JP2008129153A - 反射鏡の製造方法 - Google Patents

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奈緒子 岡田
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Abstract

【課題】可視光領域での反射率が高く、耐湿性に優れ、表面の抵抗値が高い反射鏡の製造方法を提供する。
【解決手段】基材11と、基材11上に形成された銀膜13と、銀膜13上に形成された、金属酸化物または硬質炭素からなる保護膜14と、保護膜14上に形成された酸化ケイ素膜15とを有する反射鏡10の製造方法であって、酸化ケイ素膜15を、酸化ケイ素前駆体を含む塗工液を保護膜14上に塗工して形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、反射鏡の製造方法に関する。
液晶ディスプレイのバックライトモジュールに用いられる反射鏡としては、下記反射鏡が提案されている。
フィルム基材上に、金属酸化物からなる下地膜、銀膜、金属酸化物からなる酸化防止膜が順に積層された反射鏡(特許文献1)。
該反射鏡は、可視光領域での反射率が高く、耐湿性に優れるとされている。
最近、携帯電話の薄型化および携帯電話用の液晶ディスプレイの大画面化が進んでおり、液晶ディスプレイの周辺に液晶ディスプレイ用電子部品(LED用のチップコンデンサ等。)を設置するためのスペースが狭くなってきている。そのため、電子部品とバックライトモジュールの反射鏡との間に隙間がほとんどない。
そして、該反射鏡の表面に形成されている酸化防止膜は、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化クロム等の導電性を有する金属酸化物からなる膜である。そのため、万が一、反射鏡の表面と電子部品とが接触したとしても、ショート等が起こらないような対策が求められている。
特開2005−250229号公報
本発明は、可視光領域での反射率が高く、耐湿性に優れ、表面の抵抗値が高い反射鏡の製造方法を提供する。
本発明の反射鏡の製造方法は、基材と、該基材上に形成された銀膜と、該銀膜上に形成された、金属酸化物または硬質炭素からなる保護膜と、該保護膜上に形成された酸化ケイ素膜とを有する反射鏡の製造方法であって、前記酸化ケイ素膜を、酸化ケイ素前駆体を含む塗工液を保護膜上に塗工して形成することを特徴とする。
前記酸化ケイ素前駆体は、シラザンまたはアルコキシシランであることが好ましい。
前記基材と前記銀膜との間に、金属酸化物からなる下地膜をさらに有することが好ましい。
前記保護膜は、金属酸化物膜であることが好ましく、酸化亜鉛膜、または、基材側から順に、酸化亜鉛膜、波長550nmにおける屈折率が1.35〜1.8である低屈折率膜、波長550nmにおける屈折率が1.85〜2.8である高屈折率膜を積層した多層膜であることが好ましい。
前記低屈折率膜は酸化ケイ素膜であり、前記高屈折率膜は酸化ニオブ膜であることが好ましい。
本発明の反射鏡の製造方法によれば、可視光領域での反射率が高く、耐湿性に優れ、表面の抵抗値が高い反射鏡を製造できる。
<反射鏡>
図1は、本発明の製造方法によって得られる反射鏡の一例を示す断面図である。反射鏡10は、基材11と、該基材11上に設けられた下地膜12と、該下地膜12上に設けられた銀膜13と、該銀膜13上に設けられた保護膜14と、該保護膜14上に設けられた酸化ケイ素膜15とを有する。
(基材)
基材11の材料としては、たとえば、ガラス;ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート等のプラスチック等が挙げられる。
基材の形状は、平面、拡散面、凹面、凸面、台形等、各種の反射鏡の基材として求められる形状であればよい。
基材11の厚さは、平面形状である場合、20〜500μmが好ましい。
基材11としては、軽量化できる点から、プラスチックのフィルムが特に好ましい。
基材11は、フィルムである場合、下地膜12、銀膜13等との密着性を向上させるために、プラズマ処理等が施されていてもよい。
(下地膜)
下地膜12は、金属酸化物からなる膜である。下地膜12を設けることにより、該膜に接する基材11と銀膜13との密着性を高めることができ、その結果、反射鏡10の耐湿性をさらに向上できる。
