以下、本発明を実施するための好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な実施形態を例示するものであるため、これによって本発明が狭く解釈されることはない。
<第1実施形態例について>
まず、図1は、本発明に係る流体混合器の第1実施形態例(符号M1)の基本概念を表す模式図である。この図1を参照しながら該流体混合器M1の基本構成(基本概念)の一例について説明する。なお、本発明の各実施形態例を説明するために使用する「上流」、「下流」の概念については、図1に示した通りであって、符号1で示す流体流入部側を上流側、符号3で示す流体流出部側を下流側とする。この上流、下流の概念は、すべての実施形態例の説明において共通である。なお、各実施形態例に共通する構造については、重複説明を避けるため可能な限り省略する。
図1において符号M1で示された流体混合器では、流体F1に対して別の流体F2を該流体混合器M1の外部で合流させた後、流体混合器M1に対して圧送される構成となっている。流体混合器M1は、二つの流体F1とF2がいまだ未混合状態である流体F12を導入するための流入路11を備える流体流入部1と、該流体流入部1から吐出されてくる前記流体F12を混合するために設けられた空間部2と、該空間部2において得られた混合流体Fm(流体F1とF2が充分に混合された流体)を流体混合器M1外へ流出するための流出路31を備える流体流出部3と、を少なくとも備えている。
前記空間部2は、流体流入部1や流体流出部3の流入路部分を除いて密閉された空間となっている。なお、この流体混合器M1は、その用途等によっては、流体流入部1から該空間部2に向けて、複数の流体F1、F2がそれぞれ別個の流入路から吐出される構成であってもよい。
空間部2では、流体流入部1から加圧付勢されて吐出されてくる流体F12が、該流体流入部1に対向する下流側の壁面3aに正面衝突することが契機となって連続的な撹拌流S(図1参照)が形成される。流体F1と流体F2は、前記撹拌流Sの強い流動作用によって充分にかき混ぜられることによって、混合度(あるいは溶解度)の高い混合流体Fmを得ることができる。
より具体的に説明すると、流体混合器M1の空間部2では、該空間部2の下流側の壁面3aに対して流体F12が勢いよく正面衝突し、続いて空間部2の上流側の壁面1aに対して(逆流してきた)該流体F12が衝突して反射し、再び前方流を形成する流動現象が繰り返される。この流動現象によって連続的に形成される撹拌流Sによって、流体F12が空間部2に滞留している間に、充分な静的混合が達成される。この観点から、下流側の壁面3aと上流側の壁面1aを含む、空間部2を形成する内壁面は、流体F12の「撹拌流形成用壁面」として機能していると言える。なお、撹拌流Sの流動状態については、狭く解釈されることはなく、流体F12をかき混ぜる効果のある流動状態を広く含む。
本発明に係る流体混合器M1は、撹拌流Sの流動作用を利用して混合を行う構成を採用しているため、仮に流体F12が低流速条件で吐出されてきた場合であっても、流体F12の混合を前記撹拌流Sの流動作用によって充分に促進することができるという利点がある。低流速条件で充分な混合を行なうことができるということは、流体の圧送に係わる圧力エネルギーを低く抑えることができるため、エネルギー効率という観点で有利であるだけでなく、流体F1やF2の性状・性質等により、高流速条件で混合を行うことを回避しなければならない場合などにも、流体混合器M1は好適である。
ここまでの説明からもわかるように、本発明に係る流体混合器Mの空間部2においては、一般の「スタティックミキサ」に採用されている板状又は羽根状を呈するような複雑で、かつ緻密な構造設計や配置設計が求められるエレメント構造は一切設けられていないことが特徴である。
また、流体混合器M1の空間部2は、密閉空間となっているため、混合対象となる流体F1とF2、これらが合流した流体F12、さらには、空間部2で充分に混合された混合流体Fmを外気に一切触れさせることなく混合処理できるという利点も有している。このため、流体混合器M1は、流体へのコンタミネーションを回避しなければならない用途や流体へのごみや塵の異物混入を防止しなければならない用途にも好適である。
ここで、空間部2の容積や構造(特に、内壁面構造)、さらには、前記流体流入部1と前記流体流出部3の間の距離d(図1参照)の設定は、流体混合器M1を使用する目的や用途、あるいは、混合対象とされる流体F1、流体F2等の物性、性質、流量、流速、混合時間(空間部2への流体滞留時間)等を考慮して、自由に、かつ最適に選択することができる。逆に言えば、混合対象である流体F1、F2の拡散・溶解等に適した撹拌流や混合時間を達成し得る空間部2の構成に設計すればよい。
空間部2で発生させる撹拌流Sによる流動状態のあり方についても、混合対象となる流体の性状や反応性等を考慮して、好適な程度に決定すればよい。例えば、空間部2において緩やかに循環する撹拌流、あるいは、渦流や微細泡を形成するような強い撹拌流など、混合対象となる流体の性状等を考慮して選定することができる。
