JP2008135258A - 分散型無機エレクトロルミネッセンスパネル - Google Patents

分散型無機エレクトロルミネッセンスパネル Download PDF

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Abstract

【課題】輝度が高い分散型無機エレクトロルミネッセンスパネルを提供する。
【解決手段】少なくとも一方が透明な一対の電極1,1の間に、誘電体層4を交互に挟み込んだ発光体層3を少なくとも3層有することを特徴とする分散型無機エレクトロルミネッセンスパネルによれば、発光体層3が2層以下の場合に比べて著しく輝度が向上する。
【選択図】図3

Description

本発明は、無機発光体を樹脂中に分散してなる発光層を有する分散型無機エレクトロルミネッセンスパネルに関する。
無機エレクトロルミネッセンス(無機EL)パネルは、構造および動作方法の違いにより4種類に分類することができる。薄膜型と有機分散型の2種類の構造があり、それぞれに発光させる際の動作モードの違いにより直流動作と交流動作に分類される。そのなかで安定した動作が確認されているのは、共に交流で動作する、薄膜型ELと分散型ELの2種類である。前者は真空プロセスにより薄膜を積層させた単純な構造であり、安定した発光を実現しており、これまでにディスプレイ用途として研究されている。後者は印刷技術による簡便なプロセスにより作製可能であり、バックパネル用途として開発されたが1−3)、その性能は実用上十分であるとは言えず、まだ改善すべき課題が残されていると考えられる。無機ELが基本的に真性ELであり、発光のメカニズムが高電界によって加速された電子による電界発光であることは両者に共通している。これに対し、LEDや有機ELは電流注入型であり、無機ELとは区別される。無機ELは、発光面がフレキシブルな作製可能であるという、従来のディスプレイにはない特徴をもっており、次世代ディスプレイの一つとして期待されている。
従来の分散型無機ELのパネル構造の一例を図1に示す。透明電極1を形成したガラス基板またはフィルム基板2の上に、発光体層3、誘電体層4、背面電極5の順に積層させた構造が一般的である。発光体層3は、10〜30μm程度の粒径の発光体微粒子を樹脂中に分散させた構造になっており、そこで使用される発光体は、硫化亜鉛(ZnS)を母体材料とするものが市販されている。誘電体層4は、その静電容量を大きくすることにより、発光体に実効的にかかる電圧を高くする効果が期待でき、比誘電率が数千と高い値を示す強誘電体微粉末であるチタン酸バリウム(BaTiO)が良く用いられる。背面電極5は、一般的なカーボンペースト、または銀ペーストによる厚膜電極が用いられる。
上記の構成による無機ELパネルは、交流電源6で透明電極1と背面電極5との間に交流電圧を印加することにより発光する。一般的に、印加電圧が上昇するに従い、また周波数が上昇するに従い輝度が上昇するが、発光寿命は短くなる。
特許文献1には、透明基材の上に透明電極を形成し、さらにその上に、発光体層、誘電体層、背面電極の順に積層させた構造の無機ELにおいて、透明電極が2層以上の異なる透明導電層を有し、該透明導電層の少なくとも1層が酸化インジウムスズ(ITO)膜であり、かつ該ITO膜よりも発光体層側にある少なくとも1層の透明導電層が、フッ素、アンチモン、アルミニウム、ガリウム及びホウ素から選択される少なくとも1つの元素によりそれぞれドープされていてもよい、酸化スズ及び酸化亜鉛から選択される少なくとも1種の透明導電膜、例えばフッ素ドープ酸化スズ(FTO)膜であることを特徴とする無機ELが記載されている。
非特許文献1には、透明導電膜を形成した2枚のPETフィルムの間に、3層の誘電体層と2層の発光体層を交互に積層させた構造の両面発光無機ELパネル構造が示されており、以下の(1)、(2)のような特長がある、と説明されている。
(1)発光体層をパネルの両側に配置することにより、1周期の電圧印加による両面発光が可能になり、高効率、長寿命化が期待できる。
(2)発光体層を2層にすることにより、それぞれの層に違うパターンや違う色の発光体層を形成することができる。
特開2006−32100号公報 佐藤利文ら、「両面発光無機ELパネルの試作」、第115回秋季研究発表会講演予稿集、社団法人日本印刷学会、平成17年11月10日、p.69−72
