JP2008126930A - マスタシリンダ - Google Patents

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Abstract

【課題】 部品点数を減らすことで、軽量化及び低コスト化したマスタシリンダを提供する。
【解決手段】 ピストン5及びリテーナ12はそれぞれ端部に掛止部5b,12cを有し、掛止部5b,12cはピストン5及びリテーナ12の軸線方向の摺動を制限することを特徴とする。
【選択図】 図2

Description

本発明は、自動車等の車両におけるブレーキやクラッチのマスタシリンダ等に用いられるプランジャ型のマスタシリンダの技術分野に関するものである。
従来、自動車の液圧ブレーキシステムや液圧クラッチシステムにおいては、ブレーキやクラッチを作動するために、ブレーキペダルあるいはクラッチペダルの踏力に応じた液圧を発生するマスタシリンダが用いられている。このマスタシリンダとして、シリンダ孔を有するシリンダ本体と、シリンダ孔内に摺動可能に挿入された液圧室を区画するピストンと、シリンダ本体に設けられリザーバに連通する連通路と、ピストンに形成されてこの連通路と液圧室とを連通するリリーフポートと、シリンダ本体のシリンダ孔内周面の凹部に収容されるとともにピストンが摺動可能に貫通して、シリンダ孔内周面とピストン外周面との間をシールするシール部材と、ピストンにばね力を与えるばね装置とを備えた、プランジャ型マスタシリンダが知られている(例えば、特許文献1参照)。
このプランジャ型マスタシリンダは、非作動時、ピストンのリリーフポートと連通路とがシール部材で遮断されず、液圧室がリリーフポート及び連通路を介してリザーバに連通している。したがって、非作動時、液圧室内は大気圧となっていて、液圧は発生していない。ブレーキペダルあるいはクラッチペダルの踏込みでピストンが液圧室側へ前進すると、リリーフポートと連通路とがシール部材で遮断されて、液圧室がリザーバから遮断される。これにより、ピストンの前進にともなって、液圧室には液圧が発生するようになっている。
このようなプランジャ型マスタシリンダに用いられているばね装置として、軸線方向の長さを伸縮可能に結合する一対のリテーナ部材と、それらリテーナ部材に支持されるばねとを備え、それを単独で取り扱い可能にユニット化し、組み立て性を向上させたものがある(例えば、特許文献2参照)。
特開2003−194100号公報 国際公開2005/001306号公報
ところで、上記特許文献1及び2に記載された発明のばね装置は、2つのリテーナ部材と、そのリテーナ部材の間に支持されるばねを備え、ばねを支持する一対のリテーナ部材を軸線方向に一直線上に並べ、それら両リテーナ部材に対し、その軸線方向に沿う押し付け力を加えることにより両者の組付けを行うものであった。
本発明は、部品点数を減らすことで、軽量化及び低コスト化したマスタシリンダを提供することを目的とする。
前述の課題を解決するために、シリンダ孔を有するシリンダ本体と、前記シリンダ孔内に摺動可能に挿入され液圧室を区画するピストンと、前記ピストンに摺動可能なリテーナと、前記ピストンと前記リテーナとの間に縮設されるスプリングと、前記シリンダ本体に設けられリザーバに連通する連通路と、前記ピストンに形成されて前記液圧室と常時連通するとともに前記連通路と前記液圧室とを連通するリリーフポートと、前記シリンダ本体のシリンダ孔内周面の凹部に収容されるとともに前記ピストンが摺動可能に貫通して、前記シリンダ孔内周面と前記ピストンの外周面との間をシールするシール部材とを備え、非作動時に前記連通路と前記リリーフポートとが連通し、作動時に前記ピストンが移動して前記シール部材により前記連通路と前記リリーフポートとが遮断されるようになっているマスタシリンダにおいて、前記ピストン及び前記リテーナはそれぞれ端部に掛止部を有し、前記掛止部は前記ピストン及び前記リテーナの軸線方向の摺動を制限することを特徴とする。
また、前記スプリングは、前記ピストン及び前記リテーナの内周側に配置され、前記ピストンの掛止部は、内周側に突出して形成され、前記リテーナの掛止部は、外周側に突出して形成されることを特徴とする。
また、前記ピストンの掛止部の端面は、内周に向かって厚みの薄くなるテーパ状であり、前記リテーナの掛止部の端面は、外周に向かって厚みの薄くなるテーパ状であることを特徴とする。
また、前記リテーナは、前記スプリングを保持するスプリング保持部を有することを特徴とする。
本発明によれば、ピストン及びリテーナがそれぞれ端部に掛止部を有し、掛止部がピストン及びリテーナの軸線方向の摺動を制限するので、ピストンの抜け止めの作用を有すると共に、従来と比較して部品点数が減り、軽量化及び低コスト化したマスタシリンダを提供することができる。
