以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態による製造方法によって製造されたインクジェットヘッドの斜視図である。図2は図1のII−II線に沿った断面図であり、この図には単に直線的な切断では表せない断面も示されている。図3(a)はインクジェットヘッド1に含まれるリザーバユニット90のフィルター部70の上面図であり、図3(b)はフィルター部70の下面図である。図4は、リザーバユニット90のインク分配部80を形成する各プレートの下面図である。図5は、インクジェットヘッド1に含まれるヘッド本体60を示す平面図である。
インクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)1は、主走査方向に沿って細長な形状であり、下側から順に、ヘッド本体60及びリザーバユニット90を有する。ヘッド本体60は、流路ユニット4及び流路ユニット4の上面に貼り付けられた4つのアクチュエータユニット21(図5参照)を含む。リザーバユニット90は、上側から順に、樹脂製のフィルター部70及び金属製のインク分配部80を含む。フィルター部70とインク分配部80とはネジ91によって互いに固定されている。
フィルター部70は、樹脂で一体成形により作製されたものであって、その上面70f(図1参照)の長手方向一端に筒状突起71を有する。筒状突起71の内部には導入口71aが形成されており、筒状突起71にチューブ等が取り付けられ、インクタンク等のインク供給源からのインクが導入口71aからフィルター部70内に導入される。
フィルター部70内には、図2に示すように、導入口71aから流出口72に至るインク流路が形成されている。導入口71aから導入されたインクは先ず第1の穴74に流入する。第1の穴74は平面視において図3(b)に示すダンパー膜74aと同形状であり、第1の穴74の下側はダンパー膜74aにより塞がれている。ダンパー膜74aは、インクの振動に応じて変位できるよう、インク分配部80の上面、即ち後述するリザーバベースプレート81の上面と僅かな隙間を介しており、導入口71aからインクが導入されることにより生じる振動を吸収する役割を担っている。第1の穴74に流入したインクは、フィルター75aを通って第2の穴75に流れ込み、さらに上側にダンパー膜76aが形成された空間76を通った後下降し、フィルター部70の下面70eに開口するよう形成された流出口72からインク分配部80へと流出される。
図2に示すように、フィルター部70の流出口72を取り囲む位置に凹部が形成されており、当該凹部内に弾性材料からなるOリング77が配置されている。Oリング77は弾性変形状態にあり、流出口72と流入口84との間からのインク漏れを効果的に防止する役割を担っている。
また、図1に示すように、フィルター部70には、流出口72の近傍であって流出口72を挟んで副走査方向の両側に、ネジ91用の孔(図示せず)が厚み方向に貫通するように形成されている。
インク分配部(部分ユニット)80は、図4に示すように、いずれも金属製のリザーバベースプレート81、リザーバプレート82、及びアンダープレート83を有し、これら3枚の金属プレート81,82,83を積層し且つ互いに接着剤で接着固定することにより形成されている。プレート81〜83はいずれも主走査方向(図1参照)に細長な略矩形状の平面を有すると共に、同じ幅を有している。リザーバベースプレート81は他の2枚のプレート82,83より若干長く図1に示すように長手方向両端が突出しているが、これはリザーバベースプレート81においてヘッド1を記録装置側のホルダ(図示せず)に固定するためである。
インク分配部80にも、流入口84から連通口(連通孔)88に至るインク流路(第2液体流路)が形成されている。リザーバベースプレート81の中央には、フィルター部70の流出口72と連通する流入口84が形成されており、流出口72から流出したインクが流入する。副走査方向(図1参照)に関して流入口84の両側には孔85aが対称に形成されている。2つの孔85aは、フィルター部70を厚み方向に貫通するネジ91用の孔と対応して配置されている。流入口84及び孔85aは共にリザーバベースプレート81の厚み方向に貫通している。
