JP7012368B2 - 熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物 - Google Patents

熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物 Download PDF

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本発明は、3次元プリンタで造形する際に用いられる樹脂組成物に関するものであり、より具体的には、熱溶解積層型3次元プリンタを用いて造形するための樹脂組成物に関する。
近年、3D(3次元)プリンタと呼ばれる立体造形機器が様々な分野で適用されてきている。特に熱溶解積層型(FDM方式)の3Dプリンタは他の方式の3Dプリンタと比べて比較的安価であることから、工業用のみならず家庭用としても普及してきている。熱溶解積層方式とは、熱可塑性樹脂からなるペレット又はフィラメントをノズルから溶融した状態で吐出し、平面にパターンを描写しながら高さ方向に積層させることで立体物を造形する方式である。FDM方式の3Dプリンタにおいて、所望の色や硬さ、強度等の物性を有する造形物を得るため、様々なペレットやフィラメント等の造形用材料が上市されている。これらペレットやフィラメント等の造形用材料を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニルスルホン樹脂、ポリカーボネート/アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、ABS樹脂などの比較的硬質な樹脂が主に用いられているが、近年は柔軟な造形物の需要の増加に伴って、FDM方式の3Dプリンタの造形用材料として用いることができる軟質な樹脂材料が求められている。
そこで、このニーズに対して、様々な樹脂材料が開発され、提案されている。例えば、特許文献1では、オレフィン系ゴム等の軟質成分を含有した軟質性ポリプロピレン系樹脂を特定のフィラメント形状とした樹脂材料が記載され、特許文献2では、ポリアミド重合体を主成分として含む樹脂材料が提案されている。また、特許文献3では、ポリ乳酸系樹脂と熱可塑性エラストマーから構成されるコアーシェル型ゴムとを含有するフィラメントが提案され、特許文献4では、生分解性熱可塑性樹脂とアクリル系ブロック重合体とを含むフィラメントが提案されている。さらに、特許文献5では、ビニル芳香族化合物に由来する重合体ブロックと共役ジエン及びイソブチレンに由来する重合体ブロックの少なくとも一方を含むブロック共重合体並びにこれらのブロック共重合体を水素添加してなるブロック共重合体からなる群のうちの少なくとも一つのブロック共重合体からなり、特定の動的粘弾性特性を有するフィラメントが提案されている。
他方、これまでFDM方式の3Dプリンタの造形物は一般的に不透明であり、造形物の内部構造を外側から確認することが困難であった。また、最近では意匠性の観点からも透明な造形物が求められることが多い。そのため、上述した柔軟な造形物を造形できる樹脂材料というニーズに加えて、さらに透明性をも有する造形物を造形できる樹脂材料というニーズが新たに生じている。この柔軟性と透明性とを兼ね備えた造形物を得るというニーズに対して、特許文献1~5で開示されたフィラメント等の樹脂材料は、透明性に改善の余地があった。そこで、特許文献6では、スチレン系炭化水素ブロックと共役ジエン系炭化水素ブロックより構成されるスチレン系共重合体を含み、ISO178に準拠して測定した曲げ弾性率が1200~1600MPaであり、ISO1133に準拠して230℃/1.2kgの条件で測定したMFR値が0.8~2.4g/10分であり、ヘイズ値が15%以下であるフィラメントが提案されている。
特開2018-035461号公報 特開2018-043525号公報 特開2016-169456号公報 特開2017-160349号公報 特開2016-203633号公報 特開2016-141094号公報
しかしながら、特許文献6に開示されたフィラメントを用いて造形された造形物は、透明性に優れるものの、柔軟性にはまだ改善の余地があり、さらに向上した柔軟性と透明性を両立する樹脂材料が望まれていた。
また、3Dプリンタで組立品の構成部品を各々造形し、得られた構成部品どうしを接着して組立品を製作することも行われており、造形物の接着性(剥離接着強さ)を兼ね備えることも望まれていた。
本発明は上述した点に鑑み案出されたもので、その目的は、柔軟性、透明性、接着性及び機械強度に優れた3次元造形物を造形することのできる熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物及びそれを含むフィラメントまたはペレットを提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明者らは精意研究を重ねた結果、透明な樹脂材料を用いた場合であっても溶融積層時の積層界面の状態によって透明性が低下するという経験的知見を踏まえ、透明性と柔軟性、接着性及び機械強度を備えた樹脂材料において、積層界面での層間融着性(「層間密着性」ともいう)を高めることが熱溶解積層型3次元プリンタで得られる造形物の透明性の向上に重要であることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明の熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物は、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)及び軟化剤(B)を含有する組成物であって、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)が、少なくとも、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(a1)、アミン変性スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(a2)及びスチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(a3)を含有してなり、a1~a3のブロック共重合体の重量平均分子量Mwは、それぞれ50000~200000であり、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(a1)又はアミン変性スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(a2)のスチレン含有量が、20~55重量%であり、a1~a3のブロック共重合体の配合割合が、重量比で、a2/(a1+a2+a3)=0.08~0.8かつ、a3/a1=0.35~3.5であり、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)と軟化剤(B)の配合割合が、重量比で、B/(A+B)=0.5~0.7である。
