JP2008156566A - プライマー組成物及び該プライマー組成物を用いた粘着テープ - Google Patents
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Abstract
【課題】接着性の向上が著しく、容易に製造でき、量産製造へのスケールアップが容易であり、かつ、フッ素系樹脂に対する前処理工程を必要としない、フッ素系樹脂成形品用プライマー組成物を提供する。
【解決手段】(A)テトラフルオロエチレン(TFE)−ビニリデンフルオライド(VdF)を含むフッ素系二元共重合体、又は、テトラフルオロエチレン(TFE)−ヘキサフルオロプロピレン(HFP)−ビニリデンフルオライド(VdF)を含むフッ素系三元共重合体(THV)と、(B)酸性アクリル系ポリマーと、前記成分(A)及び(B)が可溶な溶剤を含むプライマー組成物。
【選択図】なし
【解決手段】(A)テトラフルオロエチレン(TFE)−ビニリデンフルオライド(VdF)を含むフッ素系二元共重合体、又は、テトラフルオロエチレン(TFE)−ヘキサフルオロプロピレン(HFP)−ビニリデンフルオライド(VdF)を含むフッ素系三元共重合体(THV)と、(B)酸性アクリル系ポリマーと、前記成分(A)及び(B)が可溶な溶剤を含むプライマー組成物。
【選択図】なし
Description
本発明は、フッ素系ポリマーとアクリル系ポリマーとこれらのポリマーが可溶な溶剤を含むプライマー組成物、及び、それを用いた粘着テープに関する。
フッ素系樹脂は、耐熱性、耐薬品性などに優れているので、様々な分野で使用されている。しかし、かかる樹脂は疎水性で不活性であり、表面エネルギーが低いので、塗料や粘着剤などの濡れ性、接着性が乏しい。このため、フッ素系樹脂成形品に塗料を塗布したり、フッ素系基材上に粘着剤を塗布する際には、フッ素系樹脂成形品又はフッ素系基材の表面処理を行い、塗布される材料の密着性を向上させる必要がある。従来のフッ素系樹脂の表面処理方法としては1)プライマーの含フッ素溶剤溶液によるプライマー処理、2)ブラスト処理、3)コロナ放電やプラズマ処理などの物理的処理が挙げられる。たとえば、特許文献1(特開平8−134243号公報)は含フッ素溶剤中にシランカップリング剤などのプライマーを溶解したプライマー組成物を開示している。また、特許文献2(特開平8−198984号公報)はフッ素系樹脂フィルムに対するコロナ放電処理を開示している。さらに、特許文献3(特開2003−261698号公報)はフッ素系樹脂を主成分とする成形物に対するプラズマ照射処理を開示している。
ところが、従来のプライマー組成物では接着力を十分に向上させることができず、接着力を向上させるためには、フッ素系樹脂を製造する際に化学変性などの複雑な工程が必要である。また、ブラスト処理によって粗面化する際には工数がかかり、コストが高くなる。さらに、コロナ放電やプラズマ処理のための装置は大掛かりで、工数が多い。
そこで、本発明の目的は、接着性の向上が著しく、容易に製造でき、量産製造へのスケールアップが容易であり、かつ、フッ素系樹脂に対する前処理工程を必要としない、フッ素系樹脂成形品に特に適したプライマー組成物及びそれを用いた粘着テープを提供することである。
本発明は、その1つの態様によると、(A)テトラフルオロエチレン(TFE)−ビニリデンフルオライド(VdF)を含むフッ素系二元共重合体、又は、テトラフルオロエチレン(TFE)−ヘキサフルオロプロピレン(HFP)−ビニリデンフルオライド(VdF)を含むフッ素系三元共重合体(THV)と、(B)酸性アクリル系ポリマーと、前記成分(A)及び(B)が可溶な溶剤を含むプライマー組成物を提供する。
本発明は、別の態様によると、フッ素系樹脂基材、該フッ素系樹脂基材上に付着した上記プライマー組成物の膜、及び、該プライマー組成物の膜の上に付着した粘着剤層を含む、粘着テープを提供する。
