JP2008137304A - 二軸延伸樹脂フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】クロスニコル法の検査において、虹模様の発生が抑制された二軸延伸樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】ポリエチレンテレフタレート系樹脂(A)を含む層とシンジオタクチックポリスチレン系樹脂(B)を含む層が交互に合わせて5層以上積層されており、0°、45°、90°、135°の各方向における複屈折率ΔPが0.05以下であり、かつ、10mm四方の二軸延伸フィルムを2枚のカバーガラス間に挟んで290℃で溶融プレスし、急冷したのち、100倍の位相差顕微鏡で20視野観察し、イメージアナライザーでカウントした2.4mm2当たりの5μm以上の粗大粒子数が30個以下であることを特徴とする二軸延伸樹脂フィルム。好ましくは、さらに、0°、45°、90°および135°の各方向における複屈折率ΔPの値のうち、その最大値と最小値の差が0.01以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、各種食品包装用、一般工業用、光学用、電気材料用、成形加工用などの各種用途に適した二軸延伸樹脂フィルムに関する。
ポリエチレンテレフタレート(PET)を基材とする二軸延伸フィルムは、機械的特性、耐熱性、平面性などが優れているため、様々な分野で使用されている。
その一つとして、偏光板のクロスニコル法による検査に使用する離型ポリエステルフィルムがある(例えば、特許文献1参照)。クロスニコル法の検査は、2枚の偏光板をその配向主軸を直交させて消光状態とし、偏光板中に異物や欠陥があればそこが輝点として現れるので、目視による欠点検査ができるというものであり、2枚の偏光板の間に離型ポリエステルフィルムをはさみこんだ状態で実施される。一般に、PETフィルムをこれに用いた場合には、フィルムの複屈折率が大きいため虹模様(虹のような色を持って現れる色縞)が発生し、これがクロスニコル法の検査の障害となり、偏光板中の異物の混入や欠陥を見逃しやすくなるという不具合が生じる場合があった。さらに、PETフィルムそのものに異物や欠陥が多く含まれる場合には、偏光板中の異物の混入や欠陥を見逃しやすくなるという不具合が生じる場合があった。
また、クロスニコル法の検査では、偏光板に挟まれたフィルム中の異物や欠陥も同様に検出されるものであり、クロスニコル法によるフィルム中の異物や欠陥の検査方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。PETフィルムについて、当該方法でフィルム中の異物の検査を行う場合にも、やはり上記した虹模様の発生は検査の障害となる。
特開2005−15726号公報 特開2005−49158号公報
本発明の目的は、クロスニコル法の検査において、虹模様の発生が抑制され、かつ異物の混入が抑制された二軸延伸樹脂フィルムを提供することにある。
本発明者らが鋭意検討した結果、原料としてポリエチレンテレフタレート系樹脂に加えてシンジオタクチックポリスチレン系樹脂を用い、フィルムをポリエチレンテレフタレート系樹脂層とシンジオタクチックポリスチレン系樹脂層が交互に積層した多層構造として、フィルムの複屈折率ΔPを特定値以下にし、さらにフィルム中の粗大粒子数を特定値以下にすることにより、上記課題を解決することができることを見出した。
すなわち、本発明は、ポリエチレンテレフタレート系樹脂(A)を含む層とシンジオタクチックポリスチレン系樹脂(B)を含む層が交互に合わせて5層以上積層されており、0°、45°、90°、135°の各方向における複屈折率ΔPが0.05以下であり、かつ、10mm四方の二軸延伸フィルムを2枚のカバーガラス間に挟んで290℃で溶融プレスし、急冷したのち、100倍の位相差顕微鏡で20視野観察し、イメージアナライザーでカウントした2.4mm当たりの5μm以上の粗大粒子数が30個以下であることを特徴とする二軸延伸樹脂フィルムである。
本発明の複屈折率ΔPについては、さらに、0°、45°、90°および135°の各方向における複屈折率ΔPの値のうち、その最大値と最小値の差が0.01以下である場合には、虹模様の発生の低減効果が特に大きい。