スチレン系熱可塑性エラストマー(A)の各ブロック共重合体(a1~a3)の重量平均分子量Mwを50000~200000とすることにより、溶融積層時の吐出性と熱溶解積層時の層間融着性を向上させて、優れた透明性、柔軟性及び機械強度を備えた造形物を造形できる組成物が得られる。また、アミン変性スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(a2)を含有することによって、造形物表面における他材との接着性が向上する。また、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(a1)又はアミン変性スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(a2)のスチレン含有量が、20~55重量%とすることにより、引裂強さ等の機械強度に優れ、外観の透明性にも優れた造形物を造形できる組成物が得られる。さらに、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)の各ブロック共重合体(a1~a3)の配合割合を重量比で、a2/(a1+a2+a3)=0.08~0.8かつ、a3/a1=0.35~3.5とすることにより優れた接着性と耐熱性と機械強度とを備えた造形物を造形できる組成物が得られる。そして、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)と軟化剤(B)の配合割合をB/(A+B)=0.5~0.7とすることにより、溶融積層時の吐出性と層間融着性とが向上するために、優れた柔軟性と透明性が得られると共に、接着性、機械強度、耐熱性も備えた造形物を造形できる組成物が得られる。なお、ここでいう造形物の機械強度とは、組成物の成形物(樹脂材料)自体の機械強度と熱溶解積層で造形された層間密着性による層間の剥離強度の総合的な強度をいう。
また、本発明の熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物は、軟化剤(B)は、分子量が400~1200のパラフィン系オイルであることも好ましい。これにより、柔軟性と透明性に加えて、機械強度、造形物表面における接着性(剥離接着強さ)、溶融積層時の吐出性及び層間融着性を向上させることのできる好適な構成成分が選択される。
また、本発明の熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物は、温度150~200℃、荷重2.16kgの範囲で測定したメルトマスフローレート(JIS K7210-1B法準拠)が15~3000g/10minであることも好ましい。これによって、安定した吐出性と溶融積層した際の積層界面の融着性が確保される。それゆえ、形状精度に優れた造形が可能となり、積層界面での光散乱が低減されて造形物の透明性が維持されるとともに、積層界面の密着性が高くなるため、組成物の成形物(樹脂材料)自体の機械強度と相まって、柔軟性を有しながらも全体的な機械強度に優れた造形物を造形できる組成物が得られる。
また、本発明の熱溶解積層型3次元プリンタ用樹脂材料は、上述した熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物を主成分としたものであり、ヘイズ値(JIS K7136:2000準拠)が15%以下であり、硬度がアスカーC50以下(SRIS 0101規格)であることも好ましい。これによって、柔軟性と透明性により優れた造形物を造形できる樹脂材料が得られる。なお、本明細書における熱溶解積層型3次元プリンタ用樹脂材料とは、上述した組成物から形成され、熱溶解積層型3次元プリンタでの造形物の製造のために使用される樹脂材料を広く指すものとする。
また、本発明の熱溶解積層型3次元プリンタ用フィラメント又は熱溶解積層型3次元プリンタ用ペレットは、上述した熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物を主成分としたものである。上述した熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物を主成分としたフィラメント又はペレットを熱溶解積層型3次元プリンタに供給して造形することで、透明性と柔軟性に優れ、機械強度及び他部材との接着性に優れる造形物を得ることができる。
本発明の熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物は、熱溶解積層型3次元プリンタに供給して造形する際に、熱溶解積層時の吐出性と層間密着性に優れており、透明な意匠性、柔軟な触感や緩衝性を備えると共に、機械強度や接着性、耐熱性にも優れた3次元造形物を造形することができる。
実施例及び比較例における熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物からなる成形物及び熱溶解積層型3次元プリンタで造形された造形物の剥離接着強さ試験のために作製した試験片の構成を概略的に示す(A)平面図及び(B)正面図である。 図2の試験片を用いて行った剥離接着強さ試験の方法を説明する図である。 実施例及び比較例における熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物からなる成形物の耐熱性試験の方法を説明する図である。
