以下、本発明に係る静止型流体混合装置の実施形態について詳細に説明する。
本発明に係る静止型流体混合装置は、対向配置された第1混合エレメントおよび第2混合エレメントを有する混合ユニットを備えており、第1混合エレメントに、気液混合状態の流体の流入口が貫通状態で形成されており、対向配置された両混合エレメントの間に、前記流入口から流入した流体を両混合エレメント外周側に流す混合流路が形成されており、当該混合流路は、前記流入口から導入された流体を分流させる複数の分岐部と、分流された流体を合流させる複数の合流部とを備えるものであり、両混合エレメントの外周部に、前記混合流路を通過した流体を流出させる流出口を備えている静止型流体混合装置である。
このような静止型流体混合装置において、第2混合エレメントの第1混合エレメントとの対向面の大きさを、第1混合エレメントの第2混合エレメントと対向する側の面の大きさよりも小さく形成し、流出口として前記第2混合エレメントの外周縁と第1混合エレメントとの間に形成される隙間状の開口を形成し、これにより、当該開口を第1混合エレメントの外周縁よりも内側に位置させている。
このような構成にすると、混合流路を流出口を介して両混合エレメントの下流側の流路に直接連通させることができ、流路抵抗が低下する。流路抵抗が低下すると、供給する流体の圧力を高圧にしなくても処理量を増大させることができ、シール部における流体漏れを防止しつつ、処理量を増大させることができる。
このとき、第2混合エレメントの対向面とは反対の反対側面を、第1混合エレメントのうち第2混合エレメントよりも外側に広がる部分の下流側の面の位置と面一になる位置または第1混合エレメントの流入口側に位置させてもよい。このようにすると、混合流路を通過した流体を、流出口から、第2混合エレメントの反対側面に直交する真後ろの下流方向または下流方向であって第2混合エレメントの中央寄りの方向に放出させることができる。このように、真後ろまたは中央寄りの方向に流体を放出できれば、より流路抵抗が低下する。
そして、第1混合エレメントと第2混合エレメントからなる混合ユニットを、上流側から下流側に複数設置してもよい。混合ユニットを複数段にすると、流体の混合処理性能(たとえば混合処理対象物をより微細化する性能や、微細化の際により均一な大きさに微細化する性能)が向上する。処理対象物が気液混合流体中の気体であれば、より微細で均一の大きさの気泡を生成できる。このとき、上流側の混合ユニットの第2混合エレメントと、下流側の混合ユニットの第1混合エレメントとの間に、上流側の流出口から流出した液体を下流側の混合ユニットの流入口に案内する集合流路を確保する集合流路確保構造を設けてもよい。集合流路確保構造としては、たとえば、第2混合エレメントの反対側面に設けた突起や、第1混合エレメントのうち第2混合エレメントよりも外側に広がる部分の下流側の面に設けた突起を挙げることができる。このような突起を設けると、複数の混合ユニットを、上流側から下流側に並べて配置したときに、上流側の混合ユニットの第2混合エレメントの突起が下流側の混合ユニットの第1混合エレメントに当接することで、先に説明した集合流路が確保される。なお、第2混合エレメントの反対側面を、第1混合エレメントのうち第2混合エレメントよりも外側に広がる部分の下流側の面の位置よりも第1混合エレメントの流入口側に位置させた場合は、第1混合エレメントのうち第2混合エレメントよりも外側に広がる部分が上記突起として機能するので、上記突起をさらに設ける必要はない。
また、前記第2混合エレメントの前記対向面の反対面側に、前記流出口から流出した液体を集合させる集合流路を備え、この集合流路に、流路断面積を安定させるガイド体を設けてもよい。
第2混合エレメントの外周に全周に亘って形成された流出口から流出した流体を一旦集合させて1つの放出口から流出させるようにすると、集合流路は、流出口から放出口に向かって急速に流路断面積が小さくなる構造になる。流路断面積が急激に増減する構造は、流路抵抗が大きくなりやすく、また流体の圧力が局所的に高圧になりやすい。たとえば局所的高圧がシール部分など流体の漏れが生じやすい位置またはその近傍で生ずると、流体の漏れが生じやすくなる。この点、集合流路に、流路断面積を安定させるガイド体を設けると、流出口から放出口にかけて流路断面積が安定し、流路抵抗が増大することや局所的に流体圧力が高圧になることが防止される。
第2混合エレメントとこれに隣接して設置される板状の部材との間に集合流路が形成されているような構造の場合、ガイド体としては、例えば、上流側から下流側に向けて流路断面積を一定にできるように先すぼみ形状になっているものを挙げることができ、このような形状のガイド体を複数設ける構造を挙げることができる。
そして、ガイド体を第2混合エレメントに一体的に形成することもできる。第2混合エレメントとは別に、ガイド体を備えた部材を設置してもよいが、そのようにすると、静止型流体混合装置が大型化すると共に、構造が複雑になる。この点、第2混合エレメントにガイド体を形成すれば、部材が増えることがなく、静止型流体混合装置のコンパクト化を図ることができる。また、第2混合エレメントに突起形状のガイド体を設ける場合、このガイド体を、集合流路を確保するための突起としても用いることができるという利点がある。
また、ガイド体に接する状態で第2混合エレメントの反対面側に配置される排出側エレメントを備えると共に、当該排出側エレメントに、前記集合流路を通過した流体の放出口を形成する構造にしてもよい。
このような構造にすると、第2混合エレメントと排出側エレメントの間の位置に集合流を形成することができる。排出側エレメントを用いない構造では、集合流路は、混合ユニット側の第2混合エレメントやガイド体が設けられた部材と、これに隣接して配置される他の構造部材との間に形成されることになる。例えば、複数の混合ユニットを用いる場合について、一例を挙げると、上流側の第2混合エレメントと下流側の第1混合エレメントの間に形成される例を挙げることができる。このように、別構造の部材の間に集合流路を形成する構成では、集合流路の断面積などにばらつきが生じやすい。ばらつきが生ずると、流路抵抗が増大したり、局所的に流体圧力が高圧になったりしやすい。この点、第2混合エレメントと排出側エレメントの間の位置に集合流を形成することができれば、集合流路の形状が安定し、流路抵抗の増大や局所的に流体圧力が高圧になるようなことが防止される。
また、前記排出側エレメントは、前記集合流路に面する表面に凹凸を備えるものでもよい。
集合流路に面する表面に凹凸を備える排出側エレメントを用いれば、流出口から放出口までの流路のうち、排出側エレメントの表面が面している流路を流体が通過するとき、凹凸の存在によって流体中に、局所的高圧部分や局所的低圧部分が生じる。そして、このような流体中では、局所的に低圧部分(たとえば真空部分などの負圧部分)が生じるときに、いわゆる発泡現象が生じて液体中に気体が生じたり、微小な気泡が膨張(破裂)したり、生じた気体(気泡)が崩壊(消滅)したりするといったいわゆるキャビテーションと称される現象が生ずる。そして、このようなキャビテーションが起こるときに生ずる力によって、混合対象物の微細化が行われ、流体混合が促進される。
