JP6409561B2 - 医療用プロピレン系樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents

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本発明は、医療用プロピレン系樹脂組成物およびその成形品に関し、詳しくは医療用途向け薬剤、薬液保存容器のうち、特に、第16改正 日本薬局方 7.02 プラスチック医薬品容器試験法 2.プラスチック製水性注射剤容器の規格 2.1ポリエチレン製又はポリプロピレン製水性注射剤容器の(4)重金属、(5)鉛、(6)カドミウム、(7)強熱残分、(8)溶出物の試験項目を満足する医療用成形品に適した医療用プロピレン系樹脂組成物およびその成形品に関する。
プロピレン系重合体は、その優れた安全衛生性や成形加工性、力学特性、ガスバリヤー性の特徴を生かし、各種の医療器具に使用されている。特に近年、高レベルの安全衛生性が求められる薬剤や薬液の保存容器として、アンプルやバイアルの代替容器用材に活用が散見されるようになり、その用途向け材料開発が積極的に行なわれている(例えば、特許文献1参照。)。
このような保存容器には、蒸気滅菌時の耐熱性、耐失透性、耐添加剤抽出性、水蒸気や酸素のガスバリヤー性が維持されることや、使用添加剤が保存薬剤、薬液に相互作用を及ぼさないことが必要であり、具体的には第16改正 日本薬局方 7.02 プラスチック医薬品容器試験法 2.プラスチック製水性注射剤容器の規格を満足することが必須要件である。
また、プロピレン系重合体は、剛性や耐熱性、ガスバリヤー性の点ではプロピレン単独重合体が、透明性や耐衝撃性の点ではエチレンとのランダム共重合体が好適であり、状況に応じて適宜選択的に用いられているが、保存容器に用いる場合、プロピレン系重合体のみでは、透明性や剛性の点において十分な性能を発揮させることが困難であるため、造核剤や中和剤を種々組み合わせて、必須性能の最適化が試みられてきた。
しかしながら、例えば、ソルビトール系透明造核剤を用いた場合には、耐添加剤抽出性や日本薬局方試験を満足せず、これらの用途には不適であった。また、アルミ系や有機リン酸系合成造核剤を添加したものは、透明性の発現が十分ではなかったり、添加量を増やすと日本薬局方試験の強熱残分に満足すべき結果が得られなかった。
日本薬局方試験に合格することを必須要件とする医療用途の例としては、薬液をあらかじめ充填してなるプレフィルドシリンジのようなキット製剤などが挙げられる。
この薬液をあらかじめ充填してなるキット製剤をポリプロピレンで製造する事を検討し始めたのは、1980年代半ば頃からで(例えば、特許文献2参照。)、近年、プロピレン系重合体と、特定の核剤とからなる透明な注射筒又は透明な容器に薬剤液を充填してなる製剤(例えば、特許文献3参照。)に関する検討がなされている。
2014年7月1日より日本もPIC/S(医薬品査定協定・医薬品査察協同スキーム(The Pharmaceutical Inspection Convention and Pharmaceutical Inspection Co- operation Scheme : PIC/S ))に加盟したことにより、世界標準レベルの管理や滅菌強度等が今後は必要となり、より高温下での滅菌に対応可能な材料が求められている。しかしながら、滅菌後に日本薬局方記載の透過率55%以上を満足する高い透明性を有し、耐熱性および剛性と耐衝撃性に優れ、日本薬局方試験に合格し、薬剤、薬液の保存容器として満足し得る成形品が得られていないのが現状である。
特開平1−178541号公報 特開昭62−194866号公報 特開平5−222078号公報
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、第16改正 日本薬局方 7.02 プラスチック医薬品容器試験法 2.プラスチック製水性注射剤容器の規格 2.1ポリエチレン製又はポリプロピレン製水性注射剤容器の(4)重金属、(5)鉛、(6)カドミウム、(7)強熱残分、(8)溶出物の試験項目を満足し、かつ、優れた耐熱性、剛性、耐衝撃性、射出成形性、透明性を保持する医療用プロピレン系樹脂組成物およびその成形品を提供することにある。
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のプロピレン系重合体2種に対し、造核剤を特定量用いることにより、日本薬局方の試験項目を満足して、優れた耐熱性、剛性、耐衝撃性、射出成形性、透明性を保持し、高圧蒸気滅菌される医療用プロピレン系樹脂組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、チーグラー・ナッタ触媒により重合されたプロピレン単独重合体またはプロピレンと含有量が1重量%未満のα−オレフィンとからなるプロピレン系共重合体であり、JIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠したメルトフローレート(以下、MFRと略称することがある。)が0.5〜100g/10分であるプロピレン系(共)重合体(A)60〜99重量部と、下記(B−i)〜(B−iv)の特性を満たすチーグラー・ナッタ触媒により重合されたプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)1〜40重量部とからなるプロピレン系樹脂100重量部に対して、造核剤を0.005〜0.3重量部含有し、高圧蒸気滅菌して使用されることを特徴とする医療用プロピレン系樹脂組成物が提供される。
(B−i)エチレン含量が0.1〜3重量%、MFRが10〜300g/10minであるプロピレン−エチレン共重合体(b−1)とエチレン含量が5〜20重量%、MFRが1〜50g/10minであるプロピレン−エチレン共重合体(b−2)からなるプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)
(B−ii)プロピレン−エチレン共重合体(b−1)とプロピレン−エチレン共重合体(b−2)の重量比が90:10〜60:40
(B−iii)プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)のエチレン含量が2〜8重量%
(B−iv)プロピレン−エチレン共重合体(b−1)とプロピレン−エチレン共重合体(b−2)のMFR比(b−1/b−2)が1〜30、かつ、プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)のMFRが10〜100g/10minである
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において造核剤が、下記式(1)で示される造核剤(A)0.01〜0.3量部、下記式(2)で示される造核剤(B)0.01〜0.2重量部および下記式(3)で示される造核剤(C)0.005〜0.03重量部からなる群から選択される少なくとも1種の造核剤であることを特徴とする医療用プロピレン系樹脂組成物が提供される。
Figure 0006409561
[式中、Rは、直接結合、硫黄又は炭素数1〜9のアルキレン基又はアルキリデン基であり、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基であり、MはNaであり、nはMの価数である。]
Figure 0006409561
[式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示し、Mは、周期律表第III族または第IV族の金属原子を示し、Xは、Mが周期律表第III族の金属原子を示す場合には、HO−を示し、Mが周期律表第IV族の金属原子を示す場合には、O=又は(HO)−を示す。]
Figure 0006409561
[R〜R:t−ブチル]
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、滅菌方法が100℃〜130℃の高圧蒸気滅菌されることを特徴とする医療用プロピレン系樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明のプロピレン系樹脂組成物を用いた医療用成形品が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第4の発明の医療用成形品がキット製剤であることを特徴とするキット製剤が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第5の発明のキット製剤がプレフィルドシリンジであることを特徴とするプレフィルドシリンジが提供される。