本発明の熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物を構成するスチレン系熱可塑性エラストマー(A)についてまず説明する。スチレン系熱可塑性エラストマー(A)は、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(a1)、アミン変性スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(a2)及びスチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(a3)の3種のブロック共重合体を含有している。このうち、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(a1)、すなわちSEBSには、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体に水素添加して得られる水添ブロック共重合体も含まれる。また、アミン変性スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(a2)、すなわち、アミン変性SEBSには、アミン変性スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の水素添加物も含まれる。また、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(a3)、すなわち、SEEPSには、スチレン-エチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の水素添加物も含まれる。これらa1~a3のブロック共重合体の重量平均分子量Mwはそれぞれ、機械強度の観点から50000以上であることが好ましく、接着性、吐出時の流動性及び熱溶解積層時の層間密着性の観点から200000未満であることが好ましく、すなわち、50000~200000が好ましい。a1~a3のブロック共重合体の重量平均分子量Mwをこの範囲とすることにより、溶融積層時の吐出性と層間融着性に優れるとともに、透明性、柔軟性、機械強度も備えた造形物が得られる。なお、本発明における分子量とは、重量平均分子量Mwであり、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定された値をいう。また、組成物及び得られる造形物の透明性の観点から、成分a1~a3のブロック共重合体の各屈折率のばらつき範囲(最大値と最小値の差)が0.1以内であることが好ましい。
本発明の熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物を構成するスチレン系熱可塑性エラストマー(A)の配合割合は、接着性、耐熱性及び機械強度の観点から、各ブロック共重合体(a1~a3)の配合割合を重量比で、a2/(a1+a2+a3)=0.08~0.8かつ、a3/a1=0.35~3.5とすることが好ましく、a2/(a1+a2+a3)=0.1~0.7かつ、a3/a1=0.45~2.5とすることがより好ましい。配合割合a2/(a1+a2+a3)は、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)のうちのアミン変性SEBS(a2)の配合割合であるが、0.08未満であると接着性に劣り、0.8を超えると機械強度及び接着性が低下し、耐熱性も低下する傾向にある。また、配合割合a3/a1は、SEBS(a1)に対するSEEPS(a3)の配合割合であるが、0.35未満であると接着性に劣り、耐熱性も低下する傾向にあり、3.5を超えると機械強度及び接着性が低下するなど物性が不安定となる。よって、各ブロック共重合体の配合割合を上記の範囲とすることにより、接着性、機械強度及び耐熱性に優れた造形物を造形できる組成物が得られる。
また、a1~a3のブロック共重合体のスチレン含有量は、透明性及び機械強度を向上させる観点から、SEBS系ブロック共重合体である、a1のSEBS又はa2のアミン変性SEBSのスチレン含有量が20~55重量%であることが好ましく、25~45重量%であることがより好ましい。スチレン含有量が20重量%未満では、機械強度が不十分であり、55重量%を超えると外観の透明性が低下する。それゆえ、スチレン含有量をこの範囲とすることにより、機械強度に優れ、外観の透明性にも優れた組成物が得られる。なお、a3のSEEPSのスチレン含有量については、特に限定されないが、一例として、25~35重量%が好ましい。
次に、本発明の熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物を構成する軟化剤(B)について説明する。軟化剤は、おもに組成物に柔軟性を付与するとともに、溶融積層時の層間融着性を向上させる目的で添加される。軟化剤(B)の配合割合については、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)と軟化剤(B)の和に対する軟化剤(B)の配合割合が、重量比で、0.5~0.7であることが好ましく、0.55~0.65であることがより好ましい。B/(A+B)の値が0.5未満であると十分な柔軟性が得られず、0.7を超えると耐熱性及び機械強度が低下すると共に軟化剤の滲み出し(ブリード)による接着性の低下が生じる。よって、軟化剤の配合割合を上述の範囲とすることにより、他の物性を低下させずに、柔軟性を調整することができる。
