JP3660760B2 - 透明導電性積層体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明樹脂基板を用いた耐久性、耐溶剤性、ガスバリアー性に優れた透明導電性積層体に関し、更に詳しくは、液晶ディスプレイ(LCD)、タッチパネル、光導電性感光体、面発光体、有機エレクトロルミネッセンス等の透明電極基板に好適な透明導電性積層体に関するものである。
【0002】
【従来技術】
近年、ペイジャー、携帯電話、電子手帳、携帯情報端末等の携帯して移動できる情報機器が普及し始め、ビジネス或いはライフスタイルの変革期を迎えようとしている。
【0003】
これらの情報機器の携帯性を向上するため、より一層の薄型化・軽量化、耐破損性等の取扱性の向上が求められている。従来、LCD、タッチパネル等の透明電極基板の透明基板としては、要求諸特性が厳しいために、重く、厚く、割れやすいという取扱性の良くないガラス基板が用いられて来たが、取扱性に対する要望が強く、これに代わる材料として、透明樹脂基板が提案されている。
【0004】
しかし、透明樹脂基板は、上記機器で要求される耐久性、耐溶剤性、ガスバリアー性等の基本特性がガラス基板より劣っている。例えば、透明樹脂基板を、LCD用の透明電極基板として利用しようとした場合、金属酸化物層を設けることにより、ガスバリアー性は付与される。しかし、透明電極パターニング後のレジスト剥離工程でのアルカリ水溶液にさらされることによる金属酸化物層の溶解の問題や、液晶配向膜形成過程での液晶配向膜の前駆材料をN−メチルピロリドン等の溶剤に溶解した塗工液をコーティングする際における上記溶剤による透明樹脂基板の白化、膨潤等の損傷の問題があった。
【0005】
これに対して、上記欠点を改善する目的で、耐溶剤性、ガスバリアー性を持つ材からなる層を透明樹脂基板上に積層した積層体の提案がなされている。例えば、特公平5−52002号公報や特公平5−52003号公報には、透明樹脂基板の高分子フィルム上にアンダーコート層のウレタン系樹脂層を介してポリビニルアルコール系樹脂層を設けてその接着性を改善し、さらにその上に金属酸化物層を設けてガスバリアー性を改善した透明積層フィルムに透明導電層を積層した透明積層導電フィルムが開示されている。しかし、これらは、耐アルカリ性、耐酸性が不十分である。
【0006】
また、特開平2−137922号公報や特開平5−309794号公報等には、透明樹脂基板の高分子フィルムにアンカーコート層、そしてガスバリア層としてエチレン−ビニルアルコール共重合体層、更に耐溶剤層として硬化性樹脂層を順次両面に積層した透明積層基板が記載されている。しかし、これらは、耐溶剤性は満足するものの、ガスバリアー材の特性から高湿度でのガスバリアー性の低下の問題がある。更に、6層ものコーティングはコストが割高となる。
【0007】
さらに、液晶表示素子の透明電極基板においては、上記耐溶剤性、ガスバリアー性に対する要求のほか、光学特性等に関し、下記のような要求または問題がある。基板の透明性が低い場合や複屈折がある場合、表示の着色・コントラストの低下等の問題が生じる。また、平面性が低い場合、液晶層のギャップが均一でなくなる上、液晶配向にもムラが生じたり、基板自体も光学的なムラが発生するために、表示色にムラが生じる。
【0008】
さらには、機械的、熱的影響や溶剤に晒された時に、容易にこれらの平面性、透明性、ガスバリアー性が悪化してしまうのでは、ペイジャー、携帯電話、電子手帳、ペン入力機器などの外的影響が大きく作用する用途への適応は困難となってしまい、軽薄、形状の自由、曲面表示という透明樹脂基板の特長を生かした用途での実用性が低下する。特に機械的影響に対して、この様な特性を維持するためには、特性発現のために積層された各層間の良好な密着性が要求される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、耐溶剤性、ガスバリアー性に優れ、しかも上記のような透明性、光学等方性、平面性に優れ、層間の密着性が良好な透明導電性積層体を提供することを目的とし、さらに、積層数を少なくし、製造コストを抑えることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、透明樹脂基板上に少なくともガスバリア性の金属酸化物層、透明導電層が設けられた透明導電性積層体において、(i)前記透明樹脂基板の片面上にエポキシ基を有するアルコキシシランとアミノ基及び/又はイミノ基を有するアルコキシシランとの混合物の(部分)加水分解物、その(部分)縮合物またはこれらの混合物とポリビニルアルコール系高分子との混合硬化層からなるケイ素含有層を介して金属酸化物層が設けられ、(ii)前記透明樹脂基板のもう一方の片面上に、前記ケイ素含有層、放射線硬化型樹脂層及び熱硬化型樹脂層から選ばれる保護層が設けられ、かつ(iii)透明導電層は最外層に位置するように設けられていることを特徴とする透明導電積層体である。
【0011】
上述の本発明は、以下のようにして為されたものである。すなわち、前記のケイ素含有層特にそのアルコキシシランにエポキシ基を有するアルコキシシランとアミノ基又は/及びイミノ基を有するアルコキシシランを併用したものでは、耐溶剤性が十分でこの上に金属酸化物層を積層した場合ガスバリア性が格段に改善され且つその層間の接着性も十分で、さらに透明樹脂基板との接着性も十分であることを見出し、なされたものである。本発明のケイ素含有層は耐溶剤性を有すると共に金属酸化物層と積層することにより優れたガスバリア性を示すので、少ない層数で目的の透明積層体を得ることができ、実用面から重要な生産性面、コスト面等でも大きな効果が得られる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の透明樹脂基板を構成する材料としては、透明性、耐熱性が良い透明樹脂であれば特に限定しない。本発明の透明導電性積層体をLCDの透明電極基板として用いる場合やLCDの透明電極基板と偏光板との間に設置されたタッチパネルの透明電極基板として用いる場合には、透明樹脂基板は、波長590nmにおける複屈折の屈折率の差△nと膜厚dとの積△n・dで表されるリターデーション値が30nm以下、かつ、遅相軸のバラツキが±30度以内の光学等方性を有するもの、さらに好ましくはリターデーションが20nm以下、かつ、遅相軸のバラツキが±15度以内の高度の光学等方性を有するものがよい。