リザーバプレート82には、流入口84から流入したインクをアンダープレート83に形成された各連通口88へと分配するように、主インク室86及び主インク室86から分岐した分岐流路87に対応する穴が厚み方向に貫通するように形成されている。主インク室86は、リザーバプレート82の長手方向に延在しており、流入口84からのインクを一時的に貯留するリザーバとなっている。流入口84から主インク室86の中央に流入したインクは、そこからリザーバプレート82の長手方向に流れて各分岐流路87に流れ込む。リザーバプレート82においてリザーバベースプレート81の孔85aに対応する位置には、それぞれリザーバプレート82を厚み方向に貫通する孔85bが形成されている。
孔85bは、対応する孔85a及びネジ91用の孔に比べて径が小さく、且つ、内面に雌ネジが切られている。ネジ91がフィルター部70に形成された貫通孔及び孔85aに挿入され、孔85bに螺合されることにより、フィルター部70とインク分配部80とが互いに固定される。
アンダープレート83の下面にはハーフエッチングによって凹凸が形成されており、図4においてハッチングされた部分が凹部83aとなっている。凹部83aは流路ユニット4の上面におけるアクチュエータユニット21の固定領域(図5参照)を含むサイズ及び形状となるよう形成されている。そして、凹部83aを画定するように、アクチュエータユニット21に対応する部分を避けるようにアンダープレート83の長手方向に関して千鳥状に配置された2つの凸部83b、及び、アンダープレート83の長手方向両端に配置された2つの凸部83cが形成されている。
各凸部83bには、略円形の連通口88が2つずつ貫通するように形成されている。そして、各凸部83cには、同様の連通口88が3つずつ貫通するように形成されている。凸部83cに形成された隣接する2つの連通口88及び凸部83bに形成された隣接する2つの連通口88がそれぞれ一組となってアンダープレート83の長手方向に関して千鳥状に配置されている。これら計10個の連通口88はアンダープレート83の中心に関して略点対称に配置されている。各連通口88は流路ユニット4の各開口3a(図5参照)に連通するものであり、リザーバプレート82の主インク室86から各分岐流路87に流れ込んだインクは、各分岐流路87の先端から連通口88に流入し、開口3aを介して流路ユニット4に供給される。
後に詳述するように、アンダープレート83は、凹部83a内に4つのアクチュエータユニット21が含まれるように且つ凸部83b,83cが流路ユニット4の上面に当接するように、流路ユニット4に固定されている。このとき凹部83aの底面と流路ユニット4の上面との間に空間が形成され、流路ユニット4の上面における当該空間に対応する部分にアクチュエータユニット21が貼り付けられている(図2及び図5参照)。各アクチュエータユニット21とアンダープレート83の底面83dとの間には、わずかの間隙が確保されている。
次に、図1〜図5に加えて図6及び図7を参照しつつ、ヘッド本体60について説明する。図6は、図5における一点鎖線で囲まれた部分の拡大図であり、ここでは図面を分かりやすくするために、アクチュエータユニット21の下方にあって破線で描くべき圧力室10、アパーチャ12、及びノズル8の開口を実線で描いている。図7は、図6のVII−VII線に沿った断面図である。
流路ユニット4は、図1に示すように、主走査方向に細長な略直方体形状を有し、その平面視における大きさ及び形状はインク分配部80のリザーバベースプレート81を除く2枚のプレート82,83と略同じである。
流路ユニット4の上面には、図5に示すように、アクチュエータユニット21を避けるように、主走査方向に沿って2列に、各列5個、計10個の開口3aが形成されている。一方、4つのアクチュエータユニット21は、台形の平面形状を有し、開口3aと逆のパターンで、主走査方向に沿って2列の千鳥状に配列されている。台形の互いに平行な上底辺及び下底辺が、主走査方向に沿って配置され、1つのアクチュエータユニット21を挟んで隣接するアクチュエータユニット21と一直線状に並んで配列されている。後述の、圧力室10の列やノズル8の列についても、主走査方向に関して同様の形態でそれぞれ配列されている。なお、各アクチュエータユニット21は、副走査方向(主走査方向と直交方向)に互いに離隔し、副走査方向に見たときに隣接するアクチュエータユニット21の斜辺同士が重なっている。