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、複数の発光体層を有し、輝度が高い分散型無機エレクトロルミネッセンスパネルを提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明は、分散型無機エレクトロルミネッセンスパネルであって、少なくとも一方が透明な一対の電極の間に、誘電体層を交互に挟み込んだ発光体層を少なくとも3層有することを特徴とする分散型無機エレクトロルミネッセンスパネルを提供する。
本発明によれば、少なくとも3層の発光体層を有することにより、パネルの耐電圧が向上し、輝度が高い分散型無機エレクトロルミネッセンスパネルを提供することができる。
以下、最良の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図3(a)に示す発光体2層構造の両面発光パネルは、片面に透明電極1を形成した2枚の透明基材2の間に、発光体層3、誘電体層4、発光体層3の順に積層させた構造である。すなわち、一対の透明電極1の間に発光体層3を2層有する。
本発明の両面発光パネルは、一対の透明電極の間に、誘電体層を交互に挟み込んだ発光体層を少なくとも3層有することを特徴とする構造である。発光体層を少なくとも3層有するため、耐電圧性を高めた構造となり、分散型無機ELパネルの高輝度化が期待できる。また、パネルの両面が透明電極を形成した透明基材によって形成されているため、発光した光を遮ることなく両面への発光が期待できる。すなわちパネルの表と裏の両面が発光するため、全方位への光放出が期待できる構造であり、照明用途に適していると考えられる。本発明の両面発光パネルの具体例として、図3(b)には、片面に透明電極1を形成した2枚の透明基材2の間に、発光体層3の間に誘電体層4を交互に挟み込み、発光体層3を3層有する構造を示している。本発明において発光体層3の層数は3層に限られるものではなく、4層以上としても良い。
透明電極1は、例えば透明な酸化物半導体からなる透明導電膜であり、スパッタ法、CVD法、スプレー熱分解堆積法(SPD法)などの薄膜形成方法により形成することができる。透明な酸化物半導体の具体例としては、酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、酸化スズ(TO)、フッ素ドープ酸化亜鉛(FZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、ホウ素ドープ酸化亜鉛(BZO)、酸化亜鉛(ZO)などが挙げられる。透明導電膜の厚さは特に限定されないが、例えば厚さ5〜500nmである。
透明電極1は、透明基材2の上に櫛型あるいはグリッド型などの金属および/または合金の細線を配置して、その上に透明導電膜を製膜したものであっても良く、この場合は通電性を改善することができる。金属や合金の細線としては、銅、銀、アルミニウム、ニッケルなどが好ましく用いられる。金属及び/又は合金の細線を配置すると光の透過率が減少するので、細線の間隔を狭くしすぎたり、細線の幅や高さを大きく取りすぎたりすることなく、90%以上の透過率を確保することが望ましい。
透明電極1が形成される透明基材2としては、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリイミド(PI)、トリアセチルセルロース(TAC)等の可撓性ポリマーが挙げられる。透明基材2の厚さは10〜250μm、特に50〜200μmが好ましい。
発光体層3は、無機発光体粒子を分散含有して形成された層である。本発明の発光体層3に用いられる無機発光体としては、無機ELパネルに用いられている半導体の微粒子であれば任意のものが用いられ、必要な発光波長領域により適宜選択される。例えば、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CaS、MgS、SrS、GaP、GaAs、およびそれらの混晶などが挙げられるが、ZnS、CdS、CaSなどを好ましく用いることができる。