本発明のプライマー組成物は従来のプライマー組成物よりも、フッ素系樹脂成形品の非フッ素素材料への接着性を改善している。また、プライマー組成物の作製が容易で、量産製造へのスケールアップも容易である。さらに、フッ素系樹脂に対する前処理が不要で作業工数が少ない。さらに、フッ素系樹脂の外観を損わない。
THV系フッ素ポリマー
本発明のプライマー組成物は、(A)テトラフルオロエチレン(TFE)−ビニリデンフルオライド(VdF)を含むフッ素系二元共重合体、又は、テトラフルオロエチレン(TFE)−ヘキサフルオロプロピレン(HFP)−ビニリデンフルオライド(VdF)を含むフッ素系三元共重合体を含む。なお、これらの二元もしくは三元共重合体を本明細書中「THV系フッ素ポリマー」と呼ぶことにする。THV系フッ素ポリマー(A)は、酸性アクリル系ポリマーと共通の溶剤に容易に可溶であり、酸性アクリル系ポリマーとともに溶解したプライマー組成物を容易に形成することができる。また、このような成分はプライマー組成物とフッ素系樹脂成形品との親和性を向上させる効果がある。
本発明のプライマー組成物は、(A)テトラフルオロエチレン(TFE)−ビニリデンフルオライド(VdF)を含むフッ素系二元共重合体、又は、テトラフルオロエチレン(TFE)−ヘキサフルオロプロピレン(HFP)−ビニリデンフルオライド(VdF)を含むフッ素系三元共重合体を含む。なお、これらの二元もしくは三元共重合体を本明細書中「THV系フッ素ポリマー」と呼ぶことにする。THV系フッ素ポリマー(A)は、酸性アクリル系ポリマーと共通の溶剤に容易に可溶であり、酸性アクリル系ポリマーとともに溶解したプライマー組成物を容易に形成することができる。また、このような成分はプライマー組成物とフッ素系樹脂成形品との親和性を向上させる効果がある。
上述のTHV系フッ素ポリマーにおいて、そのフッ素ポリマーのTFE、HFPおよびVdFの組成比は、広い範囲で変更することができる。しかし、美観の観点から、プライマー組成物は透明であることが好ましい。このような観点から、組成比でみて、TFEを約36〜72重量%、HFPを約0〜56重量%、そしてVdFを約30〜65重量%で含むフッ素ポリマーが最適である。このような組成比を外れて、TFEの含有量が増加すると、乳白色となり、透明性が低下する。また、このような最適組成比をもったフッ素ポリマーは、PTFEに近い耐薬品性を維持し、しかも、フッ素ゴムでは得られない30%前後の結晶性をもった低物質透過性を有し、さらには柔軟性を有するという利点がある。すなわち、かかるTHV系フッ素ポリマーは、柔軟性があるので、例えばそれを変形させた場合に、その変形に容易に追従することができ、クラックなどの欠陥を発生することもない。
参考までに、テトラフルオロエチレン(TFE)36〜72重量%、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)0〜56重量%、ビニリデンフルオライド(VdF)8〜45重量%の組成比からなるTHV系フッ素ポリマーと、汎用のフッ素樹脂との特性を比較すると、次の通りである。
注)評価基準: 優>良>可>不可
PTFE:ポリテトラフルオロエチレン
PFA:パーフルオロアルキル変性PTFE
FEP:テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体
PVdF:ポリビニリデンフルオライド
ETFE:エチレンとテトラフルオロエチレンとの共重合体
PTFE:ポリテトラフルオロエチレン
PFA:パーフルオロアルキル変性PTFE
FEP:テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体
PVdF:ポリビニリデンフルオライド
ETFE:エチレンとテトラフルオロエチレンとの共重合体
THV系フッ素ポリマーは、例えばダイニオン社(Dyneon)からTHVシリーズとして商業的に入手可能である。現在入手可能なTHVの一例を示すと、THV220、THV415、THV500などを挙げることができる。本発明には、THV220がとりわけ有用である。なお、これらのTHV系フッ素ポリマーの諸特性は、ダイニオン社の技術資料に詳細に記載されている。
