JP2008105340A - インクジェットヘッド - Google Patents

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Abstract

【課題】空気室により、インクの供給圧力の変動を吸収し、吐出安定性を維持することができると共に、空気室からの空気の流出を、簡便な構造で有効に防止することができるインクジェットヘッドを提供すること。
【解決手段】ノズル列を有するインクジェットヘッドチップ41と、前記インクジェットヘッドチップ41にインクを導くマニホールド48と、外部からのインクを前記マニホールド48に導く第1のインク流路481と備えるインクジェットヘッド4であって、空気室と、前記第1のインク流路481の途中から分岐し、前記空気室に接続された第2のインク流路581とを備えることを特徴とするインクジェットヘッド。
【選択図】図3

Description

本発明は、インクジェットヘッドに関する。
従来、用紙やプラスチック薄板等の記録媒体にインクを吐出して所定の画像を記録するインクジェットプリンタが提案され、実用化されている。インクジェットプリンタは、ノズルを有するインクジェットヘッドを備えており、かかるインクジェットヘッドを所定の方向に移動させながらノズルから記録媒体に向けてインクを吐出することにより、記録媒体に所定の画像を記録している。
ところで、前記インクジェットプリンタに使用するインクは、インク供給容器よりインク供給管を介してキャリッジ上のヘッドに供給される場合がある。
このインク供給機構において、ヘッドが搭載されたキャリッジを走査するため、加減速や振動によりヘッドに供給されるインク圧力が変動する。その場合、ヘッドのノズルのインクメニスカス位置がずれることにより濃度むらを起こしたり、最悪の場合、メニスカスが破れて吐出不能になってしまうという問題がある。
また、従来の、このような現象の解決策として提案されているものに、特許文献1、6,7に示されるようなヘッドの上流にダンパーを配置する構成として、インク供給時の圧力変動を吸収するものがある。しかしながら、ダンパーとヘッドの間に配管があると、機械的な振動や加減速により微少ながらインク供給圧に変動が出てしまうという問題がある。
そのため、従来、このような微少な圧力変動を防ぐためにヘッド内部にダンパー機能を持たせたせたものがある(例えば、特許文献2〜5,8参照)。
特許文献2には、ヘッドの共通インク室に密封構造の空気室を設けてダンパー機能をもたせるものが開示されている。また、特許文献3には、積層ヘッドにおいて薄板を用いてダンパー機能を持たせるものが開示されている。特許文献4には、ヘッドの共通インク室に溝を形成し、フィルムにより空気室と分離してダンパー機能を持たせるものが開示されている。特許文献5には、ヘッドの共通インク室に隣接して気体保持室を形成し、かつ電気分解で気泡を蓄積させてダンパー機能を持たせるものが開示されている。特許文献8には、ヘッドのリザーバーのインクが空気に接することで、小型化した圧力室を構成できるバイオチップ用ヘッドが開示されている。
特開2000−158868号公報 特開2001−130004号公報 特開2004−114415号公報 特開平7−137262号公報 特開平7−323548号公報 特開平10−193646号公報 特開平11−34349号公報 特開2004−226321号公報
特許文献2、3、4に開示されているように空気室とインクとの界面にフィルム等の部材を介在させることにより空気室からの空気の流出を確実に防止することができる。しかしながら、このような構成とするには、新たな部品や製造プロセスが必要となり、また構造が複雑になるため特別な設計が必要となり、コストアップや信頼性低下を招く恐れがある。
また、特許文献5、8に開示されているような空気とインクを接触させて気液界面を形成させる構造では、このような場所に空気を安定して留めておくことは簡単ではなく、ノズルの目づまり防止の為の吸引動作により無くなってしまうという問題が生じる。
特に、共通インク室に空気を導入する場合には、空気が共通インク室内に固定されず、自由に動くことができるため、圧力室にも入り込み、インクの吐出を妨げることがしばしば生じたり、せっかく入れた空気が排出されてしまったりする問題が生じる。
また、特許文献5に開示されているような、ヘッドの共通インク室に隣接して気体保持室を形成し、かつ電気分解で気泡を蓄積させて空気を補充する構造では、構造が複雑になると共に、電気分解で気泡を発生させるタイミング等の複雑な制御が必要になる。さらに、電気分解で気体が発生しない油性インク等では機能しないという問題もある。
本発明の目的は、以上の問題点の解決を図り、空気室により、インクの供給圧力の変動を吸収し、吐出安定性を維持することができると共に、空気室からの空気の流出を、簡便な構造で有効に防止することができるインクジェットヘッドを提供することにある。
本発明の課題は、以下のような構成により解決される。
1.
