JP2008143008A - 木粉配合樹脂成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基材部と該基材部の周囲の少なくとも一部を被覆した表層部とを備えて構成された成形体であって、基材部を20質量%以上50質量%以下のポリオレフィン樹脂と50質量%以上80質量%以下の木粉とからなる木質系熱可塑性樹脂混合物により形成し、表層部を70質量%以上のポリオレフィン樹脂と30質量%以下の木粉とからなる熱可塑性樹脂混合物により形成し、基材部を形成する木質系熱可塑性樹脂混合物の溶融滑性を、180℃、せん断応力1×105MPa以上5×105MPa以下の測定条件で、滑り速度比50%以上90%以下とする。
【選択図】図1
Description
本発明の木粉配合樹脂成形体100は、基材部20と該基材部20の周囲の少なくとも一部を被覆した表層部10とを備えて構成される。本発明の木粉配合樹脂成形体100の一実施形態を図1に示す。
基材部20は、本発明の成形体100の大部分を構成するものである。また、該基材部20は、木粉を多く含み、石油由来樹脂の使用量を低減させているので、成形体100全体としての石油由来樹脂の使用量を低減できるという効果を有する。
ポリオレフィン樹脂としては、好ましくはポリプロピレン、ポリエチレン等が性能およびコスト面等から好ましい。また、ポリプロピレンとポリエチレンは一方を単独で用いることもできるし、両者を併用することもできる。さらに、必要に応じてポリブテン、エチレンプロピレンゴム、ポリα−オレフィン等を適宜配合することもできる。
また木粉としては、製造工場から排出される木粉、竹粉、パルプ、バガス、おが屑、木質繊維、古紙や廃木材チップ等任意のものを用いることができ、粒度が10〜200メッシュパス程度のもの、粒径にして20μm〜150μmのものを用いるのが好ましい。木粉の配合量は、木質系熱可塑性樹脂混合物全体の質量を基準(100質量%)として、50質量%以上80質量%以下であることが好ましく、50質量%以上60質量%以下とするのがさらに好ましい。
ポリオレフィン樹脂と木粉とを配合し混練することにより木質系熱可塑性樹脂混合物を形成するのであるが、元来、熱可塑性樹脂と木粉とは混じり合わないものである。このため、分散性および機械的強度向上の観点から相溶化剤を配合することが望ましい。相溶化剤としては、酸変性ポリオレフィン樹脂が好ましく、さらに好ましくは無水マレイン酸ポリオレフィン樹脂が好ましい。相溶化剤の使用形態は特に限定されるものではないが、好ましい使用形態の一例を挙げると、木質系熱可塑性樹脂混合物を構成するポリオレフィン樹脂がポリプロピレンの場合、相溶化剤としては無水マレイン酸変性ポリプロピレンを用いることが好ましい。また、木質系熱可塑性樹脂混合物を構成するポリオレフィン樹脂がポリエチレンの場合、相溶化剤としては無水マレイン酸変性ポリエチレンを用いることが好ましい。
また、木粉を配合することにより熱可塑性樹脂のせん断粘度が大幅に増加するため、木質系熱可塑性樹脂混合物には、滑剤を添加することが好ましい。滑剤としては、パラフィンワックスや金属石けん、エステルワックスなど一般的に金属壁面との滑りを付与することができるものを用いることができる。滑剤の添加量は、木質系熱可塑性樹脂混合物100質量部に対して、1質量部から20質量部添加することが好ましい。また、滑剤の中でも、例えば、金属石けんの一種であるステアリン酸亜鉛を用いた場合は、その添加量は、5質量部から15質量部とすることが好ましく、添加する滑剤の種類によって、適宜添加量を調整することが好ましい。滑剤の添加量が少なすぎる場合は、本発明の成形体100の成形時において、樹脂圧を低減させる効果が小さく、肉厚変化のある形状を有する成形体を得ることが難しくなる。また、滑剤の添加量が多すぎる場合は、押出機内で樹脂混練がされず成形体を得られなくなる恐れがある。
上記したように、木質系熱可塑性樹脂混合物に、相溶化剤および滑剤を加え、基材部20を構成する材料とすることで、肉厚の不均一である成形体100を製造することは十分可能である。しかし、成形体の形状によっては流速差の影響から押出量の少ない所でしか成形できない場合がある。このような場合には、さらに、ポリテトラフルオロエチレン含有アクリルゴムを添加することが好ましい。添加量としては、木質系熱可塑性樹脂混合物100質量部に対して、0.1質量部から20質量部とすることが好ましい。この添加量が少なすぎると、十分な溶融張力が得られず高速成形時に成形品が得られない場合がある。また、添加量が多すぎると、成形時の樹脂圧が極端に上昇し、高押出量での成形が困難となってしまう場合がある。
