以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
<電子機器保守管理システムの概要>
図1は、本発明に係る電子機器または電子機器を具備したシステムの保守管理手法を適用する電子機器保守管理システムの概要を示す図である。なお、ここでの実施形態の説明においては、代表的に、電子機器に関する保守管理(メンテナンスとも称する)の仕組みで説明するが、電子機器そのものに関する保守管理に限らず、電子機器を具備したシステムに関する保守管理にも、後述する本実施形態の保守管理の仕組みを適用することができる。
図示のように、本実施形態の電子機器保守管理システム1は、保守管理の対象となる電子機器100と、保守管理用の各種のデータを管理する保守管理装置の一例である保守管理サーバ5とを備えている。
電子機器100としては、プリンタ、複写機、FAX装置、携帯電話、デジタルカメラ、パーソナルコンピュータ、CD(コンパクトディスク)レコーダ、DVDレコーダ、MDレコーダなど、何れのものであってもよい。
保守管理サーバ5は、保守管理装置本体5aと、表示装置5bと、指示入力装置5cとを備えている。保守管理装置本体5aは、その内部に、可搬型の記憶媒体(以下可搬性記憶媒体と称する)9に、保守管理用のデータを書き込んだり記憶済の保守管理用のデータを読み出したりするデータ記憶制御部50と、データ記憶制御部50が可搬性記憶媒体9から読み出した保守管理用のデータに基づいて保守管理を実行可能にする保守管理データ解析部52とを有している。
保守管理データ解析部52は、電子機器100の機種コードや構成部品(ユニット)ごとに、構成部品そのもの有無やオプション品の有無などの機器構成条件や、故障の有無や状態などの保守診断作業を行なう実施条件、などの保守管理用のデータ(保守診断実施条件情報J1)を一元管理するようになっている。
また、保守管理データ解析部52は、市場にて、電子機器100の全体や電子機器100を構成する各構成部品の保守診断を行なうことで得られた、可搬性記憶媒体9に記録された結果データ(保守診断結果情報J2)を一元管理する機能が設けられるとさらに好ましい。なお、保守診断結果情報J2には、保守診断の結果そのものの情報(診断結果データJ2_1)だけでなく、電子機器100のそれまでの動作状態情報を把握できるように、電子機器100の動作状態を記録したログ情報J2_2も含めるようにするのがよい。なお、保守診断結果情報J2は、診断結果データJ2_1とログ情報J2_2とを1つのデータファイルで取り扱うようにしてもよいし、それぞれを別ファイルで取り扱うようにしてもよい。
可搬性記憶媒体9としては、自由にハンドリング可能な記憶媒体であればよく、半導体メモリを利用したUSB(Universal Serial Bus)メモリや、光学もしくは磁気を記録や読出しに利用する円盤状の媒体を用いたものや、その他の記憶部材を用いたメモリが使用され、必ずしも半導体メモリを利用したものに限定されない。
ただし、光学もしくは磁気を記録や読出しに利用する円盤状の媒体を利用するものでは、比較的大掛かりな記録・読取のための物理的な機構(いわゆるドライブユニット)が必要になるのに対して、半導体メモリを利用したものは、可搬性記憶媒体9を装着する接続端子(ポートやスロットと称する)を用意しておけばよく、記録・読取のためには事実上物理的な機構が不要で電気的な仕組みのみで対処できるので、小型の電子機器100にも適用が容易である利点がある。
なお、本実施形態の保守管理サーバ5は、各種の機能部の一部を、ハードウェア処理回路により構成することに限らず、その機能を実現するプログラムコードに基づき電子計算機(コンピュータ)と同様の仕組みを用いてソフトウェア的に実現することが可能に構成されている。
一例として、保守管理装置本体5aとしては、パーソナルコンピュータを使用することができる。この場合、保守管理装置本体5aには、電子機器100の保守管理を行なうプログラムを格納した記憶装置が設けられる。
保守管理サーバ5において、保守管理データ解析部52は、市場に出荷された各電子機器100の故障の有無や故障の状態などの保守診断を行なうための保守管理用のデータである保守診断実施条件情報J1を機種コードや構成部品と対応付けて診断指示ファイルF1を生成し、データ記憶制御部50により可搬性記憶媒体9に記憶しておく。
市場には、出荷・販売された様々な機種・構成部品の電子機器100が多数存在する。顧客に販売されたOA機器を始めとする電子機器100や情報システムの保守管理に当たっては、顧客からの修理依頼や問合せのコールを受けて、これに応じてフィールドエンジニアFE(サービス員)を現地に派遣して故障の有無や故障の状態などを確認したり、故障を修理したりするなどの保守管理を行なうことになる。
ここで、電子機器100の保守管理を客先で実施する際、従来は、フィールドエンジニアFEがパーソナルコンピュータ(ノート型などの携帯型を含む)あるいは携帯情報端末や保守管理用の専用端末などの、保守診断情報に従って保守管理診断を行なうことを可能にした保守管理装置を持参して、この保守管理装置を電子機器100に接続して対応するか、もしくは、紙媒体で保守診断情報を持ち運んで、その保守診断情報を見ながら対応している。
しかしながら、保守管理装置は、持ち運びが不便である。また、紙媒体に記録されている保守診断情報に従う仕組みでは、その後の管理や解析に不便である。
そこで、本実施形態では、保守管理を統括する装置としては保守管理サーバ5を電子機器保守管理システム1に用意しておくが、保守診断情報(本例では保守診断実施条件情報J1)は、保守管理サーバ5そのものではなく、可搬性記憶媒体9に記録して持ち運ぶようにする。
