JP2008110582A - セルロースエステルフィルム、及びその製造方法 - Google Patents

セルロースエステルフィルム、及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 液晶表示装置の偏光板の保護フィルム及び位相差フィルムとして好適なセルロースエステルフィルムについて、泡故障による異物の発生率を、ドープの濾過工程において確実に抑える。その後の異物の発生がなく、生産性にも優れているセルロースエステルフィルム、及びその方法を提供する。
【解決手段】 溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法で、溶解釜3と、ドープ濾過装置1との間の主流送管路4に対してバイパス管路6を設け、バイパス管路6の途上に攪拌付き脱泡装置2を介在させておく。濾過装置1内にドープを初期充填させる際に、ドープを先に攪拌付き脱泡装置2に導入して、攪拌、脱泡し、充填初期のゲル状物質を微細化したドープを形成せしめ、このドープを濾過装置1に注入して初期充填することにより、濾過装置1内の空気および濾材内部の気泡を追い出した後、初期充填が完了した濾過装置1を用いて、流延製膜を行なう。
【選択図】 図1

Description

本発明は、特に液晶表示装置の偏光板の保護フィルム及び位相差フィルムとして好適なセルロースエステルフィルム、及びその製造方法に関するものである。
従来、液晶表示装置(LCD)は種々のところに使用されるに伴って、画像を見たときの高い視認性が要望され、特にLCDに使用される偏光板や位相差板もガラスのような平面性、異物などのスポット欠陥が無い高画質化が要望されている。
近年、液晶表示装置の高画質化、高精細化が一段と加速している。それに伴って液晶表示装置に用いられる偏光板保護フィルムに対しても、フィルムに含まれる異物の低減に対する要求が強くなってきている。偏光板用保護フィルムに用いられるセルロースエステルは半合成高分子であるため、エステル化工程の不均一反応による不要成分の生成だけでなく、出発原料品質の影響を強く受ける。そのため、一般的な合成高分子に比べて、不要成分除去の必要性が高い。
このため、従来は、溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造の際、ドープ流延部の上流側に濾過装置を配置し、ドープを流延する前に、1回以上濾過することにより、ドープから異物を取り除いた状態にしている。
ここで、従来の偏光板用保護フィルムに用いられるセルロースエステルフィルムの製造方法に関わる先行特許文献には、つぎのようなものがある。
特開2004−323549号公報 特許文献1には、より細かい異物をより多く捕集することを目的として、セルロースエステルドープの濾過において、高空隙・小捕集粒子径を特徴とする濾紙により、砂目状異物故障の大幅な改善と濾過時の圧力抵抗低減化、濾紙交換時のドープ除去性アップを図るとともに、目開きを起こしにくい濾紙を用いることにより、砂目状異物故障が改善されたセルロースエステルフィルムを提供する方法が開示されている。 特開2005−178239号公報 特許文献2には、微粒子を含有するセルロースエステルフィルムの製造方法において、微粒子を含有する添加液を主ドープに添加し、その後、捕集粒子径0.5〜5μmでかつ濾水時間が10〜25sec/100mlの濾材で濾過し、該ドープを流延してフィルムを製造する、セルロースエステルフィルムの製造方法が開示されている。
しかしながら、上記の特許文献1の方法によれば、異物を減らそうとして微粒子添加液を細かいフィルターで濾過すると、フィルターで微粒子の凝集物同士がくっついてさらに凝集し、フィルターに詰まって濾過圧が急激に上昇したりすることが多いという問題があった。
また、特許文献2では、捕集粒子径と濾水時間を規定した濾材(濾紙)で、ドープの濾過を行なっているが、濾材(濾紙)で微粒子の凝集物を除去することだけでは、根本的な解決には至らず、近年の高品質、かつ高生産性が求められている光学フィルムとしてのセルロースエステルフィルムの製造の現状では、充分でないという問題があった。
そして、これらの特許文献では、セルロースエステルの出発原料由来の未溶解物等の不要成分除去に主眼が置かれたものであるが、濾過装置におけるドープの充填方法を規定した特許文献は、これまでに開示されたことは無かった。
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、セルロースエステルフィルムに生じる泡故障による異物の発生率を、ドープの濾過工程において確実に抑えることができて、その後の異物の発生がなく、生産性にも優れている、セルロースエステルフィルムの製造方法、及びその方法で製造されたセルロースエステルフィルムを提供しようとすることにある。
本発明者は、上記の従来技術の問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、セルロースエステルフィルムに生じる異物の中には、泡を発生起因とするもの(泡故障)が存在していることが判明した。この泡について、さらに詳細に検討した結果、この泡は、濾過装置に新しく濾紙を装填後、濾過装置内をドープで充填させる際に、装置内でドープが充分に満たされなかったデッドスペースに溜まった空気溜まりから生じるものであることを、突き止めた。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、セルロースエステルを溶解したドープを、溶液流延製膜法によりセルロースエステルフィルムを製造する方法であって、セルロースエステルの溶解釜と、濾材を備えたドープ濾過装置との間の主流送管路に対してバイパス管路を設け、このバイパス管路の途上に攪拌付き脱泡装置を介在させておき、濾過装置内にドープを初期充填させる際に、ドープを先に攪拌付き脱泡装置に導入して、攪拌、脱泡することにより、充填初期のゲル状物質を微細化したドープを形成せしめ、このドープを濾過装置に注入して初期充填することにより、濾過装置内の空気および濾材内部の気泡を追い出した後、初期充填が完了した濾過装置に、溶解釜から主流送管路を経て送られてくるドープを導入して、流延製膜を行なうことを特徴としている。
請求項2の発明は、請求項1に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法であって、ドープの主流送管路に対して、ドープ濾過装置の出口からバイパス管路の始端部に戻るドープ循環管路をさらに設けておき、濾過装置内にドープを初期充填させる際に、ドープを先に攪拌付き脱泡装置に導入して、攪拌、脱泡することにより、充填初期のゲル状物質を微細化したドープを形成せしめ、このドープを濾過装置に注入して初期充填することにより、濾過装置内の空気および濾材内部の気泡を追い出し、濾過装置より排出された気泡を含むドープを、ドープ循環管路を経てバイパス管路の始端部に戻し、このドープを攪拌付き脱泡装置によって再度攪拌、脱泡した後、濾過装置に注入し、初期充填が完了した濾過装置に、溶解釜から主流送管路を経て送られてくるドープを導入して、流延製膜を行なうことを特徴としている。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法であって、濾過装置の濾材が、捕集粒子径0.5〜5μmでかつ濾水時間10〜25sec/100mlを有するものであることを特徴としている。
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法であって、攪拌付き脱泡装置の攪拌翼の回転数が1500〜2000rpmであることを特徴としている。
請求項5の発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法により製造され、かつフィルム上の泡故障が、フィルム1mあたり2個以下であることを特徴としている。
請求項1のセルロースエステルフィルムの製造方法の発明は、セルロースエステルを溶解したドープを、溶液流延製膜法によりセルロースエステルフィルムを製造する方法であって、セルロースエステルの溶解釜と、濾材を備えたドープ濾過装置との間の主流送管路に対してバイパス管路を設け、このバイパス管路の途上に攪拌付き脱泡装置を介在させておき、濾過装置内にドープを初期充填させる際に、ドープを先に攪拌付き脱泡装置に導入して、攪拌、脱泡することにより、充填初期のゲル状物質を微細化したドープを形成せしめ、このドープを濾過装置に注入して初期充填することにより、濾過装置内の空気および濾材内部の気泡を追い出すものである。このように、ゲル状物質を微細化したドープを濾過装置に注入すると、ドープは濾材に浸透されやすく、濾材の隅々にまで行き渡り、濾材内部の気泡を追い出すことができる。その後、初期充填が完了した濾過装置に、溶解釜から主流送管路を経て送られてくるドープを導入して、流延製膜を行なうものである。本発明によれば、セルロースエステルフィルムに生じる泡故障による異物の発生率を、ドープの濾過工程において確実に抑えることができて、異物の発生がないセルロースエステルフィルムを製造することができ、しかも生産性にも優れているという効果を奏する。