本発明のフィルムは、本発明の効果を発揮する上では、ヘイズが2%以下であることが好ましく、また、生産性の観点から、150℃で30分間熱処理した際の縦方向および横方向の熱収縮率が3%以下であることが好ましい。また、ポリエチレンテレフタレート系樹脂(A)とシンジオタクチックポリスチレン系樹脂(B)の質量比が、10/90〜90/10であることが本発明の好ましい態様である。
本発明によれば、クロスニコル法の検査において虹模様や、異物や欠陥に伴う輝点の発生がほとんどないため、本発明のフィルムを離型フィルムとして偏光板のクロスニコル法の検査に供した場合、偏光板中の異物の混入や欠陥の発見が容易である。また、本発明のフィルムは、異物や欠陥が低減されているため、各種食品包装用、一般工業用、光学用、電気材料用、成形加工用などの各種用途のフィルム製品として、高い信頼性をもって供給することができる。
本発明は、ポリエチレンテレフタレート系樹脂(A)を含む層とポリスチレン系樹脂(B)を含む層が交互に合わせて5層以上積層されており、0°、45°、90°、135°の各方向における複ΔPが0.05以下であり、かつ、10mm四方の二軸延伸フィルムを2枚のカバーガラス間に挟んで290℃で溶融プレスし、急冷したのち、100倍の位相差顕微鏡で20視野観察し、イメージアナライザーでカウントした2.4mm当たりの5μm以上の粗大粒子数が30個以下であることを特徴とする二軸延伸樹脂フィルムである。
本発明において用いられるポリエチレンテレフタレート系樹脂(A)(以下、樹脂(A)ともいう。)は、ポリエチレンテレフタレート(PET)を主たる構成成分とするものであり、ポリエチレンテレフタレートのホモポリマーであってもよく、他の共重合可能な成分が共重合されたコポリマーであってもよい。共重合可能な酸成分としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、フタル酸などの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、アジピン酸、ダイマー酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、エイコ酸などの脂肪族ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多官能酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(2−オキシ酪酸)、及びそれらの誘導体が挙げられる。共重合可能なアルコール成分としては、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、及びそれらの誘導体が挙げられる。共重合可能な成分が共重合される場合、共重合可能な酸成分は、共重合体の全酸成分100モル%中、50モル%以下であり、好ましくは30モル%以下であり、より好ましくは10モル%以下である。また、共重合可能なアルコール成分は、共重合体の全アルコール成分100モル%中、50モル%以下であり、好ましくは30モル%以下であり、より好ましくは10モル%以下である。
樹脂(A)の還元粘度は、好ましくは0.55〜1.10であり、より好ましくは0.58〜1.00である。樹脂(A)の還元粘度が0.55より小さくなると、実用に供することのできる機械的強度を有するフィルムが得られにくくなり、一方、樹脂(A)の還元粘度が1.10を超えると、フィルムの金属板への熱圧着性が損なわれやすい。
本発明において、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂(B)とは、シンジオタクチック構造を有するポリスチレン系ポリマーを主たる構成成分とするものである。ポリスチレン系ポリマーとしては、例えば、ポリスチレン、ポリ(p−、m−またはo−メチルスチレン)、ポリ(2,4−、2,5−、3,4−または3,5−ジメチルスチレン)、ポリ(p−ターシャリーブチルスチレン)などのポリ(アルキルスチレン);ポリ(p−、m−またはo−クロロスチレン)、ポリ(p−、m−またはo−ブロモスチレン)、ポリ(p−、m−またはo−フルオロスチレン)、ポリ(o−メチル −p−フルオロスチレン)などのポリ(ハロゲン化スチレン);ポリ(p−、m−またはo−クロロメチルスチレン)などのポリ(ハロゲン置換アルキルスチレン);ポリ(p−、m−またはo−メトキシスチレン)、ポリ(p−、m−またはo−エトキシスチレン)などのポリ(アルコキシスチレン);ポリ(p−、m−またはo−カルボキシメチルスチレン)などのポリ(カルボキシアルキルスチレン);ポリ(p−ビニルベンジルプロピルエーテル)などのポリ(アルキルエーテルスチレン);ポリ(p−トリメチルシリルスチレン)などのポリ(アルキルシリルスチレン);さらにはポリ(ビニルベンジルジメトキシホスファイド)などが挙げられる。これらのうち、ポリスチレンが好ましい。