本実施形態においては、軟化剤としては、例えば、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル又は芳香族系オイル等のプロセスオイル、液状ポリブテン又は低分子量ポリブタジエン等の合成樹脂系軟化剤、ロジン等が用いられ、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)よりも比熱が大きいものが熱溶解積層時の層間融着性の観点から好ましい。このうち、外観の透明性の観点からプロセスオイルの中でもパラフィン系オイルが好適に用いられ、重量平均分子量が400~1200のパラフィン系オイルが特に好適に用いられる。剥離接着強さ及び機械強度の観点から重量平均分子量が400以上であることが好ましく、成形時の流動性の観点から重量平均分子量が1200以下であることが好ましい。よって、重量平均分子量が400~1200のパラフィン系オイルを用いることにより、熱溶解積層時の吐出性(流動性)と層間融着性に優れるとともに、透明性を維持しつつ柔軟性、接着性(剥離接着強さ)及び機械強度がより良好な造形物を造形できる組成物を得ることができる。
本発明の熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物の溶融粘度は、JIS K7210-1B法に準拠のメルトマスフローレート(MFR)として、温度150~200℃、荷重2.16kgの範囲において15~3000g/10minであることが好ましく、15~2000g/10minであることがより好ましく、15~1000g/10minであることがさらに好ましく、15~300g/10minであることが特に好ましい。MFRが15g/10min未満である場合には、先に造形された層に積層した際に吐出物が拡がりにくく層間密着面積が小さくなるために、層間の密着性の低下や層間での光散乱が大きくなって造形物の透明性や機械強度が低下する場合がある。また、MFRが3000g/10minを超える場合には、吐出物を積層した際に形状保持が困難になる場合があるため、MFRを上記範囲とすることによって、形状精度や機械強度、透明性に優れた造形を安定して行うことができる。
さらに、本発明の熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物からなる樹脂材料のヘイズ値(JIS K7136:2000準拠)は15%以下であり、硬度はアスカーC(SRIS 0101規格)50以下の物性を示すことが好ましい。それゆえ、本発明の樹脂材料組成物は、熱溶解積層型3次元プリンタでの造形において、外観の透明性が高く、柔軟性を備えた造形物を造形する樹脂材料に有用である。さらに、熱溶解積層時の層間融着性に優れるため、組成物の成形物(樹脂材料)自体の機械強度と相まって、機械強度に優れる造形物を得ることができる。
さらに、本発明の熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、他の添加剤を含有させることも可能である。添加剤としては、顔料や着色剤、滑剤、離型剤、酸化防止剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、光安定剤又は耐熱剤等が挙げられる。これらは単独でも複数を組み合わせて使用することもできる。
本発明の熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物は、公知の樹脂組成物の製造方法により製造される。具体的には、一例として、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー又は加熱ロール等の溶融混練機を用いて、A成分及びB成分等の配合成分を所定の割合で添加し、配合成分を加熱し溶融状態にて各成分を均一に混練することにより得られる。具体的な製造工程としては、特に限定されないが、各構成成分を所定の配合割合に秤量する秤量工程と、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)を構成する成分の少なくとも一部に軟化剤(B)を吸収させる予備分散工程と、軟化剤(B)が吸収されたスチレン系熱可塑性エラストマー(A)を構成する成分を混合し、加熱混練する混練工程を有することが好ましい。これにより混練時に各構成成分がより均一に分散された組成物が得られる。また、この予備分散工程において、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)を構成するブロック共重合体であるa1成分、a2成分、a3成分の各成分に対し、同一温度における溶融粘度が高い順に、単位重量当たりの軟化剤(B)の分配割合を大きくすることが好ましい。これにより、軟化剤(B)を吸収したa1~a3成分の溶融粘度が近接し、混練時に各構成成分がより均一に分散された組成物が得られる。さらに、上述した予備分散工程において、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)を構成するブロック共重合体であるa1成分、a2成分、a3成分の各成分に対する軟化剤(B)の分散は、軟化剤(B)を吸収した状態における各成分のメルトマスフローレート(MFR:JIS K7210-1B法 190℃)について、MFRが最も高い成分とMFRが最も低い成分のMFRの値の差が108(g/10min)以下となるように軟化剤(B)の分配量が調整されることが特に好ましい。これにより、混練工程における各成分の均一分散性が一段と向上し、透明性、機械強度、硬度といった特性に優れ、またこれらの特性のばらつきも低減され、さらには熱溶解積層時の吐出性や層間融着性も向上する。
本発明の熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物は、押出成形等の公知の方法により、熱溶解積層型3次元プリンタ用樹脂材料を得ることができる。具体的には、フィラメント状に加工することによって熱溶解積層型3次元プリンタ用フィラメントを、ペレット状に加工することによって熱溶解積層型3次元プリンタ用ペレットを得ることができる。熱溶解積層型3次元プリンタ用フィラメントの径方向の断面形状は、熱溶解積層方式の設計仕様や造形に使用するシステム構造や能力などにも依るが、通常は円形が好ましく、その直径は1.0~4.0mmの範囲が好ましい。また、ペレット状とする場合には、熱溶解積層型3次元プリンタに供給できる形状と大きさであればよく、特に限定されない。
以下、実施例を用いて、本発明を詳細に説明する。以下の実施例及び比較例における熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物及びそれからなる樹脂材料(成形物)の評価方法は下記の通りである。