ノズル列を有するインクジェットヘッドチップと、
前記インクジェットヘッドチップにインクを導くマニホールドと、
外部からのインクを前記マニホールドに導く第1のインク流路とを備えるインクジェットヘッドであって、
空気室と、
前記第1のインク流路の途中から分岐し、前記空気室に接続された第2のインク流路とを備えることを特徴とするインクジェットヘッド。
2.
前記1に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記マニホールドは、前記インクジェットヘッドチップの一方の側部に配設され、
前記空気室は、前記インクジェットヘッドチップの他方の側部に配設されていることを特徴とするインクジェットヘッド。
3.
前記2に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記インクジェットヘッドチップの側面が前記空気室を形成する壁面の一部を形成していることを特徴とするインクジェットヘッド。
4.
前記1に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記マニホールドは、インクジェットヘッドチップの両側部に配設され、前記マニホールドの側部に前記空気室が配設されていることを特徴とするインクジェットヘッド。
5.
前記1乃至4の何れか1項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記第1のインク流路は、インク供給室を備え、前記第2のインク流路は、前記インク供給室から分岐していることを特徴とするインクジェットヘッド。
6.
前記1乃至5の何れか1項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記第2のインク流路と前記空気室の接続部は、前記空気室を形成する壁面において、前記インクジェットヘッドチップのインク入口側よりもノズル側により近い位置に形成されていることを特徴とするインクジェットヘッド。
7.
前記1乃至6の何れか1項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
前記第2のインク流路の抵抗は、前記第1のインク流路の一部を構成し分岐部分と前記マニホールドを連結するインク流路の抵抗よりも小さいことを特徴とするインクジェットヘッド。
本発明によれば、外部からのインクをマニホールドに導く第1のインク流路の途中から分岐し、空気室に接続された第2のインク流路を備えるので、空気室に気液界面を形成しておくことにより空気を保持させ、インク吐出時にマニホールドに伝達されるインクの圧力変動を空気に吸収させることができると共に、ノズルからのインク吸引動作によるメンテナンス動作時などに空気室に空気を安定に保持することができるので、空気室により、インクの供給圧力の変動を吸収し、吐出安定性を維持することができると共に、空気室からの空気の流出を、簡便な構造で有効に防止することができるインクジェットヘッドを提供することができる。
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。ただし、以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
まず図1を参照して、本発明の一実施形態のインクジェットプリンタの全体構成について説明する。図1は本発明の一実施形態のインクジェットプリンタの全体構成図である。
インクジェットプリンタ1は、記録媒体Pに対してインクを吐出し、記録媒体P上に画像を記録するものである。インクジェットプリンタ1には、図示しない搬送手段が備わっており、この搬送手段が記録媒体Pを、図1における記録領域Cを通過させながら主走査方向Aと直交した副走査方向に搬送するようになっている。
記録領域Cの上方には、主走査方向Aに沿って延在するキャリッジレール2が配置されていて、このキャリッジレール2には、キャリッジレール2によって案内されるキャリッジ3が移動自在に設けられている。
キャリッジ3は、記録媒体Pに対してインクを吐出するインクジェットヘッド4を搭載し、キャリッジレール2に沿ってホームポジション領域Bからメンテナンス領域Dにかけて矢印A方向に移動するようになっている。
この主走査中にインクジェットヘッド4が、記録媒体Pに向けてインクdを吐出することで記録媒体Pに画像を形成する。ノズルからのインク吐出方向が垂直下向きとなるようにインクジェットヘッド4が垂直置きされて設置される。