本発明において、シンジオタクチック構造を有するポリスチレン系ポリマーとは、炭素−炭素結合から形成された主鎖に対して側鎖であるフェニル基(場合によっては置換フェニル基)が交互に反対方向に位置する立体構造を主として有するポリスチレン系ポリマーのことをいう。本発明において、シンジオタクチック構造を有するポリスチレン系ポリマーは、核磁気共鳴法(13C−NMR法)により定量される値で、ダイアット(構成単位が2個)で、r(ラセモ)が85%以上、ペンタッド(構成単位が5個)でrrrrが50%以上である立体規則性を有することが好ましい。
本発明において、シンジオタクチック構造を有するポリスチレン系ポリマーには、全ポリマーでみたタクティシティが上記範囲内であれば、アイソタクチック構造のポリマーまたはアタクチック構造のポリマーが混合されていてもよい。また、シンジオタクチック構造を有するポリスチレン系ポリマーは、タクティシティが上記範囲内であれば、本発明の効果を損なわない範囲内で他種のモノマーと共重合された樹脂であってもよい。
本発明のフィルムにおいては、樹脂(A)と樹脂(B)の質量比は、樹脂(A)/樹脂(B)として、10/90〜90/10であることが好ましく、20/80〜80/20であることがより好ましく、30/70〜70/30であることが最も好ましい。
樹脂(A)および樹脂(B)は本発明の趣旨を損なわない範囲において粒子を含有していてもよい。粒子を添加することにより、フィルムの製造時やロール状に巻取る際・巻出す際のハンドリング性を本発明のフィルムに付与することができる。使用できる粒子の大きさとしては、一次粒子の長径が5μmよりも小さく、好ましくは3μmよりも小さく、より好ましくは1μmよりも小さい粒子である。使用できる粒子の例としては、シリカ、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛等の無機粒子;架橋アクリル粒子、架橋スチレン粒子、シリコーン粒子等の有機粒子などが挙げられ、また、これら例示したものと同等の効果を有する粒子を使用することもできる。これらのうち、シリカが好ましい。
樹脂(A)および樹脂(B)は必要に応じ、従来公知の添加剤、例えば、滑剤、安定剤、着色剤、酸化防止剤、消泡剤、静電防止剤、紫外線吸収剤等を含有していてもよい。
本発明においては、樹脂(A)を含む層と樹脂(B)を含む層が、厚み方向において、交互に合わせて5層以上積層され、好ましくは11層以上、より好ましくは30層以上、最も好ましくは100層以上積層される。層数が4層以下では、ΔPを0.05以下にすることが困難となり、虹模様の低減効果が低くなるおそれがある。
本発明の二軸延伸フィルムは、フィルムの0°、45°、90°および135°の各方向における複屈折率ΔPは、0.05以下であり、好ましくは0.01以下、より好ましくは0.005以下である。0.05を超えると虹模様が顕著に観測されるようになる。複屈折率ΔPは0に近いほど良いため、下限については特に制限が無く、下限はフィルムを構成する樹脂の種類や製法上の限界により定まる。本発明のフィルムの複屈折率ΔPの最小値(すなわち下限)は、現時点においては0.0001程度、または0.0002程度、あるいは0.0005程度であると考えられる。
本発明の二軸延伸フィルムは、0°、45°、90°および135°の各方向における複屈折率ΔPの値のうち、その最大値と最小値の差は、好ましくは0.01以下、より好ましくは0.008以下、さらに好ましくは0.005以下である。当該最大値と最小値の差が、0.01を超えると虹模様が顕著に現れる場合がある。
本発明の二軸延伸フィルムは10mm四方の二軸延伸フィルムを2枚のカバーガラス間に挟んで290℃で溶融プレスし、急冷したのち、100倍の位相差顕微鏡で20視野観察し、イメージアナライザーでカウントした2.4mm当たりの5μm以上の粗大粒子数が30個以下であることが好ましい。特に好ましくは、5μm以上の粗大粒子数が10個以下である。上記方法でカウントされる5μm以上の粗大粒子数が30個を超えると、例えば該二軸延伸フィルムを偏光板をクロスニコル法で検査する際の離形フィルムとして使用した場合に粗大粒子由来の多数の輝点が観察されるなどするため偏光板の欠点の検出を阻害する場合があり、好ましくない。