この流体混合器M1を目的の用途に使用するために、該流体混合器M1に他の部品(図示せず。)を付設、連結等してもよい。一例を挙げると、流体F1、F2を圧送するためのポンプ、混合流体Fmを噴出又は噴霧するためのノズルなどを連結してもよい。また、この流体混合器M1自体を散気手段、ガス置換手段、脱気手段等として用いてもよい。
また、この流体混合器M1を形成するための材料は、合成樹脂や金属(例、ステンレス)などの材料から目的や用途によって適宜選択すればよいのであって、狭く限定されることはない。例えば、流体混合器M1の材料は、耐腐食性、耐熱性、洗浄容易性等々の性質を必要に応じて考慮して、選定することができる。
加えて、この流体混合器M1においては、例えば、流体F1は液体であり、流体F2がこの流体F1に対して、特に難溶解性の気体や高濃度の気体であるような場合では、流体流出部3の下流側において、流体F1に対して混合(溶解)し切れなかったガスを回収して流体流入部1又は空間部2に戻し、流体F2として再利用するように工夫してもよい。なお、流体混合器M1の利点、機能、使用方法、設計、材料等の選定に係わる説明は、以下に説明する他の実施形態においても共通である。
<第2実施形態例について>
続いて、本発明に係る流体混合器の具体的な第2実施形態例について説明する。図2は、本発明に係る流体混合器の第2実施形態例(符号M2)を下流側(流体流出部3側)から視た斜視図である。なお、この第2実施形態例である流体混合器M2は、図1に示された第1実施形態例の具体的な実施形態の一例である。
図2に示した流体混合器M2は、全体視したときには円柱体を基本形状としているが、この形状に特に限定されることはない。例えば、楕円柱状、角柱状その他の形状を基本形状としてもよい。即ち、流体混合器M2の全体的な基本形状は、該流体混合器M2を用いる目的や用途によって好適な形状を自由に選択すればよい。以上の点は、後述する他の実施形態例のすべてについても同様である。
図2に示されている流体混合器M2は、例えば、符号4で示すような外筒体の内部に収容された構成を採用できる。この外筒体4によって空間部2は、密閉状態の空間とされている。なお、この外筒体4に対する流体混合器M2の固定方法は、接着、嵌合、他の連結具を用いた固定手段など、特に限定されない。また、外筒体4は、流体混合器M2と一体に形成してもよく、あるいは、別体に形成して一体化してもよく、流体混合器M2が装着される配管材であってもよい。なお、空間部2を密閉状態とする方法は、外筒体4を用いる方法に狭く限定されない。
ここで、図2で示す流体混合器M2は、二種類の流体F1、F2を混合する場合に使用される好適な実施形態の一例である。この流体混合器M2の上流側に位置する流体流入部1には、未混合状態の二つの流体F1,F2が外部で合流された後に導入される(図3参照)。
まず、流体流入部1内に設けられた流入路11は、円筒状をなす上流側流入路11aと、該上流側流入路11aの途中位置から下流側へ向けて徐々に縮径された円錐状の下流側流入路11bと、を備えている。この流入路形態によって、流体F12は、次第に流速を高めながら空間部2へ向かうことになる。なお、流入路11を入口部分から下流側に向けて縮径された形状としてもよい。
下流側の流入路11bは、空間部2に臨む、正面視円形の吐出口11cを備えている。この吐出口11cからは圧送されてきた流体F12が付勢されて吐出される。なお、流体F12の流入路11への導入方法は、加圧による圧送方法に限定されず、例えば、下流側からの負圧吸引などの方法も採用可能である。
流体流入部1の中心に位置している前記吐出口11cから吐出された流体F12は、下流側に配置された流体流出部3の壁面3aに向かって直進し、該壁面3aに正面衝突する。この流体F12の衝突現象が契機となって、空間部2内では流体F12が吐出された直後から撹拌流が形成されることになる。流体F12は、空間部2に滞留している間、この撹拌流による強い混合作用を受けることになる。
流体混合器M2において、その下流側に設けられた流体流出部3は、空間部2を挟んで流体流入部1に対向するように配置されている。この流体流出部3には、例えば、図2に示されたように、二つの流出路31,31が並設されている。前記空間部2で混合された流体Fmは、これらの流出路31,31を通じて、外部へ流出(排出)されることになる。
<第3実施形態例について>
次に、続いて、本発明に係る流体混合器の具体的な第3実施形態例について説明する。図3は、本発明に係る流体混合器の第3実施形態例(符号M3)を下流側(流体流出部3側)から視た斜視図である。なお、この第3実施形態例である流体混合器M3も、図1に示された第1実施形態例(図1)の具体的な実施形態の一例である。
この流体混合器M3と、既述した流体混合器M2(図2参照)との相違点は、流体流入部1に設けられた流入路11の位置である。具体的には、円筒形状をなしている流体混合器M3の中心線Lに対して、流入路11は、上方側にずれた位置(以下、「偏心位置」と称する)に形成されている点が相違している(流体混合器M2とM3の共通する構成に係わる説明は、重複するので割愛する)。
即ち、流体混合器M3は、流入路11の吐出口11cが、空間部2のやや上方に位置する構成を備えている。この構成により、流体F12は、この吐出口11cから下流側の壁面3aのやや上方領域に向かって直進して正面衝突し、撹拌流を形成する。この吐出口11cが偏心位置に存在する形態では、空間部2に大きな撹拌流を形成することもできる。なお、吐出口11cの位置選定、即ち、中心位置と偏心位置のいずれを選択するかは、目的や用途、流体の性状等によって判断すればよい。