また、攪拌付き脱泡装置によりドープを攪拌、脱泡して、ドープ中のゲル状物質を微細化することにより、た充填初期に発生する濾過装置のフィルターの目詰まりが抑えられ、濾過装置(フィルタープレス)の寿命が延びるという副次効果が得られた。
請求項2の発明は、請求項1に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法であって、ドープの主流送管路に対して、ドープ濾過装置の出口からバイパス管路の始端部に戻るドープ循環管路をさらに設けておき、濾過装置内にドープを初期充填させる際に、ドープを先に攪拌付き脱泡装置に導入して、攪拌、脱泡することにより、充填初期のゲル状物質を微細化したドープを形成せしめ、このドープを濾過装置に注入して初期充填することにより、濾過装置内の空気および濾材内部の気泡を追い出し、濾過装置より排出された気泡を含むドープを、ドープ循環管路を経てバイパス管路の始端部に戻し、このドープを攪拌付き脱泡装置によって再度攪拌、脱泡した後、濾過装置に注入するものである。このようにすると、ゲル状物質を微細化したドープが濾過装置の濾材の隅々にまで行き渡って、濾材内部の気泡を確実に追い出すことができる。そして、これを繰り返すことにより、初期充填が完了した濾過装置に、溶解釜から主流送管路を経て送られてくるドープを導入して、流延製膜を行なうものである。本発明によれば、セルロースエステルフィルムに生じる泡故障による異物の発生率を、ドープの濾過工程において確実に抑えることができて、異物の発生がないセルロースエステルフィルムを製造することができ、しかも濾過装置の初期充填の際、濾過装置より排出された気泡を含むドープをドープ循環管路によってバイパス管路の始端部に戻し、攪拌付き脱泡装置によって再度攪拌、脱泡した後、濾過装置に注入して、流延製膜に供するため、ドープの無駄がなく、生産性にも優れているという効果を奏する。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法であって、濾過装置の濾材が、捕集粒子径0.5〜5μmでかつ濾水時間10〜25sec/100mlを有するものであるから、本発明によれば、セルロースエステルフィルムに生じる泡故障による異物の発生率を、ドープの濾過工程において、より一層確実に抑えることができて、その後の異物の発生がなく、生産性にも優れている、セルロースエステルフィルムを製造することができるという効果を奏する。
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法であって、攪拌付き脱泡装置の攪拌翼の回転数が1500〜2000rpmであるから、本発明によれば、濾過装置内にドープを初期充填させる際に、溶解かにおいて作製したドープを先に攪拌付き脱泡装置に導入して、攪拌、脱泡することにより、充填初期のゲル状物質を充分に微細化したドープを形成せしめることができ、これによって、ドープは濾材に浸透されやすく、濾材の隅々にまで行き渡り、濾材内部の気泡を追い出すことができて、セルロースエステルフィルムに生じる泡故障による異物の発生率を、ドープの濾過工程において確実に抑えることができて、異物の発生がないセルロースエステルフィルムを製造することができるという効果を奏する。
請求項5のセルロースエステルフィルムの発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法により製造され、かつフィルム上の泡故障が、フィルム1mあたり2個以下であるもので、本発明によれば、セルロースエステルフィルムに泡故障よりなる異物の発生がなく、セルロースエステルフィルムは、光学特性に優れているという効果を奏する。
つぎに、本発明の実施の形態を図面を参照して説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
図1は、本発明によるセルロースエステルフィルムの製造方法を実施する装置のフローシートを示すものである。同図を参照すると、本発明によるセルロースエステルフィルムの製造方法は、セルロースエステルを溶解したドープを、溶液流延製膜法によりセルロースエステルフィルムを製造する方法であって、セルロースエステルの溶解釜(3)と、濾材を備えたドープ濾過装置(1)との間の主流送管路(4)に対してバイパス管路(6)を設け、このバイパス管路(6)の途上に攪拌付き脱泡装置(2)を介在させておく。濾過装置(1)内にドープを初期充填させる際に、ドープを先に攪拌付き脱泡装置(2)に導入して、攪拌、脱泡することにより、充填初期のゲル状物質を微細化したドープを形成せしめ、このドープを濾過装置(1)に注入して初期充填することにより、濾過装置(1)内の空気および濾材内部の気泡を追い出した後、初期充填が完了した濾過装置(1)に、溶解釜(3)から主流送管路(4)を経て送られてくるドープを導入して、流延製膜を行なうものである。
そして、図1においては、ドープの主流送管路(4)に対して、ドープ濾過装置(1)の出口からバイパス管路(6)の始端部に戻るドープ循環管路(7)をさらに設けておき、濾過装置(1)内にドープを初期充填させる際に、ドープを先に攪拌付き脱泡装置(2)に導入して、攪拌、脱泡することにより、充填初期のゲル状物質を微細化したドープを形成せしめ、このドープを濾過装置(1)に注入して初期充填することにより、濾過装置(1)内の空気および濾材内部の気泡を追い出し、濾過装置(1)より排出された気泡を含むドープを、ドープ循環管路(7)を経てバイパス管路(6)の始端部に戻し、このドープを攪拌付き脱泡装置(2)によって再度攪拌、脱泡した後、濾過装置(1)に注入するのが、好ましい。ついで、初期充填が完了した濾過装置(1)に、溶解釜(3)から主流送管路(4)を経て送られてくるドープを導入して、流延製膜を行なうものである。
以下に、本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法について、詳しく説明する。
本発明の方法において使用するセルロースエステルは、綿花リンターから合成されたセルロースエステルと木材パルプから合成されたセルロースエステル、それ以外の原料から合成されたセルロースエステルを単独あるいは混合して用いることができる。
本発明に用いられるセルロースエステルとしては、セルロースの低級脂肪酸エステルが好ましく用いられる。
セルロースエステルの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味し、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等、また特開平10−45804号公報、同8−231761号公報、米国特許第2,319,052号公報等に記載されているセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルなどがセルロースの低級脂肪酸エステルの例として挙げられる。
セルロースエステルのアシル基の置換度の測定方法としては、ASTM−D−817−96に準じて実施することができる。
上記脂肪酸の中でも、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられるが、本発明のセルロースエステルフィルムの場合には、フィルム強度の観点から、特に重合度250〜400のものが好ましく用いられる。
本発明のセルロースエステルフィルムは、総アシル基置換度が2.5〜3.0のセルロースエステルが好ましく用いられるが、特に、総アシル基置換度が2.55〜2.85のセルロースエステルが好ましく用いられる。総アシル基置換度が2.55以上になるとフィルムの機械強度が増加し、2.85以下になるとセルロースエステルの溶解性が向上したり、異物の発生が低減されるため、より好ましい。
偏光板保護フィルムとして用いる場合は、セルロースアセテートがより好ましく、重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnで除した分子量分布Mw/Mnが1.8〜3.0であることがさらに好ましい。
セルロースエステルフィルムの主ドープを作製する際に使用される溶媒としては、セルロースエステルを溶解できる溶媒であれば特に限定はされないが、また単独で溶解できない溶媒であっても他の溶媒と混合することにより、溶解できるものであれば使用することができる。一般的には、良溶媒であるメチレンクロライドとセルロースエステルの貧溶媒からなる混合溶媒を用い、かつ混合溶媒中には貧溶媒を4〜30重量%含有するものが好ましく用いられる。
この他、使用できる良溶媒としては、例えばメチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることができるが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン誘導体、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン等が好ましい有機溶媒(すなわち、良溶媒)として挙げられる。酢酸メチルを用いると、得られるフィルムのカールが少なくなるため特に好ましい。