なお、先に説明したように、流体の漏れが生じやすい位置またはその近傍で局所的に流体高圧部分が生ずると、流体の漏れが生じやすくなるので、その意味では局所的高圧部分が生ずることは好ましくない。ただし、上記のように、集合流路に面する表面に凹凸を備える排出側エレメントを用いれば、流出口から放出口までの流路のうち、排出側エレメントの表面が面する部分の流路でのみ、流体中に局所的高圧部分や局所的低圧部分を生じさせることができる。そして、その他の部分、たとえば流出口の近傍など流体の漏れが生じやすい領域では、流路断面積の安定化により局所的高圧部分の発生が防止される状態が維持される。したがって、流体の漏れが生じやすくなることは防止されている。
また、前記のように集合流路にガイド体を設けることなく、当該集合流路に接する状態で前記第2混合エレメントの裏面側に配置される排出側エレメントを備える構造とすることもできる。このように、ガイド体を設けない構造では、静止型流体混合装置の構造簡易化と低コスト化を図ることができる。
ところで、静止型流体混合装置では、単位時間当たりの処理量を増大させていくと、本発明に係る静止型流体混合装置に供給した被処理流体が、処理されることで高温になることがある。したがって、被処理流体の温度を処理の前後で一定にしたい場合や、処理後に所定温度の被処理流体を得たい場合などに、不都合な場合があった。この点、処理後に排出口から排出される被処理流体の温度制御を行う温度制御手段を備えれば、被処理流体を冷却したり、所望温度の被処理流体が得られるようにしたりすることができ、好ましい。
温度制御手段としては、たとえば、混合ユニットの外周に、冷却水などの温度制御用の流体を流通させることができる冷却用のジャケットを配置する構造を挙げることができる。このような構造にすると、被処理流体の処理中にジャケットに温度制御用の流体を流通させることで、被処理流体を冷却でき、あるいは所定温度に制御することができる。
また、静止型流体混合装置の前記流入口に、気体と液体とが混合された状態の気液混合流体を供給する気液混合流体供給管を接続することで、静止型流体混合装置を静止型気泡生成装置として用いることができる。
たとえば、所定の液体に、混合気体として空気や酸素を混合させてもよい。電解水、アルカリイオン水または酸性水と、空気などの気体との気液混合流体を処理すると、微細な気泡を含有した電解水、アルカリイオン水または酸性水を製造することができる。これらの水は、たとえば、洗浄水として高い機能を有するものであり、洗浄水として好適である。
そして、本発明に係る静止型気泡生成装置によれば、気液混合流体を処理することによって、ナノバブルとも称される極めて微細な気泡を生成できる。このような微細な気泡を含む水は、洗浄水として機能する。したがって、本発明に係る静止型気泡生成装置は、このような洗浄水を製造する装置としても好適である。
また、本発明係る静止型気泡生成装置で処理した気泡含有水は、汚泥水浄化用水として好適であり、また、疲労した生体に接触させあるいは補給水分として補給することにより疲労回復させるための水として好適である。生体表面に接触させる方法としては、種々の方法が考えられるが、例えば、入浴時の浴槽水として用いる方法を挙げることができる。
また、本発明係る静止型気泡生成装置で処理した気泡含有水は、浴槽、貯水槽、プールなどに一定期間貯水された水の浄化用に用いられる浄化用水としても好適である。
また、本発明に係る静止型気泡生成装置で処理した水は、植物などの食品の洗浄殺菌用水としても好適である。より具体的に説明すると、例えば、野菜、果物、農作物、食品などの洗浄殺菌に好適である。
また、本発明に係る静止型気泡生成装置によれば、平均粒径が500nm以下の気泡を被処理流体中に生成でき、そして平均粒径が50nm以下の気泡を被処理流体中に生成できる。そして、静止型気泡生成装置に供給する気液混合流体の気体としてオゾン含有ガスを用いれば、オゾン含有水溶液などを製造できる。また、流体中に塩分を含有させてもよい。
また、静止型流体混合装置の前記流入口に、改質対象液体を供給する液体供給管を接続することで、静止型流体混合装置を静止型液体改質処理装置として用いることができる。改質対象液体としては、たとえば水など、種々の液体を挙げることができる。
本発明に係る静止型液体改質処理装置によれば、改質対象液体に対して混合処理を施すことで、液体を改質することができる。たとえば、水は、通常、単一の分子で存在しているのではなく、多数の分子からなるクラスタを形成しているところ、静止型液体改質処理装置で水を処理すると、クラスタの大きさがより小さい改質水を得ることができる。クラスタの大きさがより小さい改質水は、たとえば、水溶性の物質を溶解させる際に溶解性が向上し、消化管においてより吸収されやすくなったり、体内の細胞内に取り込まれやすくなったりするなど浸透性が向上する。
また、静止型流体混合装置の前記流入口に、タンパク質、アミノ酸、糖質、糖タンパク質、脂質の少なくともいずれか一つの成分と水分とを含む水性流体を供給する水性流体供給管を接続することで、静止型流体混合装置を静止型水性流体混合装置として用いることができる。静止型水性流体混合装置としては、たとえば、水とローヤルゼリーを含む液体など、水とタンパク質、アミノ酸、糖質、糖タンパク質、脂質の少なくともいずれか一つの成分を含む種々の流体を挙げることができる。
本発明に係る静止型水性流体混合装置によれば、混合対象の流体に対して混合処理を施すことによって流体を均一に混合させることができ、いわゆる乳化させることができる。これにより、クリーム状や乳液状の混合物を製造することができる。たとえば、混合対象物が水とローヤルゼリーの混合物である場合、この混合物を静止型水性流体混合装置で処理すると、ローヤルゼリー中に含まれる糖タンパク質などの高分子成分が微細化され、乳化された混合対象物が得られる。
また、静止型流体混合装置の前記流入口に、固体と液体とが混合された状態の固液混合流体を供給する固液混合流体供給管を接続することで、静止型流体混合装置を静止型固液混合装置として用いることができる。固液体混合流体としては、たとえば、フコイダンを含有する褐藻などの海藻類を固形物として含む固液体混合流体や、アルギン酸を含む昆布、ひじきあるいはモズクなどの褐藻などの海藻類を固形物として含む固液体混合流体や、β−グルカンを含むきのこ類を固形物として含む固液体混合流体や、ジンセノサイドを含む高麗人参や田七人参を固形物として含む固液体混合流体や、アリインおよび/またはアリシンを含むにんにくを固形物として含む固液体混合流体や、イソフラボンを含む大豆を固形物として含む固液体混合流体や、ジンゲロールを含む生姜を固形物として含む固液体混合流体や、アロインを含むアロエを固形物として含む固液体混合流体や、クルクミンを含むウコンを固形物として含む固液体混合流体や、その他の野菜や果物を固形物として含む固液体混合流体や、粉末などの微粒子と水とからなる固液体混合流体など、種々の流体を挙げることができる。このような固液体混合流体を静止型固液混合装置で処理すると、フコイダンなどの上記成分を効率よく抽出することができる。
