JP2008150580A - 人工透析用部材 - Google Patents

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昌和 鈴木
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Abstract

【課題】透析型人工腎臓装置承認基準のうち、透析液供給部及び透析液回路の品質及び試験法 1(2)を満足し、かつ、耐衝撃性、透明性、成形性に優れた人工透析用部材を提供する。
【解決手段】プロピレン系重合体100重量部に対し、下記一般式(1)で表される造核剤(A)を0.01〜0.3重量部配合し、JIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠したメルトフローレート(MFRcomp)が15〜50g/10分であるプロピレン系樹脂組成物からなり、かつ放射線滅菌または高圧蒸気滅菌されていることを特徴とする人工透析用部材などを提供した。
(CONHR …(1)
【選択図】なし

Description

本発明は、人工透析用部材に関し、詳しくは、透析型人工腎臓装置承認基準のうち、透析液供給部及び透析液回路の品質及び試験法 1(2)を満足し、かつ透明性に優れた人工透析用部材に関する。
腎臓の機能が低下すると、人工腎臓と呼ばれる装置で、血液から水分や老廃物を取り出すとともに、血液が酸性にならないような調節が行なわれる。一般に、これを人工透析と言う。その概念を図1に、血液をきれいにするダイアライザーの詳細を図2に示す。
図1及び2において、まず、透析を受ける人の腕1の血管に針を刺し、血液ポンプ3で連続的に血液を取り出す。この血液ポンプ3は、ローラーを柔らかいチューブ2に押しつけながら回転することによって血液を一方向へ送ることができる。また、血液をきれいにする部分が、ダイアライザー5と呼ばれる用具である。このダイアライザー5に空気が入ると効率が悪くなったり、透析を受ける人の安全を守るために、空気が入らないようにエアートラップ4と呼ばれる筒がダイアライザーの前後に取り付けられている。ダイアライザー5では、半透膜を介して、血液から過剰な水や老廃物を排出し、血液をきれいにすることができる。その際、コンソール6という調節装置によって、透析液が正確にダイアライザー5へ送られ、内部の水や老廃物が混じった透析液が外部へ運び出される。コンソール6にはいろいろな警報も付いており、安全に人工透析ができるようになっている。
ダイアライザー5は、長さが30cmほどの円筒状のプラスチック製容器で構成されており、その中に、半透膜であるホローファイバー11という極めて細い糸が1万本程度、該容器に対し平行に束ねて収められている。ホローファイバー11はマカロニのように中心部に穴があいており、その穴の中を血液が流れ、ホローファイバー11の外側を透析液が流れている。ホローファイバー11は水や老廃物を、透析液へと通すように作られているので、連続的に血液を送ることによって血液をきれいにすることができる。
また、ダイアライザー5は、円筒状の外筒12と外筒12に蓋をするためのヘッダー13とから構成されている。両側のヘッダー13同士は、ホローファイバー11と結合しており、一方のヘッダー13の血液流入口7から血液が流れ込み、ホローファイバー11の中を血液が流れる際、血液中の水や老廃物がホローファイバー11の外側である透析液へ排出され、その後、もう一方のヘッダー13の血液流出口8から血液が流れ出る構造となっている。また、外筒12には、透析液の流入口9と透析液の流出口10が設けられており、ダイアライザー5内に透析液を循環させることにより水や老廃物を取り出す構造となっている。
現在、人工透析用部材であるこの様なダイアライザーの外筒やヘッダー部分は、ポリカーボネート(以下、PCと言う場合もある。)を素材とするものが主流である(例えば、特許文献1、2参照)。PCは、透明性や耐衝撃性に優れているため、ダイアライザーが稼動中、内部の状態が見えやすく安心して使用できる点、運搬や使用時において壊れ難いという点で優位な素材である。しかし、その反面、PCは、成形する前に乾燥工程を必要とするため作業効率が悪かったり、融点が高いため成形温度が高くエネルギー効率が悪いといった問題や、原料に起因する化学物質の溶出による悪影響や、高価格であるという問題も含んでいた。そのため、PCに代わる、優れた耐衝撃性、透明性および成形性を有し、透析型人工腎臓装置承認基準のうち、透析液供給部及び透析液回路の品質及び試験法 1(2)を満足し得る素材が望まれているのが現状であった。
人工透析用部材は、使い捨ての注射筒などと異なり、血液と長い時間接触する為、滑剤などの溶出する成分が含まれていると好ましくなく、透析型人工腎臓装置承認基準を満足する必要がある
特開2002−219169号公報 国際公開99/64506号パンフレット
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、透析型人工腎臓装置承認基準のうち、透析液供給部及び透析液回路の品質及び試験法 1(2)を満足し、かつ、耐衝撃性、透明性、成形性に優れた人工透析用部材を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究の結果、特定のプロピレン系重合体を基材とし、特定の造核剤を用いたプロピレン系樹脂組成物は、透析型人工腎臓装置承認基準のうち、透析液供給部及び透析液回路の品質及び試験法 1(2)を満足し、優れた耐衝撃性、透明性および成形性を有する人工透析用部材として好適であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、プロピレン系重合体100重量部に対し、下記一般式(1)で表される造核剤(A)を0.01〜0.3重量部配合し、JIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠したメルトフローレート(MFRcomp)が15〜50g/10分であるプロピレン系樹脂組成物からなり、かつ放射線滅菌または高圧蒸気滅菌されていることを特徴とする人工透析用部材が提供される。
(CONHR …(1)
[式中、Rは、炭素数2〜30の飽和若しくは不飽和の脂肪族ポリカルボン酸残基、炭素数4〜28の飽和若しくは不飽和の脂環族ポリカルボン酸残基、又は炭素数6〜18の芳香族ポリカルボン酸残基を表わす。Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、又は炭素数3〜46のシクロアルキル基若しくはシクロアルケニル基を表わす。aは、2〜6の整数を表す。]
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記プロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系重合体100重量部に対し、さらに、0.005〜0.3重量部の下記一般式(2)で示される造核剤(B)、0.005〜0.15重量部の下記一般式(3)で示される造核剤(C)、又は0.005〜0.15重量部の下記式(4)で示される造核剤(D)から選ばれる少なくとも1種の造核剤を配合していることを特徴とする人工透析用部材が提供される。
Figure 2008150580
[式中、Rは、直接結合、硫黄又は炭素数1〜9のアルキレン基若しくはアルキリデン基であり、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基であり、MはNaであり、nはMの価数である。]
Figure 2008150580
[式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示し、Mは、周期律表第III族又は第IV族の金属原子を示し、Xは、Mが周期律表第III族の金属原子を示す場合には、HO−を示し、Mが周期律表第IV族の金属原子を示す場合には、O=又は(HO)−を示す。]
Figure 2008150580
[式中、MおよびMは、同一又は異なって、カルシウム、ストロンチウム、リチウム又は一塩基性アルミニウムから選択される少なくとも1種の金属カチオンであり、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10は、同一又は異なって、水素、C〜Cアルキル(ここで、いずれか2つのビシナル(隣接炭素に結合)またはジェミナル(同一炭素に結合)アルキル基は、一緒になって6個までの炭素原子を有する炭化水素環を形成してもよい)、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキレンオキシ、アミン及びC〜Cアルキルアミン、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素および沃素)並びにフェニルからなる群からそれぞれ選択される。]
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、造核剤(A)が下記一般式(5)で示される少なくとも一種のアミド系化合物であることを特徴とする人工透析用部材が提供される。
Figure 2008150580
[式中、Rは、炭素数3〜10の3価の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数4〜10の4価の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数5〜15の3価若しくは4価の飽和脂環族炭化水素基、又は炭素数6〜15の3価若しくは4価の芳香族炭化水素基を表す。Rは、同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す。aは、3又は4の整数を表す。]
また、本発明の第4の発明によれば、第1又は2の発明において、造核剤(A)が下記式(6)で示される少なくとも一種のアミド系化合物であることを特徴とする人工透析用部材が提供される。
Figure 2008150580
[式中、Rは、1,2,3−プロパントリカルボン酸又は1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸から全てのカルボンキシル基を除いて得られる残基を表す。3個又4個のRは、互いに同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す。aは、3又は4の整数を表す。]