本明細書において「溶融滑性」とは、成型加工温度(押出温度)における材料特性のことをいい、「滑り速度比」の値で規定している。滑り速度比の測定は、島津製作所製、フローテスターCFT−500Cを用い、クロムメッキノズルとブラストノズル(Ra 10μm)での同一荷重下での流量を測定し、以下の式(1)により滑り速度比を算出することにより行った。
(クロムメッキノズル流量−ブラストノズル流量)/クロムメッキノズル流量×100 式(1)
表層部10は、上記した基材部20の周囲の少なくとも一部に形成されており、本発明の木粉配合樹脂成形体100に耐候性を付与するものである。ここで、基材部20の周囲の少なくとも一部とは、木粉配合樹脂成形体100が実際に使用される形態において、外部に露出し、外部からの刺激を受ける可能性がある部分をいう。例えば、図1に示した成形体100は、屋外で使用するデッキ材の一例であり、成形体100の下方向は直接外部に露出することがないものである。よって、外部に露出する表面である、成形体100の上側表面に表層部10が形成されている。
表層部10の厚みは、10μm以上1500μm以下であることが好ましい。表層部10の厚みが薄すぎると、耐候性を付与する効果が小さくなってしまう。また、以下において説明する研磨処理を行った場合に、表層部10を越えて、基材部20にまで研磨処理が及んでしまうおそれがある。また、表層部10の厚みが厚すぎると、ポリオレフィン樹脂を比較的多く含んでいるため、石油由来樹脂使用量を低減させるという効果が薄れてしまい、また、表層部10では基材部に比べ木粉量が少ないことから、コストが高く、厚すぎることで、製品コストが上昇してしまう。
表層部10の表面は、平均粗さ3μm以上550μm以下に不規則に研磨し、木質様表面状態とすることが好ましい。ここで、不規則に研磨とは、削り深さ、削り幅が一定ではなく、不規則な状態になっていることをいう。表面を不規則に研磨することで、木質様を視覚のみではなく、触感でも認知することが可能となり、木の暖かみを感じることができる。この際、表面を研磨する厚みとして、平均粗さが3μm未満では、触感で認知することができない。また、平均粗さが550μm超では、視覚・触感において木材代替としての認識させる効果が低下してしまう。
表層部10を形成する熱可塑性樹脂混合物には、基材部20の欄に記載した、相溶化剤、ポリテトラフルオロエチレン含有アクリルゴムを添加することができる。添加量は、上記の基材部20における場合と同様である。また、滑剤を添加することもできる。また、表層部10には、成形体100の使用用途にもよるが、屋外使用する場合には木粉劣化による変色が発生するため、耐候性保持のレベルに合わせて、木粉含有量の調整を行うと共に、さらに着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤より選ばれた少なくとも1種の添加剤を含有することにより耐候性を付与することが好ましい。
本発明の木粉配合樹脂成形体の製造方法は、以下の基材部用木質系熱可塑性樹脂混合物および表層部用熱可塑性樹脂混合物を共押出成形する工程を備えた方法である。
<実施例1>
ポリオレフィン系樹脂としてポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社製、B−780)48質量%、および、木粉(カジノ社製、セルロシンNo100)52質量%からなる混合物100質量部に対し、相溶化剤として無水マレイン酸変性ポリエチレン(三洋化成工業社製、ユーメックス2000)2質量部、滑剤としてステアリン酸亜鉛(日東化成社製、Zn−St)8質量部、溶融張力付与剤としてポリテトラフルオロエチレン含有アクリルゴム(三菱レイヨン社製、メタブレンA3000)3質量部を添加して、これらをヘンシェルミキサー(三井三池社製)にて撹拌混合した配合物を、コニカル異方向2軸押出機(シンシナティエクストルージョン社製、タイタン68)にて溶融混練して、基材部を構成する木質系熱可塑性樹脂混合物を形成した。なお、基材部の成形時における、180℃、せん断応力3×105MPaにおける、溶融滑性(滑り速度比)は60%であった。