【0013】
このような透明樹脂基板としては、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリルスルホン等のポリスルホン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、セルローストリアセテート等のアセテート系樹脂、各種熱硬化樹脂等のフィルム又はシートが好ましい。なかでも、上記透明性、及び光学異方性が少ないという光学特性の観点から、ポリカーボネート樹脂を主成分とする透明樹脂基板がより好ましい。
【0014】
本発明のケイ素含有層は、前記の通り、エポキシ基を有するアルコキシシランとアミノ基及び/又はイミノ基を有するアルコキシシランとの混合物の(部分)加水分解物、その(部分)縮合物またはこれらの混合物とポリビニルアルコール系高分子との混合硬化層である。
【0015】
このケイ素含有層は、前記のアルコキシシランの(部分)加水分解物、その部分縮合物またはこれらの混合物とポリビニルアルコール系高分子とをポリビニルアルコール系高分子可溶性溶剤を含有する溶剤に溶解しているコーティング用組成物を透明樹脂基板上に定法により塗工して得られる。
【0016】
この本発明のアルコキシシランとしては、前述の通り、エポキシ基を有するアルコキシシランとアミノ基及び/又はイミノ基を有するアルコキシシランアルコキシシランが適用される。
【0017】
これらのアルコキシシラングリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリプロポキシシラン、グリシドキシメチルトリブトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリプロポキシシラン、2−グリシドキシエチルトリブトキシシラン、N−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、N−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、N−グリシドキシエチルトリプロポキシシラン、N−グリシドキシエチルトリブトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、2−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、2−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、N−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、N−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリプロポキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリブトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリプロポキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリブトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリプロポキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリブトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、2−アミノエチルトリメトキシシラン、2−アミノエチルトリエトキシシラン、2−アミノエチルトリプロポキシシラン、2−アミノエチルトリブトキシシラン、N−アミノエチルトリメトキシシラン、N−アミノエチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリプロポキシシラン、3−アミノプロピルトリブトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリプロポキシシラン、2−アミノプロピルトリブトキシシラン、N−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−アミノプロピルトリプロポキシシラン、N−アミノプロピルトリブトキシシラン、N−アミノメチルアミノエチルトリメトキシシラン、N−アミノメチルアミノメチルトリプロポキシシラン、N−アミノメチル−2−アミノエチルトリメトキシシラン、N−アミノメチル−2−アミノエチルトリエトキシシラン、N−アミノメチル−2−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−アミノメチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−アミノメチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−アミノメチル−3−アミノプロピルトリプロポキシシラン、N−アミノメチル−2−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−アミノメチル−2