JP2008121093A - 低降伏比高強度・高靭性鋼の製造方法 - Google Patents

低降伏比高強度・高靭性鋼の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】引張強度780MPa以上の、造船等の溶接鋼構造物に好適な強度・靭性バランスに優れた低降伏比高強度・高靭性鋼の製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:0.01〜0.80%、Mn:0.20〜2.50%、P:0.020%以下、S:0.0070%以下、sol.Al:0.004〜0.100%、必要に応じてTi、Cu、Ni、Cr、Mo、Nb、V、B、Ca、Mg、REMの1種または2種以上、残部Feおよび不可避的不純物の鋼に、圧延終了温度をAr以上とする熱間圧延を施し、ついで、Ar以上の温度域から、400℃以下へ焼入れ後、Ac+30℃〜Ac+100℃に再加熱する際、再加熱温度までの加熱速度を1℃/s以上、好ましくは5℃/s以上で、前記温度域での滞留時間が90秒以内である熱処理を、好ましくは、焼入れ時の冷却停止から180s以内で開始する。
【選択図】なし

Description

本発明は、強度−靭性バランスに優れた低降伏比高強度・高靭性鋼の製造方法に関し、特に、造船、海洋構造物、建設機械、建築、橋梁、タンク、鋼管、水圧鉄管などの溶接鋼構造物に利用する耐震性や加工性に優れた厚鋼板の製造方法として好適なものに関する。
一般に、鋼板の強度が増加すると、降伏比は増大し、靭性は低下する傾向にある。特に、引張強さが590MPa以上の高強度鋼板において、80%以下の低降伏比と良好な低温靭性を備えるのは困難である。そこで、引張強さ590MPa以上の高強度厚鋼板について低降伏比と高強度で低温靭性を確保するための多くの検討がなされてきた。
靭性に関しては、例えば、特許文献1に開示されているように60〜70キロクラスの高強度鋼において直接焼入れ−短時間焼戻しによって細粒のγ相から微細なフェライトやベイナイトあるいはマルテンサイトの混合組織を得ることで強靭化を達成している。
また、特許文献2に開示されている90キロ以上の高強度鋼ではNbとMn量を制限して焼入れ−焼戻し処理にて良好な強靭性を確保している。これらのいずれもNbの析出強化能とNbの析出による靭性の劣化をバランスさせるために圧延からの焼入れとAc以下の温度での焼戻し処理を工夫している。
一方、特許文献3には、焼入れ後の焼戻しにおける加熱速度を大きくし、圧延や焼入れで得られた転位を確保しながらAc以下の温度で焼戻しを行い、強靭化を達成することが提案されている。
しかし、これらの手法で得られる強度・靭性バランスは限界があり、また、低降伏比との両立は考慮されていない。
降伏比の低減方法に関しては、特許文献4あるいは特許文献5が提案され、前者の場合、制御圧延制御冷却により、後者は焼き入れ焼き戻しにより降伏比を低減させることが記載されている。
しかしながら、対象は引張強度60キロ級で、引張強度80キロ級を対象とするものではない。
特許文献6には、2.5〜4.5%のNiを含有した鋼を焼入れ焼き戻しにより低降伏比80キロ鋼とすることが記載されているが、Ni添加量が多いため、経済性に劣り、靭性についての記載はない。
特許文献7には、Cuを1%以上添加した直接焼入れー2相域焼入れー焼き戻しによる低降伏比80キロ級鋼の製造方法が記載されているが、Cuを多量に含むため、Cuの析出により降伏比を安定して80%以下とすることが出来ず、疵などの表面性状にも劣る。
特許文献8は低降伏比80キロ級鋼の製造方法に関し、2相域焼入れー焼き戻しにより、低降伏比を達成しているが、降伏比は85%程度であり、靭性についての記載も無く、強度レベルは90キロ以下である。
特公昭61−60891号公報 特開平2−209422号公報 特公平7−74380号公報 特開昭55−41927号公報 特開昭55−97425号公報 特開平7−224350号公報 特開平5−163527号公報 特開平5−51694号公報
上述したように、特許文献1〜8に記載された、低降伏比鋼の検討は引張強度80キロ級鋼までが対象で、降伏比は80%以下を満足することは出来ず、靭性と経済性の両立も達成されていない。
従来技術では、焼入れ処理やAc以下の温度での焼戻し処理における条件を制御し、所定の強度〜靭性を確保することが検討されているが、Nb等の強化能を抑制しながら靭性を確保するため、得られる強度,靭性には一定の限界が生じ、引張強度900MPaを超える場合において、強度、降伏比および靭性バランスを調整することは困難であった。
