JP2008156992A - 掘削装置および基礎杭施工時の拡大翼状態判定装置 - Google Patents

掘削装置および基礎杭施工時の拡大翼状態判定装置 Download PDF

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Abstract

【課題】機械式の拡大翼であったとしても、地上部において、拡大翼の拡径を簡便且つ確実に確認することが可能にする。
【解決手段】掘削ロッド1の先端部に対し拡径可能に支持される拡大翼4を備える基礎杭施工用の掘削装置による掘削で使用される。上記拡大翼4が拡径・縮径する際の可動部、若しくは掘削ロッド1の先端部に取り付けられて、拡大翼4の少なくとも縮径状態から拡径状態への変化を検出する傾斜センサ20と、その傾斜センサ20から信号を入力すると、掘削ロッド1を振動させて、弾性波として信号を送信する発信装置20と、地上部において、掘削ロッド1を伝搬してきた弾性波を検出する受信装置とを備える。
【選択図】 図1

Description

本発明は、基礎杭用の掘削穴の途中や下部に拡大掘削部を形成する掘削作業で使用される掘削装置、および基礎杭施工時の拡大翼状態判定装置に関する。
基礎杭の施工方法は、中堀方式(インサイドボーリング方式)やプレボーリング方式などのいくつかの方式があるが、いずれも最下部の掘削ロッドの先端に掘削ビットを取付け、また、掘削の進捗に合わせて掘削ロッドを順次継ぎ足しながら、地盤を所定の深度(支持層)まで、土砂を汚泥化しつつ掘削して掘削穴を構築する。更に、杭の支持力を大きくするために、掘削ロッドの下部に支持され且つ拡大掘削用刃物を有する拡大翼を、上記支持層で拡翼(拡径)して掘削することで拡大根固め球根部用の拡大掘削部を形成する。
なお、上記拡大掘削部においては、噴射した根固め液(セメントミルク)と掘削土砂とを混合攪拌することで拡大根固め球根部を造築する。
上記拡大翼については、例えば、特許文献1に記載のような、回転方向を変えることで拡大翼を機械的に拡径・縮径可能な機械式の機構のものや、特許文献2に記載のように、油圧シリンダ装置で拡大翼を拡径・縮径可能な油圧式の機構のものがある。
一方、拡大根固め球根部の施工状態を検知するものとしては特許文献3に記載のような技術がある。この従来技術では、段落番号0021や図1のように、深度計にて拡大翼の到達位置を計測し、拡大翼の開閉量を開閉センサで計測し、流量計にてセメントミルクの流量を計測し、その各センサからのアナログデータを、AD変換器でデジタルデータに変換した後にデータ処理装置でのデータ処理によって施工状況画像を作成し、その画像を無線によって杭打ち施工機に送信して確認するようになっている。
特開2003−35083号公報 特開2001−73664号公報 特開2005−240284号公報
拡大翼の拡翼(拡径)を可能とするための技術については上述のように種々の先行技術があるが、実際に拡大根固め球根部の状態は直接、目視にて確認できない。
上記機械式の拡大翼の場合には、拡翼する際の二重管構造の軸の伸縮に応じた掘削ロッドの変動を地上部で検知することで、拡大翼の拡翼を間接的に確認することが可能である。しかし、直接に拡翼を確認しているわけではなく、拡翼に伴う地上部での掘削ロッドの変動によって間接的に判断するものであるので、確認の正確性に問題がある場合もある。
また、油圧式機構の拡大翼の場合には、油圧によって拡大翼の拡翼量を判定する方法が想定されるが、検出する油圧は、拡大掘削部での土圧や拡大翼の受ける外力(特に岩などの存在によって異なる。)によって一定でないため、油圧の値によって拡大翼の開度を判定しようとすると、その判定精度が良くない。
また、特許文献3では、特許文献3の図1に記載のように、掘削機械上部に開閉センサ(符号25)が図示されているが、どのように拡大翼の開閉量をアナログデータで検出するのか開示されていない。なお、掘削機械上部に開閉センサがあることから油圧によって判定していると想定される。
