JP2008140877A - 複合材ヒートシンクとその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】熱膨張制御の為Moのように硬い金属を含むヒートシンクであっても、精度良く容易に製造することができるヒートシンクを提供すること。
【解決手段】レーザーダイオード2を載置する載置面1aと、載置面1aに隣接しレーザーダイオード2の発光面2aに対して同一面上に配置される端面1bとを有している。ヒートシンク1の基材3の表面を基材3よりも軟らかい材質のメッキ層で厚手に被覆し、被覆された載置面1aと端面1bとのコーティング層4a,4bをダイヤモンドバイトなどで切削加工した後、レーザーダイオード2の発光面2aとヒートシンク1の端面1bを同一面上に配置するようにした。レーザーダイオードとヒートシンクはインジウムや金錫半田などで高い平面性を持って高精度に接合する事が出来る。
【選択図】図1

Description

本発明は、主として金属複合材料によるヒートシンク技術に関し、特に(放熱される発熱体の熱膨張率に合わせて)熱膨張率が制御されたヒートシンク及びその製造方法に関する。
従来の金属系ヒートシンクは、熱伝導の良い銅(以下、Cuとする:熱膨張率が約17ppm/K、熱伝導率約400W/mK)、銀(熱膨張率が約20ppm/K、熱伝導率約420W/mK)やアルミニウム(熱膨張率が約24ppm/K、熱伝導率約230W/mK)系の単一材によるヒートシンクが広く用いられていた。これらの銅、銀やアルミニウム系のヒートシンクはその熱膨張率に対して、ヒートシンクにより冷却されるシリコン(熱膨張率約3.5ppm/K)やガリウム砒素(熱膨張率約6.5ppm/K)などの化合物系の半導体は、それらの熱膨張率よりも小さく、熱膨張差による素子内部に生じる熱応力ひずみによって、上述した材料のヒートシンクでは、半導体の寿命が制限された。このため、熱膨張率が小さいタングステン(以下、Wとする)やモリブデン焼結体に熱膨張率が大きいCuを適量含浸した複合金属(Cu−W複合材料)などを用いて熱膨張率を小さく制御した材料が用いられていたが、これらの複合材は一般に熱伝導が十分ではなかった(熱伝導率約180〜200W/mK)。又、表面の平面加工も比較的困難で、鏡面加工はほぼ不可能であった。
低熱膨張率と高熱伝導率とを両立できる技術として、図6に示すようなCuとモリブデン(以下Moとする:熱膨張率が約5ppm/K、熱伝導率約140W/mK)を積層構造にしたヒートシンクが考えられる。図6のAは、レーザーダイオードを取付けているヒートシンクの平面図、図6のBはその側面図である。積層構造としては、ヒートシンク31の下段から上段に向かって、Cu32、Mo33、Cu34からなる3層構造である。
ヒートシンク31の上面には、レーザーダイオード35が載置されている。レーザーダイオード35の平面方向の大きさは、通信用レーザーダイオードであれば、図5のAに示す横(x)×縦(y)が、1〜5mm×0.5〜2mmであり、産業用高出力レーザーダイオードであれば1〜3mm×10mmである。
なお、このヒートシンク31の積層構造を応用した技術として、特許文献1にMo−Cu−Moの三層構造の水冷式ヒートシンクが開示されている。このヒートシンクは、内部に冷却水を流通させて、発熱体の熱吸収を効率良く行うことができる。
特開2005−217211号公報 (半導体冷却器及び半導体冷却器積層体) 特開2004−181548号公報 (単結晶ダイヤモンドバイトおよびその製造方法) 特開2005−093781公報 (ヒートシンク及びその製造方法)
ヒートシンクとして、特にレーザーダイオードの冷却では、高い発熱密度(市場の標準的な物で6W/mm以上)に対して高信頼性を得るため特にヒートシンクとしては高い熱伝導性かつ熱膨張率をレーザーダイオードの素材に近づける事や精密に接合するため載置面を鏡面加工することや、レーザ光を正確に放射することと、更にレーザーダイオード接合面全面に亘る良好な熱伝導の確保のため、側面(端面)に対しては角部の丸みが小さい直角構造が求められる。特に、上述した産業用の高出力レーザーダイオードは2×10(x×y:図1のA参照)mm程度と横長の形状で、レーザ光が長手面から放射される構造となっている。載置面は10mm間の平面度1μm以下が通常求められる。更に側面の仕様としては、面全域で平面度1μm、エッジの丸み1μm程度が通常求められている。このCu−Mo−Cuという異種材料の面の直角構造やその平面度を実現するには、高度な研磨技術と工程が必要で、実用化のために大きな制約となっていた。