基材部の木粉を50質量%、ポリプロピレン樹脂を50質量%とした以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。なお、表層部および基材部の樹脂混合物の溶融粘度比は、180℃、せん断速度100(1/s)で、1/1.1であった。
基材部の木粉を80質量%、ポリプロピレン樹脂を20質量%とした以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。なお、表層部および基材部の樹脂混合物の溶融粘度比は、180℃、せん断速度100(1/s)で、1/2.7であった。
表層部の木粉およびポリプロピレン樹脂を、木粉30質量%含有ポリプロピレン樹脂(日本油脂社製)100質量%とした以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。なお、表層部および基材部の樹脂混合物の溶融粘度比は、180℃、せん断速度100(1/s)で、1/1.5であった。
表層部の木粉を0質量%、ポリプロピレン樹脂100質量%とした以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。なお、表層部および基材部の樹脂混合物の溶融粘度比は、180℃、せん断速度100(1/s)で、1/1.8であった。
成形時の押出量を変更し、せん断応力を5×105MPa、溶融滑性(滑り速度比)を50%とした以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。
成形時の押出量を変更し、せん断応力を1×105MPa、溶融滑性(滑り速度比)を90%とした以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。
表面研磨時の平均粗さを5μmとし、表層の厚みを10μmとした以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。
表面研磨の平均粗さを500μmとした以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。
基材部の木粉を40質量%、ポリプロピレン樹脂を60質量%とした以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。なお、表層部および基材部の樹脂混合物の溶融粘度比は、180℃、せん断速度100(1/s)で、1/1.5であった。
基材部の木粉を90質量%、ポリプロピレン樹脂を10質量%とした以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。なお、表層部および基材部の樹脂混合物の溶融粘度比は、180℃、せん断速度100(1/s)で、1/1.1であった。
表層部の木粉およびポリプロピレン樹脂を、木粉30質量%含有ポリプロピレン樹脂(日本油脂製)100質量%として、さらに木粉を10質量%追加した以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。なお、表層部および基材部の樹脂混合物の溶融粘度比は、180℃、せん断速度100(1/s)で、1/3であった。
滑剤であるステアリン酸亜鉛(日東化成社製、Zn−St)の添加量を20質量%とし、基材部を構成する木質系熱可塑性樹脂混合物のせん断応力を1×105MPa、溶融滑性(滑り速度比)を100%とした以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。なお、表層部および基材部の樹脂混合物の溶融粘度比は、180℃、せん断速度100(1/s)で、1/1.1であった。
滑剤であるステアリン酸亜鉛(日東化成社製、Zn−St)の添加量を3質量%とし、基材部を構成する木質系熱可塑性樹脂混合物のせん断応力を5×105MPa、溶融滑性(滑り速度比)を40%以下とした以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。なお、表層部および基材部の樹脂混合物の溶融粘度比は、180℃、せん断速度100(1/s)で、1/1.1であった。
表層厚みを5μm、表面研磨粗さを1μmとした以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。なお、表層部および基材部の樹脂混合物の溶融粘度比は、180℃、せん断速度100(1/s)で、1/1.1であった。