ここで、何らかの手段で拡大翼の拡径を検出して、掘削ロッド内に配置した電線を通じて地上部まで信号を送る場合を想定した場合には、ワイヤラインを掘削装置の掘削ロッドを通じて地上部まで設置する必要があり、実際の現場での運用上非常に煩雑である。すなわち、掘削ロッドを順次繋ぐ際にワイヤラインの連結・取付け作業が要求される。
本発明は、このような点に着目したもので、機械式の拡大翼であったとしても、拡大翼の拡径を簡便且つ確実に確認することを課題としている。
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載した発明は、掘削ロッドの先端部に対し拡径可能に支持されると共に拡大掘削用刃物が取り付けられた拡大翼を備える基礎杭施工用の掘削装置であって、
上記拡大翼が拡径・縮径する際の可動部、若しくは掘削ロッドの先端部に支持されて、拡大翼の少なくとも縮径状態から拡径状態への変化を検出し、その検出情報の信号を上方に向けて発信する検出発信手段と、検出発信手段よりも上方に配置されて、上記検出発信手段が発信した信号をワイヤレスで受信する受信手段と、を備えることを特徴とするものである。
次に、請求項2に記載した発明は、掘削ロッドの先端部に対し拡径可能に支持されると共に拡大掘削用刃物が取り付けられた拡大翼を備えた基礎杭施工用の掘削治具を使用し、上記拡大翼を拡径させて掘削することで掘削穴の途中若しくは下部に大径の拡大掘削部を形成する掘削作業の際に使用され、上記拡大翼の拡径・縮径状況を判定する拡大翼状態判定装置であって、
上記拡大翼が拡径・縮径する際の可動部に取り付けられて、当該拡大翼の少なくとも縮径状態から拡径状態への変化を検出する翼変化検出手段と、上記掘削ロッドの先端部若しくは掘削治具に設けられて、翼変化検出手段の検出に応じた信号を発信する発信手段と、地上部に配置されて、送信手段が送信した信号をワイヤレスで受信する受信手段と、を備えることを特徴とする基礎杭施工時の拡大翼状態判定装置を提供するものである。
次に、請求項3に記載した発明は、請求項2に記載した構成に対し、上記発信手段は、掘削ロッドに振動を付与する振動付加手段を備え、掘削ロッドを振動させることによって当該掘削ロッドを伝搬する弾性波を信号とし、上記受信手段は、掘削ロッドの振動から上記弾性波に対応する振動を検出することで発信手段が発信した信号を受信することを特徴とするものである。
本発明によれば、機械式で開閉する拡大翼であったとしても、地上部において、拡大翼の少なくとも拡径を簡便に且つ確実に確認することが可能となる。
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1及び図2は、最下部の掘削ロッド1の先端に取り付けられる掘削治具Kの一例を示す図である。その掘削治具Kは、掘削ロッド1から回転トルクが伝達される駆動軸2と、該駆動軸2にスプライン結合して該駆動軸2と一緒に共回りする掘削軸3とを備える。なお、図2及び図4は後述の拡大翼4を最大径まで拡径したときの状態を表している。
上記掘削軸3の先端部には軸掘り用掘削翼6がスクリュー状に形成され、その掘削翼6の下端部に複数の刃物7が取り付けられて、軸掘り用刃物を構成している。
また、その掘削軸3の外径面には、後述の補助リンク12を取り付けるための円筒状の回動ブラケット9が駆動軸2と同軸に取り付けられている。この回動ブラケット9は、上下軸廻りに回動変位可能な状態で上記掘削軸3に支持されている。
上記駆動軸2は、図5のように筒体から構成され、その駆動軸2内に掘削軸3の上部が同軸に挿入されている。また、駆動軸2と掘削軸3とは、上下方向(軸方向)に相対変位可能にスプライン結合している。なお、掘削軸3も筒体から構成される。