そして、保守診断実施条件情報J1が記憶された可搬性記憶媒体9を電子機器100に装着することで、保守診断処理を開始する。たとえば、可搬性記憶媒体9を電子機器100(たとえば100_2)に装着することで、可搬性記憶媒体9に記憶されている保守診断実施条件情報J1や、この保守診断実施条件情報J1に従って特定した実情に即する保守診断実施条件情報J1_2を電子機器100_2の保守診断条件保存部160へ書き込む。電子機器100_2は、保守診断条件保存部160に書き込まれた保守診断実施条件情報J1_2に従って診断メニューを所定の表示デバイスに表示し、フィールドエンジニアFEの指示に従って診断を開始する。あるいは、その保守診断実施条件情報J1_2で定義されている手順に従って自動で保守診断処理を実施する。
また、保守管理診断が完了した後には、保守診断結果の情報(本例では保守診断結果情報J2)を可搬性記憶媒体9に記録するようにし、この保守診断結果情報J2が記録された可搬性記憶媒体9を保守管理サーバ5に装着することで、その後の管理や解析に利用できるようにする。
こうすることで、保守管理装置そのものを現地に持ち運ぶことの不便さを解消するとともに、紙媒体で保守診断情報を持ち運ぶことの管理や解析の不便さ解消することにより、保守管理の効率向上を図るようにする。
たとえば、保守診断実施条件情報J1を予め保守管理サーバ5により可搬性記憶媒体9に記憶しておく。フィールドエンジニアFEが市場で電子機器100の保守管理を実施する際、可搬性記憶媒体9を電子機器100(たとえば100_2)に装着することで、電子機器100は、可搬性記憶媒体9に記憶されている保守診断実施条件情報J1に従って保守診断処理を起動する。
たとえば、プリンタや複写機などの電子機器は、近年、性能、機能の向上に伴い、益々、それらを実現するための様々な用途のアナログおよびデジタルの電子回路がプリント基板の形で格納されてきている。
また、自動車や航空、ロボットや半導体設計装置など、他の産業機器においても動作制御などの手段として、信頼性が高く、高速・高精度での動作が可能な電子回路基板が数多く搭載されている。これらの電子回路基板は一連の機能を実現するために、様々な形でケーブルを介して接続されることにより、所望のスペックが実現されている。
基板が搭載される機器が使用される環境は、通常はオフィス内であったり、家屋内であったりするが、それ以外の過酷な環境下で使用される場合もあり、非常に多岐に亘っている。特に使用環境が劣悪である場合には、通常の方法で使用していたとしても、検出が困難な様々な異常や故障が発生し、その修復には多大な労力を要することになる。
また、通常の使用環境下で使用している場合でも、電子回路の異常や故障が発生し、その頻度は必ずしも低いとは言えず、検出箇所を特定できないこともしばしば生じている。さらに、電子回路基板に異常が発生した場合には、安全性やコストなどの面から早急な対応が必要でもある。
故障診断などを行なう保守管理の一般的手法としては、テスターなどの測定装置を用いて主要な個所の電圧や信号波形を監視(モニタ)しながら故障個所を特定する。しかし、このような診断方法では様々な個所の測定を行なわなければならず、故障診断に手間が掛かってしまい、作業効率が悪い。
そこで、本実施形態では、効率のよい保守管理診断手法として、装置自身が各基板や構成部品の診断を行なうようにした自己診断システム(Diagnostics system)を採用する。
この自己診断システムでは、たとえば、装置が動作しているときの信号パターンを回路モジュールごとあるいは基板ごとにモニタして予め記憶してある期待値と比較し、故障発生の有無や信号状態を診断することで、故障箇所や故障の状態を特定するようにする。なお、このような自己診断システムの仕組みは公知の技術であるので、ここでは、その詳細説明を割愛する。
この際、保守管理診断の手順を一律にしておいたのでは、必ずしも効率的な診断とはならない。保守管理診断をどのような手順で行なうのが効率的であるかは、電子機器100の機種や、電子機器100を構成する構成部品の搭載状態や、市場に出荷されてから、どれだけ使用されたかや、どのような使い方をされていたかによって異なるのである。
よって、現地では、診断対象の電子機器100の実情に即して、診断対象箇所を決め、また、それに応じた手順を調整するのがよいのである。
たとえば、同一種類の電子機器100であっても、機種が異なると、装着されている構成部品が異なることがあり、この場合、診断メニューを各機種に適合するように異なるものとする必要がある。
また、たとえば電子機器100がプリンタや複写機などの画像形成装置である場合、同一機種の電子機器100であっても、給紙トレイ、排出トレイ、あるいは後処理装置(Finisher)などの装置構成が異なると、当然に装着部品も異なり、この場合にも、診断メニューを各装置構成に適合するように異なるものとする必要がある。
また、一般的に、初期不良を除いた場合、使用頻度に応じて故障の発生度合いが増すと考えてよく、利用期間や利用回数に応じた診断メニューとするのがよいのである。たとえば、利用回数の多い装置は入念な診断を実施するのが好ましく、利用回数の少ない装置は入念な診断ではなく、より簡易的な診断を実施するのが好ましい。こうすることで、的確な診断の実施と、無駄な作業時間の削減を実現する。
また、装置を構成する構成部品の中には、永久的に使用されることを前提とするものに限らず、使用度合いが一定レベルに達すると交換して使用することを前提とする、いわゆる定期交換品と称されるものも存在する。よって、このような構成部品についても、その利用期間や利用回数に応じた診断メニューとするのがよいのである。
たとえば、電子機器100がプリンタや複写機などの電子写真方式の画像形成装置である場合、定着器(Fuser )や、感光体ユニット(ROS )、あるいは廃トナー容器や、トナーなどの消耗品を収容したトナーカートリッジ、などが定期交換品に該当し、その状態や使用回数に制限がある。このような定期交換品の場合、利用期間や利用回数や回収トナー量が所定レベル近くとなり寿命に近くなってきている利用度合いの多い部品に関しては、入念な診断を実施するのが好ましく、利用度合いの少ない部品は入念な診断ではなく、より簡易的な診断を実施するのが好ましい。こうすることで、的確な診断の実施と、無駄な作業時間の削減を実現する。