流路ユニット4内には、各開口3aに連通するマニホールド流路5が形成されており、各マニホールド流路5は主走査方向に延在する複数の副マニホールド流路5aに分岐している。図5に示すように、アクチュエータユニット21と対向する部分に、4つの副マニホールド流路5aが延在している。各副マニホールド流路5aには、アパーチャ(絞り)12及び圧力室10を介してノズル8に至る個別インク流路7(図7参照)が多数接続されている。個別インク流路7は、各ノズル8に対して形成されたものであって、副マニホールド流路5aから上方へ向かい、アパーチャ12にて水平に延在し、それからさらに上方に向かい、圧力室10において再び水平に延在し、それからしばらくアパーチャ12から離れる方向に斜め下方に向かってから垂直下方にノズル8へと向かう。このように、流路ユニット4には、開口3aからノズル8に至るインク流路(第1液体流路)が形成されている。
リザーバユニット90に貯留されているインクは、各開口3aを介して、マニホールド流路5、副マニホールド流路5aへと供給される。さらに、インクは、副マニホールド流路5aから各個別インク流路7に分配され、ノズル8から吐出されることになる。
流路ユニット4の下面には、各アクチュエータユニット21の接着領域に対応する領域に、微小径を有する多数のノズル8がマトリクス状に配列されている(図6及び図7参照)。流路ユニット4の上面におけるアクチュエータユニット21の接着領域には、各ノズル8に対応する圧力室10がマトリクス状に配列されている。圧力室10の平面形状は略菱形である。図6に示すように、圧力室10は流路ユニット4の長手方向に沿って等間隔に配置されて列をなし、1つのアクチュエータユニット21の接着領域において計16列となる圧力室10の列が互いに平行に配列されている。ノズル8も圧力室10と同様に配置されている。
アクチュエータユニット21の上面には、圧力室10より一回り小さい個別電極35がそれぞれ各圧力室10に対応する位置に形成されている(図6参照)。各アクチュエータユニット21にはフレキシブルプリント配線基板(図示せず)が接続されており、当該フレキシブルプリント配線基板を介して伝達された駆動信号に基づいて、各個別電極35とアクチュエータユニット21の領域全体に形成された共通電極(図示せず)との間の電圧が制御される。このような制御によってアクチュエータユニット21における個別電極35が形成された部分を変形させることで、圧力室10内のインクに吐出エネルギーが付与され、圧力室10内のインクがノズル8から吐出される。
流路ユニット4は、図7に示すように、キャビティプレート22、ベースプレート23、アパーチャプレート24、サプライプレート25、3枚のマニホールドプレート26〜28、カバープレート29、及びノズルプレート30の計9枚のSUS430等からなる金属プレートを積層し且つ互いに接着固定することにより形成されている。
キャビティプレート22には、圧力室10に対応する略菱形の孔が多数形成されている。ベースプレート23には、各圧力室10とアパーチャ12との連絡孔及び各圧力室10からノズル8への連絡孔が形成されている。アパーチャプレート24には、アパーチャ12に対応する孔と各圧力室10からノズル8への連絡孔とが形成されている。サプライプレート25には、各アパーチャ12と副マニホールド流路5aとの連絡孔及び各圧力室10からノズル8への連絡孔が形成されている。マニホールドプレート26〜28には、副マニホールド流路5aに対応する貫通孔と、各圧力室10からノズル8への連絡孔とが形成されている。カバープレート29には、各圧力室10からノズル8への連絡孔が形成されている。ノズルプレート30には多数のノズル8が形成されている。そして、プレート22〜30は、図7に示す個別インク流路7が形成されるよう位置合わせして積層され、接着剤により互いに固定されている。
図7から明らかなように、各プレートの積層方向において圧力室10とアパーチャ12とは異なるレベルに設けられている。これにより、図6に示すようにアクチュエータユニット21に対向した流路ユニット4内において、1つの圧力室10と連通したアパーチャ12を、当該圧力室10に隣接する別の圧力室10と平面視で同じ位置に配置することが可能となっている。この結果、圧力室10同士が密着してより高密度に配列されるため、比較的小さな占有面積のインクジェットヘッド1により高解像度の画像印刷が実現される。
続いて、インクジェットヘッド1の製造方法について、以下に説明する。図8は、インクジェットヘッドの製造工程のフロー図である。