本実施形態に係るインクジェットプリンタ1では、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の4色のインクを吐出できるよう、合計で4個のインクジェットヘッド4がキャリッジ3に設置されている。図1においては、3個のインクジェットヘッド4,4、4が矢印A方向に1列に配置されていて、この矢印A方向に並んだインクジェットヘッド4,4、4の中央のインクジェットヘッド4の奥側(紙面垂直方向の奥側)にその他の1個のインクジェットヘッド4(不図示)が配置されている。
これら各インクジェットヘッド4には、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色のインクを貯蔵するインクタンク5が、それぞれインク供給管6を介して連結されている。つまり、インクタンク5内のインクは、インク供給管6によって各インクジェットヘッド4に供給されるようになっている。
メンテナンス領域Dには、インクジェットヘッド4に対してメンテナンスを行うメンテナンスユニット7が設けられている。このメンテナンスユニット7には、インクジェットヘッド4の吐出面41aを覆って、ノズル内のインクを吸引するための複数の吸引キャップ8と、吐出面41aに付着したインクを拭き取る清掃ブレード9と、インクジェットヘッド4から空吐出されたインクを受けるインク受器10と、吸引ポンプ11と、廃インクタンク12とが設けられている。
吸引キャップ8は吸引ポンプ11を介して廃インクタンク12と連通しており、メンテナンス動作時には上昇してインクジェットヘッド4の吐出面41aを覆うようになっている。吸引キャップ8,8,…は、上述のように上昇した時に全てのインクジェットヘッド4の吐出面41aを覆うことができるよう、各インクジェットヘッド4に対応するように4個配列されている。
吸引ポンプ11はシリンダーポンプやチューブポンプを有して構成されていて、吸引キャップ8が吐出面41aを覆った状態で作動することにより、ノズル42(後述)からインクジェットヘッド4内部のインクを異物とともに吸引するための吸引力を発生するようになっている。
本実施形態では吸引ポンプ11として図5に示すチューブ式ポンプを用いる。図5に示すように吸引ポンプ11は、チューブ30と、加圧ローラ32と、2つの加圧コロ33,34と、チューブホルダー31とを備える。チューブ30の上端の吸入側開口部は吸引キャップ8に接続される。チューブ30の下端の排出側開口部は廃インクタンク12に挿入されている。チューブ30の中間部はチューブホルダー31と加圧ローラ32とにより挟み込まれるようにして加圧ローラ32の外周に沿った円弧形状に曲げられた形に矯正されて保持される。
2つの加圧コロ33,34は、加圧ローラ32の外周に付設される。2つの加圧コロ33,34は加圧ローラ32の外周面から加圧ローラ32の半径方向に突出して回転自在に取り付けられている。2つの加圧コロ33,34は互いに加圧ローラ32の中心軸回りに180度を成す位置に取り付けられる。一方、チューブホルダー31は、加圧ローラ32の中心軸回りに180度より大きな角度、例えば210度程度の角度範囲に亘ってチューブ30を矯正するように形成される。以上の角度は一例であって、2つの加圧コロ33,34により同時にチューブ30を潰す期間を設けることが吸引力を発揮するために有効である。また、加圧コロを3以上設けても良い。加圧コロを3以上設ける場合には、そのうち2つの加圧コロで加圧ローラ32の回転中常に同時にチューブを潰しているように構成することが吸引力を発揮するために有効である。
さて、2つの加圧コロ33,34は、加圧ローラ32の回転に伴って公転運動する。2つの加圧コロ33,34は、チューブ30の円弧状に矯正されている部分を通過するときには、チューブ30を潰しながら移動する。チューブ30は加圧コロ33,34が通過した後はその弾性により元の形状に回復する。
加圧ローラ32は図示しないモータにより駆動され、その中心軸回りに回転する。すなわち、加圧ローラ32は自転運動し、回転中チューブホルダー31との距離は一定である。
吸引力を発揮させるためには、加圧ローラ32を矢印E方向に回転させる。加圧ローラ32を矢印E方向に回転させると、同じく矢印E方向に加圧コロ33,34が公転して加圧コロ33,34がチューブ30を潰す位置が移動する。本実施形態では加圧ローラ32の回転数を調節することにより吸引ポンプ11の出力を制御する。
ホームポジション領域Bには、インクジェットヘッド4を保湿する保湿ユニット13が設けられている。保湿ユニット13には、インクジェットヘッド4が待機状態にあるとき、吐出面41aを覆うことでインクジェットヘッド4のインクを保湿する4個の保湿キャップ14が設けられている。これら4個の保湿キャップ14,14,…は、4個のインクジェットヘッド4の吐出面41aを同時に覆うことができるよう、インクジェットヘッド4の配列に対応して配列される。