具体的には、図6のAの矢視aの拡大図である図7のAに示すように、ヒートシンク31のレーザーダイオード35の載置面31aとこれに隣接する端面31bとの角部の丸み36が大きいと、レーザーダイオード35の場合、レーザーダイオード35の下端から放射光bが放射されるため、角部における熱吸収がヒートシンク31側に伝わらず、レーザーダイオード35の熱が十分に吸収されないことがある。
一方、図7のBに示すように、ヒートシンク31の角部にバリ37があると、バリ37によって照射光bが散乱して、製品の性能が下がってしまうことがある。
切削技術については、特許文献2に開示されているようなダイヤモンドターニング(以下、DT加工とも称す)加工が知られている。
DT加工とは(天然又は人造による)、単結晶ダイヤモンドバイトで、切削面はほぼ円弧形状に加工してある。切削面は極めて精密に研磨されており、超硬工具などに比べても強度が高く、磨耗も少ない。さらに、バイトの熱伝導性も極めて高いため(熱伝導度がCuの約5倍、の2000W/mKと大きい)、刃先が劣化せずに極めて精度の高い平面加工が可能である。具体的には、DT加工の場合、10mm×20mm程度の面では約1分程度で加工が可能であり、耐久性も極めて高いため安価な加工が可能となる。鏡面特性としては面粗さについて、10mm長での平面度0.2μm、面粗さRa0.02μm、Ry0.1μm、角部の丸みについて1μm程度が容易に実現できる。
このDT加工は、全てCuで構成された既存のヒートシンクではレーザーダイオード面とレーザ光が放射される側面はDT加工が一般的に行われていて良好な特性が認められている。
しかしながら、Cu−Mo−Cuなどの積層構造の側面加工では基材のMoの硬度がCuに比して極めて高く(ビッカース硬度で軟銅/50〜55Hvに対しMo/200〜280Hv)、ダイヤモンドバイトのダメージが生じるため、DT加工ができない。
これについては、空冷式のヒートシンクのみならず、Cu−Mo−Cu積層材により形成された水冷式ヒートシンクについても同様であり、端面の仕様としては空冷式ヒートシンクと同様に、平面度1μm、エッジの丸み1μm程度が必要であり、DT加工ではダイヤモンドバイトのダメージのために実現できない。
従来では、このようにDT加工がMoに用いられないため、Cu−Mo−Cu積層材を研磨するために、上記仕様を実現するには精密研削盤と精密砥石を用いた高度な研磨工程が不可欠で、加工コスト、加工時間などで実用化の大きな制約となっていた(一例として、精密研削盤で数μmずつ研磨し50μm程度の加工に約30分程度の加工時間を要し、更に平面度も3μm程度と大きく、1μm以下を実現するのは困難だった)。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、Moのように硬い金属を含むヒートシンクであっても、Moの特性を発揮させるとともに精度良く容易に製造することができるヒートシンクの製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の複合材ヒートシンクの製造方法は、半導体素子を載置するヒートシンクの載置面を有し、前記ヒートシンクが、ヒートシンク基材と該ヒートシンク基材の表面に形成されたコーティング層とから構成され、前記ヒートシンク基材の表面を該ヒートシンク基材よりも軟らかい被覆材で形成し、該被覆材を切削加工又は研磨加工することによって、前記コーティング層を形成した。
上記複合材ヒートシンクの製造方法は、前記ヒートシンク基材がモリブデン、モリブデン系合金、タングステン、タングステン系合金、半導体(SiCなどの高熱伝導率かつ低熱膨張率材)又はセラミック材であり、前記コーティング層が銅又はニッケルとすることができる。