このため、共通の可搬性記憶媒体9を用いつつ、複数機種や機種構成や使用度合いに応じた保守診断を可能とするべく、保守管理サーバ5にて保守診断実施条件情報J1を可搬性記憶媒体9に記録する際には、電子機器100の機種コードや構成部品(ユニット)ごとに、構成部品そのもの有無やオプション品の有無などの機器構成条件や、故障の有無や状態などの保守診断作業を行なう実施条件(特に、利用期間や利用回数に関するもの)、などの保守管理用のデータを記述して保守診断実施条件情報J1として記録することにする。
こうすることで、共通の可搬性記憶媒体9を用いて、機種ごとに保守診断作業を実施することができるし、機種コードと機器構成条件との組合せにより、装置構成ごとに保守診断作業を実施することができる。また、機器構成条件と構成部品別の利用期間や利用回数に応じた診断条件との組合せにより、構成部品の別に、その利用期間や利用回数に応じた保守診断作業を実施することができる。
また、保守診断作業が実施された電子機器100は、その保守診断作業を実施した結果を示す診断結果データJ2_1やログ情報J2_2を含む保守診断結果情報J2を可搬性記憶媒体9に記録するようにする。本実施形態では、診断結果データJ2_1とログ情報J2_2とを別々のデータファイルで取り扱うことにする。
診断結果データJ2_1は、保守管理サーバ5にて、各電子機器100の保守診断結果を一元管理することができるように、電子機器100の機種コードやシリアル番号や構成部品(ユニット)ごとに、保守診断実施の有無や、診断結果や、定期交換品の場合には交換の要否や、トナーなどの消耗品を収容した交換品の場合にはその消耗品の状態(残量や消費量)を、電子機器100の動作状態を記録したログ情報J2_2と対応付けて、記録するようにする。
診断結果データJ2_1およびログ情報J2_2を含む保守診断結果情報J2は、後に、保守管理サーバ5に可搬性記憶媒体9を装着して、データ記憶制御部50により、その保守診断結果情報J2を読み取り、保守管理データ解析部52にて解析することで、保守管理に利用する。
この際、診断結果データJ2_1だけでなくログ情報J2_2をも参照することで、保守管理サーバ5側にて、電子機器100の使用状態との関係における動作パラメータ(診断結果データJ2_1に基づくもの)の特性図を作成するなどして、寿命診断に利用したり、後の保守診断実施条件情報J1の設定(つまり変更)に利用したりすることができる。
なお、電子機器100は、保守診断実施条件情報J1を記述した診断指示ファイルF1や保守診断結果情報J2を記憶した保守管理用の可搬性記憶媒体9だけでなく、その他の一般的なデータファイルを記憶している一般用途用の可搬性記憶媒体9aも装着可能である。詳細は後述するが、電子機器100には、可搬性記憶媒体9と可搬性記憶媒体9aの何れが装着されたかを自動判別して処理を切り替える仕組みが設けられる。
<電子機器の構成例>
図2は、本実施形態の保守管理機能に対応した電子機器の一構成例を示す機能ブロック図である。
本実施形態の電子機器1は、各種の機能部の一部を、ハードウェア処理回路により構成することに限らず、その機能を実現するプログラムコードに基づき電子計算機(コンピュータ)と同様の仕組みを用いてソフトウェア的に実現することが可能に構成されている。
ソフトウェアにより所定の処理(特に本実施形態では保守管理処理)を実行させる仕組みとすることで、ハードウェア処理回路で構成される各機能要素の一部を取り外した構成にすることができ、またハードウェアの変更を伴うことなく、処理手順などを容易に変更できる利点を享受できるようになる。これに対して、ハードウェア処理回路で行なうことで、高速化を図ったアクセラレータシステムを構築することができるようになる。アクセラレータシステムは、処理が複雑であっても、処理速度の低下を防ぐことができ、高いスループットを得ることができる。
電子計算機と同様の仕組みで、保守管理処理機能をソフトウェアにより実行する場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ(組込マイコンなど)、あるいは、CPU(Central Processing Unit )、論理回路、読出専用の記憶部であるROM(Read Only Memory)、随時書込みおよび読出しが可能であるとともに揮発性の記憶部の一例であるRAM(Random Access Memory)、あるいは不揮発性の記憶部の一例であるRAM(NVRAMと記述する)を始めとする記憶装置などの機能を1つのチップ上に搭載して所望のシステムを実現するSOC(System On a Chip:システムオンチップ)、または、各種のプログラムをインストールすることで各種の機能を実行することが可能な構成で、記録媒体からインストールされる。
記録媒体は、コンピュータのハードウェア資源に備えられている読取装置に対して、プログラムの記述内容に応じて、磁気、光、電気などのエネルギの状態変化を引き起こして、それに対応する信号の形式で、読取装置にプログラムの記述内容を伝達できるものである。
たとえば、コンピュータとは別に、ユーザにプログラムを提供するために配布される、プログラムが記録されている磁気ディスク(フレキシブルディスクFDを含む)、光ディスク(CD−ROM(Compact Disc-Read Only Memory )、DVD(Digital Versatile Disc)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini Disc )を含む)、または半導体メモリなどよりなるパッケージメディア(可搬型の記憶媒体)により構成されるだけでなく、コンピュータに予め組み込まれた状態でユーザに提供される、プログラムが記録されているROMやハードディスクなどで構成されてもよい。
また、ソフトウェアを構成するプログラムは、記録媒体を用いずに、記録媒体を介して提供されることに限らず、有線あるいは無線などの通信網を介して提供されてもよい。