セルロースエステルの貧溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等の炭素原子数1〜8のアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、モノクロルベンゼン、ベンゼン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることができ、これらの貧溶媒は、単独もしくは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
セルロースエステル系樹脂の溶解工程では、セルロースエステル系樹脂と共に、セルロースエステルフィルムの返材を用いても良い。返材の使用比率は、主ドープ等の処方値の固形分に対して0〜70重量%が好ましく、10〜50重量%がさらに好ましく、20〜40重量%が最も好ましい。返材使用量の多い方が、濾過性に優れ、返材使用量の少ない方が、滑り性に優れるため、上記範囲にすることが好ましい。
返材とは、セルロースエステルフィルムを細かく粉砕した物で、セルロースエステルフィルムを製膜するときに発生する、フィルムの両サイド部分を切り落とした物や、擦り傷などでスペックアウトしたセルロースフィルム原反が使用される。
返材を使用した場合は、その使用量に対応して、後述する紫外線吸収剤、可塑剤などセルロースエステルフィルムに含まれる添加剤は減量して、最終的なセルロースエステルフィルム組成が設計値になるように調整を行なう必要がある。
本発明によるセルロースエステルフィルムの製造方法は、セルロースエステル系樹脂を主溶媒に溶解させる工程で、微粒子を添加し、添加後、主溶媒の沸点以上の温度で溶解混合するものである。
本発明に使用される微粒子としては、無機化合物の例として、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子は、ケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化ケイ素が好ましい。二酸化ケイ素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見掛け比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmがより好ましく、5〜12nmがさらに好ましい。1次粒子の平均径が小さい方がヘイズが低く好ましい。見掛け比重は、90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がさらに好ましい。見掛け比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
微粒子の添加量は、1mあたり0.02〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gがさらに好ましく、0.08〜0.2gが最も好ましい。
例えば、セルロースエステルに対する二酸化ケイ素微粒子の添加量は、セルロースエステルに対して、二酸化ケイ素微粒子は0.01〜5.0重量%が好ましく、0.05〜1.0重量%がさらに好ましく、0.1〜0.6重量%が最も好ましい。添加量は多い方が、動摩擦係数に優れ、添加量が少ない方が、凝集物が少なくなる。
二酸化ケイ素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上、日本アエロジル株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。
本発明によるセルロースエステルフィルムの製造方法では、微粒子が、二酸化ケイ素微粒子であるのが好ましい。というのは、一般的に温度により粘度に影響が与えやすいことが知られている二酸化ケイ素(シリカ)微粒子は、添加後に溶媒の沸点以上で攪拌混合されることは好ましくないとされるが、本発明では、セルロースエステル樹脂の溶解工程、好ましくは、主溶媒に対するセルロースエステル樹脂の添加溶解途中に、二酸化ケイ素(シリカ)微粒子を添加することによって、従来はドープに微粒子をインライン添加する時のショックで発生する凝集が起因と見られるセルロースエステル製造時の異物故障に対して、極端にその発生防止の効果があり、異物の発生がなく、生産性にも優れているセルロースエステルフィルムを製造することができる。
ポリマー微粒子の例として、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン株式会社製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でアエロジル200V、アエロジルR972Vが1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見掛け比重が70g/リットル以上である二酸化ケイ素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
ここで、セルロースエステル系樹脂溶解工程における微粒子の溶解混合を、主溶媒の沸点以上、同沸点+50℃以下の温度で行なうのが、好ましい。このように、セルロースエステル系樹脂溶解工程における微粒子の溶解混合の温度を、主溶媒の沸点+50℃以下の温度に規定することにより、異物発生率を、ドープの溶解混合工程において確実に抑えることができる。
また、セルロースエステル系樹脂溶解工程における微粒子の溶解混合を、60分以上、300分以下の時間行なうのが、好ましい。このように、セルロースエステル系樹脂溶解工程における微粒子の溶解混合の時間を規定することにより、セルロースエステルフィルムにおける微粒子の変動係数(分布)の劣化がなく、また生産適性上の観点からも好ましい。
さらに、セルロースエステル系樹脂の溶解工程で添加する微粒子を、セルロースエステル系樹脂の溶解釜への添加中か、または添加後、セルロースエステル系樹脂が溶解釜で完全溶解される前までに添加するのが、好ましい。このように、セルロースエステル系樹脂の溶解工程での微粒子の添加のタイミングを規定することにより、セルロースエステル樹脂溶液(ドープ)に含有される微粒子の添加起因による異物発生率を、ドープの溶解混合工程において確実に抑えることができて、その後の濾過工程でのフィルターへの負担を大幅に軽減し、異物の発生がなく、生産性にも優れている。
本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法においては微粒子の分散液を予め調製し、この微粒子分散液を、セルロースエステル系樹脂を主溶媒に溶解させる工程で添加し、添加後、主溶媒の沸点以上の温度で溶解混合する。
微粒子を分散するときに使用する溶剤は、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることができる。特にアルコールが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等の炭素原子数1〜8の等が挙げられる。
微粒子を溶剤と混合して分散するときの微粒子の濃度は、5〜30重量%が好ましく、8〜25重量%がさらに好ましく、10〜15重量%が最も好ましい。微粒子分散液中の微粒子濃度は、高い方が、添加量に対する液濁度は低くなる傾向があり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
微粒子を溶剤と少量の樹脂とを混合して分散するときの微粒子の濃度は、0.5〜10重量%が好ましく、1〜5重量%がさらに好ましく、1〜3重量%が最も好ましい。樹脂の濃度は、2〜10重量%が好ましく、3〜7重量%がさらに好ましく、4〜6重量%が最も好ましい。この範囲が微粒子の分散性に優れるため好ましい。なお、微粒子の含有量の少ない方が、低粘度で取り扱いやすく、微粒子の含有量の多い方が、添加量が少なく、主ドープへの添加が容易になるため、上記の範囲が好ましい。
微粒子を分散する分散機は、通常の分散機が使用できる。分散機は、大きく分けてメディア分散機とメディアレス分散機に分けられる。微粒子の分散には、メディアレス分散機がヘイズが低く好ましい。
メディア分散機としては、ボールミル、サンドミル、ダイノミルなどが挙げられる。
メディアレス分散機としては、超音波型、遠心型、高圧型などがあるが、本発明においては、高圧分散装置が好ましい。高圧分散装置は、微粒子と溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作りだす装置である。高圧分散装置で処理することにより、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が100kgf/cm以上であることが好ましい。さらに好ましくは200kgf/cm以上である。またその際、最高到達速度が100m/sec以上に達するもの、伝熱速度が100kcal/hr以上に達するものが好ましい。
上記のような高圧分散装置には、MicrofluidicsCorporation社製の超高圧ホモジナイザー(商品名マイクロフルイダイザー)あるいはナノマイザー社製ナノマイザー、あるいはウルトラタラックスがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモゲナイザー、三和機械株式会社社製、品番UHN−01等が挙げられる。
セルロースエステルフィルムに含まれる微粒子中の、例えばシリカ(Si)分含量は、絶乾したセルロースエステルフィルムをマイクロダイジェスト湿式分解装置(硫硝酸分解)、アルカリ溶融で前処理を行なった後、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)を用いて分析を行なうことによって求めることができる。