本発明は、上記従来技術の問題を解決し、引張強さ780MPa以上の高強度を有し、かつ80%以下の低降伏比と、強度ー靭性バランスにおいて従来レベルをはるかに上回る高強度・高靭性鋼の製造方法を提案することを目的とする。
本発明者等は、上記問題点を解決するため、焼戻し過程での特性に着目して鋭意検討した結果、高強度鋼における焼戻し過程において、マルテンサイト組織、あるいはマルテンサイトとベイナイトの混合組織が焼戻されて、回復と、主として炭化物の析出が起こる場合、強度を損なわずに析出物の量や大きさを制限することには限界があり、組織自体を微細組織とすることが有効であることを見出した。
また、微細化と共に、2相域へ過熱することにより硬質相と軟質相が混在する複相組織化することにより、低降伏比との両立が達成されることを見出した。
すなわち、焼戻し温度として、強度が低下したり、逆変態したオ〜ステナイトにCが濃化して冷却後に生成する島状マルテンサイトにより、高靭化は不可能であると考えられていたAcを超える温度への再加熱を検討し、その結果、特定の温度、加熱速度、2相域への滞留時間を制御することで、焼入れ時の組織が微細に分割され、微細複相組織となり、強度を維持したままで、低降伏比化と高靭化が可能であることを見出した。
本発明は、逆変態組織にCが濃化する時間を与えない場合には、冷却時に旧γ粒の結晶方位と異なる微細マルテンサイト組織あるいは下部ベイナイト組織が得られ、複相組織化することを利用し、強度を損なわずに、破面単位を細かくすることで従来にない高強度、高靭性に加えて、低降伏比を両立させることを達成した。
すなわち、本発明の要旨はつぎのとおりである。
1. 質量%で、C:0.01〜0.20%、
Si:0.01〜0.80%、
Mn:0.20〜2.50%、
P:0.020%以下、
S:0.0070%以下、
sol.Al:0.004〜0.100%
、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材を、圧延終了温度をAr以上の温度域とする熱間圧延を施し、ついで、Ar以上の温度域から、400℃以下へ焼入れ後、Ac+30℃〜Ac+100℃の温度域へ再加熱処理し、該再加熱処理は、再加熱温度までの加熱速度が1℃/s以上でかつAc+30℃〜Ac+100℃の温度域での滞留時間が90秒以内で行うことを特徴とする低降伏比高強度・高靭性鋼の製造方法。
2.鋼組成に、更に、質量%で、
Ti:0.005〜0.20%
Cu:0.01〜1.0%
Ni:0.01〜1.0%
Cr:0.01〜2.0%
Mo:0.01〜1.0%
Nb:0.003〜0.1%
V:0.003〜0.5%
B:0.0005〜0.0040%
Ca:0.0001〜0.0060%
Mg:0.0001〜0.0060%
REM:0.0001〜0.0200%
の1種または2種以上を含有し、且つ下記1式を満足することを
することを特徴とする1に記載の低降伏比高強度・高靭性鋼の製造方法。
0.5Cu+Ni≦1.0・・・(1)
ここで、Cu,Niは含有量(質量%)を示す。
3.焼入れ温度が300℃以下で、再加熱温度がAc+30℃〜Ac+100℃で、再加熱する際の加熱速度が5℃/s以上であることを特徴とする1または2記載の高強度・高靭性鋼の製造方法。
4.焼入れ後に行う熱処理は、加熱保持後、少なくともAcから600℃以下までの温度域を加速冷却することを特徴とする1乃至3の何れか一つに記載の低降伏比高強度・高靭性鋼の製造方法。
5.加速冷却後、更に焼戻しを行うことを特徴とする4記載の低降伏比高強度・高靭性鋼の製造方法。
6.焼入れ時の冷却停止から、再加熱を開始するまでを180s以内で連続して行うことを特徴とする1乃至5の何れか一つに記載の低降伏比高強度・高靭性鋼の製造方法。
本発明によれば、焼戻しをAc+30℃を超える温度で行い、加熱速度、温度、滞留時間の制御によって強度低下を最小限にとどめるとともに、逆変態組織による破面単位の微細分割を可能にしたことで、引張強さ590MPa以上の高強度と80%以下の低降伏比と破面遷移温度vTrsが−40℃以下の高靭性の、強度−靭性バランスに優れた高強度・高靭性鋼が得られ、産業上極めて有用である。
以下、本発明を詳細に説明する。成分組成における%は質量%とする。
[成分組成]
C:0.01〜0.20%