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−アミノメチル−2−アミノプロピルトリプロポキシシラン、N−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−(2−アミノエチル)−N−アミノエチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−N−アミノエチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−N−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルルトリプロポキシシラン、N−(3−アミノエチル)−2−アミノエチルトリメトキシシラン、N−(3−アミノエチル)−2−アミノエチルトリエトキシシラン、N−(3−アミノエチル)−2−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ジエチレントリアミンプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらの化合物は、単独で又は2種以上を併せて用いることができる。
【0018】
得られる塗膜の耐溶剤性、透明樹脂基板との密着性がさらに改善されるという点で、アルコキシシランとしてエポキシ基を有するアルコキシシランとアミノ基及び/またはイミノ基を有するアルコキシシランとを併用する。ここで、特に好ましいエポキシ基を有するアルコキシシランは、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。また、特に好ましいアミノ基及び/またはイミノ基を有するアルコキシシランは3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。これらの化合物は単独で又は2種以上を併せて用いることができる。
【0019】
なお、本発明のアルコキシシランの(部分)加水分解物及びその(部分)縮合物は、上述のアルコキシシランの一部または全部が加水分解したもの、該加水分解物の一部又は全部が縮合反応した縮合物、及び該縮合物と加水分解していない原料のアルコキシシランとが縮合したものであり、これらはいわゆるゾルゲル反応させることにより得られるものである。
【0020】
アルコキシシランの使用に際しては、そのままコーティング液の成分として添加することもできるし、あらかじめ加水分解を行ってアルコキシシランの(部分)加水分解物及びその(部分)縮合物としてこれらを添加して使用することも可能である。
【0021】
この加水分解に際しては、通常の方法、例えば塩酸等の無機酸、酢酸等の有機酸またはカセイソーダのようなアルカリによって、更には水のみを用いて加水分解する等各種の方法を利用することができる。また、加水分解を均一に行う目的でアルコキシシランと該アルコキシシラン可溶性溶剤を混合した後、加水分解を行うことも可能である。目的に応じて、加水分解に際しては冷却または加熱することも可能である。また、加水分解後、反応で生成したアルコール等を加熱及び/または減圧下に適当量除去して使用することも可能であるし、その後に適当な溶媒を添加することも可能である。
【0022】
また、必要に応じて硬化触媒を添加することも可能である。硬化触媒としては例えば、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムエチルアセトアセテートビスアセチルアセトナート、アルミニウムビスアセトアセテートアセチルアセトナート、アルミニウムジ−n−ブトキシドモノエチルアセトアセテート、アルミニウムジ−i−プロポキシドモノメチルアセトアセテート等のアルミニウムキレート化合物、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ギ酸カリウム等のカルボン酸のアルカリ金属塩、ジメチルアミンアセテート、エタノールアセトエート、ジメチルアニリンホルメート等のアミンカルボキシレート、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、酢酸テトラメチルアンモニウム、酢酸ベンジルトリメチルアンモニウムのような第四級アンモニウム塩、オクタン酸スズのような金属カルボン酸塩、及びトリエチルアミン、トリエタノールアミン、ピリジンのようなアミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセンが挙げられる。これらの化合物は単独で又は2種以上を併せて用いることができる。
【0023】
一方、本発明のケイ素含有層に用いるポリビニルアルコール系高分子には、公知の市販のものが適用でき、具体的にはビニルアルコール成分、ビニルアルコール共重合体成分よりなる群から選ばれた少なくとも1種を50モル%以上含有する高分子樹脂が適用される。なお、このビニルアルコール共重合体としては、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、ビニルアルコールービニルブチラール共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、あるいは分子内にシリル基を有するポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0024】
本発明において用いられる上記のポリビニルアルコール系高分子の重合度、ケン化度に特に制限はないが、重合度が低すぎると、コーティング膜がもろくなり、逆に高すぎると粘度が高くなり過ぎて、塗工性が悪化する傾向があり、通常は平均重合度100〜5000のものが用いられる。一方、ケン化度は、低すぎると十分なガスバリアー性が得られない点から、本発明の主用途である高度のガスバリア性が要求される液晶等の用途ではケン化度70%以上の高ケン化度のものが好ましい。