発光体層3で無機発光体粒子を分散するために用いられる分散剤としては、例えば、シアノエチルセルロース系樹脂のような比較的誘電率の高いポリマーや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ化ビニリデンなどの樹脂を用いることができる。また、これらの樹脂にBaTiOやSrTiOなどの高誘電率の無機誘電体粒子を適度に混合して誘電率を調整することもできる。
誘電体層4は、無機誘電体を含有する層である。無機誘電体は、誘電率及び絶縁性が高く、かつ高い誘電破壊電圧を有する材料であれば任意のものが用いられる。無機誘電体としては、各種の金属酸化物及び窒化物を使用でき、例えば、SiO、TiO、BaTiO、SrTiO、PbTiO、KNbO、PbNbO、Ta、BaTa、LiTaO、Y、Al、ZrO、AlONなどを用いることができる。これらは単独で、または複数種を組み合わせて用いることができる。
誘電体層4は、無機誘電体粒子を分散含有して形成された層であることが好ましい。誘電体層4で無機誘電体粒子を分散するために用いられる分散剤としては、例えば、シアノエチルセルロース系樹脂のような比較的誘電率の高いポリマーや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ化ビニリデンなどの樹脂を用いることができる。
発光体層3及び誘電体層4は、スクリーン印刷法、スライドコート法、スピンコート法、ディップコート法、バーコート法、スプレー塗布法などを用いて塗布して形成されることが好ましい。例えば、スクリーン印刷法では、発光体や誘電体の微粒子を高誘電率のポリマー溶液に分散した分散液を、スクリーンメッシュを通して塗布することにより層が形成される。スクリーンメッシュの厚さ、開口率、塗布回数を適宜選択することにより膜厚を制御でき、さらにスクリーンメッシュの大きさを変えることで大面積化が容易である。特に、透明電極1が形成された透明基材2がフレキシブルなフィルム基板である場合には、Roll−to−Rollによる連続プロセスの適用が容易に実現できる。
なお、本発明は、片面発光パネルに適用することも可能である。従来構造の片面発光パネルは、図1に示すように、透明電極1を形成した透明基材2の上に、発光体層3、誘電体層4、背面電極5の順に積層させた構造である。片面発光パネルにおいて、発光体層3及び誘電体層4を交互に2層積層すると、図9(a)に示す構造となる。
本発明の片面発光パネルは、透明電極と背面電極との間に、誘電体層を交互に挟み込んだ発光体層を少なくとも3層有することを特徴とする構造である。発光体層を少なくとも3層有するため、耐電圧性を高めた構造となり、分散型無機ELパネルの高輝度化が期待できる。本形態例の片面発光パネルの具体例として、図9(b)には、透明基材2上に形成した透明電極1と背面電極5との間に、誘電体層4を交互に挟み込んだ発光体層3を3層有する構造を示している。本発明において発光体層3の層数は3層に限られるものではなく、4層以上としても良い。
透明電極1、透明基材2、発光体層3、及び誘電体層4の構成は、上述した両面発光パネルと同様とすることができる。特に、発光体層3及び誘電体層4は、それぞれ発光体及び誘電体のペーストを、スクリーン印刷法、スライドコート法、スピンコート法、ディップコート法、バーコート法、スプレー塗布法などを用いて塗布して形成されることが好ましい。例えば、スクリーン印刷法では、発光体や誘電体の微粒子を高誘電率のポリマー溶液に分散した分散液を、スクリーンメッシュを通して塗布することにより層が形成される。スクリーンメッシュの厚さ、開口率、塗布回数を適宜選択することにより膜厚を制御でき、さらにスクリーンメッシュの大きさを変えることで大面積化が容易である。特に、透明電極1が形成された透明基材2がフレキシブルなフィルム基板である場合には、Roll−to−Rollによる連続プロセスの適用が容易に実現できる。
背面電極5は、不透明で良く、導電性を有する任意の材料を用いて作製することができる。例えば、金、銀、銅、アルミニウム、ベリリウム、コバルト、クロム、鉄、ゲルマニウム、イリジウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、モリブデン、ナトリウム、ニッケル、白金、珪素、錫、タンタル、タングステン、亜鉛等の金属、及びグラファイトなどの導電性炭素材料などの中から、適宜選択できる。中でも、金、銀、銅、アルミニウム、ベリリウム、グラファイト等が好ましい。背面電極5は、シートの貼り付けや、導電性ペーストの印刷・塗布などによって形成することができる。とりわけ、導電性ペーストを用いた場合には、Roll−to−Rollによる連続プロセスの適用が容易に実現でき、好ましい。