本発明の医療用プロピレン系樹脂組成物は、第16改正 日本薬局方 7.02 プラスチック医薬品容器試験法 2.プラスチック製水性注射剤容器の規格 2.1ポリエチレン製又はポリプロピレン製水性注射剤容器の(4)重金属、(5)鉛、(6)カドミウム、(7)強熱残分、(8)溶出物の試験項目を満足し、かつ、優れた耐熱性、剛性、耐衝撃性、射出成形性、透明性を保持するものである。
図1は、実施例で用いた連続式横型気相重合装置のフローシートである。
本発明は、チーグラー・ナッタ触媒により重合されたプロピレン単独重合体またはプロピレンと含有量が1重量%未満のα−オレフィンとからなるプロピレン系共重合体であり、MFRが0.5〜100g/10分であるプロピレン系(共)重合体(A)60〜99重量部と、下記(B−i)〜(B−iv)の特性を満たすチーグラー・ナッタ触媒により重合されたプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)1〜40重量部とからなるプロピレン系樹脂100重量部に対して、造核剤を0.005〜0.3重量部含有し、高圧蒸気滅菌して使用されることを特徴とする医療用プロピレン系樹脂組成物であり、これより得られる成形品、特にキット製剤に有用である。以下、構成成分、組成物の製造方法、成形品等について詳細に説明する。
(B−i)エチレン含量が0.1〜3重量%、MFRが10〜300g/10minであるプロピレン−エチレン共重合体(b−1)とエチレン含量が5〜20重量%、MFRが1〜50g/10minであるプロピレン−エチレン共重合体(b−2)からなるプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)
(B−ii)プロピレン−エチレン共重合体(b−1)とプロピレン−エチレン共重合体(b−2)の重量比が90:10〜60:40
(B−iii)プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)のエチレン含量が2〜8重量%
(B−iv)プロピレン−エチレン共重合体(b−1)とプロピレン−エチレン共重合体(b−2)のMFR比(b−1/b−2)が1〜30、かつ、プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)のMFRが10〜100g/10minである
[1]組成物の構成成分
1.プロピレン系樹脂
(A)プロピレン系(共)重合体
本発明の医療用プロピレン系樹脂組成物に用いられる(A)プロピレン系(共)重合体は、プロピレン単独重合体、プロピレンと含有量が1重量%未満のα−オレフィンとからなるプロピレン系共重合体またはこれらの混合物であってもよい。
(A)プロピレン系(共)重合体は、オートクレーブ滅菌時などの耐熱性の観点では単独重合体が望ましく、透明性の観点ではプロピレンとα−オレフィンとからなるランダム共重合体が望ましい。共重合に用いられるα−オレフィンは、プロピレンを除く炭素数2〜20のα−オレフィンがあげられ、例えばエチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等を例示できる。プロピレンと共重合されるα−オレフィンは一種類でも二種類以上用いてもよい。このうちエチレン、ブテン−1が好適である。より好ましくはエチレンが好適である。また、これらプロピレン系重合体は、二種以上混合して使用してもよい。また、α−オレフィンの含有量が1重量%以上であると耐熱性の観点から、使用が困難になる。
プロピレン系共重合体の具体的な例としては、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ヘキセン−1共重合体、プロピレン−オクテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ヘキセン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1−オクテン−1共重合体などのような、共単量体を任意に若干量組み合わせた二元または三元共重合体が例示できる。
医療用途では、滅菌処理されることが一般的で、具体的には、高圧蒸気滅菌処理、放射線滅菌処理、エチレンオキサイドガス(EOG)による滅菌処理、紫外線滅菌処理などが行なわれる。本発明では高圧蒸気滅菌される事を想定しており、高圧蒸気滅菌の理想としては、121℃で20分間のオーバーキルと呼ばれる高圧蒸気滅菌であり、この処理が
行われる場合、プロピレン単独重合体、またはプロピレンと含有量が1重量%未満のα−オレフィンとからなるプロピレン系共重合体が好ましい。エチレン含量の多いランダム共重合体を用いると高圧蒸気滅菌処理で変形してしまう不具合が発生する。また、高圧蒸気滅菌処理される場合は、滅菌前に比べ透明性が悪化しやすく、悪化しにくいものが好ましい。
プロピレン系(共)重合体(A)に用いられるα−オレフィン含量は、1重量%未満であり、0.5重量%未満が好ましい。α−オレフィンの含量が1重量%以上であると、剛性が低下し、オートクレーブ滅菌処理の際に変形を起こす恐れがある。
ここで、プロピレン及びα−オレフィンは、下記の条件の13C−NMR法によって計測される値である。
装置:日本電子社製 JEOL−GSX270
濃度:300mg/2mL
溶媒:オルソジクロロベンゼン
また、本発明で用いられるプロピレン系(共)重合体(A)がプロピレン単独重合体の場合は、アイソタクチックペンタッド分率0.90以上が好ましく、より好ましくは0.94〜0.98である。アイソタクチックペンタッド分率が0.90以上であると、剛性やバリアー性が優れるので好ましい。
ここで、アイソタクチックペンタッド分率は、13C−NMRを用いたプロトンデカップリング法で測定する値である。
本発明で用いられるプロピレン系(共)重合体(A)は、MFRが0.5〜100g/10分の範囲のものであり、1〜50g/10分が好ましく、2〜30g/10分がさらに好ましい。メルトフローレート(MFR)が0.5g/10分未満では、成形加工性の低下をきたし製品として満足できるものが得られ難くなるおそれがある。また、100g/10分を超えると、機械的強度の低下が懸念される。
プロピレン系(共)重合体(A)の製造方法としては、特に限定されないが、立体規則性触媒としてチーグラー・ナッタ触媒を使用する重合法が好ましい。
チーグラー触媒としては、三塩化チタン、四塩化チタン、トリクロロエトキシチタン等のハロゲン化チタン化合物、前記ハロゲン化チタン化合物とハロゲン化マグネシウムに代表されるマグネシウム化合物との接触物等の遷移金属成分とアルキルアルミニウム化合物又はそれらのハロゲン化物、水素化物、アルコキシド等の有機金属成分との2成分系触媒、更にそれらの成分に窒素、炭素、リン、硫黄、酸素、ケイ素等を含む電子供与性化合物を加えた3成分系触媒が挙げられる。
プロピレン系(共)重合体の製造方法としては、上記触媒の存在下に、不活性溶媒を用いたスラリー法、溶液法、実質的に溶媒を用いない気相法または重合モノマーを溶媒とするバルク重合法等が挙げられる。
例えば、スラリー重合法の場合には、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の不活性炭化水素又は液状モノマー中で行うことができる。重合温度は、通常−80〜150℃であり、好ましくは40〜120℃である。重合圧力は、1〜60気圧が好ましく、また得られるプロピレン系(共)重合体の分子量の調節は、水素もしくは他の公知の分子量調整剤で行うことができる。重合は連続式又はバッチ式反応で行い、その条件は通常用いられている条件でよい。さらに重合反応は一段で行ってもよく、多段で行ってもよい。
(B)プロピレン−エチレンブロック共重合体