上記複合材ヒートシンクの製造方法は、前記コーティング層がメッキにより形成することができる。電鋳メッキでは100〜500μm程度の金属厚膜を形成することは通常行われている。
上記複合材ヒートシンクの製造方法は、前記ヒートシンクが内部に冷却水の流路を有する水冷式ヒートシンクとすることができる。
上記複合材ヒートシンクの製造方法は、前記切削加工がダイヤモンドターニング加工とすることができる。
なお、半導体素子には、レーザーダイオードが含まれる。
上記目的を達成するために、本発明の複合材ヒートシンクは、半導体を載置するヒートシンクの載置面を有し、該ヒートシンクが、ヒートシンク基材と該ヒートシンク基材の表面に形成されたコーティング層とから構成され、前記ヒートシンクは、前記ヒートシンク基材の表面を該ヒートシンク基材よりも軟らかい被覆材で形成し、該被覆材を切削加工又は研磨加工して前記コーティング層で被覆された載置面を形成するようにした。
また、上記目的を達成するために、上記複合材ヒートシンクは、レーザーダイオードを載置するヒートシンクの載置面と、該載置面に隣接し前記レーザーダイオードの一側面に沿って配置される端面とを有し、前記ヒートシンクが、ヒートシンク基材と該ヒートシンク基材の表面に形成されたコーティング層とから構成され、前記ヒートシンクは、前記ヒートシンク基材の表面を該ヒートシンク基材よりも軟らかい材質のメッキによるメッキ層で被覆し、該メッキ層を切削加工又は研磨加工して前記コーティング層で被覆された載置面及び端面を形成するようにした。
さらに、上記目的を達成するために、上記複合材ヒートシンクは、ヒートシンク基材と該ヒートシンク基材の表面に形成されたコーティング層とから構成された三層からなるヒートシンクを、板状の中間部材の表裏両面に接合して7層からなるヒートシンクを形成し、
該ヒートシンク基材が、該ヒートシンク基材よりも軟らかい被覆材で形成され、該被覆材を切削加工又は研磨加工して、前記コーティング層で被覆された半導体の載置面を形成するようにした。
上記複合材ヒートシンクは、前記ヒートシンク基材がモリブデン、モリブデン系合金、タングステン、タングステン系合金、半導体(SiCなどの高熱伝導率かつ低熱膨張率材)又はセラミック材であり、前記コーティング層が銅又はニッケルとすることができる。
上記複合材ヒートシンクは、前記半導体素子の一側面がレーザ光の発光面とすることができる。
上記複合材ヒートシンクは、前記切削加工をダイヤモンドターニング加工で行うことができる。
上記複合材ヒートシンクは、前記ヒートシンクの内部に冷却水の水路、冷却水の供給口及び前記冷却水の水路を介して前記供給口と連通する冷却水の排出口を形成することができる。
上記複合材ヒートシンクは、前記コーティング層がメッキにより形成されることができる。
本発明は、ヒートシンク基材の表面を銅などの該ヒートシンク基材よりも軟らかくかつ熱伝導率の大きい材質のメッキ層で被覆し、該メッキ層をダイヤモンドターニング加工による切削によって、前記コーティング層からなる前記載置面と端面とを形成した後、前記半導体素子の一側面に沿って前記ヒートシンクの端面を配置するようにしたので、ダイヤモンドターニング加工によって、モリブデン等の硬い基材のシートシンクを含むが、切削する部分は銅等のダイヤモンドバイトによって切削可能なメッキ層の部分であるので、ダイヤモンドバイトが損傷することがない。そのため、モリブデン基材単体では熱伝導が十分でなくとも、銅による高熱伝導が得られ(特に熱の横方向への拡散により熱伝導性が向上する)、かつモリブデンによる熱膨張率の制御が可能であり、従来の切削方法によって、熱吸収の優れたヒートシンクを生産することができる。
また、上記発明は、前記メッキ層が電鋳メッキによる厚膜のメッキ層により形成されることによって、部材間の熱膨張差があっても、長時間の信頼性を維持することができる。
さらに、上記発明は、前記ヒートシンクが内部に冷却水の流路を有する水冷式ヒートシンクとすることにより、熱冷却効率のよいヒートシンクを提供することができる。