(1)ヘイズ値(透明性)
JIS K7136:2000に準拠して、ヘーズメーター(スガ試験機株式会社製ヘーズメーター、HZ-1)を用いて各試験片のヘイズ測定を行った。試験片としては、実施例及び比較例における各熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物を縦50mm×横50mm×厚み3mmにそれぞれ成形したものを用いた。ヘイズ値が15%以下の場合を優良(○)、15%を超える場合を不可(×)とした。
(2)硬度
JIS K6253に準拠するアスカー Cデュロメータ(SRIS 0101規格)を用いて、各試験片の硬度測定を行った。試験片としては、実施例及び比較例における各熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物を縦60mm×横60mm×厚み12mmにそれぞれ成形したものを用いた。アスカーC50以下を良好「○」、50を超えた場合を不適「×」と判定した。
(3)引裂強さ(強度)
JIS K6252-1 B法に準拠し、実施例及び比較例における各熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物を切り込み無しアングル形状(ダンベルB型)に形成した試験片5枚について、引っ張り試験機(株式会社島津製作所製オートグラフ(登録商標)、AT-100N)で引っ張り速度500mm/minにて破断に至る最大荷重値F[N]を測定し、試験片の厚さt[m]で除して引裂強さを算出した。試験片5枚の引裂強さの中央値を挟む2つの値の平均値を引裂強さ(kN/m)とした。引裂強さの値が6kN/m以上の場合を優良「○」、6kN/m未満の場合を不可「×」と判定した。
(4)剥離接着強さ(表2~6においては、「接着強さ」と記載)
JIS K6854-3に準拠して、各試験片の剥離接着強さの測定を行った。図1及び図2を用いて剥離接着強さの試験方法について具体的に説明する。図2は試料片50の構成を概略的に示しており、図2は試料片の剥離接着強さ試験方法を図示している。図2に示す試料片50は次のようにして作製した。実施例及び比較例における各熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物をストリップ状(幅20mm×長さ60mm×厚さ3mm)にそれぞれ成形し、ストリップ表面をウレタン系コート剤で処理して試験片51とした。この試験片51を同じくストリップ状に作製したウレタン片52(株式会社クラレ製 クラミロンU2195、幅20mm×長さ60mm×厚さ3mm)と接着剤53によって接着し、試料片50を得た。より詳しくは、試験片51及びウレタン片52の表面をメチルエチルケトン(MEK)に浸したキムワイプ(登録商標)で拭いた後、60℃で3分間乾燥させた。試験片51のウレタン系コート剤で処理された面及びウレタン片52の片面にプライマー(ノーテープ工業株式会社製、G-6626)を塗布し、60℃で5分間乾燥させた。その上に接着剤(ノーテープ工業株式会社製、No.4950)を塗布し、60℃で5分間乾燥した後、速やかに試験片51及びウレタン片52を貼り合わせた。試験片51側を上にした状態で載置し、ハンドローラにて2~3kgf/cmの力を加えて圧着させることによって、試料片50を得た。この試料片50を12時間養生した後、図2(A)及び(B)に示すように、引っ張り試験機(株式会社島津製作所製オートグラフ(登録商標)、AT-100N)により、試料片50の試験片51とウレタン片52とを剥離させ、剥離接着強さを測定した。なお、図3において、54は固定側引張り治具、55は可動側引張り治具である。ロードセルは1kN(100kgf)であり、試験スピードは50mm/分、固定側引張り治具54及び可動側引張り治具55間の初期間隙は20mmであった。
(5)接着状態
剥離接着強さ試験を行った後の各試料片の剥離状態について、目視または顕微鏡観察により、各試験片の接着状態を評価した。材料破壊(被着体破壊)が生じていた場合を「AF」とし、溶解積層型3次元プリンタ用組成物の成形体とウレタン系コート剤による保護層との界面で界面剥離が生じた場合を「IP1」とし、ウレタン系コート剤による保護層とウレタン片52(被着材)との界面で界面剥離が生じた場合を「IP2」とした。
接着性の評価としては、剥離接着強さが4kgf/20mm以上かつ材料破壊した試験片は接着性が優良「○」と評価し、剥離接着強さが4kgf/20mm未満または界面剥離した試験片は、接着性が不良「×」と評価した。
(6)耐熱性
図3を用いて耐熱性の試験方法について説明する。実施例及び比較例における各熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物を35mm×10mm×厚さ3mmの短冊状に成形し、耐熱性試験用の試験片を得た。図3(A)に示すように、試験片60を鉛直方向から30°傾斜させて、試験片60の片端30mm部分を露出させた状態で片梁状に試験片把持具61に取り付けた。この状態で試験片を治具と共にオーブン(ヤマト科学製 DKN602)内に入れ、温度85℃で10分間加熱した。加熱後、オーブンから治具ごと試験片60を取り出して室温まで冷却した。冷却後、図3(B)に示すように、側面視における試験片60の表面側の稜線について、試験片把持具61に固定されていた部分Pの直線状の稜線を延長した線と、試験片60が熱変形して湾曲した外側の自由端Qの接線との交差角度θtを測定顕微鏡(ニコン社製MM-800/LFA)を用いて測定した。同様に、側面視における試験片60のもう一方の面(裏面)側の稜線について、試験片把持具61に固定されていた部分Pの直線状の稜線を延長した線と、試験片60が熱変形して湾曲した内側の自由端Qの接線との交差角度θtを測定した。測定された交差角度θtのうち、測定値が大きい方を熱変形角度θtとした。熱変形角度θtが90°以下の場合を優良「○」、90°超~125°の場合を良「△」、125°を超えた場合を不適「×」と判定した。
(7)メルトマスフローレート(MFR)