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、前記プロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系重合体がJIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠したメルトフローレート(MFRPP)が1〜10g/10分でα−オレフィン含有量が1.0〜5.0重量%のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体であって、MFRcompが過酸化物により調整されたものであり、かつMFRcomp/MFRPPの比が3以上であることを特徴とする人工透析用部材が提供される。
さらに、本発明の第6の発明によれば、第5の発明において、前記プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体は、JIS K7121に準拠した示差走査型熱量計により得られる融解温度(ピーク値)が155℃以下であることを特徴とする人工透析用部材が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、前記プロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系重合体100重量部に対し、さらに、滑剤を0.001〜1重量部配合していることを特徴とする人工透析用部材が提供される。
さらに、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明において、人工透析用部材は、ダイアライザーの外筒、ヘッダーおよび/またはキャップであることを特徴とする人工透析用部材が提供される。
本発明の人工透析用部材は、好ましくは特定のプロピレン系重合体を基材とし、特定の造核剤を特定量用いたプロピレン系樹脂組成物からなるので、透析型人工腎臓装置承認基準のうち、透析液供給部及び透析液回路の品質及び試験法 1(2)を満足し、かつ、耐衝撃性、透明性、成形性に優れたものであり、従来のポリカーボネート(PC)に比べて成形加工性に優れ、低い成形温度によって得ることができる。
本発明は、プロピレン系重合体100重量部に対し、特定の造核剤(A)を0.01〜0.3重量部配合し、MFRcompが15〜50g/10分であるプロピレン系樹脂組成物からなり、かつ放射線滅菌または高圧蒸気滅菌されていることを特徴とする人工透析用部材である。
以下、詳細にプロピレン系樹脂組成物の構成成分、プロピレン系樹脂組成物の製造方法及び人工透析用部材について説明する。
1.プロピレン系樹脂組成物の構成成分
(1)プロピレン系重合体
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物に用いられるプロピレン系重合体は、プロピレン単独重合体であっても、プロピレンを主体とし、プロピレンと他のα−オレフィンとのプロピレン系共重合体であっても、それらを2種以上含む混合物であっても、いずれでも良い。高圧蒸気滅菌の場合、耐熱性の観点からプロピレン単独重合体が望ましい。
プロピレン系共重合体としては、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもどちらでも良いが、放射線滅菌される場合、放射線照射後の物性保持性と透明性の観点から、ランダム共重合体が望ましい。該共重合体に用いられるα−オレフィンとしては、プロピレンを除く炭素数2〜20のα−オレフィンが挙げられ、例えば、エチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等を例示できる。プロピレンと共重合されるα−オレフィンは、一種類でも二種類以上用いてもよい。このうち、エチレン、ブテン−1が好適であり、より好ましくはエチレンが物性バランスにおいて好適である。また、これらプロピレン系重合体は、二種以上混合して使用してもよい。
共重合に用いられるα−オレフィンの含量は、ブロック共重合体の場合は、15重量%以下が好ましい。また、ランダム共重合体の場合は、1.0〜5.0重量%が好ましく、より好ましくは2.0〜4.5重量%である。α−オレフィンの含量が5重量%を超えると、剛性が低くなり、人工透析用部材として適さなくなるおそれがある。また、1.0重量%未満では、放射線滅菌処理した後の物性低下が著しくなる恐れがある。
ここで、プロピレン及びα−オレフィンの含量は、下記の条件の13C−NMR法によって計測される値である。
装置:日本電子社製 JEOL−GSX270
濃度:300mg/2mL
溶媒:オルソジクロロベンゼン
本発明で用いられるプロピレン系重合体は、JIS K7210の「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」(試験条件:230℃、2.16kg荷重)に準拠したメルトフローレート(MFRPP)が1〜10g/10分であることが好ましく、2〜8g/10分がより好ましく、4〜6g/10分がさらに好ましい。メルトフローレートが1g/10分未満では、過酸化物によるプロピレン系樹脂組成物をペレット化する際、ペレット形状が歪となり、該ペレットを用いての成形に不具合が発生する恐れがあり、逆に、10g/10分を超えると、人工透析用部材に良好な耐衝撃性が得られない恐れがある。
また、本発明で好ましく用いられるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体は、示差走査型熱量計のより得られる融解温度(ピーク値)が155℃以下であることが好ましく、より好ましくは125〜150℃である。融解温度(ピーク値)が155℃を超えると、超音波溶着法で外筒とヘッダーなどの部材を接合させることが困難となる。
ここで、示差走査型熱量計のより得られる融解温度(ピーク値)は、JIS K7121の「プラスチックの転移温度測定方法」に準拠し、測定する値である。
本発明で用いるプロピレン系重合体の製造方法としては、特に限定されないが、立体規則性触媒を使用する重合法が好ましい。立体規則性触媒としては、チーグラー触媒やメタロセン触媒などが挙げられる。
チーグラー触媒としては、三塩化チタン、四塩化チタン、トリクロロエトキシチタン等のハロゲン化チタン化合物、前記ハロゲン化チタン化合物とハロゲン化マグネシウムに代表されるマグネシウム化合物との接触物等の遷移金属成分とアルキルアルミニウム化合物又はそれらのハロゲン化物、水素化物、アルコキシド等の有機金属成分との2成分系触媒、更にそれらの成分に窒素、炭素、リン、硫黄、酸素、ケイ素等を含む電子供与性化合物を加えた3成分系触媒が挙げられる。三塩化チタン系触媒の1例としては、Solvey触媒が挙げられる。
メタロセン触媒としては、(i)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物(いわゆるメタロセン化合物)と、(ii)メタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒と、必要により、(iii)有機アルミニウム化合物とからなる触媒であり、公知の触媒はいずれも使用できる。メタロセン化合物は、好ましくはプロピレンの立体規則性重合が可能な架橋型のメタロセン化合物であり、より好ましくはプロピレンのアイソ規則性重合が可能な架橋型のメタロセン化合物である。
(i)メタロセン化合物としては、例えば、特開昭60−35007号、特開昭61−130314号、特開昭63−295607号、特開平1−275609号、特開平2−41303号、特開平2−131488号、特開平2−76887号、特開平3−163088号、特開平4−300887号、特開平4−211694号、特開平5−43616号、特開平5−209013号、特開平6−239914号、特表平7−504934号、特開平8−85708号の各公報に開示されている。
更に、具体的には、メチレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン1,2−(4−フェニルインデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(4−メチルシクロペンタジエニル)(3−t−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(2−メチル−4−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(3’−t−ブチル−5’−メチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[4−(1−フェニル−3−メチルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(フルオレニル)t−ブチルアミドジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4,(1−ナフチル)−インデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(3−フルオロビフェニリル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス[1−(2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス[1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリドなどのジルコニウム化合物が例示できる。
上記において、ジルコニウムをチタニウム、ハフニウムに置き換えた化合物も同様に使用できる。場合によっては、ジルコニウム化合物とハフニウム化合物等の混合物を使用することもできる。また、クロリドは、他のハロゲン化合物、メチル、イソブチル、ベンジル等の炭化水素基、ジメチルアミド、ジエチルアミド等のアミド基、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシド基、ヒドリド基等に置き換えることができる。