本発明に用いるプロピレン−エチレン共重合体(b−1)とプロピレン−エチレン共重合体(b−2)の重量比は90:10〜60:40の範囲であることが必要であり、好ましくは87:13〜65:35、より好ましくは84:16〜70:30である。プロピレン−エチレン共重合体(b−1)の重量比の上限値90以下であると成形品の耐衝撃性が向上し、下限値60以上であると成形時の固化が速くなり成形加工性が向上する。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)のMFRは10〜100g/10minの範囲であることが好ましく、より好ましくは25〜50g/10minである。
MFRが10g/10min以上であると流動性向上により成形加工性が良好となり、100g/10min以下であると耐衝撃性が良好となる。また、プロピレン−エチレン共重合体(b−1)とプロピレン−エチレン共重合体(b−2)のMFR比(b−1/b−2)は1〜30の範囲であることが好ましく、より好ましくは3.5〜30、さらに好ましくは5〜30、最も好ましくは8〜30である。この範囲の下限値以上であると耐衝撃性の向上、上限値以下であるとプロピレン−エチレン共重合体(b−1)に対するプロピレン−エチレン共重合体(b−2)の分散性が良好となり透明性が向上する。また、分子量調整剤を用いてMFRをCR(コントロールドレオロジー)してMFRを調整する方法が一般に知られているが、本発明においてはCRせずに重合条件のみでMFRを調整することが成形時の樹脂焼け防止の観点から好ましい。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)のエチレン含量は2〜8重量%の範囲であることが必要であり、好ましくは3〜7重量%、より好ましくは3〜6重量%、最も好ましくは4〜6重量%である。
この範囲の下限値以上であると成形品の透明性及び耐衝撃性が向上する。上限値以下であると低結晶性成分の減少によりべたつきが低減され薬剤吸着性が良好となる。
本発明で使用するプロピレン−エチレン共重合体(b−1)は以下の特性を満足する。
特性1:MFR
本発明に用いるプロピレン−エチレン共重合体(b−1)のMFRは10〜300g/10minの範囲であることが必要であり、好ましくは30〜200g/10min、より好ましくは50〜150g/10minである。この範囲の下限値以上であると流動性の向上により成形加工性が良好となり、特に成形品の肉厚が2.5mm厚以下のものを成形した場合でも成形配向がかかり難くなり、衝撃を受けた場合、成形配向方向に亀裂が生じるのを防ぐことが出来、上限値以下のものは樹脂組成物の生産性が良好となり経済上好ましいと共に、成形品の耐衝撃性に優れる。
MFR値の制御の方法は周知であり、重合条件である温度や圧力を調節したり、水素等の連鎖移動剤を重合時に添加する水素添加量の制御により、容易に調整を行なうことができる。
特性2:エチレン含量
本発明に用いるプロピレン−エチレン共重合体(b−1)のエチレン含量は0.1〜3重量%の範囲であることが必要であり、好ましくは1.0〜2.8重量%、より好ましくは1.5〜2.6重量%である。この範囲の下限値以上であると成形品の透明性が良好となると共に、高圧蒸気滅菌後の耐衝撃性に優れる。また上限値以下であると結晶化温度の上昇により成形時の固化が速くなり成形加工性が良好となる。
エチレン含量は、重合時におけるプロピレンとエチレンのモノマー組成の制御によって調整することができる。
本発明で使用するプロピレン−エチレン共重合体(b−2)は以下の特性を満足する。
特性1:MFR
本発明に用いるプロピレン−エチレン共重合体(b−2)のMFRは1〜50g/10minの範囲であることが必要であり、好ましくは1〜30g/10min、より好ましくは1〜15g/10min、最も好ましくは1〜10g/10minである。
この範囲の下限値以上であるとプロピレン−エチレン共重合体(A)への分散性が向上し、成形品にフィッシュアイが発生することを抑制することが可能となる。また上限値以下であると低結晶成分が表面にブリードしにくくなることにより薬剤吸着性が良好となると共に、高圧蒸気滅菌後の耐衝撃性が良好となる。また、分子量調整剤を用いてMFRをCR(コントロールドレオロジー)してMFRを調整する方法が一般に知られているが、本発明においてはCRせずに重合条件のみでMFRを調整することが成形時の樹脂焼け防止の観点から好ましい。
特性2:エチレン含量
本発明に用いるプロピレン−エチレン共重合体(b−2)のエチレン含量は5〜20重量%の範囲であることが必要であり、好ましくは7〜15重量%、より好ましくは8〜13重量%である。この範囲の下限値以上であると成形品の耐衝撃性が向上する。また上限値以下であるとプロピレン−エチレン共重合体(b−1)との相溶性が向上することにより成形品の透明性が良好となると共に、プロピレン−エチレン共重合体(b−2)が成形品表面にブリードしにくくなることにより、べたつきや薬剤吸着性が良好となる。
また、プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)は、べたつきや薬剤吸着を低減させる為に、温度昇温溶離分別法(TREF)による−15℃可溶分が好ましくは10重量%以下、より好ましくは9重量%以下、更に好ましくは8重量%以下、特に好ましくは7重量%以下、最も好ましくは6重量%以下であることが肝要である。この可溶分がこの範囲であると、べたつきやブリードアウトによる製品の品質への悪影響を抑えることができ、また、ポリマー生産時に粒子凝集や反応器付着によるパウダー粒子の流動不良が発生することなく安定してポリマーを生産することができる。
プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)においては、TREFの測定方法について具体的には以下のようにして行われる。試料を140℃でo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mlBHT(2,6−ジ−t−ブチル―p―クレゾール)入り)に溶解し溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後に、8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で−15℃まで冷却し、60分間保持する。その後に、溶媒である−15℃のo−ジクロロベンゼン(0.5mg/mlBHT入り)を1ml/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で−15℃のo−ジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。なお、TREF評価する手法は、当業者によく知られているものであり、例えば、次の文献などに詳細な測定法が示されている。
G.Glockner,J.Appl.Polym.Sci.:Appl.Polym.Symp.;45,1−24(1990)
L.Wild,Adv.Polym.Sci.;98,1−47(1990)
J.B.P.Soares,A.E.Hamielec,Polymer;36,8,1639−1654(1995)
なお、プロピレン−エチレン系樹脂組成物(B)中のプロピレン−エチレン共重合体(b−1)、(b−2)の比率は、連続重合で製造した場合は、重合時の物質収支から求めた値であり、ブレンドにて製造した場合は、それぞれの処方比から求めた値である。
また、各エチレン含量は13C−NMR法で測定して求めた値である。
本発明で用いられるプロピレン−エチレン共重合体(b−1)、及びプロピレン−エチレン共重合体(b−2)を得るために用いられる触媒としては、チタン化合物と有機アルミニウムを組み合わせた、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒が使用できる。
本発明では、射出成形加工性に優れ、剛性と耐衝撃性、および高圧蒸気滅菌後の透明性のバランスが良い医療用プロピレン系樹脂組成物が特に好ましい。このため、一般的に分子量分布が広く、立体規則性の高いチーグラー・ナッタ触媒の方がメタロセン触媒よりも望ましい。なお、チーグラー・ナッタ触媒によりプロピレン−エチレン共重合体(b−1)、及びプロピレン−エチレン共重合体(b−2)を得ると、メタロセン触媒で得るより、一般に分子量分布が広がることに起因して金型内流動性が増して射出成形加工性が良くなり、また組成分布も広くなることに起因してプロピレン−エチレン共重合体(b−1)、及びプロピレン−エチレン共重合体(b−2)の相溶性が増して耐衝撃性が良くなる。
