銀の濃度条件、つまり、銀イオンの濃度条件は、少なくとも2.5mol/Lを超える濃度であれば良い。しかしながら、銀イオン濃度を高めすぎるとコスト高になると共に、多孔質セラミックス集電体に要求されるガス流通性を阻害する可能性が少なからず生じる。したがって、銀イオン濃度に対する導電性上昇効果を考慮すると、より好ましくは2.5mol/L超〜7mol/L、さらに好ましくは2.5mol/L超〜5mol/Lであると判断される。
表面修飾剤の濃度は、実施例1で説明した濃度範囲と同じ濃度範囲とすることが好ましいと判断される。
還元剤の濃度も、実施例1で説明した濃度範囲と同じ濃度範囲とすることが好ましいと判断される。
(実施例3)
電解質をセリウム酸化物系固溶体としたIT−SOFC単セルを作製し、この単セルの空気極に銀粒子を分散担持させて、単セルの出力を評価した。
燃料極チューブは以下の手順により作製した。NiO(住友金属鉱山社製、NiO−F)0.5kgに対して、Ce0.9Gd0.11.95(セイミケミカル社製、比表面積10m/g、以下CGOと呼ぶ。)を0.319kg混合した。この混合材料に、バインダーとしてエチルセルロース(ユケン工業製YB−132A)を680g、造孔材としてグラファイト(関東化学株式会社 平均粒径200μm)を454g添加し、これに純水を1.9L加えて1時間程度混合機(ダルトン製、5DMV−01−r)により混合した。混合後、3本ロール(ノリタケカンパニーリミテッド製NR−42A)で混錬し、均質な粘土を得た。この粘土を押し出し成型機(石川時鉄工所製、EP−3D)により、外径約2mm、内径約1.6mm程度の金型で押し出し、乾燥して燃料極チューブを得た。
次に、ディップコーターにより燃料極チューブの外側表面にCGOスラリーをコーティングした。スラリーは、CGO(比表面積10m/g)の粉末40gに対し、有機系溶剤(イソプロパノールとトルエンを8:2の体積比で混合した混合溶液)を40mL混合し、さらにバインダーとしてエスレック(積水化学社製)を2g、可塑剤はフタル酸(関東化学製)を0.6g、分散剤ノニオン(日本油脂社製)を0.3g入れて、回転式ボールミルで混合して調整した。CGOスラリーが外側表面にコーティングされた燃料極チューブは、乾燥した後、1450℃で10時間焼成した。
CGO表面には、LSCF+CGOスラリーをディップコーターによりコーティングして空気極を形成した。スラリーは、LSCF(比表面積12m/g)の粉末26.8gとCGO(比表面積39m/g)の粉末13.2gに対し、有機系溶剤(イソプロパノールとトルエンを8:2の体積比で混合した混合溶液)を40mL混合し、さらにバインダーとしてエスレック(積水化学社製)を2g、可塑剤はフタル酸(関東化学製)を0.6g、分散剤ノニオン(日本油脂社製)を0.3g入れて、回転式ボールミルで混合して調整した。空気極がCGOの表面にコーティングされた燃料極チューブは、乾燥した後、1000℃で1時間焼き付けた。
作製した単セルの形状は、外径約1.85mm、内径1.5mm、発電部の長さ20mm、発電面積1.2cmとした。以降の説明では、この単セルを「単セルD」と呼ぶ。
作製した単セルDの発電性能を、実施例1の(5)と同様の方法で評価した。但し、評価する温度範囲は450℃〜550℃とした。結果を図23に示す。図23において、■は550℃における評価結果を示し、●は500℃における評価結果を示し、▲は450℃における評価結果を示す。最も高い出力は、550℃では0.47W/cm、500℃で0.11W/cmであった。
次に、単セルDの空気極に銀粒子を分散担持させて評価した。2.5mol/Lの硝酸銀水溶液に、硝酸銀1molに対してクエン酸を1.3mol、エチレングリコールを3mol溶かした。この水溶液に単セルCを30分間浸漬した。尚、単セルCは、図4に示すように、両端をテフロン(登録商標)製のテープでカバーして、硝酸銀水溶液が空気極以外の領域と接触するのを防いだ。浸漬後の試料は120℃で乾燥させた後、600℃で1時間焼成した。以降の説明では、この単セルを「単セルE」と呼ぶ。
単セルEの発電特性を450℃〜550℃の温度範囲で評価した。結果を図24に示す。図24において、■は550℃における評価結果を示し、●は500℃における評価結果を示し、▲は450℃における評価結果を示す。550℃では、1.06W/cm(2.39A/cm、0.444V)の出力密度が得られた。また、500℃では0.82W/cm(2.23A/cm、0.368V)、450℃では0.40W/cm(1.27A/cm、0.315V)の出力密度が得られた。これらの出力密度は、単セルDと比較して大幅に改善されていた。したがって、銀粒子を空気極中に分散担持させることにより、出力密度を高めて、発電効率を上昇させることが可能であることが明らかとなった。
以上、実施例3と上記実施例1の結果から、500〜800℃で作動させることを目的とするIT−SOFCの発電効率を、本発明により十分に高めることができることが明らかとなった。