本発明に係る静止型固液混合装置によれば、混合対象の流体に対して混合処理を施すことによって、固体粒子などの固体成分および水などの液体成分を微細化して両者を均一に混合させることができ、分散させることができる。
次に、本発明に係る静止型流体混合装置のより具体的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
まず、第1実施形態の静止型流体混合装置について、図面を用いて詳細に説明する。
図1に示すように、第1実施形態の静止型流体混合装置10は、処理対象の流体について混合処理を施す流体混合器11と、当該流体混合器11に処理流体を供給給する第1ポンプ12と、第1ポンプ12を用いて流体混合器11の流体導入口11aに流体を供給する流体供給管13と、流体混合器11の流体排出口11bに接続された流体排出管14とを備えており、第1ポンプ12で供給した流体について流体混合器11で混合処理を施すことができるようになっている。そして、混合処理が施された流体を流体排出管14から排出できるようになっている。
また、静止型流体混合装置10の流体供給管13には第1三方弁13aが取り付けられており、流体排出管14には第2三方弁14aが取り付けられている。そして、第1三方弁13aと第2三方弁14aを接続する流体戻り管15が取り付けられており、この流体戻り管には、第2三方弁14aで回収した流体を第1三方弁13aの位置に戻すように供給するための第2ポンプ16が設置されている。したがって、第2ポンプ16が設置された戻り管15を使用することによって、同じ流体を繰り返し流体混合器11に供給することができるようになっている。
図2に示すように、流体混合器11は、両端が開口している円筒形状のケーシング本体21を有する。ケーシング本体21の両端の各開口部にはフランジ21a,21bが形成されており、各フランジ21a,21bにケーシング本体21の蓋体22,23が着脱自在に取り付けられている。各蓋体22,23には、静止型流体混合装置10の被処理流体(以下、単に流体と称することがある)の出入口である開口22a,23aが形成されている。本実施形態では、図1において左側に位置する蓋体22の開口を流体導入口22aとして用い、右側に位置する蓋体23の開口を流体排出口23aとして用いている。
そして、ケーシング本体21内には、流体に混合処理を施す混合ユニット24が複数組(本実施形態では5組)隙間のない状態で収容されている。
図3に示されるように、各混合ユニット24は、いずれも同様の構造であり、対向配置された2枚の盤状(略円盤形状)の部材、より具体的には円盤形状の混合エレメント30,40を備えている。2枚の混合エレメント30,40のうち、流体導入口側(上流側)に配置される第1混合エレメント30は、その中央部に、流体R(図2等において矢印で示す)の流入口31が貫通状態で形成されている。また、第1混合エレメント30の流体排出口側に向けられる下流側面(第2混合エレメントと対向する側の面)30aは、中央に、円形の開口を有する凹み部32が形成されており、凹み部32の部分は肉薄になっている。そして、凹み部を取り囲むように、第1混合エレメントの外周に全周に亘って肉厚部33が形成されている。
図4に示されるように、第1混合エレメント30の凹み部32の底部32aには、開口形状が正六角形の凹部34が隙間のない状態で複数形成されている。いわゆるハニカム状に多数の凹部が形成されている。なお、符号「35」は、第1混合エレメント30に第2混合エレメント40をねじ留めにより固定する際に用いられるねじ用の挿通孔である。
図3および図5に示されるように、2枚の混合エレメントのうち、流体排出口側(下流側)に配置される第2混合エレメント40は、第1混合エレメント30よりも小径である。そして、第2混合エレメント40の直径は、第1混合エレメント30の凹み部32の直径よりも小径であり、凹み部32に第2混合エレメント40が入るようになっている。また、第2混合エレメント40の、第1混合エレメント30との対向面、すなわち流体導入口22a側に向けられる上流側面(第1混合エレメントと対向する面)40aには、第1混合エレメント30の底部32aと同様に、開口形状が正六角形の凹部41が隙間のない状態で複数形成されている。そして、上流側面とは反対の下流側面40bの面には、3つの突起42が形成されている。なお、符号「43」は、第1混合エレメント30に第2混合エレメント40をねじ留めにより固定する際に用いられる雌ねじが形成されたねじ穴である。
そして、両混合ユニット30,40は、図6および図7に示されるような配置で組み付けられる。具体的に説明すると、第1混合エレメント30の凹み部32に、第2混合エレメント40を位置させる。このとき、第1混合エレメント30の下流側面30aのハニカム状の多数の凹部34の開口面と、第2混合エレメント40の上流側面40aのハニカム状の多数の凹部41の開口面とが当接するように、第2混合エレメント40の向きを定める(図7参照)。第2混合エレメント40をこの向きに向けると、突起42が形成された面が外から見える状態になる(図6参照)。この状態で、第1混合エレメント30の挿通孔35と、第2混合エレメント40のねじ穴43の位置を合わせてねじ44でねじ止めして組み付ける。
図6に示されるように、第2混合エレメント40の直径は、第1混合エレメント30の凹み部32の直径よりも小径になっている。ただし直径の違いは僅かである。したがって、両混合エレメント30,40を組み付けると、第2混合エレメント40の外周に、外周縁に沿って全周に亘り隙間24aが形成される。この隙間24aは、流体の流出口である。そして、第1混合エレメント30の流入口31に供給された流体は、後述する混合流路25(図1参照)を通過した後、この流出口24aから放出される。
このように、第2混合エレメント40の外周に全周に亘る流出口24aを形成すると、全周に亘って流体を流出させることができるので、混合ユニット24の外周部の位置によって流体の流出量に偏りが生ずるようなことが防止される。流出量の偏りが防止されれば、流路抵抗が低下し、また局所的に流体の圧力が高圧になる場所が生ずることが防止される。また、本実施形態では、流出口24aの大きさ、すなわち隙間の幅が全周に亘って均等になっている。これにより、より確実に流路抵抗を低下させることができ、局所的高圧領域の発生、特に流出口24a近傍における局所的高圧領域の発生を防止できる。