すなわち、本発明により、半導体素子の冷却面はもとより、レーザーダイオードなどのレーザ光を放射する半導体素子の熱膨張率が制御された多層構造ヒートシンクの平面加工として、載置面及び端面のダイヤモンドターニング加工によるバリが無く、丸みが極小で、鏡面加工が施された高性能なヒートシンクを実現できる。更にこの方法をCu−Mo−Cuが2個以上で構成された多層型熱膨張率制御水冷ヒートシンクに適用した場合、同様にダイヤモンドターニング加工が可能で高性能な鏡面及び直角面を有するヒートシンクを低コストで実現できる。
以下、本発明の実施形態の発熱体を備えたヒートシンクの製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るヒートシンク1と半導体素子としてのレーザーダイオード2の一例を示す図であり、図1のAは側面方向の断面図、Bは平面図、Cは正面図である。
ヒートシンク1は、本実施形態では四角形状でかつ板状に形成され、内部にMoの板材からなる基材3が設けられ、基材3の周囲には、Cuによるコーティング層4a,4bが形成されている。図1において、ヒートシンク1の上面である載置面1aに発熱体としてのレーザーダイオード2が載置される。レーザーダイオード2のレーザ光を照射する発光面2aは、ヒートシンク1の一側面である端面1bと面一になるように取付けられる。なお、コーティング層4a,4bは同じCuによるコーティング層であるが厚みが微妙に異なるので、説明の便宜上、載置面1a側をコーティング層の符合を4aとし、端面1b側をコーティング層の符合を4bとして説明する。
ヒートシンク1は、載置面1aと端面1bとの接する角度が直角になるように形成されている。実際には、角部は完全な角であることが好ましいが、1μm程度の曲率半径を許容するように形成している。
ヒートシンク1の基材3の材質は、Moの他に、Mo系合金、W、W系合金、半導体(SiCなどの高熱伝導率材かつ低熱膨張率材が使用でき、熱伝導率が160W/mK以上で熱膨張率が9ppm/K以下)又はセラミック材(窒化アルミニウムなどの低熱膨張率材であって、熱伝導率が160〜200W/mK、熱膨張率が4ppm/K、ビッカース硬度1100Hv)を使用することができる。
コーティング層4a,4bは、Cuの他にDT加工が可能な材質であれば、ニッケル(以下、Niとする)を使用することができる。言い換えれば、コーティング層4a,4bは、DT加工できる材料であって、基材3はDT加工で用いるダイヤモンドバイトが損傷する可能性のある硬い材料に用いることができる。
図1に示すヒートシンク1の作成手順について説明する。
初めに、Moの基材3を任意の形状に成形する。例えば、基材3の大きさは、15×30×0.5mmである。次いで基材3の周囲に厚膜のCuによる電鋳メッキを施す。電鋳メッキは、いわゆるCuの厚付けメッキであり、約0.1〜0.5mm程度を肉付けする。電鋳メッキによる作業時間は、長時間を費やすが、ほぼ放置状態であるので時間以外の手間はかからない。
図2に示すように、電鋳メッキ被膜4は、後にCuのコーティング層4a,4bとして残存する部分と除去される余肉4cの部分とを合わせた厚みが形成される。電鋳メッキの作業後は、図3に示すように、ダイヤモンドバイト6による切削作業を行う。DT加工する場合、まずヒートシンク1の端面1b側の余肉4cを切削し、切削方向は、下方から上方、若しくは上方から下方へのいずれの順であってもよい。このとき、切削する部分は、Cuによって形成される電鋳メッキの余肉4cの部分であり、Moの部分までは切削しない。ここで端面1bの厚みの決め方であるが、半導体2に対し、端面1bのコーティング層4bの厚さが大き過ぎると半導体2の直下で端面1aのCuの熱膨張率が基材3により十分制御されない。このため、端面1bの許容値は概ね150μm以下と考えられる。一方、薄すぎると熱膨張率制御面では良いが、DT上、基材3との寸法がギリギリとなり、僅かな誤差でもダイヤモンドバイトが硬い基材3に当たり、ダイヤが破損するなどのおそれが生じる。この様な熱膨張特性と機械加工の許容値に鑑み、端面1bのコーティング層4bの厚さの適用範囲は30〜150μmであり、最適な範囲として50〜100μmとなる。なお、この場合Cuが厚い程熱伝導率は良い方向になるので特に問題は無いが、Niの場合は厚いと熱が鬱積するため、薄い方が良く、50μm以下とすると良い。