上記スプライン結合の構成について説明すると、図6に示すように、駆動軸2の内径面から内径方向に菱形状のキー11が突出し、掘削軸3の外径面には、上記キー11を上下に案内するためのキー溝10が形成されている。上記キー溝10は、円周方向に展開した状態の外径側からみた部分拡大図である図7(a)に示すように、掘削軸3の軸線Pに対し所定角度θだけ傾斜した斜め方向に延在、つまり、掘削軸3の内径面に沿って螺旋状に上下に延びている。上記キー溝10の傾斜方向は、掘削軸3が正回転する方向に向かうにつれて上方に変位するように設定されている。上記軸線Pは駆動軸2の軸線(回転軸)でもある。なお、上記キー溝10の傾斜角θは、軸線Pに対し例えば20度程度に設定されている。
そのキー溝10の幅は、中央部分10Cは、キー11の幅の約2倍弱程度の寸法であるが、上側部分10Aは、第1幅広部を構成し、キー11の幅の約3倍の溝幅に設定され、上側部分10Aと中央部分10Cとの境界部には、キー11の下端部と下側から対向可能な水平面(突き当て面10a)を形成する段部を有する。上記段部は、拡大翼4を縮径した状態で外径側から見て左側、つまり駆動軸2が正回転する際にキー11が押し付けられる左側壁10b側に拡幅している。また、上記キー溝10の下側部分10Bは、第2幅広部(ロック機構)を構成し、キー11の幅の約3倍の溝幅に設定され、下側部分10Bと中央部分10Cとの境界には、キー11の上端部に上側から対向可能な水平面(突き当て面10d)を形成する段部を有する。上記段部は、拡大翼4を拡径した状態で外径側から見て右側、つまり駆動軸2が逆回転する際にキー11が押し付けられる右側壁側に拡幅している。
また、上記駆動軸2の外径面には、支持ブラケット13が設けられ、その支持ブラケット13に対し、拡大翼4の上端部が上下方向にのみ回動可能に支持されている。
この拡大翼4は、図3及び図4に示す模式図のように、駆動軸2の軸線(回転軸)及び拡大翼4の上端取付け点L1を含む垂直な仮想平面F上を上下に旋回するように、当該拡大翼4の上端部が上記支持ブラケット13に支持されている。これによって、上記拡大翼4は、縮径時には、駆動軸2の軸線と略平行に配置され、拡径するにつれて上記仮想平面Fに沿って駆動軸2の径方向外方に向けて旋回する。また、上記拡大翼4の上部には、拡大掘削用の刃物8が取り付けられている。
また、各拡大翼4の延在方向中途部には、第2支持部材14が設けられている。その第2支持部材14を構成する同一の回動軸に対して、2本の補助リンク12の上端部が上下方向に回動可能に連結している。その2本の補助リンク12の下端部は、それぞれ上記回動ブラケット9に対して、上下方向にのみ回動可能に連結されている。上記2本の補助リンク12は、図3及び図4に示すように、上記仮想平面Fに対して面対称となる位置に設定されている。本実施形態では、上記仮想平面F及び上記駆動軸2の軸線の両方に直交する直線上に、上記2本の補助リンク12の下端部取付け点L2を配置している。もっとも、これに限定されない。要は、上記仮想平面Fに対して面対称となるように配置されていればよい。ただし、本実施形態の方がモーメントの腕を長く設定できる。
そして本実施形態では、上記構成の拡大翼4及び補助リンク12の組が、軸対称に2組設けた場合を示している。すなわち、同一の仮想平面F上を2本の拡大翼4が上下に移動可能に配置されている。上記構成の拡大翼4及び補助リンク12の組を、上面視で等間隔となるようにして3組以上設けても良い。また、本実施形態では、回動ブラケット9への4本の補助リンク12における下端取付け部の取付け点L2を左右2点となるように、上述のように、上記仮想平面F及び上記駆動軸2の軸線の両方に直交する直線上に、各補助リンク12の下端取付け点L2を設定している。
また、掘削軸3には、拡大翼4が最大径まで拡径したときに、上記駆動軸2の下端面が当接して、それ以上、駆動軸2が下方に相対移動つまり拡大翼4がそれ以上、上方に移動することを規制する当接部3aを備える。
ここで、符号16は、セメントミルクの噴射穴であって、図5に示すように、上記掘削軸3及び駆動軸2内を上下に延びる配管路17に連通し、該配管路17を通じてセメントミルクが噴射穴16から噴射可能となっている。その配管路17の上部は、駆動軸2の上端部に取り付けられたプラグ18内の挿通路に挿入されている。
