(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係り、電動チルト機構および電動テレスコピック機構を有するステアリング装置1の側面図、図2は底面図である。
図1に示すように、本実施形態のステアリング装置1は、筒状のコラムチューブ110と、このコラムチューブ110の内周側に配置されたステアリングシャフト120を備えている。図に示すようにコラムチューブ110の両端からはステアリングシャフト120の端部が突出しており、図示右方に突出したステアリングシャフト120の端部には操舵ハンドル(図示省略)が同軸的に連結されている。一方、図示左方に突出したステアリングシャフト120の端部にはユニバーサルジョイントなどの継手によりインターミディエイトシャフト(図示省略)が連結する。インターミディエイトシャフトはさらにピニオンギヤ(図示省略)を介して転舵輪の転舵軸であるラックバー(図示省略)に連結されている。したがって、ドライバーが操舵ハンドルを回動操作するとステアリングシャフト120が回転し、この回転がインターミディエイトシャフトに伝達される。そして、ピニオンギヤによってインターミディエイトシャフトの回転駆動がラックバーの軸方向駆動に変換されて、転舵輪の転舵に供される。なお、インターミディエイトシャフトよりも車輪寄りの構成については省略する。
コラムチューブ110は、第1チューブ111、第2チューブ112および第3チューブ113の3つに分かれている筒状部材である。第1チューブ111はコラムチューブ110の図において右側に配置しており、両端が開口した筒状の部材である。第1チューブ111の左方寄りには図1において下方に延びた第1腕部111aが形成されている。図2に示すように、第1腕部111aは、第1チューブ111の両側面から平行に延びた2本の腕により構成されている。また、第1腕部111aには円形孔が形成されており、この円形孔にはピン111bが外方から取り付けられている。
第2チューブ112も第1チューブ111と同様に両端が開口した筒状の部材である。第2チューブ112の右端側には軸方向に二股状(図2参照)に延びた連結部112cが形成されており、また第2チューブ112の軸方向中央あたりからは第2腕部112aが図1において下方に延びて形成されている。図2に示すように、第2腕部112aは第2チューブ112の両側から平行に延びた2本の腕により構成されている。二股状の連結部112cの各辺には円形孔がそれぞれ形成されており、これらの円形孔内にはピン112dが外側から取り付けられている。ピン112dは第1チューブ111の外周壁に固設されている。したがって、第1チューブ111はピン112dを介して両持ち状態で第2チューブ112に取り付けられており、ピン112dを回動中心として第2チューブ112に対して揺動可能とされている。また、図1に示すように第2チューブ112の第2腕部112aには長孔112eが形成されており、この長孔112eにはピン112bが外方から取り付けられている。
第3チューブ113は図1および図2においてコラムチューブ110の左方側に配置しており、両端が開口した筒状の部材である。第3チューブ113の図示右方寄りの部分には第3腕部113aが図1において下方に延びて形成されている。第3腕部113aは図2に示すように第3チューブ113の両側から平行に延びた2本の腕により構成されている。また、第3チューブ113の内径は第2チューブ112の外径よりも僅かに大きくされており、第3チューブ113の図示右方端側から第2チューブ112の図示左方側が挿入されている。図示しないが、第2チューブ112の図示左方側の外周面にはライナーが付設されており、このライナーを介して第2チューブ112は第3チューブ113にがたつきなく挿入されるとともに、ライナーが第3チューブ113の内周壁を摺接することにより第2チューブ112は第3チューブ113内で軸方向移動が可能とされている。この第3チューブ113は、サポートブラケットなどを介して車体側に固定される。
ステアリングシャフト120もコラムチューブ110と同様に3つに分かれており、第1シャフト121、第2シャフト122、第3シャフト123を備えて構成されている。第1シャフト121は主に第1チューブ111内に、第2シャフト122は主に第2チューブ112内に、第3シャフト123は主に第3チューブ113内に挿入されている。
第1シャフト121はロッド状に形成されており、第1チューブ111内に挿入されて、ベアリングなどによって軸回りに相対回転可能且つ軸方向相対移動不能に第1チューブ111に支持されている。また、第1シャフト121の図示右端の部分は第1チューブ111の図示右端開口から突出しており、この突出部分にて操舵ハンドルが同軸回転するように固定される。第2シャフト122は筒状に形成されており、第2チューブ112内に挿入されて、ベアリングなどによって軸回りに相対回転可能且つ軸方向相対移動不能に第2チューブ112に支持されている。
第1シャフト121と第2シャフト122は、図示しない自在継手によって連結されている。自在継手は第1チューブ111と第2チューブ112との連結部位あたりに設けられており、自在継手を構成する一方の部分が第1シャフト121に連結され、他方の部分が第2シャフト122に連結されている。この自在継手を中心として、第1シャフト121は第2シャフト122に対して自在方向に揺動可能であり、且つ、第1シャフト121の回転駆動は自在継手を介して第2シャフト122に伝達可能とされている。したがって、第1チューブ111がピン112dを中心として第2チューブ112に対して揺動すると、それにしたがって第1シャフト121も自在継手を中心として第2シャフト122に対して揺動し、これによりチルト作動が行われる。
第3シャフト123は第3チューブ113内に配設されており、ベアリングなどによって軸回りに相対回転可能且つ軸方向相対移動不能に第3チューブ113に支持されている。第3シャフト123はロッド状に形成されており、第2シャフト122に近い側の外周には外周スプラインが軸方向に沿って形成されている。一方、筒状の第2シャフト122の第3シャフト123に近い側の内周には内周スプラインが形成されていて、第3シャフト123に形成された外周スプラインと嵌合している。このスプライン嵌合によって、第2シャフト122の回転駆動力が第3シャフト123に伝達可能とされるとともに、第2シャフト122は第3シャフト123に対して軸方向移動可能とされる。したがって、第2チューブ112が第3チューブ113に対して軸方向移動すると、それにしたがって第2シャフト122も第3シャフト123に対して軸方向移動し、これによりテレスコピック作動が行われる。
第3シャフト123の図示左端は第3チューブ113から突出しており、突出部分にセレーションが形成されていて、この部分に図示しないユニバーサルジョイントが取り付けられる。ユニバーサルジョイントは上述したインターミディエイトシャフトにも連結されており、第3シャフト123の回転駆動がインターミディエイトシャフトに伝達される。
図2によく示すように、第3チューブ113に形成される第3腕部113aを構成する2本の腕の間にはハウジング130が配置している。また、第3腕部113aにはピン113bが外側から取り付けられており、このピン113bがハウジング130の側面に差し込まれ、ハウジング130を回動可能に支持している。また、図2からわかるようにハウジング130の付近には電動モータ10が取り付けられている。この電動モータ10は図示しない電源より電力供給を受けて駆動して出力軸を回転する。出力軸は後述するウォーム軸21に同軸的に連結されている。
図3は、図1におけるハウジング130の付近の詳細を示す部分断面拡大図である。図3に示すように、ハウジング130には、ウォーム減速機20と、連結ロッド25が収納されている。ウォーム減速機20はウォーム軸21、ウォームギヤ22およびウォームホイール23を備える。ウォームギヤ22は電動モータ10の出力軸に同軸的に連結したウォーム軸21の外周に同軸的に取り付けられている。ウォーム軸21は図2に示すようにハウジング130の両側面を貫通しており、その軸方向が第3チューブ113の軸方向と直交するように配置されている。また、ウォームホイール23はウォームギヤ22に噛合している。連結ロッド25はウォームホイール23の内周に同軸的に且つ一体回転可能に連結している。したがって、連結ロッド25はウォーム減速機20を介して電動モータ10に連結していることになる。なお、この連結ロッド25が、本発明の回転軸に相当する。