インクジェットヘッド1を製造するには、流路ユニット4、アクチュエータユニット21及びリザーバユニット90に含まれるインク分配部80などの部品を別々に作成し、それから各部品を組み付ける。まず、流路ユニット4の製造工程から説明する。流路ユニット4を作製するには、図8に示すように、ステップ1(S1)において、これを構成する各プレート22〜30に、パターニングされたフォトレジストをマスクとしたエッチングを施して、図7に示すような孔を各プレート22〜30に形成する。
次に、ステップ2(S2)において、ノズルプレート30を除く各プレート22〜29の下面(ノズルプレート30側の面)に熱硬化性接着剤を塗布する。そして、ステップ3(S3)において、9枚のプレート22〜30を、マニホールド流路5、副マニホールド流路5a及び個別インク流路7が形成されるように積層する。
次に、ステップ4(S4)において、ステップ3で形成された9枚のプレート22〜30からなる流路ユニット前躯体を、熱硬化性接着剤の硬化温度以上の温度に加熱しつつ加圧する。これによって、熱硬化性接着剤が硬化して9枚のプレート22〜30が互いに接合され、図7に示すような流路ユニット4の作製が完了する。
次に、ステップ5(S5)において、上述のように作製した流路ユニット4の上面に、周知の方法により作製された4つのアクチュエータユニット21を、流路ユニット4の長手方向に関して千鳥状に配置し、熱硬化性接着剤を介して積層してヘッド本体前躯体とする。このとき、各アクチュエータユニット21は、多数の圧力室10に跨るように、且つ、個別電極35が流路ユニット4の圧力室10と一対一で対向するように、位置合わせされる。そして、ステップ6(S6)において、ヘッド本体前躯体を、熱硬化性接着剤の硬化温度以上の温度に加熱しつつ加圧する。こうして、熱硬化性接着剤が硬化して流路ユニット4上にアクチュエータユニット21が固定されたヘッド本体60が完成する。そして、各アクチュエータユニット21の表面にフレキシブルプリント配線基板(図示せず)の一端を接続し、他端近傍をヘッドの側面から延出させておく。このとき、フレキシブルプリント配線基板の配線端部とアクチュエータユニット21の個別電極35とがそれぞれハンダ接合される。
次に、リザーバユニット90に含まれるインク分配部80を作製するには、まず、ステップ7において、インク分配部80を構成する3枚のプレート81〜83に、パターニングされたフォトレジストをマスクとしてエッチングを施して、図4に示すような孔及び凹部83aを形成する。
次に、ステップ8(S8)において、アンダープレート83を除く2枚のプレート81,82の下面に熱硬化性接着剤を塗布する。このとき、リザーバベースプレート81の両端部であってリザーバプレート82と対向しない領域には、熱硬化性接着剤を塗布せず、それ以外の下面部分に熱硬化性接着剤を塗布する。そして、ステップ9(S9)において、3枚のプレート81〜83を、内部にインク流路(第2液体流路)が形成されるように積層してインク分配部前躯体とする。この段階で、リザーバベースプレート81は、他の2枚のプレート82,83から両端がほぼ均等に延出して積層されている。
次に、ステップ10(S10)において、インク分配部前躯体を、熱硬化性接着剤の硬化温度以上の温度に加熱しつつ加圧する。こうして、熱硬化性接着剤が硬化して3枚のプレート81〜83からなるインク分配部80が完成する(部分ユニット形成工程)。
次に、インク分配部80の凸部に接着剤を付着させる方法について、以下に説明する。図9は、インク分配部80とヘッド本体60とを接合する接合装置120の概略構成図である。図10は、シート102上に接着層を形成するときの状況図である。図11は、インク分配部80を保持する保持装置の概略斜視図である。図12は、保持装置によってインク分配部80を保持するときの状況図である。図13は、インク分配部80の凸部に接着剤を付着させるときの状況図である。図14は、ヘッド本体60とインク分配部80とを積層するときの状況図である。