本発明のプライマー組成物中のTHV系フッ素ポリマー(A)の量は、適宜選択されうるが、通常、THV系フッ素ポリマー(A)とアクリル系ポリマー(B)との合計質量を基準として、25〜60質量%であることが好ましい。フッ素ポリマーの量が多すぎると、塗料や粘着剤などに対する密着性が低くなりすぎることがある。また、フッ素系ポリマーの量が多すぎると、溶剤に対して完全に溶解しにくくなり、結果として、プライマー組成物の品質が維持できなくなることがある。一方、フッ素ポリマーの量が少なすぎると、フッ素系樹脂成形品への付着性が低くなりすぎることがある。
酸性アクリル系ポリマー
本発明のプライマー組成物中に使用されうる酸性アクリル系ポリマー(B)は、ポリマー全体として酸性を示すアクリル系ポリマーであり、アクリル系樹脂、アクリル系粘着剤になど通常に使用されているアクリル系ポリマーであってよい。
本発明のプライマー組成物中に使用されうる酸性アクリル系ポリマー(B)は、ポリマー全体として酸性を示すアクリル系ポリマーであり、アクリル系樹脂、アクリル系粘着剤になど通常に使用されているアクリル系ポリマーであってよい。
本発明のプライマー組成物中に使用されるアクリル系ポリマー(B)のためのモノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、酸性基含有モノマー(たとえば、カルボキシル基含有モノマー)、及び、必要に応じて、他の共重合性モノマーが使用される。本発明で使用できるアルキル(メタ)アクリレートは、例えば、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートなどのアルキル基の炭素数が22以下である(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。なお、上記したアルキル(メタ)アクリレートは単独もしくは2種以上で使用される。アルキル(メタ)アクリレートは、限定するわけではないが、一般に、モノマー混合物全体の質量を基準として40%以上の量で含まれ、好ましくは60%以上の量であるが、99%未満の量である。
酸性基含有モノマーとしてはカルボキシル基含有モノマー、スルホキシル基含有モノマーなどが考えられるが、好ましくはカルボキシル基含有モノマーである。かかるカルボキシル基含有モノマーは、上記のアルキル(メタ)アクリレートと共重合することができるものであり、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水フマル酸などを含む。上記したカルボキシル基含有モノマーは単独もしくは2種以上で使用される。酸性基含有モノマーは、限定するわけではないが、一般に、モノマー混合物全体の質量を基準として20質量%以下の量で含まれるが、0.5質量%以上の量である。このような範囲であると、塗布される塗料や粘着剤との接着性が高くなる。一方、接着性酸性基含有モノマーが多量でありすぎると、得られるアクリル系ポリマーは硬くなるため、満足なプライマー性能が得られないことがある。
アクリル系ポリマーのために、本発明の効果に悪影響を及ぼさないかぎり、所望ならば、他の共重合性モノマーを用いてもよい。他の共重合性モノマーは、たとえば、窒素含有モノマーであり、上記のアルキル(メタ)アクリレートと共重合することができるものである。例えば、アクリルアミド類(例えば、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ジエチルアミノエチルメタクリレート)、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルフォリンなどを含む。窒素含有モノマーは単独もしくは2種以上で使用される。但し、アクリル系ポリマーは、全体として酸性を示すポリマーであり、このため、一般に塩基性を示す窒素含有モノマーは好ましくは含まれず、もし、含まれるとしても、酸性基含有モノマーよりも少量で用いられるべきである。