次に、ヒートシンク1の載置面1aとなる部分までDT加工により切削する。切削方向は、矢印aに示すように、端面1b側から該端面1bから離れる方向へ向けて切削するのが一般的である。この載置面1a側の切削についても、切削する部分は、Cuによって形成される電鋳メッキの余肉4cの部分であり、Moの部分までは切削しない。このDT加工によって、載置面1aと端面1bとの角部にバリが無く、丸みの小さい(曲率半径が1μm程度)ほぼ完全な直角からなる面が形成できる。
余肉4cを切削した後に残されたコーティング層4aの厚さは、薄いとMoの熱膨張率に近づき、熱伝導は熱の横拡散が低下するため低下する。このため、搭載される半導体素子を考慮して最適化される。コーティング層4aの厚さを機械加工によって自由な熱膨張率に加工することができる点は大きなメリットである(実際には約5〜16ppm/K迄の範囲の熱膨張率を得ることが可能)。本実施形態では、熱伝導率と熱膨張特性から好適な範囲として10〜200μm程度まで切削する事で、熱膨張率6〜8ppm/K程度を得ている。最適な範囲としては50〜150μmである。
本実施形態によれば、DT加工する際に、Cuで形成される余肉4cの部分のみをダイヤモンドバイト6で切削している。したがって、硬度の大きなMo(基材3)をダイヤモンドバイトで切削することなく、それが損傷することがない。完成したヒートシンク1は、Moによる低熱膨張率とCuによる高熱伝導(熱の横方向拡散を考慮している)とを両立し、生産性の良好なヒートシンク1を作製することができる。ヒートシンク1は、このように、DT加工することによって、直角かつ鏡面加工された厚み方向に対して多層(本実施形態では3層)のヒートシンク1が容易に実現できる。
ヒートシンク1を3層構造にする理由は、Cu−Moの2層間の熱膨張率差によるバイメタル効果に起因する反りなどの変形を避け、Cu−Mo−Cuの3層構造によって、逆方向の応力を与えて互いに打ち消すためである。
このような、ヒートシンク1は、レーザーダイオード2の載置面1aと端面1bとの角部に丸みがなく、平面度も1μm以下と小さいのでレーザーダイオードも曲がることなく平面に保たれるので、レーザーダイオード2の発光面2aの下部が載置面1aとほぼ完全に接触した状態にあり、かつ接触面積が広くなるので、ヒートシンク1の基材3のMoがCuのコーティング層4aを介して効率良くレーザーダイオード2の熱を吸収することができる。また、載置面1aと端面1bとの角部にバリが生じないため、レーザーダイオード2の照射光がバリによって、進路を妨げられることが防止され、放射モードの良好なレーザ光を放射することができる。この場合、レーザーダイオードとヒートシンクはインジウムや金錫半田などで高い平面性を持って高精度に接合することができる。
なお、基材3の周囲全体に電鋳メッキによるコーティング層を施したが、実質的には、ヒートシンク1は、端面1bのある側及び載置面1aのある側のみ(符合4a,4bの部分のみ)を、電鋳メッキしてDT加工しても良い。
次に、本発明の第2の実施形態の水冷式のヒートシンクの一例について説明する。
図4に示す水冷式ヒートシンク11は、上記第1の実施形態と基本的構成が同じである上側ヒートシンク12及び下側ヒートシンク13が上下に2個配設されている。これらの上下ヒートシンク12,13は上記第1の実施形態と同様にして作製できる。
シートシンク11の全体としては、基材14,15としてのMoが2層で、コーティング層16,17としてのCuが4層であり、上下ヒートシンク12,13の中間に中間部材18が配設された7層構造のヒートシンクである。このうち、中間部材18はCu板材であり、中間部材18の上面に上側ヒートシンク12が半田付けによって固定され、中間部材18の下面に下側ヒートシンク13が半田付けによって固定されている(半田付けによる固定方法は特許文献3に記されている)。