これらの内、インデニル基あるいはアズレニル基を珪素あるいはゲルミル基で架橋したメタロセン化合物が好ましい。
また、メタロセン化合物は、無機または有機化合物の担体に担持して使用してもよい。該担体としては、無機または有機化合物の多孔質化合物が好ましく、具体的には、イオン交換性層状珪酸塩、ゼオライト、SiO、Al、シリカアルミナ、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThO、等の無機化合物、多孔質のポリオレフィン、スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、オレフィン・アクリル酸共重合体等からなる有機化合物、またはこれらの混合物が挙げられる。
(ii)メタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒としては、有機アルミニウムオキシ化合物(たとえば、アルミノキサン化合物)、イオン交換性層状珪酸塩、ルイス酸、ホウ素含有化合物、イオン性化合物、フッ素含有有機化合物等が挙げられる。
(iii)有機アルミニウム化合物としては、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムセスキハライド、アルキルアルミニウムジハライド、アルキルアルミニウムハイドライド、有機アルミニウムアルコキサイド等が挙げられる。
プロピレン系重合体の製造方法としては、上記触媒の存在下に、不活性溶媒を用いたスラリー法、溶液法、実質的に溶媒を用いない気相法や、あるいは重合モノマーを溶媒とするバルク重合法等が挙げられる。
例えば、スラリー重合法の場合には、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の不活性炭化水素又は液状モノマー中で行うことができる。重合温度は、通常−80〜150℃であり、好ましくは40〜120℃である。重合圧力は、1〜60気圧が好ましく、また得られるプロピレン系重合体の分子量の調節は、水素もしくは他の公知の分子量調整剤で行うことができる。重合は連続式又はバッチ式反応で行い、その条件は通常用いられている条件でよい。さらに重合反応は一段で行ってもよく、多段で行ってもよい。
人工透析用部材の1つであるダイアライザーは、その外筒とヘッダーが、通常、超音波溶着法により接合されている。この方法では、一般にプロピレン単独重合体は溶着しにくい傾向がある。そのため、融解温度(ピーク値)が155℃以下、より好ましくは125〜150℃の低融点タイプのプロピレン系ランダム共重合体、特にメタロセン触媒を用いて重合されたものが有利となる。
(2)造核剤
本発明で用いるプロピレン系樹脂組成物に用いられる造核剤(A)は、一般式(1)で示されるアミド系化合物であり、中でも、一般式(5)で示されるアミド系化合物が好ましく、一般式(6)で示されるアミド系化合物がより好ましい。
(CONHR …(1)
[式中、Rは、炭素数2〜30の飽和若しくは不飽和の脂肪族ポリカルボン酸残基、炭素数4〜28の飽和若しくは不飽和の脂環族ポリカルボン酸残基、又は炭素数6〜18の芳香族ポリカルボン酸残基を表わす。Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、又は炭素数3〜46のシクロアルキル基若しくはシクロアルケニル基を表わす。aは、2〜6の整数を表す。]
Figure 2008150580
[式(5)中、Rは、炭素数3〜10の3価の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数4〜10の4価の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数5〜15の3価もしくは4価の飽和脂環族炭化水素基、又は炭素数6〜15の3価もしくは4価の芳香族炭化水素基を表す。Rは、同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す。aは、3又は4の整数を表す。]
Figure 2008150580
[式(6)中、Rは、1,2,3−プロパントリカルボン酸又は1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸から全てのカルボンキシル基を除いて得られる残基を表す。3個又4個のRは、互いに同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す。aは、3又は4の整数を表す。]
具体的には、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリシクロヘキシルアミド、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−エチルシクロヘキシルアミド)1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、 1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−n−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−ペンチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−ヘキシルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−ヘプチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−オクチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ[4−(2−エチルヘキシル)シクロヘキシルアミド]、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−ノニルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−デシルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸[(シクロヘキシルアミド)ジ(2−メチルシクロヘキシルアミド)]、1,2,3−プロパントリカルボン酸[ジ(シクロヘキシルアミド)(2−メチルシクロヘキシルアミド)]、
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラシクロヘキシルアミド、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−エチルシクロヘキシルアミド)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−n−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−n−ペンチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−n−ヘキシルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−n−ヘプチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−n−オクチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ[4−(2−エチルヘキシル)シクロヘキシルアミド]、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−n−ノニルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−n−デシルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸[ジ(シクロヘキシルアミド)ジ(2−メチルシクロヘキシルアミド)]等が挙げられる。
上記アミド系化合物の中でも、特に造核作用(核剤効果)の観点から、一般式(1)もしくは(6)におけるRが水素原子又は炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基であるアミド系化合物が好ましい。
具体的には、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリシクロヘキシルアミド、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−エチルシクロヘキシルアミド)1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、 1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−n−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(シクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−エチルシクロヘキシルアミド)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−エチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−n−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−iso−プロピルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−n−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−n−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−iso−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−sec−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−tert−ブチルシクロヘキシルアミド)等が挙げられる。