制御部は、CPU(中央演算装置)と、メモリとを有して構成され、インクジェットプリンタ1の各構成要素を制御するようになっている。メモリには、記録媒体Pに形成する画像のデータや、インクジェットプリンタ1の各構成要素を制御するためのプログラムが記憶されており、このメモリ内の画像データやプログラムに基づいて各構成要素に制御信号を送信するようになっている。
次に、図2〜図4を参照して本発明に係るインクジェットヘッド4について説明する。
図2は本実施形態のインクジェットヘッド4の分解斜視図であり、図3は本実施形態のインクジェットヘッド4の側面図である。また、図4は本実施形態のインクジェットヘッド4の空気室及びマニホールドとインク供給室との接続状態を示す模式図である。
本実施形態のインクジェットヘッド4には、インクを吐出するインクジェットヘッドチップ(以下「ヘッドチップ」と称す。)41が設けられている。ヘッドチップ41は矢印X方向に長尺な外形をしていて、その吐出面(先端面)41aには多数のノズル42が矢印X方向に配列されている。この矢印X方向に連続して設けられたノズル42の列をノズル列42aということとする。本実施の形態のインクジェットヘッド4は、ノズル列42aが1列設けられている。インクジェットヘッド4は矢印X方向(ノズル列方向)と図1に図示された主走査方向Aとが直交するようにキャリッジ3に搭載される。
図3に示すように、ヘッドチップ41の一方の側面にはインク供給口43が設けられていて、ヘッドチップ41の内部に形成されたインク流路44を介して、インク供給口43とノズル42とが連続するようになっている。インク流路44の一部は圧力室を形成しており、図示しない圧電素子の作用により圧力を変動させて、インク滴をノズル42から吐出させる構造になっている。
ヘッドチップ41の一方の側部には、インク供給口43に連結されて、外部からのインクをヘッドチップ41に導く1つのマニホールド48が接着固定されている。マニホールド48は、耐インク性に優れた材料からなり、共通インク室480を形成するための凹みが形成されている。マニホールド48の一端部には、共通インク室480にインクを流入させるインク流路481が一体的に設けられている。
また、前記マニホールド48と前記筐体フレーム53の間における、前記マニホールド48の側部には、図3に示すように、インクヒータ49がマニホールド48に接触するように設けられている。このインクヒータ49は、マニホールド48の共通インク室480に導入されたインクを所定の温度に加熱するために設けられるものである。
さらに、前記マニホールド48と前記筐体フレーム53の間に、少なくともインクヒータ49を包含するように接着剤が充填されており、これにより筐体フレーム53とインクヒータ49及びマニホールド48が接着固定されている。
このようなインクジェットヘッド4にかかるインク圧を安定させるために、ヘッドチップを挟んでマニホールド48の反対側に空気室形成部材58が設置されている。空気室形成部材58は、耐インク性に優れた材料からなり、空気室580を形成するための凹みが形成されている。空気室形成部材58の一端部には、空気室580にインクを流入させるインク流路581(本実施形態における第2のインク流路に相当)が一体的に設けられている。
また、ヘッドチップ41の下部には、吐出面41aが露出するように、マニホールド48、空気室形成部材58及びヘッドチップ41を保持する保持板51が取り付けられている。この保持板51の一端部には、マニホールド48のインク流路481及び空気室形成部材58のインク流路581を保持して、インク流路481及びインク流路581にインクを流すインク供給室52が形成されている。インク供給室52は、ヘッドチップ41のノズル列方向の一端側に配置され、インク流路481及びインク流路581に接続されている。インク流路581と空気室580の接続部は、空気室580を形成する壁面においてヘッドチップ41のインク入口側よりもノズル42側により近い位置に形成されている。
インク供給管6からのインクはフレームインク流路55からインク供給室52に入り、インク供給室52とマニホールド48を連結するインク流路481とインク供給室52と空気室580を連結するインク流路581とに分岐する。インク流路481を通過したインクは、共通インク室480を通ってインク供給口43からヘッドチップ41へ供給される。インク流路581を通過したインクは、空気室580へ供給される。フレームインク流路55からインク500を充填すると空気室580には、空気501が封じ込められる。実使用状態においては、図4に示すように、ノズル42を下側とした場合、空気室580の所定高さまでインク500が充填され、その上部には空気501が閉じ込められている。