具体的には立体規則性に関しては、ポリプロピレンセグメントのアイソタクチックペンタッド分率(mmmm)は、90%以上、好ましくは94%以上、より好ましくは97%以上が望ましい。アイソタクチックペンタッド分率(mmmm)が90%以上では、剛性と耐衝撃性のバランスが良好となる。ここで、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm)は13C−NMR法で測定する値である。
分子量分布に関しては、分子量分布の幅の指標である(重量平均分子量)/(数平均分子量)の値は、2.0〜8.0が好ましく、より好ましくは2.5〜7.0、更に好ましくは3.0〜6.0である。下限値以上であると射出成形時の樹脂流動性に優れる。また上限値以下であると成形配向がかかりにくくなり成形配向に沿った割れ発生が起こり難く高圧蒸気滅菌後の耐衝撃性が良好となる。ここで、重量平均分子量及び数平均分子量は、後述するゲル・パーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定する値である。
プロピレン−エチレン共重合体(b−1)、及びプロピレン−エチレン共重合体(b−2)の製造プロセスに関しては、前述の諸特性を満足すればいかなる方法で製造してもよく、プロピレン−エチレン共重合体(b−1)、及びプロピレン−エチレン共重合体(b−2)の混合についても、前述の諸特性を満足すればいかなる方法で製造してもよい。特に横型反応器による2段連続気相重合法でプロピレン−エチレン共重合体(b−1)、及びプロピレン−エチレン共重合体(b−2)の混合物を製造することが好ましい。その理由として、プロピレン−エチレン共重合体(b−1)、及びプロピレン−エチレン共重合体(b−2)の混合物を2段連続重合法で生産する場合、バルク又はスラリー回分重合法で製造する方法は、単位時間当り、単位重合器当りの重合体収得量が気相連続重合法に比較して低くなるので、コスト高となる。一方で、気相縦型反応器による2段連続気相重合法においては、各段の重合器における各触媒粒子の滞留時間に分布が生じるためプロピレン−エチレン共重合体(b−1)とプロピレン−エチレン共重合体(b−2)の含有比率に分布を有する重合体粒子の集合となり、該分布の不均一性に由来する品質面の欠点が発生する場合がある。また、第2段階のエチレンを比較的多量に含むプロピレン−エチレン共重合体(b−2)の重合工程をガス媒体とした気相重合で実施する場合、第2段階の重合量を増すにつれて重合体粒子の粘着性が増し、安定運転が困難になる場合がある上、重合熱の冷却が十分でない場合は重合器壁や攪拌羽根等への付着が発生する可能性がある。粘着性の防止方法として、滞留時間が短いうちに、第2段階の重合器に入り込む触媒を少くすることが考えられるが、具体的には重合器を多数連結する等の方法となり、設備投資額の増加、運転の複雑化等の欠点が発現する場合がある。その為、プロピレン−エチレン共重合体(b−1)、及びプロピレン−エチレン共重合体(b−2)の混合物の製造プロセスに関しては、液化プロピレンの蒸発潜熱を利用して重合熱を除去する形式で、滞留時間分布が狭く高品質なプロピレン−エチレン共重合体(b−1)、及びプロピレン−エチレン共重合体(b−2)の混合物を生産することが可能となる水平軸回りに回転する撹拌機を有する横型反応器を持つ2段連続気相重合プロセスで製造することが最も好ましい。
また上記の横型反応器を持つ2段連続気相重合プロセスでプロピレン−エチレン共重合体(b−1)、及びプロピレン−エチレン共重合体(b−2)の混合物を製造した場合、1段目でプロピレン−エチレン共重合体(b−1)を重合した後、同一触媒粒子で2段目でプロピレン−エチレン共重合体(b−2)が重合される為、同一パウダー粒子内にプロピレン−エチレン共重合体(b−1)とプロピレン−エチレン共重合体(b−2)が共存する形となる。その場合、プロピレン−エチレン共重合体(b−1)に対するプロピレン−エチレン共重合体(b−2)の分散性が最も良好となり、該パウダー粒子をペレット化して成形品にした場合、別々に製造されたプロピレン−エチレン共重合体(b−1)のペレットとプロピレン−エチレン共重合体(b−2)のペレットを押出機で溶融混練した後、成形したものに比べ、プロピレン−エチレン共重合体(b−1)とプロピレン−エチレン共重合体(b−2)の相溶性が格段に良い為、成形品中での物性の均一性に起因する高品質な成形品を得ることができると共に、透明性に優れ、かつ、耐衝撃性に優れるものを得ることができる。
プロピレン系(共)重合体(A)は60〜99重量部でプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)は1〜40重量部の範囲が良く、更にプロピレン系(共)重合体(A)は60〜90重量部でプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)は10〜40重量部の範囲が良く、最も好ましくは、プロピレン系(共)重合体(A)は65〜85重量部でプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)は15〜35重量部の範囲である。この範囲であると、剛性、耐衝撃性、耐熱性、高圧蒸気滅菌後の透明性のバランスに優れる。
2.造核剤
本発明の医療用プロピレン系樹脂組成物に用いられる造核剤の配合量は、(A)+(B)のプロピレン系樹脂100重量部に対し、0.005〜0.3重量部の範囲で用いられる。0.005重量部以上であれば透明性が十分に発現され、0.3重量部以下であると、第16改正 日本薬局方 7.02 プラスチック医薬品容器試験法 2.プラスチック製水性注射剤容器の規格 2.1ポリエチレン製又はポリプロピレン製水性注射剤容器の試験に合格になる可能性があるだけでなく費用対前記効果(コスト・パフォーマンス)の点から有利である。
この様な造核剤としては、以下に示す造核剤(A)〜(C)であることが望ましい。
選択的に用いられる造核剤(A)は、式(1)で示される有機リン酸金属塩化合物である。
Figure 0006409561
[式(1)中、Rは、直接結合、硫黄又は炭素数1〜9のアルキレン基又はアルキリデン基であり、R及びRは、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基であり、MはNaであり、nはMの価数である。]
式(1)で表される有機リン酸金属塩化合物の具体例としては、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−エチリデン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−エチリデン−ビス−(4−i−プロピル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−ブチリデン−ビス−(4,6−ジメチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−ブチリデン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−t−オクチルメチレン−ビス−(4,6−メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−t−オクチルメチレン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム(4,4’−ジメチル−6,6’−ジ−t−ブチル−2,2’−ビフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−エチリデン−ビス−(4−s−ブチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−エチルフェニル)フォスフェート、およびこれらの2種以上の混合物を例示することができる。これらのうち特に、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートが好ましい。
この様な造核剤としては、市販のものを用いることができる。具体的には、(株)ADEKA社製NA−11を挙げることができる。