ここで上下に2個中間材に対して面対称に配置することで全体の熱膨張差に起因する応力に基づく曲がりを補償(相殺)するためである。また、中間材18の厚さを変えることでヒートシンクの総厚を変更することができる。
なお、コーティング層16a(付随して決める対称な17a)の厚さは、薄い程Moの熱膨張率(5ppm/K)に近づくがCu層による熱の横拡散が少ないため、熱の吸収は悪くなる。一方、厚い程Cuの熱膨張率(約17ppm/K)に近づくが熱の吸収は良くなる。本実施形態では、コーティング層16aの厚さは好適な範囲として10〜200μm、最適な範囲としては50〜150μmである。端面11bのコーティング層16bの厚さの適用範囲は30〜150μmであり、最適な範囲として50〜100μmとなる。
水冷式ヒートシンク11の内部には、Cuのコーティング層16b、17bと中間部材18に、基材3に沿った方向へ延びる水路19が形成され、下側ヒートシンク13の底面には、図示しない冷却水の供給手段と接続されている入口20及び出口21が形成されている。
上側ヒートシンク12の上面には載置面11aが形成され、載置面11aにはレーザーダイオード22が取付けられている。ヒートシンク11は、レーザーダイオード22のレーザ光を照射する発光面22aと面一である端面11bが設けられている。
上側ヒートシンク12のCuのコーティング層16からなる載置面11aは、ダイヤモンドバイト(図3の符号6を参照)によってDT加工され、上側ヒートシンクのコーティング層16における端面11bの部分がダイヤモンドバイトによってDT加工されている。載置面11aと端面11bとの角度は90度であり、角部はDT加工によれば1μm程度の曲率半径が可能である。
本実施形態における、水冷式ヒートシンク11は、内部に形成した水路19に冷却水が循環しているので、図示しないポンプから冷却水が水冷式ヒートシンク11の入口20に供給されて水路19を通り、レーザーダイオード22の熱が、コーティング層16及び基材14のMoを介して冷却水が吸収して、熱吸収した冷却水は出口21から排出され、効率良くレーザーダイオード22を冷却することができる。また、上記第1の実施形態と同様に、水冷式ヒートシンク11は、レーザーダイオード22の載置面11aと端面11bとの角部に丸みがないので、レーザーダイオード22の発光面22aの下部が載置面11aと接触した状態にあるので、効率良くレーザーダイオード22の熱を吸収することができる。また、載置面11aと端面11bとの角部にバリが生じないため、レーザーダイオード22の照射光がバリによって妨げられることが防止される。
次に、本発明の第3の実施形態について図面を参照にして説明する。なお、上記第1及び第2の実施形態と同じ部材については同一の符合を付して説明する。
図5に示すヒートシンク51は、上記第2の実施形態で説明した水冷式ヒートシンク11に対して冷却水の流路を省略したものである。これ以外は、基本的構成が同じである。すなわち、ヒートシンク51は、上側ヒートシンク12及び下側ヒートシンク13が上下に2個配設されている。これらの上下ヒートシンク12,13は上記第1の実施形態のヒートシンク1と同様にして作製できる。
シートシンク51の全体としては、基材14,15としてのMoが2層で、コーティング層16,17としてのCuが4層であり、上下ヒートシンク1の中間に中間部材18が配設された7層構造のヒートシンクである。このうち、中間部材18はCu板材であり、中間部材18の上面に上側ヒートシンク12が半田付けによって固定され、中間部材18の下面に下側ヒートシンク13が半田付けによって固定されている(半田付けによる固定方法は特許文献3に記されている)。
本実施形態では、コーティング層16aの厚さは好適な範囲として10〜200μm、最適な範囲としては50〜150μmである。端面11bのコーティング層16bの厚さの適用範囲は30〜150μmであり、最適な範囲として50〜100μmとなる。