Cは鋼板の強度を確保するため、少なくとも0.01%は必要であり0.20%を越えて添加すると著しく溶接性を低下させるため、0.01%以上、0.20%以下(以下、0.01〜0.20%)とする。
Si:0.01〜0.80%
Siは脱酸に必要な元素であるが、0.01%未満ではその効果は少なく、0.80%を越えて添加すると溶接性および母材靭性を著しく低下させるため、0.01〜0.80%とする。
Mn:0.20〜2.50%
MnはCと同様に鋼板の強度を確保するために必要であるが、過剰に添加すると溶接性を損なうため、0.20〜2.50%とする。
P:0.020%以下、S:0.0070%以下
P、Sは不純物として鋼中に不可避的に含有される元素であり、鋼母材や、溶接熱影響部の靭性を劣化させるため、経済性を考慮して可能な範囲で低減する事が好ましく、P:0.020%以下、S:0.0070%以下とする。
Al:0.004〜0.10%以下
Alは脱酸元素であり、0.004%未満ではその効果は十分ではなく、過剰に添加すると靭性の劣化をもたらすため、0.004〜0.10%以下とする。
本発明の基本成分組成は以上であるが、更に所望の特性を向上させる場合、Ti、Cu、Ni、Cr、Mo、Nb、V、B、Ca、Mg、REMの1種または2種以上を選択元素として添加する。
Ti:0.005〜0.20%
Tiは母材の靭性確保や溶接熱影響部での靭性確保の観点から所定の範囲とするが、0.20%を超えて添加すると靭性の著しい低下をもたらすため、添加する場合は、0.005〜0.20%とする。
Cu:0.01〜1.0%
Cuは強度を増加させることが可能で、0.01%以上でその効果を発揮し、1.0%を超えて添加すると熱間脆性により鋼板表面の性状を劣化するため、添加する場合は、0.01〜1.0%とする。
Ni:0.01〜1.0%
Niは母材の強度を増加させつつ靭性も向上させることが可能で0.01%以上で効果を発揮するが、多量の添加は経済性を損なうとともに、表面疵などの表面性状を劣化させる。そこで、添加する場合は、0.01〜1.0%とする。更に、表面疵およびコストの観点から0.5Cu+Ni≦1.0とする。
Cr:0.01〜2.0%、Mo:0.01〜1.0%
Cr,Moはいずれも強度を増加させるのに有効であり、0.01%以上でその効果を発揮し、Crは2.0%を超えて添加すると著しく靭性を劣化させ、Moは1.0%を超えると降伏比を高くするため、添加する場合は、Crは0.01〜2.0%、Moは0.01〜1.0%とする。
Nb:0.003〜0.1%、V:0.003〜0.5%
Nb、Vは母材の強度と靭性を向上させるのに有効であり、0.003%以上の添加で効果を発揮する。しかし、それぞれ0.1%,0.5%を超えると靭性の低下を招くおそれがあるため、添加する場合は、Nb:0.003〜0.1%、V:0.003〜0.5%とする。
B:0.0005〜0.0040%
Bは焼入れ性の向上によって強度を増加させる。この効果は0.0005%以上で顕著になり0.0040%を越えて添加しても効果は飽和するため、添加する場合は、0.0005〜0.0040%とする。
Ca:0.0001〜0.0060%、Mg:0.0001〜0.0060%、REM:0.0001〜0.0200%
Ca,Mg、REMは鋼中のSを固定して鋼板の靭性を向上させる働きがあり、0.0001%以上の添加で効果がある。しかし、それぞれ0.0060%、0.0060%、0.0200%を超えて添加すると鋼中の介在物量が増加し靭性をかえって劣化させるため、添加する場合は、Ca:0.0001〜0.0060%、Mg:0.0001〜0.0060%、REM:0.0001〜0.0200%とする。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。
[製造条件]
上記した組成を有する溶鋼を、転炉、電気炉等の溶製手段で常法により溶製し、連続鋳造法または造塊〜分塊法等で常法によりスラブ等の鋼素材とすることが好ましい。なお、
溶製方法、鋳造法については上記した方法に限定されるものではない。その後、所望の形状に圧延後、直接焼入れ焼戻しを行う。
1.圧延
圧延は、スラブ等の鋼素材を、所望の形状とするために行い、終了温度は、微細な焼入れ組織とするため、Ar変態点(以下、Ar)以上の温度域とする。
2.焼入れ