【0025】
また、耐溶剤性、密着性の点から、分子内にシリル基を有するポリビニルアルコール系高分子が好ましく、更に好ましくはエチレン−ビニルアルコール共重合体である。
【0026】
ここで、分子内にシリル基を有するポリビニルアルコール系高分子とは、下式(2)で表される反応性のシリル基を有するものである。
【0027】
【化5】
ここで、R11は水素または炭素数1〜10のアルキル基、アシル基、またはアルカリ金属、アルカリ土類金属を表し、R12は炭素数1〜10のアルキル基を表し、rは1〜3の整数を表す。
【0028】
シリル基の含量は好ましくは5モル%以下、より好ましくは1モル%以下が好ましい。シリル基の含量が多くなると、コーティング用組成物が増粘、ゲル化しやすい傾向があり、この点から上記含量が好ましい。
【0029】
なお、本発明における分子内にシリル基を含有するポリビニルアルコール系高分子に関し、分子内とは重合体の末端をも含むものであり、シリル基が加水分解性でない結合によってポリビニルアルコール系高分子と結合していれば、その位置、分布状態等に特に制限はない。
【0030】
また、本発明に用いるエチレン−ビニルアルコール共重合体は、そのエチレン共重合比が50モル%以下であるものが特に好適である。エチレンの共重合比が50モル%を越えると硬化させたときに、ガスバリアー性が低下し、前述の液晶用途のような高度のガスバリア性が必要な場合には十分な性能が得られない。
【0031】
本発明のケイ素含有層は、前述の通り、上述のアルコキシシランの(部分)加水分解物、(部分)縮合物叉はこれらの混合物を溶媒に溶かしたコーティング用組成物、あるいは上述のアルコキシシランの(部分)加水分解物、(部分)縮合物叉はこれらの混合物と上述のポリビニルアルコール系高分子とを溶剤に溶かしたコーティング用組成物の塗布により形成される。
【0032】
前者のアルコキシシランの単独層のコーティング用組成物の溶剤としては、アルコキシシランの(部分)加水分解物、(部分)縮合物叉はこれらの混合物を溶解するものであればよく、以下のものが例示できる。アルコール類、エーテル類、芳香族炭化水素,エステル類,ケトン類化合物等が挙げられる。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコール、酢酸メチル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトン、キシレン、N,N−ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、ジクロロエタン、トルエンなどが挙げられる。これらは1種のみならず2種以上混合して用いることも可能である。
【0033】
後者のポリビニルアルコール系高分子との混合層のコーティング用組成物は、ポリビニルアルコール系高分子{以下、成分(a)という}、アルコキシシランの(部分)加水分解物、(部分)縮合物叉はこれらの混合物{以下、成分(b)という}及びこれらの溶剤{以下、成分(c)という)の3成分からなる。
【0034】
上記成分(c)の溶剤は、ポリビニルアルコール系高分子可溶性溶剤を含有する溶剤である。ここで、ポリビニルアルコール系高分子可溶性溶剤としては、水、ジメチルイミダゾリン等が挙げられる。また、ポリビニルアルコール系高分子としてエチレン−ビニルアルコール共重合体を用いる場合は、この可溶性溶剤としては、水/プロパノールの混合溶媒が挙げられる。水とプロパノールの混合比率は重量比で水/プロパノール=3/7〜7/3が好ましい。なお、これらと併用可能な溶媒として、これらのポリビニルアルコール系高分子可溶性溶剤と均一に混合し、さらに成分(a)及び成分(b)が均一に溶解可能であれば使用でき、アルコール系、セロソルブ系、ケトン系、アミド系等が挙げられる。これらの併用可能な溶媒の中で、特にブタノール等のアルコール系、1−メトキシ−2−プロパノール等のセロソルブ系、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒は、バリア層の平滑性を良好にするために好適に用いられる。これら併用可能な溶媒は、1種のみならず、2種以上混合して用いることも可能である。
【0035】
コーティング組成物の成分(a)〜(c)は各々次のような割合で用いるのが好ましい。即ち成分(a)と成分(b)の重量比(a)/(b)が9/1〜1/9の範囲で用いる。ここで成分(b)はR1n−SiO(4−n)/2による重量基準である。(a)/(b)が9/1以上では耐水性、耐薬品性に劣る傾向となり、逆に1/9未満ではコーティング用組成物の保存安定性が悪化する傾向となる。(a)/(b)の、より好ましい範囲は4/1〜1/4である。
【0036】
ところで、成分(b)のアルコキシランにエポキシ基を有するアルコキシシランとアミノ基及び/又はイミノ基を有するアルコキシシランとを併用した場合すなわち成分(b)としてエポキシ基を有するアルコキシシランとアミノ基及び/又はイミノ基を有するアルコキシシランとの混合物の(部分)加水分解物、その部分縮合物またはこれらの混合物を用いる場合は、前述の通り、耐溶剤性及び透明樹脂基板との接着性に優れており、金属酸化物層と組み合わせることにより、ガスバリア性も得られ、アルコシランの単独層で使用できる。しかし、これに、成分(a)としてシリル基含有ポリビニルアルコール系高分子あるいはエチレン−ビニルアルコール共重合体を加えることにより、さらにその性能特に低湿度でのガスバリア性を向上させることができる。なお、成分(a)としてシリル基含有ポリビニルアルコール系高分子を用いる場合、その重量比(a)/(b)は、2/1以下の範囲で用いることが好ましい。また、成分(a)としてエチレン−ビニルアルコール共重合体を用いる場合、その重量比(a)/(b)は、9/1以下の範囲が好ましい。
【0037】