金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化ニオブ等が挙げられ、密着性の点から、酸化チタンが好ましく、TiO(1.5≦x<2)で表される、酸素欠損を有する酸化チタンが特に好ましい。
下地膜12は、単層であってもよく、複数の層から構成されていてもよい。
下地膜12の膜厚は、1〜50nmが好ましく、3〜15nmが特に好ましい。下地膜12の膜厚が1nm未満では、基材11と銀膜13との密着性を向上させる効果が現れにくい。下地膜12の膜厚が50nmを超えると、下地膜12表面の凹凸が大きくなり、反射率が低くなったり、内部応力が高くなるため密着性が低下したりするおそれがある。
本発明における膜厚は、物理膜厚である。物理膜厚は、エリプソメーター、触針式段差計等により測定できる。
(銀膜)
銀膜13は、銀または銀合金からなる膜であり、光を反射させる反射膜としての役割を果たす。反射膜を銀膜13とすることにより、反射鏡10の可視光領域での反射率を高め、入射角による反射率の依存性を低減できる。可視光領域とは、400〜700nmの波長領域を意味する。入射角とは、膜面に対して垂直な線に対する角度を意味する。
銀合金としては、銀膜13の耐久性が向上する点から、銀と、金、パラジウム、スズ、ガリウム、インジウム、銅、チタンおよびビスマスからなる群から選ばれる1種以上の他の金属とからなる合金が好ましい。他の金属としては、高温耐湿性、反射率の点から、金が特に好ましい。
銀膜13が銀合金からなる膜である場合、銀は、銀膜13における銀と他の金属との合計(100原子%)中、90〜99.8原子%が好ましい。また、他の金属は、耐久性の点から0.2〜10原子%が好ましい。
銀膜13の膜厚は、60〜300nmが好ましく、80〜200nmが特に好ましい。銀膜13の膜厚が60nm未満では、膜厚が薄く、光を透過してしまうため、反射鏡10の可視光領域での反射率が低下するおそれがある。銀膜13の膜厚が300nmを超えると、銀膜13表面に凹凸が発生しやすくなり、これにより光の散乱が生じてしまい、可視光領域での反射率が低下するおそれがある。
(保護膜)
保護膜14は、金属酸化物または硬質炭素からなる膜であり、該膜に接する銀膜13の変質を抑え、その結果、反射鏡10の耐湿性を向上させる膜である。保護膜14としては、反射鏡10の耐湿性の向上の点から、金属酸化物からなる膜が好ましい。
金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化クロム等が挙げられ、反射鏡10の耐湿性の向上の点から、酸化亜鉛が好ましい。
酸化亜鉛は、ドーパントがドープされた酸化亜鉛であってもよい。ドーパントとしては、アルミニウム、チタン、ガリウム等が挙げられ、ガリウムが特に好ましい。ガリウムドープ酸化亜鉛膜は、可視光領域における光吸収が小さく、具体的には消衰係数が0.05以下であるため、反射率を低下させない点で好ましい。
ドーパントのドープ量は、ドーパントがドープされた酸化亜鉛膜(100質量%)中、酸化物換算で2〜10質量%が好ましい。
硬質炭素は、ダイヤモンドライクカーボン(以下、DLCと記す。)、i−カーボン、アモルファス炭素、水素化炭素とも呼ばれている。硬質炭素としては、公知のものを用いることができる。硬質炭素からなる膜は、表面平滑性に優れる、表面の摩擦係数が小さい、化学的に不活性である、濡れ性が低いため汚れにくい等、保護膜として優れた特性を有している。
硬質炭素の代表的なものとしては、DLCが挙げられる。DLCとは、グラファイト構造(SP軌道)とダイヤモンド構造(SP軌道)とが混在したアモルファスのものをいい、ラマン分光で1400〜1600cm−1の範囲にピークを有する硬質炭素である。
硬質炭素は、硬度が増加し、反射鏡の耐擦傷性および耐候性が向上することから、水素を含むことが好ましい。硬質炭素中に水素を含むことにより、耐候性が向上する理由は不明だが、硬質炭素中に多数存在する未結合の欠陥が水素の添加により安定化されるためと考えられる。ただし、基材11としてフィルムを用いる場合、保護膜14にはフィルムに追随する程度の柔らかさが求められるため、水素は、硬質炭素(100原子%)中20原子%以下が好ましい。