焼入れ後の組織をマルテンサイト主体の組織とするために、圧延後Ar以上の温度から400℃以下、好ましくは300℃以下の温度に焼入れる。Ar以下の温度から焼入れるとフェライトが一部に析出するために再加熱熱処理時に強度低下が大きくなり所定の強度が得られなくなる。
3.焼戻し
焼戻し処理は、逆変態により、焼入れ後の組織を、旧オ〜ステナイト(γ)粒の結晶方位と異なる微細マルテンサイト組織あるいは下部ベイナイト組織とし、破面単位を微細分割して微細な複相組織として、低降伏比を得るとともに靭性を向上させるため、Ac+30℃〜Ac+100℃の温度域に加熱する。
ここでの旧オ〜ステナイト(γ)粒は、圧延時のオ〜ステナイト(γ)粒径が微細でかつ焼戻し時に再変態オ〜ステナイト(γ)が微細に析出することにより微細分割される。
マルテンサイト主体の組織をもつ鋼は、旧オ〜ステナイト(γ)粒径を細かくすることにより高靭性を有することになるが、旧オ〜ステナイト(γ)粒径が30μmを超えていると破壊の破面単位が大きくなって靭性の低下に繋がり、微細化により向上する。
また、当該温度域までの加熱速度が1℃/s未満の場合、所定の加熱温度に到達するまでに転位の消滅や回復により著しく強度が低下し、逆変態組織にCが濃化して靭性が劣化するため、1℃/s以上とする。
5℃/s以上とすると、さらに強度低下が抑制されるとともに組織の微細化が促進され、強度・靭性バランスがより向上して好ましい。当該温度域での滞留時間は、90sを超えると、強度低下が生じるため、90s以内とする。尚、加熱速度は、再加熱開始から終了までの平均加熱速度とする。
上記のように、加熱速度、2相域での加熱温度、2相域の滞留時間の組合せを厳密にコントロールすることで、強度の低下を抑制しつつ、組織の微細化と複相組織化を通して低降伏比化と高靭化が図られる。
本発明で、2相域での加熱温度は、鋼材の表面と中心部の平均温度とする。鋼材全体がAc+30℃〜Ac+100℃に加熱されず、鋼材中央部が一部400℃以上Ac未満に焼戻される場合でも、焼入れ速度の遅い中心部の焼戻しマルテンサイトは高靭性であることや鋼材の靭性にとっては表面近傍の靭性が重要であることから本発明の効果は得られる。従って、本発明においては必ずしも鋼材全体を均一にAc+30℃〜Ac+100℃に加熱する必要はない。
Acを超える熱処理の冷却過程において、少なくともAcから600℃以下の温度域を空冷以上の冷却速度で加速冷却を実施しても、同等の性能が得られる。
加速冷却を実施した場合に生成する硬質相による靭性劣化を抑制するために、必要に応じて更にAc以下の温度で焼戻しを実施しても良い。
焼入れ後に行うAc以上の温度に加熱する熱処理(焼戻し)は、焼入れ後に室温まで冷却した後、再加熱しても効果はあるが、好ましくは300℃以下に冷却後、冷却停止から180s以内に連続して再加熱処理を開始すると、転位密度の確保や析出物の粗大化防止の点から高強度・高靭性を得ることが容易で好ましい。
180sを超えると転位の開放により強度の低下が起こり、また、Cの拡散によってセメンタイトなどの炭化物の成長が起こるので、破壊の起点が粗大化し靭性が低下する傾向がある。
尚、焼入れ、焼戻しにおいて、Ar、Acは下記の式を利用して求めることできる。但し、各式において、各元素は添加量:質量%を示す。
Ar=910−273C−74Mn−56Ni−16Cr−9Mo−5Cu
Ac=751−26.6C+17.6Si−11.6Mn−169Al−23Cu−
23Ni+24.1Cr+22.5Mo+233Nb−39.7V−5.7Ti−895B
本発明は厚板、形鋼、棒鋼など種々の形状の鋼製品に適用可能である。「厚板」とは、板厚6mm以上の鋼板を指すものとする。
表1に示す組成の溶鋼を転炉で溶製し、連続鋳造法で250mm厚のスラブ(鋼素材)とし、表2に示す熱間圧延条件により12〜50mm厚の鋼板を作製した。表1において、鋼記号X、Y、Zの供試鋼は成分組成のいずれかが本発明範囲外となっている。
得られた厚鋼板について、板厚方向1/4の位置から6φのミクロ引張試験片を採取して、JIS Z 2241(1998)の規定に準拠して引張試験を実施し、引張強さTSおよび0.2%耐力YSを求めた。
また、板厚方向1/4の位置からJIS Z 2202(1998)の規定に準拠して、Vノッチ標準寸法のシャルピ−衝撃試験片を採取して、JIS Z 2242(1998)の規定に準拠して衝撃試験を実施し、破面遷移温度vTrsを求めた。
更に、板厚方向1/4の位置から組織観察用試験片を採取し、走査型電子顕微鏡により2相域加熱部の平均旧オ−ステナイト(γ)粒径を線分法にて測定した。