たとえば、保守管理処理機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても、ハードウェア処理回路にて構成する場合と同様の効果は達成される。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が保守管理処理機能を実現する。
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することで保守管理処理機能が実現されるだけでなく、プログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOS(Operating Systems ;基本ソフト)などが実際の処理の一部または全部を行ない、その処理により保守管理処理機能が実現される場合であってもよい。
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張カードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張カードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行ない、その処理によって保守管理処理機能が実現される場合であってもよい。
なお、保守管理処理機能を実現するプログラムコードを記述したファイルとしてプログラムが提供されるが、この場合、一括のプログラムファイルとして提供されることに限らず、コンピュータで構成されるシステムのハードウェア構成に応じて、個別のプログラムモジュールとして提供されてもよい。
たとえば、コンピュータシステムとして構成される電子機器100は、装置全体の動作を制御するシステム制御部102を備える。本実施形態のシステム制御部102は、装置全体の動作を制御する機能だけでなく、可搬性記憶媒体9に記憶された保守管理用データである保守診断実施条件情報J1を保守診断条件保存部160に書き込み、またこの保守診断実施条件情報J1と当該装置の実情(使用状態)とに基づいて保守診断実施条件情報J1_2を特定して保守診断条件保存部160に書き込むとともに、保守診断実施条件情報J1_2に従って診断された保守診断結果情報J2を可搬性記憶媒体9に書き込むデータ記憶制御部の機能も備えている。
具体的には、システム制御部102は、コントローラ部(制御部)104と、図示したハードディスク装置(HDD)118や、図示を割愛した、フレキシブルディスク(FD)ドライブ、CD−ROM(Compact Disk ROM)ドライブ、半導体メモリコントローラなどの、所定の記憶媒体からデータを読み出したり記録したりするための記録・読取制御部106と、可搬性記憶媒体9,9aを装着可能な装着手段としての装着ポート199とを有する。たとえば、可搬性記憶媒体9,9aとしてUSBメモリを使用する場合、装着ポート199にはUSBポートが設けられる。
特に、本実施形態の記録・読取制御部106は、装着ポート199に可搬性記憶媒体9が装着された状態で、可搬性記憶媒体9から保守診断実施条件情報J1(のファイルデータ)を読み出し、あるいは電子機器100の保守管理後に保守診断結果情報J2(のファイルデータ)を可搬性記憶媒体9に書き込む可搬性記憶媒体9用の読取書込部(メディアリーダ)108を有している。
コントローラ部104は、CPU112、読出専用の記憶部であるROM113、随時書込みおよび読出しが可能であるとともに揮発性の記憶部の一例であるRAM115、および不揮発性の記憶部の一例であるRAM(NVRAMと記述する)116を有する。
なお、上記において“揮発性の記憶部”とは、装置の電源がオフされた場合には、記憶内容を消滅してしまう形態の記憶部を意味する。一方、“不揮発性の記憶部”とは、装置のメイン電源がオフされた場合でも、記憶内容を保持し続ける形態の記憶部を意味する。記憶内容を保持し続けることができるものであればよく、半導体製のメモリ素子自体が不揮発性を有するものに限らず、バックアップ電源を備えることで、揮発性のメモリ素子を“不揮発性”を呈するように構成するものであってもよい。
また、半導体製のメモリ素子により構成することに限らず、磁気ディスクや光ディスクなどの媒体を利用して構成してもよい。たとえば、ハードディスク装置118を不揮発性の記憶部として利用できる。また、CD−ROMなどの記録媒体から情報を読み出す構成を採ることでも不揮発性の記憶部として利用できる。
また、コンピュータシステムと同様の仕組みで構成された電子機器100は、装置の操作指示を受け付けるなどのユーザインタフェースをなす機能部としての指示受付部152と、操作時のガイダンス画面(操作メニュー)や装置の動作状態や処理結果などの所定の情報をユーザに提示する表示出力部154と、各機能部との間のインタフェース機能をなすインタフェース部(IF部)190とを有する。
インタフェース部190としては、処理データ(画像データを含む)や制御データの転送経路であるシステムバス191の他、たとえば、操作パネル部192aおよび操作キー部192bを具備したユーザインタフェース部192や、プロトコル制御を実行しネットワークとのインタフェース機能をなす通信インタフェース部194や、その他の外部デバイスとのインタフェース機能をなすデバイスインタフェース部を有する。
通信インタフェース部194は、ネットワークや公衆回線網を制御するネットワークコントローラやモデムなどの通信制御機能を持つ。デバイスインタフェース部は、各種のデバイス装置をコントロールする。
指示受付部152としては、たとえば、ユーザインタフェース部192の操作キー部192bを利用することができる。あるいは、キーボード152aやマウス152bなどを利用することもできる。
ユーザインタフェース部192やキーボード152aやマウス152bは、図示を割愛するが、キーボード152aからのキー入力およびマウス152bといったポインティングデバイスからの入力を制御するそれぞれに応じたデバイスインタフェース部を介してシステムバス191に接続される。