JIS K7210-1B法に準拠して、2.16kgの荷重で温度150℃、170℃及び190℃におけるメルトマスフローレートをそれぞれ測定した。測定装置は、Tinius Olsen社製メルトインデクサーMP600を用いた。
また、以下の実施例及び比較例における、熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物を熱溶解積層型3次元プリンタで造形して得た造形物の評価方法は、下記の通りである。
(1)ヘイズ値(透明性)
JIS K7136:2000に準拠して、ヘーズメーター(スガ試験機株式会社製ヘーズメーター、HZ-1)を用いて各試験片のヘイズ測定を行った。試験片としては、実施例及び比較例における各熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物を縦50mm×横50mm×厚み3mmとなるように熱溶解積層型3次元プリンタ(自社試作装置、ノズル径0.8m)を用いて、それぞれ造形したものを用いた。具体的には、プリンタノズルの吐出温度190℃、描画速度(ヘッド移動速度)10mm/秒、吐出速度5mg/秒、描画幅(隣接するライン描画に移行する時にヘッドがシフトするピッチ)1.2mm及びノズルと被描画面との隙間(積層ピッチ)0.5mmの条件で、一方向に直線折返しを繰り返して縦50mm×横50mmの正方形を塗りつぶすように描画層を形成した。この後、同条件でヘッドを積層ピッチ分上昇させ、方向を90度変えて、先の描画層の描画方向と直交する方向に直線折返しを繰り返し、縦50mm×横50mmの正方形を塗りつぶすように新たな描画層を形成して積層させる工程を繰り返した。このように、隣接する層どうしの描画方向が直交方向になるように描画層を積層させて厚みが3mmになるまで造形し、試験片を得た。試験片のヘイズ値が60%以下の場合を優良(○)、60%を超える場合を不可(×)とした。
(2)硬度
JIS K6253に準拠するアスカー Cデュロメータ(SRIS 0101規格)を用いて、各試験片の硬度測定を行った。試験片としては、実施例及び比較例における各熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物を縦60mm×横60mm×厚み12mmとなるように、熱溶解積層型3次元プリンタ(自社試作装置、ノズル径0.8mm)を用いて、それぞれ造形したものを用いた。具体的には、プリンタノズルの吐出温度190℃、描画速度(ヘッド移動速度)10mm/秒、吐出速度5mg/秒、描画幅(隣接するライン描画に移行する時にヘッドがシフトするピッチ)1.2mm及びノズルと被描画面との隙間(積層ピッチ)0.5mmの条件で、一方向に直線折返しを繰り返して縦60mm×横60mmの正方形を塗りつぶすように描画層を形成した。この後、同条件でヘッドを積層ピッチ分上昇させ、方向を90度変えて、先の描画層の描画方向と直交する方向に直線折返しを繰り返し、縦60mm×横60mmの正方形を塗りつぶすように新たな描画層を形成して積層させる工程を繰り返した。このように、隣接する層どうしの描画方向が直交方向になるように描画層を積層させて厚みが12mmになるまで造形し、試験片を得た。試験片の試験片の硬度がアスカーC50以下を良好「○」、50を超えた場合を不適「×」と判定した。
(3)層間密着性
上記(2)硬度の試験に用いた試験片について、縦または横方向の両端を引張試験用治具でクランプし、引張速度500mm/minで元寸法に対して150%になるまで引張変形させたときの層間の状態を目視または顕微鏡で確認し、層間での剥離無し又は層間が材料破壊している場合を良「○」、層間での剥離が生じていた場合を不可「×」と判断した。
また、以下の実施例及び比較例で使用した各構成成分の仕様を表1に示す。ここで、表1中の分子量Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定された重量平均分子量である。具体的には、分子量Mwは、測定装置としてSHODEX(登録商標)GPC-104(昭和電工株式会社製品)[分離カラムLF-404(3本連結)、ガードカラムLF-G、RI検出器RI-74S(いずれも昭和電工株式会社製品)]を用いて、溶離液をテトラヒドロフランとして、サンプル濃度10mg/4ml、溶離液流量0.3ml/min及びカラム温度40℃の条件で測定した。
Figure 0007012368000001
[実施例1]
以下の手順で本実施例の熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物を製造し、その効果の評価を行った。表1に示すスチレン系熱可塑性エラストマー(A成分)のうち、SEBS(a1)として、スチレン含有量42%、重量平均分子量150000のSEBS(A104)を615g(20.5重量%)、アミン変性SEBS(a2)として、スチレン含有量30%、重量平均分子量67000のアミン変性SEBS(A201)を210g(7重量%)、SEEPS(a3)として、スチレン含有量30%、重量平均分子量85000のSEEPS(A301)を330g(11重量%)それぞれ個別に秤量した。次に、表1に示す軟化剤(B成分)のうち、重量平均分子量1200のパラフィンオイル(B103)を1845g(61.5重量%)秤量した。このパラフィンオイルのうち、1020g(34重量%)をa1成分に、210g(7重量%)をa2成分に、615g(20.5重量%)をa3成分に、それぞれ添加した。各ブロック共重合体とパラフィンオイルとを室温でそれぞれ混合した後、100℃で12時間加熱し、a1~a3の各成分にパラフィンオイルをそれぞれ分散させた(予備分散工程)。パラフィンオイルを吸収させたa1~a3のブロック共重合体を手攪拌でドライブレンドした後、バッチ式の二軸混練機(株式会社トーシン製 TD3‐10MDX型)で160~180℃、回転数40rpmで15分間混練し(混練工程)、3kgの熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物を得た。この組成物を上述した熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物の各評価方法で用いる所定の試験片形状に150~170℃の条件下で射出成形し、得られた試験片を用いて物性等の評価を行った。