これら好ましいアミド系化合物の中でも、特に透明性・剛性のバランス及び原料入手の容易性の観点から、一般式(1)もしくは(6)におけるRが水素原子又はメチル基であるアミド系化合物が特に好ましい。
具体的には、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリシクロヘキシルアミド、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラシクロヘキシルアミド、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸テトラ(4−メチルシクロヘキシルアミド)などが例示される。
また、透明性の改良効果を重視する場合には、一般式(1)、(5)もしくは(6)におけるRが1,2,3−プロパントリカルボン酸から全てのカルボンキシル基を除いて得られる残基であるアミド系化合物が特に好ましい。
具体的には、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリシクロヘキシルアミド、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(3−メチルシクロヘキシルアミド)、1,2,3−プロパントリカルボン酸トリ(4−メチルシクロヘキシルアミド)などが挙げられる。
上記のアミド系化合物は、単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
本発明に用いられる一般式(1)で示される造核剤(A)の結晶形態は、本発明の効果が得られる限り特に限定されず、六方晶、単斜晶、立方晶等の任意の結晶形態が使用できる。これらの結晶も公知であるか又は公知の方法に従い製造できる。
本発明に用いられる一般式(1)で示される造核剤(A)は、実質的に純度100%のものが好ましいが、若干不純物を含むものであってもよい。不純物を含有する場合であっても、当該一般式(1)で示される造核剤(A)の純度は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、特に97重量%以上が推奨される。不純物としては、反応中間体又は未反応体由来のモノアミドジカルボン酸若しくはそのエステル化合物、ジアミドモノカルボン酸若しくはそのエステル化合物、副反応体由来のイミド化合物などが例示される。
但し、結晶化速度を制御するなどの目的で、下記式(7)にて示される少なくとも一種の脂肪酸金属塩を、造核剤(A):式(7)の脂肪酸金属塩の重量比が100:0〜30:70の配合割合にて、本発明の効果を阻害しない範囲で使用しても構わない。
(RCOO)M …(7)
[式中、Rは、分子内に1個以上の水酸基を有していてもよい炭素数8〜32の飽和若しくは不飽和の脂肪族モノカルボン酸からカルボキシル基を除いて得られる残基を表す。nは、1又は2の整数を表し、n=2の場合、2個のRは、同一又は異なっていてもよい。Mは、1価又は2価の金属を表す。]
本発明に用いられる一般式(1)で示される造核剤(A)の製造方法は、特に限定はなく目的の造核剤が得られればよい。例えば、特定の脂肪族ポリカルボン酸成分と特定の脂環式モノアミン成分とから従来公知の方法(例えば、特開平7−242610号公報など)に従って製造することができる。
上記脂肪族ポリカルボン酸成分としては、1,2,3−プロパントリカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、該ポリカルボン酸の酸塩化物や無水物、該ポリカルボン酸と炭素数1〜4の低級アルコールとのエステル等の誘導体等が例示される。これら脂肪族ポリカルボン酸成分は、単独で又は2種を混合してアミド化に供することができる。
上記脂環式モノアミン成分は、シクロヘキシルアミン及び炭素数1〜10(好ましくは炭素数1〜4)の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基で置換されたシクロヘキシルアミンからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、単独で又は2種以上を混合してアミド化に供することができる。
具体的には、シクロヘキシルアミン、2−メチルシクロヘキシルアミン、3−メチルシクロヘキシルアミン、4−メチルシクロヘキシルアミンのメチルシクロヘキシルアミン、2−エチルシクロヘキシルアミン、2−n−プロピルシクロヘキシルアミン、2−iso−プロピルシクロヘキシルアミン、2−n−ブチルシクロヘキシルアミン、2−iso−ブチルシクロヘキシルアミン、2−sec−ブチルシクロヘキシルアミン、2−tert−ブチルシクロヘキシルアミンなどが挙げられる。
上記のアルキル基で置換されたシクロヘキシルアミンは、シス体、トランス体、又はこれら立体異性体の混合物のいずれであってもよい。好ましいシス体:トランス体の比率としては、50:50〜0:100の範囲が好ましく、特に35:65〜0:100の範囲が好ましい。
本発明に用いられる一般式(1)で示される造核剤(A)の粒径は、本発明の効果が得られる限り特に限定されないが、溶融プロピレン系重合体に対する溶解速度(又は溶解時間)の観点から、できる限り粒径の小さいものが好ましい。レーザー回折光散乱法で得られる粒径の測定値を採用した場合、造核剤の粒径としては、その最大粒径が200μm以下、好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm、特に10μm以下が推奨される。
最大粒径を上記範囲内に調製する方法としては、この分野で公知の粉砕装置を用いる方法が一般的であり、必要に応じて公知の分級装置を用いることもできる。具体的には、粉砕装置として流動層式カウンタージェットミル100AFG(商品名、ホソカワミクロン社製)、超音速ジェットミルPJM−200(商品名、日本ニューマチック社製)、ピンミル等、分級装置として振動篩、乾式分級機(サイクロン、ミクロンセパレーターなど)等が例示される。
本発明に用いられる一般式(1)で示される造核剤(A)は、透明性に優れている点、及び溶出が少ない点で、本用途に好ましい。
造核剤(A)の配合量は、プロピレン系重合体100重量部に対して、0.01〜0.3重量部であり、好ましくは0.1〜0.2重量部である。造核剤の配合量が0.01重量部未満では、十分な効果が得られ難く、一方、0.3重量部を超えて用いると、さらなる性能の向上が期待できないばかりか溶出しやすくなり、好ましくない。
本発明で用いるプロピレン系樹脂組成物に用いられる造核剤は、一般式(1)のものを配合したうえで、さらに、下記一般式(2)および/または一般式(3)、および/または一般式(4)で表されるものを、追添できる。
Figure 2008150580
[式中、Rは、直接結合、硫黄又は炭素数1〜9のアルキレン基若しくはアルキリデン基であり、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基であり、MはNaであり、nはMの価数である。]
一般式(2)で表される造核剤(B)である有機リン酸金属塩化合物の具体例としては、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−エチリデン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−エチリデン−ビス−(4−i−プロピル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−ブチリデン−ビス−(4,6−ジメチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−ブチリデン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−t−オクチルメチレン−ビス−(4,6−メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−t−オクチルメチレン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム(4,4’−ジメチル−6,6’−ジ−t−ブチル−2,2’−ビフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−エチリデン−ビス−(4−s−ブチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−エチルフェニル)フォスフェート、およびこれらの2種以上の混合物を例示することができる。これらのうち特に、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートが好ましい。
この様な造核剤(B)としては、市販のものを用いることができる。具体的には、旭電化工業(株)社製NA−11を挙げることができる。
一般式(2)で示される造核剤(B)の配合量は、プロピレン系重合体100重量部に対し、0.005〜0.3重量部の範囲が好ましく、0.01〜0.2重量部の範囲がより好ましい。0.005重量部未満では効果が得られず、一方、0.3重量部を超える範囲は、更なる効果が得られないばかりか、経済的にも好ましくない。
Figure 2008150580
[式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示し、Mは、周期律表第III族または第IV族の金属原子を示し、Xは、Mが周期律表第III族の金属原子を示す場合には、HO−を示し、Mが周期律表第IV族の金属原子を示す場合には、O=又は(HO)−を示す。]