表面研磨の平均粗さを600μmとした以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。なお、表層部および基材部の樹脂混合物の溶融粘度比は、180℃、せん断速度100(1/s)で、1/1.1であった。
表層部の木粉およびポリプロピレン樹脂を、木粉30質量%含有ポリプロピレン樹脂(日本油脂製)100質量%として、さらに木粉を50質量%追加した以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。なお、表層部および基材部の樹脂混合物の溶融粘度比は、180℃、せん断速度100(1/s)で、1.5/1であった。
上記の実施例および比較例において得られた成形体に対して、質感、物性、成形性、コストについての評価を行った。
(光沢度)
光沢度は、成形体表面に入射角60°で光源を照射し、その反射量(%)により以下の基準で評価した。
○:反射量0.5%以上
×:反射量0.5%以下
滑り開始荷重は、JIS A 5721に準じ、23℃時に測定した滑り開始荷重値により以下の基準で評価した。
○:200N以上
×:200N以下
(耐候性)
耐候性は、サンシャインウエザーメーター500時間後の色差を測定して、以下の基準で評価した。
○:ΔE=5以下
△:ΔE=5〜10
×:ΔE=10以上
耐衝撃性は、JIS K 7111に準じ、23℃時に測定したシャルピー衝撃値により、以下の基準で評価した。
○:シャルピー衝撃値が3kJ/mm2以上
△:シャルピー衝撃値 2〜3kJ/mm2
×:シャルピー衝撃値 2kJ/mm2以下
(樹脂圧力)
樹脂圧力は、中空形状成形体の押出量80kg/hでの樹脂圧力を測定して、以下の基準で評価した。
○:樹脂圧力100MPa以下
△:樹脂圧力100〜200MPa
×:樹脂圧力200MPa以上
流速差比率は、中空形状成形体の成形時、最大流速部と最小流速部の比率により、以下の基準で評価した。
○:流速比3/1以下
×:流速比3/1以上
コストは、基材部において木粉量52質量%を使用した場合を基準として、原料単価増加率により、以下の基準で評価した。
○:増加率 5%以下
×:増加率 5%以上
20 基材部
Claims (7)
- 基材部と該基材部の周囲の少なくとも一部を被覆した表層部とを備えて構成された成形体であって、
前記基材部が、20質量%以上50質量%以下のポリオレフィン樹脂と50質量%以上80質量%以下の木粉とからなる木質系熱可塑性樹脂混合物により形成され、
前記表層部が、70質量%以上のポリオレフィン樹脂と30質量%以下の木粉とからなる熱可塑性樹脂混合物により形成され、
前記基材部を形成する木質系熱可塑性樹脂混合物の溶融滑性が、180℃、せん断応力1×105MPa以上5×105MPa以下の測定条件で、滑り速度比50%以上90%以下である、石油由来樹脂成分の使用量が低減されている木粉配合樹脂成形体。 - 前記表層部の厚みが10μm以上1500μm以下であり、前記表層部の表面を平均粗さ3μm以上550μm以下に不規則に研磨し木質様表面状態とした、請求項1に記載の木粉配合樹脂成形体。
- 前記基材部の肉厚分布が不均一である、請求項1または請求項2に記載の木粉配合樹脂成形体。
- 基材部が、内部に空洞を有する成形体である、請求項1から3のいずれかに記載の木粉配合樹脂成形体。
- 前記表層部が、添加剤を含有しており、木粉の含有量が20質量%以下である、請求項1から4のいずれかに記載の木粉配合樹脂成形体。
- 以下の基材部用木質系熱可塑性樹脂混合物および表層部用熱可塑性樹脂混合物を共押出成形する工程を備えた、基材部と該基材部の周囲の少なくとも一部を被覆した表層部とを備えて構成される石油由来樹脂成分の使用量が低減されている木粉配合樹脂成形体の製造方法。
前記基材部用木質系熱可塑性樹脂混合物は、20質量%以上50質量%以下のポリオレフィン樹脂と50質量%以上80質量%以下の木粉とからなり、該基材部用木質系熱可塑性樹脂混合物の溶融滑性が、180℃、せん断応力1×105MPa以上5×105MPa以下の測定条件で、滑り速度比50%以上90%以下である。
前記表層部用熱可塑性樹脂混合物は、70質量%以上のポリオレフィン樹脂と30質量%以下の木粉とからなる。 - 前記共押出工程の後に、さらに、表面研磨工程を備えた、請求項6に記載の木粉配合樹脂成形体の製造方法。
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