炭素は、硬質炭素(100原子%)中、50原子%以上が好ましく、80原子%以上がより好ましい。
硬質炭素中の炭素と水素との合計は、硬質炭素(100原子%)中95原子%以上が好ましい。硬質炭素中には、炭素、水素の他に、フッ素が含まれていてもよい。
保護膜14は、反射鏡10の可視光領域での反射率の点から、透明な膜であることが必要である。具体的には、可視光領域での消衰係数が、0.1以下が好ましく、0.08以下がより好ましく、0.05以下が特に好ましい。消衰係数とは、可視光領域における複素屈折率の虚数部を意味し、分光エリプソメーターにより測定できる。
保護膜14の膜厚は、2〜20nmが好ましく、4〜10nmが特に好ましい。保護膜14の膜厚が2nm未満であると、反射鏡10の耐湿性の向上効果が現れにくい。保護膜14の膜厚が20nmを超えると、反射鏡10の可視光領域での反射率が低くなるおそれがある。
保護膜14は、図2に示すように、基材11側から順に、酸化亜鉛膜21、波長550nmにおける屈折率が1.35〜1.8である低屈折率膜22、波長550nmにおける屈折率が1.85〜2.8である高屈折率膜23を積層した多層膜であってもよい。低屈折率膜22および高屈折率膜23を有することにより、反射鏡10の可視光領域での反射率がさらに向上する。
酸化亜鉛膜21は、ドーパントがドープした酸化亜鉛膜であってもよく、ガリウムドープ酸化亜鉛膜が好ましい。
低屈折率膜22としては、酸化ケイ素膜、酸化アルミニウム膜、酸窒化ケイ素膜、酸窒化アルミニウム膜等が挙げられ、膜厚に対する光学的特性の変動が少ない点から、酸化ケイ素膜が好ましい。また、低屈折率膜が酸化ケイ素膜の場合、酸化ケイ素膜中にアルミニウム等の他の金属が含まれていてもよい。
高屈折率膜23としては、酸化ニオブ膜、酸化チタン膜、酸化亜鉛膜、酸化スズ膜、酸化インジウム膜、酸化タンタル膜、酸化ジルコニウム膜等が挙げられ、屈折率が高く、光吸収が小さい点から、酸化ニオブ膜が好ましい。
酸化亜鉛膜21の膜厚は、2〜20nmが好ましく、4〜10nmが特に好ましい。
低屈折率膜22の膜厚は、20〜80nmが好ましく、30〜70nmが特に好ましい。
高屈折率膜23の膜厚は、30〜70nmが好ましく、40〜65nmが特に好ましい。
(酸化ケイ素膜)
酸化ケイ素膜15は、後述する湿式塗工法で形成される膜である。
酸化ケイ素膜15には、物性を損なわない範囲で、結着剤、微粒子、防汚剤、消泡剤、レベリング剤等が含まれていてもよい。
酸化ケイ素膜15の膜厚は、5〜50nmが好ましく、10〜30nmが特に好ましい。
反射鏡10のJIS Z 8701の規定による視感反射率は、90%以上が好ましく、95%以上がより好ましく、97%以上が特に好ましい。該視感反射率が該範囲にあれば、反射鏡10の可視光領域での反射率が高くなり、プロジェクションテレビ、液晶ディスプレイ等の画像表示装置に用いた場合、輝度を下げることなく画像を映し出すことができる。
反射鏡10の抵抗値は、酸化ケイ素膜15表面において、10Ω以上が好ましく、10Ω以上が特に好ましい。該抵抗値が該範囲にあれば、表面の抵抗値が高くなり、電子部品とが接触しても、ショートが起こらず、電子部品が破損しない。
<反射鏡の製造方法>
反射鏡10は、基材11上に、下地膜12、銀膜13、保護膜14を順次、スパッタリング法、化学気相成長法(CVD法)、イオンプレーティング法等により形成し、ついで、酸化ケイ素膜15を湿式塗工法で形成することにより得られる。
スパッタリング法は、CVD法およびイオンプレーティング法に比べて、大面積に膜を形成でき、かつ、透明な膜を形成しやすい点で好ましい。また、表面粗さを小さくできるため、反射率を高く保つことができる点で好ましい。
スパッタリング法としては、たとえば、交流(AC)、直流(DC)、高周波(RF)によるスパッタリング法が挙げられる。DCによるスパッタリング法には、パルスDCスパッタリング法を含む。ACスパッタリング法、パルスDCスパッタリング法は、異常放電を防止できる点で有効である。緻密な膜を形成できる点では、ACまたはDCによる反応性スパッタリング法が好ましい。
下地膜12は、スパッタリング法により製膜されることが好ましい。雰囲気としては、酸化性ガスを実質的に含まないアルゴンガス等の希ガス雰囲気が好ましい。