また、スプリングは、ピストン及びリテーナの内周側に配置され、ピストンの掛止部は、内周側に突出して形成され、リテーナの掛止部は、外周側に突出して形成されたので、安定して作動することができる。
また、ピストンの掛止部の端面は、内周に向かって厚みの薄くなるテーパ状であり、リテーナの掛止部の端面は、外周に向かって厚みの薄くなるテーパ状であるので、容易に組み付けすることができる。
また、リテーナは、スプリングを保持するスプリング保持部を有するので、スプリングを安定に保持することができる。
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明に係るマスタシリンダの一実施形態を示す。図1に示すように、プランジャ型マスタシリンダ1はシリンダ本体2を備え、シリンダ本体2にはシリンダ孔3が形成されている。
シリンダ孔3内には、本発明のピストンの一例としてのプライマリピストン4と、同様に本発明のピストンの一例としてのセカンダリピストン5とが摺動可能に挿入されている。プライマリピストン4は、図示しないブレーキペダルあるいはこのブレーキペダルの踏力を倍力して出力するブレーキ倍力装置によって左方へ移動するようになっている。これらのプライマリピストン4及びセカンダリピストン5により、シリンダ孔3内には、第1液圧室6がプライマリピストン4とセカンダリピストン5との間に区画形成され、また第2液圧室7がセカンダリピストン5とシリンダ孔3の底部3aとの間に区画形成されている。
第1液圧室6には軸部材8が配設されており、この軸部材8には左右一対の第1及び第2リテーナ9,10が設けられている。第2リテーナ10は軸部材8に固定されているが、第1リテーナ9は軸部材8に摺動可能とされている。第1リテーナ9は軸部材8の右端に形成された掛止部8aに当接することで、第1及び第2リテーナ9,10は互いに図1に示す最大に離間した状態に設定される。これらの第1及び第2リテーナ9,10の間には、第1リターンスプリング11が縮設されている。第1リテーナ9はプライマリピストン4に常時当接されるとともに第2リテーナ10はセカンダリピストン5に常時当接されており、図1に示すマスタシリンダ1の非作動時には、プライマリピストン4とセカンダリピストン5は最大に離間した状態に設定される。
また、第2液圧室7には第3リテーナ12が設けられている。第3リテーナ12は、例えば、樹脂等で形成され、シリンダ孔3の底部3aに常時当接されており、セカンダリピストン5に摺動可能とされている。マスタシリンダ1の非作動時には、セカンダリピストン5は底部3aから最大に離間した状態に設定される。その場合、第3リテーナ12及びセカンダリピストン5は互いに図1に示す最大に離間した状態に設定される。これらの第3リテーナ12及びセカンダリピストン5の間には、第2リターンスプリング13が縮設されている。
シリンダ本体2にはリザーバ14が設けられている。このリザーバ14は、第1連通路15及びプライマリピストン4に形成され第1液圧室6に常時連通する第1リリーフポート16を介して第1液圧室6に連通可能にされている。第1リリーフポート16は、プライマリピストン4の筒状部4aに穿設されてプライマリピストン4の内周側の第1液圧室6と外周側の第1連通路15とを連通する径方向の連通孔から構成されている。また、リザーバ14は、第2連通路17及びセカンダリピストン5に形成された第2リリーフポート18を介して第2液圧室7に連通可能にされている。第1リリーフポート16と同様に、第2リリーフポート18も、セカンダリピストン5の筒状部5aに穿設されてセカンダリピストン5の内周側の第2液圧室7と外周側の第2連通路17とを連通する径方向の連通孔から構成されている。
プライマリピストン4が配設されるシリンダ孔3の第1凹部19には、例えば、環状で断面略E字状のカップシールである第1シール部材20が収容され、プライマリピストン4がこの第1シール部材20を液密にかつ摺動可能に貫通している。
第1液圧室6は第1出力ポート23に連通されているとともに、この第1出力ポート23を介して図示しない二ブレーキ系統のうち、一方のブレーキ系統の車輪のホイールシリンダに接続されている。また、第2液圧室7は第2出力ポート24に連通されているとともに、この第2出力ポート24を介して図示しない二ブレーキ系統のうち、他方のブレーキ系統の車輪のホイールシリンダに接続されている。
また、プライマリピストン4が配設されるシリンダ本体2のシリンダ孔3の内周には第1密閉シール用凹部25が設けられ、第1密閉シール用凹部25には、第1密閉シール26が備えられている。この第1密閉シール26をプライマリピストン4が摺動可能に貫通している。第1密閉シール26のカップシールは前述の第1シール部材20のカップシールと異なり、従来公知のカップシールからなり、シリンダ本体2のシリンダ孔3の内周面とプライマリピストン4の外周面との間の液密を確保している。