本発明の二軸延伸フィルムの粗大粒子数を上記範囲に低減する方法は特に限定しないが、特に有効な方法としては、樹脂(A)および樹脂(B)を溶融して積層押出する過程において、それぞれの樹脂のメルトラインで精密濾過を行い、両樹脂中に含まれる粗大な異物を除去する方法が挙げられる。溶融した樹脂(A)および樹脂(B)の精密濾過に用いられる濾材は特に限定はされないが、ステンレススチール焼結体の濾材が、樹脂の重合触媒が還元されて析出する金属粒子や、重合からペレット化までの段階で外部から混入するSi、Ti、Sb、Ge、Cuなどを主成分とする凝集物および高融点有機物、滑材等として添加した無機粒子や有機粒子等の凝集物、樹脂劣化物の除去性能に優れるため公的である。上記濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)は15μm以下であることが好ましい。濾過粒子サイズが15μmを超える濾材では、除去する必要があるサイズの粒子を十分に除くことができないため好ましくない。
本発明のフィルムは、ヘイズが2%以下であることが好ましく、より好ましくは1%以下である。ヘイズが2%を超えると、クロスニコル法の検査自体の実施が困難となってくるおそれがある。
本発明のフィルムは、150℃で30分間熱処理した際の熱収縮率が、縦および横方向とも3%以下であることが好ましく、より好ましくは2%以下であり、特に好ましくは1.5%以下である。3%を超えると離型加工などの後加工時の生産性が低下する。なお、熱収縮率の評価の熱処理は、二軸延伸樹脂フィルムが無張力下にある状態で行うようにする。
本発明のフィルムの還元粘度(ηsp/c)は、好ましくは0.70以上、より好ましくは0.80以上、さらに好ましくは0.85以上である。フィルムの還元粘度を0.70以上とすることにより、フィルムの耐擦傷性が向上する。
本発明のフィルムは、縦および横方向のF−5値が、50MPa以上1000MPa以下、好ましくは、100MPa以上400MPa以下である。50MPa未満では、離型加工時や連続での欠点検査時のフィルム破れが発生しやすくなる。また、1000MPaを超えるものはフィルム生産性が悪くなり、製造が困難である。
本発明のフィルムは、厚みが1μm以上1000μm以下、好ましくは3μm以上300μm以下、より好ましくは、10μm以上50μm以下である。この範囲を超えたフィルムは二軸延伸樹脂フィルムとしての生産性が不良であり、好ましくない。
以下、本発明のフィルムの製造方法を具体的に説明するが、その製造方法は、以下の製造方法に限定されるものではなく、本発明のフィルムは別の製造方法により製造されたものであってもよい。
公知の手法により乾燥したポリエチレンテレフタレート系樹脂(A)チップおよびポリスチレン系樹脂(B)チップをそれぞれ別個の溶融押出装置に供給し、それぞれのポリマーの融点以上である温度に加熱して溶融する。樹脂(A)に対しては、260〜300℃が、樹脂(B)に対しては270〜310℃が好適である。
両樹脂を溶融状態のままそれぞれ溶融状態のまま適当な濾過粒子サイズの濾材を用いて精密濾過を行った後に、フィードブロックに導いて合流させる。次いで、樹脂(A)を含む層と樹脂(B)を含む層が交互に合わせて5層以上となる積層構造を形成するために、樹脂を、積層装置(例、フィードブロック、マルチマニホールドダイ、スタティックミキサ等、好ましくはスタティックミキサ)に供する。
スタティックミキサは、例えばノリタケカンパニー製のように、樹脂流路に長方形の板を180度ねじった形のエレメントを交互に繰り返し配列させたもので、このエレメントをひとつ通過するごとに層数が2倍になる。よって論理上は、n個のエレメントを通過すると2層になるが、実際には流路径、吐出量および各樹脂の粘度や表面張力などの関係で変化することもある。スタティックミキサのエレメント数を2以上10以下とすることが好ましく、4以上8以下とすることがより好ましい。このようなエレメント数のスタティックミキサを用いることによって、適切な多層構造が得られ、虹模様の低減効果が見られる。