本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法では、セルロースエステル系樹脂の溶解工程で添加する微粒子分散液に、セルロースエステル系樹脂と同じ樹脂が溶解混合されており、微粒子分散液の固形物比率が、溶解工程で溶解するセルロースエステル系樹脂溶液(ドープ)の固形物比率の0.1〜0.5倍であることが好ましい。
このように、微粒子分散液に、微粒子の他にセルロースエステルが含まれていることにより、分散液の粘度が調整され、停滞安定性に優れる点で好ましい。
ここで、セルロースエステルは、主ドープと同じものが使用できる。また、主ドープと同様に返材を使用しても構わない。
本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法において、セルロースエステル系樹脂のドープには、紫外線吸収剤が添加される。
ここで、紫外線吸収剤は、400nm以下の紫外線を吸収することで、耐久性を向上させることを目的としており、特に波長380nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下である。
本発明に用いられる紫外線吸収剤は、20℃の温度下で液体である紫外線吸収剤が好ましい。20℃の温度下で液体の紫外線吸収剤を使用すると、フィルムを延伸したときに厚み方向リタデーション(Rt)値の変化が少なく好ましい。
好ましく用いられる紫外線吸収剤は、透明性が高く、偏光板や液晶素子の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤であり、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましい。
本発明に用いられる紫外線吸収剤の具体例として、例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等があり、また、チヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328等のチヌビン類があり、これらはいずれもチバスペシャルティケミカルズ社製の市販品であり好ましく使用できる。これらの中で、チヌビン109、チヌビン171は、20℃の温度下で液体の紫外線吸収剤であり、さらに好ましく使用することができる。
本発明によるセルロースエステルフィルムは、紫外線吸収剤を2種以上を含有することが好ましい。
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、セルロースエステルフィルムの乾燥膜厚が30〜200μmの場合は、セルロースエステルフィルムに対して0.5〜4.0重量%が好ましく、0.6〜2.0重量%がさらに好ましい。
なお、本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法において、紫外線吸収剤を、微粒子分散液とは別に、セルロースエステル系樹脂の溶解工程で主ドープに添加する場合もある。この場合、紫外線吸収剤は添加液の形で添加するのが好ましく、ここで、紫外線吸収剤を含有した添加液とは、上記の紫外線吸収剤を含有し、主ドープへ添加される液のことであり、紫外線吸収剤を1〜30重量%含有していることが好ましく、5〜20重量%含有していることがさらに好ましく、10〜15重量%含有していることが最も好ましい。紫外線吸収剤の含有量の少ない方が、セルロースエステルの溶解性に優れ、紫外線吸収剤の含有量の多い方が、添加量が少なく、添加が容易になるため、上記の範囲が好ましい。
紫外線吸収剤添加液には、紫外線吸収剤の他にセルロースエステルが含まれていることが、添加液の粘度を調整する点で好ましい。セルロースエステルは、主ドープと同じものが使用できる。また、主ドープと同様に返材を使用しても構わない。
また、本発明の方法において、セルロースエステル系樹脂ドープ中には、可塑剤、酸化防止剤等が好ましく添加される。
本発明で用いることのできる可塑剤としては、特に限定しないが、リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート(TPP)、ビフェニルジフェニルホスフェート(BDP)、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート(EPEG)、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等を用いることができる。
上記の可塑剤は必要に応じて、2種類以上を併用して用いてもよい。これらの可塑剤を含有することにより、寸法安定性、耐水性に優れたフィルムが得られるため、特に好ましい。
本発明において、吸水率ならびに水分率を特定の範囲内にするために、好ましい可塑剤の添加量としては、セルロースエステルに対する重量%で、12重量%以下である。可塑剤を2種類以上併用する場合には、これらの可塑剤の合計量が12重量%以下であれば、良い。
本発明の光学フィルムにおいては、上記可塑剤の他にも可塑剤と同様の作用を示す添加剤が含有させることができる。これらの添加剤としては、例えば、セルロースエステルフィルムを可塑化することのできる低分子有機化合物であれば、可塑剤と同様の効果を得ることができる。これらの成分は可塑剤に比べ直接フィルムを可塑化する目的で添加されるものではないが、量に応じて上記可塑剤と同様の作用を示す。
本発明によるセルロースエステルフィルムには、脂肪族多価アルコールと1種以上のモノカルボン酸との多価アルコールエステルからなる化合物を含有することができる。セルロースエステルに対する多価アルコールエステルの含有量が4.5〜12.5重量%、好ましくは6〜12重量%、さらに好ましくは7〜11重量%である。
本発明のセルロースエステルフィルムにおいて、上記モノカルボン酸は、分子内に芳香族環またはシクロアルキル環を有する化合物であるのが、好ましい。
本発明のセルロースエステルフィルムにおいて、脂肪族多価アルコールは2〜20価であるのが、好ましい。
このように、多価アルコールエステルを使用することにより、従来の可塑剤を減量できることの寄与が大きい。
つぎに、本発明に用いられる脂肪族多価アルコールエステルについて説明すると、脂肪族多価アルコールエステルは、2価以上の脂肪族多価アルコールと1種以上のモノカルボン酸とのエステルである。
(脂肪族多価アルコール)
本発明に用いられる脂肪族多価アルコールは、2価以上のアルコールで次の一般式(1)で表される。
−(OH)n …(1)
ただし、式中、Rはn価の脂肪族有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性及び/またはフェノール性水酸基を表す。
ここで、n価の脂肪族有機基としては、アルキレン基(例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等)、アルケニレン基(例えばエテニレン基等)、アルキニレン基(例えばエチニレン基等)、シクロアルキレン基(例えば1,4−シクロヘキサンジイル基等)、アルカントリイル基(例えば1,2,3−プロパントリイル基等)が挙げられる。n価の脂肪族有機基は置換基(例えばヒドロキシ基、アルキル基、ハロゲン原子等)を有するものを含む。
nは2〜20が好ましい。好ましい多価アルコールの例としては、例えばアドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
(モノカルボン酸)
本発明において、多価アルコールエステルにおけるモノカルボン酸としては、特に制限はなく公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては、以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることがさらに好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有するとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。これらはさらに置換基を有しても良い。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
(多価アルコールエステル)
本発明に用いられる多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることがさらに好ましい。保留性の点では大きい方が好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
本発明において、多価アルコールエステルにおけるカルボン酸は一種類でも、二種以上の混合でもよい。また、多価アルコール中のOH基は全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。好ましくは、分子内に芳香環もしくはシクロアルキル環を3つ以上有することが好ましい。
本発明に用いられる多価アルコールエステルの例を以下に示す。