また、各混合エレメント30,40の当接側の面に形成されるハニカム状の多数の凹部34,41の相互関係について説明する。
図8に示されるように、両混合エレメント30,40の当接面は、第1混合エレメントの凹部34の中心位置に、第2混合エレメント40の凹部41の角部41aが位置する状態で当接している。このような状態で当接させると、第1混合エレメント30の凹部34と第2混合エレメント40の凹部41との間で流体を流すことができる。また、角部41aは3つの凹部41の角部41aが集まっている位置である。したがって、例えば、第1混合エレメント30の凹部34側から第2混合エレメント40の凹部41側に流体が流れる場合を考えると、流体は、3つの流路に分流されることになる。つまり、第1混合エレメント30の凹部34の中央位置に位置された第2混合エレメント40の角部41aは、流体を分流する分岐部として機能する。逆に、第2混合エレメント40側から第1混合エレメント30側に流体が流れる場合を考えると、3方から流れてきた流体が1つの凹部34に流れ込むことで合流することになる。この場合、第2混合エレメント40の中央位置に位置された角部41aは、合流部として機能する。
また、第2混合エレメント40の凹部41の中心位置にも、第1混合エレメント30の凹部34の角部34aが位置する。この場合は、第1混合エレメント30の角部34aが上述した分岐部や合流部として機能する。
このように、相互に対向配置された両混合エレメント30,40の間には、中央の流入口から供給された流体が分流と合流を繰り返しながら流れる混合流路25(図2参照)が形成されている。この混合流路25を流れる過程で、流体に混合処理が施される。そして、混合流路25を通過した流体は、その後、混合ユニット24の外周部の流出口24aから混合ユニット24の外部に流出する。
図2に示されるように、本実施形態の流体混合器11では、ケーシング本体21内に5つの混合ユニット24が設置されている。複数の混合ユニット24を設置すると、上流側に位置する混合ユニット24の第2混合エレメント40の突起42が下流側に位置する設置された混合ユニット24の第1混合エレメント30の上流側面30bに当接する。これにより、隣接して配置される混合ユニット24の間に空間が確保され、流出口24aから流出した流体を下流側の混合ユニット24の流入口31に流す集合流路26が確保される。
なお、最も下流側に配置された混合ユニット24の第2混合エレメント40の突起42は、ケーシング本体21の下流側の蓋体23に当接する。これにより、最下流側の混合ユニット24の流出口24aから流出した流体をケーシングの流体排出口23aに流す集合流路26が確保される。
この静止型流体混合装置10を用いて流体に混合処理を施す場合について説明する。ここでは、静止型流体混合装置10を気液混合流体に混合処理を施す静止型気泡発生装置として用いる場合を例に説明する。
静止型流体混合装置10を静止型気泡発生装置として用いる場合、静止型流体混合装置10の流体導入口11aに接続されている流体供給管13として、気体と液体とが混合された状態の気液混合流体を供給する気液混合流体供給管を接続する。ここでは、水と空気の気液混合流体を供給する場合について説明する。
まず、図1に示した第1ポンプ12を作動させて、処理対象の流体を流体混合器11の流体導入口11aに供給する。
すると、図2に示されるように、流体混合器11に供給された流体は、ケーシング内の最も上流側に配置された第1混合ユニット24の第1混合エレメント30の流入口31に流入され、第1混合ユニット24の混合流路25に送られる。
混合流路25に送られた流体は、ここで分流と合流を繰り返しつつ、混合ユニット24の外周側に形成された流出口24aに流れる。つまり、分流と合流を繰り返す過程で蛇行しながら流動するので、概略的には、円盤形状の混合ユニット24の中心から外周側に放射状に広がる方向に流動しつつ、分流と合流を繰り返し、その過程で流体に混合処理が施され、流体内に微細かつ均一な大きさの気泡が生成される。
第1混合ユニット24の流出口24aから流出した流体は、第1混合ユニット24と、その下流に配置された第2混合ユニット24との間の集合流路26を流れて、第2混合ユニット24の流入口31に送られる。なお、各混合ユニット24における流体の流れは、いずれも、第1混合ユニット24における流体の流れと同様であるので、その説明については省略するが、混合ユニット24を複数設置して、分流と合流を繰り返すことによって、より確実に流体混合処理が施され、より微細で均一な大きさの気泡を流体内に生成することができるようになる。
また、次のようにしてもよい。図1において、流体混合器11の流体排出口11bから排出された流体が戻り管15に流れ込むように、第2三方弁14aの開閉状態を操作すると共に、戻り管15の流体が流体供給管13に流れ込むように第1三方弁13aの開閉状態を操作する。そして、第2ポンプ16を作動させて流体を循環的に流体混合器11に送り込むようにする。このようにすると、さらに確実に流体混合処理が施され、さらに微細で均一な大きさの気泡を流体内に生成することができる。そして、必要に応じた時間、循環させた後、三方弁13a,14aを操作して、処理流体を流体排出管14から排出させる。このようにすることで、より確実な流体混合処理を施すことができ、より微細かつ均一な大きさの気泡を流体中に生成できる。
ここで、分流総数は、各混合エレメント30,40に形成した凹部34,41の数と、流体混合器11のケーシング本体21内に設置された混合ユニット24の数と、流体混合器11に何回循環させるかという繰り返し回数とによって決定される。例えば、凹部34,41が平面視六角形状の開口を有するものであれば、凹部の数が6室、12室、18室(計36室)の3列状の第1室形成体30と、室数が3室、9室、15室(計27室)の3列状の第2室形成体31とを重合させた場合では、合計した分流総数は数千回にも達することになる。なお、ここでいう分流総数とは、第1混合エレメント30と第2混合エレメント40の間に形成された混合流路25の分岐部において分流される数のことである。
次に、第2実施形態の静止型流体混合装置10Aについて説明する。
第2実施形態の静止型流体混合装置10Aの流体混合器11Aは、第1実施形態の混合ユニット24と異なり、混合ユニット24Aの流出口24aから流出した流体が流れる集合流路26にガイド体51を備えている(図11参照)。なお、上記第1実施形態の静止型流体混合装置10と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
図9に示されるように、この実施形態の流体混合器11Aの混合ユニット24Aは、第1混合エレメント30と、第2混合エレメント40に加えて、集合流路26の流路断面積を安定させる部材であるガイド体51を備えた整流エレメント50を備えている。