アクリル系ポリマーは、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、乳化重合などの各種の重合方法において、光重合もしくは熱重合などの手段を用いて上記のモノマーを重合することで行なうことができる。
アクリル系ポリマーは、必要に応じて、1,6−ヘキサンジジオールジアクリレートなどの多官能アクリレート架橋剤やイソシアネート系架橋剤などによって架橋されてよい。多官能アクリレートによる架橋はモノマー混合物中に多官能アクリレートを添加して重合することで行なうことができる。イソシアネート系架橋剤による架橋は、ヒドロキシル基含有モノマーなどのイソシアネートと反応可能な基を含むモノマーを含むモノマー混合物を用いてアクリル系ポリマーを形成し、次いで、イソシアネートと、イソシアネートと反応可能な基とを反応させることで行なえる。架橋剤の量は、通常、モノマー混合物100質量部あたり0.01〜10質量部である。
アクリル系ポリマー(B)の量は、適宜選択されうるが、通常、THV系フッ素ポリマー(A)とアクリル系ポリマー(B)との合計質量を基準として、40〜75質量%である。アクリル系ポリマーの量が多すぎると、フッ素系樹脂成形品への付着性が低くなりすぎることがある。一方、アクリル系ポリマーの量が少なすぎると、塗料や粘着剤などに対する密着性が低くなりすぎることがある。
他の追加成分
本発明のプライマー組成物は、本発明の効果に悪影響を及ぼさないかぎり、他のポリマー成分を含んでも良い。たとえば、上記のフッ素ポリマー、アクリル系ポリマー以外に、これらのポリマーと相溶性を示し、これらのポリマーと共通の溶剤中に溶解可能なポリマー成分、たとえば、熱可塑性ポリエステルなどを少量で含むことができる。また、他の添加剤、たとえば、酸化防止剤、染料、顔料、紫外線吸収剤などを含むこともできる。
本発明のプライマー組成物は、本発明の効果に悪影響を及ぼさないかぎり、他のポリマー成分を含んでも良い。たとえば、上記のフッ素ポリマー、アクリル系ポリマー以外に、これらのポリマーと相溶性を示し、これらのポリマーと共通の溶剤中に溶解可能なポリマー成分、たとえば、熱可塑性ポリエステルなどを少量で含むことができる。また、他の添加剤、たとえば、酸化防止剤、染料、顔料、紫外線吸収剤などを含むこともできる。
本発明のプライマー組成物は、上記したフッ素ポリマー、酸性アクリル系ポリマー及び必要に応じて他の追加成分を溶剤に溶解したものである。本発明の実施において使用する溶剤は、フッ素ポリマー、アクリル系ポリマーなどを容易に溶解することができ、かつ得られる被膜や物品の特性に悪影響を及ぼさないものである。適当な溶剤は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、又は、ケトン系溶剤とエステル系溶剤との混合物である。より詳細には、ケトン系溶剤としては、たとえば、アセトン(ジメチルケトン)、MEK(メチルエチルケトン)、ジエチルケトン、MIBK(メチルイソブチルケトン)などがある。エステル系溶剤としては、たとえば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどがある。
被処理物品
本発明のプライマー組成物を塗布する対象となる物品は、特に限定されず、種々のフッ素系樹脂が適用可能である。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)−ビニリデンフルオライド(VdF)を含むフッ素系二元共重合体、テトラフルオロエチレン(TFE)−ヘキサフルオロプロピレン(HFP)−ビニリデンフルオライド(VdF)を含むフッ素系三元共重合体(THV)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、含フッ素脂肪族環構造を有するポリマー等が例示され得る。