本実施形態においては、フレームインク流路55と、インク供給室52と、インク供給室52とマニホールド48を連結するインク流路481とにより第1のインク流路が構成されている。なお、インク溜めとなるインク供給室52を設けない構成としても良い。
空気室580は、インク流路581により、外部からのインクをマニホールド48に導く第1のインク流路と分岐されており、空気室580からインクジェットヘッドチップ41への空気501の流出が抑制される。
また、インク流路581と空気室580の接続部は、空気室580を形成する壁面においてヘッドチップ41のインク入口側よりもノズル42側により近い位置に形成されていることにより、インク吐出方向を垂直下向きになるように垂直置きした場合、容易に空気室580の上部に空気501を保持させるようにすることができ、特に、前述のメンテナンスプロセスにおけるノズルからのインクの吸引時に空気501を維持しやすく好ましい。
インクジェットヘッド4が移動する際に発生するインクの圧力変化は、空気室形成部材58のインク流路581から空気室580に伝えられ、空気501の体積変化によって吸収され、インクジェットヘッド4内のインク圧力がインクの吐出特性に影響しない程度の小さな変化に抑制される。このような圧力吸収の性能をより高めるために、インク供給室52と空気室580を連結するインク流路581の抵抗は、インク供給室52とマニホールド48を連結するインク流路481の抵抗よりも小さくすることが好ましい。流路の抵抗を下げるには流路断面積を大きくすればよい。
また、本実施形態においては、マニホールド48がヘッドチップ41の一方の側部に配設された構成において、空気室580がヘッドチップ41の他方の側部に配設され、ヘッドチップ41の側面が空気室580を形成する壁面の一部を形成しているので、インクジェットヘッドの小型化が可能になると共に、インク吐出時のヘッドチップ41の圧電素子の振動を空気室580の液体(インク500)が吸収することが可能になり、振動が外部に伝わるのを抑制でき好ましい態様である。
そして、ヘッドチップ41の図示しない各圧電素子に対して制御部からの制御信号を送信するヘッド駆動基板46が、フレキシブル配線板47を介して接続されている。このヘッド駆動基板46には、インクヒータ49に対して電力供給を行うヒータ用回路が形成されていて、このヒータ用回路には、インクヒータ49の電熱線が電線50を介して電気的に接続されている。また、温度を検知するための温度センサ45も同様に、図示しない電線によりヒータ用回路に電気的に接続されている。この温度センサ45は、インクヒータ49よりもヘッドチップ41に近接して配置されている。
ヘッド駆動基板46には、コネクタ461が設けられており、コネクタ461には、入力端子61と出力端子62とを有するフレキシブル配線板60の出力端子62がそれぞれ接続されている。そして、フレキシブル配線板60の入力端子61には、図示しない電源及び制御部が電気的に接続されていて、このフレキシブル配線板60を介して、制御信号及び電力がヘッド駆動基板46に供給されるようになっている。
そして、図2に示すようにインクジェットヘッド4には、上記したヘッドチップ41、マニホールド48、空気室形成部材58、ヘッド駆動基板46、保持板51などのインクジェットヘッド4の構成要素が取り付けられ、収納、固定される筐体フレーム53と、筐体フレーム53を覆うカバー54が設けられている。この筐体フレーム53には、保持板51のインク供給室52に連結してインクを供給するフレームインク流路55が設けられていて、このフレームインク流路55には、インク供給管6が連結されるようになっている。また、筐体フレーム53の内部には、ヘッド駆動基板46を支持する支持梁56が設けられている。
カバー54の上部には開口57が設けられていて、インクジェットヘッド4の組立後においては、この開口57からフレキシブル配線板60の入力端子61が外部に露出するようになっている。
次に、インクジェットプリンタ1による画像形成時における動作について説明する。
インクジェットプリンタ1の電源がONとなると、インクジェットプリンタ1の各部に対して給電が行われる。
その後、画像記録の開始指示が入力されると、キャリッジ3の往復走査が開始されると共に、制御部は、画像データを基とした制御信号をヘッド駆動基板46及びその他の駆動部に送信し、画像記録を開始する。搬送手段に搬送される記録媒体P上には、インクジェットヘッド4からインクが吐出されて画像が形成される。