これらのうち、第2混合エレメント40は、第1実施形態のものとは異なり、突起42を備えていない。つまり、第2混合エレメント40の流体排出口側に向けられる下流側面40bは平面になっている。これ以外の点は、第1実施形態の第2混合エレメント40と同じである。また、図10において、符号「45」は、第1混合エレメント30に第2混合エレメント40をねじ留めにより固定する際に用いられるねじ用の挿通孔である。
図11に示されるように、整流エレメント50は、第2混合エレメント40と同径の円盤形状の部材であり、ケーシング本体21内に設置する状態で第2混合エレメント40側に向けられる上流側面50aは平面になっている。そして、流体排出口23a側に向けられる下流側面50bに、突起状のガイド体51が形成されている。
ガイド体51は、外周側(基端側)から中心(先端側)に向けて先すぼみ形状の部材であり、本実施形態の整流エレメント50には、都合8つのガイド体が形成されている。そして、ガイド体51は、隣接するガイド体51の相対向する側面が相互に平行になるように形成されている。したがって、隣接するガイド体51の間に形成される溝部52は、その幅が一定になっている。なお、符号「53」は、第1混合エレメント30および第2混合エレメント40に整流エレメント50をねじ留めによって固定する際に用いられる雌ねじが形成されたねじ穴である。
このような整流エレメント50を備える混合ユニット24Aは、図9に示されるように組み付けられる。まず、第1実施形態と同様に、第1混合エレメント30に第2混合エレメント40を組み込み、第2混合エレメント40に重ね合わせるように、整流エレメント50を配置する(図10および図12参照)。このとき、外側に向けられた第2混合エレメント40の平面状の下流側面40bと、整流エレメント50の平面状態の上流側面50aとを当接させる。すると、整流エレメント50のガイド体51が形成された面が外側に向けられる。この状態で、各混合エレメント30,40の挿通孔35,45と、整流エレメント50のねじ穴53の位置を合わせてねじ54止めして組み付ける。
また、図9に示されるように、第2実施形態の流体混合器11Aでは、ケーシング本体21内に5つの混合ユニット24Aが設置されている。複数の混合ユニット24Aを設置すると、上流側に位置する混合ユニット24Aの整流エレメント50のガイド体51が下流側に位置する混合ユニット24Aの第1混合エレメント30の上流側面30bに当接する。これにより、隣接して配置される混合ユニット24Aの間に空間が確保され、流出口24aから流出した流体を下流側の混合ユニット24Aの流入口31に流す集合流路26が確保される。
しかも、図9および図11に示されるように、整流エレメント50において、相互に隣接するガイド体51の間に形成されている溝部52は、上述したように、その幅寸法が一定になっている。したがって、ガイド体51を第1混合エレメント30に当接させたときに、溝部52と第1混合エレメント30との間に形成される集合流路26は、流路断面積が一定になる。ガイド体51の間に形成されている溝部52は、いずれも一定幅になっているので、溝部52が形成されている区間については、集合流路26の流路断面積は一定になっている。また、ガイド体51は、流体の流れを整流するものでもある。ガイド体51を設けることで流体がスムーズに流れる。
このようなガイド体51がなければ、集合流路26は、外周側ほど流路断面積が大きく、中心に近づくに連れて急激に流路断面積が狭くなる。流路断面積が急激に増減する構造は、流路抵抗の原因になったり、局所的に流体が高圧になる部分を生じさせる原因になったりする。流路抵抗が大きくなると、流体の圧力がより高圧になると共に流量が低下したりする。また、局所的に高圧の場所が生ずるとそこから流体の漏れが生じたりする。この点、本実施形態の流体混合器11Aでは、ガイド体51が設けられているので、集合流路26における流路断面積が安定している。流路断面積が安定すると、流路抵抗が低下し、あるいは局所的に流体の圧力が高圧になる場所が生ずるようなことが防止される。
また、ここまで説明した第2実施形態では、第2混合エレメント40とは別体の整流エレメント50にガイド体51を形成しているが、図13に示されるように、第2混合エレメント40Aにガイド体51を形成するようにしてもよい。この場合、整流エレメントが不要になり、流体混合器11の小型化を図ることができる。そして、部品点数が減少するので、組み付け作業が容易になる。本実施形態の流体混合器11Aのように流路が比較的狭い装置では、メンテナンスを行なう機会が少なくなく、分解・組立て作業など、メンテナンスが容易であることは重要である。また、第2混合エレメント40Aに備えたガイド体51は、第1実施形態の突起42としても用いることができる。したがって、ガイド体51とは別に突起を設ける必要がないという利点もある。
なお、第2実施形態の静止型流体混合装置10Aを用いて気泡を生成する方法自体は、第1実施形態の静止型流体混合装置10を用いて気泡を生成する場合と同様であるので、ここではその説明を省略する。次に説明する第3実施形態についても同様である。
次に、第3実施形態の静止型流体混合成装置10Bについて説明する。なお、上記第2実施形態の静止型流体混合成装置10Aと同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
第3実施形態の静止型流体混合装置10Bの流体混合器11Bは、第2実施形態の流体混合器11Aと異なり、ケーシング本体21内に設置された混合ユニットの構成部材として、整流エレメント50に対向配置される排出側エレメント60を備えている。
具体的に説明すると、図15に示されるように、第3実施形態の流体混合器11Bの混合ユニット24Bは、第2実施形態の第1混合エレメント30と、第2混合エレメント40と、整流エレメント50に加えて、排出側エレメント60を備えている。
なお、第1および第2混合エレメント30,40は、第2実施形態のものと同一である。また、図15に示されるように、本実施形態の整流エレメント50は、第2実施形態のねじ穴53に替えて、ねじ留めに用いられる挿通孔55を備えている。この点以外は、第2実施形態の整流エレメント50と同様である。
図15に示されるように、排出側エレメント60は、流体流入口側に向けられた上流側面(整流エレメントと対向する側の面)60aの中央に、開口形状が円形である凹み部61を備えている。この凹み部61の直径は、整流エレメント50の直径より大きくなっており、この凹み部61に整流エレメント50を配置できるようになっている。また、排出側エレメント60の凹み部61の底部には、開口形状が正六角形の凹部62が隙間のない状態で複数形成されている(図17参照)。いわゆるハニカム状に多数の凹部62が形成されている。
また、排出側エレメント60には、その中央部に、流体放出口63が貫通状態で形成されている。なお、図15および図17において、符号「64」は、第1混合エレメント30等に排出側エレメント60をねじ留めにより固定する際に用いられるねじ穴を示すものであり、符号「66」は、排出側エレメント60の上流側面60aや下流側面60bに形成された環形状の溝に装着されたパッキンを示すものである。