ここで、エポキシ基を有するアルコキシシランとアミノ基及び/又はイミノ基を有するアルコキシシランとの混合物の(エポキシ基)/(アミノ基とイミノ基の総和)の配合比率は、得られる塗膜の性能に影響し、得られる膜の密着性、耐熱性、耐薬品性、耐水性、耐久性等の面から、モル当量換算で6/1〜1/6の範囲が好ましい。(エポキシ基)と(アミノ基とイミノ基)のどちらかの成分が他方に対して過剰になり、上記範囲から外れるに伴い得られる膜の性能が低下する。
【0038】
アミノ基及び/またはイミノ基は、エポキシ基を有するアルコキシシランの加水分解物の縮合触媒であり、同時にエポキシ基と反応するため、エポキシ基を有するアルコキシシランの加水分解物にアミノ基及び/またはイミノ基を有するアルコキシシランを加えると反応が急速におこり、コーティング用組成物がゲル化しやすくなる。そのためアミノ基及び/又はイミノ基を有するアルコキシシランを使用する場合は、カルボン酸を用いて弱酸性の有機酸塩としポットライフを調整することが好ましい。ここでカルボン酸としては、例として蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等が挙げられるが、その酸性度、揮発性からみて酢酸が最も好ましい。
【0039】
このカルボン酸の添加量は、コーティング組成物のアミノ基およびイミノ基の総和1モルあたり0.01〜10モル量の範囲が好ましく、更に好ましくは0.1〜5.0モルの範囲であり、この量が少ないと、これから調整されるコーティング用組成物のポットライフが短くなりゲル化しやすくなり、一方多いとコーティング用組成物の硬化が不十分となり、前記範囲が好ましい。
【0040】
さらに成分(c)は、成分(a)と成分(b)の固形分の合計量100重量部に対し、200重量部以上、99900重量部以下の範囲が好ましく用いられる。200重量部未満では組成物の保存安定性が悪化し、一方99900重量部を越えると組成物自体の保存安定性は良好となるが、組成物中の固形分が少なくなり、コーティングして得られる塗工膜の膜厚が制限される。
【0041】
また、以上のコーティング組成物の添加剤としては、表面平滑性を改良する目的で各種界面活性剤が使用可能であり、例としてはシリコーン系化合物、フッ素系界面活性剤、有機界面活性剤などが使用できる。さらに改質剤として、前記コーティング用組成物と相溶性のある各種エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アミド樹脂、コロイダルシリカ等を添加してもよい。このような成分(a)、(b)および(c)以外の添加成分は本発明の硬化樹脂層の特性、例えば、耐熱性、耐候性、耐水性、耐久性、密着性、あるいは耐薬品性など、本発明の積層フィルムが適用される用途に応じて種々の実用特性を改良しうるものである。
【0042】
本発明において、ケイ素含有層は、上記のコーティング用組成物をディップコート、スプレーコート、フローコート、ロールコート、バーコート、スピンコート等通常使われている塗布方法により積層することにより形成される。層の膜厚としては0.01から100μmが好ましい。100μmを超えると膜の硬化に時間がかかり経済的に好ましくない。
【0043】
塗布されたケイ素含有層は、通常常温から基板の高分子フィルムの熱変形温度以下の温度下で溶媒を蒸発除去する。次いで50から150℃の温度で1分間以上加熱することにより、硬化層とされる。
【0044】
なお、必要に応じて、ケイ素含有層が積層される基材の表面を、コロナ処理、アンカーコート処理等の表面処理で表面改質を行い、ケイ素含有層の密着性をさらに向上させることが可能である。
【0045】
本発明に用いられるガスバリア性の金属酸化物層としては、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛等の透明な絶縁金属酸化物層が挙げられ、これら透明な金属酸化物層は、公知のスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等により作製される。なかでも、水蒸気バリア性、透明性、表面平坦性、屈曲性、膜応力、コスト等の点から特にケイ素酸化物が好ましい。
【0046】
ケイ素酸化物の組成は、X線光電子分光法、X線マイクロ分光法、オージェ電子分光法、ラザホード後方散乱法などにより分析、決定されるが、可視光線領域での透過率、屈曲性などの面からSiOxで表した平均組成において、xは1.5≦x≦2の範囲が好ましい。x値が1.5よりも小さければ屈曲性、透明性が悪くなる。
【0047】
金属酸化物層の作製方法は、上記公知の方法が用いられるが、その中でも金属酸化物の酸化度を自由に変えることのできるといった膜組成制御の容易性、長時間製膜時におけて膜組成が変化することのないといった安定生産性、大面積基板への膜成長における膜厚均一性、膜表面平坦性、そして特にケイ素含有層との組み合わせで効果的なガスバリアー性に非常に関係する膜稠密性の点でスパッタ法が特に好ましい。
【0048】
スパッタリング法としては、製膜速度に優れている点でマグネトロンスパッタリング法が好ましく用いられる。その中でも直流(DC)マグネトロンスパッタリング法は、高周波(RF)マグネトロンスパッタリング法に比べて電源装置が小型であること、メタルターゲットを用いた反応性スパッタにより製膜速度の大幅向上が図れることといった生産面での優位性の点から、特に好ましく用いられる。
【0049】
金属酸化物層の厚さとしては、2nm〜200nmの範囲が好ましい。金属酸化物層の厚みが2nm未満では均一に膜を形成することは困難であり、膜が形成されない部分が発生し、この部分からガスが浸透し、ガスバリアー性が悪くなる。一方、200nmよりも厚くなると透明性を欠くだけでなく、屈曲性が悪く、クラックが発生してガスバリアー性を損なう。