<第4実施形態例について>
続いて、本発明に係る流体混合器の具体的な第4実施形態例について説明する。図4は、本発明に係る流体混合器の第4実施形態例(符号M4)を下流側(流体流出部3側)から視た斜視図である。なお、この第4実施形態例である流体混合器M4も、図1に示された第1実施形態例(図1)の具体的な実施形態の一例である。
図4で示す流体混合器M4の吐出口11cは偏心位置に設けられており、この点は、第3実施形態例である流体混合器M3と同様の構成であり、また、流入路11の形状や流出路31,31の構成についても、既述した実施形態例群と同様の構成である。
この流体混合器M4の大きな特徴は、流体流出部3の中央位置に、上流側に向かって(流体流入部1側に向かって)突出した凸状部32が設けられた構成を備えていることである。この構成では、吐出口11cから吐出された流体F12が、該凸状部32の上流側の壁面32aに向かって直進し、壁面3aに対する衝突と比べてより勢いよく正面衝突することができる。
この流体混合器M4は、空間部2の容積(体積)をできるだけ維持しつつ、流体F12をより強く壁面衝突させたい場合に好適な実施形態である。なお、凸状部32の(上流側方向への)高さ、幅は、目的や用途、流体の性状等によって自由に選択すればよい。
<第5実施形態例について>
本発明に係る流体混合器の第5実施形態例について説明する。図5は、本発明に係る流体混合器の別の基本構成(第5実施形態例)を表す模式図である。
ここで、図1と図5を参照しながら、既述した第1実施形態例である流体混合器M1と本第5実施形態例である流体混合器M5の構成を比較すると、流体混合器M1(図1)は、流体F1と流体F2を混合器外部で合流させる構成であるのに対して、流体混合器M5(図5)は、流体流入部1内で流体F1と流体F2を合流させる構成を備えている点が相違している。
より詳しくは、流体混合器M5においては、流体流入部1内に二経路の流入路11、12が形成されている。流入路12は、流入路11の途中箇所で連結されており(図5参照)、この構成により、流入路11を通流してきた流体F1に、流入路12を通流してきた流体F2が合流する。なお、本実施形態例では、二経路の流入路11,12が設けられているが、目的や用途に応じて、二経路以上の流入路を設けてもよい。
<第6実施形態例について>
続いて、本発明に係る流体混合器の具体的な第6実施形態例について説明する。図6は、本発明に係る流体混合器の第6実施形態例(符号M6)を下流側(流体流出部3側)から視た斜視図、図7は、流体混合器M6の縦断面図である。なお、この第6実施形態例である流体混合器M6は、図5に示された第5実施形態例の具体的な実施形態の一例に該当する。
図6、図7を参照しながら、流体混合器M6の流体流入部1の構成について説明する。流体流入部1には、流体F1を導入するための流入路11と、流体F2を導入するための流入路12と、が設けられている。流入路11は、入口部111の口径が下流側に向けて徐々に縮径されて、円錐状をなす上流側流入路112と、該上流側流入路112の最小径部113より下流側部分で徐々に口径が大きくなる(拡径する)円錐状の下流側流入路114と、から構成されている。なお、該下流側流入路114は、前記空間部2に向けて開口しており、符号115で示した吐出口は、下流側から正面視したときに円形状に開口している(図6参照)。
一方の流入路12は、円筒状の直進流入路121と、該直進流入路121の下流側終端部121aから上方側に延びる連結路122と、から構成されている。この連結路122は、流入路11を構成する下流側の流入路114の長手方向の略中央位置に連結されている(図6、図7参照)。即ち、流入路12に導入された流体F2は、直進流入路121に続いて連結路122を通過して、流入路11に合流する。なお、連結路122の口径は、直進流入路121の口径よりも小さく設計されているため、連結路122においてより流速が高まるように設計されている。なお、連結路122を流入路114に向けて縮径して、より流速を高めるようにしてもよく、また、いわゆるベンチュリ効果を利用して、流体F2を流体F1に導入できる構成を採用してもよい。
流入路112は、徐々に口径が小さくなるテーパー形状を備えているため、流体F1は、流入路112を通過する際に、下流側に向けて徐々に流速が増し、最小径部113を過ぎた下流側流入路114において流体F2が導入される構成となっている。
流体流入部1内において、流体F1に流体F2を合流させることによって得られた流体F12は、吐出口115から空間部2に向けて、付勢されながら吐出される。この吐出時点では未だ混合不十分な状態にある流体F12は、吐出口115の真正面に位置する下流側の壁面3aに向けて直進する(図6、図7のF12の矢印を参照)。
そして、該流体F12は、下流側の壁面3aに対して勢いよく正面衝突して跳ね返ることにより、上流側へ向けて進む逆流Foを形成する(図6、図7参照)。この逆流Foは、空間部2を構成する側壁面23(図7参照)に対して接触する流れも形成しつつ、(下流側の壁面3aに対向する)上流側の壁面1aに衝突して反射し、再び下流側へ向かう前方流Ffを形成する(図6、図7参照)。