ハウジング130の内部空間は、図3において左側から順に減速室131、支持室132、クラッチ室133といった3つの室を形成する。クラッチ室133の図示右側は開口面133aとされている。減速機20は減速室131内に配置されている。また、連結ロッド25は減速室131から支持室132を経てクラッチ室133にまで縦断しており、クラッチ室133の開口面133aから図示右方に突出している。連結ロッド25は支持室132にて第1ベアリング134および第2ベアリング135により回転可能かつ軸方向移動不能にハウジング130に支持されていて、第3チューブ113の軸方向と平行な方向に延びている。連結ロッド25の減速室131に配置した部分には第1押さえナット136および第2押さえナット137が取り付けられている。第1押さえナット136はウォームホイール23が連結ロッド25から軸方向にずれることを防止する。第2押さえナット137は連結ロッド25がハウジング130内で軸方向にずれたり、または、がたついたりすることを防止する。
図3に示すように、連結ロッド25には、ハウジング130内のクラッチ室133に配置される部分に支持部材26が取り付けられており、この支持部材26に本発明の変位部材に相当するクラッチ部材140が取り付けられている。図4は、図3におけるA−A断面図であり、この支持部材26およびクラッチ部材140の詳細を示している。
図4に示すように、支持部材26はロッド支持部26aおよびクラッチ支持部26bを有している。ロッド支持部26aは円筒状に形成されており、連結ロッド25のクラッチ室133内に配置される部分の外周に配置し、図示しない固定手段によって同軸回転可能に連結ロッド25に連結されている。クラッチ支持部26bは、ロッド支持部26aの側周の2箇所から連結ロッド25の軸方向に直交する方向(径方向)に突起状に延びており、本発明の突起部に相当する。本実施形態では2つのクラッチ支持部26bが図に示すようにロッド支持部26aの周方向に180度の間隔を隔てて設けられ、連結ロッド25の軸芯に対して対称的に取り付けられている。このように取り付けられたクラッチ支持部26bのそれぞれに、クラッチ部材140がそれぞれ被せられている。
クラッチ部材140は一端が開口し、開口面と反対側の端面である底面140aに孔140bが形成された有底筒状とされている。クラッチ支持部26bはクラッチ部材140の開口側からクラッチ部材140の内部に挿通し、クラッチ部材140の底面140aの孔140bまで軸方向に延び、図に示す状態ではクラッチ支持部26bの先端部分26cがクラッチ部材140の孔140bから僅かに露出している。孔140bの径はクラッチ支持部26bの外径よりも僅かに大きく設定されている。クラッチ部材140はこのクラッチ支持部26bの延設方向(軸方向)に沿って移動可能(変位可能)とされている。よって、クラッチ部材140は、クラッチ支持部26bに支持された状態で連結ロッド25と一体回転可能であり、且つ連結ロッド25の径方向に移動可能とされている。
また、図に示すようにクラッチ部材140の内周側にはコイルスプリング141が取り付けられている。このコイルスプリング141はクラッチ支持部26bに巻回された態様で配置され、その一端141aがクラッチ支持部26bに固定され、他端141bがクラッチ部材140に固定されており、図に示す状態で収縮力を発生している。よって、クラッチ部材140は、コイルスプリング141の付勢力によって、通常は、クラッチ支持部26bの先端部分26c側から基端部分26d側に向かう方向に付勢されている。また、クラッチ部材140の底面140aの外面側には摩擦力の大きい摩擦材が取り付けられている。
図3に示すように、連結ロッド25の支持部材26が取り付けられている部位から前方(図3において右方)の部位の外側には、テレスコスクリュー144が配置している。このテレスコスクリュー144は、連結ロッド25と同軸的に、且つ非接触状態を保って配置している。テレスコスクリュー144は筒状に形成されていて、その左方端側が図3に示すようにハウジング130のクラッチ室133内にて第3ベアリング138によりハウジング130に回動可能且つ軸方向移動不能に支持されている。また、テレスコスクリュー144の第3ベアリング138で支持されている部分よりも図示左方側の部分は放射状に拡径しており、この拡径部分の外周端からは、軸方向(図示左方)に円筒状に延びた円筒端部144aが形成されている。図3に示すように円筒端部144aとクラッチ部材140との軸方向位置は重複しており、支持部材26とクラッチ部材140との組み合わせ構造体が丁度この円筒端部144aの内周側に収納されるような配置形態を採っている。円筒端部144aの内周面には摩擦係数の大きい摩擦材が取り付けられている。
図3に示す状態では、クラッチ部材140がコイルスプリング141の付勢力によりクラッチ支持部26bの基端部分26d側に変位しており、そのためクラッチ部材140の底面140aとテレスコスクリュー144の円筒端部144aの内周面とは離間した状態とされている。このようにクラッチ部材140とテレスコスクリュー144とが離間した状態におけるクラッチ部材140の位置が、本発明におけるチルト伝達位置である。また、クラッチ部材140の底面140aがテレスコスクリュー144の円筒端部144aの内周面に当接してクラッチ部材140とテレスコスクリュー144が接続した状態におけるクラッチ部材140の位置が、本発明におけるテレスコピック伝達位置である。
図1および図3からわかるように、テレスコスクリュー144はハウジング130の開口面133a側から突出して、第2チューブ112および第3チューブ113の軸方向と平行な方向に延びている。テレスコスクリュー144に外周を取り巻かれている連結ロッド25もテレスコスクリュー144と同様にハウジング130の開口面133a側から突出している。図1からわかるように、連結ロッド25はテレスコスクリュー144よりも長く形成されており、テレスコスクリュー144の先端から突出し、前方(図示右方)にさらに延びている。そして、連結ロッド25の先端部分にチルトスクリュー146が同軸回転可能に取り付けられている。
図1に示すように、テレスコスクリュー144のハウジング130から突出している部分の外周には雄ネジが形成されており、この雄ネジに螺合した雌ネジが形成されたテレスコナット145がテレスコスクリュー144に取り付けられている。テレスコナット145には、第2腕部112aに形成された長孔112eを介して外方から取り付けられたピン112bが両側方から差し込まれており、テレスコナット145はこのピン112bを介して第2腕部112aに両持ちの状態で載置される。なお、テレスコスクリュー144、テレスコナット145およびピン112bが、本発明のテレスコピック機構に相当する。
チルトスクリュー146にも外周に雄ネジが形成されており、この雄ネジに螺合した雌ネジが形成されたチルトナット147がチルトスクリュー146に取り付けられている。チルトナット147には、第1腕部111aに形成された円形孔を介してピン111bが両側面から差し込まれている。したがって、チルトナット147はピン111bを介して第1腕部111aに両持ちの状態で回動可能に支持される。また、本実施形態においては、テレスコスクリュー144に形成される雄ネジのリードとチルトスクリュー146に形成される雄ネジのリードは同一とされており、テレスコナット145に形成される雌ネジのリードとチルトナット147に形成される雌ネジのリードは同一とされている。なお、チルトスクリュー146、チルトナット147およびピン111bが、本発明のチルト機構に相当する。
上記構成のステアリング装置1において、操舵ハンドルのチルト作動を行う場合は、ドライバーは図示しないスイッチを操作して電動モータ10を駆動させる。これにより電動モータ10が例えば正転駆動する。すると、電動モータ10の出力軸に連結したウォーム軸21が回転し、ウォーム軸21に取り付けられたウォームギヤ22も回転する。この回転はウォームギヤ22とウォームホイール23との噛み合いによりに減速されて回転トルクが増加する。このようにして減速機20で減速された回転はウォームホイール23から連結ロッド25に伝達されて連結ロッド25が回転する。この連結ロッド25の回転により、連結ロッド25の先端に同軸的に取り付けられているチルトスクリュー146も回転する。また、連結ロッド25の回転により、連結ロッド25に取り付けられた支持部材26および、この支持部材26にコイルスプリング141を介して連結しているクラッチ部材140も連結ロッド25の軸周りに回転する。ここで、チルト作動時においては、電動モータ10の回転速度は比較的低速度に設定され、電動モータ10の回転により発生する遠心力ではクラッチ部材140がコイルスプリング141の付勢力および自身の重力に抗して支持部材26から浮くことがないようにされている。したがって、チルト作動時は、クラッチ部材140はチルト伝達位置にとどまり、クラッチ部材140とテレスコスクリュー144とは離間した状態が維持される。よって、テレスコスクリュー144には電動モータ10の回転トルクは伝達されず、テレスコスクリュー144は回転しない。