上記のような掘削治具Kに対して、本実施形態の拡大翼状態判定装置として、上記拡翼部の拡翼状況を検出する翼変化検出センサ、及び翼変化検出手段の検出に応じた信号を発信する発信装置21が設けられている。また、掘削時における地上部には発信手段の発信した信号をワイヤレスで受信する受信装置22が配置される。
上記翼変化検出センサは、翼変化検出手段を構成するもので、拡大翼4が拡径・縮径する際の可動部に取り付けられ、その可動部の可動変化を検出することで、拡翼の拡径・縮径の状況を検出して、その検出情報を発信装置21に送るものである。この翼変化検出センサは、少なくとも拡大翼4が拡径していることを検出可能であればよい。精度は、例えば、最小の分解能(例えばオフ=縮翼、オン=拡翼)で拡翼か縮翼かをオン・オフで検出する程度のものであってあっても良いし、ある程度の多段階の分解能(例えば0=縮翼、15=完全に拡翼、その間は1刻みで6度おきに開度)で開度状況を検出するものであっても良い。
そして、本実施形態は、翼変化検出センサの一例として傾斜センサ20を使用する場合の例であって、その傾斜センサ20は、模式図である図9に示すように、拡大翼4の延在方向中途部の下面側に設置されている。この傾斜センサ20は、傾斜角度が所定角度以下となるとスイッチング出力する。すなわち、ある傾斜角を境として所定傾斜角を超えているとスイッチがオフ、所定角度以下となるとオンになって信号を出力するものを使用する(信号の出力は反対の構成でも構わない。)。ここで、拡大翼4は閉じているときには下方を向いて傾斜角が大きいが、拡翼するにつれて、上方の回転ピン部分を中心として上方に回転しながら広げられて傾斜角が小さく成り、所定角度以上拡翼すると、傾斜センサ20はスイッチがオンとなって発信装置21にオン信号を出力する(図9(b)参照)。
なお、傾斜角度について、拡大翼4の拡径状態をより細かく検出する場合には、上述のようにある程度の分解能を持ったセンサを使用し、例えば傾斜角度に応じて信号を1度ごとに出力するセンサを用いればよい。
また、上記発信装置21は、発信手段を構成し、翼変化検出センサからの信号に応じた信号を、上方に、つまり地中から地表側(掘削ロッド1の上方側)に向けて送信するものである。なお、一般には、翼変化検出センサからの入力信号を増幅、若しくは変換して出力する。本実施形態においては、施工中の手間と切断事故等のリスクを考えて、掘削ロッド1に沿って導電線を配置することは行わず、ワイヤレスで受信装置22との間で信号の伝達を行う。なお、傾斜センサ20(翼変化検出センサ)及び発信装置21は、検出発信手段を構成する。
そして、本実施形態の発信装置21は、図10に示すように、掘削治具Kの駆動軸2に固定されていて、上記翼変化検出センサからの信号を、電線を通じて、若しくは無線で受信し(図10(b)では有線で信号を入力する場合を例示している。)、その受信した信号に応じた信号を地上(上方)に向けて送信する。
本実施形態の発信装置21は、発信部として発振器を備える。発振器は、圧電ブザーや磁歪材などの発振子などから構成され、上記受信した信号に応じて駆動軸2を所定時間連続して、若しくは周期的に叩くことで当該駆動軸2に対し発信信号としての振動を与える。その振動(送信信号)は、弾性波として、掘削ロッド1に沿って上方に向けて伝搬する。発生させる弾性波の周波数については、施工時に掘削ロッド1に発生しない、若しくは干渉しにくい振動(周波数等)や、振動変化を付与することで、地上での識別を可能にする。
受信装置22は、受信手段を構成し、掘削作業中に、掘削穴の開口部近傍に配置、つまり地上部配置されて、発信装置21からの発信信号を受信する。
本実施形態の受信装置22は、掘削ロッド1を伝搬してくる弾性波を直接検出するように、地上、若しくは地上近傍に位置する掘削ロッド部分へ直接且つ着脱可能に磁着やクランプ装置等によって取り付けられ、掘削ロッド1の振動を検出する振動検出部と、その振動検出部が検出した信号を増幅する信号増幅部と、その信号増幅部で増幅した信号を処理して発信装置21からの信号を検出する信号検出部と、信号検出部の処理情報を評価装置に発信する発信部と、を備える。