このように、この空間部2内へ吐出された流体F12は、該空間部2を構成する内壁面への衝突、接触、反射(あるいは反転)等の作用を受けながら、空間部2内を循環する強い「撹拌流」を形成する。なお、本発明において「撹拌流」とは、人為的な操作や駆動力を一切用いない条件で、流体成分の拡散・吸収・反応などの作用を発揮させることよって、流体の混合が促進され得る流動状態を広く意味する。
ここで、流体F12が衝突する下流側の壁面3aや上流側の壁面1aは、空間部2を構成する内壁面とも言える。下流側の壁面3aや上流側の壁面1aの面形状は、図6、図7に示すように面一な形状でもよいが、流体F12の性質に好適な撹拌流を形成するという目的から、凹面状、凸面状、階段状(連続する山谷形状)、円錐凸状、円錐凹状、四角錐凸状、四角錐凹状などを適宜選択することができる。
流体F12は、空間部2に滞留している間に、前記撹拌流による流動作用を連続的に受け続けることによって、流体F1と流体F2が強力に混合される。空間部2では、専らこの撹拌流の流動作用によって、混合のための駆動力を一切用いることのない、いわゆる「静的混合」が促進される。特に、撹拌流の作用により、混合開始直後から一気に混合が促進される。
そして、陽圧(正圧)条件の空間部2で混合が充分になされた流体Fmは、流体流出部3を貫通するように形成された二つの平行な流出路31,31をそれぞれ通過して、流体混合器M6外へ流出(排出)され、所定の用途に使用される。
<第7実施形態例について>
次に、図8を参照しながら本発明に係る流体混合器の第7実施形態例(符号M7)について説明する。なお、図8は、本発明に係る流体混合器M7を下流側から視た斜視図である。
図8に示された流体混合器M7は、流体流入部1の構造に関して、既述した実施形態例群の構造とは異なっており、その結果、空間部2の内壁面構造が異なった構成となっている。より詳しくは、流体混合器M8を構成している流体流入部1は、流体F1が導入される流入路11を構成する下流側流入路部分の上方領域が、空間領域となっており、言わば段差状構造を呈している。この段差状構造部分に形成された、符号21で示す空間領域(以下、「段差状空間部」と称する)は、隣接する空間部2に連通した空間となっている。
ここで、図8において符号1141で示した流入路は、流体F1を導入するための流入路11を構成する下流側の流入路である。この流入路1141は、符号116で示す段差面において、段差状空間部21側へ臨むように開口する、(下流側に向けて口径が広がる)半円錐状をなしている。なお、この流体混合器M7は、このような半円錐状の流入路1141を段差面116に形成した設計としているため、既述した第6実施形態例の下流側流入路114の如き貫通孔形態の流入路よりも製造し易いという利点がある。
ここで、撹拌混合との関係での段差状空間部21の役割は、例えば、次の(1)、(2)、(3)であると考えられる。
(1)段差状空間部21の存在により、空間部2では圧力の変動を発生しながら流体F12の撹拌混合を行うことができるようになる。
(2)空間部2に加えて段差状空間部21を設けたことによって、撹拌流が形成される空間の全容積が増えることにより、流体F12の撹拌が一層促進される。具体的には、段差状空間部21を設けたことによって、空間部2に流入した流体F12の滞留時間がより一層長くなるため、撹拌混合が一層促進される。
(3)段差状空間部21において空間部2とは別の撹拌流が発生したり、空間部2で形成された撹拌流が段差状空間部21に入り込んだりする。段差状空間部21で生じる撹拌流は、補完的混合として機能する。
流体混合器M7においては、流体F2が導入される流入路12の連結路122は、上方に開口した下流側の流入路1141の半円錐状の底面に連絡されている(図8参照)。即ち、流入路12から導入されてきた流体F2は、流入路112から最小径部113を通過して下流側流入路1141に入ってきた流体F1に合流する。この合流により得られた流体F12は、正面視半円状の吐出口1151から空間部2へ吐出される。
例えば、下流側流入路1141に入ってくる流体F1の流速は、該流体F1に合流する流体F2よりも速い流速に設定されている。この流速関係により、流体F12は、上方の段差状空間部21へ拡散してしまうことなく、専ら下流側の空間部2に向けて、付勢されて吐出される。なお、場合によっては、流体F2の流速を流体F1の流速よりも速くする設定も採用できる。
流体F1と流体F2が合流して得られた流体F12は、空間部2へ勢いよく吐出され、該空間部2に滞留する間に、撹拌流による流動作用を受けて強力に混合され、混合充分な混合流体Fmを得ることができる。そして、この混合流体Fmは、空間部2の陽圧作用によって、流体流出部3の二つの流出路31,31から流出(排出)される。混合流体Fmの流出方法は、場合によっては、下流側からの負圧吸引であってもよい。なお、混合流体Fmが流出する流出路31は、図8のように、流体流出部3に二か所形成してもよいが(符号31,31参照)、目的や用途に応じて、1か所、あるいは3か所以上形成してもよい。