インク分配部80に接着剤を付着させるには、まず、接合装置120に含まれる接着層形成装置121で接着層105を形成する。接合装置120は、図9に示すように、図中右端に、接着層形成装置121が配置されており、接着層形成装置121から図中左方に向かって、作製されたインク分配部80が載置される支持台140、作製されたヘッド本体60が載置される支持台130、及び、加圧加熱装置122が順に配置されて構成されている。また、接合装置120は、すべての台105,130,140と対向することができるように移動可能に支持された保持装置150を有している。また、支持台140は固定台であり、支持台130は加圧加熱装置122内に侵入可能にスライダ109に移動可能に支持されている。加圧加熱装置122は、加圧シリンダ110と、加圧シリンダ110のシリンダロッド111の先端に固定された上側ヒータ112と、下側ヒータ113とを有している。上側ヒータ112は、支持台130に載置された後述の積層体を直接加熱するものであり、下側ヒータ113は、支持台130及びその上の積層体を周囲近傍から加熱するものである。この構成で、上側ヒータ112と対向する位置に支持台130が配置されたときに、各ヒータ112,113が加熱され、上側ヒータ112が支持台130に向かって下降し支持台130とで支持台130上の積層体を加圧する。
接着層形成装置121は、図9及び図10に示すように、平坦な台101と、台101上に載置されたフィルム状のシート(例えば、ルミラーシート:接着剤保持体)102と、シート102上に接着剤を供給する接着剤供給部103と、スキージ104と、台101を図中左右方向に水平移動させるスライダ107と、スキージ104を上下方向に移動させる昇降装置108とを含んでいる。シート102は、図示しないシート送り出し装置及びシート巻き取り装置によって台101上を水平に移動可能になっている。
インク分配部80の凸部83b,83cに接着剤を付着させる手順を説明する。まず、ステップ11(S11)において、図10(a)に示すように、台101上に載置されたシート102上に、接着剤供給部103から接着剤を供給する。続いて、スキージ104の先端とシート102との離隔距離が所定距離となるように、昇降装置108によってスキージ104を下方(図中矢印の方向)に移動させる。
次に、ステップ12(S12)において、スライダ107によって台101を、シート巻き取り装置(不図示)によってシート102を、図10(a)中左方に同時に移動させ、図10(b)に示すように、シート102とスキージ104との離隔距離が厚みとなる接着層105をシート102上に形成する(接着層形成工程)。そして、スキージ104を上方(図中矢印の方向)に移動させて退避させる。こうして、接着層形成装置121によって接着層105が形成される。
次に、ステップ10で形成されたインク分配部80を保持する保持装置150について説明する。図11に示すように、保持装置150は、インク分配部80を保持する保持部151と、保持部151をY方向(図11中矢印A方向)に往復移動可能に支持するYステージ152と、保持部151及びYステージ152をX方向に(図11中矢印B方向)に往復移動可能に支持するXステージ153と、保持部151、Yステージ152及びXステージ153をZ方向(図11中矢印C方向)に往復移動可能に支持するZステージ154と、Zステージ154をZ方向に移動可能にガイドするガイド部材155とを含んでいる。保持装置150のガイド部材155は、X方向と平行な方向に延在する(図9中左右方向に延在する)ガイドレール156によって、X方向に往復移動可能に支持されている。
Xステージ153上には、Xステージ153をX方向に往復移動可能に支持するガイド部材157が配置されている。Xステージ153の一端には、Xステージ153をX方向に往復移動させる移動モータ158が設置されている。ガイド部材157上には、Zステージ154とガイド部材157とに固定された接続部159が設けられている。つまり、ガイド部材157とZステージ154とが接続部159を介して接続されている。
Yステージ152上には、Yステージ152をY方向に往復移動可能に支持するガイド部材161が配置されている。ガイド部材161はXステージ153の下面に固定されている。Yステージ152の下面には、Yステージ152と保持部151とに固定された接続部160が設けられている。Yステージ152の一端には、Yステージ152をY方向に往復移動させる移動モータ162が設置されている。両移動モータ158,162は、モータコントローラ163にケーブル163a,163bによって接続されており、モータコントローラ163からの駆動指令によって各移動モータ158,162がそれぞれ独立又は同時に駆動し、Yステージ152及びXステージ153をY及びX方向にそれぞれ移動させる。