表示出力部154は、表示制御部と表示装置とを備える。表示装置としては、たとえば、ユーザインタフェース部192の操作パネル部192aを利用することができる。あるいは、CRT(Cathode Ray Tube;陰極線管)やLCD(Liquid Crystal Display;液晶)などでなるその他のディスプレイ部154aを利用することもできる。
たとえば、表示制御部が、操作パネル部192aやディスプレイ部154a上に、ガイダンス情報や読取書込部108が可搬性記憶媒体9から取り込んだ保守診断実施条件情報J1の一覧などを表示させる。また、各種の情報を操作者に通知する際の表示デバイスとしても利用される。なお、表示面上にタッチパネルを有するディスプレイ部154aとすることで指先やペンなどで所定の情報を入力する指示受付部152を構成することもできる。
このような構成において、CPU112は、システムバス191を介してシステム全体の制御を行なう。ROM113は、CPU112が使用する制御プログラムを含む各種固定データを格納する。RAM115は、SRAM(Static Random Access Memory )などで構成され、プログラム制御変数や各種処理のためのデータなどを格納し、また、所定のアプリケーションプログラムに従って演算して得たデータや外部から取得したデータなどを一時的に格納する領域を含んでおり、CPU112がデータ処理などを行なう際に、ワークメモリなどの用途に使用される。
NVRAM116は、制御パラメータや処理されたデータなどを記憶しておくものであり、バックアップされる。特に、本実施形態の構成においては、読取書込部108が可搬性記憶媒体9から取り込んだ保守診断実施条件情報J1や、この保守診断実施条件情報J1と当該装置の実情(使用状態)とに基づいて特定された保守診断実施条件情報J1_2を保存する保守診断条件保存部160の機能をなすようになっている。
また、本実施形態の特有の機能要素として、コントローラ部104は、読取書込部108により可搬性記憶媒体9から読み取られた診断指示ファイルF1中の保守診断実施条件情報J1と電子機器100の実体(それまでの使用状態)とに基づいて現時点の保守診断条件(保守診断実施条件情報J1_2)を特定する保守診断条件決定部150を備えている。保守診断条件決定部150は、特定した保守診断実施条件情報J1_2をNVRAM116の保守診断条件保存部160に保存する。なお、この保守診断条件決定部150の機能は、ソフトウェアで実現することができる。
保守診断条件決定部150は、当該電子機器100が使用される都度、装置としての使用履歴をログ情報ログ情報J2_3として保守診断条件保存部160(NVRAM116)に保存するとともに、構成部品別の使用履歴もログ情報ログ情報J2_4として保守診断条件保存部160(NVRAM116)に保存する。たとえば、装置を構成する構成部品の中の永久的に使用されることを前提とする永久使用部品は、その永久使用部品の使用履歴は装置としての使用履歴から判定できるが、使用度合いが一定レベルに達すると交換して使用することを前提とする、いわゆる定期交換品と称されるものは、装置としての使用履歴と定期交換品の使用履歴とが整合しなくなるので、構成部品別の使用履歴も保存するのである。
たとえば、保守管理処理機能をコンピュータに実行させるプログラムは、CD−ROMなどの記録媒体を通じて配布される。あるいは、このプログラムは、CD−ROMではなくFDに格納されてもよい。また、MOドライブを設け、MOに前記プログラムを格納してもよく、またフラッシュメモリなどの不揮発性の半導体メモリカードなど、その他の記録媒体にプログラムを格納してもよい。さらに、他のサーバなどからインターネットなどのネットワークを経由してプログラムをダウンロードして取得したり、あるいは更新したりしてもよい。
なおプログラムを提供するための記録媒体としては、FDやCD−ROMなどの他にも、DVDなどの光学記録媒体、MDなどの磁気記録媒体、PDなどの光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、ICカードやミニチュアカードなどの半導体メモリを用いることができる。記録媒体の一例としてのFDやCD−ROMなどには、保守管理処理機能を実現する際の、一部または全ての機能を格納することができる。
また、ハードディスク装置118や光/磁気ファイルなどの記憶装置は、プログラムや各種のアプリケーション、フォントデータやユーザファイルといったユーザデータや制御管理データを保持したり、自装置で取得したデータや外部から取得したデータなどを大量に一時的に格納したりする領域を含んでおり、入出力インタフェース機能をなす記録・読取制御部106によりデータの読出しや書込みが制御される。
このような構成により、所定の指令にて、保守管理処理機能を実行するプログラムが記憶されているCD−ROMなどの読取可能な記録媒体からRAM115に保守管理処理プログラムがインストールされ、また指示受付部152を介した操作者による指令や可搬性記憶媒体9が装着ポート199に装着されたことを契機とする自動処理にて保守管理処理プログラムが起動される。
CPU112は、この保守管理処理プログラムに従って後述する保守管理処理方法に伴う処理を施し、処理結果をRAM115やハードディスク装置118などの記憶装置に格納し、必要により操作パネル部、あるいはCRTやLCDなどの表示装置に情報提示出力する。保守管理処理方法を実行するプログラムが記録した記録媒体を用いることにより、既存のシステムを変えることなく、保守管理処理システムを汎用的に構築することができる。
なお、このようなコンピュータを用いた構成に限らず、各機能部の処理をなす専用のハードウェアの組合せにより、保守管理処理機能を実行することを可能とする電子機器100を構成することもできる。