続いて樹脂を、積層装置からスリットダイに導き、溶融状態のままダイから表面温度20〜60℃程度の回転冷却ドラム上に押出す。押出された樹脂が、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度にまで急冷固化されて、実質的に非晶状態の未配向シートが得られる。この場合、シートの平面性を向上させるためにシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
このようにして得られたシートを二軸方向に延伸することによって本発明のフィルムを得ることができる。延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを好ましくは縦方向に80〜130℃で1.3〜6倍に延伸し、縦一軸延伸フィルムとした後、横方向に90〜160℃で1.3〜6倍延伸を行う。二軸延伸した後、150〜240℃で1〜600秒間熱処理を行うことが好ましい。さらにこの際、熱処理の最高温度ゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩することが好ましい。
本発明のフィルムは、公知方法に準じて離型層を設けて、離型ポリエステルフィルムとすることができる。離型層を構成する材料は離型性を有するものであれば特に限定されるものではなく、硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプでもよいし、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ等を使用してもよい。それらの中でも、硬化型シリコーン樹脂を主成分としたものが、離型性が良好な点で良い。当該離型ポリエステルフィルムを、接着剤層を介して偏光板と接合する等により、偏光板のクロスニコル法による検査に好適に使用することができる。
また、本発明のフィルムは、PETフィルムとしての、優れた機械的特性、耐熱性、平面性を有し、さらに特異な光学特性を有するものである。そして、本発明のフィルムの使用の際には、公知方法に準じて本発明のフィルムの表面にコート層を設けることができる。また、公知方法に準じてフィルム表面を、金属または金属酸化物により蒸着処理することもできる。従って、本発明のフィルムは、各種食品包装用、一般工業用、光学用、電気材料用、成形加工用などの各種用途に好適に使用できる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
まず、本実施例においてフィルム特性は、下記のようにして評価した。
(1)複屈折率ΔP
実施例および比較例で得られたフィルムを幅2cm、長さ3cmとなるように切り出したものをサンプルとした。このとき、サンプルの長さ方向がフィルムの長さ方向と平行になるようにして切り出したサンプル(0°サンプル)、およびサンプルの長さ方向とフィルムの長さ方向との関係がそれぞれ45°、90°、135°となるように切り出したサンプル(それぞれ45°サンプル、90°サンプル、135°サンプル)を準備した。
上記各測定用サンプルそれぞれについて、アタゴ光学社製アッベ屈折計4Tを用いて、フィルムの長さ方向(縦延伸方向)、幅方向(横延伸方向)および厚み方向の屈折率を測定した。測定に使用した溶剤はジヨードメタンであり、測定条件は23℃60RH%下である。n=5で測定し、各サンプルの屈折率の平均値(ΔP)を、下記の式に基づき求めた。
ΔP=|0.5(Nx+Ny)−Nz|
ただし、Nx、Ny、Nzはそれぞれ、フィルムの長さ方向、幅方向および厚み方向の屈折率を示す。
(2)熱収縮率
フィルムを長さ方向および幅方向にそれぞれ、幅10mm、長さ150mmに10枚ずつ切り出してサンプルとし、サンプルの長さ方向について100mm間隔の表示線を設けた。
150℃のオーブン(タバイエスペック社製、型式PHH−101)で30分間、無張力の状態になるようサンプルの長さ方向の一方を把持しながら、加熱処理した。
その後フィルムを取り出し、以下の式に従って、熱収縮率を求めた。
熱収縮率=(1−加熱後の表示線の間隔/加熱前の表示線の間隔)×100%
(3)F−5値