なお、セカンダリピストン5が配設されるシリンダ孔3の第2凹部21には、例えば、環状の第2シール部材22が収容されているとともに、第2密閉シール用凹部27には、第2密閉シール28が備えられ、セカンダリピストン5がこの第2シール部材22及び第2密閉シール28を液密にかつ摺動可能に貫通している。この第2凹部21、第2シール部材22、第2密閉シール用凹部27及び第2密閉シール28は図2に示す第1凹部19、第1シール部材20、第1密閉シール用凹部25及び第1密閉シール26とまったく同じもので構成されている。したがって、第2凹部21、第2シール部材22、第2密閉シール用凹部27及び第2密閉シール28の詳細な説明は省略する。
図2は、第2リターンスプリング13の周辺の拡大断面図である。図2に示すように、セカンダリピストン5は筒状部5aの端部に掛止部5bを有する。第3リテーナ12は、一端の外周側にシリンダ孔3の底部3aに常時当接されているフランジ部12aを、一端の内周側に第2リターンスプリング13を保持するスプリング保持部12bを有し、他端にセカンダリピストン5の掛止部5bに引っ掛かる掛止部12cを有し、セカンダリピストン5に摺動可能とされている。第2リターンスプリング13は、セカンダリピストン5及び第3リテーナ12の内周側に配置され、縮設されている。マスタシリンダ1の非作動時には、セカンダリピストン5はシリンダ孔3の底部3aから最大に離間した状態に設定される。その場合、第3リテーナ12及びセカンダリピストン5は互いの掛止部12c及び5bで当接し、図1に示す最大に離間した状態に設定される。
第3リテーナ12の掛止部12cの端面12dは外周に向かって厚みの薄くなるテーパ状となっており、セカンダリピストン5の掛止部5bの端面5cは内周に向かって厚みの薄くなるテーパ状となっている。このような形状とすることにより、第3リテーナ12及びセカンダリピストン5の組み付けが容易となる。
このような非作動状態のマスタシリンダ1において、ブレーキペダルが踏み込まれてプライマリピストン4が前進すると、第1リリーフポート16の全体が第1シール部材20によって閉塞される。このため、第1リリーフポート16と第1連通路15とが遮断されて第1液圧室6がリザーバ14から遮断され、ペダル踏力に応じた液圧が発生する。また、プライマリピストン4の前進による第1リターンスプリング11を介して伝達される上記踏力によってセカンダリピストン5が前進し、同様にして、第2液圧室7がリザーバ14から遮断され、第2液圧室7内に液圧が発生する。
そして、第1液圧室6内の液圧により、第1シール部材20がプライマリピストン4の外周面に密着されるとともに、第1凹部19に密着される。これにより、第1液圧室6はリザーバ14から密封され、第1液圧室6の液圧がリザーバ14へ漏出しない。プライマリピストン4が更に前進すると、第1液圧室6の液圧が上昇する。この第1液圧室6の液圧は、第1出力ポート23から一方のブレーキ系統のホイールシリンダに送給され、一方のブレーキ系統のブレーキが作動する。
同様にして、第2シール部材22により、第2液圧室7はリザーバ14から密封され、第2液圧室7の液圧がリザーバ14へ漏出しない。セカンダリピストン5が更に前進すると、第2液圧室7の液圧が上昇し、この液圧は第2出力ポート24から他方のブレーキ系統のホイールシリンダに送給され、他方のブレーキ系統のブレーキが作動する。
マスタシリンダ1の作動後、プライマリピストン4及びセカンダリピストン5が急激な勢いで非作動状態に戻ろうとしたときには、リザーバ14からブレーキ液が第1凹部19及び第2凹部21内に流入する。更に、このブレーキ液は、第1液圧室6及び第2液圧室7内に補給され、第1液圧室6及び第2液圧室7内が大気圧となる。これにより、プライマリピストン4及びセカンダリピストン5がスムーズにかつ迅速に戻るようになる。
本実施形態に示したように、セカンダリピストン5及び第3リテーナ12がそれぞれ端部に掛止部5b,12cを有し、掛止部5b,12cがセカンダリピストン5及び第3リテーナ12の軸線方向の摺動を制限するので、セカンダリピストン5の抜け止めの作用を有すると共に、従来と比較して部品点数が減り、軽量化及び低コスト化したマスタシリンダを提供することができる。
また、第2リターンスプリング13は、セカンダリピストン5及び第3リテーナ12の内周側に配置され、セカンダリピストン5の掛止部5bは、内周側に突出して形成され、第3リテーナ12の掛止部12cは、外周側に突出して形成されるので、安定して作動することができる。