下地膜12用のターゲットとしては、酸化性ガスを実質的に含まない雰囲気下で金属酸化物膜を製膜できる点で、金属酸化物ターゲットが好ましい。金属酸化物ターゲットとしては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化アルミニウム、酸化クロムおよび酸化ニオブからなる群から選ばれる1種以上を含むターゲットが挙げられる。
DCスパッタリング法で下地膜12を形成する場合、高速で製膜できる点から、酸素欠損ターゲットが好ましい。酸素欠損ターゲットとしては、たとえば、TiO(1.5≦x<2.0)として表されるものが挙げられる。
銀膜13は、アルゴンガス雰囲気下で、銀または銀合金からなるターゲットを用いて、スパッタリング法により形成されることが好ましい。
銀合金ターゲットとしては、銀と他の金属との合計(100原子%)中、銀を90〜99.8原子%含み、他の金属を0.2〜10原子%含むターゲットが好ましい。
保護膜14は、スパッタリング法により形成されることが好ましい。雰囲気としては、酸化性ガスを実質的に含まないアルゴン等の希ガス雰囲気が好ましい。
保護膜14が酸化亜鉛膜の場合、酸化亜鉛ターゲットとしては、酸化ガリウムを5〜20質量%含む酸化亜鉛ターゲットが好ましい。
保護膜14が硬質炭素膜の場合、ターゲットとしては、炭素(グラファイト)を主成分とするターゲットを用いる。
酸化ケイ素膜15は、シラザンまたはアルコキシシランの酸化ケイ素前駆体を含む塗工液を保護膜14上に塗工して形成される。酸化ケイ素膜15を湿式塗工法で形成することにより、表面の抵抗値が高い反射鏡を生産性よく、低コストで製造できる。
酸化ケイ素膜15は、具体的には、酸化ケイ素前駆体を溶剤に溶解または分散させた塗工液を、湿式塗工法にて保護膜14上に塗工し、塗膜を乾燥させることにより形成される。
シラザンとしては、有機ポリシラザン、無機ポリシラザン等が挙げられる。
有機ポリシラザンとしては、特開2005−36089号公報または特開2004−77874号公報に記載の有機ポリシラザン化合物が挙げられる。
無機ポリシラザンは、下式(A)で表される構造単位Aを有する。無機ポリシラザン中において構造単位Aは、Am(ただし、mは正の整数である。)という形で存在する。mは、通常、10〜10000であり、典型的には10〜200である。
Figure 2008129153
無機ポリシラザンの末端基としては、シリル基、メチル基、アミノ基、メトキシ基、アルコキシ基、トリメチルシリル基等が挙げられる。該末端には、有機ポリシラザン等の他の成分と結合するために、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、カルボニル基等を有していてもよい。
無機ポリシラザン化合物は、たとえばペルヒドロポリシラザンが挙げられる。
アルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール;メチルエチルケトン等のケトン;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル;トルエン、キシレン、水等が挙げられる。溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
酸化ケイ素前駆体がシラザンの場合、溶剤としては、キシレン、ジブチルエーテルが特に好ましい。
酸化ケイ素前駆体がアルコキシシランの場合、溶剤としては、水とアルコールとの混合溶剤が特に好ましい。
塗工液には、必要に応じて、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸等の酸触媒;水酸化ナトリウム、アンモニア等のアルカリ触媒を含ませることが好ましい。
塗工液には、必要に応じて、結着剤、微粒子、防汚剤、消泡剤、レベリング剤等の添加剤を添加してもよい。
湿式塗工法としては、ディップコート法、コンマコート法、リップコート法、フローコート法、スプレー法、バーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、スリットコート法、マイクログラビアコート法、ダイコート法等が挙げられる。薄膜を均一にかつ高速で形成できる点から、スピンコート法、グラビアコート法、ロールコート法、マイクログラビアコート法、ダイコート法が好ましい。