以下、本研究において行った実験を具体的に説明する。
1.片面発光分散型無機ELパネルの作製
本研究で作製した片面発光分散型無機ELパネルの構造を図1に示す。透明導電性フィルム基板上に発光体層、誘電体層、背面電極の順に積層させた構造である。本研究における片面発光無機ELパネルは、シート抵抗50Ω程度のITOフィルム基板上に、スクリーン印刷法により発光体層、誘電体層、背面電極の順に各機能ペーストを形成する工程を繰り返し行い作製した。発光体層に使用したZnS系の発光体は、図2に示すように500nmにEL発光スペクトルのピークを持つ粒子径が20〜30μmの粉体(GG45:OSRAM SYLVANIA社製)であり、誘電体層には粒子径が1μmの BaTiO粉末を使用した。それぞれ高誘電ポリマー(シアノレジンCR−M:信越化学工業社製)の中に分散してペースト化したものを使用した。シアノレジンは水酸基を有する有機化合物にアクリロニトリルを反応させることによって合成され、極性の大きなシアノエチル基を分子内に有する構造を持ち、これが電界中におかれると大きな双極子モーメントを形成し、高い誘電率を示すものである。本研究で使用したCR−Mは、20℃、1kHzの条件下で比誘電率17を示すものである。なお、発光体、誘電体に対するCR−Mの混合重量比は3:1であり、CR−Mはあらかじめシクロヘキサノンと3:7の重量比で混合したものを使用した。また、本研究における混合、攪拌、脱法は、すべて攪拌脱法ミキサー(AR−250:THINKY)によって行った。また、背面電極には銀ペースト(FEA−685:藤倉化成社製)を用いた。上記の構成によるパネルに交流電圧を印加することにより発光する。一般的に、印加電圧が上昇するに従い、また周波数が上昇するに従い輝度が上昇するが、発光寿命は短くなる。
2.両面発光分散型無機ELパネルの作製
本研究で作製した両面発光分散型無機ELパネルの構造を図3に示す。これらの両面発光パネルは、誘電体層を中心に両側に発光体層を配置し、さらにその両側をITOフィルム基板で挟み込む構造になっている。このような構造にすることによって、発光した光を遮ることなく両面への発光が期待できる。また、フレキシブルなフィルム基板を使用した印刷法であるため、Roll−to−Rollによる連続プロセスの適用が容易に実現できる。また、本構造は分散型ELパネルの高輝度化について検討するための耐電圧性を高めた構造でもある。さらに表と裏の両面が発光するパネルであるため、全方位への光放出が期待できる構造であり、照明用途に適していると考えられる。
実際に作製した両面発光無機ELパネルの断面を図4に示す。なお、図4においてITO−PET filmはITO−PETフィルム基板を、Phosphor particlesは発光体粒子を、Dielectric layerは誘電体層を表す。両面発光無機ELパネルは、片面発光無機ELパネルと同様のスクリーン印刷法により、ITOフィルム基板上に発光体層、誘電体層、発光体層の順に各機能ペーストを形成する工程を繰り返し行い、次にITOフィルム基板上を重ね合わせた後、85℃に加熱した圧延ローラ(ロール径Φ45mm,回転速度3rpm)による加熱・圧着によって作製した。両面発光無機ELパネルの厚さは約125μmであり、ITOフィルム基板に挟まれた機能膜の厚さは約65μmである。また、作製したELパネルの評価にはEL特性測定システムSX−1111(岩通計測社製)を使用した。
3.結果と考察
次に、本発明において発光体層を3層以上としたことによる効果について考察する。両面発光無機ELパネルにおいてそれぞれの発光体層3は、その間に挟みこまれた誘電体層4の存在によって区別される。
無機ELパネルの特性評価は測定環境や動作条件によって変化することが知られている。これまでに日本学術振興会光電相互変換第125委員会で「エレクトロルミネッセンス(EL)特性の基準評価法」を推奨し、提案している(塩谷繁雄,伊吹順章:応用物理 57,935(1988)参照)。ここでは印加電圧波形は正弦波または両極性のパルスを標準としており、本研究においては両極性のパルスである方形波を入力波形として検討した。