本発明のプライマー組成物を塗布する対象となる物品は、特に限定されず、種々のフッ素系樹脂が適用可能である。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)−ビニリデンフルオライド(VdF)を含むフッ素系二元共重合体、テトラフルオロエチレン(TFE)−ヘキサフルオロプロピレン(HFP)−ビニリデンフルオライド(VdF)を含むフッ素系三元共重合体(THV)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、含フッ素脂肪族環構造を有するポリマー等が例示され得る。
本発明のプライマー組成物は従来の液体コーティング組成物を塗布するのに適切な塗布方法、たとえば、スピンコート法、ディッピング法、ロールコート法、ダイコート法、スプレーコート法などのいずれかの方法でフッ素系樹脂に対して塗布することができる。
本発明のプライマー組成物で処理されたフッ素系樹脂の表面には、塗料や粘着剤など、従来のフッ素系樹脂に対する接着性が低かった材料を適用することができる。なお、プライマー組成物の塗膜の厚さは、限定するわけではないが、たとえば、乾燥状態で約10〜数百μmである。厚さが薄すぎると、プライマー効果が得られず、また、厚すぎても、追加的な効果が得られず、また、厚く塗布するために複数回の塗布作業を行うと、被膜が白濁化することがある。
本発明は、1つの態様において、第一層のフッ素系樹脂基材、第二層の本発明のプライマー組成物の膜及び第三層の粘着剤を含む粘着テープである、これは、たとえば、フッ素系樹脂基材を本発明のプライマー組成物で処理し、乾燥して得られたプライマー被膜の上に、非フッ素系粘着剤、たとえば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤又はシリコーン系粘着剤を塗布することで得られる、フッ素系樹脂基材をバッキングとする粘着テープである。
また、本発明は、別の態様において、第一層のフッ素樹脂成形品、第二層の本発明のプライマー組成物の膜、第三層の粘着剤層及び第四層のバッキングを含む積層体である。これは、たとえば、フッ素系樹脂成形品を本発明のプライマー組成物で処理し、乾燥して得られたプライマー被膜の上に、ポリエステル(たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)や紙などのバッキング上に非フッ素系粘着剤、たとえば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤又はシリコーン系粘着剤を有する粘着テープを適用することで得られる。
本発明は、さらに、別の態様において、第一層のフッ素樹脂成形品、第二層の本発明プライマー組成物の膜及び第三層のフッ素不含塗料の膜を含む被塗装フッ素系樹脂成形品である。これは、たとえば、フッ素系樹脂成形品を本発明のプライマー組成物で処理し、乾燥して得られたプライマー被膜の上に、フッ素不含塗料、たとえば、アクリル塗料、ウレタン塗料で塗装して得られる。
本発明のプライマー組成物を用いると、従来のシランカップリング剤によるプライマー組成物と比較して、フッ素系樹脂成形品に対して良好な接着強度を付与することが可能である。また、ブラスト処理による粗面化やコロナ放電やプラズマ照射処理などによる物理的な表面処理と比較して、フッ素系樹脂成形品の表面を損傷させることがなく、また、本発明のプライマー組成物自体が透明性を有するので、フッ素系樹脂成形品の透明性をそのまま維持することができる。
引き続いて、本発明をその実施例を参照して説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものでないことは言うまでもない。
実施例1