他方、この実施例1で得られた熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物から粒状のペレットを3次元プリンタ用樹脂材料として作成した。このペレットを用いて、熱溶解積層式3次元プリンタ(自社試作装置、ノズル径0.8m)にて、吐出温度190℃、描画速度(ヘッド移動速度)10mm/秒、吐出速度5mg/秒、描画幅(隣接するライン描写に移行する時にヘッドがシフトするピッチ)1.2mm及びノズルと被描画面との隙間(積層ピッチ)0.5mmの条件により、上述した熱溶解積層型3次元プリンタによる造形物の各評価方法で用いる所定の試験片を3次元プリンタ造形物として得た。この試験片を用いて物性等の評価を行った。
[実施例2~8]
熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物の構成成分である、スチレン系熱可塑性エラストマー(A成分)と軟化剤(B成分)及びその配合比を以下表2に示すように夫々変更した以外は、実施例1と同様にして、各実施例の熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物を得た。実施例1と同様に、得られた熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物を用いて物性評価用の試験片を成形し、物性等の評価を行った。さらに、実施例1と同様にして、各実施例の熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物でペレットを作成し、このペレットを用いて熱溶解積層式3次元プリンタで所定の試験片を3次元プリンタ造形物として作製し、物性等の評価を行った。
実施例1~8の結果を表2に示す。ここで、表3における「予備分散後のMFR差」とは、軟化剤(B)が分散された状態における成分a1~a3の溶融粘度(MFR:メルトマスフローレート)について、溶融粘度が最も高い成分と最も低い成分の溶融粘度の値の差のことである。具体的には、予備分散処理後のa1~a3成分について、JIS K7210-1B法に準拠して190℃におけるメルトマスフローレートを測定し、溶融粘度が最も高い値の成分と最も低い値の成分の溶融粘度の差を算出した値である(以降の表3~6も同じ)。
Figure 0007012368000002
[実施例9~16]
熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物の構成成分である、スチレン系熱可塑性エラストマー(A成分)と軟化剤(B成分)及びその配合比を以下表3に示すように夫々変更した以外は、実施例1と同様にして、各実施例の熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物を得た。実施例1と同様に、得られた熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物を用いて物性評価用の試験片を成形し、物性等の評価を行った。さらに、実施例1と同様にして、各実施例の熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物でペレットを作成し、このペレットを用いて熱溶解積層式3次元プリンタで所定の試験片を3次元プリンタ造形物として作製し、物性等の評価を行った。実施例9~16の結果を表3に示す。
Figure 0007012368000003
[実施例17~24]
熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物の構成成分である、スチレン系熱可塑性エラストマー(A成分)と軟化剤(B成分)及びその配合比を以下表4に示すように夫々変更した以外は、実施例1と同様にして、各実施例の熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物を得た。実施例1と同様に、得られた熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物を用いて物性評価用の試験片を成形し、物性等の評価を行った。さらに、実施例1と同様にして、各実施例の熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物でペレットを作成し、このペレットを用いて熱溶解積層式3次元プリンタで所定の試験片を3次元プリンタ造形物として作製し、物性等の評価を行った。実施例17~24の結果を表4に示す。
Figure 0007012368000004
[比較例1~4]
スチレン系熱可塑性エラストマー(A成分)と軟化剤(B成分)及びその配合比を以下表5に示すように夫々変更した以外は、実施例1と同様にして、各比較例の組成物を得た。実施例1と同様に、得られた組成物を用いて物性評価用の試験片を成形し、物性等の評価を行った。さらに、実施例1と同様にして、各比較例で得た組成物でペレットを作成し、このペレットを用いて熱溶解積層式3次元プリンタで所定の試験片を3次元プリンタ造形物として作製し、物性等の評価を行った。比較例1~4の結果を表5に示す。
Figure 0007012368000005
[比較例5~10]
スチレン系熱可塑性エラストマー(A成分)と軟化剤(B成分)及びその配合比を以下表6に示すように夫々変更した以外は、実施例1と同様にして、各比較例の組成物を得た。実施例1と同様に、各比較例で得た組成物でペレットを作成し、このペレットを用いて熱溶解積層式3次元プリンタで所定の試験片を3次元プリンタ造形物として作製し、物性等の評価を行った。比較例5~10の結果を表6に示す。
Figure 0007012368000006
表2~表4に示した実施例1~24の結果から、本発明の組成物の構成とすることによって、透明性、柔軟性、機械的強度及び耐熱性に優れた成形体(樹脂材料)を形成する熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物が得られることがわかった。さらに、これらの熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物を用いて形成された3次元プリンタ造形物は他部材との接着性に優れていることがわかった。