本研究で作製した両面発光分散型無機ELパネルに1kHzの方形波を入力したときの電流及び電圧の時間変化を図5に示す。図5中、右向き矢印で示した線は電流の時間変化を、左向き矢印で示した線は電圧の時間変化を表す。作製した分散型無機ELパネルは、発光体層と誘電体層が共にコンデンサとしての機能を持ち、方形波の信号を入力すると、電圧の極性が反転するときに瞬間的に充放電電流が流れる。この充放電電流が発光に寄与し、流れる電流量は誘電体層が持つ静電容量に依存する。その後、誘電体層の物性が変化しない状態で充電が飽和した後は電流が流れることはなく、発光に影響を与えない。ここで、極性の反転と共に流れる電流の最大値は、印加された電界強度に依存すると考えられ、したがって立ち上がり電圧の傾きが大きく影響することになる。また、流れる電流量はコンデンサの静電容量に依存するが、静電容量の増加を期待して誘電体層の膜厚を薄くすると耐電圧が低下するのでパネル設計には注意が必要である。
分散型無機ELパネルは、厚膜を積層した単純な構造であり、誘電体が直列接続した回路として考えることができる。図6は作製した分散型無機ELの等価回路である。発光体層、誘電体層ともに電気的には誘電体の性質を持っているため、ZnS系発光体によるコンデンサをCZnS、BaTiO誘電体によるコンデンサをCと表記している。両面発光パネルの基本構造が発光体2層構造(a)であり、さらに発光体層と誘電対層を追加したものが発光体3層構造(b)である。共に発光体層と発光体層の間には必ず誘電体層を配置する構造である。
このような構成によるパネルの1kHzにおける輝度の電圧依存性を測定したものが図7である。同じ電圧における輝度を比較すると、従来構造の片面発光パネル(図7の「片面」を参照)、発光体2層構造の両面発光パネル(図7の「両面」を参照)、発光体3層構造の両面発光パネル(図7の「両面(発光体3層)」を参照)の順に高い値を示している。これらは、発光体層、誘電体層が増えることにより、耐電圧性が増加する結果である。なお、本研究における片面発光パネルの機能層(ここで「機能層」とは、一対の電極の間に配置された、発光体層及び誘電体層からなる積層体をいう。)の厚さは約45μm、発光体3層構造の両面発光パネルでは機能層の厚さは約160μmであり、発光体2層両面発光パネルは図4に示したとおりである。また、発光体2層構造の両面発光パネルでは、300Vの印加電圧で600cd/mの輝度を示し、発光体3層構造の両面発光パネルでは、500Vの印加電圧で1200cd/mの輝度を示す。したがって、分散型無機ELパネルの高輝度化を実現するためには、高電圧に耐えられる耐電圧性と発光に寄与する誘電体層の静電容量とのバランスが重要になる。
図8は、分散型無機ELパネルの高輝度化を検討する試みとして、発光体3層構造の両面発光パネルに4kHzの方形波を印加したときの輝度及び電流−電圧特性の電圧依存性である。400Vの印加電圧に対して2500cd/mという輝度を示している。分散型無機ELパネルの高輝度化のためには、発光体そのものの輝度を向上することに加え、パネル構造が重要であると考えられる。本研究は、使用する材料は変えずにパネル構造の面から検討した結果である。図8に示すように電圧の上昇とともに電流が増加していくが、その増加率は一様ではなく、複数の傾きに分類できる。これは耐電圧の異なる複数のコンデンサ成分の存在が考えられる。コンデンサは交流に対して抵抗値を持つことが知られており、これが容量リアクタンスXc[Ω]であり、次式の通りである。
Xc=V/I=1/2πfC
ここで、Vはパネルに印加した電圧、Iはパネルに流れた電流である。この式から、容量リアクタンスXcは周波数fと静電容量Cに反比例することがわかる。周波数が高くなることによって抵抗値が低下し、その結果、電流が増加すると考えられる。無機ELパネルにおいては、周波数が高くなると輝度が上昇することは良く知られており、容量リアクタンスが関係する電流の増加が輝度の上昇と密接なかかわりを持っていると考えられる。
図8(b)の電流の傾きから求めたXc値は、(1)の領域で9.17×10Ω、(2)の領域で6.57×10Ω、(4)の領域で5.93×10Ωであり、Xc値の低い領域において、輝度の上昇率が増加した。(3)の領域は印加電圧の変化にかかわらず電流が一定の値を示す電流飽和領域であり、(4)の領域よりさらに高い電圧が印加されてパネルを構成する機能層全体が絶縁破壊に至る過程で出現する変化と考えられる。実際に測定したこれらの結果は、電圧の上昇と共に静電容量が増加し、電圧の増加率よりも電荷の増加に起因する電流の増加率のほうが上回ることによる容量リアクタンスの減少が起こり、その結果輝度が上昇することを意味している。したがって、静電容量の制御が輝度を上昇させることに深くかかわり、また重要であると言える。ただし、電界強度の上昇にともなう電流の増加も同時に現れるため考慮する必要がある。