チルトスクリュー146の回転を受けて、チルトスクリュー146に取り付けられたチルトナット147がチルトスクリュー146の軸方向前方(図1における図示右方)に送り移動される。チルトナット147はピン111bを介して第1チューブ111の第1腕部111aに連結しているので、チルトナット147の上記方向への送り移動によって第1チューブ111がピン112dを中心として図1の反時計回り方向に回動する。この回動により、図1の二点鎖線Aで示すように右方が上方に向くように第1チューブ111が第2チューブ112に対して傾動する。第1チューブ111の上記傾動に伴い、第1チューブ111内の第1シャフト121も第2シャフト122に対して同じように傾動する。これにより第1シャフト121の図示右端に取り付けられる操舵ハンドルが上方向に傾動し、チルト作動が行われる。なお、このようなチルト作動に伴ってチルトスクリュー146およびテレスコスクリュー144も傾動するが、チルトナット147が第1腕部111aに対してピン111bを中心に回動可能とされ、テレスコナット145は第2腕部112aの長孔112e内で移動可能とされるため、チルトナット147の上記回動およびテレスコナット145の上記移動により両スクリュー144,146の傾動による変位が吸収される。
ドライバーのスイッチ操作により電動モータ10を上記と同じ回転速度で逆転駆動させた場合には、チルトスクリュー146は上記とは反対方向に回転し、チルトナット147はチルトスクリュー146上を軸方向後方(図1における図示左方)に送り移動される。したがって、チルトナット147に連結した第1チューブ111はピン112dを中心して図1において時計回り方向に回動する。この回動により、図1の二点鎖線Bで示すように右方が下方に向くように第1チューブ111が第2チューブ112に対して傾動する。この傾動に伴い、第1シャフト121も第2シャフト122に対して図示右方が下方に向くように傾動する。これにより第1シャフト121に取り付けられる操舵ハンドルが下方向に傾動し、チルト作動が行われる。この場合においても、クラッチ部材140はテレスコスクリュー144に接続されていないので、テレスコスクリュー144は回転しない。
操舵ハンドルのテレスコピック作動を行う場合は、ドライバーは図示しないスイッチを操作して電動モータ10を駆動させる。これにより電動モータ10がたとえば正転駆動する。すると、電動モータ10の回転駆動力はウォーム減速機20に伝達され、このウォーム減速機20にて回転速度の減速がなされて回転トルクが増加される。減速した回転はウォームホイール23から連結ロッド25に伝達されて連結ロッド25が回転する。また、連結ロッド25の回転により、連結ロッド25に取り付けられた支持部材26および、この支持部材26にコイルスプリング141を介して連結しているクラッチ部材140も回転する。ここで、テレスコピック作動時における電動モータ10の回転速度は比較的高速度であり、電動モータ10の回転により発生する遠心力によってクラッチ部材140がコイルスプリング141の付勢力および自身の重力に抗して浮くようにされている。したがって、クラッチ部材140は、連結ロッド25の軸回りを回転しながら、図3に示す位置からクラッチ支持部26bの軸方向に沿って径方向外方(クラッチ支持部26bの基端側から先端側に向かう方向)に移動して、底面140aがテレスコスクリュー144の円筒端部144aの内周面に当接する位置であるテレスコピック伝達位置に変位する。このクラッチ部材140の変位によってクラッチ部材140がテレスコスクリュー144の円筒端部144aに押し付けられ、摩擦力が発生してクラッチ部材140とテレスコスクリュー144とが接続される。
したがって、クラッチ部材140の回転はテレスコスクリュー144にも伝達されて、テレスコスクリュー144が回転する。テレスコスクリュー144の回転によりテレスコスクリュー144の外周に螺合したテレスコナット145がテレスコスクリュー144の軸方向前方(図1における右方)に送り移動される。テレスコナット145はピン112bを介して第2チューブ112の第2腕部112aに連結されているので、第2チューブ112もテレスコナット145の送り移動に従い第3チューブ113に対して軸方向前方に移動する。
また、連結ロッド25の先端に取り付けられたチルトスクリュー146も連結ロッド25とともに回転する。このチルトスクリュー146の回転によりチルトスクリュー146の外周に螺合したチルトナット147がチルトスクリュー146の軸方向前方(図1における右方)に送り移動される。このためチルトナット147に連結した第1チューブ111も軸方向前方に移動する。ここで、テレスコスクリュー144のリードとチルトスクリュー146のリードは同じとされているので、チルトナット147の送り移動量はテレスコナット145の送り移動量と同じとなる。このため送り移動中であっても両ナット145,147の相対位置は変わらず、第2チューブ112と第1チューブ111の相対位置も変化しない。よって、第1チューブ111は第2チューブ112とともに軸方向に同じ速度で移動するのみであり、第2チューブ112に対して傾動してチルト作動が行われない。このように両機構の相対動作(一方の機構から見た他方の機構の動作)が相殺され得るように構造を工夫することにより、第1チューブ111および第2チューブ112がともに第3チューブ113に対して軸方向前方に移動する。これにより第1シャフト121の右端に取り付けられる操舵ハンドルが車両後方に移動してテレスコピック作動が行われる。
ドライバーのスイッチ操作により電動モータ10を上記と同じ回転速度で逆転駆動させた場合には、テレスコスクリュー144およびチルトスクリュー146は上記とは反対方向に回転し、テレスコナット145はテレスコスクリュー144上を軸方向後方(図1における図示右方)に送り移動され、チルトナット147はチルトスクリュー146上を軸方向後方に送り移動される。したがって、テレスコナット145に連結した第2チューブ112およびチルトナット147に連結した第1チューブ111はともに軸方向後方に移動される。この軸方向後方への移動に従い第1シャフト121および第2シャフト122が第3シャフト123に対して軸方向後方に移動される。これにより、第1シャフト121に取り付けられる操舵ハンドルが車両前方に移動し、テレスコピック作動が行われる。
以上のように、本実施形態のステアリング装置1は、電動モータ10に減速機20を介して連結ロッド25を連結するとともに、この連結ロッド25に一体回転可能且つ径方向移動可能に取り付けられ、連結ロッド25の回転により発生する遠心力により電動モータ10から出力される回転トルクをテレスコピック機構に伝達可能な位置であるテレスコピック伝達位置に変位可能なクラッチ部材を備える。また、クラッチ部材140は、遠心力が小さいときは電動モータ10から出力される回転トルクがテレスコピック機構に伝達されず、チルト機構のみに伝達される位置(チルト伝達位置)に変位している。よって、遠心力が小さければクラッチ部材140はチルト伝達位置にとどまってチルト作動が行われ、遠心力が大きければクラッチ部材140はテレスコピック伝達位置に変位してテレスコピック作動が行われる。このように遠心力を利用してクラッチ部材140を変位させることによりチルト作動とテレスコピック作動を選択することができるので、高価な電磁クラッチなどを用いずとも上記作動の切り替えが可能となり、ステアリング装置のコストの低減を図ることができる。また、クラッチの複雑な制御も必要ないので、簡単な構成で上記作動の切り替えを行うことができる。
(第2実施形態)
上記第1実施形態に示したステアリング装置1においては、チルトスクリュー146が連結ロッド25に直結しているので、電動モータ10を回転駆動させると直ちにチルトスクリュー146が回転する。一方、テレスコスクリュー144はクラッチ部材140が電動モータ10の回転による遠心力によってテレスコピック伝達位置まで変位し、クラッチ部材140とテレスコスクリュー144との接続がなされてから回転を始める構造である。よって、電動モータ10の回転開始からテレスコスクリュー144の回転開始までの間でタイムラグが発生する。このためテレスコピック作動のみを行いたい場合でも、上記タイムラグの間はチルトスクリュー146のみが回転してチルト作動が行われてしまう可能性がある。本実施形態ではテレスコピック作動時にチルトスクリューのみが回転する時間を短縮し、あるいはこれを防止するように構成したものである。
本実施形態におけるステアリング装置は、その概観および基本的な構成は第1実施形態にて示したステアリング装置1と同様である。したがって、図1に示したステアリング装置1の側面図および図2に示したステアリング装置1の底面図を本実施形態でも利用することができる。よって、これらの図面および上記第1実施形態における関連部分の説明を参照することとし、ここではその具体的説明を省略する。