90質量部のメチルエチルケトン(MEK)中に、4.5質量部のテトラフルオロエチレン(TFE)−ヘキサフルオロプロピレン(HFP)−ビニリデンフルオライド(VdF)からなるフッ素系三元共重合体(THV系フッ素ポリマー)(THV220(商品名)、ダニオン社製)のペレットを導入し、卓上ホモミキサーで2000rpmの回転速度で攪拌し、完全に溶解させた。次に、この溶液に対して、5.5質量部のアクリル系ポリマー(モノマー組成:イソオクチルアクリレート(IOA)/2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)/アクリル酸(AA)=66/24/10(質量比))を導入して、さらに、同様に攪拌してプライマー組成物を形成した。
90質量部のメチルエチルケトン(MEK)中に、4.5質量部のテトラフルオロエチレン(TFE)−ヘキサフルオロプロピレン(HFP)−ビニリデンフルオライド(VdF)からなるフッ素系三元共重合体(THV系フッ素ポリマー)(THV220(商品名)、ダニオン社製)のペレットを導入し、卓上ホモミキサーで2000rpmの回転速度で攪拌し、完全に溶解させた。次に、この溶液に対して、5.5質量部のアクリル系ポリマー(モノマー組成:イソオクチルアクリレート(IOA)/2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)/アクリル酸(AA)=66/24/10(質量比))を導入して、さらに、同様に攪拌してプライマー組成物を形成した。
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなるフッ素系樹脂成形品の表面に対して、上記のプライマー組成物を数滴たらし、スピンコート法によって乾燥後の厚さが0.17mg/cm2〜0.35mg/cm2(厚さとして10〜30μm)となるように表面の一部分に広げ、50〜60℃で1分間乾燥させて、コーティング被膜を得た。フッ素樹脂成形品はコーティング被膜を有する領域と、コーティング被膜を有しない領域とがあった。
上述のとおりにプライマー処理されたフッ素系樹脂成形品に対する粘着剤の初期接着力を測定した。フッ素系樹脂成形品のコーティング被膜を有する領域に、25mm幅のアクリル系粘着テープ(住友3M社製のアクリル系粘着フィルム:#313アクリル粘着テープ(商品名))を載せ、5kg金属ローラーで2往復させ、貼り合わせた。また、フッ素系樹脂成形品のコーティング被膜を有しない領域にも同様に粘着テープを貼り合わせた。
上述のとおりに準備した試料を用いて、温度25℃においてピール速度50mm/分で180°ピール試験を行い、剥離力を調べた。コーティング被膜を有する領域と、コーティング被膜を有しない領域の各々に対して、試験を3回ずつ行なった。結果を下記の表2に示す。
実施例2〜4
実施例1と同様に試験を行なったが、プライマー組成物中の(THV系フッ素ポリマー+アクリル系ポリマー)の質量に対するTHVフッ素ポリマーの質量が45質量%(実施例1)であったのを、15質量%(実施例2)、30質量%(実施例3)、60質量%(実施例4)とした。各実施例に対して、180°ピール試験を温度25℃においてピール速度50mm/分で行い、剥離力を調べた。結果を下記の表3に示す。
実施例1と同様に試験を行なったが、プライマー組成物中の(THV系フッ素ポリマー+アクリル系ポリマー)の質量に対するTHVフッ素ポリマーの質量が45質量%(実施例1)であったのを、15質量%(実施例2)、30質量%(実施例3)、60質量%(実施例4)とした。各実施例に対して、180°ピール試験を温度25℃においてピール速度50mm/分で行い、剥離力を調べた。結果を下記の表3に示す。
実施例5〜7
実施例1と同様の操作を繰り返したが、THV系フッ素ポリマーとアクリル系ポリマーとの質量比を50:50とした。また、90質量部のメチルエチルケトン(MEK)(実施例1)の代わりに、75質量部のメチルエチルケトン(MEK)と15質量部の酢酸エチルとの混合溶剤(実施例5)、90質量部の酢酸エチル(実施例6)、15質量部の酢酸エチルと75質量部の酢酸ブチルとの混合溶剤(実施例7)を用いた。これらの実施例において、実施例1と同様の剥離力試験を行なったところ、同等の剥離力の結果が得られた。