該金属酸化物層を前記ケイ素含有層上に接して積層することにより、優れたガスバリアー性と耐溶剤性が達成される。
【0050】
本発明の透明導電層としては、公知の金属膜、金属酸化物膜等が適用できるが、中でも、透明性、導電性、機械的特性の点から、金属酸化物膜が好ましい。例えば、不純物としてスズ、テルル、カドミウム、モリブテン、タングステン、フッ素等を添加した酸化インジウム、酸化カドミウム及び酸化スズ、不純物としてアルミニウムを添加した酸化亜鉛、酸化チタン等の金属酸化物膜が挙げられる。中でも酸化スズを2〜15重量%含有した酸化インジウム(ITO)の薄膜が、透明性、導電性が優れており、好ましく用いられる。透明導電層の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンビームスパッタリング法、イオンプレーティング法等の方法が挙げられる。
【0051】
透明導電層の膜厚は、15〜180nmが好ましい。15nm未満では、不連続な膜となり導電性が不十分となる。一方,180nmを超えると透明性が低下したり、耐屈曲性が悪くなる。
【0052】
該透明導電層は、前記金属酸化物層上に積層されることが好ましいが、耐溶剤性を有する保護層上に積層されていてもよい。
【0053】
この耐溶剤性を有する保護層は、透明導電層と基板との接着性を十分考慮して選択する必要がある。この保護層としては、前記のケイ素含有層の他、以下の放射線硬化型樹脂や熱硬化型樹脂が適用できる。
【0054】
放射線硬化型樹脂とは、紫外線又は電子線等の放射線を照射することにより硬化する樹脂であり、例えば、分子あるいは単位構造内にアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を含む樹脂を挙げることができる。中でも反応性の点から、アクリロイル基を含む樹脂が好ましい。
【0055】
これらの放射線硬化型樹脂は、単一組成でも、数種の混合組成でも構わないが、耐溶剤性の点から分子或いは単位構造内に2個以上のアクリロイル基を有する多官能アクリレート成分が樹脂成分中に含まれることが好ましい。かかる多官能アクリレート成分としては、例えばジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等のアクリレートモノマーやポリエステル変成もしくはウレタン変成の多官能アクリレートオリゴマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
この放射線硬化型樹脂からなる保護層は、以下のように形成される。即ち、前記の放射線硬化型樹脂の組成物に必要に応じて光開始剤、および重合禁止剤、レベリング剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤、熱可塑性樹脂、可塑剤等の改質剤を添加して塗工液とする。塗工液の濃度、粘度調整のため必要に応じて適当な有機溶剤で希釈する。該塗工液を公知の塗工法、例えば、ディップコート、スプレーコート、フローコート、ロールコート、バーコート、スピンコート等で、基板上に塗工し、必要に応じて予備乾燥を行った後、放射線照射により硬化させて硬化層とすることにより、形成される。
【0057】
紫外線照射で硬化させる場合、光開始剤は必須成分である。かかる開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1,2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系化合物;チオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン等のチオキサン系化合物等が挙げられる。
【0058】
又、より硬化性を向上させるためには、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミン安息香酸エチル等の公知の光開始助剤を適量添加することも効果的である。
【0059】
該放射線硬化型樹脂からなる保護層の膜厚は、2〜8μmが好ましく、特に2〜6μmが好ましい。2μm未満では耐溶剤性が不十分であり、又8μmを超えると硬化収縮に伴うカールが発生するため、共に好ましくない。
【0060】
熱硬化型樹脂としては、エポキシ樹脂やイソシアネート架橋ウレタン樹脂等が代表的であり、なかでも、フェノキシ樹脂、フェノキシエーテル樹脂、フェノキシエステル樹脂を多官能イソシアネート化合物で硬化させたフェノキシ樹脂硬化物、フェノキシエーテル樹脂硬化物、フェノキシエステル樹脂硬化物が好ましい。
【0061】
該熱硬化型樹脂からなる保護層の膜厚は特に限定するものではないが、3μmよりも薄い場合には耐溶剤性が不十分である。また、膜厚の上限は製膜性と経済性、耐溶剤性のバランスで決定される。好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下である。
【0062】
この熱硬化型樹脂からなる保護層は、以下のように形成される。即ち、以上の熱硬化型樹脂の組成物に必要に応じて反応性希釈剤、微粒子、レベリング剤等の各種添加剤、熱可塑性樹脂、可塑剤等の改質剤を添加して塗工液とする。塗工液の濃度、粘度調整のため必要に応じて適当な有機溶剤で希釈する。該塗工液を公知の塗工法、例えば、ディップコート、スプレーコート、フローコート、ロールコート、バーコート、スピンコート等で、基板上に塗工し、120℃以上の温度で3分以上、より好ましくは130℃以上の温度で5分以上の熱処理により硬化させて硬化層とすることにより、形成される。
【0063】