上記一般式(3)で表される造核剤(C)としては、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジメチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジメチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジエチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジエチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、およびヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4−i−プロピル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4−i−プロピル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]等の芳香族燐酸エステル類を挙げることができる。該芳香族燐酸エステル類うち中でも、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、およびヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]が好ましい。これら芳香族燐酸エステル類は、2種以上の混合物として用いても良い。
また、該芳香族燐酸エステル類は、有機アルカリ金属塩と併用させることが効果的である。該有機アルカリ金属塩とは、アルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ金属β−ジケトナート及びアルカリ金属β−ケト酢酸エステル塩からなる群より選択される少なくとも一種の有機アルカリ金属塩を示すことができる。該有機アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
上記アルカリ金属カルボン酸塩を構成するカルボン酸としては、例えば酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、オクチル酸、イソオクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、メリシン酸、β−ドデシルメルカプト酢酸、β−ドデシルメルカプトプロピオン酸、β−N−ラウリルアミノプロピオン酸、β−N−メチル−ラウロイルアミノプロピオン酸等の脂肪族モノカルボン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、クエン酸、ブタントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸、ナフテン酸、シクロペンタンカルボン酸、1−メチルシクロペンタンカルボン酸、2−メチルシクロペンタンカルボン酸、シクロペンテンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、1−メチルシクロヘキサンカルボン酸、4−メチルシクロヘキサンカルボン酸、3,5−ジメチルシクロヘキサンカルボン酸、4−ブチルシクロヘキサンカルボン酸、4−オクチルシクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキセンカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸等の脂環式モノ又はポリカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、キシリル酸、エチル安息香酸、4−t−ブチル安息香酸、サリチル酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族モノ又はポリカルボン酸等が挙げられる。
上記アルカリ金属β−ジケトナートを構成するβ−ジケトン化合物としては、例えば、アセチルアセトン、ピバロイルアセトン、パルミトイルアセトン、ベンゾイルアセトン、ピバロイルベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン等が挙げられる。
また、上記アルカリ金属β−ケト酢酸エステル塩を構成するβ−ケト酢酸エステルとしては、例えば、アセト酢酸エチル、アセト酢酸オクチル、アセト酢酸ラウリル、アセト酢酸ステアリル、ベンゾイル酢酸エチル、ベンゾイル酢酸ラウリル等が挙げられる。
該有機アルカリ金属塩の成分であるアルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ金属β−ジケトナート又はアルカリ金属β−ケト酢酸エステル塩は、各々上記アルカリ金属とカルボン酸、β−ジケトン化合物又はβ−ケト酢酸エステルとの塩であり、従来周知の方法で製造することができる。また、これら各アルカリ金属塩化合物の中でも、アルカリ金属の脂肪族モノカルボン酸塩、特に、リチウムの脂肪族カルボン酸塩が好ましく、とりわけ炭素数8〜20の脂肪族モノカルボン酸塩が好ましい。
一般式(3)で表される造核剤(C)としては、市販のものを用いることができる。具体的には、旭電化工業(株)社製NA−21を挙げることができる。
上記一般式(3)で示される造核剤(C)の配合量は、プロピレン系重合体100重量部に対し、0.005〜0.15重量部の範囲が好ましく、0.01〜0.1重量部の範囲がより好ましい。0.005重量部未満では効果が得られず、一方、0.15重量部を超える範囲は、更なる効果が得られないばかりか経済的にも好ましくない。
また、一般式(4)で示される造核剤(D)は、下記の通りである。
Figure 2008150580
[式(4)中、MおよびMは、同一または異なって、カルシウム、ストロンチウム、リチウム又は一塩基性アルミニウムから選択される少なくとも1種の金属カチオンであり、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10は、同一または異なって、水素、C−Cアルキル(ここで、いずれか2つのビシナル(隣接炭素に結合)またはジェミナル(同一炭素に結合)アルキル基は、一緒になって6個までの炭素原子を有する炭化水素環を形成してもよい)、ヒドロキシ、C−Cアルコキシ、C−Cアルキレンオキシ、アミンおよびC−Cアルキルアミン、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素および沃素)並びにフェニルからなる群からそれぞれ選択される。]
ここで、「一塩基性アルミニウム」なる用語は周知であり、2つのカルボン酸基が結合した単一カチオンとしてアルミニウムヒドロキシド基を含むことを意図している。さらに、これら可能な塩のそれぞれにおいて、非対称炭素原子の立体配置は、シスまたはトランスのいずれでもよいが、シスが好ましい。
一般式(4)で表される造核剤(D)は、凝集等を防止する目的で、他の化合物を混合して用いても差し支えない。
この様な造核剤(D)としては、市販のものを用いることができる。具体的には、メリケン(株)社製ハイパフォームHPN68Lを挙げることができる。ハイパフォームHPN68Lの造核剤成分の構造を下記に示す。
Figure 2008150580
一般式(4)又は一般式(8)で示される造核剤(D)の配合量は、プロピレン系重合体100重量部に対し、0.005〜0.15重量部の範囲が好ましく、0.01〜0.1重量部の範囲がより好ましい。0.005重量部未満では効果が得られず、0.15重量部を超える範囲は、溶出試験に不合格になる場合がある。
また、本発明の効果を阻害しない範囲で、一般式(1)で示される造核剤(A)単独もしくはそれを混合した造核剤に対して、さらに他の造核剤を混合して用いても良い。
具体的には、ソルビトール系造核剤、有機リン酸塩系造核剤および芳香族燐酸エステル類、タルクなど既知の造核剤を、本発明の効果を大きく阻害しない範囲で添加することができる。
(3)その他の成分
本発明に用いられるプロピレン系樹脂組成物には、前記プロピレン系重合体および前記造核剤の他に、本発明の効果を阻害しない範囲で、公知の樹脂用配合剤、例えば、滑剤、中和剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、有機染料、帯電防止剤、スリップ剤、脂肪酸金属塩等の分散剤、着色剤、充填剤、オレフィン系エラストマー等をそれ自体公知の処方で配合させることができる。
但し、放射線滅菌を行うにあたり、放射線滅菌後の着色の観点から、一般にフェノール系酸化防止剤は、添加しない方が好ましく、通常は、リン系酸化防止剤0.01〜0.2重量%(例えば旭電化工業(株)製 アデガスタブ2112)とヒンダードアミン系紫外線安定剤(略称はHALSで、例えばチバスペシャリティケミカルズ(株)製 TINUVIN622LD)0.01〜0.2重量%を組み合わせた処方で、放射線照射に対応させる。
本発明では、前記滑剤として、シリコーン(シリコーンオイル)を添加することができる。ダイアライザーの本体は、円柱状の形状をしている場合が多く、この場合、良好な離型性が必要であり、滑剤が必要となる。添加量としては、プロピレン系重合体100重量部に対して、1重量部以下であり、0.001〜0.5重量部が好ましく、0.01〜0.15重量部が更に好ましく、0.03〜0.1重量部がより好ましい。
具体的なシリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルヒドロジエンポリシロキサン、α−ωビス(3−ヒドロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、ポリオキシアルキレン(C〜C)ジメチルポリシロキサン、ポリオルガノ(C〜Cのアルキル基および/またはフェニル基)シロキサンとポリアルキレン(C〜C)グリコールの縮合物などが挙げられる。この中でもジメチルポリシロキサンとメチルフェニルポリシロキサンが好ましく、特にジメチルポリシロキサンが良い。該滑剤は、単独、又は複数用いても構わない。尚、粘度は低い方が離型性は効果が現れるが、粘度が低いと、溶出しやすくなるため、25℃において、50cst以上が良く、100cst以上が更に良く、300cst以上のものがより好ましい。
ジメチルポリシロキサンなどのシリコーンを添加した場合、離型性を発現させるだけでなく、シリンダー内やホットランナー内で発生する焼けを防止することができる。
前記中和剤の具体例としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの金属脂肪酸塩、ハイドロタルサイト(商品名:協和化学工業(株)の下記一般式(9)で表されるマグネシウムアルミニウム複合水酸化物塩)、ミズカラック(下記一般式(10)で表されるリチウムアルミニウム複合水酸化物塩)などが挙げられる。特に、ダイアライザーなど長期接液する部材として用いる場合には、接触する液体に溶出しないハイドロタルサイトやミズカラックが有利である。