本発明において、多価アルコールエステルとしては、トリメチロールプロパントリベンゾエート(TMPTB)、トリメチロールプロパントリアセテート、トリメチロールプロパントリプロピオネート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリプロピレングリコールジベンゾエート、1,3−ジブチレングリコールジベンゾエート、テトラエチレングリコールジベンゾエート、トリメチロールプロパンと酢酸及び安息香酸との混合エステル、トリメチロールプロパンとシクロヘキサンカルボン酸とのエステル、トリメチロールプロパンと酢酸及びシクロヘキサンカルボン酸との混合エステル、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールとシクロヘキサンカルボン酸とのエステル、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオールと安息香酸とのエステル、キシリトールと安息香酸とのエステル、キシリトールとシクロヘキサンカルボン酸とのエステルが好ましい。
なお、多価アルコールエステルの使用量は、セルロースエステルに対して4.5〜12.5重量%が好ましく、6〜12重量%がさらに好ましく、特に好ましくは7〜11重量%である。
本発明によるセルロースエステルフィルムは、セルロースエステルと溶剤、及び上記多価アルコールエステルからなる化合物のほかに、可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有している。
多価アルコールエステルからなる化合物、可塑剤、紫外線吸収剤等の添加剤は、予め溶剤と混合し、溶解または分散してからセルロースエステル溶解前の溶剤に投入しても、セルロースエステル溶解後のドープへ投入しても良い。
上記の多価アルコールエステルは、可塑剤機能を有しており、このような多価アルコールエステルと、従来の可塑剤とを同時に使用することができる。その場合、多価アルコールエステルは、上記のように、セルロースエステルに対して4.5〜12.5重量%の範囲で使用することができるが、多価アルコールエステルと可塑剤との合計量が、セルロースエステルに対する重量%で12.5重量%以下であることが、好ましい。またこの場合には、可塑剤の使用量は、セルロースエステルに対して8.0重量%以下であるのが、好ましい。中でも、多価アルコールエステルの使用量が、セルロースエステルに対して7重量%以上であることが好ましく、さらには、可塑剤の使用量は、セルロースエステルに対して5.5重量%以下であることが好ましい。その理由は、多価アルコールエステルの使用により、従来の可塑剤の使用量を低減することが可能となるためである。
本発明の好ましい態様であるセルロースエステルフィルムの製造方法について詳しく説明する。
本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法に用いられる溶液流延製膜法は、下記に示す溶解工程、濾過工程、流延工程、溶媒蒸発工程、剥離工程、乾燥工程及び巻き取り工程からなる。以下に各々の工程を説明する。
本発明の溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造方法においては、まず、主ドープの溶解工程において、セルロースエステルのフレークに、前述の良溶媒を主とする有機溶媒に溶解釜中で該フレークを攪拌しながら溶解し、ドープを形成する。
一方、微粒子分散液の調製釜でドープに添加する微粒子分散液を調製し、この微粒子分散液を主ドープ溶解釜へ導入して、セルロースエステル系樹脂溶液(ドープ)に添加する。この場合、セルロースエステル系樹脂の溶解工程で添加する微粒子を、セルロースエステル系樹脂の溶解釜への添加中か、または添加後、セルロースエステル系樹脂が溶解釜で完全溶解される前までに添加するのが、好ましい。セルロースエステル系樹脂溶液(ドープ)には、その他、可塑剤、酸化防止剤等が含まれている。
本発明では、ドープ中の固形分濃度は、15重量%以上に調整することが好ましく、特に18〜35重量%のものが好ましく用いられる。
ドープ中の固形分濃度が高過ぎるとドープの粘度が高くなり過ぎ、流延時にシャークスキンなどが生じてフィルム平面性が劣化する場合があるので、35重量%以下であることが望ましい。
ドープ粘度は、10〜50Pa・sの範囲に調整されることが好ましい。
溶解には、常圧で行なう方法、好ましい有機溶媒(すなわち、良溶媒)の沸点以下で行なう方法、上記の良溶媒の沸点以上で加圧して行なう方法、冷却溶解法で行なう方法、高圧で行なう方法等種々の溶解方法等がある。良溶媒の沸点以上の温度で、かつ沸騰しない圧力をかけて溶解する方法としては、40.4〜120℃で0.11〜1.50MPaに加圧することで発泡を抑え、かつ、短時間に溶解することができる。
本発明の方法において、紫外線吸収剤、可塑剤、酸化防止剤等の添加物は、セルロースエステル系樹脂溶液の調製の際に、セルロースエステル系樹脂や溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。
このようにして得られたドープは、ついで濾過装置に導いて濾過する。ここで、濾過の方法にはいくつかの手段があるが、本発明におけるような高粘度のセルロースエステルのドープの濾過では、フィルタープレスやディスクフィルターが適しており、特に濾過面積を広くとれる点で、フィルタープレス方式の濾過が、生産性の観点から適している。
本発明によるセルロースエステルフィルムの製造方法を実施する装置のフローシートを示す図1を参照すると、本発明によるセルロースエステルフィルムの製造方法において、セルロースエステルを溶解したドープは、溶解釜(3)から静置タンク(ストックタンク、図示略)に一旦貯えられる。そして、本発明においては、溶解釜(3)と、濾材を備えたドープ濾過装置(1)との間の主流送管路(4)に対してバイパス管路(6)を設け、このバイパス管路(6)の途上に攪拌付き脱泡装置(2)を介在させておく。また、ドープの主流送管路(4)に対しては、ドープ濾過装置(1)の出口からバイパス管路(6)の始端部に戻るドープ循環管路(7)をさらに設けておく。ドープ主流送管路(4)にはポンプ(5)と、濾過装置(1)の前後両側に位置する開閉バルブ(13)(14)とが介在させられ、バイパス管路(6)の始端部は、ポンプ(5)と開閉バルブ(13)との間においてドープ主流送管路(4)に接続されている。バイパス管路(6)の始端部寄り部分には、開閉バルブ(15)が介在され、攪拌付き脱泡装置(2)を越えたバイパス管路(6)の終端部は、開閉バルブ(14)と濾過装置(1)入口との間においてドープ主流送管路(4)に接続されている。また、ドープ循環管路(7)の始端部は、濾過装置(1)出口と開閉バルブ(15)との間においてドープ主流送管路(4)に接続され、ドープ循環管路(7)の終端部は、バイパス管路(6)の始端部に連通するように、ドープ主流送管路(4)に接続されている。ドープ循環管路(7)の始端部寄り部分、および同終端部寄り部分には、それぞれ開閉バルブ(16)(17)が介在させられている。
そして、濾過装置(1)内にドープを初期充填させる際には、ドープ主流送管路(4)の濾過装置(1)の手前に位置する開閉バルブ(13)を閉じるとともに、ドープ循環管路(7)の終端部寄り部分の開閉バルブ(17)を閉じ、バイパス管路(6)の始端部寄り部分の開閉バルブ(15)を開けて、溶解釜(3)からポンプ(5)の作動により送られてくるドープを、先に攪拌付き脱泡装置(2)に導入して、攪拌、脱泡することにより、充填初期のゲル状物質を微細化したドープを形成せしめる。そして、このドープを濾過装置(1)に注入して初期充填することにより、濾過装置(1)内の空気および濾材内部の気泡を追い出すものである。このように、ゲル状物質を微細化したドープを濾過装置に注入すると、ドープは濾材に浸透されやすく、濾材の隅々にまで行き渡り、濾材内部の気泡を追い出すことができる。その後、初期充填が完了した濾過装置(1)に、溶解釜から主流送管路を経て送られてくるドープを導入して、流延製膜を行なうものである。
なおここで、濾過装置(1)へのドープの初期充填の際、攪拌付き脱泡装置(2)の作用によりゲル状物質を微細化したドープを濾過装置(1)に注入して初期充填し、濾過装置(1)内の空気および濾材内部の気泡を追い出すものであるが、この濾過装置(1)より排出された気泡を含むドープは、これを取り出して、溶解釜(3)あるいはまた静置タンク(ストックタンク、図示略)に返送するのが、好ましい。
図1に示す本発明の実施形態においては、ドープの主流送管路(4)に対して、ドープ濾過装置(1)の出口からバイパス管路(6)の始端部に戻るドープ循環管路(7)がさらに設けられている。そして、初期充填の際、ドープ循環管路(7)の始端部と終端部寄り部分の2つの開閉バルブ(16)(17)をそれぞれ開けておき、濾過装置(1)より排出された気泡を含むドープを、ドープ循環管路(7)を経てバイパス管路(6)の始端部に戻して、さらに攪拌付き脱泡装置(2)によって気泡を含むドープを再度攪拌、脱泡することにより、ドープ内の気泡が除去、消失せしめられるとともに、ゲル状物質がさらに微細化されたドープが得られ、このドープを濾過装置(1)に注入すると、該ドープは濾材に浸透されやすく、濾材の隅々にまで行き渡り、濾材内部の気泡を追い出すことができるものである。