そして、混合ユニット24Bは、図14から図16に示される状態に組み付けられる。第1混合エレメント30と、第2混合エレメント40と、整流エレメント50との組み付け状態は上記実施形態と同様であるので、その説明を省略する。ここでは、整流エレメント50と排出側エレメント60の組み合わせについて説明する。図15に示されるように、整流エレメント50の直径は、排出側エレメント60の凹み部61の直径よりも小径であり、整流エレメント50は、排出側エレメント60の凹み部61に位置される。また、排出側エレメント60の上流側面60aのハニカム状の多数の凹部62の開口面と、整流エレメント50の下流側面50bのガイド体51の上面51aとが当接するように、排出側エレメント60の向きを定める。この状態で、第1混合エレメント30の挿通孔35と、第2混合エレメント40のねじ穴43と、整流エレメント50の挿通孔55と、排出側エレメント60のねじ穴64の位置を合わせてねじ54でねじ止めして組み付ける。
なお、先に説明したように、整流エレメント50の直径は、排出側エレメント60の凹み部61の直径より小径であるが、直径の違いは僅かである。両エレメント50,60を組み付けると、整流エレメント50の外周に、全周に亘る環状で隙間状の開口65(図14参照)が形成される。この開口は、整流エレメント50と排出側エレメント60の間に形成される集合流路26への入口(以下、符号「65」を付す)である。
また、図14に示されるように、整流エレメント50の直径は、第2混合エレメント40の直径と同一である。そして、整流エレメント50の流体導入口22a側に向けられた上流側面50aと、排出側エレメント60の上流側面(肉厚部の外面)60aとは面一になっている。したがって、隙間状の開口である集合流路26への入口65は、流出口24aに対向する位置に配置される。つまり、第2混合エレメント40の外周縁に形成された流出口24aから流出した流体は、直接、隙間状の入口65から整流エレメント50と排出側エレメント60の間に流れ込む。
このような構造にすると、流体の流路の途中に、流体が滞留しやすいいわゆるデッドスペースが無くなる。デッドスペースがあると、そのスペースに流体が滞留してしまい、流体混合処理品質(たとえば、生成する気泡の大きさなどの品質)にばらつきが生じやすくなる。この点、本実施形態では、デッドスペースが最小限になっているので、このような不具合の発生が最小限に抑制され、流体により均一な混合処理を施すことができ、より均一な大きさの気泡を生成できる。
先に説明したように、整流エレメント50と排出側エレメント60の間には、集合流路26(図14参照)が形成されており、流体は、入口65から集合流路26に流れ込むようになっている。流体は、集合流路26を通って流体放出口63(図15参照)へと流れ、次の混合ユニット24Bの流入口31に流れ込んだり、ケーシングの蓋体23の流体排出口23aから排出されたりする。
集合流路26では、流体は、整流エレメント50の外周側から中心側に向けて流れる。整流エレメント50の外周側には、ガイド体51が形成されており、隣接するガイド体51の間には溝部52が形成されている。溝部52の幅寸法は一定になっており、溝部52と排出側エレメント60の凹み部61の底面61aとに囲まれた流路断面積は一定になっている。このように、流路断面積が安定していると、流路抵抗や圧力が安定し、流体の流通が安定する。
ところで、図17に示されるように、排出側エレメント60の凹み部61の底面61aには、いわゆるハニカム形状の凹部62が多数形成されている。整流エレメント50のガイド体51の上面51aは平面であるので、排出側エレメント60側の当接面にハニカム形状の凹部(凹凸形状)があっても、流体が分流されたり、合流されたりすることはない。ところが、排出側エレメント60の凹み部61の底面61aに凹部62があると、集合流路26内であって凹部62の開口の近傍を流れる流体に対して、剪断力による混合効果や、機械的なキャビテーション等による混合効果を与えることができる。
たとえば、集合流路26に面する表面に複数の凹部62を備える排出側エレメント60を用いると、集合流路26内であって凹部62の開口の近傍を流れる流体中に、局所的高圧部分や局所的低圧部分を生じさせることができる。そして、このような流体中で、局所的低圧部分(たとえば真空部分などの負圧部分)が生じるときに、いわゆる発泡現象が生じて液体中に気体が生じたり、微小な気泡が膨張(破裂)したり、生じた気体(気泡)が崩壊(消滅)したりする、いわゆるキャビテーションと称される現象が生ずる。そして、このようなキャビテーションが起こるときに生ずる力によって、混合対象物の微細化が行われ、流体混合が促進される。
ただし、上記のように、集合流路26に面する表面に凹部62を備える排出側エレメント60を用いれば、排出側エレメント60の凹部62の開口が面するところでのみ、流体中に局所的高圧部分や局所的低圧部分を生じさせることができる。そして、その他の部分、たとえば流出口24aやこれに対向配置された入口65(図14参照)の近傍など流体の漏れが生じやすい領域では、流路断面積が安定化されており、局所的高圧部分の発生が防止される状態が維持される。したがって、流体の漏れが生じやすくなることは防止されている。
なお、排出側エレメント60としては、凹み部61の底面61aに凹部が形成された物に限られるものではなく、種々の形態のものを用いることができる。例えば、凹み部61の底面61aが平面であるものでもよい。
次に、第4実施形態の静止型流体混合成装置10Cについて説明する。なお、上記第3実施形態の静止型流体混合成装置10Bと同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
第4実施形態の静止型流体混合装置10Cの流体混合器11Cは、第3実施形態の流体混合器11Bと異なり、ケーシング本体21内に設置された混合ユニットの構成部材として、整流エレメント50を設けていない。
具体的に説明すると、図19に示されるように、第4実施形態の流体混合器11Cの混合ユニット24Cは、第3実施形態の第1混合エレメント30と、第2混合エレメント40と、整流エレメント50に代えて設けた一対のスペーサー80,80と、排出側エレメント60を備えている。
ここで、スペーサー80は、両端に開口端を有する筒状に形成して、同スペーサー80の筒長の大きさにより、第2混合エレメント40と排出側エレメント60との間隔、すなわち、両エレメント40,60間に形成される集合流路26の流路幅W(図18参照)を適宜設定することができるようにしており、かかる集合流路26の流路幅Wの変更は、適切な筒長を有するスペーサー80に付け替えることにより行うことができる。