なお、電子機器100には、前述の各機能部の他にも、装置機能に応じた特有の機能部も設けられる。一例として、印刷出力機能や複写機能などを備えた画像形成装置として電子機器100を構築する場合であれば、画像データの圧縮伸張処理や加工などの処理を実行する画像処理部180や、原稿画像を読み取る画像読取部182や、画像情報を印刷出力してユーザに提示する構成とするべく、画像読取部182が読み取った画像や通信インタフェース部194を介して取得した印刷データなどに基づき、所定の出力媒体(たとえば印刷用紙)に画像を出力する画像記録部(画像形成部)184を設けることもできる。
画像読取部182や画像記録部184は、インタフェース部190をなすデバイスインタフェース部としてのスキャナインタフェース部196やプリンタインタフェース部197を介してシステムバス191に接続される。
なお、これらの他にも、たとえば、音声情報を発するオーディオデバイス188が、音声信号の入出力を制御するオーディオインタフェース部198を介してシステムバス191に接続される。
<処理手順>
図3〜図6は、電子機器100についての保守管理機能に着目した処理手順の一実施形態を説明する図である。ここで、図3は、保守管理機能を実現する一実施形態の処理手順の一例を示すフローチャートである。また、図4は、本実施形態の処理手順で用いる保守診断実施条件情報J1を纏めた診断指示ファイルF1の一例を示す図表である。また、図5は、本実施形態の処理手順で用いる保守診断結果情報J2に含まれる診断結果データJ2_1を纏めた診断結果ファイルF2の一例を示す図表である。また、図6は、所要の処理ステップにて提示されるメニュー画面の一例を示す図である。
本実施形態の処理手順は、機種コード別や構成部品別に保守診断実施条件情報J1を診断指示ファイルF1に登録しておき、保守管理診断を現地で実施する際に、可搬性記憶媒体9を電子機器100に装着すると、電子機器100の機種コードや装置構成と電子機器100や構成備品の使用状態との比較を行なうことで、電子機器100の実体に即した診断手順を特定してから保守管理診断を開始する点に特徴を有する。
先ず、保守管理サーバ5にて、図4に示すように、電子機器100の別に、機種コード、機種コード別の構成備品、装置構成条件(オプション設定を含む)、および診断実施条件、などでなる保守診断実施条件情報J1を記述した診断指示ファイルF1を、可搬性記憶媒体9に保存する(S100)。
この際、データ記憶制御部50は、可搬性記憶媒体が保守診断実施条件情報J1を記述した診断指示ファイルF1を記憶している保守管理用の可搬性記憶媒体9であるのか、その他の一般的なデータファイルを記憶している一般用途用の可搬性記憶媒体9a(図1参照)であるのかの区別がつくように、可搬性記憶媒体9には識別情報をセットしておく。
識別情報をセットする仕組みとしては、たとえば、ルートディレクトリに“@@@@@_diag.txt”などというファイル名のテキスト文書を作成し、そのファイルの中にcsv(Comma Separated Value )形式で図4に示す保守診断実施条件情報J1をなす各種の情報を書き込む。
図4から分かるように、可搬性記憶媒体9には、保守管理機能を実現するための各電子機器100に対応した保守診断実施条件情報J1の一覧を診断指示ファイルF1として記憶する。保守診断実施条件情報J1は、機種別や構成部品別に、使用度合いに応じた診断実施条件が設定されて、同一の診断指示ファイルF1内に記述される。1つの可搬性記憶媒体9を使用して、現地での保守管理診断を、複数台/複数機種の電子機器100について実施することができる。
次に、電子機器100が設置されている市場において保守管理診断を実施する際、フィールドエンジニアFEは、ステップS100にて各電子機器100についての保守診断実施条件情報J1が書き込まれた可搬性記憶媒体9を、診断対象の電子機器100の装着ポート199に装着する(S110)。
読取書込部108は、この可搬性記憶媒体9の装着を検知すると(S112−YES)、可搬性記憶媒体9に記憶されているファイルをサーチし(S113)、その中に、保守診断実施条件情報J1を記述した診断指示ファイルF1(たとえば“@@@@@_diag.txt”のテキスト文書)が存在するか否か、つまり装着ポート199に装着された可搬性記憶媒体が、保守管理用の可搬性記憶媒体9であるのか一般用途用の可搬性記憶媒体9aであるのかを判定する(S114)。
読取書込部108は、保守診断実施条件情報J1を記述した診断指示ファイルF1を見つけることができなかったとき、つまり装着ポート199に装着された可搬性記憶媒体が一般用途用の可搬性記憶媒体9aであるときは、その旨をコントローラ部104(特にCPU112)に通知する(S114−NO,S116)。この通知を受けたCPU112は、一般ユーザ使用のメディアプリント/メディアスキャンメニュー表示モードに遷移する(その詳細フローは図示を割愛する)(S117)。
一方、読取書込部108は、保守診断実施条件情報J1を記述した診断指示ファイルF1を見つけると、その旨をコントローラ部104(特にCPU112)に通知するとともに、診断指示ファイルF1のデータを読み取りコントローラ部104に渡す(S114−YES,S118)。通知を受けたCPU112は、診断指示ファイルF1を一旦保守診断条件保存部160に保存し、保守管理診断モードに遷移する(S120)。
つまり、可搬性記憶媒体9が電子機器100の装着ポート199に装着され、可搬性記憶媒体9に当該電子機器100の保守管理診断を実施するための診断指示ファイルF1が記憶されていると、自動で、保守管理機能の1つである装置診断機能を実現するモードに移行し、後述する各種の操作メニューがオペレータ操作と連動して順に提示されるようになるのである。
保守管理用の可搬性記憶媒体9が装着ポート199に装着されたとき、自動で保守管理用の操作メニュー画面が表示されるので、フィールドエンジニアFEが逐一操作するよりも、保守管理用の装置診断時の作業時間を短縮することができる。