選択的に用いられる造核剤(A)の配合量は、プロピレン系(共)重合体(A)+プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)の100重量部に対し、0.01〜0.3重量部の範囲が好ましく、0.01〜0.2重量部の範囲がより好ましい。0.01重量部以上であれば十分な効果が得られ、0.3重量部以下である範囲は、費用対効果(コスト・パフォーマンス)の点から有利である。
選択的に用いられる造核剤(B)は、式(2)で示される芳香族燐酸エステル類である。
Figure 0006409561
[式(2)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R及びRは、水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示し、Mは、周期律表第III族または第IV族の金属原子を示し、Xは、Mが周期律表第III族の金属原子を示す場合には、HO−を示し、Mが周期律表第IV族の金属原子を示す場合には、O=又は(HO)−を示す。]
式(2)で表される芳香族燐酸エステル類の具体例としては、例えば、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジメチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジメチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジエチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジエチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、およびヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4−i−プロピル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4−i−プロピル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]等が挙げられ、好ましくは、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、およびヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、およびこれらの2種以上の混合物を例示することができる。
式(2)で表される芳香族燐酸エステル類は、有機アルカリ金属塩と併用させることが効果的である。
該有機アルカリ金属塩とは、アルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ金属β−ジケトナート及びアルカリ金属β−ケト酢酸エステル塩からなる群より選択される少なくとも一種の有機アルカリ金属塩を示すことができる。
該有機アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
上記アルカリ金属カルボン酸塩を構成するカルボン酸としては、例えば酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、オクチル酸、イソオクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、メリシン酸、β−ドデシルメルカプト酢酸、β−ドデシルメルカプトプロピオン酸、β−N−ラウリルアミノプロピオン酸、β−N−メチル−ラウロイルアミノプロピオン酸等の脂肪族モノカルボン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、クエン酸、ブタントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸、ナフテン酸、シクロペンタンカルボン酸、1−メチルシクロペンタンカルボン酸、2−メチルシクロペンタンカルボン酸、シクロペンテンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、1−メチルシクロヘキサンカルボン酸、4−メチルシクロヘキサンカルボン酸、3,5−ジメチルシクロヘキサンカルボン酸、4−ブチルシクロヘキサンカルボン酸、4−オクチルシクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキセンカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸等の脂環式モノ又はポリカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、キシリル酸、エチル安息香酸、4−t−ブチル安息香酸、サリチル酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族モノ又はポリカルボン酸等が挙げられる。
上記アルカリ金属β−ジケトナートを構成するβ−ジケトン化合物としては、例えば、アセチルアセトン、ピバロイルアセトン、パルミトイルアセトン、ベンゾイルアセトン、ピバロイルベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン等が挙げられる。
また、上記アルカリ金属β−ケト酢酸エステル塩を構成するβ−ケト酢酸エステルとしては、例えば、アセト酢酸エチル、アセト酢酸オクチル、アセト酢酸ラウリル、アセト酢酸ステアリル、ベンゾイル酢酸エチル、ベンゾイル酢酸ラウリル等が挙げられる。
該有機アルカリ金属塩の成分であるアルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ金属β−ジケトナート又はアルカリ金属β−ケト酢酸エステル塩は、各々上記アルカリ金属とカルボン酸、β−ジケトン化合物又はβ−ケト酢酸エステルとの塩であり、従来周知の方法で製造することができる。また、これら各アルカリ金属塩化合物の中でも、アルカリ金属の脂肪族モノカルボン酸塩、特に、リチウムの脂肪族カルボン酸塩が好ましく、とりわけ炭素数8〜20の脂肪族モノカルボン酸塩が好ましい。
この様な造核剤としては、市販のものを用いることができる。具体的には、(株)ADEKA社製NA−21を挙げることができる。
選択的に用いられる造核剤(B)の配合量は、プロピレン系(共)重合体(A)+プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)の100重量部に対し、0.01〜0.20重量部の範囲が好ましく、0.05〜0.15重量部の範囲がより好ましい。0.01重量部以上であれば十分な効果が得られ、0.20重量部以下である範囲は、費用対効果(コスト・パフォーマンス)の点から有利である。
選択的に用いられる造核剤(C)は、式(3)で示される造核剤である。
Figure 0006409561
[R〜R:t−ブチル]
この様な造核剤としては、市販のものを用いることができる。具体的には、BASF社製 XT386を挙げることができる。
選択的に用いられる造核剤(C)の配合量は、プロピレン系(共)重合体(A)+プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)の100重量部に対し、0.005〜0.03重量部の範囲が好ましく、0.01〜0.02重量部の範囲がより好ましい。0.005重量部以上であれば十分な効果が得られ、0.03重量部以下である範囲は、費用対効果(コスト・パフォーマンス)の点から有利である。
本発明の医療用プロピレン系樹脂組成物には、造核剤(A)〜(C)以外に、他の造核剤として、ソルビトール系造核剤、ノニトール系造核剤およびタルクなど既知の造核剤を本発明の効果を大きく阻害しない範囲で添加することができる。
3.中和剤
本発明の医療用プロピレン系樹脂組成物においては、中和剤を配合することが望ましい。中和剤の具体例としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの金属脂肪酸塩、ハイドロタルサイト(商品名:DHT−4A、協和化学工業(株)製の下記一般式(4)で表されるマグネシウムアルミニウム複合水酸化物塩)、ミズカラック(商品名、水澤化学工業(株)製の下記一般式(5)で表されるリチウムアルミニウム複合水酸化物塩)などが挙げられる。特に、プレフィルドシリンジ、キット製剤、輸液バッグなど長期接液する部材として用いる場合には、接触する液体に溶出しないハイドロタルサイトやミズカラックが有利である。