実施例1と同様の操作を繰り返したが、THV系フッ素ポリマーとアクリル系ポリマーとの質量比を50:50とした。また、90質量部のメチルエチルケトン(MEK)(実施例1)の代わりに、75質量部のメチルエチルケトン(MEK)と15質量部の酢酸エチルとの混合溶剤(実施例5)、90質量部の酢酸エチル(実施例6)、15質量部の酢酸エチルと75質量部の酢酸ブチルとの混合溶剤(実施例7)を用いた。これらの実施例において、実施例1と同様の剥離力試験を行なったところ、同等の剥離力の結果が得られた。
実施例8
実施例1と同様の操作を繰り返したが、6質量部のアクリル系ポリマー(モノマー組成:n−ブチルアクリレート(BA)/アクリル酸(AA)=97/3(質量比))と5質量部のTHV−220を、75質量部のメチルエチルケトン(MEK)と14質量部の酢酸エチルとの混合溶剤中の溶液としてプライマー組成物を得た。実施例1と同様の剥離力試験を行なったところ、同等の剥離力の結果が得られた。
実施例1と同様の操作を繰り返したが、6質量部のアクリル系ポリマー(モノマー組成:n−ブチルアクリレート(BA)/アクリル酸(AA)=97/3(質量比))と5質量部のTHV−220を、75質量部のメチルエチルケトン(MEK)と14質量部の酢酸エチルとの混合溶剤中の溶液としてプライマー組成物を得た。実施例1と同様の剥離力試験を行なったところ、同等の剥離力の結果が得られた。
実施例9
実施例1と同様の操作を繰り返したが、4質量部のアクリル系ポリマー(モノマー組成:イソオクチルアクリレート(IOA)/アクリル酸(AA)=90/10(質量比))と5質量部のTHV−220を、75質量部のメチルエチルケトン(MEK)と16質量部の酢酸エチルとの混合溶剤中の溶液としてプライマー組成物を得た。実施例1と同様の剥離力試験を行なったところ、同等の剥離力の結果が得られた。
実施例1と同様の操作を繰り返したが、4質量部のアクリル系ポリマー(モノマー組成:イソオクチルアクリレート(IOA)/アクリル酸(AA)=90/10(質量比))と5質量部のTHV−220を、75質量部のメチルエチルケトン(MEK)と16質量部の酢酸エチルとの混合溶剤中の溶液としてプライマー組成物を得た。実施例1と同様の剥離力試験を行なったところ、同等の剥離力の結果が得られた。
比較例1
実施例1と同様の操作を繰り返したが、アクリル系ポリマーとして、12質量部のブチルメタクリレート(BMA)ホモポリマー(酸性基を含まないアクリル系ポリマー)と、5質量部のTHV−220を、75質量部のメチルエチルケトン(MEK)と8質量部のトルエンとの混合溶剤中に導入した。実施例1と同様の剥離力試験を行なったところ、ポリエチレンテレフタレート(PTFE)樹脂に対するアクリル系粘着テープの剥離強度の顕著な向上は見られなかった。
実施例1と同様の操作を繰り返したが、アクリル系ポリマーとして、12質量部のブチルメタクリレート(BMA)ホモポリマー(酸性基を含まないアクリル系ポリマー)と、5質量部のTHV−220を、75質量部のメチルエチルケトン(MEK)と8質量部のトルエンとの混合溶剤中に導入した。実施例1と同様の剥離力試験を行なったところ、ポリエチレンテレフタレート(PTFE)樹脂に対するアクリル系粘着テープの剥離強度の顕著な向上は見られなかった。
比較例2
実施例1と同様の操作を繰り返したが、4質量部のアクリル系ポリマー(モノマー組成:イソオクチルアクリレート(IOA)/アクリルアミド(AAm)=95/5(質量比))(塩基性ポリマー)と5質量部のTHV−220を、75質量部のメチルエチルケトン(MEK)と16質量部の酢酸エチルとの混合溶剤中の溶液としてプライマー組成物を得た。実施例1と同様の剥離力試験を行なったところ、ポリエチレンテレフタレート(PTFE)樹脂に対するアクリル系粘着テープの剥離強度の顕著な向上は見られなかった。