ここで、図8に示されているように、空間部2に向けて流体F12が吐出される吐出口1151は、流体混合器M7の長軸方向の中心線L(図8再参照)よりも上方(直上)側にずれた箇所、即ち偏心位置にある。なお、吐出口1151の位置は、特に図示はしないが、中心線Lよりも下方(直下)側にずれた位置に開口する構成を採用してもよい。
このような中心線Lよりも上方(又は下方に)にずれた偏心位置に吐出口1151を設けた構成を採用すると、一定方向へ循環する大きな撹拌流を形成することができるという利点がある。例えば、中心線Lよりも上方にずれた位置に吐出口1151を設けると、空間部2の上方側から下方側に向かう大きな流れの撹拌流を形成することができる。
<第8実施形態例について>
次に、図9~11を参照しながら本発明に係る流体混合器の第8実施形態例(符号M8)について説明する。なお、図9は、本発明に係る流体混合器M8を下流側から視た斜視図、図10は、同流体混合器M8を上方から視た図、図11は、(外筒部分を除いた状態の)流体混合器M8を底面側から視た背面図である。
第8実施形態例である流体混合器M8は、流体流入部1に段差状空間部21を有するとともに、流体流出部3の空間部2に臨む壁面3aの中央部分に、前記空間部2内に上流側(流体流入部1側)へ向けて突設された凸状部32(第4実施形態例と同様、図4参照)が形成されている(図9~図11参照)。なお、図10、図11に示す符号123は、流体F2が導入される流入路12(の連結路122)が流入路1141に連結している箇所の開口部を示している。
凸状部32の上流側に位置する壁面32aは、流体流出部3の壁面3aよりも吐出口1151により接近した位置にある。なお、凸状部32は、流体流出部3の構造部分となっているが、空間部2を形成する下流側内壁面の構造部分とも言える(この点、後述する凸状部33についても同様)。
この凸状部32は、吐出口1151に対向する真正面位置に形成されている。この位置関係によって、吐出口1151から吐出された流体F12は、空間部2側(上流側)に突き出ている凸状部32の壁面32aに対して正面衝突する。この凸状部32を設けることによって、空間部2へ吐出された流体F12は、吐出口1151側により接近した(凸状部32の)壁面32aに対して勢いよく衝突する。
即ち、このような凸状部32を設けることによって、吐出口1151から吐出される流体F12を流体流出部3の下流側壁面3aと比較して、より上流側の位置で強く衝突させることができるようになる。このため、その衝突の結果発生する反射流は、凸状部32を設けない構成のときよりも勢いが増すため、空間部2全域に広がる、より強い撹拌流を形成することができる。なお、凸状部32の上流側への高さH(図11参照)は、目的や用途、流体の性状等の観点で自由に設計可能である。
凸状部32の両脇には、計二つの空間部(以下、「下流側空間部」と称する)22a,22bが形成されることになる。撹拌混合との関係におけるこれらの下流側空間部22a,22bの役割は、次の(1)、(2)、(3)であると考えられる。
(1)下流側空間部22a,22bの存在によって、空間部2において圧力の変動が起こりながら流体F12の撹拌混合を行うことができるようになる。
(2)空間部2に加えて下流側空間部22a,22bを設けたことにより撹拌流が形成される空間の全容積が増えるため、流体F12の撹拌が一層促進される。より具体的には、下流側空間部22a,22bを設けたことによって、空間部2に流入した流体F12の滞留時間がより一層長くなるため、撹拌混合が一層促進される。
(3)空間部2と下流側空間部22a,22bのそれぞれの境界B(図10参照)に流体シールドが形成され、空間部2の圧力の変動作用に寄与する。
<第9実施形態例について>
図12は、本発明に係る流体混合器の第9実施形態例(符号M9)の斜視図である。
この図12に示す流体混合器M9は、流体流入部1において、第三の流体F3を導入可能な流入路13が設けられており、その他の構成は、第8実施形態例である流体混合器M8(図9~11)と同様である。
この流体混合器M9は、三種類の流体F1,F2,F3を空間部2に導入する場合の流体流入部1の流入路構成の一実施形態例である。この流体混合器M9においては、第三の流体F3は、流入路11の上方領域に設けられた流入路13を通じて、空間部2(段差状空間部21)へ吐出される。
第三の流体F3を導入するための流入路13は、下流側へ口径が徐々に縮径された流入路形態に設計してもよいし、空間部2へ吐出される前に、流体F1や流体F2に対して合流させる流入路形態に設計してもよく、流体F2に合流させた後に、続いて流体F1に合流させてもよい。また、流入路13は、図12に示された位置に限定されず、流体流入部1の壁面1aから流体F3を吐出させる構成であってもよいし、空間部2の底面部2aから、あるいは空間部2の上方から吐出させる構成であってもよい。なお、第三の流体F3に加え、それ以上の種類の流体を空間部2へ導入してもよい。
流体流入部1から吐出された流体F3も、空間部2を直進して凸状部32の上流側壁面32aに正面衝突し、流体F1とF2が合流した流体F12と混ざり合いながら空間部2において撹拌される。そして、この撹拌作用によって充分に混合された混合流体Fmは、流体流出部3の流出路31,31を通じて流出(排出)される。