図5は、本実施形態におけるステアリング装置の側面視におけるハウジング130の付近の詳細を示す断面拡大図である。図5からわかるように、本実施形態においては、連結ロッドが分離されている。また、連結ロッドの回転トルクをチルトスクリューおよびテレスコスクリューに伝達する伝達構造が上記第1実施形態とは異なっている。その他の構成については基本的には上記第1実施形態で説明した構成と同一であるので、同一部分には同一符号で示すとともに、これらの説明は上記第1実施形態で説明した部分を参照することとしてその具体的説明を省略する。
図5に示すように、本実施形態においては、上記第1実施形態における連結ロッド25に対応する構成として、第1連結ロッド25aおよび第2連結ロッド25bを有している。第1連結ロッド25aは上記第1実施形態の連結ロッド25のうちハウジング130内に収納されている部分に相当する構成であり、第3チューブ113(図1)の軸方向と平行に配設されている。第1連結ロッド25aは、ハウジング130内で減速室131から支持室132を経てクラッチ室133にまで縦断しており、減速室131内で減速機20に連結し、支持室132にて第1ベアリング134および第2ベアリング135により回転可能かつ軸方向移動不能にハウジング130に支持され、クラッチ室133まで延びてこのクラッチ室133内の端部が自由端とされている。この第1連結ロッド25aが、本発明の回転軸に相当する。
また、第1連結ロッド25aは、ハウジング130内のクラッチ室133に配置されている部分の外周に支持部材26が取り付けられている。支持部材26はロッド支持部26aおよびクラッチ支持部26bを有している。ロッド支持部26aは第1連結ロッド25aの自由端部を取り巻くように円筒状に形成されており、図示しない固定手段によって同軸的に且つ一体回転可能に第1連結ロッド25aに連結されている。クラッチ支持部26bは、ロッド支持部26aの側周の1箇所から突起状に径方向外方に延設されている。この支持部材26にクラッチ部材140が取り付けられている。上記第1実施形態ではクラッチ支持部26bはロッド支持部26aの周方向に対称的な2箇所の位置に設けられているが、本実施形態ではクラッチ支持部26bはロッド支持部26aの外周の1箇所のみの位置に設けられており、このためクラッチ部材140も一つのクラッチ支持部26bに設けられているのみである。
クラッチ部材140の構造は、基本的には上記第1実施形態で説明したクラッチ部材140と同一構造である。しかし、本実施形態のクラッチ部材140は、側面から延びたクラッチ側第1突片201が取り付けられている点、および、クラッチ部材140の底面に摩擦係数の大きい摩擦材を取り付けておく必要がない点が、上記第1実施形態で説明したクラッチ部材140とは異なる。クラッチ部材140に設けられたクラッチ側第1突片201は本発明の変位部材側第1突片に相当する構成であり、図からわかるようにクラッチ部材140の図示右側に配置する側面から第1連結ロッド25aの軸方向であってハウジング130の開口面133a側(第2連結ロッド25b側)に向かう方向に延設されている。
また、図からわかるように、ロッド支持部26aにはロッド側第1突片202が取り付けられている。このロッド側第1突片202は、ロッド支持部26aの図示右側の端面のうちの、クラッチ支持部26bが取り付けられている部分とは周方向に約180度ずれた反対側の位置に設けられており、クラッチ側第1突片201と同じように第1連結ロッド25aの軸方向であってハウジング130の開口面133a側(第2連結ロッド25b側)に向かう方向に延設されている。上記ロッド側第1突片202が、本発明の回転軸側第1突片に相当する。
第2連結ロッド25bは、上記第1実施形態の連結ロッド25のうち、ハウジング130から突出した部分の構成に相当するものであり、その先端には図1のようにチルトスクリュー146が同軸回転可能に取り付けられている。第2連結ロッド25bは、その基端面(チルトスクリュー146が取り付けられている側の端とは反対側の端面)が第1連結ロッド25aの自由端の端面に軸方向に所定間隔を隔てて面しており、第1連結ロッド25aと軸が一致するように縦列配置している。第2連結ロッド25bの外周側にはテレスコスクリュー144が同軸的且つ非接触状態で配設されている。テレスコスクリュー144は上記第1実施形態と同様にその基端側が拡径されてハウジング130のクラッチ室133内に進入しており、この拡径されている部分にて第3ベアリング138でハウジング130に回動可能且つ軸方向移動不能に支持されている。また、テレスコスクリュー144の基端部分は第2連結ロッド25bの基端面とほぼ面一となる軸方向位置まで延びてハウジング130内に進入しているにとどまり、上記第1実施形態のようにクラッチ部材140の外周までは延びていない。
図5に示すように、第2連結ロッド25bは、第4ベアリング139によりテレスコスクリュー144の基端部分の内周に回転可能且つ軸方向移動不能に支持されており、この支持部分からハウジング130の外方に延設している。第2連結ロッド25bには、第4ベアリング139による支持部位よりも図示左方寄りの部分の側周から径方向外方に延びたチルト用第2突片204が形成されている。このチルト用第2突片204は、本発明における第2突片に相当する。また、テレスコスクリュー144の基端からは、テレスコ用第2突片203が第2連結ロッド25bの軸方向であって第1連結ロッド25aに向かう方向に延びて形成されている。クラッチ側第1突片201とテレスコ用第2突片203は、軸方向位置(図示左右方向の位置、第1連結ロッド25aおよび第2連結ロッド25bの軸方向に沿った位置)が重複するように設けられている。ただし、クラッチ側第1突片201は、クラッチ部材140がコイルスプリング141の付勢力によりクラッチ支持部26bの基端側に押し付けられている状態で第1連結ロッド25aの軸回りを回転したときに、テレスコ用第2突片203の内側を旋回するようにその径方向位置が設定されている。したがって、上記の状態ではクラッチ側第1突片201が回転してもテレスコ用第2突片203とは係合しない。
第2連結ロッド25bの基端面には、本発明の中間部材に相当する連結アーム210が取り付けられている。この連結アーム210は、回動アーム(連結棒部)211と、入力側突片212と、出力側突片213とを備えて構成されている。回動アーム211は、第2連結ロッド25bの基端面に取り付けられたピンに取り付けられており、このピンを介して第2連結ロッド25bの回転軸を中心に、第2連結ロッド25bに対して回転可能に取り付けられている。入力側突片212は、回動アーム211の一端側に第1連結ロッド25aに向かう方向に延びて形成されている。一方、出力側突片213は回動アーム211の他端側に第1連結ロッド25aから離間する方向に延びて形成されている。
図5からわかるように、入力側突片212は、第1連結ロッド25aの回転に伴ってロッド側第1突片202が第1連結ロッド25aの軸回りに回転したときに、このロッド側第1突片202が回転方向から係合するように、その径方向位置および軸方向位置が設定されている。出力側突片213は、連結アーム210が回転したときにチルト用第2突片204に回転方向から係合するように、その径方向位置および軸方向位置が設定されている。また、連結アーム210にはスプリング214が取り付けられている。このスプリング214は、入力側突片212が第2連結ロッド25bとの関係において所定の回転位置に配置するようにされている。
図6は、図5におけるB−B断面図である。図に示すように、入力側突片212と出力側突片213は、これらの回転中心を挟んで反対側に位置している。また、入力側突片212とロッド側第1突片202とが図に示すように係合を開始したときに、出力側突片213とチルト用第2突片204が非係合状態となるようにスプリング214により付勢され、このように付勢された位置を連結アーム210の初期位置としている。本実施形態では、連結アーム210の初期位置は、出力側突片213とチルト用第2突片204とが周方向(連結アーム210の回転方向)にほぼ180度(図では160度程度)ずれて配置するようにされる。また、図からわかるように、チルト用第2突片204とテレスコ用第2突片203は、各々の回転方向位置がほぼ一致するようにされている。この構成により、出力側突片213とチルト用第2突片204の係合と、クラッチ側第1突片201とテレスコ用第2突片203との係合がほぼ同時に起こるようにされている。これ以外の構成は上記第1実施形態と同様であるので、その具体的説明は省略する。