(実施例4)
実施例2で行った導電率評価試験について、測定温度を500℃、550℃、600℃及び650℃とした場合の導電率の評価結果を追加した図を図25に示す。図25において、●が450℃における評価結果を示し、■が500℃における評価結果を示し、▲が550℃における評価結果を示し、◆が600℃における評価結果を示し、○が650℃における評価結果を示す。
測定温度の上昇に伴い、導電率が低下する傾向が見られた。また、測定温度が500℃以上になると、硝酸銀濃度が5mol/Lから7mol/Lでは導電率の低下が見られた。これに対し、450℃では、硝酸銀濃度が5mol/Lから7mol/Lでは導電率の増加が見られた。
次に、導電率評価試験に用いた試料について、銀の単位体積当たりの担持量と気孔率を調べた結果を図26に示す。図26において、●は硝酸銀濃度に対する気孔率を示し、■は硝酸銀濃度に対する銀の単位体積当たりの担持量を示している。また、図26における銀の単位体積当たりの担持量は、銀の担持前後の試料重量変化を測定し、増加した重量を全て銀と仮定して得られた値である。
硝酸銀濃度の増加に伴い、銀の担持密度は増加する傾向が見られたが、気孔率は低下する傾向が見られ、硝酸銀濃度を7mol/Lとした時には、銀粒子を担持していない場合と比較して気孔率が10%程度低下することが確認された。
多孔質セラミックス集電体に求められる性能の一つが高導電性であることは上述の通りであるが、多孔質セラミックス集電体には、高導電性に加えてある一定の気孔率(例えば、30%以上)を有することがさらに必要とされる。以上の結果から勘案すると、銀イオンの濃度条件は、少なくとも2.5mol/Lを超える濃度とすることで、導電性を高める効果が得られる。また、銀イオンの濃度条件の上限値については、7mol/Lであれば、導電率を高める効果が得られると共に、気孔率についても銀粒子を担持しない場合より10%低下する程度で済む。ここで、銀イオンの濃度条件については、2.5mol/L超〜5mol/Lとすることがより好ましく、5mol%とすることがさらに好ましい。この場合には、導電率の向上効果が確実に見込めると共に、銀粒子の担持による気孔率の低下も10%以内に抑えることが可能となる。
空気極支持型構造のIT−SOFC単セルの一例を示す図である。 空気極支持型構造のIT−SOFC単セルを集積した場合の一例を示す図である。 燃料極支持型構造のIT−SOFC単セルを集積した場合の一例を示す図である。 銀粒子担持多孔質セラミックス電極を製造する方法の一例を示す図である。 LaSrCoFeにより形成された多孔質セラミックス電極のミクロ構造の電子顕微鏡写真を示す図である。 表面修飾剤と還元剤とを添加していない2.5mol/Lの硝酸銀水溶液を用いて銀粒子を担持させたLaSrCoFe多孔質セラミックス電極のミクロ構造の電子顕微鏡写真を示す図である。 表面修飾剤PVPと還元剤エチレングリコールとを添加した2.5mol/Lの硝酸銀水溶液を用いて銀粒子を担持させたLaSrCoFe多孔質セラミックス電極のミクロ構造の電子顕微鏡写真を示す図である。 表面修飾剤クエン酸と還元剤エチレングリコールとを添加した2.5mol/Lの硝酸銀水溶液を用いて銀粒子を担持させたLaSrCoFe多孔質セラミックス電極のミクロ構造の電子顕微鏡写真を示す図である。 表面修飾剤クエン酸と還元剤エチレングリコールとを添加した1mol/Lの硝酸銀水溶液を用いて銀粒子を担持させたLaSrCoFe多孔質セラミックス電極のミクロ構造の電子顕微鏡写真を示す図である。 表面修飾剤クエン酸と還元剤エチレングリコールとを添加した5mol/Lの硝酸銀水溶液を用いて銀粒子を担持させたLaSrCoFe多孔質セラミックス電極のミクロ構造の電子顕微鏡写真を示す図である。 表面修飾剤と還元剤とを添加していない2.5mol/Lの硝酸銀水溶液を用いて銀粒子を担持させたLaSrCoFe多孔質セラミックス電極を800℃、1時間で焼成した後のミクロ構造のSEM写真を示す図である。 表面修飾剤PVPと還元剤エチレングリコールとを添加した2.5mol/Lの硝酸銀水溶液を用いて銀粒子を担持させたLaSrCoFe多孔質セラミックス電極を800℃、1時間で焼成した後のミクロ構造のSEM写真を示す図である。 表面修飾剤クエン酸と還元剤エチレングリコールとを添加した2.5mol/Lの硝酸銀水溶液を用いて銀粒子を担持させたLaSrCoFe多孔質セラミックス電極を800℃、1時間で焼成した後のミクロ構造のSEM写真を示す図である。 空気極に銀粒子を担持させていないIT−SOFC単セル(電解質:ScSZ)の発電性能測定結果を示す図である。 表面修飾剤クエン酸と還元剤エチレングリコールとを添加した2.5mol/Lの硝酸銀水溶液を用いて空気極に銀粒子を担持させたIT−SOFC単セル(電解質:ScSZ)の発電性能測定結果を示す図である。 