そして、インクジェットヘッド4の吐出状態を回復するためのメンテナンスタイミングになると、制御部は、各部を制御してインクジェットヘッド4のメンテナンスを行わせる。詳細に説明すると、制御部は、メンテナンスタイミングに伴って走査用モータを制御し、インクジェットヘッド4と吸引キャップ8とが対峙する位置までキャリッジ3を移動させる。インクジェットヘッド4と吸引キャップ8とが対峙すると、制御部は、昇降用モータを制御して、インクジェットヘッド4の吐出面41aと吸引キャップ8とが密着するまでメンテナンスユニット7を上昇させる。
メンテナンスユニット7の上昇完了後、制御部は、所定時間だけ吸引キャップ8内部が吸引されるように吸引ポンプ11を制御する。
ここで、図5を参照して、本実施形態のインクジェットヘッドの吸引によるメンテナンスプロセスにおけるインクと空気の移動形態を説明する。
吸引ポンプ11の作動により、インクジェットヘッド4内部が負圧になる。空気室580の上流側のインク流路581も負圧になり、空気室580に貯まったインクは、インク流路581から流れ出るようになっている。
このとき、空気室580における空気501が膨張し、インク500と空気501の気液界面Mがインク流路581側に引き寄せられることになる。
従来技術のインクジェットヘッドにおいては、通常の使用状態で共通インク室にインクが充填されていると共に空気が保持されており、ノズルからインクを吸引するメンテナンス動作時には、マニホールドに保持されている空気までが排出されてインクに置換されることがあり、かかる場合、先にも述べたように圧力変動を吸収できなくなり、安定吐出に支障を斉らす虞がある。
本実施形態のインクジェットヘッドでは、外部からのインクをマニホールド48に導く第1のインク流路の途中から分岐し、空気室580に接続されたインク流路581を備えるので、ノズルからのインク吸引動作によるメンテナンス動作時に空気室580に空気501を安定に保持することができるので、空気室580からの空気501の流出を、簡便な構造で有効に防止することができる。
また、インク流路581と空気室580の接続部は、空気室580を形成する壁面においてヘッドチップ41のインク入口側よりもノズル42側により近い位置に形成されていることにより、インク吐出方向を垂直下向きになるように垂直置きした場合、容易に空気室580の上部に空気501を保持させるようにすることができ、メンテナンスプロセスにおけるノズルからのインクの吸引時に空気501を維持しやすい。
また、図5において、吸引前の気液界面Mと空気室上壁面との距離をH1、吸引時の気液界面Mと空気室上壁面との最大距離をH2、インク流路581の接続部の上端と空気室上壁面との距離をH3としたとき、このH2がH3よりも小さくなるように吸引圧力やH3を設定しておけば、吸引時の空気室580内部の空気501の流出防止がより確実となるために好ましい。
吸引時に、空気室580のインク500に作用する負圧をP1(気圧)としたとき、空気501の圧力は1(気圧)であるので、1/P1=H2/H1の関係が成り立つ。従って、設定の目安としては、例えば、P1が0.5(気圧)であれば、H2はH1の2倍になるので、これよりH3が大きくなるように設定すればよい。
例えば、空気室形成部材58を、空気室内部の気液界面Mを目視確認できるように、透光性の部材で構成し、実験的に、H2がH3よりも小さくなるように吸引圧力やH3を設定しておけばよい。
次に、画像記録時の圧力変動の吸収効果について説明する。
まず、インクジェットヘッド4を用いて記録を行う前に、以下の実験を行った。
図2〜4に示す空気室形成部材58により空気室580を設けたインクジェットヘッド4と、空気室580のないマニホールド48だけの場合のインクジェットヘッドとを、図1に示すインクジェットプリンタ1に装着し、ヘッドを実使用状態と同じように往復運動させてヘッドのノズル部分で発生した圧力変動を測定すると図6に示す通りであった。
図6において、走査時のノズル内の圧力の変化を表す。横軸は時間であり、縦軸はノズル内の圧力Pである。また、点線は空気室580なしのヘッド、実線は空気室580有りのヘッドについて測定データを示している。
通常、キャリッジの往復走査時の加速度により圧力変動が生じるが、(a)キャリッジの往復走査時にインクジェットヘッドがインク供給管を引く関係となる方向では、ノズル内の負圧が生じる。また、(b)キャリッジの往復走査時にインクジェットヘッドがインク供給管を押す関係となる方向では、正圧が生じる。
空気室580のない場合には、上記(a)、(b)に対応して、負圧側と正圧側に2kPa程度の圧力変化を示したのに対し、空気室580を設けた場合には、圧力変化がほとんどなく、実用上問題のない圧力変化になった。