保守管理診断モードでは、先ず、保守診断条件決定部150は、読取書込部108を介して取り込んだ診断指示ファイルF1中の各保守診断実施条件情報J1の内、自装置の機種コードに合致するものを抽出する。CPU112は、抽出結果に基づき、実行診断メニュー一覧画面G130を、ユーザインタフェース部192の操作パネル部192aもしくは表示出力部154のディスプレイ部154aに提示する。
この際には、保守診断条件決定部150は、先ず、読取書込部108により読み込まれた診断指示ファイルF1の内容を解析して、自装置に該当する保守診断実施条件情報J1を特定する(S122)。次に、保守診断条件決定部150は、予め所定の記憶媒体(たとえばNVRAM116やハードディスク装置118)に保存してある自装置の使用履歴を示すログ情報J2_3と構成部品別のログ情報J2_4を読み出して、それまでの当該装置の使用状態を特定する(S124)。
そして、自装置に該当する保守診断実施条件情報J1と、現時点における自装置の使用状態や装置構成部品別の使用状態との照合を行ない、実情に即して、装置として保守管理診断を実行すべきかや、今回診断すべき構成部品を特定する(S126)。つまり、診断指示ファイルF1に従って装置状態(たとえばプリント回数など)を確認していくことで、全体としての診断の要否や現時点で診断を要する構成部品を特定していくのである。
保守診断条件決定部150は、次に、予め自装置に組み込まれている自動診断処理プログラムにおける診断手順に、診断対象と判定した構成部品を突き当てて、今回の診断手順を決定して、この決定した実手順を示す保守診断実施条件情報J1_2を保守診断条件保存部160に書き込む。
保守診断実施条件情報J1_2の保守診断条件保存部160への書込みが完了すると、CPU112は、順次、保守診断実施条件情報J1_2に従って、実行診断メニュー一覧画面G130を提示しながら(S130)、診断対象の構成部材別に、保守診断処理(故障診断など)を実行していく。
たとえば、保守診断条件決定部150は、診断対象の電子機器100の機種コードが“100A”であったとき、定着器に関しては使用累計時間が“1000000時間”に達しているか否かで、診断を実施するか否かを切り分ける。同様に、保守診断条件決定部150は、感光体ユニット(ROS)や転写ベルトに関しては、印刷枚数が“5000枚”に達しているか否かで、診断を実施するか否かを切り分ける。
そして、保守診断条件決定部150により診断対象となる構成部品が特定されると、次に、CPU112は、予め自装置に組み込まれている自動診断処理プログラムにおける診断手順に、診断対象となる構成部品を突き当てて、順次、構成部品別に保守診断処理(故障診断など)を実行していく。
たとえば、自動診断処理プログラムにおける診断手順が、“読取装置(Scanner )→感光体ユニット→各種のトレイ(Tray)→定着器→…”の順であるときに、診断対象の構成部品として、感光体ユニットと転写ベルトと定着器とが特定されると、CPU112は、先ず、図6(A)に示すように、今回の診断手順が“感光体ユニット→定着器→…”の順であることを示す実行診断メニュー一覧画面G130を提示する。
このとき、たとえば、該当機種の機種コードを表示するとともに、保守診断条件決定部150が特定した当該装置の診断対象の構成部品の診断項目は通常輝度もしくは高輝度(図では太線で示す;後述参照)で表示するが、それ以外の診断対象とはならない構成部品の診断項目は半輝度で表示する(図では点線で示す)もしくは表示しないようにすることで、両者(診断の要否)の区別が容易に付くようにする。
保守診断条件決定部150により診断対象の構成部品と判定され通常輝度もしくは高輝度で表示された診断項目をフィールドエンジニアFEがクリックすることで、マニュアルで診断対象から除外することもできるようにするのがよい。また、保守診断条件決定部150が診断対象とはならない構成部品と判定した診断項目を半輝度で表示しておくと、その半輝度の診断項目をフィールドエンジニアFEがクリックすることで、マニュアルで診断対象に加えることができ便利である。何れも、保守診断条件決定部150による保守診断実施条件情報J1と装置実体の照合に基づく自動判定に加えて、現地で顧客から問い合せた結果に基づいて診断の要否をフィールドエンジニアFEが判断できるようにするのである。
また、保守診断条件決定部150により診断対象の構成部品と判定された診断項目を表示するに当たっては、現在の手順における診断対処項目がどれであるのかが容易に区別できるように、通常輝度と高輝度の表示を切り分けるのがよい。たとえば、最初は、感光体ユニットが1番目の診断対象の構成部品であることが分かるように“ROS診断”を高輝度で表示し、残りのものは通常輝度で表示しておくとよい。そして、“ROS診断”が完了すると、次の診断対象の構成部品が分かるように“Fuser診断”を高輝度で表示し、残りのものは通常輝度で表示する。以下、同様である。つまり、前工程の装置状態確認結果に応じて、表示パネルなどへ、実行診断メニュー一覧画面G130を表示する。
フィールドエンジニアFEは、図6(A)に示す実行診断メニュー一覧画面G130に提示された診断対象を確認して、タッチパネル式の操作パネル部192a上で“OK”をクリックする、もしくは操作キー部192bで“OKボタン”を押す、あるいはキーボード152aで“エンターキー”を押して、次処理への移行を指示する(S131)。
CPU112は、この次処理への移行指示を受け付けると、自動診断処理プログラムに従って該当の診断メニューを実行する(S132)。この際には、故障診断処理の他、該当の診断メニュー、つまり診断対象の構成部品のこれまでの動作状態(使用状態)を示したログ情報の収集も行なう。
なお、診断メニューを実行している間は(S132−NO)、図6(B)に示すように、診断中画面G134を、ユーザインタフェース部192の操作パネル部192aもしくは表示出力部154のディスプレイ部154aに提示する(S134)。
診断メニューの実行が完了すると(S132−YES)、診断結果を診断結果データJ2_1に記録し、また収集した該当構成部品のログ情報をログ情報J2_2に記録し、これらを診断結果ファイルF2として可搬性記憶媒体9に書き込む(S136)。