なお、Zステージ154は、図示しないシリンダに接続されており、シリンダコントローラ(図示せず)からの指令によってシリンダが伸縮し、Zステージ154がZ方向に移動する。また、ガイド部材155には、図示しない移動モータが設置されており、図示しないモータコントローラからの駆動指令によって移動モータが駆動し、ガイド部材155をX方向に移動させる。
保持部151は、X方向に長手方向を有する略直方体形状を有している。保持部151の長手方向(X方向)の両端には、シリンダ171がそれぞれ設けられている。これら2つのシリンダ171は、図12(a)に示すように、シリンダロッド171aが保持部151を厚み方向に貫通して配置されている。シリンダロッド171aの先端には、図12(a)中紙面手前又は奥側に延在した板状の支持片171bが固定されている。また、シリンダロッド171aは、図12(b)に示すように、保持部151でインク分配部80を保持するときに、リザーバベースプレート81の両端より外側に位置するような位置に配置されている。なお、シリンダ171は、そのシリンダロッド171aが伸縮及び回転可能な機能を有している。
保持部151には、シリンダ171と接続部160との間であってリザーバベースプレート81の両端部と対向する位置に4つの吸着部材164が設けられている。これら吸着部材164は、弾性材料から形成されており、保持部151を貫通して配置されている。また、吸着部材164は、図12(a)に示すように、中空形状を有しており、保持部151の下面から飛び出した下端が外側に広がっている。吸着部材164の上端には、図示しない吸引ポンプに繋がったチューブ165と接続されており、この吸引ポンプを駆動することで、外部の空気が吸着部材164に吸引される。つまり、吸着部材164は、吸引ポンプの駆動により吸着力が生じる。このように、保持装置150には、吸着部材164、チューブ165及び吸引ポンプで構成された吸着機構を有している。
次に、ステップ13(S13)において、図12(a)に示すように、凸部83b,83cが支持台140の上面に接触するように配置されたインク分配部80のリザーバベースプレート81と対向する位置に保持装置150の保持部151を配置させる。
次に、ステップ14(S14)において、図12(b)に示すように、吸着部材164の下端がリザーバベースプレート81の両端部と接触するまで保持装置150のZステージ154を下方に移動させた後、吸引ポンプを駆動して吸着部材164によりリザーバベースプレート81を吸着する。なお、2つのシリンダ171のシリンダロッド171aは、図12(b)に示すように、支持台140に接触しない程度にまで伸ばされている。次に、ステップ15(S15)において、図12(c)に示すように、支持片171bとリザーバベースプレート81の両端部とが対向するように、2つのシリンダ171のシリンダロッド171aを約90°回転させる。そして、ステップ16(S16)において、リザーバベースプレート81が支持片171bと保持部151との間で狭持されるように、シリンダロッド171aを縮め、保持装置150でインク分配部80を保持する(保持工程)。
本実施形態では、インク分配部80が、弾性材料からなる吸着部材164によって吸着され、支持片171bによって機械的に狭持される。このインク分配部80は、先に吸着保持されることから、これに続く支持片171bによる狭持時に、狭持動作による振動やショックで位置ずれすることがない。また、インク分配部80は、後述の接着剤転写時に、比較的粘度の高い接着剤に対して、接着剤の面と平行に相対移動される。このとき、相対移動方向に接着剤から反力を受けることになるが、吸着部材164が摩擦部材として働き、インク分配部80の面方向の横滑りが防止される。
次に、ステップ17(S17)において、保持装置150のZステージ154を上方に移動させた後、図13(a)に示すように、インク分配部80と接着層105とが対向するように、ガイド部材155をガイドレール156に沿ってX方向に移動させる。
次に、ステップ18(S18)において、図13(b)に示すように、インク分配部80の凹部83aの底面83dと接着層105の表面105aとの間に隙間106を確保しつつ、凸部83b,83cの先端と接着層105とが接触するように、Zステージ154を下方に移動させる(接触工程)。