そして、混合ユニット24Cは、図18から図20に示される状態に組み付けられる。
すなわち、第1混合エレメント30と、第2混合エレメント40と、排出側エレメント60との組み付け状態は、前記第3実施形態と同様であり、第1混合エレメント30の挿通孔35,35と、第2混合エレメント40のねじ穴43,43と、一対のスペーサー80,80の開口端と、排出側エレメント60のねじ穴64,64の位置を符合させて、ねじ54,54でねじ止めして組み付ける。
なお、上記のように第2混合エレメント40と排出側エレメント60の間にスペーサー80,80を介在させて組み付けると、両エレメント40,60間の外周に、全周に亘る環状で隙間状の開口65(図18参照)が形成される。この開口は、第2混合エレメント40と排出側エレメント60の間に形成される集合流路26への入口(以下、符号「65」を付す)である。
また、図18に示されるように、隙間状の開口である集合流路26への入口65は、流出口24aに対向する位置に配置される。つまり、第2混合エレメント40の外周縁に形成された流出口24aから流出した流体は、直接、隙間状の入口65から第2混合エレメント40と排出側エレメント60の間に形成される集合流路26に流れ込む。
このような構造にすると、流体の流路の途中に、流体が滞留しやすいいわゆるデッドスペースが無くなる。デッドスペースがあると、そのスペースに流体が滞留してしまい、流体混合処理品質(たとえば、生成する気泡の大きさなどの品質)にばらつきが生じやすくなる。この点、本実施形態では、デッドスペースが最小限になっているので、このような不具合の発生が最小限に抑制され、流体により均一な混合処理を施すことができ、より均一な大きさの気泡を生成できる。しかも、かかる静止型流体混合装置11Cでは、前記した第3実施形態に比べて構造の簡易化と低コスト化を図ることができる。
先に説明したように、第2混合エレメント40と排出側エレメント60の間には、集合流路26(図18参照)が形成されており、流体は、入口65から集合流路26に流れ込むようになっている。集合流路26では、流体は、第2混合エレメント40の背面に沿って、その外周側から中心側に向けて流れ、流体放出口63(図18参照)へと流れ、次の混合ユニット24Bの流入口31に流れ込んだり、ケーシングの蓋体23の流体排出口23aから排出されたりする。
この際、集合流路26に面する表面に複数の凹部62を備える排出側エレメント60を用いるため、集合流路26内であって凹部62の開口の近傍を流れる流体中に、局所的高圧部分や局所的低圧部分を生じさせることができる。そして、このような流体中で、局所的低圧部分(たとえば真空部分などの負圧部分)が生じるときに、いわゆる発泡現象が生じて液体中に気体が生じたり、微小な気泡が膨張(破裂)したり、生じた気体(気泡)が崩壊(消滅)したりする、いわゆるキャビテーションと称される現象が生ずる。そして、このようなキャビテーションが起こるときに生ずる力によって、混合対象物の微細化が行われ、流体混合が促進される。
次に、本実施形態の静止型流体混合装置の性能について評価した結果を説明する。
ここでは、静止型流体混合装置を静止型気泡生成装置として用い、当該静止型気泡生成装置で処理された気泡含有水に含まれる気泡の大きさを測定し、気泡の大きさに基づいて静止型流体混合装置の性能を評価した。
実施例1
本実施例で用いた静止型気泡生成装置は、基本的構成が第3実施形態の静止型気泡生成装置と共通するものであった。具体的には、本実施例で用いた静止型気泡生成装置は、第3実施形態の静止型気泡生成装置と異なり、ケーシング本体内に8組の混合ユニットを備えるものであった。これ以外の構成は第3実施形態と同様であった。なお、混合ユニットは、直径が107mmであり、材質はステンレスであった。
このような静止型気泡生成装置を動作させて、実施例1の評価に用いる気泡含有水を得た。このとき、静止型気泡生成装置に供給した気液混合流体は水と空気とからなるものであり、水は一般の水道水であり、水温は14℃であった。そして、混合流体における空気の容積比率(大気圧状態)は約3%であった。なお、供給された気液混合流体が流体混合装置を通過する回数は1回であった。また、気液混合流体の供給圧力は1.0MPaであった。このとき、流体混合装置の処理量は毎分約20リットルであり、流体混合装置の流体排出口における水の吐出圧力は約0.4MPaであった。そして、動作開始から30秒経過したときに、流体吐出口から排出された処理水を評価用の水として採取した。
比較例1
本比較例で用いた従来の静止型気泡生成装置は、図21に示される流体混合器111を備えるものであった。この流体混合器111は、特許文献1に記載されている装置で用いている流体混合装置と同様の構成である。つまり、この流体混合器111の混合ユニット124は、概略的には、その中心から外周に向けて放射状に流体を流す混合流路と、外周に流れた流体を再び中心に向けて流す集合流路を備えており、両流路がハニカム形状の凹凸を有する当接面を当接させることで形成された流路になっている。そして、流体混合器111の構成は、混合ユニットの流路の状態が異なること以外については、実施例1の流体混合装置と同様であった。
このような従来の静止型気泡生成装置を作動させて、比較例1の評価に用いる気泡含有水を得た。このとき、気液混合流体の供給圧力は1.0MPaであり、また吐出圧力も約0.4MPaと実施例1とほぼ同じであったが、流体混合装置の処理量は毎分約15リットルと少なかった。これら以外の条件は、実施例1と同じであった。そして、実施例1と同様、動作開始から30秒経過したときに、流体吐出口から排出された処理水を評価用の水として採取した。
このようにして採取した処理水に含有される気泡の大きさを、レーザ回折式粒度分布測定装置(SALD−2000A、株式会社島津製作所製)を用いて測定した。その測定結果を図22に示す。
図22(a)のグラフに示されるように、実施例1では、処理水に含有される気泡のほとんどが1μm以下の気泡粒径であった。そして、気泡のほとんどは気泡粒径が0.5μmから1.0μmのものであり、気泡粒径が均一になっていた。
これに対し、図22(b)に示されるように、比較例1では、気泡のほとんどが30μm以上であった。そして、気泡粒径は、30μmから100μmの間に分布しており、気泡粒径にばらつきがあった。
このような測定結果より、本実施形態の静止型気泡生成装置は、極めて微粒の気泡を生成することができるという優れた性能を有しており、しかも気泡粒径が均一な気泡を生成できるという優れた性能を有することがわかった。また、これにより、本実施形態の静止型流体混合装置は、極めて優れた流体混合能力を備えていることがわかった。
ここまで、静止型流体混合装置について、いくつかの実施形態を説明したが、上記形態に限られず、種々の改変をすることができる。