上記信号検出部は、例えば、周波数分析器で入力した振動について周波数分析を行い、上記弾性波に対応する帯域の信号が発生しているかによって、発信装置21からの信号を検出する。
また、着脱可能としているのは、拡大翼4の拡径作業の場合に使用するもので、掘削する深さによって掘削ロッド1の位置が異なるからである。なお、受信装置22のうち、少なくとも振動検出部だけが掘削ロッド1に取り付けられていればよい。
評価装置は、受信装置22から拡大翼4が拡径したことに対応する信号を入力すると、その旨をオペレータに通知する。通知は、ランプでも良いし、警報でも良い。
(動作)
次に、上記拡大翼状態判定装置を設けた状態での動作例について説明する。
なお、掘削施工として中堀方式を採用する場合で例示する。ただし、プレボーリング方式でも、拡大掘削部分の施工に限定してみると、ほぼ同じ作業となる。
まず、図11(a)のように、上記掘削治具Kを先端部に取り付けた掘削ロッド1を挿入した下杭を立て込む。この状態では、上記掘削治具Kは吊り下げた状態となり、掘削軸3に対し駆動軸2が上方に変位した状態となり、拡大翼4は下方に旋回して縮径した状態となっている。すなわち、この状態では、駆動軸2に設けたキー11は、キー溝10の上側部分10Aに位置(図7(a)参照)する。なお、上記キー11のキー溝10に対する上下方向の移動範囲は、上記当接部3a、拡大翼4、及び補助リンク12で規制される。
続いて、内側オーガと掘削ロッド1を接続し、図11(b)に示すように、駆動軸2に回転トルクが伝達されて、軸掘り状態になると、上記キー11は図7(b)のように、左側に回転(正回転)して、外径方向からみてキー溝10の左側の側壁10bに押し付けられることで、キー11及び該側壁10bを介して、駆動軸2から掘削軸3にトルクの伝達が行われ、掘削軸3が回転して、上記軸掘り用の刃物による地盤の掘削が行われる。すなわち、掘削・攪拌しながら杭(鋼管)の回転沈設を行う。図中、符号19は杭を回転沈降するための回転装置である。
このとき、下方へ掘削を進めるために、駆動軸2に対しては上方から下向きの外力を作用させ、また、掘削軸3に地盤からの反力として上向きの外力が作用することで、キー11は、キー溝10に沿って下方に移動しようとするが、キー11は、段部の水平面(突き当て面10a)に当接することで、下方への移動が阻止、つまり、拡大翼4が拡径することが防止される。これによって、拡大掘削機構を備えても杭内に沿って軸掘りの掘削が可能となる。またこのとき、上記縮径している一対の拡大翼4は、図1及び図3に示すように、それぞれ駆動軸2に沿って上下に延びるように配置されることで、平面視において、杭内の空間における当該拡大翼4が占める領域が小さい。このため、軸掘り時の掘削土は、上記拡大翼4にさほど妨げられることなく、上方に移動することが可能となり、当該拡大翼4位置での土砂が詰まることが防止される。
またこのとき、図11(c)のように、順次、上下の掘削ロッド1を接続する作業、及び杭の継手施工が行われ、図11(d)のように所定深度にある支持層まで掘削・攪拌しながら、杭の回転沈設作業を行う。
次に、図11(e)のように、杭先端位置から更に、拡大掘削部分について、下方に向けて正回転で、所定深さ(例えば杭径の2.25倍以上)まで先行掘削を行う。これは、本実施形態では、逆堀で拡大掘削を行うためである。
次に、上記掘削ロッド1の上部に対して、受信装置22を固定する。この固定は、上述のように磁着させても良いし、バンドなどで固定しても良い。掘削ロッド1の最上部に使用する掘削ロッド1を予め決定しておき、その掘削ロッド1の上部に予め固定しておいても良い。
次に、上述のように、拡大掘削の準備ができたら、受信装置22で連続的に信号を受信しながら、球根部根固め部のための拡大掘削を行う。
その拡大掘削は、次のようにして行う。