上記構成において、図5および図6を参照してチルト作動およびテレスコピック作動について説明する。まず、チルト作動を行うべく電動モータ10を回転させると、この回転トルクが減速機20を介して第1連結ロッド25aに伝達されて第1連結ロッド25aが回転する。第1連結ロッド25aの回転に伴ってロッド支持部26aに設けられたロッド側第1突片202も回転する。そして、図6に示すようにロッド側第1突片202が連結アーム210の入力側突片212と係合することにより連結アーム210が回転する。この係合開始時においては、上述したように出力側突片213とテレスコ用第2突片203とが周方向に離間して配置されているので、上記係合後所定の間は、連結アーム210は空回りする。そして、所定の角度だけ連結アーム210が回転して出力側突片213がテレスコ用第2突片203に係合すると、第2連結ロッド25bが回転し始める(上記のように連結アーム210が空回りする時間を「不感帯期間」という)。
第2連結ロッド25bの先端にはチルトスクリュー146が同軸回転可能に連結しているので、第2連結ロッド25bの回転を受けてチルトスクリュー146が回転し、上記第1実施形態と同様にチルト作動が行われる。ここで、チルト作動時においては、電動モータ10の回転速度は比較的低速度に設定され、電動モータ10の回転により発生する遠心力ではクラッチ部材140がコイルスプリング141の付勢力および自身の重力に抗して支持部材26から浮くことがないようにされている。したがって、チルト作動時にはクラッチ部材140はコイルスプリング141の付勢力により第1連結ロッド25a側に押し付けられながら回転する。よって、クラッチ側第1突片201とテレスコ用第2突片との径方向位置がずれ、両者は係合することはない。よって、テレスコスクリュー144には電動モータ10の回転トルクは伝達されず、テレスコスクリュー144は回転しない。
また、テレスコピック作動を行うべく電動モータ10を回転させると、チルト作動時と同様にして電動モータ10の回転トルクが減速機20を介して第1連結ロッド25aに伝達されて、第1連結ロッド25a、支持部材26、クラッチ部材140、ロッド支持部26aに取り付けられたロッド側第1突片202が回転する。この回転によりロッド側第1突片202が連結アーム210の入力側突片212に係合し、連結アーム210が回転する。このとき、連結アーム210は上述した不感帯期間中は空回りし、この不感帯期間中連結アーム210の回転は第2連結ロッド25bおよびチルトスクリュー146に伝達されない。そして、出力側突片213がチルト用第2突片204に係合して初めて第2連結ロッド25bおよびチルトスクリュー146が回転し始める。
また、テレスコピック作動時においては、電動モータ10の回転速度は比較的高速度に設定され、電動モータ10の回転(第1連結ロッド25aの回転)により発生する遠心力によってクラッチ部材140がコイルスプリング141の付勢力および自身の重力に抗して浮き上がる。そして、上記不感帯期間中にクラッチ側第1突片201がテレスコ用第2突片203に係合可能となる径方向位置であるテレスコピック伝達位置に変位する。この位置に変位すれば、クラッチ側第1突片201とテレスコ用第2突片203との回転方向位置が一致したときに回転方向から両者が係合する。この係合によって回転トルクがテレスコ用第2突片203を介してテレスコスクリュー144に伝達されて、テレスコスクリュー144が回転する。
上述のようにしてチルトスクリュー146とテレスコスクリュー144が両方とも回転し、上記第1実施形態と同様にしてテレスコピック作動が行われる。この場合、本実施形態においては、第1連結ロッド25aが回転してからチルトスクリュー146(第2連結ロッド25b)に回転トルクが伝達されるまでに所定の不感帯期間が設けられているとともに、不感帯期間の終了時、つまり出力側突片213とチルト用第2突片204の係合時と、クラッチ側第1突片201とテレスコ用第2突片203の係合時がほぼ一致するように、各突片の回転方向位置が設定されている。よって、不感帯期間中に電動モータ10の回転速度を増加させてクラッチ側第1突片201をテレスコピック位置に変位すれば、クラッチ側第1突片201がテレスコ用第2突片203に係合するタイミングと、出力側突片213とチルト用第2突片204とが係合するタイミングをほぼ一致させることができ、テレスコスクリュー144とチルトスクリュー146を同時に作動させ、あるいは一方のスクリューのみが作動する時間を短縮することができる。
また、チルト作動およびテレスコ作動を行った後に、電動モータ10を逆方向(チルト作動またはテレスコピック作動において電動モータ10を回転させた方向とは逆の回転方向)に回転させて第1連結ロッド25aを逆方向に1回転(360度)させておくことにより、コイルスプリング141の付勢力により連結アーム210が初期状態に戻り、出力側突片213とチルト用第2突片204とを回転方向にほぼ180度離間した状態に戻すことができる。このため次回の作動時においても不感帯を有効に使用することができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図7は、本実施形態に係るステアリング装置3の側面図、図8はステアリング装置3の底面図である。
図7および図8に示すように、本実施形態のステアリング装置3は、筒状のコラムチューブ310と、このコラムチューブ310の内周側に配置されたステアリングシャフト320とを備えている。コラムチューブ310は、第1チューブ311と第2チューブ312との2つに分けて構成されている筒状部材である。第1チューブ311は両端が開口しており、軸方向中央の底面あたりから第1腕部311aが図示下方に延びて形成されている。
第2チューブ312も両端が開口した筒形状とされている。図7に示すように第2チューブ312の内径は第1チューブ311の外形よりも僅かに大きくされており、第2チューブ312の図示右方端側から第1チューブ311の図示左方側が挿入されて、第1チューブ311が第2チューブ312に対して軸方向移動可能とされている。また、第2チューブ312の図7において左端側の上方には、取り付け用の孔312cが形成されている。第2チューブ312はこの孔312cにてピンなどにより車体側に揺動可能に固定され、この孔312cを中心とした揺動によりチルト作動が行われる。
ステアリングシャフト320もコラムチューブ310と同様に2つに分かれており、第1シャフト321および第2シャフト322を備えて構成されている。第1シャフト321は主に第1チューブ311内に、第2シャフト322は主に第2チューブ内に挿入されている。第1シャフト321は第1チューブ311にベアリングなどを介して相対回転可能且つ軸方向相対移動不能に支持されている。第2シャフト322は第2チューブ312にベアリングなどを介して相対回転可能且つ軸方向相対移動不能に支持されている。
第1シャフト321は第2シャフト322に対面している側が筒状に形成されており、この筒状に形成された部分の内周側面には内周スプラインが軸方向に形成されている。一方、第2シャフト322の第1シャフト321に対面している側の外周側面には外周スプラインが軸方向に形成されている。そして、上記内周スプラインが外周スプラインに嵌合している。このスプライン嵌合により、第1シャフト321の回転は第2シャフト322に伝達することが可能であり、且つ第1シャフト321は第2シャフト322に対して軸方向移動可能とされる。この軸方向移動によりテレスコピック作動が行われる。
図7に示すように第2チューブ312の下方にはハウジング330が固設されている。図9は、図7の方向から見たハウジング330付近の構造の詳細を示す部分断面図である。本実施形態のハウジング330は、基本的には第2実施形態で説明したものに類似しており、ハウジング330内に収納される要素の形状や支持構造も、第2実施形態で説明した構成に類似している。よって、同一部分については同一符号で示して共通した要素の説明を省略し、以下に異なる部分を中心に説明する。
図9に示すように、第1連結ロッド25aの自由端部分の外周に取り付けられた支持部材26のクラッチ支持部26bは、第2実施形態で示したクラッチ支持部26bよりも長く形成されている。したがって、本実施形態では、このクラッチ支持部26bに支持されたクラッチ部材140がクラッチ支持部26bに沿って移動するストロークを第2実施形態の場合よりも長く設定することが可能とされている。
クラッチ部材140の側面には本発明の変位部材側第1突片に相当するクラッチ側第1突片221が取り付けられている。このクラッチ側第1突片221は、クラッチ部材140の図示右側の側面から第1連結ロッド25aの軸方向であって第2連結ロッド25bに向かう方向に延設されている。