Mg1−xAl(OH)(COx/2・mHO ・・・(9)
[式(9)中、xは、0≦x≦0.5であり、mは、3以下の数である。]
[AlLi(OH)X・mHO ・・・(10)
[式(10)中、Xは、無機または有機のアニオンであり、nは、アニオン(X)の価数であり、mは、3以下である。]
ダイアライザーの本体は、円柱状の形状をしている場合が多く、良好な離型性が必要となる場合があり、前記シリコーンが有効であるが、本発明の効果を阻害しない範囲で、離型性効果のあるステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩を使用したり、一般に用いられる滑剤であるオレイン酸アミドやエルカ酸アミドなどを添加する事ができる。
前記安定剤(酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤)としては、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、ジ−ステアリル−ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−フォスフォナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−フォスフォナイト、6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1.3.2]ジオキサホスフェピン等のリン系酸化防止剤、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ハイドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ハイドロキシベンジル)イソシアヌレート等のフェノール系酸化防止剤、ジ−ステアリル−ββ’−チオ−ジ−プロピオネート、ジ−ミリスチル−ββ’−チオ−ジ−プロピオネート、ジ−ラウリル−ββ’−チオ−ジ−プロピオネート等のチオ系酸化防止剤、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等の紫外線吸収剤、n−ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピぺリジル)セバケート、コハク酸ジメチル−2−(4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジル)エタノール縮合物、ポリ{[6−〔(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ〕−1,3,5−トリアジン−2,4ジイル]〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕}、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス〔N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ〕−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物等の光安定剤、放射線処理で変色がなく耐NOxガス変色性が良好な化学式(11)や一般式(12)で表されるアミン系酸化防止剤、5,7−ジ−t−ブチル−3−(3,4−ジ−メチル−フェニル)−3H−ベンゾフラン−2−ワン等のラクトン系酸化防止剤、化学式(13)等のビタミンE系酸化防止剤を挙げることができる。
Figure 2008150580
Figure 2008150580
Figure 2008150580
また、人工透析用部材の1つであるダイアライザーの外筒とヘッダーとをレーザー溶着法により接合させる際、溶着を容易にさせるために、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、顔料および有機染料などを配合しても良い。
なかでも、レーザー溶着させるためには、有機染料が好適であり、一例として、下記一般式(14)で表される有機染料(クウォータルイミド)を挙げることができ、プロピレン系重合体100重量部に対し、0.0001〜0.05重量部の範囲で用いられるのが望ましい。この様な有機染料としては、市販のものを用いることができる。具体的には、下記一般式(14)で表されるBASF社製Lumogen IR 788を挙げることができる。
Figure 2008150580
(式中、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子または炭化水素基を表す。)
2.プロピレン系樹脂組成物の製造方法
本発明で用いられるプロピレン系樹脂組成物は、JIS K7210の「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」(試験条件:230℃、2.16kg荷重)に準拠したメルトフローレート(MFRcomp)が15〜50g/10分であることが必要であり、好ましくは20〜40g/10分であり、より好ましくは25〜35g/10分である。メルトフローレート(MFRcomp)が15g/10分未満では、成形加工性の低下をきたし、製品として満足できるものが得られ難くなるおそれがある。また、メルトフローレート(MFRcomp)が50g/10分を超えると、機械的強度の低下が懸念される。
また、本発明で用いられるプロピレン系樹脂組成物では、MFRcompは、MFRPPが1〜10g/10分のプロピレン系樹脂を過酸化物により調整されたものであり、かつMFRcomp/MFRPPの比が3以上であると、ダイアライザーの外筒を成形した際、反り変形などの不具合の要因となる成形による残留応力が残りにくくなり、また、成形配向がかかりにくくなって、寸法安定性の良い成形品が得られ、成形品での耐衝撃性も良好となる。
この際、用いるプロピレン系樹脂のMFRPPは、10g/10分を超えると、良好な耐衝撃性が得られず、MFRPPが1g/10分未満では、過酸化物による調整後のペレットの形状が歪になり、該ペレットを用いての成形に不具合が発生する恐れがある。
また、MFRcomp/MFRPPの比が3未満では、人工透析用部材に良好な耐衝撃性を与えられない恐れがある。MFRcomp/MFRPPの比は、4以上が好ましく、5以上がより好ましく、7以上がさらに好ましい。
MFRcomp/MFRPPの比の調整には、一般にプロピレン系樹脂に用いられる公知の過酸化物を用い、プロピレン系重合体における分子量の大きい重合体を減成する方法を挙げることができる。
過酸化物としては、例えば、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカルボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカルボネート、ジ(2−メトキシエチル)パーオキシジカルボネート、ジ(メトキシイソプロピル)パーオキシジカルボネート、ジ(2−メチルヘキシル)パーオキシジカルボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシパイバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノールパーオキサイド、オクタノールパーオキサイド、デカノールパーオキサイド、ラウロールパーオキサイド、ステアロールパーオキサイド、プロピオニルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)、ベンゾキシパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサノン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、琥珀酸オキサイド、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカルボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルジパーオキシフタレート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バラレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキシド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−イソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,2−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロキシパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
過酸化物の配合量は、プロピレン系重合体100重量部に対して、0.005〜0.065重量部が好ましく、0.013〜0.060重量部がより好ましい。過酸化物の配合量が0.005重量部未満では、十分な効果が得られ難く、0.065重量部を超えて用いると、MFRcompの値が50g/10分以上となる恐れがある。
このようなプロピレン系樹脂組成物は、前記プロピレン系重合体と前記造核剤または、必要において、過酸化物または/および他の樹脂用配合剤の各成分をヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、リボンブレンダー等を用いて配合し、通常の単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、プラベンダー、ロール等で190〜280℃の温度範囲で溶融混練することにより得ることができる。特に温度範囲としては、230〜280℃にて透明性の優れた製品を得る事ができる。
3.人工透析用部材
本発明の人工透析用部材は、上記プロピレン系樹脂組成物を、公知の方法である射出成形法、押出成形法、ブロー成形法など各種成形法によって、成形することにより得られる。
本発明の人工透析用部材としては、ダイアライザーの外筒やヘッダー、及びその関連部材を挙げることができる。