その後、初期充填が完了した濾過装置(1)に、溶解釜(3)から主流送管路(4)を経て送られてくるドープを導入して、流延製膜を行なうものである。
このような本発明の方法によれば、濾過装置(1)に新しく濾材を装填後の初期段階において、濾過装置(1)内をドープで充填させる際に、濾過装置(1)内でドープが充分に満たされないデッドスペースを生じるのを、有効に阻止することができ、従来、このようなデッドスペースに溜まった空気溜まりから、ドープ中に泡が生じるのを防止することができるものである。
このような本発明のセルロースエステルフィルムの製造装置によれば、セルロースエステルフィルムに生じる泡故障による異物の発生率を、ドープの濾過工程において確実に抑えることができて、泡故障による異物数が大幅に減少して、光学特性に優れたセルロースエステルフィルムを製造することができ、しかも生産性にも優れている。
また、本発明において、攪拌付き脱泡装置(2)によりドープを攪拌、脱泡して、ドープ中のゲル状物質を微細化することにより、た充填初期に発生する濾過装置(1)のフィルターの目詰まりが抑えられ、濾過装置(フィルタープレス)(1)の寿命が延びるという副次効果が得られた。
本発明においては、濾過装置(1)の濾材は濾紙であることが好ましい。この濾紙を使用することで、異物の原因となる微粒子などの凝集物だけを除去し、高粘度の主ドープを連続的に濾過できるため、異物故障がなく、原反保存性にも優れ、高速製膜が可能となり、生産性が向上するものである。
上記において、濾過装置(1)の濾材の捕集粒子径とは、JIS Z 8901に準拠して測定されるものであって、90%以上捕集可能な粒子のうち最も小さい粒子径をいうものである。
本発明の濾過装置(1)の濾材の捕集粒子径は、0.5〜5μmであり、1〜4μmが好ましく、2〜3μmが最も好ましい。濾材の捕集粒子径が0.5μm未満では、異物ではない微粒子まで捕捉してしまい、急激に濾圧が上昇するため好ましくなく、捕集粒子径が5μmを越えると、異物の原因となる微粒子の凝集物まで通過してしまうため好ましくない。
また、濾過装置(1)の濾材の濾水時間とは、JIS P 3801に準拠して測定されるものであって、ヘルツベルヒ濾過速度試験器を使用し、10cm2の濾過面において、20℃、100mlの蒸留水を0.98kPaの圧力により濾過する時間をいうものである。
本発明において、濾過装置(1)の濾材の濾水時間は、10〜25sec/100mlであり、10〜20sec/100mlが好ましく、12〜17sec/100mlが最も好ましい。ここで、濾材の濾水時間が10sec/100ml未満で短いと、濾紙等の濾材の強度が弱いため、圧力によって濾紙が目開きし、異物故障が増大する。また濾材の濾水時間が25sec/100mlを超えて長くなると、初期圧力が高く、濾過抵抗が高くなり過ぎ、高流量濾過を連続的に行うことができず、またそのために、フィルターライフが短くなるので、好ましくない。
濾過装置(1)の濾紙の捕集粒子径や濾水時間は濾紙の繊維の太さ、材質(綿花リンター、木材パルプ、レーヨン、ポリエステル繊維など)などの繊維材の選定、繊維材を叩解機での叩解度合い、填料の添加など、濾紙の製造方法によって、任意に調整できるものである。
本発明において、濾過装置(1)の濾紙は1枚でも効果を発揮するが、濾紙は2〜7枚程度重ね合わせて使用すると、濾過効率が高くなるため更に好ましい。同じ濾紙を組み合わせても構わないし、内側に保留粒子径の小さい濾紙を組み合わせても良い。また、外側に大きなゴミを除去するためのガード濾紙を使用することが好ましい。ガード濾紙は捕集粒子径が20μm以上と大きく、柔らかい綿のような濾紙が濾過圧力に影響せず大きなゴミの除去ができ、また濾過装置(1)の液漏れ防止もできるため好ましい。また、1回濾過した主ドープ液をもう1回濾過する2段濾過も凝集物除去効果が大きく好ましい。
本発明の濾過装置(1)において、泡故障(異物)の少ないセルロースエステルフィルムを得るには、特に、捕集粒子径0.5〜5μmでかつ濾水時間が10〜25sec/100mlの濾紙を用いて濾過することで達成できるが、この場合、濾過圧力を16kg/cm以下で濾過して製膜することが好ましい。より好ましくは、濾過圧力を12kg/cm以下、さらに好ましくは、濾過圧力を10kg/cm以下で濾過することである。なお、濾過圧力は、濾過流量と濾過面積を適宜選択することで、コントロールできる。
図示の攪拌付き脱泡装置(2)は、脱泡装置(脱泡ポンプ)本体に翼回転機構(8)とこれを駆動するモータ(9)とを具備するものであり、攪拌付き脱泡装置(2)の攪拌翼(図示略)の回転数は、1500〜2000rpmであるのが、好ましい。
本発明において、このような攪拌付き脱泡装置(2)を用いることにより、濾過装置(1)内にドープを初期充填させる際に、溶解釜において作製したドープを先に攪拌付き脱泡装置(2)に導入して、攪拌、脱泡するときに、充填初期のゲル状物質を充分に微細化したドープを形成せしめることができ、これによって、ドープは濾材に浸透されやすく、濾材の隅々にまで行き渡り、濾材内部の気泡を追い出すことができて、セルロースエステルフィルムに生じる泡故障による異物の発生率を、ドープの濾過工程において確実に抑えることができて、異物の発生がないセルロースエステルフィルムを製造することができるものである。
本発明においては、上記のように特定の方法により濾過したドープを用いて、以下に記載する流延工程を経て、セルロースエステルフィルムを製造することができる。
上記のようにして濾過した後のドープは、流延ダイ(10)に導入し、溶液流延製膜法によりセルロースエステルフィルムを作製する。
なお、濾過後のドープは、一旦、ドープストック釜(図示略)に貯えるのが、好ましい。また、本発明の方法においては、微粒子の分散液に、紫外線吸収剤を含有させておくのが、好ましいが、これに限らず、添加液溶解釜で紫外線吸収剤添加液を予め作成しておき、上記のドープを、例えばスタティックミキサーに導入するとともに、スタティックミキサーの手前において紫外線吸収剤添加液を導入して、ドープに紫外線吸収剤添加液をインライン添加しても良い。紫外線吸収剤添加液を添加後のドープは、流延ダイ(10)に導入する。
本発明においては、このようにして作製した流延用ドープを、流延ダイ(10)によって支持体(11)上に流延する。ここで、流延ダイ(10)としては、ダイの口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一にしやすい加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があり、いずれも好ましく用いられる。
また支持体(11)には、ステンレス鋼製の回転駆動エンドレスベルトもしくはステンレス鋼製の回転駆動ドラムを鏡面仕上げした支持体(11)が使用される。支持体(11)の温度は、一般的な温度範囲0℃〜溶剤の沸点未満の温度で、流延することができるが、5〜30℃の支持体(11)上に流延する方が、ドープをゲル化させ剥離限界時間をあげられるため、好ましく、5〜15℃の支持体(11)上に流延することが、さらに好ましい。ここで、剥離限界時間とは、透明で平面性の良好なフィルムを連続的に得られる流延速度の限界において、流延されたドープが支持体(11)上にある時間をいう。剥離限界時間は、短い方が生産性に優れていて、好ましい。
支持体(11)上の乾燥工程では、流延したドープを一旦ゲル化させた後、流延から剥離ロール(12)によって剥離するまでの時間を100%としたとき、流延から30%以内にドープ温度を40〜70℃にすることで、溶剤の蒸発を促進し、それだけ早く支持体(11)上から剥離することができ、さらに剥離強度が増すため好ましく、30%以内にドープ温度を55〜70℃にすることがより好ましい。その後、この温度を20%以上維持することが好ましく、さらにこの温度を40%以上維持することが好ましい。
支持体(11)上での乾燥は、ウェブ(20)を、残留溶媒量60〜150%で支持体(11)から剥離ロール(12)によって剥離することが、支持体(11)からの剥離強度が小さくなるため好ましく、残留溶媒量80〜120%がより好ましい。剥離するときのドープの温度は0〜30℃にすることが剥離時のベース強度をあげることができ、剥離時のベース破断を防止できるため好ましく、5℃〜20℃がより好ましい。
溶液流延製膜法によるセルロースエステルフィルムの製造において、残留溶媒量は、次式で表わされる。
残留溶媒量(重量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブ(フィルム)の任意時点での重量、Nは重量Mのものを115℃で1時間加熱処理したときのフィルム重量である。
フィルム乾燥工程においては、支持体(11)より剥離ロール(12)によって剥離したフィルムをさらに乾燥し、残留溶媒量を3重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下であることが、寸法安定性が良好なフィルムを得る上で好ましい。
剥離後、ウェブ(20)を、クリップ若しくはピンでウェブ(20)の両端を把持して搬送するテンター装置、及び/または乾燥装置内に複数配置した搬送ロールに交互に通して搬送する乾燥装置を用いて、ウェブ(20)を乾燥する。液晶表示用部材用としては、テンター方式で幅を保持しながら乾燥させることが、寸法安定性を向上させるために好ましい。特に、支持体(11)より剥離した直後の残留溶媒量の多いところで幅保持を行なうことが、寸法安定性向上効果をより発揮するため好ましい。