また、図8において電流−電圧特性に発現する変局点は、輝度−電圧特性では存在せず、なだらかな変化を示す。これは、作製したELパネルが図4に示したように粒子径のばらつきのある発光体粒子によって形成されていることと、各機能層の界面の平坦性が確保できていないため、そこに存在する面内で不均一な電界強度、つまり不平等電界が発現することに起因すると考えられる。同様の理由により、薄膜ELで観察されている変局点と発光開始電圧Vthとの顕著な相関は本研究では観察されていない。
本研究では分散型無機ELパネルに関し、両面が発光する新規パネル構造を提案し、その構造を基に静電容量を中心とする電気的な特性について検討してきたが、材料研究の進展とともに、さらなる高輝度化の実現が期待される。また、図9に示すように、片面が発光するパネル構造においても、発光体層を少なくとも3層とすることにより、パネルの耐電圧と輝度の向上を期待することができる。
4.まとめ
本研究で作製した両面発光分散型無機ELパネルは、パネル両面への発光が可能な構造が大きな特徴である。層構造が対称な配置となっているため、交流動作の環境下で理想的に電荷の供給が可能な構造と考えられる。また、容量リアクタンスが発光に寄与する電流に関係していると考えられるため、高輝度パネルを実現するためには電流供給の基になる誘電体層の設計が重要である。本研究で作製した両面発光無機ELパネルは、1kHzで1200cd/m、4kHzで2500cd/mの輝度を示している。さらに、分散型無機ELパネルの性能を向上させるためには、詳細な電気的特性評価が不可欠であることは言うまでもなく、研究の進展により、さらなる高輝度化が期待できると考えられる。
本発明の分散型無機ELパネルは、高い輝度が期待でき、照明装置や各種表示装置における光源への応用が考えられる。印刷プロセスにより、大面積を低コストで作製できる可能性を持っており、また、Roll−to−Rollプロセスによる連続作製も可能である。
従来の分散型無機ELのパネル構造の一例を示す模式的断面図である。 本研究で用いた発光体のEL発光スペクトルを示すグラフである。 (a)は発光体2層構造の両面発光パネルを示す模式的断面図であり、(b)は発光体3層構造の両面発光パネルを示す模式的断面図である。 本研究で作製した発光体2層構造の両面発光パネルのSEMによる断面写真である。 本研究で作製した両面発光パネルに1kHzの方形波を入力したときの電流及び電圧の時間変化を示すグラフである。 (a)は発光体2層構造の両面発光パネルの等価回路を示し、(b)は発光体3層構造の両面発光パネルの等価回路を示す。 本研究で作製した片面発光パネル及び両面発光パネルの1kHzにおける輝度の電圧依存性を測定したグラフである。 本研究で作製した発光体3層構造の両面発光パネルに4kHzの方形波を印加したときの(a)輝度の電圧依存性、及び(b)電流−電圧特性を示すグラフである。 (a)は発光体2層構造の片面発光パネルを示す模式的断面図であり、(b)は発光体3層構造の片面発光パネルを示す模式的断面図である。
符号の説明
1…透明電極、2…透明基材、3…発光体層、4…誘電体層、5…背面電極、6…交流電源。

Claims (3)

  1. 分散型無機エレクトロルミネッセンスパネルであって、
    少なくとも一方が透明な一対の電極の間に、誘電体層を交互に挟み込んだ発光体層を少なくとも3層有することを特徴とする分散型無機エレクトロルミネッセンスパネル。
  2. 前記一対の電極の両方が、透明基材上に形成された透明電極層である請求項1に記載の分散型無機エレクトロルミネッセンスパネル。
  3. 前記一対の電極のうち一方の電極が、透明基材上に形成された透明電極層であり、他方の電極が、不透明な背面電極である請求項1に記載の分散型無機エレクトロルミネッセンスパネル。
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