実際の画像記録においても、本実施形態のインクジェットヘッド4は、安定吐出が可能であり、良好な記録状態を保つことができた。一方、空気室580のないマニホールド48だけの場合のインクジェットヘッドは、圧力変動による吐出の不安定性により良好な記録状態を保つことができなかった。
続いて図7により本発明の他の実施形態例を示す。本例は、上述の実施形態例とは以下の点が異なる。本実施の形態のインクジェットヘッド400は、ノズル列42aが2列設けられている。
図7に示すように、ヘッドチップ41の両側面にはインク供給口43が設けられていて、ヘッドチップ41の内部に形成されたインク流路44を介して、インク供給口43とノズル42とが連続するようになっている。インク流路44の一部は圧力室を形成しており、図示しない圧電素子の作用により圧力を変動させて、インク滴をノズル42から吐出させる構造になっている。
ヘッドチップ41の両側部には、インク供給口43に連結されて、外部からのインクをヘッドチップ41に導く2つのマニホールド48が接着固定されている。マニホールド48の一端部には、共通インク室480にインクを流入させるインク流路481が一体的に設けられている。
このようなインクジェットヘッド400にかかるインク圧を安定させるために、2つのマニホールド48の側部に2つの空気室形成部材58が設置されている。
インク供給管6からのインクはフレームインク流路55からインク供給室52に入り、インク供給室52と2つのマニホールド48を連結する2つのインク流路481とインク供給室52と2つの空気室580を連結する2つのインク流路581とに分岐する。インク流路481を通過したインクは、共通インク室480を経由してインク供給口43からヘッドチップ41へ供給される。インク流路581を通過したインクは、空気室580へ供給される。フレームインク流路55からインク500を充填すると空気室580には、空気501が封じ込められる。実使用状態においては、図7に示すように、空気室580の所定高さまでインク500が充填され、その上部には空気501が閉じ込められている。
空気室580は、インク流路581により、外部からのインクをマニホールド48に導く第1のインク流路から分岐されており、空気室580からインクジェットヘッドチップ41への空気501の流出が抑制される。
インクジェットヘッド400が移動する際に発生するインクの圧力変化は、空気室形成部材58のインク流路581から空気室580に伝えられ、空気501の体積変化によって吸収され、インクジェットヘッド400内のインク圧力がインクの吐出特性に影響しない程度の小さな変化に抑制される。このような圧力吸収の性能をより高めるために、インク供給室52と空気室580を連結するインク流路581の抵抗は、インク供給室52とマニホールド48を連結するインク流路481の抵抗よりも小さくすることが好ましい。流路の抵抗を下げるには流路断面を大きくすればよい。
そして、ヘッドチップ41の図示しない各圧電素子に対して制御部からの制御信号を送信する2つのヘッド駆動基板46のそれぞれが、フレキシブル配線板47を介して接続されている。このヘッド駆動基板46には、インクヒータ49に対して電力供給を行うヒータ用回路が形成されていて、このヒータ用回路には、インクヒータ49の電熱線が電線50を介して電気的に接続されている。また、温度を検知するための温度センサ45も同様に、図示しない電線によりヒータ用回路に電気的に接続されている。この温度センサ45は、インクヒータ49よりもヘッドチップ41に近接して配置されている。
2つのヘッド駆動基板46には、それぞれコネクタ461が設けられており、これらのコネクタ461には、1つの入力端子61と2つの出力端子62とを有するフレキシブル配線板60の出力端子62がそれぞれ接続されている。そして、フレキシブル配線板60の入力端子61には、図示しない電源及び制御部が電気的に接続されていて、このフレキシブル配線板60を介して、制御信号及び電力がヘッド駆動基板46に供給されるようになっている。
以上のように、本実施形態のインクジェットヘッドによれば、外部からのインクをマニホールドに導く第1のインク流路の途中から分岐し、空気室に接続された第2のインク流路を備えるので、空気室に気液界面を形成しておくことにより空気を保持させ、インク吐出時にマニホールドに伝達されるインクの圧力変動を空気に吸収させることができると共に、ノズルからのインク吸引動作によるメンテナンス動作時などに空気室に空気を安定に保持することができるので、空気室により、インクの供給圧力の変動を吸収し、吐出安定性を維持することができると共に、空気室からの空気の流出を、簡便な構造で有効に防止することができるインクジェットヘッドを提供することができる。