実施例4~5と比較例1~2との結果を比較すると、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)を構成する成分a1~a3の分子量の範囲が50000~200000の範囲を外れると、他部材との接着性が低下するとともに、熱溶解積層時の融着性が低下するため、造形物の透明性(ヘーズ特性)と層間密着性が劣ることがわかった。また、実施例7~8と比較例3~4との結果を比較すると、a1とa2のブロック共重合体のスチレン含有量が20~55%の範囲を外れて低くなると引裂強さが低下し、スチレン含有量が20~55%の範囲を外れて高くなると透明性が低下することがわかった。また、表4に示す実施例9~16と表7に示す比較例5~8との比較から、a1~a3のブロック共重合体の配合割合が重量比で、a2/(a1+a2+a3)=0.08~0.8またはa3/a1=0.35~3.5のいずれかの範囲外となると熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物の成形物の他部材との接着性が低下すること、a2/(a1+a2+a3)の値が0.8を超える場合(比較例6)やa3/a1の値が3.5を超える場合(比較例8)には引裂強さも低下すること、a2/(a1+a2+a3)の値が0.8を超える場合(比較例6)やa3/a1の値が0.35未満の場合(比較例7)には、成分a3の配合量が少なくなるため、熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物の成形体の耐熱性が劣ることがわかった。さらに、表4の実施例17~22と表6の比較例9~10との比較から、スチレン系熱可塑性エラストマー(A)と軟化剤(B)の配合割合について、重量比でB/(A+B)の値が0.5未満では硬度が高くなり柔軟性に乏しく、0.7を超えると軟化剤(B)が過剰添加のため、熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物の成形物の接着性が低下すると共に耐熱性も低下することから、B/(A+B)=0.5~0.7の範囲が有効であることがわかった。なお、表1の実施例1と表5の実施例23及び24の結果から、軟化剤(B)としてパラフィンオイルを適用した場合には、パラフィンオイルの分子量が少なくとも400~1200の範囲において本発明の効果を有することが確認された。
本発明は、上記の実施形態又は実施例に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態も技術的範囲に含まれるものである。
50 試料片
51 試験片(実施例又は比較例の組成物による成形物)
52 ウレタン片
53 接着剤
54 固定側引張り治具
55 可動側引張り治具
60 試験片(耐熱性試験用)
61 試験片把持具
62 治具(支持アーム)
θt 交差角度(熱変形角度)
P 試験片60の試験片把持具61に固定されている部分
Q 熱変形した試験片60の自由端部分

Claims (6)

  1. スチレン系熱可塑性エラストマー(A)及び軟化剤(B)を含有する組成物であって、
    前記スチレン系熱可塑性エラストマー(A)が、少なくとも、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(a1)、アミン変性スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(a2)及びスチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(a3)を含有してなり、
    前記a1~a3のブロック共重合体の重量平均分子量Mwは、それぞれ50000~200000であり、
    前記スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(a1)及び前記アミン変性スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(a2)のスチレン含有量が、20~55重量%であり、
    前記a1~a3のブロック共重合体の配合割合が、重量比で、a2/(a1+a2+a3)=0.08~0.8かつ、a3/a1=0.35~3.5であり、
    前記スチレン系熱可塑性エラストマー(A)と軟化剤(B)の配合割合が、重量比で、B/(A+B)=0.5~0.7であることを特徴とする熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物。
  2. 前記軟化剤(B)は、分子量が400~1200のパラフィン系オイルであることを特徴とする請求項1に記載の熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物。
  3. 温度150~200℃、荷重2.16kgの範囲で測定したメルトマスフローレート(JIS K7210-1B法準拠)が15~3000g/10minであることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載の熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物を主成分とし、ヘイズ値(JIS K7136:2000準拠)が15%以下であり、硬度がアスカーC50以下(SRIS 0101規格)であることを特徴とする熱溶解積層型3次元プリンタ用樹脂材料。
  5. 請求項1~3のいずれか1項に記載の熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物を主成分とする熱溶解積層型3次元プリンタ用フィラメント。
  6. 請求項1~3のいずれか1項に記載の熱溶解積層型3次元プリンタ用組成物を主成分とする熱溶解積層型3次元プリンタ用ペレット。
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