Mg1−xAl(OH)(COx/2・mHO …(4)
[式中、xは、0<x≦0.5であり、mは3以下の数である。]
[AlLi(OH)X・mHO …(5)
[式中、Xは、無機または有機のアニオンであり、nはアニオン(X)の価数であり、mは3以下である。]
本発明の医療用プロピレン系樹脂組成物に選択的に用いられる中和剤の配合量は、(A)+(B)のプロピレン系重合体100重量部に対し、0.005〜0.2重量部の範囲が好ましく、0.01〜0.05重量部の範囲がより好ましい。
4.滑剤
本発明の医療用プロピレン系樹脂組成物においては、滑剤を配合することができる。滑剤としては、既知の滑剤が挙げられるが、ステアリン酸ブチルやシリコーンオイルが好ましく、特にシリコーンオイルが好ましい。
具体的なシリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルヒドロジエンポリシロキサン、α−ωビス(3−ヒドロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、ポリオキシアルキレン(C〜C)ジメチルポリシロキサン、ポリオルガノ(C〜Cのアルキル基および/またはフェニル基)シロキサンとポリアルキレン(C〜C)グリコールの縮合物などが挙げられる。この中でもジメチルポリシロキサンとメチルフェニルポリシロキサンが好ましい。該滑剤は単独、又は複数用いても構わない。
ジメチルポリシロキサンなどのシリコーンを添加した場合、成形時に発生する傷を防止するだけでなく、シリンダー内やホットランナー内で発生する焼けを防止することができる。
本発明の医療用プロピレン系樹脂組成物に選択的に用いられる滑剤の配合量は、(A)+(B)のプロピレン系重合体100重量部に対し、0.001〜0.5重量部が好ましく、0.01〜0.15重量部がより好ましく、0.03〜0.1重量部が特に好ましい。0.001重量部以上であれば十分な効果が期待でき、0.5重量部以下である範囲は、費用対効果(コスト・パフォーマンス)の点から有利である。
5.その他の添加剤
本発明の医療用プロピレン系樹脂組成物においては、上述した成分に加えて、プロピレン系重合体の安定剤などとして使用されている各種酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を配合することができる。
具体的には、酸化防止剤としては、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、ジ−ステアリル−ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−フォスフォナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−フォスフォナイト等のリン系酸化防止剤、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ハイドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ハイドロキシベンジル)イソシアヌレート等のフェノール系酸化防止剤、ジ−ステアリル−ββ’−チオ−ジ−プロピオネート、ジ−ミリスチル−ββ’−チオ−ジ−プロピオネート、ジ−ラウリル−ββ’−チオ−ジ−プロピオネート等のチオ系酸化防止剤等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等の紫外線吸収剤等が挙げられる。
光安定剤としては、n−ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピぺリジル)セバケート、コハク酸ジメチル−2−(4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジル)エタノール縮合物、ポリ{[6−〔(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ〕−1,3,5−トリアジン−2,4ジイル]〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕}、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス〔N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ〕−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物等の光安定剤を挙げることができる。
さらに、放射線処理で変色がなく耐NOxガス変色性が良好な下記一般式(6)や下記一般式(7)で表されるアミン系酸化防止剤、5,7−ジ−t−ブチル−3−(3,4−ジ−メチル−フェニル)−3H−ベンゾフラン−2−ワン等のラクトン系酸化防止剤、下記一般式(8)等のビタミンE系酸化防止剤を挙げることができる。
Figure 0006409561
Figure 0006409561
Figure 0006409561
さらに、その他に、帯電防止剤、スリップ剤、脂肪酸金属塩等の分散剤、染料、顔料、ポリエチレン、オレフィン系エラストマー等を本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
[2]医療用プロピレン系樹脂組成物の製造方法
本発明の医療用プロピレン系樹脂組成物は、(A)+(B)のプロピレン系重合体と造核剤、好ましくは選択的に用いられる造核剤(A)〜(C)の少なくとも1種の混合物、および、必要に応じて他の添加剤とを、ヘンシェルミキサー(商品名)、スーパーミキサー、リボンブレンダー等に投入して混合した後、通常の単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、プラベンダー、ロール等で190〜260℃の温度範囲で溶融混練することにより得ることができる。
[3]医療用成形品
本発明の医療用成形品は、上記の医療用プロピレン系樹脂組成物を、公知の方法である射出成形法、押出成形法、ブロー成形法など各種成形法によって成形することにより得られるが、寸法精度が高く複雑な形状を作りやすい射出成形法が望ましい。
また、本発明の医療用成形品は、キット製剤として有用であり、薬剤液を充填してなる注射筒および保存容器などに適しており、特に、プレフィルドシリンジに好適である。プレフィルドシリンジとは、薬液や薬剤があらかじめ充填されているシリンジ形状の製剤であり、1種類の液が充填されたシングルチャンバータイプのものと、2種の薬剤が充填されたダブルチャンバータイプがある。ほとんどのプレフィルドシリンジはシングルチャンバータイプであるが、ダブルチャンバータイプについては、粉末とその溶解液からなる液・粉タイプの製剤と2種類の液からなる液・液タイプの製剤がある。シングルチャンバータイプの内溶液の例としては、ヘパリン溶液などが挙げられる。
なお、本発明の医療用成形品は、高圧蒸気滅菌されるもので、一般的にオーバーキルと呼ばれる121℃で20分の処理を基準とするが、好ましくは80℃〜140℃、より好ましくは100℃〜140℃の温度で、時間も数分から数時間という場合でも構わないが、好ましくは1分〜10時間、より好ましくは5分〜3時間である。本発明は高圧蒸気滅菌(オートクレーブ滅菌)に対して有効である。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの記載により何ら限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例において、用いた物性測定は以下の方法で行い、プロピレン系重合体、造核剤及び他の添加剤(中和剤、滑剤)としては以下のものを使用した。
(1)エチレン含量の算出
13C−NMR法により測定した測定値からエチレン含量を算出した。
(2)MFR:JIS K7210に準じて加熱温度230℃、荷重21.2Nにて測定した。
(3)ヘイズ値:厚さ1mmのシート片を用いて、JIS K7136に準拠して滅菌前の値を測定した。また、オートクレーブ滅菌(AC滅菌、高圧蒸気滅菌)をアルプ(株)製レトルト高圧蒸気殺菌・冷却装置RKZ−30L型を用い、121℃で20分間の滅菌処理を行い、滅菌処理の1週間後にJIS K7136に準拠して測定した値を滅菌後の値とした。