たとえば、上記各実施形態の静止型流体混合装置では、凹部34,41の開口の形状は、正六角形の開口であったが、これに限られるものではなく、例えば、正三角形などの三角形や、正四角形などの四角形や、正八角形などの八角形などの形状でもよい。
また、上記実施形態で用いられている静止型流体混合装置のうち、シール用のパッキンを備えているのは、第3実施形態や第4実施形態の流体混合器11B,11Cであるが、第1実施形態や第2実施形態の静止型流体混合器11,11Aにシール部材を設置してもよい。シール部材を設置すると、よりシール性が向上し、流体漏れなどの発生がより確実に防止される。
また、上記実施形態のうち、いわゆるデッドスペースを最小限にしているのは、図14に示した第3実施形態や第4実施形態の流体混合器11B,11Cであるが、第1実施形態や第2実施形態の流体混合器11,11Aにおいても、できるだけデッドスペースをなくす構造にしてもよい。たとえば、第1混合エレメントの肉厚部33の厚さをさらに厚くするなどして、当該肉厚部3の下流側面(流体排出口側の面)を、下流側に配置される別の混合ユニット24の第1混合エレメントの上流側面(流体導入口側の面)に当接させるような構造を挙げることができる。
また、図23に示されるように、混合ユニット24を構成するエレメントのうち、処理流体に接する部分の角部を丸みをつけた滑らかな面にしてもよい。例えば、図23の部分拡大図に示すように、第1混合エレメント30の凹み部32に形成した凹部34の開口端の角部を丸みをつけた滑らかにしてもよい。また、処理流体に接する部分の隅部を、丸みをつけた滑らかな面にしてもよい。例えば、図23の部分拡大図に示すように、第1混合エレメント30の凹み部32に形成した凹部34の底面の隅部に丸みをつけた滑らかにしてもよい。このように丸みをつけて滑らかにすると、流路抵抗が減少し、単位時間当たりの処理量を増大させることができる。また、隅部に丸みをつけることで、デッドスペースが減少し、流体をより均一に混合することができ、流体混合処理性能を向上させることができる。たとえば、より均一の大きさの気泡を生成できるようになるなど、生成される気泡の大きさなどについてのばらつきをより小さくすることができる。なお、図23の流体混合器11Dは、第1実施形態の流体混合器11を改変したものであるが、第2実施形態や第3実施形態や第4実施形態の流体混合器11A,11B,11Cを同様に改変しても良い。
また、図24に示されるように、流体混合器11Eに温度制御ユニット70を設置してもよい。温度制御ユニット70は、流体混合器11Eのケーシング本体21の外周を覆うジャケット部71と、当該ジャケット部71内に温度制御用の流体(ここでは水)を供給する図示しない給水ポンプに接続された給水管72と、ジャケット部71から水を排出するための排水管73とを備えている。ジャケット部71は、半円筒形状の分割ジャケット体71a,71aを組み合わせてなるものであり、着脱自在にケーシング本体21に取り付けられるようになっている。そして、ジャケット部71のケーシング本体21との接触部にはパッキン74が取り付けられており、温度制御用の水が漏れないようになっている。
このような温度制御ユニット70が設置されていれば、流体混合処理対象の流体(たとえば気泡生成処理対象である気液混合流体)の温度上昇を防止したいときには、ジャケットに冷却水を供給することで、簡単に処理流体の温度上昇を防止できる。なお、図24の流体混合装置10Dは、第1実施形態の流体混合器11を改変したものであるが、他の実施形態の流体混合器11A,11B,11C,11Dを同様に改変しても良い。
また、図24に示される温度制御ユニットは、冷却水などの冷媒を用いて冷却等の温度制御を行なうものであるが、このような方法に限られず、たとえば、ケーシングに放熱用のフィンを設ける方法など、種々の方法を挙げることができる。
また、静止型流体混合装置の前記流入口に、改質対象液体を供給する液体供給管を接続することで、静止型流体混合装置を静止型液体改質処理装置として用いることができる。改質対象液体としては、たとえば水など、種々の液体を挙げることができる。
静止型液体改質処理装置によれば、改質対象液体に対して混合処理を施すことで、液体を改質することができる。たとえば、水は、通常、単一の分子で存在しているのではなく、多数の分子からなるクラスタを形成しているところ、静止型液体改質処理装置で水を処理すると、クラスタの大きさがより小さい改質水を得ることができる。クラスタの大きさがより小さい改質水は、たとえば、水溶性の物質を溶解させる際に溶解性が向上し、消化管においてより吸収されやすくなったり、体内の細胞内に取り込まれやすくなったりするなど浸透性が向上する。
また、静止型流体混合装置の前記流入口に、タンパク質、アミノ酸、糖質、糖タンパク質、脂質の少なくともいずれか一つの成分と水分とを含む水性流体を供給する水性流体供給管を接続することで、静止型流体混合装置を静止型水性流体混合装置として用いることができる。静止型水性流体混合装置としては、たとえば、水とローヤルゼリーを含む液体など、水とタンパク質、アミノ酸、糖質、糖タンパク質、脂質の少なくともいずれか一つの成分を含む種々の流体を挙げることができる。
静止型水性流体混合装置によれば、混合対象の流体に対して混合処理を施すことによって流体を均一に混合させることができ、いわゆる乳化させることができる。これにより、クリーム状や乳液状の混合物を製造することができる。たとえば、混合対象物が水とローヤルゼリーの混合物である場合、この混合物を静止型水性流体混合装置で処理すると、ローヤルゼリー中に含まれる糖タンパク質などの高分子成分が微細化され、乳化された混合対象物が得られる。
また、静止型流体混合装置の前記流入口に、固体と液体とが混合された状態の固液混合流体を供給する固液混合流体供給管を接続することで、静止型流体混合装置を静止型固液混合装置として用いることができる。固液体混合流体としては、たとえば、フコイダンを含有する褐藻などの海藻類を固形物として含む固液体混合流体や、アルギン酸を含む昆布、ひじきあるいはモズクなどの褐藻などの海藻類を固形物として含む固液体混合流体や、β−グルカンを含むきのこ類を固形物として含む固液体混合流体や、ジンセノサイドを含む高麗人参や田七人参を固形物として含む固液体混合流体や、アリインおよび/またはアリシンを含むにんにくを固形物として含む固液体混合流体や、イソフラボンを含む大豆を固形物として含む固液体混合流体や、ジンゲロールを含む生姜を固形物として含む固液体混合流体や、アロインを含むアロエを固形物として含む固液体混合流体や、クルクミンを含むウコンを固形物として含む固液体混合流体や、その他の野菜や果物を固形物として含む固液体混合流体や、粉末などの微粒子と水とからなる固液体混合流体など、種々の流体を挙げることができる。
静止型固液混合装置によれば、混合対象の流体に対して混合処理を施すことによって、固体粒子などの固体成分および水などの液体成分を微細化して両者を均一に混合させることができ、分散させることができる。