表面修飾剤と還元剤とを添加していない2.5mol/Lの硝酸銀水溶液を用いて空気極に銀粒子を担持させたIT−SOFC単セル(電解質:ScSZ)の発電性能測定結果を示す図である。 空気極に銀粒子を分散担持させたIT−SOFC単セル(電解質:ScSZ)のミクロ構造と元素分布(Ag、Ce、La、Sr、Zr)を示す図である。 表面修飾剤クエン酸と還元剤エチレングリコールとを添加した各種濃度の硝酸銀水溶液を用いて多孔質セラミックス集電体に銀粒子を分散担持させた際の銀イオン濃度に対する導電率の変化を示す図である。 インターコネクタを設けることができないIT−SOFC単セルを集積してサブモジュール化した例を示す分解斜視図である。 図19のサブモジュールを組み立てたときの外観斜視図である。 図19のサブモジュールを構成する単セルの拡大図である。 図19のサブモジュールを集積したモジュール構造を示す図である。 空気極に銀粒子を担持させていないIT−SOFC単セル(電解質:CGO)の発電性能測定結果を示す図である。 表面修飾剤クエン酸と還元剤エチレングリコールとを添加した2.5mol/Lの硝酸銀水溶液を用いて空気極に銀粒子を担持させたIT−SOFC単セル(電解質:CGO)の発電性能測定結果を示す図である。 表面修飾剤クエン酸と還元剤エチレングリコールとを添加した各種濃度の硝酸銀水溶液を用いて多孔質セラミックス集電体に銀粒子を分散担持させた際の銀イオン濃度に対する導電率の変化を、測定温度毎に示す図である。 表面修飾剤クエン酸と還元剤エチレングリコールとを添加した各種濃度の硝酸銀水溶液を用いて多孔質セラミックス集電体に銀粒子を分散担持させた際の銀イオン濃度に対する気孔率及び単位体積当たりの銀担持量を示す図である。
符号の説明
1 IT−SOFC単セル
3 空気極
4 燃料極
6 多孔質セラミックス集電体

Claims (7)

  1. 銀塩と、銀イオンと結合して錯体を生成すると共にセラミックス表面との結合能を有する水溶性の表面修飾剤と、前記銀イオンを還元する水溶性の還元剤とを少なくとも含み、前記銀塩の濃度は1mol/L超〜5mol/L未満とし、前記表面修飾剤の濃度は少なくとも前記銀イオンの全量と反応して前記錯体を生成し得る濃度とし、前記還元剤の濃度は少なくとも前記銀イオンの全量を還元し得る濃度とした水系溶剤に、中温作動用固体酸化物型燃料電池用の多孔質セラミックス電極を浸漬する工程を少なくとも含むことを特徴とする銀粒子担持多孔質セラミックス電極の製造方法。
  2. 前記表面修飾剤は、クエン酸、イソクエン酸、プロパ−1−エン−1,2,3−トリカルボン酸及びポリビニルピロリドンからなる群より選ばれた1種または2種以上であり、前記表面修飾剤の濃度は前記銀塩1molに対して少なくとも0.5molとなる濃度である請求項1に記載の銀粒子担持多孔質セラミックス電極の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の製造方法により製造された銀粒子担持多孔質セラミックス電極を空気極及び燃料極のいずれか一方あるいは両方として含む中温作動用固体酸化物型燃料電池。
  4. 銀塩と、銀イオンと結合して錯体を生成すると共にセラミックス表面との結合能を有する水溶性の表面修飾剤と、前記銀イオンを還元する水溶性の還元剤とを少なくとも含み、前記銀塩の濃度は少なくとも2.5mol/L超とし、前記表面修飾剤の濃度は少なくとも前記銀イオンの全量と反応して前記錯体を生成し得る濃度とし、前記還元剤の濃度は少なくとも前記銀イオンの全量を還元し得る濃度とした水系溶剤に、中温作動用固体酸化物型燃料電池用の多孔質セラミックス集電体を浸漬する工程を少なくとも含むことを特徴とする銀粒子担持多孔質セラミックス集電体の製造方法。
  5. 前記表面修飾剤は、クエン酸、イソクエン酸、プロパ−1−エン−1,2,3−トリカルボン酸及びポリビニルピロリドンからなる群より選ばれた1種または2種以上であり、前記表面修飾剤の濃度は前記銀塩1molに対して少なくとも0.5molとなる濃度である請求項4に記載の銀粒子担持多孔質セラミックス集電体の製造方法。
  6. 請求項4または5に記載の製造方法により製造された銀粒子担持多孔質セラミックス集電体を含む中温作動用固体酸化物型燃料電池。
  7. 請求項1または2に記載の製造方法により製造された多孔質セラミックス電極を空気極及び燃料極のいずれか一方あるいは両方としてさらに含むものである請求項6に記載の中温作動用固体酸化物型燃料電池。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN117577854A (zh) * 2024-01-16 2024-02-20 中国第一汽车股份有限公司 全固态电池硅基负极及其制备方法、全固态电池

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