このように、上下にヒートシンク12,13を2個面対称に配置することで全体の熱膨張差(バイメタル効果)に起因する応力に基づく曲がりを補償(相殺)するためである。また、中間材18の厚さを変えることでヒートシンク51の総厚を変更することができる効果がある。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の技術的思想に基づいて、勿論、本発明は種々の変形又は変更が可能である。
上記実施形態では、Moの周囲にCuによる厚膜電鋳メッキを形成したが、これに代えてMoの板材に加熱溶融したCuを流し込んで圧接するクラッド材を形成し、Moの周囲に被覆したCuの部分をDT加工してもよい。ただし、上記各実施形態による電鋳メッキによって形成したコーティング層の方が長時間の信頼性を保つことができる。
又、メッキ以外で基材となる材質への他の金属のコーティング法の事例として上記の通常のクラッド材の他、次の様な手法が知られている。すなわち、セラミック材に対しては銅のダイレクト接合法(DBC法)、金属材に対しては活性化金属接合法(基材の表面を真空中でアルゴンガスなどで清浄に加工し異種の金属を接合する手法)などが考えられる。
又Cuのコーティングに代えてNiなどの金属でも良い。例えば熱処理を施した場合、熱伝導率90W/mK、熱膨張率13ppm/K、ビッカース硬度90Hvのものが使用できるが、熱の吸収は当然Cuが勝っている。
また、上記各実施形態では、レーザーダイオードとヒートシンクを組み合わせた例をあげたが、レーザーダイオードに代えて他の半導体素子をヒートシンクによって冷却してもよい。この場合は、レーザ光による制約がないので、ヒートシンクの端面とレーザ光の端面とを面一に配置することはなく、半導体素子をヒートシンクの中央に配置してもよい。
ただし、この様な応用例では端面の直角などは特に必要ないが、一般にWやMo面はメッキがつきにくく、ヒートシンクとして基材の面から腐食が起こる場合があり、Cuなどでのコーティングは有用であり、この場合には、通常の切削加工精度で良い。この例として、ハイブリッド車や電気自動車用制御部には現状では、シリコンが用いられており、今後はSiC(熱膨張率が5ppm/K)、GaN(熱膨張率が5ppm/K)などの高温領域で動作可能な半導体(レーザーダイオード及びレーザーダイオード以外の半導体を含む)が使われていくと予想され、これらのデバイス用に熱膨張率の制御された複合材ヒートシンクは有効である。この場合端面の直角などは特に必要無いが、一般にWやMo面はがつきにくく、ヒートシンクとして基材の面から腐食が起こる場合があり、Cuなどのコーティングは有用である。半導体の載置面に相当する上面は同様にDT加工による切削面により鏡面加工することが冷却や良好な平面度による密着性の点で有効である。このような使用では、端面はDT加工してもよいが通常のエンドミルなどでの切削加工でも十分である。
本発明の実施形態によるヒートシンクの製造方法によって形成したヒートシンクであって、Aはヒートシンクを側面方向から見た断面図、Bは平面図、Cは正面図である。 図1のヒートシンクの製造方法において、基材に電鋳メッキを施した状態をヒートシンクの側面方向から見た断面図である。 図2の基材に施した電鋳メッキをDTによって切削している状態のヒートシンクを側面方向から見た断面図である。 本発明の第2の実施形態の水冷式7層ヒートシンクをヒートシンクの側面方向から見た断面図である。 本発明の第3の実施形態の空冷式7層ヒートシンクをヒートシンクの側面方向から見た断面図である。 従来のヒートシンクの製造方法によって形成した多層構造のヒートシンクであって、Aはヒートシンクの平面図、Bはヒートシンクを側面方向から見た断面図である。 図6のBの矢視aの拡大図であって、Aはシンクシートの角部が湾曲した状態の断面図、Bは角部にバリが形成されている状態の断面図である。
符号の説明
1 ヒートシンク
1a,11a 発熱体載置面
1b,11b ヒートシンク端面
2,22 レーザーダイオード
2a,22a 発光面
3 基材(ヒートシンク本体)
4 電鋳メッキ被膜
4a,4b,16,17 コーティング層
6 ダイヤモンドバイト