特に、支持体(11)から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってウェブ(20)は幅手方向に収縮しようとする。高温度で乾燥するほど収縮が大きくなる。この収縮は可能な限り抑制しながら乾燥することが、出来上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。この点から、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全工程あるいは一部の工程を幅手方向にクリップでウェブ(20)の幅手方向両端を幅保持しつつ乾燥させる方法/テンター方式が好ましい。
フィルムを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行なう。簡便さの点で熱風で行なうのが好ましい。乾燥温度は40〜150℃の範囲で3〜5段階の温度に分けて、段々高くしていくことが好ましく、80〜140℃の範囲で行なうことが、寸法安定性を良くするため、さらに好ましい。
これら流延から後乾燥までの工程は、空気雰囲気下でもよいし、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下でもよい。乾燥雰囲気を溶媒の爆発限界濃度を考慮して実施することは勿論のことである。
乾燥後のフィルム中の残留溶媒量が2重量%以下となってから、セルロースエステル系樹脂フィルムとして巻取り機によってロール状に巻き取り、残留溶媒量を0.4重量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。
使用する巻取り機は、一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。
巻き取り性を安定させるために、セルロースエステル系樹脂フィルムの幅方向の両端に凹凸を付与して端部を嵩高くするいわゆるナーリング加工を施しても良い。
ナーリング高さ(a:μm)のフィルム膜厚(d:μm)に対する比率X(%)=(a/d)×100としたとき、X=0〜25%の範囲が巻き取り性を安定させるために良い。
好ましくは、0〜15%、より好ましくは、0〜10%である。この範囲より、ナーリング高さ比率が大きいと巻形状の変形が起こりやすい。
本発明において、セルロースエステル系樹脂フィルムの厚さは、一般的には、20〜200μmの厚みで使用されるが、液晶表示装置(LCD)に使用される偏光板の薄肉化、軽量化が要望から、20〜65μmであることが好ましく、より好ましくは、30〜60μm、さらに好ましくは35〜50μmである。これ以上、薄い場合は、フィルムの腰の強さが低下するため、偏光板作製工程上でシワ等の発生によるトラブルが発生しやすく、また、これ以上厚い場合は、LCDの薄膜化に対する寄与が少ない。
本発明の方法により製造されたセルロースエステルフィルムは、セルロースエステルフィルムの切断片の断面における微粒子の変動係数(平均粒径/標準偏差)が、透過型電子顕微鏡を用いる微粒子の粒径測定において、50%以下、好ましくは30%以下である。このように、セルロースエステルフィルムに含まれる微粒子の変動係数(平均粒径/標準偏差)をさらに規定することにより、セルロースエステルフィルムに含まれる微粒子の分布が非常に良く、しかも異物の発生がなく、光学特性に優れたセルロースエステルフィルムを製造することができる。
また、本発明のセルロースエステルフィルムは、セルロースエステルフィルムの切断片の断面を透過型電子顕微鏡を用いる微粒子の粒径測定において、該粒径測定は2次微粒子の測定であり、1次粒子径が20nm以下であり、2次粒子径が150nm〜250nmである。このように、セルロースエステルフィルムの1次粒子径と2次粒子径を特定のものに規定することにより、異物の発生がなく、セルロースエステルフィルムは光学特性に優れている。
さらに、本発明によるセルロースエステルフィルムのヘイズは、0〜0.5%であり、かつ表裏面の動摩擦係数が、0.5〜0.7であるのが好ましい。このように、本発明によるセルロースエステルフィルムのヘイズを特定のものに規定することにより、フィルムの透明性が良好であり、またフィルムの表裏面の動摩擦係数を特定のものに規定することにより、滑り性が良好で、フィルム同士がくっつき難く、これら樹脂フィルムへの表面加工時のハンドリング性の向上、及び巻き性の安定化を図ることができる。
本発明のセルロースエステルフィルムは、良好な透湿性、寸法安定性等から液晶表示用部材、詳しくは偏光板用保護フィルムに用いられるのが好ましい。特に、透湿度と寸法安定性に対して共に厳しい要求のある偏光板用保護フィルムにおいて、本発明のセルロースエステルフィルムは好ましく用いられる。
ところで、偏光板は、一般的な方法で作製することができる。例えば、光学フィルムあるいはセルロースエステルフィルムをアルカリケン化処理し、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素溶液中に浸漬、延伸して作製した偏光膜の両面に、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリケン化処理とは、水系接着剤の濡れを良くし、接着性を向上させるために、セルロースエステルフィルムを高温の強アルカリ液中に漬ける処理のことをいう。
本発明のセルロースエステルフィルムには、ハードコート層、防眩層、反射防止層、防汚層、帯電防止層、導電層、光学異方層、液晶層、配向層、粘着層、接着層、下引き層等の各種機能層を付与することができる。これらの機能層は、塗布あるいは蒸着、スパッタ、プラズマCVD、大気圧プラズマ処理等の方法で設けることができる。
このようにして得られた偏光板が、液晶セルの片面または両面に設けられ、これを用いて、液晶表示装置が得られる。
本発明のセルロースエステルフィルムからなる偏光板用保護フィルムを用いることにより、薄膜化とともに、耐久性及び寸法安定性、光学的等方性に優れた偏光板を提供することができる。
さらに、本発明のセルロースエステルフィルムからなる偏光板用保護フィルムあるいは位相差フィルムを用いた液晶表示装置は、長期間にわたって安定した表示性能を維持することができる。
本発明のセルロースエステルフィルムは、反射防止用フィルムあるいは光学補償フィルムの基材としても使用できる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
実施例1
本発明の方法によりセルローストリアセテートフィルムを製造した。
(ドープの調製)
セルローストリアセテート(酢化度61.0%) 100重量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 8重量部
メチレンクロライド 475重量部
エタノール 50重量部
図1を参照すると、上記の材料を耐圧性の密閉溶解釜(3)に順次投入し、釜内温度を40℃まで昇温したのち、40℃で4時間攪拌を行なって、各組成物を溶解した。その後、攪拌を停止し、ドープ温度を35℃まで低下させて、溶解釜(3)からこれに連結した主流送管(4)を経て静置タンク(図示略)に導入した。
<ドープの濾過>
濾過装置(1)として、濾過面積が40mのフィルタープレス(FP)を使用した。これに、濾材として捕集粒子径2μmでかつ濾水時間が20sec/100mlのフィルターペーパー(図示略)を多数並列状に装填した。
本発明においては、溶解釜(3)と、濾材を備えたドープ濾過装置(1)との間の主流送管路(4)に対してバイパス管路(6)を設け、このバイパス管路(6)の途上に攪拌付き脱泡装置(2)を介在させておく。また、ドープの主流送管路(4)に対しては、ドープ濾過装置(1)の出口からバイパス管路(6)の始端部に戻るドープ循環管路(7)をさらに設けておく。
ここで、攪拌付き脱泡装置(2)としては、株式会社横田製作所製の商品名「UPSA−1010」の攪拌付き脱泡装置を使用した。この攪拌付き脱泡装置(2)は、吐出量2.0(m/min)、全揚程15(m)、および攪拌翼の回転数1800rpmである。
そして、濾過装置(1)内にドープを初期充填させる際には、ドープ主流送管路(4)の濾過装置(1)の手前に位置する開閉バルブ(13)を閉じるとともに、ドープ循環管路(7)の終端部寄り部分の開閉バルブ(17)を閉じ、バイパス管路(6)の始端部寄り部分の開閉バルブ(15)を開けて、溶解釜(3)からポンプ(5)の作動により送られてくるドープを、先に攪拌付き脱泡装置(2)に導入して、攪拌、脱泡することにより、充填初期のゲル状物質を微細化したドープを形成せしめる。そして、このドープを濾過装置(1)に注入して初期充填することにより、濾過装置(1)内の空気および濾材内部の気泡を追い出した。このように、ゲル状物質を微細化したドープを濾過装置に注入すると、ドープは濾材に浸透されやすく、濾材の隅々にまで行き渡り、濾材内部の気泡を追い出すことができた。