本発明の透明導電性積層体の層構成としては、(i)透明樹脂基板の両面に、ケイ素含有層、金属酸化物層、透明導電層がこの順で積層された構成、(ii)透明樹脂基板の両面に、ケイ素含有層、金属酸化物層がこの順で積層され、該ケイ素含有層の何れか一方の面に透明導電層が積層された構成、(iii)透明樹脂基板の一方の面に、ケイ素含有層、金属酸化物層、透明導電層がこの順で積層され、他方の面にケイ素含有層、透明導電層がこの順で積層された構成、(iv)透明樹脂基板の一方の面に、ケイ素含有層、金属酸化物層、透明導電性層がこの順で積層され、他方の面に保護層が積層された構成、(v)透明樹脂基板の一方の面に、ケイ素含有層、金属酸化物層、がこの順で積層され、他方の面にケイ素含有層、透明導電層がこの順で積層された構成、(vi)透明樹脂基板の一方の面に、ケイ素含有層、金属酸化物層がこの順で積層され、他方の面に保護層、透明導電層がこの順で積層された構成等が挙げられる。中では、性能面及び積層数面の両面から(iv)及び(v)の積層構成が好ましい。
【0064】
なお、積層に際し、必要な場合はプライマーとなる接着層やコロナ処理を用いて、各層間ならびに基板と各層の接着信頼性を向上させることも可能である。
【0065】
【実施例】
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、かかる実施例に限定されるものではない。なお、実施例中、部および%は、特に断らない限り重量基準である。また、実施例中における各種の測定は、下記の通り、行った。
【0066】
透明性:通常の分光光度計を用い波長550nmの平行光線の光線透過率を測定した。また、日本電色製COH−300Aを用いてヘイズ値(△H%)を測定した。
【0067】
光学等方性:日本分光製の多波長複屈折率測定装置M−150を用い、波長590nmの光に対するリタデーション値を測定した。
【0068】
耐溶剤性(i):25℃の3.0%NaOH水溶液に10分間浸漬し、流水にて十分洗浄を行った後、乾燥させ、外観を目視して観察した。
【0069】
耐溶剤性(iii):25℃の5.0%HCl水溶液に10分間浸漬し、流水にて十分洗浄を行った後、乾燥させ、外観を目視して観察した。なお、本試験は、透明導電層を積層する前の中間積層体で行った。
【0070】
耐溶剤性(iii):N−メチルピロリドンを透明導電層の上に数滴滴下し5分間放置して、流水にて十分洗浄を行った後、外観を目視にて観察した。
【0071】
ガスバリアー性:ガスバリアー性は透明導電層を設けない状態で、評価した。酸素透過度は、モダンコントロールズ(MOCON)社製オキシトラン2/20MLを用いて、40℃、90%RHの高湿度環境下で測定した。又、水蒸気透過度は、MOCON社製パーマトランW1Aを用いて、40℃、90%RH雰囲気下における水蒸気透過性を測定した。
【0072】
密着性:JIS K5400 8.5.2碁盤目テープ法に準拠して塗膜の密着性を評価した。
【0073】
耐屈曲性:透明導電層が内側になるように、直径20mmのガラス管の周囲に沿わせて変形させ1分間保持した後元に戻し、透明導電層のクラックを観察する。長さ5mm以上のクラックがある場合を不良とする。
【0074】
[実施例1]
本発明のケイ素含有層を与えるコーティング用組成物Aを下記のように調製し、厚さ100μmのポリカーボネートフィルムの両方の面上にこのコーティング用組成物Aをマイクログラビア方式により塗工し、130℃で2分間加熱乾燥し、厚さ2μmのケイ素含有層を形成し、両面にケイ素含有層を積層した積層基板を得た。
【0075】
ここで、コーティング用組成物Aは、エチレン−ビニルアルコール共重合体(クラレ(株)製エバール−F(エチレン共重合比32%))100部を、水720部、n−プロパノール1080部、n−ブタノール100部の混合溶液に加熱溶解して均一溶液にし、これを室温まで放冷した後、これにレベリング剤として東レダウコーニング社製SH30PAを0.1部、酢酸を62.4部加え、その後、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを85.8部加えて10分間撹拌し、更にこの溶液に3−アミノプロピルトリメトキシシラン62.4部を加えて3時間撹拌することにより、調整した。
【0076】
次に、上記積層基板をスパッタリング装置にセットした後、1.3mPaの圧力まで排気した。引き続いてAr/O2混合ガス(O2濃度12.0Vol%)を100sccmで導入し、圧力が0.27Paになるように調整した。多結晶Siメタルターゲットを用い、投入電力密度1W/cm2の条件でDCマグネトロンスパッタリングを行い、上記積層基板の片方のケイ素含有層の直上に、厚さ7nmのSiO2膜を形成し、中間積層体を得た。
【0077】
更に、以上で得られた中間積層体を、スパッタリング装置にセットした後1.3mPaの圧力まで排気した。引き続いてAr/O2 混合ガス(O2 濃度1.4vol%)を100sccmで導入し、圧力が0.27Paになるように調整した。ITOターゲット(SnO2 濃度5wt%)を用い、投入電力密度1W/cm2 の条件でDCマグネトロンスパッタリングを行い、中間積層体のSiO2層の直上に、厚さ130nmのITO膜からなる透明導電層を設けることにより透明導電性積層体を得た。得られた透明導電性積層体の評価結果を表1に示す。
【0078】
[実施例2]
本発明のケイ素含有層を与えるコーティング用組成物Dを下記のように調製し、厚さ100μmのポリカーボネートフィルムの片面上にこのコーティング用組成物Dをマイクログラビア方式により塗工し、130℃で3分間加熱乾燥し、厚さ2μmのケイ素含有層を形成し、片面にケイ素含有層を積層した片面積層基板を得た。
【0079】
ここで、コーティング用組成物Dは、エチレン−ビニルアルコール共重合体(クラレ(株)製エバール−F(エチレン共重合比32%))100部を、水720部、n−プロパノール1080部、n−ブタノール100部の混合溶液に加熱溶解して均一溶液にし、これを室温まで放冷した後、これにレベリング剤として東レダウコーニング社製SH30PAを0.1部、酢酸を31.2部加え、その後、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン42.6部を加えて10分間撹拌し、更にこの溶液に3−アミノプロピルトリメトキシシラン31.2部を加えて3時間撹拌することにより、調整した。