まず、駆動軸2を逆方向に回転させる。これによってキー11は、外径方向からみた図7(c)に示すように、円周方向右側に移動してキー溝10の外径方向からみて右側の側壁10cに当接する。続いて、逆回転しながら駆動軸2に下向きの荷重を掛けることで、図8(d)に示すように、キー11はキー溝10の右側壁10cに押し付けられ、該右側壁10cに沿って下方に変位する。上記のように、キーがキー溝10の右側壁10cに移動するにつれて、掘削軸3が駆動軸2に対して上方へ相対変位し、拡大翼4は徐徐に上方に回動して拡径する。このとき、上記キー溝10が駆動軸2の逆回転方向に傾いて螺旋状に延びていることから、キー11がキー溝10の右側壁10cに押し付けられる際の反力によって、キー溝10の側壁からキー11に下方に向かう外力が作用するので、キー11とキー溝10の右側壁10cとの間の圧力が大きい場合でも、キー11がキー溝10の右側壁10cに沿って下方に移動しやすくなる、つまり拡大翼4が開き易くなる。また、拡大翼4を上下に回動させることで拡径するので、閉じた状態で杭内径よりも小さく縮径可能としても、拡大翼4の拡径時の最大径を大きくすることができる。
このとき、拡大翼4が所定以上の傾きまで拡径すると、傾斜センサ20から発信装置21に向けてオン信号が送られ、そのオン信号を受信した発信装置21は、発振部を所定時間、連続して若しくは所定の間隔で作動させて、掘削ロッド1に振動を与える。
この振動は、弾性波として掘削ロッド1を伝搬して、受信装置22で受信される。オペレータは、逆回転させてから拡大翼4が拡翼するに十分な時間内に、受信装置22で発信装置21からの信号を受信して拡翼した旨の情報を受けた場合には、拡大掘削を後述のように続ける。一方、拡大翼4が拡翼するに十分な時間内に、拡翼した旨の情報を受けない場合には、一旦、正回転させてから再度逆回転させて拡翼を試みたり、一度、掘削ロッド1を引き上げて点検を行ったりする。
図2のように、拡大翼4の拡径が完了すると、キーは、図8(d)のように、外径方向から見て右側に移動して第2幅広部の段部に入り、突き当て面10dによって、上方への移動が規制される。ここで、逆回転のときは、掘削軸3は下方に移動しない(掘削しない)ため、拡大翼4の上方への回動と同期をとって、駆動軸2が下方に移動することから、拡大翼4の先端(下端)を、ほぼ水平な軌道を描いて移動(掘削)させることができる。すなわち、拡大翼4を拡径する際の掘削量が少なくて済むので、拡大翼4を拡径するための仕事量が効率的となる。また、拡径のための上記掘削も、掘削軸3に対する駆動軸2の縮み量に応じて徐徐に地盤に入り込んで行くため、地盤が硬くても確実に拡大翼4を拡径することができる。
続いて、図11(f)のように、逆回転(左回転)を続けながら上方に引っ張り上方に向けて拡大掘削を行う。このとき、上記キーが第2拡幅部の突き当て面に当接することによって駆動軸2に対し掘削軸3が下方に変位することが防止されて、つまり拡大翼4を拡径状態のままに保持できる。
次に、上記拡大掘削が完了して、根固め用の空間が形成されたら、噴射穴16からセメントミルクを当該空間に噴射する。このとき、逆回転させながら、上記掘削軸3を上下に往復移動させて、攪拌を行う。このとき、逆回転させながら掘削治具Kを上下に移動させるので、キー11がキー溝10の右側壁10cに押し付けられ、上記ロック機構で拡大翼4が縮径することが防止される。
次に、駆動軸2の回転を右回転することで、図8(d)→(e)のように、キー11は移動する。その状態から、上方に引き上げると、掘削軸3の自重によって相対的にキー11はキー溝10に沿って上方に移動する結果、拡大翼4が縮径した状態となり、杭内を通過可能となる。すなわち、掘削ロッド1を正回転して拡大翼4を縮径させて引き上げる。このときも、拡大翼4が縮径したことを検出してから引き上げるようにしても良い。
次に、図11(g)に示すように、鋼管杭の下端部を拡大掘削部に回転圧入させて定着させ、続いて、掘削ロッド1を引き上げる。
(作用効果)