なお、診断結果ファイルF2を可搬性記憶媒体9に書き込んでいる間は(S136−NO)、図6(C)に示すように、結果書込み中画面G138を、ユーザインタフェース部192の操作パネル部192aもしくは表示出力部154のディスプレイ部154aに提示する(S138)。
この際、読取書込部108は、記憶したデータファイルが、保守診断結果情報J2(詳しくは診断結果データJ2_1やログ情報J2_2)を記述した診断結果ファイルF2であることと、何れの機種の何れのシリアル番号のものであるのかを特定し得るように、診断結果ファイルF2には、識別情報をセットしておく。
識別情報をセットする仕組みとしては、診断結果データJ2_1に関しては、たとえば、診断指示ファイルF1と同一のルートディレクトリに“Diag_&&&&_######.txt”などというファイル名のテキスト文書を作成する。ここで、“Diag”は診断結果データJ2_1であることを示し、“&&&&”は機種コードを示し、“######”はシリアル番号を示す。
そして、そのファイルの中に、csv(Comma Separated Value )形式で、図5に示す診断結果データJ2_1をなす各種の情報、たとえば定着器や感光体ユニットなどの各定期交換品の状態やトナーなどの各消耗品の状態などを書き込む。
また、ログ情報J2_2に関しては、たとえば、診断指示ファイルF1と同一のルートディレクトリに“Log_&&&&_######.txt ”などというファイル名のテキスト文書を作成する。ここで、“Log ”はログ情報J2_2であることを示し、“&&&&”は機種コードを示し、“######”はシリアル番号を示す。
そして、そのファイルの中に、csv(Comma Separated Value )形式で、ログ情報J2_2をなす各種の情報、たとえば、プリント総枚数、FAX通信回数、各種エラー発生回数などを書き込む。
診断結果ファイルF2の可搬性記憶媒体9への書込みが無事に完了すると(S136−YES)、CPU112は、診断対象の構成部品について全て診断が完了したか否か、つまり、次の診断対象の構成部品が存在するか否かを判定する(S140)。診断対象の構成部品が残っている場合には(S140−NO)、ステップS130に戻って、次の診断対象の構成部品が何であるのか分かるように該当の診断項目を高輝度で表示し、以下同様に繰り返す。
診断対象の構成部品について全て診断が完了すると(S140−YES)、CPU112は、図6(D)に示すように、媒体取出し画面G142を、ユーザインタフェース部192の操作パネル部192aもしくは表示出力部154のディスプレイ部154aに提示する(S142)。
この媒体取出し画面G142では、たとえば、診断結果ファイルF2の書込みが無事に完了した旨のメッセージ(たとえば“情報書込みが完了しました”)と、可搬性記憶媒体9を装着ポート199から取り外すべきことを指示する旨のメッセージ(たとえば“メディアを取り出して下さい”)とを表示する。
なお、図示を割愛するが、何らかの不具合が発生し、診断結果ファイルF2の可搬性記憶媒体9への書込みが所定時間内に完了しないときには、書込み失敗画面を、ユーザインタフェース部192の操作パネル部192aもしくは表示出力部154のディスプレイ部154aに提示する。この書込み失敗画面では、書込みが不成功であった旨のメッセージ(たとえば“情報書込みが失敗しました”)と、可搬性記憶媒体9を装着ポート199から取り外すべきことを指示する旨のメッセージ(たとえば“メディアを取り出して下さい”)とを表示する。
フィールドエンジニアFEは、図6(D)に示す媒体取出し画面G142もしくは図示を割愛した書込み失敗画面の指示に従って、装着ポート199から可搬性記憶媒体9を取り外す(S144)。これにより、診断対象の電子機器100についての保守管理診断が完了する。
フィールドエンジニアFEは、次の診断対象の電子機器100が存在する場合(S146−YES)、ステップS110に戻り、ステップS144で取り外した可搬性記憶媒体9を、次の診断対象の電子機器100の装着ポート199に装着して、同様の処理・操作を行なう。
一方、次の診断対象の電子機器100が存在しなければ(S146−NO)、フィールドエンジニアFEは、ステップS140で取り外した可搬性記憶媒体9に記憶した診断結果ファイルF2を保守管理サーバ5のデータ記憶制御部50で読み取り、保守管理データ解析部52により、保守診断結果情報J2(診断結果データJ2_1やログ情報J2_2)に基づいてデータ解析を行なうことで、保守情報管理に利用する。
このように、本実施形態の処理手順によれば、保守診断実施条件情報J1を記述した診断指示ファイルF1を可搬性記憶媒体9に記憶して保守管理に使用するようにしたので、保守管理サーバ5そのものを現地まで持ち運ぶ必要がないし、紙媒体で保守診断実施条件情報を持ち運ぶ必要もなく、保守診断を効率的に実行することができる。
また、可搬性記憶媒体9は、市場の何処にでも持ち運ぶことができるし、保守管理サーバ5そのものを持ち運ぶよりも、持出しが容易であるので、柔軟な電子機器保守管理システムを構築することができる。
また、共通の診断指示ファイルF1に、機種別かつ構成部品別に、保守診断実施条件情報J1を記述するようにしたので、1つの可搬性記憶媒体9を用いつつ、複数機種、複数台の電子機器100への保守管理診断に対応することができる。
加えて、保守管理診断処理後に保守診断結果情報J2を可搬性記憶媒体9に書き込んで情報収集することもできる。すなわち、保守管理診断を実行した結果を診断結果ファイルF2として可搬性記憶媒体9に保存すれば、保守管理サーバ5では、診断結果ファイルF2をその可搬性記憶媒体9から読み出して、保守管理データ解析部52にて保守管理や解析に使用することができるようになる。
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