第2連結ロッド25bは、図9に示す側の端部(基端部)がハウジング330内に進入し、その基端面が第1連結ロッド25aの自由端の端面に軸方向に所定間隔を隔てて面している。また、第2連結ロッド25bの基端部と反対側の端部である先端部にはテレスコスクリュー344が同軸回転可能に取り付けられている(図7参照)。第2連結ロッド25bの外周側にはチルトスクリュー346が同軸的且つ非接触状態で配設されている。このように、本実施形態では、チルトスクリュー346とテレスコスクリュー344の配置が上記第2実施形態の場合と逆になっている。
第2連結ロッド25bの外周を取り巻くように配設されたチルトスクリュー346は、その基端側が拡径されてハウジング330のクラッチ室133内に進入しており、この拡径されている部分にて第3ベアリング138でハウジング330に回動可能且つ軸方向移動不能に支持されている。また、チルトスクリュー346の基端面は鍔状に拡径しており、この基端面にチルト用第2突片224が取り付けられている。チルト用第2突片224は、チルトスクリュー346の基端面から第2連結ロッド25bの軸方向であって第1連結ロッド25aに向かう方向に延設されている。
図9に示すように、第2連結ロッド25bは、第4ベアリング139によりチルトスクリュー346の基端部分の内周に回転可能且つ軸方向移動不能に支持されており、この支持部分からハウジング330の外方に延設している。また、第2連結ロッド25bには、第4ベアリング139による支持部位よりも図示左方寄りの部分の側周から径方向外方に延びたテレスコ用第2突片223が形成されている。さらに、第2連結ロッド25bの基端面には連結アーム210が取り付けられている。この連結アーム210は第2実施形態と同様に、第2連結ロッド25bの基端面に取り付けられたピンを中心に回動する回動アーム211と、回動アーム211の一端に設けられた入力側突片212と、回動アーム211の他端に設けられた出力側突片213とを有している。入力側突片212は第2連結ロッド25bの軸方向であって第1連結ロッド25aに向かう方向に延びて形成されている。出力側突片213は第2連結ロッド25bの軸方向であって第1連結ロッド25aから離間する方向(入力側突片212の延設方向と反対方向)に延びて形成されている。また、図からわかるように、回動アーム211の回動中心から入力側突片212までの距離の方が、回動中心から出力側突片213までの距離よりも長くされている。本実施形態においては、テレスコ用第2突片223が本発明の第3突片に相当し、チルト用第2突片224が本発明の第4突片に相当する。
図9に示すように、クラッチ側第1突片221、入力側突片212およびチルト用第2突片224は、各々軸方向位置(第1連結ロッド25aおよび第2連結ロッド25bの軸芯に沿った方向における位置)が重複するように設けられている。チルト用第2突片224は、チルトスクリュー346が回転したときに入力側突片212よりも外側を旋回するように径方向位置が設定されている。また、クラッチ側第1突片221の径方向位置は、クラッチ部材140がコイルスプリング141の付勢力によりクラッチ支持部26bの基端側に押し付けられている状態(図9の実線で示す状態)で第1連結ロッド25aが回転したときに、入力側突片212よりも内側を旋回するように、その径方向位置が設定されている。
したがって、図に示す状態で第1連結ロッド25aが回転しても、クラッチ側第1突片221が入力側突片212やチルト用第2突片224に係合することはない。しかし、クラッチ部材140が径方向外方に移動してテレスコピック伝達位置に変位した場合には、クラッチ側第1突片221は入力側突片212に回転方向から係合可能となる。また、クラッチ部材140が径方向外方に移動してチルト伝達位置に変位した場合には、クラッチ側第1突片221がチルト用第2突片224に回転方向から係合可能となる。
また、連結アーム210にはスプリング214が取り付けられている。このスプリング214は上記第2実施形態と同じように連結アーム210を付勢する。すなわち、連結アーム210はこのスプリング214によって、出力側突片213がテレスコ用第2突片223と周方向(連結アーム210の回転方向)にほぼ180度ずれるような初期位置となるように付勢される。したがって、クラッチ側第1突片221が入力側突片212に係合した場合には、上記第2実施形態と同様の不感帯期間を設けることができる。
図7および図8に示すように、チルトスクリュー346のハウジング330から突出している部分の外周には雄ネジが形成されており、この雄ネジに螺合した雌ネジを持つチルトナット347がチルトスクリュー346に取り付けられている。チルトナット347はその両端側で対のリンク部材351に連結している。このリンク部材351は、長尺状に形成されたロッド部351aと、このロッド部351aの一端から直角方向に延びた第1ピン部351bと、ロッド部351aの他端から直角方向であって上記第1ピン部351bと同じ向きに延びた第2ピン部351cとを有している。第1ピン部351bは車体に固定されたブラケットBRに軸受けなどを介して回転可能に取り付けられている。第2ピン部351cはチルトナット347の両側面に軸受けなどを介して回転可能に連結されている。リンク部材351は図8に示すようにコラムチューブ310を両側から挟んだ状態でチルトナット347を両側から回転可能に支持している。よって、コラムチューブ310は、チルトナット347、チルトスクリュー346、ハウジング330とともにこのリンク部材351により両持ち状態で支持されていることになる。
また、チルトナット347の両側面には対のガイドプレート352が配置している。ガイドプレート352は図7に示すように内部に長孔352aが形成された細長い小判状の平板部材であり、長孔352aの長軸方向がチルトスクリュー346の軸方向に一致するように第2チューブ312に取り付けられている。そして、上述したリンク部材351の第2ピン部351cはこの長孔352aを挿通してチルトナット347に連結している。
第2連結ロッド25bはチルトスクリュー346の内部を挿通し、チルトスクリュー346の先端から突出しており、この突出している部分の外周にはテレスコスクリュー344が取り付けられている。テレスコスクリュー344の外周には雄ネジが形成されており、この雄ネジに螺合した雌ネジを持つテレスコナット345がテレスコスクリュー344に取り付けられている。テレスコナット345はその両側面にて第1チューブ311の第1腕部311aに固定されている。
上記構成において、図9、図9のC−C断面図である図10および、図9のD−D断面図である図11を参照してチルト作動およびテレスコピック作動について説明する。まず、電動モータ10を回転させると、この回転トルクが減速機20を介して第1連結ロッド25aに伝達されて第1連結ロッド25aが回転する。第1連結ロッド25aの回転に伴って、支持部材26、クラッチ部材140およびクラッチ部材140に取り付けられたクラッチ側第1突片221が回転する。しかし、電動モータ10が非常に低速度である場合には、クラッチ部材140に作用する遠心力が小さく、クラッチ部材140はコイルスプリング141の付勢力によりクラッチ支持部26bの基端側に押し付けられている状態のままとなる。この状態においては、クラッチ側第1突片221はチルト用第2突片224および入力側突片212の内周側を旋回するので、これらにクラッチ側第1突片221が係合することはない。
テレスコピック作動を行おうとするときは、電動モータ10の回転速度を上記の低速度よりも速い中速度に上げて、クラッチ部材140にかかる遠心力を大きくする。すると、クラッチ部材140はこの遠心力によってコイルスプリング141の付勢力および自身の重力に抗して浮き上がって径方向外方に移動し、クラッチ部材140は回転しながら入力側突片212に係合可能な位置(テレスコピック伝達位置)まで変位する。このため、クラッチ側第1突片221が入力側突片212に回転方向から係合し、この係合によって連結アーム210が回転を開始する。連結アーム210が回転を開始しても、不感帯期間中は空回りするので回転トルクは第2連結ロッド25b側に伝達されない。そして、不感帯期間終了時、つまり出力側突片213がテレスコ用第2突片223に係合したときに初めて回転トルクが第2連結ロッド25bに伝達され、第2連結ロッド25bおよびテレスコスクリュー344が回転し始める。テレスコスクリュー344の回転によりテレスコナット345がテレスコスクリュー344の軸方向に送り移動される。テレスコナット345は第1チューブ311に連結しているため、このテレスコナット345の送り移動に伴って第1チューブ311が第2チューブ312に対して軸方向に移動する。これによりテレスコピック作動が行われる。