(4)第16改正 日本薬局方試験:7.02 プラスチック製薬品容器試験法の2.1 ポリエチレン製又はポリプロピレン製水性注射剤容器の項の試験法に従って、透明性、重金属、鉛、カドミウム、強熱残分、泡立ち、pH、過マンガン酸カリウム還元性物質、紫外吸収スペクトル、蒸発残留分を測定した。但し、試料調製は、0.5ミリ厚シートで表面積1200cmに相当する重量のペレットを秤量し、220℃でプレスしてシート片として、長さ約5センチ、幅約0.5センチの大きさに細断し、蒸留水で洗った後、室温で乾燥した。これを内容積約300mlの硬質ガラス製容器に入れ、蒸留水200mlを正確に加え、適当な栓で密封した後、高圧蒸気滅菌器を用いて121℃で1時間加熱した後、室温になるまで放置し、この内溶液を試験液とし、別に蒸留水につき、同様の方法で空試験液を調製した。
(5)曲げ弾性率:JIS K7203の「硬質プラスチックの曲げ試験方法」に準拠して23℃で測定した。
(6)シャルピー衝撃強度:JIS K7111に準拠して23℃で測定した。
(7)荷重たわみ温度(0.45MPa):JIS K7191に準拠して測定した。
2.使用材料
(1)プロピレン系(共)重合体(A)
プロピレン単独重合体(HPP1):ノバテックMA3Q(商品名、日本ポリプロ(株)製)、触媒:チーグラー触媒、MFR:10g/10分、アイソタクチックペンタッド分率0.96(13C−NMRによる測定)。
(2)プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)
<製造例1(PP−1)>
(i)固体触媒成分(A)の製造
撹拌装置を備えた容量10Lのオートクレーブを十分に窒素で置換し、精製したトルエン2Lを導入した。ここに、室温で、Mg(OEt)を200g、TiClを1L添加した。温度を90℃に上げて、フタル酸ジ−n−ブチルを50ml導入した。その後、温度を110℃に上げて3hr反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで十分に洗浄した。次いで、精製したトルエンを導入して全体の液量を2Lに調整した。室温でTiClを1L添加し、温度を110℃に上げて2hr反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで十分に洗浄した。次いで、精製したトルエンを導入して全体の液量を2Lに調整した。室温でTiClを1L添加し、温度を110℃に上げて2hr反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで十分に洗浄した。更に、精製したn−ヘプタンを用いて、トルエンをn−ヘプタンで置換し、固体成分のスラリーを得た。このスラリーの一部をサンプリングし分析したところ、固体成分のTi含量は2.7重量%であった。
次に、撹拌装置を備えた容量20Lのオートクレーブを十分に窒素で置換し、上記固体成分のスラリーを固体成分として100g導入した。精製したn−ヘプタンを導入して、固体成分の濃度が25g/Lとなる様に調整した。SiClを50ml加え、90℃で1hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで十分に洗浄した。
その後、精製したn−ヘプタンを導入して液レベルを4Lに調整した。ここに、ジメチルジビニルシランを30ml、(i−Pr)Si(OMe)を30ml、EtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして80g添加し、40℃で2hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで十分に洗浄し、得られたスラリーの一部をサンプリングして乾燥、分析したところ、固体成分にはTiが1.2重量%、(i−Pr)Si(OMe)が8.8重量%含まれていた。
更に、上記で得られた固体成分を用いて、以下の手順により予備重合を行った。上記のスラリーに精製したn−ヘプタンを導入して、固体成分の濃度が20g/Lとなる様に調整した。次にスラリーを10℃に冷却した後、EtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして10g添加し、280gのプロピレンを4hrかけて供給した。プロピレンの供給が終わった後、更に30min反応を継続した。次いで、気相部を窒素で十分に置換し、反応生成物を精製したn−ヘプタンで十分に洗浄した。得られたスラリーをオートクレーブから抜き出し、真空乾燥を行って固体触媒成分(A)を得た。この固体触媒成分は、固体成分1gあたり2.5gのポリプロピレンを含んでいた。また、この固体触媒成分(A)のポリプロピレンを除いた部分には、Tiが1.0重量%、(i−Pr)Si(OMe)が8.2重量%含まれていた。
(ii)プロピレン系重合体の製造
添付した図1に示したフローシートによって説明する。2台の重合槽を用いる気相重合反応器を用いた。2台の重合器17及び26は、内径D:2100mm、長さL:11000mm、内容積:40m3の攪拌機を備えた連続式横型気相重合器(長さ/直径=5.2)である。
重合器17内を置換後、粒径500μm以下の重合体粒子を除去したポリプロピレン粉末を仕込み、固体触媒成分(A)として120g/Hr、またトリエチルアルミニウムの15wt%ヘキサン溶液を触媒成分A中のTi原子1モルに対し、モル比が350となるように連続的に供給した。また、重合器17内の水素濃度のプロピレン濃度に対する比が0.095となるように水素を、エチレン濃度のプロピレン濃度に対する比が0.020となるようにエチレンを、重合器17内の圧力が2.10MPa、温度が61℃を保つようにプロピレンモノマーをそれぞれ重合器17内に供給した。反応熱は、原料混合ガス供給配管19から供給する原料プロピレンの気化熱により除去した。重合器17から排出される未反応ガスは、未反応ガス抜出配管20を通り反応器系外に抜出、冷却・凝縮させてリサイクルガス配管18を通して重合器17に還流した。
重合器17内で生成したプロピレン−エチレン共重合体(b−1)は、重合体の保有レベルが反応容積の45容量%となるように重合体抜出配管21を通して重合器17から連続的に抜出、第2重合工程の重合器26に供給した。
重合器26内に、第1重合工程からの重合体、また、重合器26内の水素濃度のプロピレン濃度に対する比が0.021となるように水素を、エチレン濃度のプロピレン濃度に対する比が0.068となるようにエチレンを、重合器17内の圧力が2.05MPa、温度が70℃を保つようにプロピレンモノマーをそれぞれ重合器17内に供給した。またプロピレン−エチレン共重合体(b−2)の重合量を調整するための重合活性抑制剤を配管27より供給した。反応熱は原料混合ガス配管22ら供給される原料液化プロピレンの気化熱で除去した。重合器26から排出される未反応ガスは、未反応ガス抜出配管24を通して反応器系外に抜出、冷却・凝縮させて、リサイクルガス配管23を通して重合器26に還流させた。第2重合工程で生成したプロピレン系重合体は、重合体の保有レベルが反応容積の50容量%となるように重合体抜出配管25を通して重合器26から連続的に抜き出した。抜き出したパウダーは、ガス回収機28でガス類を分離し、パウダー部は回収系に抜出、造粒系で造粒した。
プロピレン系重合体の生産レートは、9.6T/Hr、重合器17内の平均滞留時間は1.9Hr、重合器26内の平均滞留時間は1.3Hrであった。生産レートを固体触媒成分Aの供給速度で割った値として触媒効率を求めたところ、88900g−PP/g−触媒であった。
また得られたプロピレン系重合体を分析したところ、MFRは38.9g/10min、エチレン含量は5.0wt%であった。PP成分(b−1)は、MFRは71.9g/10min、エチレン含量は2.5wt%であった。PP成分(b−2)についてのインデックスを計算したところ、MFR=8.0g/10min、エチレン含量は11.3wt%であった。
ここで、PP成分(b−1)のMFRは、PP成分(b−1)のMFRとプロピレン重合体のMFRと、PP成分(b−1)と(b−2)の重量比から対数加成式に従って算出した。また、エチレン含量は、PP成分(b−1)のエチレン含量とプロピレン重合体のエチレン含量と、PP成分(b−1)と(b−2)の重量比から算出した。ここで、PP成分(b−1)と(b−2)の重量比は、重合槽に供給する液化プロピレン量から各段の生産量を算出し、PP成分(b−2)の生産量は全体の重量に対し28%であった。プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)(PP−1)の組成を表1に示す。