本発明の人工透析用部材は、放射線滅菌、及び/又は高圧蒸気滅菌が施されたものである。放射線としては、γ線や電子線を挙げることができ、本発明の人工透析用部材には、1〜50KGyの照射が行われていることが好ましく、5〜30KGyの照射がされていることがより好ましい。要求される殺菌の程度や成形時の環境などによるが、照射量が1KGy未満では、十分な効果が得られ難く、一方、50KGyを超えて用いると、放射線照射後の物性低下が著しくなり、良好な製品が得られなくなる恐れがある。また、高圧蒸気滅菌は、121℃で数十分処理される事が一般的である。
また、特に、ダイアライザーの外筒は、構造上、衝撃を受け易いため、耐衝撃性に優れていることが望まれる。JIS K7110の「プラスチック−アイゾット衝撃強さの試験方法」に準拠して23℃で測定したアイゾット衝撃値が放射線照射前で2.0kgf/cm以上あることが好ましく、2.5kgf/cm以上であることがより好ましい。アイゾット衝撃値が2.0kgf/cm未満であると、製品の使用時や運搬等の際に破損する可能性が高くなり、好ましくない。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの記載により何ら限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例において用いた物性測定法及びプロピレン系重合体、造核剤および公知の樹脂用配合剤は、以下の通りである。
1.物性測定法
(1)エチレン濃度:
13C−NMRにより組成を検定したエチレン・プロピレンランダムコポリマーを基準物質として、733cm−1の特性吸収体を用いる赤外分光法により、ランダムコポリマー中のエチレン含量を測定した。ペレットをプレス成形により約500ミクロンの厚さのフィルムとしたものを用いた。
(2)MFR:
JIS K7210の「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」、試験条件:230℃ 2.16Kg荷重に、準拠して測定した。
(3)ヘイズ値:
試験片に25KGyの電子線を照射し、1週間後にJIS K7105の「プラスチックの光学的特性試験方法」に準拠してヘイズを測定した。また、高圧蒸気滅菌処理(121℃で60分)を施し、1週間後にJIS K7105の「プラスチックの光学的特性試験方法」に準拠してヘイズを測定した。尚、滅菌処理(電子線処理、高圧蒸気滅菌処理)する前の試験片も同様に測定した。試験片の肉厚は2mmである。
(4)曲げ弾性率:
試験片に25KGyの電子線を照射し、1週間後にJIS K7203の「硬質プラスチックの曲げ試験方法」に準拠して23℃で測定した。また、また、高圧蒸気滅菌処理(121℃で60分)を施し、1週間後にJIS K7203の「硬質プラスチックの曲げ試験方法」に準拠して23℃で測定した。尚、滅菌処理する前の試験片も、同様に測定した。
(5)アイゾット衝撃値:
試験片に25KGyの電子線を照射し、1週間後にJIS K7110の「プラスチック−アイゾット衝撃強さの試験方法」に準拠して23℃で測定した。また、高圧蒸気滅菌処理(121℃で60分)を施し、1週間後にJIS K7110の「プラスチック−アイゾット衝撃強さの試験方法」に準拠して23℃で測定した。尚、滅菌処理する前の試験片も同様に測定した。
(6)透析型人工腎臓装置への適合性:
透析型人工腎臓装置承認基準のうち、透析液供給部及び透析液回路の品質及び試験法 1(2)に従って、測定を実施した。なお、溶出試験結果の基準は、以下の通りである。
(i)外観:無色燈明、異物なし
(ii)あわだち:3分以内に消失
(iii)pH:ブランクとの差が1.5以下
(iv)亜鉛:標準溶液以下
(v)過マンガン酸カリウム還元性物質:標準溶液との過マンガン酸カリウム消費量の差1.0ml以下
(vi)蒸発残留物:1.0mg以下
(vii)紫外吸収スペクトル:0.1以下
尚、放射線滅菌処理を実施した人工透析部材は、70℃の温度下で溶出試験の実施し、高圧蒸気滅菌処理(121℃で1時間)を実施した人工透析部材は、121℃の温度下で溶出試験の実施した。
(7)成形性:
成形性評価用の成形品(12cm×12cm×2.5mm板上に、厚み1mmの25mm×20mm×20mmの箱型が3×4並んでいる形状)を作成した。得られた成形品をおよび成形品離型時の離型抵抗より、その成形性を評価した。
ここで、射出成形によって得られた成形品を金型から離型させる際の離型抵抗(離型しにくさ)が大きいと、過度の応力にてイジェクターピンを動かさなければならないため、成形品に割れや白化が発生する確率が高くなり、良質な成形品を得られにくく不良率が高くなってしまう。また、そのような状況下でイジェクターピンを高速で動かすと、なおいっそう割れや白化が発生する確率が高くなるため、成形品を金型から離型させる速度を遅くしなければならなくなり、成形サイクルの低下を招いてしまう。上述のような理由により、成形品の離型抵抗が大きい(離形性が悪い)と成形性が悪くなるため、成形品の離型抵抗を測定し、成形性の評価を行った。なお、離型抵抗が小さいほど、金型から成形品が離型しやすく(成形性が良い)、逆に離型抵抗が大きいほど、金型から成形品が離型しにくい(成形性が悪い)ということを示している。
2.使用材料
(A)プロピレン系重合体
(i)エチレンプロピレンランダム共重合体(RPP1):エチレン濃度 2.5重量%、MFR=4g/10分のエチレンプロピレンランダム共重合体、融解温度(ピーク値)148℃、チーグラ−触媒で重合
(ii)エチレンプロピレンランダム共重合体(RPP2):エチレン濃度 2.0重量%、MFR=7g/10分のエチレンプロピレンランダム共重合体、融解温度(ピーク値)142℃、メタロセン触媒で重合
(iii)エチレンプロピレンランダム共重合体(RPP3):エチレン濃度 2.5重量%、MFR=12g/10分のエチレンプロピレンランダム共重合体、融解温度(ピーク値)148℃、チーグラ−触媒で重合
(iv)プロピレン単独重合体(HPP):MFR=4g/10分、融解温度(ピーク値)160℃、チーグラ−触媒で重合
(B)造核剤
(i)造核剤X:1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−メチルシクロヘキシルアミド)・・・一般式(1)で示される造核剤(A)に相当
(ii)NA−11:有機リン酸金属塩化合物系核剤[一般式(2)該当品:旭電化工業(株)製]
(iii)NA−21:芳香族燐酸エステル類[一般式(3)該当品:旭電化工業(株)製]
(iv)HPN68L:[一般式(4)該当品:ミリケン社製]
(v)ゲルオールMD:ソルビトール系核剤[本発明非該当品:新日本理化(株)製]
(C)樹脂用配合剤
(i)DHT−4A:マグネシウム・アルミニウム・ハイドロオキサイド・カーボネート・ハイドレート(協和化学工業(株)製の中和剤)
(ii)アデガスタブ2112:フォスファイト系酸化防止剤(旭電化工業(株)製)
(iii)TINUVIN622LD:ヒンダードアミン系紫外線安定剤(チバスペシャリティケミカルズ(株)製)
(iv)パーヘキサ25B:過酸化物[2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(t−ブチルパ−オキシ)ヘキサン:日本油脂(株)製]
(v)シリコーンオイル:Dowcorning360Medical Fluid(シリコーン)−100(東レ・ダウコーニング(株)製、粘度100cst)
[実施例1]
プロピレン系ランダム共重合体(RPP1)100重量部に対して、造核剤として造核剤Xを0.15重量部、DHT−4Aを0.03重量部、アデガスタブ2112を0.10重量部およびTINUVIN622LDを0.05重量部、パーヘキサ25Bを0.034重量部配合し、スーパーミキサーでドライブレンドした後、35ミリ径の2軸押出機を用いて溶融混練した。ダイ出口部温度250℃でダイから押し出し、ペレット化した。
得られたペレットを射出成形機により、樹脂温度240℃、射出圧力900kg/cm及び金型温度40℃で射出成形し、試験片を得、それを用いて物性測定と評価を実施した。また離型抵抗値の測定も行った。その結果を表1に示す。
[実施例2〜8、比較例1〜4]
表1に示すプロピレン系重合体、造核剤、滑剤、過酸化物を用いた以外は、実施例1と同様にして、試験片を得、それを用いて物性測定と評価を実施した。その結果を表1に示す。
Figure 2008150580
Figure 2008150580
表1、2から明らかなように、実施例1〜5および実施例7と8は、本発明の構成からなるRPP 100重量部に対し、本発明の構成からなる造核剤(A)である1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−メチルシクロヘキシルアミド)を0.15重量部配合したプロピレン系樹脂組成物を用いて得た成形品である。該成形品は、透明性に優れ透析型人工腎臓装置承認基準のうち、透析液供給部及び透析液回路の品質及び試験法 1(2)に適合していることがわかる。
また、実施例2〜5は、本発明の構成からなる、100重量部のRPP1に対し、一般式(1)で表される造核剤(A)である1,2,3−プロパントリカルボン酸トリス(2−メチルシクロヘキシルアミド)を0.15重量部と、他の造核剤であるNA11,NA21,HPN68Lをそれぞれ添加したプロピレン系樹脂組成物を用いて得られた成形品である。
実施例2と4の成形品は、実施例1より得られた成形品と比べ、更に透明性と剛性が向上し、透析型人工腎臓装置承認基準のうち、透析液供給部及び透析液回路の品質及び試験法 1(2)に適合していることがわかる。実施例5は、物性バランスは実施例1より劣るが、JIS K7121の「プラスチックの転移温度測定方法」に準拠し、示差走査型熱量計を用いて測定した結晶化温度(ピーク値)において、実施例1は119℃、実施例5は121.5℃を示しており、実施例5の方が実施例1よりも結晶化温度が2.5℃高いため、実施例5は、実施例1に比べ、成形性が向上(成形サイクルのアップ)していることがわかる。
また、実施例3は、実施例2に、滑剤として粘度:100cstのシリコーンを0.05重量部配合したものであり、成形性が向上(離型抵抗値の低下)しており、物性を保持し、透析型人工腎臓装置承認基準のうち、透析液供給部及び透析液回路の品質及び試験法 1(2)に適合していることがわかる。