ここで、図13は、流体流出部3に設けられる凸状部32(図12参照)の変形形態の一例を示す部分斜視図である。この変形形態例において採用されている凸状部33は、該凸状部33の上流側の壁面33aが下流側に凹んでいる(湾曲している)凹面状を有していることが特徴である。この壁面33aの凹面形状によって、該壁面33aに正面衝突した流体F12は、衝突後にこの凹面形状に沿う顕著な下降流FDを形成するため、空間部2の上下方向(縦方向)に大きく循環する撹拌流を形成することができる。
なお、符号32,33で示されたような各凸状部の形態、特にそれぞれの上流側の壁面32a,33aは、目的や用途に適する撹拌流を形成するために好適な形態を採用すればよいのであって、図示されたような形態に限らず、多様な形態の中から撹拌流形成に好適な形態を採用することが可能である。また、凸状部32,33の上流側への高さH(図11を再参照)も目的や用途に応じて、自由に設計することができ、この高さHが高くなればなるほど、即ち、流体流入部1(あるいは吐出口1151)に対して上流側壁面32a,33aが接近すれば接近するほど、流体F12がより勢いよく衝突する作用が得られる。
図14は、本発明に係る流体混合器で、凸状部に代わって採用可能な「衝突板」の構成を説明するための図である。
この図14に示された実施形態例では、撹拌流を形成する空間部2に衝突板5が設けられた構成を備えている。より詳しくは、流体流出部3(の壁面3a)よりもより上流側の位置に、即ち、流体F12が吐出される吐出口1151により近接した位置に、板状を呈する衝突板5が立設されている。
この衝突板5は、図14に示す実施形態では、空間部2を形成している底面部2aから上方に向けて直立した形態で形成されているが、この形成方法については、例えば、上方から垂下させたような形態を含み、狭く限定されず、また、衝突板5の形状自体も狭く限定されない。
衝突板5は、空間部2に吐出された流体F12が直進して真正面から衝突する壁面5aを備えている。なお、衝突板5は、その目的や用途に応じて、その設定方法、形状(正面視したときの壁面5a部分の形状など)、さらにはその設定位置についても自由に選択することができる。
なお、この衝突板5は、既述した第1実施形態例である流体混合器M1の空間部2にも適用してもよく、あるいは、第4実施形態例などにおいて採用されている凸状部32に代わって、この衝突板5を設けてもよい。凸状部32や衝突板5に共通している構成は、流体F12が吐出される吐出口1151に対してより接近する位置に、該流体F12が正面衝突し得る壁面部位を備えていることである。これにより、凸状部32,33あるいは衝突板5に対して流体F12がより勢いよく正面衝突されることになるため、より強い撹拌流を形成することができる。
<第10実施形態例について>
図15は、本発明に係る流体混合器の第10実施形態例(符号M10)を下流側から視た斜視図である。この図15に基づいて、本発明に係る流体混合器M10の構成等について説明する。
この図15に示された流体混合器M10は、第8実施形態である流体混合器M8(図9参照)に関して、流体流入部1と流体流出部3が分割された形態を備えることが特徴である。即ち、流体流入部1と流体流出部3が別体に形成されている構成、即ち、流体流入部1と流体流出部3が分離された構成を備えている。そして、この分離された構成においては、流体流入部1と流体流出部3について、目的や用途に適した距離dを選定して設置することにより、これらの間に形成されるスペースを、撹拌流形成に適切な容積とされた空間部2として機能させることができる。
この空間部2に流体F12が吐出されると、該空間部2は陽圧になることから、流体流入部1と流体流出部3の距離を一定に保つ固定手段が必要となる。例えば、流体流入部1と流体流出部3を外筒体4(図15では図示せず。)に対してねじ止め、嵌合、溶接、接着等などの手段によって固定したり、流体流入部1と流体流出部3のそれぞれを他の部材に連結して固定したりしてもよい。
この流体混合器M10は、目的や用途に応じて、流体流入部1と流体流出部3の距離d(図10参照)を自由に変更できる構成となっているため、空間部2の容積を自由に選定することができることが利点である。この流体混合器M10の流体流入部1と流体流出部3が分離された構成は、他の実施形態例にも適用可能であり、流体の種類、性状、流量などに応じた好適な撹拌流が得られる空間部2の構成に自由に設定することができるという利点がある。
<第11実施形態例について>
図16は、本発明に係る流体混合器の第11実施形態例(符号M11)の基本構成を表す模式図である。この図16に基づいて、本発明に係る流体混合器M11の構成等について説明する。なお、図16においては流体流入路の図示は省略している。
図16に表された流体混合器M11は、空間部2を挟む両側の位置に、流体流入部101,102がそれぞれ配置されている。流体流入部101からは流体F12が空間部2に吐出され、一方の流体流入部102からも流体F12が吐出される構成となっている。
流体流入部101から空間部2に吐出された流体F12は、対向する流体流入部102の壁面102aに正面衝突し、他方の流体流入部102から吐出された流体F12は、対向する流体流入部101の壁面101aに正面衝突することにより、空間部2に撹拌流を形成する。この撹拌流のかき混ぜ作用によって、流体F1と流体F2は、空間部2に滞留する間に混合され、それにより混合流体Fmを得ることができる。