(1)オペレータが直接確認できない地中での拡大翼4の拡翼状況を確認することが可能となる。これによって、確実に施工上重要な地点である拡大根固め球根部において拡大根固め球根部用の拡大掘削部が形成されたことの確認が可能となる。特に、拡大翼4の可動部の状態を検出しているので、確実に拡大翼4の拡径を検出可能である。
なお、傾斜センサ20を刃の裏側の下部に取り付けてあるので、傾斜センサ20に負荷される圧はその分小さい。
(2)また、拡大翼4が機械式であるので、拡大翼4を拡径するために油圧ジャッキなどを掘削機器に組み込む必要がない。この油圧を利用した掘削機器は硬くみだされない状態の地盤を掘削する為のものであり掘削中は大きな振動や当初の掘削計画には無い不慮の岩質地盤等の存在により損傷することも多い。また、現場作業ではこうした機器は荒く扱われるため故障の可能性も高い。このような機器に対して油圧機構を導入することはコストの面からも難しく、また、故障・地中残置などのリスクもあるためコスト的には困難である。この点、回転方向により機械式で拡大翼4の拡径・縮径を制御できるので、このような欠点を回避でき、また、安価なセンサで拡大翼4の少なくとも拡径を検出することができる。
(3)また、掘削ロッド1を導通路として弾性波を用いて情報伝達することで、拡大翼4の状況を検出する装置を設けても、上下の掘削ロッド1の継ぎ足しや杭の接続作業の際の手間は増えない。
(応用)
ここで、上記実施形態では、発信装置21を駆動軸2の外径面に固定する場合を例示しているが、駆動軸2の内径面に固定しても良い。
また、拡大翼4の機構として機械式の場合を例示しているが、油圧式であっても良い。また、機械式であっても、他の機構であっても構わない。要は、拡大翼4の拡径に伴って可動する部分の状態を検出して発信装置21で受信装置22に信号をワイヤレスで送信可能であれば良い。
また、上記実施形態では、翼変化検出センサとしての傾斜センサ20を、拡大翼4に固定したが、補助リンク12に傾斜センサ20を設置しても良い。
また、翼変化検出センサの別の例としては、次のものが例示できる。
(a−1)翼変化検出センサとして回転センサを使用する。
この場合には、模式図である図12のように、拡大翼4若しくは補助リンク12の端部の回動部に対して回転センサ23を設置して、拡大翼4若しくは補助リンク12の回動を検出する。縮径位置を初期値として回転を検出すればよい。簡便には、ピン埋め込み型の回転センサ23を使用する。この場合には、回転時にピンも回転するため、ピンに回転センサ23を埋め込んでおき、回転角がある値を上回った時点で拡径と見なせば良い。
(a−2)翼変化検出センサとして近接センサを使用する。
拡大翼4が拡径する際に、駆動軸2の下端部に対して、掘削軸3の下部及び回動ブラケット9が接近する構造となっているので、例えば、図13のように、当該駆動軸2の下端部と回動ブラケット9との間に近接センサ24を設置して、拡大翼4の拡縮を検出すればよい。近接度合いについて、ある程度の分解能を要する場合には、超音波距離センサを用いることで近接距離を計測することが可能となる。
次に、上記実施形態では、発信装置21から受信装置22への信号として、掘削ロッド1を振動させることによる弾性波を使用する場合を例示しているが、これに限定されない。発信装置21及び受信装置22の別の例としては、次のものが例示できる。
(b−1)無線信号による伝達
この場合には、模式図である図14のように、発信装置21として上方に向けて無線電波を出力する無線発信装置25を駆動軸2に固定しておき、掘削穴の上部若しくは上方に無線電波を受信する受信装置22の受信部を配置する。
掘削時にはケーシングなどにより掘削穴の壁は崩落しないようにされており、泥水で充填されてこそすれ、土砂により掘削機械と地表の受信部が途中土砂でさえぎられることは無い。そのため、掘削穴内の水若しくは泥水中を無線電波が通過するので、掘削機械近傍から地上の観測者への通信は可能である。
(b−2)泥水を導体として、ソナーを用いた水中発受信