11 熱膨張制御形水冷式ヒートシンク
12 上側ヒートシンク部材
13 下側ヒートシンク部材
19 水路(矢印は水流の方向例)

Claims (13)

  1. 半導体素子を載置するヒートシンクの載置面を有し、前記ヒートシンクが、ヒートシンク基材と該ヒートシンク基材の表面に形成されたコーティング層とから構成され、
    前記ヒートシンク基材の表面を該ヒートシンク基材よりも軟らかい被覆材で形成し、該被覆材を切削加工又は研磨加工することによって、前記コーティング層を形成したことを特徴とする複合材ヒートシンクの製造方法。
  2. 前記ヒートシンク基材がモリブデン、モリブデン系合金、タングステン、タングステン系合金、半導体又はセラミック材であり、前記コーティング層が銅又はニッケルであることを特徴とする請求項1に記載の複合材ヒートシンクの製造方法。
  3. 前記コーティング層がメッキにより形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の複合材ヒートシンクの製造方法。
  4. 前記ヒートシンクが内部に冷却水の流路を有する水冷式ヒートシンクであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合材ヒートシンクの製造方法。
  5. 前記切削加工がダイヤモンドターニング加工であることを特徴とする請求項1〜4に記載の複合材ヒートシンクの製造方法。
  6. 半導体を載置するヒートシンクの載置面を有し、該ヒートシンクが、ヒートシンク基材と該ヒートシンク基材の表面に形成されたコーティング層とから構成され、
    前記ヒートシンクは、前記ヒートシンク基材の表面を該ヒートシンク基材よりも軟らかい被覆材で形成し、該被覆材を切削加工又は研磨加工して前記コーティング層で被覆された載置面を形成するようにしたことを特徴とする複合材ヒートシンク。
  7. レーザーダイオードを載置するヒートシンクの載置面と、該載置面に隣接し前記レーザーダイオードの一側面に沿って配置される端面とを有し、前記ヒートシンクが、ヒートシンク基材と該ヒートシンク基材の表面に形成されたコーティング層とから構成され、
    前記ヒートシンクは、前記ヒートシンク基材の表面を該ヒートシンク基材よりも軟らかい材質のメッキによるメッキ層で被覆し、該メッキ層を切削加工又は研磨加工して前記コーティング層で被覆された載置面及び端面を形成するようにしたことを特徴とする複合材ヒートシンク。
  8. ヒートシンク基材と該ヒートシンク基材の表面に形成されたコーティング層とから構成された三層からなるヒートシンクを、板状の中間部材の表裏両面に接合して7層からなるヒートシンクを形成し、
    該ヒートシンク基材が、該ヒートシンク基材よりも軟らかい被覆材で形成され、該被覆材を切削加工又は研磨加工して、前記コーティング層で被覆された半導体の載置面を形成するようにしたことを特徴とする複合材ヒートシンク。
  9. 前記ヒートシンク基材がモリブデン、モリブデン系合金、タングステン、タングステン系合金、半導体又はセラミック材であり、前記コーティング層が銅又はニッケルであることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の複合材ヒートシンク。
  10. 前記半導体素子の一側面がレーザ光の発光面であることを特徴とする請求項6、8及び9のうちいずれか1項に記載の複合材ヒートシンク。
  11. 前記切削加工がダイヤモンドターニング加工であることを特徴とする請求項6〜10のいずれか1項に記載の複合材ヒートシンク。
  12. 前記ヒートシンクの内部に冷却水の水路、冷却水の供給口及び前記冷却水の水路を介して前記供給口と連通する冷却水の排出口を形成した請求項8〜11のいずれか1項に記載の複合材ヒートシンク。
  13. 前記コーティング層がメッキにより形成されたことを特徴とする請求項6、8〜12のいずれか1項に記載の複合材ヒートシンク。
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