塗膜の乾燥、硬化条件は、塗工液の固形分濃度、溶剤の種類、酸化ケイ素前駆体の種類等に応じて適宜設定すればよい。乾燥、硬化温度は、通常、80〜200℃であり、乾燥、硬化時間は、通常、5〜120分である。
以上説明した本発明の反射鏡の製造方法にあっては、酸化ケイ素膜を、酸化ケイ素前駆体を含む塗工液を保護膜上に塗工して形成するため、表面の抵抗値が高い反射鏡を生産性よく、低コストで製造できる。また、基材上に銀膜を形成し、銀膜上に金属酸化物または硬質炭素からなる保護膜を形成しているため、可視光領域での反射率が高く、耐湿性に優れる反射鏡を製造できる。
〔実施例1〕
真空槽内に、基材として、平坦なポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:100μm)を配置した。
ターゲットとして、TiOx 酸素欠損ターゲット(旭硝子セラミックス社製、商品名:TXO)、銀合金ターゲット(金1原子%、銀99原子%)、酸化ガリウムを5.7質量%含む酸化亜鉛ターゲット(旭硝子セラミックス社製、商品名:GZO)、炭素を含むシリコンターゲット(旭硝子セラミックス社製、商品名:SC)およびNbO酸素欠損ターゲット(旭硝子セラミックス社製、商品名:NBO)を、それぞれカソード上部の基材に対向するように設置した。真空槽内を2×10−3Paまで排気した。
真空槽内にアルゴンガス32sccmおよび酸素ガス8sccmを導入し、300Wの電力を投入し、RFプラズマ処理を行い、基材の乾式洗浄を行った。
ついで、スパッタガスとしてアルゴンガスを真空槽内へ導入した。TiOx 酸素欠損ターゲットを用いて、DCスパッタリング法により、0.15Paの圧力で、周波数100kHz、電力密度0.79W/cm、反転パルス幅1μ秒のパルススパッタを行い、基材上に酸化チタン膜(下地膜)を5nmの膜厚で形成した。酸化チタン膜の成分はターゲットと同等であった。
ついで、残存ガスを排気後、スパッタガスとしてアルゴンガスを真空槽内へ導入した。銀合金ターゲットを用いて、DCスパッタリング法により、0.15Paの圧力で、周波数100kHz、電力密度2.46W/cm、反転パルス幅1μ秒のパルススパッタを行い、酸化チタン膜上に金を含む銀合金膜を150nmの膜厚で形成した。銀合金膜の成分はターゲットと同等であった。
ついで、残存ガスを排気後、スパッタガスとしてアルゴンガスを真空槽内へ導入した。酸化亜鉛ターゲットを用いて、DCスパッタリング法により、0.15Paの圧力で、周波数100kHz、電力密度0.6W/cm、反転パルス幅1μ秒のパルススパッタを行い、銀合金膜上にガリウムドープ酸化亜鉛膜を5nmの膜厚で形成した。ガリウムドープ酸化亜鉛膜の成分はターゲットと同等であった。
ついで、残存ガスを排気後、スパッタガスとしてアルゴンガスおよび酸素ガスを真空槽内へ導入した。シリコンターゲットを用いて、DCスパッタリング法により、0.15Paの圧力で、周波数100kHz、電力密度2.46W/cm、反転パルス幅5μ秒のパルススパッタを行い、ガリウムドープ酸化亜鉛膜上に酸化ケイ素膜(低屈折率膜)を30nmの膜厚で形成した。
ついで、残存ガスを排気後、スパッタガスとしてアルゴンガスおよび酸素ガスを真空槽内へ導入した。NbOターゲットを用いて、DCスパッタリング法により、0.15Paの圧力で、周波数100kHz、電力密度2.46W/cm、反転パルス幅5μ秒のパルススパッタを行い、酸化ケイ素膜上に酸化ニオブ膜(高屈折率膜)を57nmの膜厚で形成した。
有機ポリシラザン(AZエレクトロニックマテリアルズ社製、商品名:DEN3、固形分濃度20質量%)に、キシレンを加えて希釈溶液(固形分濃度0.5質量%)を調製した。スピンコート装置(ミカサ社製、1H−360S)を用い、スピン回転速度3000rpm、塗工時間10秒の条件で、希釈溶液を酸化ニオブ膜上に塗工し、150℃で30分間乾燥、硬化させ、酸化ケイ素膜を15nmの膜厚で形成し、反射鏡を得た。
得られた反射鏡について、下記評価を行った。結果を表1〜3に示す。
(1)高温耐湿試験:
反射鏡を50mm×100mmに切り出し、サンプルを得た。温度60℃、相対湿度90%の雰囲気中にサンプルを100時間放置し、放置後の膜剥離および腐食の有無を確認した。