なお、本発明に係るインクジェットヘッド及びインクジェットプリンタとしては、前記した実施形態に限るものではなく、他の構成のものにも適用可能である。
本発明のインクジェットヘッドは、上記説明のヘッドが移動する、所謂シリアルプリント方式のインクジェットプリンタのみならず、ノズルを並列に多数並べたラインプリント方式のインクジェットプリンタにも適用可能であり、有効である。
また、インクジェットヘッドは、ヘッドチップに圧電素子を備える構成とは限らず、例えばヒータを備える構成としてもよい。
また、マニホールドや空気室の形状や位置関係等も適宜変更して実施可能である。
例えば、図7の他の実施形態ではマニホールド48を2つ有するインクジェットヘッド400において、2つのマニホールドの側部のそれぞれに空気室580を設けた構成を例示して説明したが、空気室580は2つでなくともよく、1つの空気室580がいずれかのマニホールド48に備えられていてもよい。
さらには、図2の実施形態において、空気室580をマニホールド48の側部に設けるようにしても良い。
本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタの概略を示す平面図である。 本発明の一実施形態に係るインクジェットヘッドの分解斜視図である。 本発明の一実施形態に係るインクジェットヘッドの側面図である。 本発明の一実施形態に係るインクジェットヘッドの空気室及びマニホールドとインク供給室との接続状態を示す模式図である。 本発明の一実施形態に係るインクジェットヘッドの吸引によるメンテナンスプロセスにおけるインクと空気の移動形態を説明するための模式図である。 本発明のインクジェットヘッド及び従来のインクジェットヘッドにおけるノズル位置での圧力変動を示すグラフである。 本発明の他の実施形態に係るインクジェットヘッドの側面図である。
符号の説明
1 インクジェットプリンタ
4、400 インクジェットヘッド
41 ヘッドチップ(インクジェットヘッドチップ)
41a 吐出面(先端面)
42 ノズル
42a ノズル列
48 マニホールド
49 インクヒータ
53 筐体フレーム
P 記録媒体
X ノズル列方向

Claims (7)

  1. ノズル列を有するインクジェットヘッドチップと、
    前記インクジェットヘッドチップにインクを導くマニホールドと、
    外部からのインクを前記マニホールドに導く第1のインク流路とを備えるインクジェットヘッドであって、
    空気室と、
    前記第1のインク流路の途中から分岐し、前記空気室に接続された第2のインク流路とを備えることを特徴とするインクジェットヘッド。
  2. 請求項1に記載のインクジェットヘッドにおいて、
    前記マニホールドは、前記インクジェットヘッドチップの一方の側部に配設され、
    前記空気室は、前記インクジェットヘッドチップの他方の側部に配設されていることを特徴とするインクジェットヘッド。
  3. 請求項2に記載のインクジェットヘッドにおいて、
    前記インクジェットヘッドチップの側面が前記空気室を形成する壁面の一部を形成していることを特徴とするインクジェットヘッド。
  4. 請求項1に記載のインクジェットヘッドにおいて、
    前記マニホールドは、インクジェットヘッドチップの両側部に配設され、前記マニホールドの側部に前記空気室が配設されていることを特徴とするインクジェットヘッド。
  5. 請求項1乃至4の何れか1項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
    前記第1のインク流路は、インク供給室を備え、前記第2のインク流路は、前記インク供給室から分岐していることを特徴とするインクジェットヘッド。
  6. 請求項1乃至5の何れか1項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
    前記第2のインク流路と前記空気室の接続部は、前記空気室を形成する壁面において、前記インクジェットヘッドチップのインク入口側よりもノズル側により近い位置に形成されていることを特徴とするインクジェットヘッド。
  7. 請求項1乃至6の何れか1項に記載のインクジェットヘッドにおいて、
    前記第2のインク流路の抵抗は、前記第1のインク流路の一部を構成し分岐部分と前記マニホールドを連結するインク流路の抵抗よりも小さいことを特徴とするインクジェットヘッド。
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