実施例1と同様の操作を繰り返したが、4質量部のアクリル系ポリマー(モノマー組成:イソオクチルアクリレート(IOA)/アクリルアミド(AAm)=95/5(質量比))(塩基性ポリマー)と5質量部のTHV−220を、75質量部のメチルエチルケトン(MEK)と16質量部の酢酸エチルとの混合溶剤中の溶液としてプライマー組成物を得た。実施例1と同様の剥離力試験を行なったところ、ポリエチレンテレフタレート(PTFE)樹脂に対するアクリル系粘着テープの剥離強度の顕著な向上は見られなかった。
上述の結果のとおり、本発明のプライマー組成物では、アクリル系ポリマーは酸性アクリル系ポリマーであることが必要である。
実施例10(フッ素系樹脂基材上に粘着剤層を有する粘着テープ)
実施例1に記載されるとおりにプライマー組成物を形成した。これを実施例1に記載されるとおりの手順で、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなるフッ素樹脂基材の表面に対して、上記のプライマー組成物を数滴たらし、スピンコート法によって乾燥後の厚さが0.17mg/cm2〜0.35mg/cm2(厚さとして10〜30μm)となるように広げ、50〜60℃で1分間乾燥させて、コーティング被膜を得た。次いで、アクリル系粘着剤(綜研化学製SKダイン1501B)の酢酸エチル溶液を乾燥重量で30g/m2の厚さとなるように塗布し、65℃で3分間乾燥させ、粘着テープを得た。粘着テープを25mm幅×100mm長さの短冊状に切り取り、陽極酸化アルミニウム表面に十分に圧着した。その後、剥離角度90°、剥離速度300mm/分でピール試験を行なった。結果を下記の表4に示す。
実施例1に記載されるとおりにプライマー組成物を形成した。これを実施例1に記載されるとおりの手順で、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなるフッ素樹脂基材の表面に対して、上記のプライマー組成物を数滴たらし、スピンコート法によって乾燥後の厚さが0.17mg/cm2〜0.35mg/cm2(厚さとして10〜30μm)となるように広げ、50〜60℃で1分間乾燥させて、コーティング被膜を得た。次いで、アクリル系粘着剤(綜研化学製SKダイン1501B)の酢酸エチル溶液を乾燥重量で30g/m2の厚さとなるように塗布し、65℃で3分間乾燥させ、粘着テープを得た。粘着テープを25mm幅×100mm長さの短冊状に切り取り、陽極酸化アルミニウム表面に十分に圧着した。その後、剥離角度90°、剥離速度300mm/分でピール試験を行なった。結果を下記の表4に示す。
上述の表において、プライマー組成物で処理した領域においては、粘着テープは粘着剤と陽極酸化アルミニウム表面との界面で剥離を生じ、一方、プライマー処理していない領域においては、フッ素樹脂基材と粘着剤層との界面から剥離が生じた。
Claims (4)
- (A)テトラフルオロエチレン(TFE)−ビニリデンフルオライド(VdF)を含むフッ素系二元共重合体、又は、テトラフルオロエチレン(TFE)−ヘキサフルオロプロピレン(HFP)−ビニリデンフルオライド(VdF)を含むフッ素系三元共重合体(THV)と、(B)酸性アクリル系ポリマーと、前記成分(A)及び(B)が可溶な溶剤を含むプライマー組成物。
- 前記成分(A)及び(B)が可溶な溶剤はケトン系溶剤、エステル系溶剤、又はケトン系溶剤とエステル系溶剤との混合溶剤である、請求項1に記載のプライマー組成物。
- 前記フッ素系二元共重合体又はフッ素系三元共重合体(A)はフッ素系共重合体(A)とアクリル系ポリマー(B)との合計質量を基準として25〜60質量%であり、アクリル系ポリマー(B)はフッ素系共重合体(A)とアクリル系ポリマー(B)との合計質量を基準として40〜75質量%である、請求項1又は2記載のプライマー組成物。
- フッ素系樹脂基材、該フッ素系樹脂基材上に付着した請求項1〜3のいずれか1項記載のプライマー組成物の膜、及び、該プライマー組成物の膜の上に付着した粘着剤層を含む、粘着テープ。
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