フィルムを長さ方向および幅方向にそれぞれ、幅10mm、長さ150mmに10枚ずつ切り出してサンプルとし、サンプルの長さ方向について100mm間隔の表示線を設けた。これらのサンプルについて、チャック間距離100mm、温度23℃、引張速度100mm/分でJIS−K7127(1999)に準拠して引張試験を実施した。なお、試験片はタイプ2とし、5%伸長時の引張応力をF−5値とした。
(4)虹模様
フィルムを光源(10W蛍光灯(東芝製FL100−ELD−56K)を2本)上におき、それを偏光板を通して見る。その際にフィルムを回転させたときに色の変化が大きければ×、許容範囲なら○、良い状態を◎として評価した。
(5)粗大粒子数
10mm四方の二軸延伸フィルムを2枚のカバーガラス間に挟んで290℃で溶融プレスし、急冷したのち、100倍の位相差顕微鏡で20視野観察し、イメージアナライザーで2.4mm当たりの5μm以上の粗大粒子数をカウントした。
(6)へイズ
JIS−K7136に基づき、日本電色工業製NDH2000を用いて求めた。
(7)エチレンテレフタレート環状三量体の定量法
定量する試料がポリエチレンテレフタレート系樹脂(A)の場合には、該樹脂(A)をヘキサフルオロイソプロピルアルコール/クロロホルム=2/3(V/V)に浸漬して樹脂(A)を溶解させ、不溶物を除去した後、メタノールで樹脂(A)を沈殿させ、沈殿した樹脂(A)を濾別し、濾液を蒸発乾固した後、該蒸発乾固物をN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させた。該溶液を液体クロマトグラフィー法で展開し、エチレンテレフタレート環状三量体の含有量を定量した。
また、定量する試料がポリエチレンテレフタレート系樹脂(A)とシンジオタクチックポリスチレン系樹脂(B)との積層フィルムの場合には、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂(B)のエチレンテレフタレート環状三量体含有量が実質的かつ合理的にゼロであると考えられることから、積層フィルム試料をそのまま用いて上記の方法により積層フィルム中のエチレンテレフタレート環状三量体の含有量を定量し、積層フィルム中のポリエチレンテレフタレート系樹脂(A)の含有量からポリエチレンテレフタレート系樹脂中のエチレンテレフタレート環状三量体の含有量を求めた。
(8)層数の測定
フィルム内部の層数は、透過型電子顕微鏡を用いて観察して求めた。
1.測定サンプルの作成
まず、フィルムをエポキシ樹脂に包埋した。エポキシ樹脂としては、ルアベック812、ルアベックNMA(以上ナカライテスク社製)、DMP30(TAAB社製)を、それぞれ100:89:3(質量)の割合で良く混合したものを用いた。フィルムを上述のエポキシ樹脂中に包埋した後、温度60℃に調整したオーブン中に16時間放置し、エポキシ樹脂を硬化せしめ包埋ブロックを得た。
得られた包埋ブロックを、日製産業製ウルトラカットNに取り付け、ガラスナイフを用いてトリミングを実施し、フィルムの観察に供したい部分の断面をレジン表面に露出させた。次いで、ダイアモンドナイフ(住友電工製スミナイフSK2045)を用いて、上記レジン表面から超薄切片を切りだした。切りだした超薄切片は、メッシュ上に回収した後、室温(25℃)で四酸化ルテニウム蒸気中に30分間静置して染色し、薄くカーボン蒸着を施した。
2.電子顕微鏡による観察
電子顕微鏡観察は、日本電子製JEM−2010を使用し、加速電圧200kV、倍率5000〜20000の条件で実施した。得られた像をイメージングプレート(富士写真フィルム製FDL UR−V)上に記録し、イメージングプレート上に記録した信号を、デジタルルミノグラフィー(日本電子製PixsysTEM)を用いて読み出し、ウインドウズパソコン上にデジタルの画像情報として記録し、樹脂(A)を含む層と樹脂(B)を含む層の染色度の差から確認される層の数を数えた。
実施例1
樹脂(A)として、酸成分にテレフタル酸100モル%を、グリコール成分にエチレングリコール85モル%とネオペンチルグリコール15モル%とを使用して共重合させた共重合ポリエステル(固有粘度0.62、エチレンテレフタレート環状三量体の含有量0.45重量%)を、60mmφ単軸押出機に投入し、285℃で溶融した。樹脂(B)としてシンジオタクチックポリスチレン(出光石油化学製300zc)を二軸押出機(22.5mmφ×2本)に投入し、300℃で溶融した。それぞれの樹脂を溶融状態のまま濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)15μmのステンレススチール製焼結濾材を用いて精密濾過を行った後、樹脂(A)/樹脂(B)の2層積層構造となるようにフィードブロックに導き、次いでそのまま295℃に昇温したスタティックミキサ(ノリタケカンパニー製、6エレメント)を通過させた。このときの樹脂の比率は樹脂(A)/樹脂(B)=40/60(質量比)とした。