また、セカンダリピストン5の掛止部5bの端面は、内周に向かって厚みの薄くなるテーパ状であり、第3リテーナ12の掛止部12cの端面は、外周に向かって厚みの薄くなるテーパ状であるので、容易に組み付けすることができる。
また、第3リテーナ12は、第2リターンスプリング13を保持するスプリング保持部12bを有するので、第2リターンスプリング13を安定に保持することができる。
なお、本実施形態では、第3リテーナ12のスプリング保持部12bで第2リターンスプリング13を保持したが、図3に示すように、スプリング保持部12bを設けずに直接シリンダ孔3の底部3aで保持する構造としてもよい。このような構造とすることにより、第3リテーナ12の形状を簡単にすることができる。
また、図4に示すように、シリンダ孔3の底部3aに凸部3bを設け、第2リターンスプリング13の内周に挿入される構造としてもよい。このような構造とすることにより、第2リターンスプリング13が安定して作動することができる。
さらに、本実施形態では、第2リターンスプリング13を保持するセカンダリピストン5及び第3リテーナ12に対して本発明を適用したが、第1リターンスプリング11を保持するプライマリピストン4及び第2リテーナ10に対して本発明を適用してもよい。
また、本発明のマスタシリンダは、ブレーキ装置のマスタシリンダに限定されることはなく、クラッチ装置のマスタシリンダを始め、ピストンの前進で液圧室に液圧を発生するものであれば、どのような液圧装置にも適用することができる。また、前述の例では、2つのピストンが直列に配置されたタンデムマスタシリンダについて説明しているが、プランジャ型マスタシリンダであれば、シングルマスタシリンダを始めどのようなマスタシリンダにも、本発明のマスタシリンダを適用することができる。
本発明に係るマスタシリンダの一実施形態を示す図である。 第2リターンスプリング周辺の拡大断面図である。 他の実施形態を示す図である。 他の実施形態を示す図である。
符号の説明
1…マスタシリンダ、2…シリンダ本体、3…シリンダ孔、3a…底部、4…プライマリピストン、5…セカンダリピストン、5a…筒状部、5b…掛止部、6…第1液圧室、7…第2液圧室、8…軸部材、9…第1リテーナ、10…第2リテーナ、11…第1リターンスプリング、12…第3リテーナ、12a…フランジ部、12b…スプリング保持部、12c…掛止部、13…第2リターンスプリング、14…リザーバ、15…第1連通路、16…第1リリーフポート、17…第2連通路、18…第2リリーフポート、19…第1凹部、20…第1シール部材、21…第2凹部、22…第2シール部材、23…第1出力ポート、24…第2出力ポート、25…第1密閉シール用凹部、26…第1密閉シール、27…第2密閉シール用凹部、28…第2密閉シール

Claims (4)

  1. シリンダ孔を有するシリンダ本体と、前記シリンダ孔内に摺動可能に挿入され液圧室を区画するピストンと、前記ピストンに摺動可能なリテーナと、前記ピストンと前記リテーナとの間に縮設されるスプリングと、前記シリンダ本体に設けられリザーバに連通する連通路と、前記ピストンに形成されて前記液圧室と常時連通するとともに前記連通路と前記液圧室とを連通するリリーフポートと、前記シリンダ本体のシリンダ孔内周面の凹部に収容されるとともに前記ピストンが摺動可能に貫通して、前記シリンダ孔内周面と前記ピストンの外周面との間をシールするシール部材とを備え、非作動時に前記連通路と前記リリーフポートとが連通し、作動時に前記ピストンが移動して前記シール部材により前記連通路と前記リリーフポートとが遮断されるようになっているマスタシリンダにおいて、前記ピストン及び前記リテーナはそれぞれ端部に掛止部を有し、前記掛止部は前記ピストン及び前記リテーナの軸線方向の摺動を制限することを特徴とするマスタシリンダ。
  2. 前記スプリングは、前記ピストン及び前記リテーナの内周側に配置され、前記ピストンの掛止部は、内周側に突出して形成され、前記リテーナの掛止部は、外周側に突出して形成されることを特徴とする請求項1に記載のマスタシリンダ。
  3. 前記ピストンの掛止部の端面は、内周に向かって厚みの薄くなるテーパ状であり、前記リテーナの掛止部の端面は、外周に向かって厚みの薄くなるテーパ状であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマスタシリンダ。
  4. 前記リテーナは、前記スプリングを保持するスプリング保持部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のマスタシリンダ。
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