さらに、実施例6は、プロピレン単独重合体の為、高圧蒸気滅菌処理を実施しており、透明性が優れ、透析型人工腎臓装置承認基準のうち、透析液供給部及び透析液回路の品質及び試験法 1(2)に適合していることがわかる。これに対して、比較例4は、本発明の構造とは異なる造核剤であるゲルオールMDとNA11を配合したプロピレン単独重合体であり、実施例6と同様に高圧蒸気滅菌処理を実施する場合、透明性は優れるものの、透析型人工腎臓装置承認基準のうち、透析液供給部及び透析液回路の品質及び試験法 1(2)に不適合である事がわかる。
またさらに、実施例7、8で得られる該組成物を用いた場合、耐衝撃性と透明性に優れ、溶出特性にも優れた人工透析用部材が得られることがわかる。また、本発明では、特定のプロピレン系重合体を主体とする樹脂で構成されているため、現在主流であるPCに比べ、低い成形温度によって得られ、成形加工性にも優れている上、低価格である特徴を有する。
一方、表2から明らかなように、比較例1と2は、100重量部のRPP1に対し、本発明の構成の造核剤(A)とは異なる造核剤であるNA11またはHPN68Lを0.2重量部配合したプロピレン系樹脂組成物を用いて得た成形品である。また、比較例3は、RPP1に対し、造核剤を配合しないプロピレン系樹脂組成物を用いて得た成形品である。比較例1〜3により得られた成形品は、透析型人工腎臓装置承認基準のうち、透析液供給部及び透析液回路の品質及び試験法 1(2)では適合するものの、透明性が不足しているため、該組成物を用いた場合、得られる人工透析用部材、特に、ダイアライザーの外筒としては、透析の状態を確認し難く、不適切なものであることわかる。
また、表1、2から明らかなように、実施例6は、HPPを使用した場合であり、実施例8は、MFRcomp/MFRPPの比が3未満のプロピレン系樹脂組成物を用いた場合で、ともに耐衝撃性を充分に改善することはできなかったが、人工透析用部材としては、使用に耐えられる衝撃値であり、他の物性においては良好なものであった。
[実施例9]
実施例2によって得られたペレットを用いて、射出成形機により、樹脂温度250℃及び金型温度40℃で射出成形し、外径4cm、筒の長さ28cm、側面部肉厚1.6mmのダイアライザー外筒を作成した後、該ダイアライザー外筒に25KGyの電子線を照射し、該ダイアライザー外筒の側面部の一部(2×3cm)を切り出し、肉厚1.6mmのヘイズを測定したところ、その値は20%であり、本発明の人工透析用部材は、透明性に優れるものであることがわかる。
本発明の人工透析用部材は、透析型人工腎臓装置承認基準のうち、透析液供給部及び透析液回路の品質及び試験法 1(2)を満足し、かつ、耐衝撃性、透明性、成形性に優れたものであることがわかる。また、本発明の人工透析用部材は、放射線滅菌処理や高圧蒸気滅菌処理が行われているが、滅菌処理による物性低下が少ない。さらに、ダイアライザーの外筒やヘッダーに関しては、その優れた透明性から、使用時の内部状態を外部からはっきりと観察することができ、溶出特性にも優れていることから、人工透析用として、安心して実用することができる。
人工透析の概念図である。 ダイアライザーの要部断面図である。
符号の説明
1 透析を受ける人の腕
2 チューブ
3 血液ポンプ
4 エアートラップ
5 ダイアライザー
6 コンソール
7 血液流入口(キャップあり)
8 血液流出口(キャップあり)
9 透析液流入口(キャップあり)
10 透析液流出口(キャップあり)
11 ホローファイバー
12 ダイアライザーの外筒
13 ダイアライザーのヘッダー

Claims (8)

  1. プロピレン系重合体100重量部に対し、下記一般式(1)で表される造核剤(A)を0.01〜0.3重量部配合し、JIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠したメルトフローレート(MFRcomp)が15〜50g/10分であるプロピレン系樹脂組成物からなり、かつ放射線滅菌または高圧蒸気滅菌されていることを特徴とする人工透析用部材。
    (CONHR …(1)
    [式中、Rは、炭素数2〜30の飽和若しくは不飽和の脂肪族ポリカルボン酸残基、炭素数4〜28の飽和若しくは不飽和の脂環族ポリカルボン酸残基、又は炭素数6〜18の芳香族ポリカルボン酸残基を表わす。Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、又は炭素数3〜46のシクロアルキル基若しくはシクロアルケニル基を表わす。aは、2〜6の整数を表す。]
  2. 前記プロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系重合体100重量部に対し、さらに、0.005〜0.3重量部の下記一般式(2)で示される造核剤(B)、0.005〜0.15重量部の下記一般式(3)で示される造核剤(C)、又は0.005〜0.15重量部の下記式(4)で示される造核剤(D)から選ばれる少なくとも1種の造核剤を配合していることを特徴とする請求項1に記載の人工透析用部材。
    Figure 2008150580
    [式中、Rは、直接結合、硫黄又は炭素数1〜9のアルキレン基若しくはアルキリデン基であり、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基であり、MはNaであり、nはMの価数である。]
    Figure 2008150580
    [式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示し、Mは、周期律表第III族又は第IV族の金属原子を示し、Xは、Mが周期律表第III族の金属原子を示す場合には、HO−を示し、Mが周期律表第IV族の金属原子を示す場合には、O=又は(HO)−を示す。]
    Figure 2008150580
    [式中、MおよびMは、同一又は異なって、カルシウム、ストロンチウム、リチウム又は一塩基性アルミニウムから選択される少なくとも1種の金属カチオンであり、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10は、同一又は異なって、水素、C〜Cアルキル(ここで、いずれか2つのビシナル(隣接炭素に結合)またはジェミナル(同一炭素に結合)アルキル基は、一緒になって6個までの炭素原子を有する炭化水素環を形成してもよい)、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルキレンオキシ、アミン及びC〜Cアルキルアミン、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素および沃素)並びにフェニルからなる群からそれぞれ選択される。]
  3. 造核剤(A)が下記一般式(5)で示される少なくとも一種のアミド系化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の人工透析用部材。
    Figure 2008150580
    [式中、Rは、炭素数3〜10の3価の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数4〜10の4価の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数5〜15の3価若しくは4価の飽和脂環族炭化水素基、又は炭素数6〜15の3価若しくは4価の芳香族炭化水素基を表す。Rは、同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す。aは、3又は4の整数を表す。]
  4. 造核剤(A)が下記式(6)で示される少なくとも一種のアミド系化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の人工透析用部材。
    Figure 2008150580
    [式中、Rは、1,2,3−プロパントリカルボン酸又は1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸から全てのカルボンキシル基を除いて得られる残基を表す。3個又4個のRは、互いに同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表す。aは、3又は4の整数を表す。]
  5. 前記プロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系重合体がJIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠したメルトフローレート(MFRPP)が1〜10g/10分でα−オレフィン含有量が1.0〜5.0重量%のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体であって、MFRcompが過酸化物により調整されたものであり、かつMFRcomp/MFRPPの比が3以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の人工透析用部材。
  6. 前記プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体は、JIS K7121に準拠した示差走査型熱量計により得られる融解温度(ピーク値)が155℃以下であることを特徴とする請求項5に記載の人工透析用部材。
  7. 前記プロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系重合体100重量部に対し、さらに、滑剤を0.001〜1重量部配合していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の人工透析用部材。
  8. 人工透析用部材は、ダイアライザーの外筒、ヘッダーおよび/またはキャップであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の人工透析用部材。
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