チルト作動を行おうとするときは、電動モータ10の回転速度を上記の中速度よりも速い高速度に上げて、クラッチ部材140にかかる遠心力をさらに大きくする。すると、クラッチ部材140はこの遠心力によってさらに径方向外方に移動し、クラッチ部材140は回転しながら図9の点線で示すチルト用第2突片224に係合可能な位置(チルト伝達位置)まで変位する。このため、クラッチ側第1突片221がチルト用第2突片224に回転方向から係合し、この係合によってチルトスクリュー346が回転を開始する。
チルトスクリュー346が回転すると、チルトスクリュー346に螺合しているチルトナット347がチルトスクリュー346の軸方向に送り移動される。チルトナット347の送り移動に伴ってチルトナット347に取り付けられているリンク部材351の第2ピン部351cも移動する。リンク部材351は第1ピン部351bにて車体側に回動可能に固定されているため、第2ピン部351cの移動はリンク部材351のロッド部351aの第1ピン部351bを中心とする回動に変換される。
ここで、図7に示すようにリンク部材351の第2ピン部351cはチルトナット347を介して第2チューブ312に連結しており、この第2チューブ312は孔312cを中心に揺動可能に車体に取り付けられているので、リンク部材351の回動動作を受けて第3チューブ312は孔312cを中心に回動動作する。この第2チューブ312の回動によりステアリング装置3の全体が孔312cを中心に傾動し、チルト作動が行われる。なお、図7に示す実施の態様では、チルトナット347が前進(図示右方)移動してリンク部材351が反時計周り方向に回動すると、この回動動作に下方向移動成分が含まれる。この下方向移動成分を受けてステアリング装置3は下方向にチルト作動する。また、チルトナットが後進(図示左方)移動してリンク部材351が時計回り方向に回動すると、この回動動作に上方向移動成分が含まれる。この上方向移動成分を受けてステアリング装置3は上方向にチルト作動する。
本実施形態の場合、クラッチ部材140の質量をm、コイルスプリング141のバネ定数をk、クラッチ部材140がテレスコピック伝達位置に変位しているときのクラッチ部材140の重心の半径位置(第1連結ロッド25aの回転中心から上記重心までの径方向距離)をr1、そのときのコイルスプリング141の伸びをx1とすると、第1連結ロッド25aの回転数ω1を、ω1=(k・x1)/(m/r1)とすることにより、クラッチ部材140をテレスコピック伝達位置まで変位させてテレスコピック作動を行うことができる。また、クラッチ部材140がチルト伝達位置に変位しているときのクラッチ部材140の重心の半径位置をr2、そのときのコイルスプリングの伸びをx2とすると、第1連結ロッド25aの回転数ω2を、ω2=(k・x2)/(m・r2)とすることにより、クラッチ部材140をチルト伝達位置まで変位させてチルト作動を行うことができる。
以上のように、本実施形態においても、クラッチ部材140を遠心力によって移動させることにより、テレスコピック作動とチルト作動を簡単な構成で切り替えることができる。また、本実施形態も第2実施形態と同じように、連結アーム210をスプリング214で付勢して、入力側突片212とクラッチ側第1突片221とが係合を開始したときには出力側突片213とテレスコ用第2突片223が非係合状態となるようにされており、クラッチ側第1突片221が入力側突片212と係合したときに不感帯期間が設けられている。このため、チルト作動を行う場合に電動モータ10の回転速度不足などによりクラッチ側第1突片221が入力側突片212に係合してしまった場合でも、不感帯期間中に回転速度を増加すれば、クラッチ側第1突片221を入力側突片212から離脱させてチルト用第2突片224に係合させ、チルト作動を行うことができる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。この第4実施形態にて説明するステアリング装置4は、電動モータが減速機を介さずに直接第1連結ロッドに連結されており、減速機は第2連結ロッド側に設けられている構成の例である。図12は、本実施形態におけるステアリング装置4の側面図である。図に示すように、本実施形態におけるステアリング装置4は、第3実施形態におけるステアリング装置3と同様に、コラムチューブ410が第1チューブ411と第2チューブ412との2本に分かれて構成されており、ステアリングシャフト420も第1シャフト421と第2シャフト422との2本に分かれて構成されている。これらのチューブおよびシャフトの形状および組み合わせ態様は上記第2実施形態にて説明したものと同様であるのでその具体的説明は省略する。また、第2チューブ412の図示左端側には取り付け用の孔412cが設けられており、コラムチューブ410はこの取り付け用の孔412cを中心に揺動してチルト作動可能とされる。
第2チューブ412には、図示下面側にハウジング430が取り付けられている。図13は、図12の矢印A方向から見たハウジング430付近の内部構造示す部分断面図である。図13に示すように、ハウジング430の内部空間には、クラッチ室431、テレスコ室432、チルト室433といった3つの部屋が形成されている。クラッチ室431には電動モータ10の出力軸に直結した第1連結ロッド25aが配設されている。第1連結ロッド25aは第1チューブ411および第2チューブ412の軸方向に直交する方向に延設されている。第1連結ロッド25aにはロッド支持部26aおよびクラッチ支持部26bを有する支持部材26が取り付けられている。この支持部材26にはクラッチ部材140が取り付けられている。クラッチ部材140の図において右側の側面にはクラッチ側第1突片221が、図示右方に延びて形成されている。支持部材26およびクラッチ部材140の形状および配置構成については上記第3実施形態で説明した支持部材26およびクラッチ部材140と同様であるので、同一部分について同一符号で示してその具体的説明は省略する。
テレスコ室432には、第2連結ロッド25bと、テレスコ用ウォーム減速機20aが配設されている。テレスコウォーム用減速機20aは、テレスコ用ウォーム軸21aと、テレスコ用ウォームギヤ22aと、テレスコ用ウォームホイール23aとを備えて構成される。図に示すようにテレスコ用ウォーム軸21aはテレスコ室432内で第1連結ロッド25aと軸芯が一致するように配置され、両端がベアリングによってハウジング430の内壁に回動可能且つ軸方向移動不能に支持されている。このテレスコ用ウォーム軸21a軸方向中央部分には、テレスコ用ウォームギヤ22aが形成されており、このテレスコ用ウォームギヤ22aにテレスコ用ウォームホイール23aが噛合している。テレスコ用ウォームホイール23aにはテレスコスクリュー444が同軸的に連結されている。このテレスコスクリュー444は、図12に示すようにハウジング430から突出してコラムチューブ410の軸方向に延び、その外周には雄ネジが形成されていて、この雄ネジに螺合した雌ネジが形成されたテレスコナット445が取り付けられている。テレスコナット445は第1チューブ411に形成された第1腕部411aを介して第1チューブ411に固設されている。
テレスコ用ウォーム軸21aは図13に示すように筒状に形成されていて、図示左方の端部は拡径しており、さらにその端面は鍔状に拡径した形状をなしている。そして、この鍔状に拡径した左方端面からは、テレスコ用第2突片223が第1連結ロッド25aに向かう方向に延びて形成されている。また、テレスコ用ウォーム軸21aの内周側には第2連結ロッド25bが挿通している。
第2連結ロッド25bは、テレスコ室432内で第1連結ロッド25aと軸芯が一致するように縦列配置され、その一端(図示左端)側にてベアリングによりテレスコ用ウォーム軸21aの拡径した左方端部の内周に回転可能且つ軸方向移動不能に支持されているとともに、その他端(図示右端)側にて後述するチルト用ウォーム軸21bに連結している。また、第2連結ロッド25bの図示左方側の側周からは、径方向外方に延びたチルト用第2突片224が形成されている。さらに、第2連結ロッド25bの左方端面に連結アーム210が取り付けられている。この連結アーム210は第3実施形態と同様に、第2連結ロッド25bの端面に取り付けられたピンを介して第2連結ロッド25bに回動可能に取り付けられており、このピンを中心に回動する回動アーム211と、回動アーム211の一端に設けられた入力側突片212と、回動アーム211の他端に設けられた出力側突片213とを有している。入力側突片212は回動アーム211のピンからの距離が長い側の端部に取り付けられており、第1連結ロッド25aに近づく方向に延びて形成されている。出力側突片213は回動アーム211のピンからの距離が短い側の端部に取り付けられており、第1連結ロッド25aから離れる方向に延びて形成されている。