Figure 0006409561
(3)ポリエチレン
メタロセン系低密度ポリエチレン(b):密度(JIS K7112)0.907g/cm、MFR(JIS K7210、190℃、2.16kg荷重)12.0g/10分。(日本ポリエチレン(株)製カーネルKM572)
(4)造核剤
(i)有機リン酸金属塩化合物系造核剤 アデカスタブNA−11(NA−11;(株)ADEKA製):造核剤(A)に相当
(ii)有機リン酸金属塩化合物系造核剤 アデカスタブNA21(NA−21;(株)ADEKA社製):造核剤(B)に相当
(iii)XT386(XT386;BASF社製):造核剤(C)に相当
(5)中和剤
(i)DHT−4A:ハイドロタルサイト(協和化学工業(株)製)
(6)酸化防止剤
(i)リン系酸化防止剤:イルガフォス168(IF168;BASF社製)、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェノール)フォスファイト
(ii)ヒンダードアミン系紫外線安定剤:TINUVIN622LD(TNV622;BASF社製)、琥珀酸ジメチル2−(4−ヒドロキシ−2、2,6,6−テトラメチルピペリジン)エタノール縮合物
(実施例1〜7、比較例1〜2)
プロピレン系重合体、造核剤及び他の添加剤(酸化防止剤、中和剤など)を表2に記載の配合割合(重量部)で準備し、スーパーミキサーでドライブレンドした後、35ミリ径の2軸押出機を用いて溶融混練した。ダイ出口部温度230℃でダイから押し出しペレット化した。得られたペレットを射出成形機により、樹脂温度230℃、射出圧力600kg/cm及び金型温度40℃で射出成形し、試験片を作成した。得られた試験片を用い、物性を測定した。その結果を表2に示す。
Figure 0006409561
表2より、実施例1〜7は、プロピレン単独重合体に、プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)を配合した本発明品で、耐熱性や剛性と衝撃のバランスに優れ、AC滅菌後の透明性が優れる事が判る。特に実施例4〜7はバランスに優れている。一方、比較例1は、プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)を配合していないもので、耐熱性と剛性は優れるが、耐衝撃性が低く、また、AC滅菌後の透明性も実施例に比べ劣る。比較例2は、耐熱性、剛性、耐衝撃性のバランスを得る為にメタロセン系低密度ポリエチレンを配合したものであるが、AC滅菌後の透明性が実施例に比べ劣る事が判る。
(実施例8)
実施例4によって得られたペレットを用いて、第16改正 日本薬局方試験:7.02 プラスチック製薬品容器試験法の2.1 ポリエチレン製又はポリプロピレン製水性注射剤容器の項の試験法に従って、透明性、重金属、鉛、カドミウム、強熱残分、泡立ち、pH、過マンガン酸カリウム還元性物質、紫外吸収スペクトル、蒸発残留分を測定した。結果としてすべての項目で適合範囲である事を確認した。
本発明は、医療用プロピレン系樹脂組成物およびその成形品に関し、詳しくは医療用途向け薬剤、薬液保存容器のうち、特に、第16改正 日本薬局方 7.02 プラスチック医薬品容器試験法 2.プラスチック製水性注射剤容器の規格 2.1ポリエチレン製又はポリプロピレン製水性注射剤容器の(4)重金属、(5)鉛、(6)カドミウム、(7)強熱残分、(8)溶出物の試験項目を満足し、かつ、優れた耐熱性、剛性、耐衝撃性、射出成形性およびオートクレーブ滅菌後も透明性を保持するものであり、それを用いた本発明のキット製剤は、透明性が良く第16改正日本薬局方一般試験に合格する優れた成形品を得るのに非常に有用であることが判り、注射筒、医療用器具および医療用容器として、薬剤液を充填してなる保存容器やプレフィルドシリンジのようなキット製剤に好適である。
17 重合器(第1重合工程)
18 リサイクルガス配管
19 原料混合ガス配管
20 未反応ガス抜出し配管
21 重合体抜出し配管
22 原料混合ガス配管
23 リサイクルガス配管
24 未反応ガス抜出し配管
25 重合体抜出し配管
26 重合器(第2重合工程)
27 重合活性抑制剤添加用配管
28 ガス回収機
29 バグフィルター

Claims (6)

  1. チーグラー・ナッタ触媒により重合されたプロピレン単独重合体またはプロピレンと含有量が1重量%未満のα−オレフィンとからなるプロピレン系共重合体であり、JIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠したメルトフローレート(以下、MFRと略称することがある。)が0.5〜100g/10分であるプロピレン系(共)重合体(A)60〜99重量部と、下記(B−i)〜(B−iv)の特性を満たすチーグラー・ナッタ触媒により重合されたプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)1〜40重量部とからなるプロピレン系樹脂100重量部に対して、造核剤を0.005〜0.3重量部含有し、高圧蒸気滅菌して使用されることを特徴とする医療用プロピレン系樹脂組成物。
    (B−i)エチレン含量が0.1〜3重量%、MFRが50〜150g/10minであるプロピレン−エチレン共重合体(b−1)とエチレン含量が5〜20重量%、MFRが1〜50g/10minであるプロピレン−エチレン共重合体(b−2)からなるプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)
    (B−ii)プロピレン−エチレン共重合体(b−1)とプロピレン−エチレン共重合体(b−2)の重量比が90:10〜60:40
    (B−iii)プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)のエチレン含量が2〜8重量%
    (B−iv)プロピレン−エチレン共重合体(b−1)とプロピレン−エチレン共重合体(b−2)のMFR比(b−1/b−2)が1〜30、かつ、プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)のMFRが10〜100g/10minである
  2. 造核剤が、下記式(1)で示される造核剤(A)0.01〜0.3量部、下記式(2)で示される造核剤(B)0.01〜0.2重量部および下記式(3)で示される造核剤(C)0.005〜0.03重量部からなる群から選択される少なくとも1種の造核剤であることを特徴とする請求項1に記載の医療用プロピレン系樹脂組成物。
    Figure 0006409561
    [式中、Rは、直接結合、硫黄又は炭素数1〜9のアルキレン基又はアルキリデン基であり、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基であり、MはNaであり、nはMの価数である。]
    Figure 0006409561
    [式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示し、Mは、周期律表第III族または第IV族の金属原子を示し、Xは、Mが周期律表第III族の金属原子を示す場合には、HO−を示し、Mが周期律表第IV族の金属原子を示す場合には、O=又は(HO)−を示す。]
    Figure 0006409561
    [R〜R:t−ブチル]
  3. 滅菌方法が100℃〜130℃の高圧蒸気滅菌されることを特徴とする請求項1または2に記載の医療用プロピレン系樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物を用いた医療用成形品。
  5. 請求項4に記載の医療用成形品がキット製剤であることを特徴とするキット製剤。
  6. 請求項5に記載のキット製剤がプレフィルドシリンジであることを特徴とするプレフィルドシリンジ。
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