次に、ステップ19(S19)において、凸部83b,83cの先端と接着層105とが接触した状態で、接着層105に対してインク分配部80を接着層105の表面105aに沿って相対的に移動するように、Xステージ153をX方向に所定距離だけ往復移動、すなわち、揺動させる揺動工程(移動工程)が行われる。そして、ステップ20(S20)において、凸部83b,83cの先端と接着層105とが接触した状態で、Yステージ152をY方向に所定距離だけ揺動(往復移動)させる揺動工程(移動工程)が行われる。このように、凸部83b,83cの先端を接着層105に接触させるだけではなく、インク分配部80をX及びY方向の2方向に揺動させることで、凹部83aの底面83dに接着剤を付着させることなく、凸部83b,83cの先端部に所定量の接着剤を確実に付着させることができる。そして、ステップ21(S21)において、図13(c)に示すように、保持装置150のZステージ154を上方に移動させて、接着層105とインク分配部80の凸部83b,83cとを離隔する。このとき、インク分配部80は、その両端を支持片171bによって狭持されているので、接着剤の粘度やインク分配部80のサイズに係わらず、保持装置150との位置関係を保って接着層105から分離される。
なお、本実施形態におけるステップ19,20の揺動工程においては、インク分配部80をX及びY方向の2方向に揺動させているが、接着層105に対してインク分配部80を接着層105の表面105aに沿った円周方向に移動させていてもよい。この場合、凸部83b,83cと接着層105とがはじめに接触した点が、始点及び終点となる原点となり、凸部83b,83cは、Yステージ152がY方向にXステージ153がX方向に交互に微動することで、円周方向に沿って移動する。なお、Yステージ152及びXステージ153は互いに独立して構成されているので、XYステージ152,153の両方を同時に動かすことも可能である。このような凸部83b,83cの円周方向の移動によって、凸部83b,83c上に接着剤を満遍なく付着させることができる。
次に、ステップ22(S22)において、図14(a)に示すように、ヘッド本体60の下面(ノズルプレート30の下面)が支持台130の上面と接触するように支持台130上に載置されたヘッド本体60の上面(流路ユニット4の上面)と、インク分配部80の凸部83b,83cとが対向するように、ガイド部材155をガイドレール156に沿ってX方向に移動させる。このとき、対応するヘッド本体60の開口3aとインク分配部80の連通口88とがそれぞれ対向する位置にインク分配部80が配置される。
次に、ステップ23(S23)において、図14(b)に示すように、インク分配部80の凹部83a内にアクチュエータユニット21が配置されるように且つ凸部83b,83cが流路ユニット4の上面と当接するように、保持装置150のZステージ154を下方に移動させる。こうして、流路ユニット4内のインク流路(第1液体流路)とインク分配部80内のインク流路(第2液体流路)とが連通した積層体となる。
次に、ステップ24(S24)において、2つのシリンダ171のシリンダロッド171aを伸ばして支持片171bと保持部151とによるリザーバベースプレート81の狭持を解除する。このとき、吸引ポンプの駆動を停止して吸着部材164によるリザーバベースプレート81の吸着も解除する。そして、ステップ25(S25)において、シリンダロッド171aを約90°回転させた後、図14(c)に示すように、Zステージ154を上方に移動させる。
次に、ステップ26(S26)において、ヘッド本体60とインク分配部80との積層体が載置された支持台130を、加圧加熱装置122内に侵入させるように、図9中左方に移動させ、各ヒータ112,113を加熱するとともに、上側ヒータ112を下降させて支持台130とで積層体を加圧する。このとき、各ヒータは、ヘッド本体60とインク分配部80との積層体が、熱硬化性接着剤の硬化温度以上の温度に加熱されるように加熱する。こうして、ヘッド本体60とインク分配部80との間の接着剤が硬化してヘッド本体60とインク分配部80との積層体が完成する。この後、完成した積層体を自然冷却し加圧加熱装置122から取り出す。
次に、ステップ27(S27)において、公知の射出成形法によってフィルター部70の樹脂部分を形成後、フィルタ75a及びダンパー膜74aを所定箇所に貼り付け、フィルター部70を作製する。なお、フィルター部70を作製するステップ27は独立して行われるため、ステップ26以前に行われていてもよいし、ステップ1〜ステップ26と並行して行われていてもよい。