表3にこれらの試験結果を示す。引張強度TS:780MPa以上、降伏強度YS:650MPa以上、降伏比YR:80%以下、および靭性(vTrs):−40℃以下を本発明例とした。
成分組成、製造条件の規定のいずれかが本発明範囲外となった鋼板No.2,4,8,9,14〜18,22,28〜30は、本発明例鋼板No.1,3,5〜7、No.10〜13、No.19〜21,23〜27と比較して引張強度TS、降伏強度YS、降伏比YRおよび靭性の少なくとも一つの特性が劣る。
No.2、3,5,7,14,15,18は、それぞれ、同じ鋼記号Bの鋼を用いて、焼戻し温度を変化させた実施例で、いずれもAc+30℃〜Ac+100℃の温度域での滞留時間が90秒以内となっているもののみが全ての目標性能を満足している。
焼戻し温度をAc1〜Ac1+100℃の加熱範囲とするとvTrsとして−40℃以下が得られ、特にAc1+40〜Ac1+100℃の範囲では優れた靭性でvTrs≦−60を満足している。当該温度領域では、旧γ粒が10μm未満となっており、微細化により靭性向上の図られることが認められる。
また、No.3,9,10,11,12,13は、それぞれ、同じ鋼記号Bの鋼を用いて、焼戻しの加熱速度を変化させた実施例であり、いずれもAc+30℃〜Ac+100℃の温度域での滞留時間は90秒以内となっているもので、加熱速度が1℃/s以上の加熱でvTrs≦−40℃を満足し、さらに、加熱速度5℃/s以上のNo.3,12,13ではvTrs≦−60℃を満足している。これらの靭性向上は、旧γ粒の微細化に対応するもので、特に5℃/s以上とした場合には10μm以下の旧γ粒径が得られている。
Figure 2008121093
Figure 2008121093
Figure 2008121093

Claims (6)

  1. 質量%で、C:0.01〜0.20%、
    Si:0.01〜0.80%、
    Mn:0.20〜2.50%、
    P:0.020%以下、
    S:0.0070%以下、
    sol.Al:0.004〜0.100%
    、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材を、圧延終了温度をAr以上の温度域とする熱間圧延を施し、ついで、Ar以上の温度域から、400℃以下へ焼入れ後、Ac+30℃〜Ac+100℃の温度域へ再加熱処理し、該再加熱処理は、再加熱温度までの加熱速度が1℃/s以上でかつAc+30℃〜Ac+100℃の温度域での滞留時間が90秒以内で行うことを特徴とする低降伏比高強度・高靭性鋼の製造方法。
  2. 鋼組成に、更に、質量%で、
    Ti:0.005〜0.20%
    Cu:0.01〜1.0%
    Ni:0.01〜1.0%
    Cr:0.01〜2.0%
    Mo:0.01〜1.0%
    Nb:0.003〜0.1%
    V:0.003〜0.5%
    B:0.0005〜0.0040%
    Ca:0.0001〜0.0060%
    Mg:0.0001〜0.0060%
    REM:0.0001〜0.0200%
    の1種または2種以上を含有し、且つ下記1式を満足することを
    することを特徴とする請求項1に記載の低降伏比高強度・高靭性鋼の製造方法。
    0.5Cu+Ni≦1.0・・・(1)
    ここで、Cu,Niは含有量(質量%)を示す。
  3. 焼入れ温度が300℃以下で、再加熱温度がAc+30℃〜Ac+100℃で、再加熱する際の加熱速度が5℃/s以上であることを特徴とする請求項1または2記載の高強度・高靭性鋼の製造方法。
  4. 焼入れ後に行う熱処理は、加熱保持後、少なくともAcから600℃以下までの温度域を加速冷却することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の低降伏比高強度・高靭性鋼の製造方法。
  5. 加速冷却後、更に焼戻しを行うことを特徴とする請求項4記載の低降伏比高強度・高靭性鋼の製造方法。
  6. 焼入れ時の冷却停止から、再加熱を開始するまでを180s以内で連続して行うことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一つに記載の低降伏比高強度・高靭性鋼の製造方法。
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