混合流体Fmは、流体流入部101に形成された流体流出路1011、流体流入部102に形成された流体流出路1021を通じて流体混合器M11外へ流出される構成となっている。即ち、流体流入部101,102は、それぞれ流体流出部も兼ねている。
<第12実施形態例について>
図17は、本発明に係る流体混合器の第12実施形態例(符号M12)の基本構成を表す模式図である。この図17に基づいて、本発明に係る流体混合器M12の構成等について説明する。なお、図17においては流体流入路の図示は省略している。
この図17に示す第12実施形態例である流体混合器M12のように、流体流入部101,102を介さずに、混合流体Fmを空間部2から外部へ流出させてもよい。この構成であれば、流体流入部101,102に流体流出路1011,1021を形成しなくてもよいという利点、壁面101a,102aを開口部のない面一な壁面として使用できるなどの利点がある。
この流体混合器M11、M12の構成は、空間部2に対して複数個所から混合対象の流体(例えば、流体F1、F2)を吐出させて、該空間部2内で撹拌流を形成する構成を備える実施形態の典型例である。さらに他の変形形態例では、空間部2に対して、図11や図12の上方側から一方の流体(例えば、F1)を、あるいは下方側から一方の流体(例えば、F2)を吐出させる構成を採用してもよい。いずれにしても、空間部2に吐出された流体F1、F2が吐出方向正面の壁面に衝突することが契機となって撹拌流が形成される構成が重要である。
このような流体混合器M11やM12においても、既述した凸状部32,33のような構造を流体が衝突する壁面101aや102a部分に設けてもよく、あるいは、衝突板5(図14参照)のような衝突壁面構造を空間部2内に設けてもよい。また、流体混合器M10(図15参照)のように、流体流入部101と流体流入部102を分離させた形態を採用してもよい。
なお、図示はしないが、空間部2を挟んで対向するように配置される流体流入部は、符号101,102のように二つに限定されることはなく、三つ、あるいはそれ以上であってもよい。即ち、三方向、四方向、あるいはそれ以上の方向から流体を空間部2に吐出させてもよい(この点、以下の第13実施形態例でも同様)。
<第13実施形態例について>
図18は、本発明に係る流体混合器の第13実施形態例(符号M13)の構成を表す図である。この図18に基づいて、本発明に係る流体混合器M13の構成等について説明する。
図18に表された流体混合器M13は、第7実施形態例(符号M7)などで採用された、段差状空間部21を備える流体流入部101,102が、空間部2を挟んで対向している形態を備えている。この対向配置された流体流入部101,102では、それぞれの流入路1141,1141が左右方向にずれた配置関係とされている。
この配置関係により、一方の流入路1141から吐出された流体F12は、対向する壁面102aに衝突し、他方の流入路1141から吐出された流体F12は、対向する壁面101aに衝突する構成となっている。この構成により、空間部2に撹拌流を形成することができる。
<第14実施形態例について>
図19は、本発明に係る流体混合器の第14実施形態例(符号M14)の構成を表す図である。この図19に基づいて、本発明に係る流体混合器M14の構成等について説明する。
図19に表された流体混合器M14は、第7実施形態例(符号M7)などで採用された、段差状空間部21を備える流体流入部101,102が、空間部2を挟んで対向している形態を備えている。これら対向配置された流体流入部101,102は、互いに180°回転した状態の位置関係で向き合った構成を備えている。
この構成により、それぞれの流入路1141,1141から吐出された流体F12、F12は、対向する流体流入部101,102のそれぞれの壁面101a,102aに衝突し合うことになり、空間部2において撹拌流を形成することができる。この撹拌流によって混合が促進される。空間部2での混合により得られた混合流体Fmは、空間部2から外部へ図示しない流出路を経て流出される。
ここで、以上で説明した各種実施形態例を少なくとも含む、本発明に係る流体混合器は、空間部2において流体を滞留させながら撹拌することによって混合度の高い混合流体Fmを得ることができる。例えば、混合直後から一気に混合が促進され、流体の混合作業を行ってから時間を置いて混合流体Fmを使用する場合においても、該混合流体Fmの混合度を高レベルで維持することができる。
例えば、液体に対して気体を混合して溶解させ、気液混合された混合流体を使用する用途では、いわゆる「ガス抜け」の速度を遅くできるので、混合作業を行ってから、例えば一日以上経過しても目標の混合状態を維持することができる。
このことは、一例を挙げると、本発明に係る流体混合器Mで得られた混合流体Fmを図示しない噴霧ノズルを介して微細霧を形成する用途においては、特に重要である。その理由は、混合流体Fmは、噴霧ノズル内での流動、同ノズルからの分離、噴霧後の液滴の分裂等の際の摩擦によって液滴に静電気が帯電する問題を抱えるからである。なお、この帯電現象は、一般には「噴霧帯電(噴出帯電)」と称されており、噴霧液滴の液ダレを発生させる原因となったり、半導体などの洗浄に支障を来したり、可燃性液体の噴霧では静電気火災を引き起こす原因となったりする。