【0080】
さらに、別の耐溶剤性を有する保護層を与えるコーティング用組成物Eを下記のように調整し、該片面積層基板のケイ素含有層が形成されていない面上に、このコーティング用組成物Eをマイクログラビア方式により塗工し、50℃で1分間予備乾燥し、次いで160W/cmの高圧水銀ランプを用いて、積算光量800mJ/cm2の条件で紫外線を照射して塗工膜を硬化させることにより、厚さ4μmの保護層を形成し、両面積層基板を得た。
【0081】
ここで、コーティング用組成物Eは、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亜合成化学(株)製、アロニックスM−309)100部、光開始剤1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバガイギー社製、イルガキュア−184)7部及びレベリング剤としてシリコンオイル(東レ・ダウコーニング社製、SH28PA)0.02部を混合した後、1−メトキシ−2−プロパノール及びメタノールで固形分35wt%とすることにより、調整した。
【0082】
次に、この両面積層基板のケイ素含有層上に実施例1と同様にして実施例1と同様のSiO2膜を積層し、中間積層体を得た。
【0083】
更に、この中間積層体の耐溶剤性を有する保護層上に、実勢例1と同様にして実施例1と同様のITO膜からなる透明導電層を設け、透明導電性積層体を得た。得られた透明導電積層体の評価結果を表1に示す。
【0084】
[実施例3]
実施例1において、透明導電層をSiO2層上に代えてその反対側のSiO2層が積層されていない側のケイ素含有層の面上に積層する以外は、実施例1と同様にして透明導電性積層体を得た。得られた透明導電性積層体の評価結果を表1に示す。
【0085】
[比較例1]
実施例1において、ケイ素含有層を積層しない以外は、実施例1と同様にして透明導電性積層体を得た。得られた結果を表1に示す。
【0086】
[比較例2]
実施例1において、金属酸化物層のSiO2層を積層しない以外は、実施例1と同様にして透明導電性積層体を得た。得られた結果を表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
【発明の効果】
以上、本発明は特定の前記ケイ素含有層上にガスバリア性の金属酸化物層を直接積層した積層構成の相乗作用による優れた耐溶剤性、ガスバリア性、および層間密着性を利用した透明導電性積層体であり、少ない層数で液晶表示装置等の透明電極に要求される高度な耐溶剤性、ガスバリア性、層間密着性を同時に満足するという実用上大きな効果を奏するものである。すなわち、本発明は、液晶表示装置の透明電極に適用できる透明導電性積層体を簡単な構成で安価に実現するものであり、産業上大きな寄与をなすものである。
Claims (10)
- 透明樹脂基板上に少なくともガスバリア性の金属酸化物層、透明導電層が設けられた透明導電性積層体において、(i)前記透明樹脂基板の片面上にエポキシ基を有するアルコキシシランとアミノ基及び/又はイミノ基を有するアルコキシシランとの混合物の(部分)加水分解物、その(部分)縮合物またはこれらの混合物とポリビニルアルコール系高分子との混合硬化層からなるケイ素含有層を介して金属酸化物層が設けられ、(ii)前記透明樹脂基板のもう一方の片面上に、前記ケイ素含有層、放射線硬化型樹脂層及び熱硬化型樹脂層から選ばれる保護層が設けられ、かつ(iii)透明導電層は最外層に位置するように設けられていることを特徴とする透明導電性積層体。
- 前記混合物の(エポキシ基)/(アミノ基とイミノ基の総和)の配合比率が、モル当量換算で6/1〜1/6である請求項1記載の透明導電性積層体。
- 前記ポリビニルアルコール系高分子が、ケン化度70%以上のポリビニルアルコールである請求項1〜2に記載のいずれかの透明導電性積層体。
- 前記ポリビニルアルコール系高分子がシリル基を有するポリビニルアルコール、又はエチレン−ビニルアルコール共重合体である請求項1または2記載の透明導電性積層体。
- 前記ケイ素含有層が、前記アルコキシシランがエポキシ基を有するアルコキシシランとアミノ基及び/又はイミノ基を有するアルコキシシランとの混合物で、前記ポリビニルアルコール系高分子がシリル基を有するポリビニルアルコールであり、ポリビニルアルコール系高分子(a)とアルコキシシラン(b)との組成比a/bが重量比で2/1以下の硬化層である請求項4記載の透明導電性積層体。
- 前記ケイ素含有層が、前記アルコキシシランがエポキシ基を有するアルコキシシランとアミノ基及び/又はイミノ基を有するアルコキシシランとの混合物で、前記ポリビニルアルコール系高分子がエチレン−ビニルアルコール共重合体であり、ポリビニルアルコール系高分子(a)とアルコキシシラン(b)との組成比a/bが重量比で9/1以下の硬化層である請求項4記載の透明導電性積層体。
- 前記金属酸化物層が厚さ2nm〜200nmで,平均組成をSiOxで表した時のxが1.5≦x≦2のケイ素酸化物からなる請求項1〜6に記載のいずれかの透明導電性積層体。
- 前記ケイ素酸化物がスパッタ法により作製されたケイ素酸化物である請求項7記載の透明導電性積層体。
- 透明樹脂基板が、ポリカーボネート樹脂またはポリエステル系樹脂を主成分とする請求項1〜8に記載のいずれかの透明導電性積層体。
- 前記透明樹脂基板のもう一方の片面上に、保護層として前記ケイ素含有層が設けられさらに金属酸化物層を有する請求項1記載の透明導電性積層体。
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