次に、ステップ28(S28)において、流出口72と流入口84とが連通するように位置合わせしつつフィルター部70をインク分配部80上に配置する。そして、フィルター部70とインク分配部80とをネジ91で固定する。こうして、ヘッド本体60とリザーバユニット90とからなるインクジェットヘッド1が完成する。
以上のように、本実施形態におけるインクジェットヘッド1の製造方法によると、ステップ18の接触工程後のステップ19,20の揺動工程において、凹部83aの底面83dと接着層105の表面105aとの間には、隙間106を設けているので、凹部83aの底面83dに接着剤を付着させることなく、凸部83b,83cにのみ所定量の接着剤を付着させることができる。そのため、凹部83aの底面83dに接着剤が付着していない状態でヘッド本体60の流路ユニット4の上面にインク分配部80を固定することができる。したがって、ヘッド本体60とインク分配部80との固定時に、凹部の底面に付着した接着剤がアクチュエータユニット21に付着してアクチュエータユニット21の動作が阻害されるのがなくなる。
また、ステップ18の接触工程前であるステップ14〜16における保持工程において、リザーバベースプレート81が支持片171bと保持部151との間で狭持され、インク分配部80が保持装置150に保持されているので、ステップ19,20の揺動工程により、凸部83b,83cに接着剤を付着させた後、ステップ21で凸部83b,83cを接着層105から離隔させたときに、インク分配部80が保持装置150からの脱落を防止できる。つまり、インク分配部80のリザーバベースプレート81が支持片171bによって下方から支持されている状態と同じになるので、凸部83b,83cと接着層105との接着力がインク分配部80に生じても保持装置150からインク分配部80の脱落を防止できる。
また、保持装置150が吸着部材164を有し、吸着部材164とチューブ165を介して繋がった吸引ポンプを駆動させることで、吸着部材164に吸着力を生じさせることできる。そのため、ステップ14において、吸着部材164によりリザーバベースプレート81を吸着することができ、ステップ19,20の揺動工程において、インク分配部80の移動方向とは逆方向にインク分配部80が移動しにくくなり、凸部83b,83cに所定量の接着剤を付着させることができる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態においては、凹凸部材が、リザーバユニット90のアンダープレート83であり、その凹凸部材と固定される他の部材が流路ユニット4のキャビティプレート22であったが、流路ユニット4を構成する複数のプレートのいずれかが凹部及び凸部を有する凹凸部材から構成されているときにおいても、同様な方法でその凹凸部材の凹部の底面に接着剤を付着させることなく凸部に接着剤を付着させることができる。この凹凸部材がマニホールドプレートであり凹部が副マニホールド流路(共通インク室)を画定する場合、凹部の底面に接着剤が付着していないので、凹部の底面に付着した接着剤が剥がれて副マニホールド流路や個別インク流路内に混入したり、接着剤が副マニホールド流路の出口に付着して出口の径が小さくなったりして、インクの流れが悪くなるという問題が抑制される。
また、揺動工程においては、インク分配部80を一方向だけに移動してもよい。また、凸部83b,83cと接着層105とを接触している状態から離隔させるときに、インク分配部80が保持部151から脱落しなければ、単にリザーバベースプレート81の両端側面を挟むようにして把持していてもよい。また、吸着部材164、チューブ165及び吸引ポンプは設けられていなくてもよい。また、上述した実施形態は、ノズルからインクを吐出するインクジェットヘッドの製造方法に本発明を適用した一例であるが、本発明を適用可能な対象はこのようなインクジェットヘッドの製造方法に限られない。例えば、導電ペーストを噴射して基板上に微細な配線パターンを形成したり、あるいは、有機発光体を基板に噴射して高精細ディスプレイを形成したり、さらには、光学樹脂を基板に噴射して光導波路等の微小電子デバイスを形成するための、液体吐出ヘッドの製造方法に適用することができる。