本実施形態における各突片の配置形態は、上記第3実施形態にて説明した各突片の配置形態と同一であるので、同一部分を同一符号で示してその具体的な係合状態などについての説明を省略する。また、本実施形態においては、チルト用第2突片224が本発明の第3突片に相当し、テレスコ用第2突片223が本発明の第4突片に相当する。また、本実施形態の連結アーム210にもスプリング214が取り付けられており、このスプリング214によって、出力側突片213がチルト用第2突片224と周方向(連結アーム210の回転方向)にほぼ180度ずれるような初期位置となるように付勢される。このため、クラッチ側第1突片221が入力側突片212に係合した場合に第2、第3実施形態と同様の不感帯期間を設けることができる。
チルト室433には、チルト用ウォーム減速機20bとチルトスクリュー446が配設されている。チルト用ウォーム減速機20bは、前述のチルト用ウォーム軸21bと、チルト用ウォームギヤ22bと、チルト用ウォームホイール23bとを備えて構成される。チルト用ウォーム軸21bは前述したようにその一端が第2連結ロッド25bの端部に連結しており、第2連結ロッド25bと同軸的に回転可能とされている。また、チルト用ウォーム軸21bの他端側はベアリングによりハウジング430に支持されている。
チルト用ウォームギヤ22bは、チルト用ウォーム軸21bの側周に円筒状に形成され、チルト用ウォーム軸21bと同軸回転可能にされている。このチルト用ウォームギヤ22bにチルト用ウォームホイール23bが噛合している。そして、チルト用ウォームホイール23bの内周に同軸的にチルトスクリュー446が取り付けられている。チルトスクリュー446はコラムチューブ410の軸方向に直角方向であって車両上方向に延びており、軸受け部分446aとスクリュー部分446bとを有している。軸受け部分446aはベアリングによって回転可能且つ軸方向移動不能にハウジング430に支持される。また、スクリュー部分446bは軸受け部分446aの先端に同軸的に連結しており、ハウジング430から図示上方に突出されている。スクリュー部分446bの外周には雄ネジが形成されており、この雄ネジには雌ネジが形成されたチルトナット447が螺合している。チルトナット447は断面円形状とされ、両側にてピンなどによりコラムチューブ410の軸方向に直角方向であって第2連結ロッド25bに平行な方向に回転可能にチルトブラケット452に支持されている。チルトブラケット452は車体ST側に固定されている。
上記構成において、電動モータ10を回転させると、この回転トルクが電動モータ10の出力軸から第1連結ロッド25aに伝達されて第1連結ロッド25aが回転する。第1連結ロッド25aの回転に伴って、支持部材26、クラッチ部材140およびクラッチ部材140に取り付けられたクラッチ側第1突片221が回転する。しかし、電動モータ10が非常に低速度である場合には、クラッチ部材140に作用する遠心力が小さく、クラッチ部材140はコイルスプリング141の付勢力によりクラッチ支持部26bの基端側に押し付けられている状態のままとなる。この状態においては、クラッチ側第1突片221はチルト用第2突片224および入力側突片212の内周側を旋回するので、これらにクラッチ側第1突片221が係合することはない。
チルト作動を行おうとするときは、電動モータ10の回転速度を上記の低速度よりも速い中速度に上げて、クラッチ部材140にかかる遠心力を大きくする。すると、クラッチ部材140はこの遠心力によってコイルスプリング141の付勢力および自身の重力に抗して浮き上がって径方向外方に移動し、クラッチ部材140は回転しながら入力側突片212に係合可能な位置(テレスコピック伝達位置)まで変位する。このためクラッチ側第1突片221が入力側突片212に回転方向から係合し、この係合によって連結アーム210が回転を開始する。連結アーム210が回転を開始しても、不感帯期間中は空回りするので、回転トルクは第2連結ロッド25b側に伝達されない。そして、不感帯期間終了時、つまり出力側突片213がチルト用第2突片224に係合したときに初めて回転トルクが第2連結ロッド25bに伝達され、第2連結ロッド25bが回転し始める。
第2連結ロッド25bが回転するとそれに連結しているチルト用ウォーム軸21bおよびチルト用ウォームギヤ22bが回転する。さらにチルト用ウォームギヤ22bの回転はチルト用ウォームホイール23bとの噛み合いにより減速されて回転トルクを増加する。そして、減速された回転速度によりチルトスクリュー446が回転する。チルトスクリュー446の回転によりチルトスクリュー446とチルトナット447との螺合状態が変化する。ここで、チルトナット447はピンを介してチルトブラケット452に固定されているので、チルトナット447の位置は変位せずに、チルトスクリュー446が軸方向に相対移動する。チルトスクリュー446の軸方向移動を受けて、チルトスクリュー446を軸支するハウジング430およびハウジング430に連結したコラムチューブ410の全体が、第2チューブ412に設けられた取り付け用の孔412cを中心に揺動する。これによりチルト作動がなされる。このときチルト作動に伴ってチルトスクリュー446も傾くが、この傾きはチルトナット447がピンを中心に回動することにより吸収される。
また、テレスコ作動を行おうとする場合には、電動モータ10の回転速度を上記中速度よりも速い高速度で回転する。すると、クラッチ部材140にかかる遠心力がさらに増大してクラッチ部材140がより外側に移動し、図13の点線で示すようにテレスコ用第2突片223に係合可能な位置(テレスコピック伝達位置)まで変位する。このため、クラッチ側第1突片221がテレスコ用第2突片223に係合する。この係合によって回転トルクがテレスコ用第2突片223を介してテレスコ用ウォーム軸21aに伝達される。このため、テレスコ用ウォーム軸21aおよびテレスコ用ウォームギヤ22aが同軸回転する。そして、テレスコ用ウォームギヤ22aとテレスコ用ウォームホイール23aとの噛み合いにより回転速度が減速されて回転トルクが増加する。このように減速した回転はテレスコスクリュー444に伝達され、テレスコスクリュー444が回転する。これによりテレスコスクリュー444に螺合しているテレスコナット445がテレスコスクリュー444の軸方向に送り移動される。この送り移動によりテレスコナット445に連結した第1チューブ411が軸方向に移動する。これによりテレスコピック作動がなされる。
以上のように、本実施形態においても、クラッチ部材140を遠心力によって移動させることにより、テレスコピック作動とチルト作動を簡単な構成で切り替えることができる。また、本実施形態も第3実施形態と同じように、連結アーム210をスプリング214で付勢して、入力側突片212とクラッチ側第1突片221とが係合を開始したときには出力側突片213とチルト用第2突片224が非係合状態となるようにされており、これによりクラッチ側第1突片221が入力側突片212と係合したときに不感帯期間が設けられている。このため、テレスコピック作動を行う場合に電動モータ10の回転速度不足などによりクラッチ側第1突片221が入力側突片212に係合してしまった場合でも、不感帯期間中に回転速度を増加すれば、クラッチ側第1突片221を入力側突片212から離脱させてテレスコ用第2突片223に係合させ、テレスコピック作動を行うことができる。
また、本例ではクラッチ部材140などのクラッチ機構により電動モータ10からの回転トルクが伝達された後に、ウォーム減速機構(テレスコ用ウォーム減速機20a、チルト用ウォーム減速機20b)により回転軸方向を切り替えて各作動機構に連結した態様を示したが、電動モータ10とクラッチ機構との間に所望の減速機構を配置して減速し、その後にかさ歯車やねじ歯車で回転軸方向を切り替えて各作動機構に回転トルクを伝達するようにしてもよい。
1,3,4…ステアリング装置、10…電動モータ、25…連結ロッド(回転軸)、25a…第1連結ロッド(回転軸)、25b…第2連結ロッド、26…支持部材、26a…ロッド支持部、26b…クラッチ支持部(突起部)、110,310,410…コラムチューブ、120,320,420…ステアリングシャフト、130,330,430…ハウジング、140…クラッチ部材(変位部材)、141…コイルスプリング(弾性手段)、144,344,444…テレスコスクリュー、145,345,445…テレスコナット、146,346,446…チルトスクリュー、147,347,447…チルトナット、201…クラッチ側第1突片、202…ロッド側第1突片(回転軸側第1突片)、203…テレスコ用第2突片、204…チルト用第2突片(第2突片)、210…連結アーム、211…回動アーム、212…入力側突片、213…出力側突片、214…スプリング(付勢手段)、221…クラッチ側第1突片(変位部材側第1突片)、223…テレスコ用第2突片(第3突片、第4突片)、224…チルト用第2突片(第4突片、第3突片)