この場合には、模式図である図15に示すように、発信装置21として上方に向けて音波を発生するハイドロフォン26を駆動軸2に固定しておき、掘削穴の上部若しくは上方に発信された音波を受信する受信装置22の受信部を配置する。
掘削中は原則、掘削ロッド1と掘削穴との間は泥水であり、泥水が地中から地表まで繋がっている状態になっている。このため、地中からは施工時に発生しない周波数、干渉しにくいもの、もしくは人工的に作られたノイズを用いて音波を発振することで、地表近傍でのハイドロフォン26による信号受信を可能となる。
ここで、上記実施形態では、発信装置21を掘削治具Kに、受信装置22を地上部にそれぞれ対を成して配置しているが、途中の位置に中継用の受信装置22及び発信装置21を設置しても良い。
本発明に基づく実施形態に係る掘削治具Kを示す縮径時の側面図である。 本発明に基づく実施形態に係る掘削治具Kを示す拡径時の側面図である。 本発明に基づく実施形態に係る掘削治具Kを示す縮径時の平面図である。 本発明に基づく実施形態に係る掘削治具Kを示す拡径時の平面図である。 本発明に基づく実施形態に係る掘削治具Kを示す断面図である。 本発明に基づく実施形態に係るスプライン結合を示す断面図である。 本発明に基づく実施形態に係るスプライン結合を示す外径方向からみた断面図で、(a)は縮径時の状態を(b)は軸掘り時を、(c)は逆回転時を示す。 本発明に基づく実施形態に係るスプライン結合を示す外径方向からみた断面図で、(d)は拡径時の状態を、(e)は拡大掘り時を示す。 傾斜センサの設置を説明する図である。 発信装置の設置を説明する図である。 掘削を説明する図である。 回転センサの設置を説明する図である。 近接センサの設置を説明する図である。 発信装置からの信号が無線電波の場合を説明する図である。 発信装置からの信号がソナーの場合を説明する図である。
符号の説明
1 掘削ロッド
2 駆動軸
3 掘削軸
4 拡大翼
9 回動ブラケット
12 補助リンク
20 傾斜センサ(翼変化検出手段)
21 発信装置
22 受信装置
23 回転センサ(翼変化検出手段)
25 無線発信装置
26 ハイドロフォン(翼変化検出手段)
K 掘削治具

Claims (3)

  1. 掘削ロッドの先端部に対し拡径可能に支持されると共に拡大掘削用刃物が取り付けられた拡大翼を備える基礎杭施工用の掘削装置であって、
    上記拡大翼が拡径・縮径する際の可動部、若しくは掘削ロッドの先端部に支持されて、拡大翼の少なくとも縮径状態から拡径状態への変化を検出し、その検出情報の信号を上方に向けて発信する検出発信手段と、
    検出発信手段よりも上方に配置されて、上記検出発信手段が発信した信号をワイヤレスで受信する受信手段と、を備えることを特徴とする掘削装置。
  2. 掘削ロッドの先端部に対し拡径可能に支持されると共に拡大掘削用刃物が取り付けられた拡大翼を備えた基礎杭施工用の掘削治具を使用し、上記拡大翼を拡径させて掘削することで掘削穴の途中若しくは下部に大径の拡大掘削部を形成する拡大掘削作業の際に使用され、上記拡大翼の拡径・縮径状況を判定する拡大翼状態判定装置であって、
    上記拡大翼が拡径・縮径する際の可動部に取り付けられて、当該拡大翼の少なくとも縮径状態から拡径状態への変化を検出する翼変化検出手段と、上記掘削ロッドの先端部若しくは掘削治具に設けられて、翼変化検出手段の検出に応じた信号を発信する発信手段と、地上部に配置されて、送信手段が送信した信号をワイヤレスで受信する受信手段と、を備えることを特徴とする基礎杭施工時の拡大翼状態判定装置。
  3. 上記発信手段は、掘削ロッドに振動を付与する振動付加手段を備え、掘削ロッドを振動させることによって当該掘削ロッドを伝搬する弾性波を信号とし、
    上記受信手段は、掘削ロッドの振動から上記弾性波に対応する振動を検出することで発信手段が発信した信号を受信することを特徴とする請求項2に記載した基礎杭施工時の拡大翼状態判定装置。
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