○:膜の剥離もなく、腐食も見られなかった。
×:膜に剥離および/または腐食が見られた。
(2)高温試験:
反射鏡を50mm×100mmに切り出し、サンプルを得た。温度85℃、相対湿度30%以下の雰囲気中にサンプルを100時間放置し、放置後の膜剥離および腐食の有無を確認した。
○:膜の剥離もなく、腐食も見られなかった。
×:膜に剥離および/または腐食が見られた。
(3)テープ剥離試験:
反射鏡の膜面をカッターを用いて切断し、ます目を100個形成した。接着テープ(ニチバン社製)を手の力で強く膜面に貼り付け、勢いよく剥がした後の膜面のます目の剥離の有無を確認した。全く剥離がない場合を100/100、全て剥離の場合を0/100とした。テープ剥離試験は、反射鏡の製造直後、高温耐湿試験後および高温試験後に行った。
(4)視感反射率:
カラーアナライザー(東京電色社製、TOPSCAN)を用い、膜面側の反射率を測定し、JIS Z 8701(1982年)に規定する三刺激値の色度Yを計算により求め、視感反射率とした。測定は、正反射光および拡散光の両方を測定するSCI方式で行った。視感反射率は、反射鏡の製造直後、高温耐湿試験後および高温試験後に測定した。
(5)抵抗値:
デジタルテスター(東京硝子器械社製、CDM−2000)を用い、膜面側に1cmの間隔で端子を当てて抵抗値を測定した。抵抗値は、反射鏡の製造直後、高温耐湿試験後および高温試験後に測定した。
〔実施例2〕
有機ポリシラザンの希釈溶液の代わりに、無機ポリシラザン(クラリアントジャパン社製、商品名:N310、固形分濃度20質量%)にキシレンを加えて調製した希釈溶液(固形分濃度3質量%)を用いた以外は、実施例1と同様にして反射鏡を得た。得られた反射鏡について、実施例1と同様の方法で評価した。結果を表1〜3に示す。
〔比較例1〕
最表層の酸化ケイ素膜を形成しない以外は、実施例1と同様にして反射鏡を得た。得られた反射鏡について、実施例1と同様の方法で評価した。結果を表1〜3に示す。
Figure 2008129153
Figure 2008129153
Figure 2008129153
本発明の反射鏡は、フラットパネルディスプレイ、プロジェクションテレビ、液晶ディスプレイ等の光源用の反射部材、特に、モバイル用パーソナルコンピュータ、携帯電話、PDA、携帯型のゲーム機器等の電子機器の液晶ディスプレイのバックライトモジュール用の反射鏡として有用である。
本発明の製造方法によって得られる反射鏡の一例を示す断面図である。 本発明の製造方法によって得られる反射鏡の他の例を示す断面図である。
符号の説明
10 反射鏡
11 基材
12 下地膜
13 銀膜
14 保護膜
15 酸化ケイ素膜
21 酸化亜鉛膜
22 低屈折率膜
23 高屈折率膜

Claims (7)

  1. 基材と、該基材上に形成された銀膜と、該銀膜上に形成された、金属酸化物または硬質炭素からなる保護膜と、該保護膜上に形成された酸化ケイ素膜とを有する反射鏡の製造方法であって、
    前記酸化ケイ素膜を、酸化ケイ素前駆体を含む塗工液を保護膜上に塗工して形成する、反射鏡の製造方法。
  2. 前記酸化ケイ素前駆体が、シラザンまたはアルコキシシランである、請求項1記載の反射鏡の製造方法。
  3. 前記基材と前記銀膜との間に、金属酸化物からなる下地膜をさらに有する、請求項1または2に記載の反射鏡の製造方法。
  4. 前記保護膜が、金属酸化物膜である、請求項1〜3のいずれかに記載の反射鏡の製造方法。
  5. 前記保護膜が、酸化亜鉛膜である、請求項1〜3のいずれかに記載の反射鏡の製造方法。
  6. 前記保護膜が、基材側から順に、酸化亜鉛膜、波長550nmにおける屈折率が1.35〜1.8である低屈折率膜、波長550nmにおける屈折率が1.85〜2.8である高屈折率膜を積層した多層膜である、請求項1〜3のいずれかに記載の反射鏡の製造方法。
  7. 前記低屈折率膜が酸化ケイ素膜であり、前記高屈折率膜が酸化ニオブ膜である、請求項6に記載の反射鏡の製造方法。
JP2006311456A 2006-11-17 2006-11-17 反射鏡の製造方法 Withdrawn JP2008129153A (ja)

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