この実施例1においては、ドープの主流送管路(4)に対して、ドープ濾過装置(1)の出口からバイパス管路(6)の始端部に戻るドープ循環管路(7)がさらに設けられており、そして、初期充填の際、ドープ循環管路(7)の始端部と終端部寄り部分の2つの開閉バルブ(16)(17)をそれぞれ開けておき、濾過装置(1)より排出された気泡を含むドープを、ドープ循環管路(7)を経てバイパス管路(6)の始端部に戻して、さらに攪拌付き脱泡装置(2)によって気泡を含むドープを再度攪拌、脱泡する。これにより、ドープ内の気泡が除去、消失せしめられるとともに、ゲル状物質がさらに微細化されたドープが得られ、このドープを濾過装置(1)に注入すると、該ドープは濾材に浸透されやすく、濾材の隅々にまで行き渡り、濾材内部の気泡を追い出すことができた。
その後、初期充填が完了した濾過装置(1)に、溶解釜(3)から主流送管路(4)を経て送られてくるドープを導入し、該濾過装置(1)の通過後、ドープを主流送管(4)によって流延ダイ(10)に供給し、該ドープを主流送管(4)からステンレス鋼製のエンドレスベルトよりなる支持体(11)上に流延した。その後、支持体(11)で充分乾燥させた後、ウェブ(ドープ膜)(20)を剥離し、多数のロールで構成された乾燥ゾーンを通過させることにより、セルローストリアセテートフィルムを作製した。
このような本発明の方法によれば、濾過装置(1)に新しく濾材を装填後の初期段階において、濾過装置(1)内をドープで充填させる際に、濾過装置(1)内でドープが充分に満たされないデッドスペースを生じるのを、有効に阻止することができ、従来、このようなデッドスペースに溜まった空気溜まりから、ドープ中に泡が生じるのを防止することができた。
<セルローストリアセテートフィルムの評価>
上記のようにして作製した実施例1のセルローストリアセテートフィルムについて、ベルト流延製膜装置の巻取り部の直前にオンライン欠陥検査機(図示略)を設置し、フィルム1mあたりの異物の個数を測定したところ、2個であった。得られた結果を、下記の表1に示した。
<ドープの濾過および濾圧の測定>
濾過装置(1)として、濾過面積が40mのフィルタープレス(FP)を使用し、これに上記のフィルターペーパー(濾紙)を装填し、上記のように調製したドープを毎時1200リットルの流速で濾過を行ない、濾過開始5時間後および50時間後のフィルタープレス(1)入り側での送液圧と、同出側の液圧との差圧(ΔP)を測定し、得られた結果を、下記の表1にあわせて示した。
ここで、定速濾過の場合、濾紙の種類(抵抗の大きさ)と濾紙面積によって入り側での送液圧が変化し、一方、出側の液圧は、その流量と配管径などからほゞ決まる。従って、濾紙の抵抗によって圧が上昇した分が、入り側での送液圧から出側の液圧を引いた差圧(ΔP)に相当することになる。
比較例1
比較のために、上記実施例1の場合と同様に実施するが、濾過装置(1)に対しては、攪拌付き脱泡装置(2)を設けることなく、従来の方法によりセルローストリアセテートフィルムの製造を行なった。
こうして得られた比較例1のセルローストリアセテートフィルムについて、上記実施例1の場合と同様に、フィルム1mあたりの異物の個数を測定したところ、6個であった。得られた結果を、下記の表1にあわせて示した。
<ドープの濾過および濾圧の測定>
濾過装置(1)として、濾過面積が40mのフィルタープレス(FP)を使用し、これに上記のフィルターペーパー(濾紙)を装填し、上記のように調製したドープを毎時1200リットルの流速で濾過を行ない、濾過開始5時間後および50時間後のフィルタープレス(1)入り側での送液圧と、同出側の液圧との差圧(ΔP)を測定し、得られた結果を、下記の表1にあわせて示した。
Figure 2008110582
上記表1の結果から明らかなように、本発明の実施例1によれば、濾過装置(1)に新しく濾材(濾紙)を装填後の初期段階において、濾過装置(1)内をドープで充填させる際に、溶解釜(3)から送られてくるドープを、先に攪拌付き脱泡装置(2)に導入して、攪拌、脱泡することにより、充填初期のゲル状物質を微細化したドープを形成せしめ、このドープを濾過装置(1)に注入して初期充填することにより、濾過装置(1)内の空気および濾材内部の気泡を追い出すものであり、このようにゲル状物質を微細化したドープを濾過装置に注入すると、ドープは濾材に浸透されやすく、濾材の隅々にまで行き渡り、濾材内部の気泡を追い出すことができて、濾過装置(1)内でドープが充分に満たされないデッドスペースを生じるのを有効に阻止することができ、ドープ中に泡が生じるのを防止することができて、セルローストリアセテートフィルムに生じる泡故障による異物の発生率を、ドープの濾過工程において確実に抑えることができて、その後の異物の発生がなく、生産性にも優れていることが判った。
これに対し、比較例1の従来法によれば、セルローストリアセテートフィルムに生じた6個の異物は、泡を発生起因とする泡故障であった。すなわち、濾過装置(1)に新しくフィルターペーパーを装填後、濾過装置内をドープで充填させる初期段階において、濾過装置(1)内でドープが充分に満たされなかった装置奥部のデッドスペースに装填されているフィルターペーパー群が、いわゆる空気溜まりの中に存在しているため、これらのフィルターペーパーには、掃気されていない空気が含まれており、濾過装置(1)の連続濾過運転の段階において、このようなフィルターペーパー群に含まれる空気が、泡となって、ドープ内に生じたものであると考えられる。
また、本発明の実施例1によれば、フィルタープレス(FP)を使用した濾過装置(1)の濾過開始5時間後のフィルタープレス(1)入り側での送液圧と、同出側の液圧との差圧(ΔP)が450kPa、および50時間後の差圧(ΔP)が600kPaであり、差圧(ΔP)の変化が非常に小さいものであるのに対して、比較例1では、フィルタープレス(FP)を使用した濾過装置(1)の濾過開始5時間後の差圧(ΔP)が700kPa、および50時間後の差圧(ΔP)が1100kPaであり、差圧(ΔP)の変化が非常に大きいものであった。
この結果から明らかなように、本発明の方法によれば、攪拌付き脱泡装置(2)によりドープを攪拌、脱泡して、ドープ中のゲル状物質を微細化することにより、た充填初期に発生する濾過装置(1)のフィルターの目詰まりが抑えられ、濾過装置(フィルタープレス)(1)の寿命が延びるという副次効果が得られることが分かった。
本発明のセルロースエステルフィルムの製造方法を実施する溶液流延製膜装置の概略を示すフローシートである。
符号の説明
1:濾過装置
2:攪拌付き脱泡装置
3:溶解釜
4:ドープ主流送管
5:ポンプ
6:バイパス管
7:循環管
8:翼回転機構
9:モータ
10:流延ダイ
11:支持体
12:剥離ロール
13:開閉バルブ
14:開閉バルブ
15:開閉バルブ
16:開閉バルブ
17:開閉バルブ
20:ウェブ

Claims (5)

  1. セルロースエステルを溶解したドープを、溶液流延製膜法によりセルロースエステルフィルムを製造する方法であって、セルロースエステルの溶解釜と、濾材を備えたドープ濾過装置との間の主流送管路に対してバイパス管路を設け、このバイパス管路の途上に攪拌付き脱泡装置を介在させておき、濾過装置内にドープを初期充填させる際に、ドープを先に攪拌付き脱泡装置に導入して、攪拌、脱泡することにより、充填初期のゲル状物質を微細化したドープを形成せしめ、このドープを濾過装置に注入して初期充填することにより、濾過装置内の空気および濾材内部の気泡を追い出した後、初期充填が完了した濾過装置に、溶解釜から主流送管路を経て送られてくるドープを導入して、流延製膜を行なうことを特徴とする、セルロースエステルフィルムの製造方法。
  2. ドープの主流送管路に対して、ドープ濾過装置の出口からバイパス管路の始端部に戻るドープ循環管路をさらに設けておき、濾過装置内にドープを初期充填させる際に、ドープを先に攪拌付き脱泡装置に導入して、攪拌、脱泡することにより、充填初期のゲル状物質を微細化したドープを形成せしめ、このドープを濾過装置に注入して初期充填することにより、濾過装置内の空気および濾材内部の気泡を追い出し、濾過装置より排出された気泡を含むドープを、ドープ循環管路を経てバイパス管路の始端部に戻し、このドープを攪拌付き脱泡装置によって再度攪拌、脱泡した後、濾過装置に注入し、初期充填が完了した濾過装置に、溶解釜から主流送管路を経て送られてくるドープを導入して、流延製膜を行なうことを特徴とする、請求項1に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
  3. 濾過装置の濾材が、捕集粒子径0.5〜5μmでかつ濾水時間10〜25sec/100mlを有するものであることを特徴とする、請求項1または2に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
  4. 攪拌付き脱泡装置の攪拌翼の回転数が1500〜2000rpmであることを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
  5. 請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法により製造され、かつフィルム上の泡故障が、フィルム1mあたり2個以下であることを特徴とする、セルロースエステルフィルム。
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