例えば、噴霧帯電現象を抑制するために、液体(例えば、純水)に炭酸ガスを混合(気液混合)することによって、液体中にイオンを付加して電気伝導率を高め(即ち、比抵抗値を低下させ)、気液混合流体による噴霧帯電を抑制又は防止する対策が行われている。この場合、作製した気液混合流体を容器等に一旦貯留しておいてから使用することもある。この場合、その使用時において炭酸ガスの多くが抜けてしまっていると(ガス抜け現象)、目的の噴霧帯電の防止又は抑制効果が発揮されなくなってしまうという問題を生じる。このような技術的観点に立っても、複数流体の混合度を高めることができ、ひいては気液混合流体の電気伝導度を高いレベルで維持できる、本発明に係る流体混合器Mは非常に有用である。
本発明者らは、本発明に係る流体混合器による複数流体の混合度を高めることができるという効果を検証するために、上記した代表的な実施形態例を試作し、以下の実験A、B、Cを行った。
流体の混合は、純水と炭酸ガスの気液混合を採用した。混合流体の電気伝導率を測定するために電気伝導率計(オルガノ社製、製品番号:MH‐9)を使用した。純水は、水道水からカートリッジ純水器(オルガノ社製、製品番号:G-35B)を用いて作成し、0.1μS/cmの電気伝導率に調整した。この純水に炭酸ガスを混合し、目標電気伝導率5μS/cmに設定した実験例A、目標電気伝導率10μS/cmに設定した実験例B、目標電気伝導率30μS/cmに設定した実験例Cを行った。
それぞれの実験例A、B、Cにおいては、本発明に係る流体混合器の代表的な実施形態に対応する試作器を作製し、流体混合を行った。具体的には、実験例A-1、B-1、C-1では図2に示す流体混合器(第2実施形態例)、実験例A-2、B-2、C-2では図3に示す流体混合器(第3実施形態例)、実験例A-3、B-3、C-3では図4に示す流体混合器(第4実施形態例)、実験例A-4、B-4、C-4では図8に示す流体混合器(第7実施形態例)、実験例A‐5、B‐5、C‐5では図9に示す流体混合器(第8実施形態例)、実験例A‐6、B‐6、C‐6では図18に示す流体混合器(第13実施形態例)をそれぞれ使用した。なお、各流体混合器への純水の流量は、6L/minに設定した。なお、各試作器は、塩化ビニル製、全長11cm、内口径30mm、空間部の長さ5cm、凸状部の上流側への高さ20mmに設計した。なお、外筒部は、空間部内での撹拌流の形成状態が視認し易いように、透明なポリ塩化ビニル樹脂で形成した。
各実験例では、混合直後、1時間後、6時間後、12時間後、24時間後(一日後)、48時間後(二日後)、72時間後(三日後)、96時間後(四日後)に、気液混合流体の電気伝導率を測定した。これは、気液混合後、時間を置いてから混合流体が使用される場合があることを考慮したものである。
実験結果。実験例A、B、Cの実験結果をそれぞれ表1、表2、表3にまとめた。
すべての実験例において、混合開始直後から混合、この場合、純水に対する炭酸ガスの溶解が促進されていることを確認できた。実験例Aでは、全ての流体混合器に関して24時間経過後でも3.0μS/cmを超えており良好である。実験例Bでは、すべての流体混合器で72時間後でも3.0μS/cmを超えており良好である。なお、3.0μS/cmの基準は、噴霧帯電の問題を抱えることなく、噴霧可能な電気伝導率である。
純水に対する高濃度の炭酸ガス溶解の用途を想定した実験例Cでは、サンプリング直後の炭酸ガス濃度に対する96時間後の炭酸ガス残存率が40%を超えており、特に実験例C‐4、C‐5では、残存率(96時間後の電気伝導率/サンプリング直後の電気伝導率)が60%を超える良好な数値となった。
各実験例A、B、Cでそれぞれ使用した計6種の流体混合器の混合処理状態を図20~25の写真(図面代用写真)にて示す。図20は、実験例A-1、B-1、C-1で使用した流体混合器(第2実施形態例に対応)の空間部内の撹拌混合状態を示す図面代用写真、図21は、実験例A-2、B-2、C-2で使用した流体混合器(第3実施形態例に対応)の空間部内の撹拌混合状態を示す図面代用写真、図22は、実験例A-3、B-3、C-3で使用した流体混合器(第4実施形態例に対応)の空間部内の撹拌混合状態を示す図面代用写真、図23は、実験例A-4、B-4、C-4で使用した流体混合器(第7実施形態例に対応)の空間部内の撹拌混合状態を示す図面代用写真、図24は、実験例A‐5、B‐5、C‐5で使用した流体混合器(第8実施形態例に対応)の空間部内の撹拌混合状態を示す図面代用写真、図25は、実験例A‐6、B‐6、C‐6で使用した流体混合器(第13実施形態例に対応)の空間部内の撹拌混合状態を示す図面代用写真である。
これらの図面代用写真からもわかるように、各流体混合器の空間部内では撹拌流が形成されていることが確認できる。図24の図面代用写真では、段差状空間部においても撹拌流が形成されていることを視認できる。また、図22、図24の図面代用写真では、凸状部脇に形成された下流側空間部と空間部の境界にシールドが形成されていることも視認できる。