スタティックミキサ通過後の樹脂をT−ダイから押出し、30℃の冷却ロールにて冷却することにより、未延伸シートを得た。このシートを110℃に表面を加熱したロール上で、縦方向に3.3倍延伸し、そのまま予熱温度110℃、延伸温度120℃のテンターで横方向に3.5倍延伸した後、そのままテンター内で220℃4秒間熱処理することにより、厚み50μmの二軸延伸樹脂フィルムを得た。得られたフィルムの層数は64層であった。
実施例2
樹脂(A)/樹脂(B)=50/50(質量比)とした以外は、実施例1と同様の方法で、厚み50μmの二軸延伸樹脂フィルムを得た。得られたフィルムの層数は64層であった。
実施例3
樹脂(A)として酸成分にテレフタル酸100モル%を、グリコール成分にエチレングリコール100モル%とを使用して重合させたポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.65、エチレンテレフタレート環状三量体の含有量0.75重量%)とした以外は、実施例1と同様の方法で、厚み方向50μmの二軸延伸樹脂フィルムを得た。得られたフィルムの層数は64層であった。
比較例1
精密濾過を行わない以外は実施例1と同様の方法で、厚み50μmの二軸延伸樹脂フィルムを得た。得られたフィルムの層数は64層であった。
比較例2
本比較例では、樹脂(A)のみを使用した。実施例1で使用した樹脂(A)を285℃で溶融し、そのままT−ダイから押出し、25℃の冷却ロールにて冷却することにより、未延伸シートを得た。このシートを90℃に表面を加熱したロール上で、縦方向に3.3倍延伸し、そのまま予熱温度110℃、延伸温度120℃のテンターで横方向に3.5倍延伸した後、そのままテンター内で220℃4秒間熱処理することにより、厚み50μmの二軸延伸樹脂フィルムを得た。
比較例3
精密濾過を行わない以外は実施例3と同様の方法で、厚み50μmの二軸延伸樹脂フィルムを得た。得られたフィルムの層数は64層であった。
実施例1、2および3、ならびに比較例1、2および3で得られた二軸延伸樹脂フィルムの評価結果を、表1〜7に示した。
Figure 2008137304


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本発明のフィルムは、偏光板のクロスニコル法による検査に使用する離型ポリエステルフィルムに好適である。また、本発明のフィルムは、各種食品包装用、一般工業用、光学用、電気材料用、成形加工用などの各種用途に利用することができる。

Claims (5)

  1. ポリエチレンテレフタレート系樹脂(A)を含む層とシンジオタクチックポリスチレン系樹脂(B)を含む層が交互に合わせて5層以上積層されており、0°、45°、90°、135°の各方向における複屈折率ΔPが0.05以下であり、かつ、10mm四方の二軸延伸フィルムを2枚のカバーガラス間に挟んで290℃で溶融プレスし、急冷したのち、100倍の位相差顕微鏡で20視野観察し、イメージアナライザーでカウントした2.4mm当たりの5μm以上の粗大粒子数が30個以下であることを特徴とする二軸延伸樹脂フィルム。
  2. さらに、0°、45°、90°および135°の各方向における複屈折率ΔPの値のうち、その最大値と最小値の差が0.01以下である請求項1記載の二軸延伸樹脂フィルム。
  3. ヘイズが2%以下である請求項1または2記載の二軸延伸樹脂フィルム。
  4. 150℃で30分間熱処理した際の縦方向および横方向の熱収縮率が3%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の二軸延伸樹脂フィルム。
  5. ポリエチレンテレフタレート系樹脂(A)とシンジオタクチックポリスチレン系樹脂(B)の質量比が、10/90〜90/10である請求項1〜4のいずれかに記載の二軸延伸樹脂フィルム。
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