JP2008101378A - 地熱利用融雪システム - Google Patents

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秀昭 竹崎
Masakazu Abiko
正和 吾孫子
Yoshiaki Takano
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Sekisui Chemical Co Ltd
Sekisui Chemical Hokkaido Co Ltd
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Abstract

【課題】外気より高温多湿な空気の潜熱と顕熱とを利用して融雪を効率よく行うことができ、また、埋設する管に循環経路を必要としないため設備導入コストを抑制することができ、さらに、熱源として燃料を必要としないためランニングコストを抑制することができる地熱利用融雪システムを提供する。
【解決手段】開口部が地表に臨むように地中に埋設された貯水槽30と、地中に埋設され、外気を導入するとともに該導入した外気と地中熱との間で熱交換を行わせることにより外気よりも高温の空気を生成してこれを貯水槽30内に導入する外気導入管20と、貯水槽30の開口部に設けられ、外気導入管20から導入された高温の空気が貯水槽30内で加湿されてなる高温多湿の融雪用空気を地表へ排出させる一方、地表からの融雪水51の流入を許容する蓋材40と、を備えたことを特徴とするものである。
【選択図】 図1

Description

本発明は、外気を地中熱と熱交換させた後、加湿して外気より高温多湿の融雪用空気を生成し、その空気を地中から路面上に排出させることで路面上の積雪を融かす地熱利用融雪システムに関する。
従来より、冬場の道路や歩道上の積雪を融かす方法としては、外気よりも温度の高い地下水を汲み上げて散水することで道路上の積雪を融かす融雪方法や、塩化カルシウムなどの融雪剤を道路上に散布して積雪を融かす融雪方法が一般的に行われている。
しかしながら、地下水を利用する融雪方法は、地下水の汲み上げにより地中が空洞化を起こすため、地盤沈下が発生する虞がある。一方、融雪剤を使用した融雪方法は、融雪剤が塩化物からなるため、融雪剤が車体に付着した場合に車体の腐食の原因となったり、融雪剤が河川や土壌へと流出して塩害などの汚染の原因となったりして問題となっている。
そこで、地下水や融雪剤を使用しないで、道路などの積雪を融かす融雪装置が特許文献1に提案されている。この融雪装置は、熱交換器によって貯水池内の水から熱を採取し、その熱をヒートポンプで高温化し不凍液に伝達させた後、路面下に敷設された放熱管内に高温の不凍液を循環させて、路面上の積雪を顕熱によって融かすといったものである。
しかしながら、この融雪装置を用いて広範囲の積雪を融かすには、放熱管から放熱される熱の届く範囲が狭いため、放熱管を網の目のように多量に路面下に敷設しなければならず、さらに、放熱管の管路は循環式であるため、不凍液の戻り経路の管も必要となり、放熱管の敷設に多大なコストがかかってしまうという問題がある。
一方、路面の下に管を埋設することなく積雪を融かす融雪装置が特許文献2に提案されている。この融雪装置は、ガスや灯油などを熱源としてボイラーによって水を加熱することで高温多湿の空気を生成させ、この高温多湿の空気と熱源から発生する排気ガスとを混合させた混合ガスを積雪に放出させて融雪するというものである。そして、この融雪装置は、高温多湿の混合ガスを積雪に放出することによって、混合ガス内の水分を雪表面に結露させ、その結露時に発生する潜熱によって積雪を融かすというものであり、これは顕熱を利用した融雪装置の数倍の融雪効果を有する。
特開2003−301406号公報 特公平7−81252号公報
しかしながら、上記特許文献2に記載された融雪装置は、近年価格高騰している化石燃料などを熱源として使用しているため、ランニングコストが多大となるだけでなく、二酸化炭素を多量に排出することから、環境に与える影響の面でも問題があった。
また、一般的に、燃料を燃焼させるボイラーなどにおいては、各部材がステンレス鋼などの鉄系の材質でできている場合が多いため、高温状態となっている上記部材に水が付着すると腐食し易く、耐用年数が短くなるという問題があった。
本発明は係る実情に鑑みてなされたもので、その目的は、外気より高温多湿な空気の潜熱と顕熱とを利用して融雪を効率よく行うことができ、また、埋設する管に循環経路を必要としないため設備導入コストを抑制することができ、さらに、熱源として燃料を必要としないためランニングコストを抑制することができる地熱利用融雪システムを提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明の地熱利用融雪システムは、開口部が地表に臨むように地中に埋設された貯水槽と、地中に埋設され、外気を導入するとともに該導入した外気と地中熱との間で熱交換を行わせることにより外気よりも高温の空気を生成してこれを該貯水槽内に導入する外気導入管と、前記貯水槽の開口部に設けられ、前記外気導入管から導入された高温の空気が前記貯水槽内で加湿されてなる高温多湿の融雪用空気を地表へ排出させる一方、地表からの融雪水の流入を許容する蓋材と、を備えたことを特徴とする。
このような本発明によると、外気よりも高温多湿な融雪用空気を蓋材上の積雪に対して排出させることができるので、融雪用空気の顕熱による融雪効果だけでなく、融雪用空気中の水分が雪表面に結露した際に発生する潜熱により、効率的に融雪することができる。
また、不凍液を循環させた放熱管を埋設して放熱管の放熱により融雪する融雪装置とは異なり、網の目のように多量の管を埋設する必要がなく、また、外気導入管を循環させる必要がないため、設備導入コストを抑制することができる。
また、熱源として化石燃料やガスを使用せず、地中熱を利用するため、ランニングコストを抑制することができ、また、設備の耐用年数も向上させることができる。
さらに、融雪によって発生する融雪水は、蓋材を介して貯水槽内へと流入し貯水されていくため、融雪水が地表に留まり蒸発して周辺の空気や地表の潜熱を奪い、融雪効率が悪くなるといったことがなく、また、外気導入管から貯水槽内に導入される高温の空気を加湿するために、貯水槽内に貯水された融雪水を利用することができる。
また、前記外気導入管には、熱交換された高温の空気を前記貯水槽内に排出させる排出口が設けられ、該排出口が、前記貯水槽内の水面に向けられたものであってもよい。
この場合、排出口によって熱交換された高温の空気が貯水槽内の水面に向かって排出されるため、この高温の空気を貯水槽内に普通に排出するより加湿されやすく、融雪用空気の湿度をより高湿にすることができる。
したがって、この融雪用空気が蓋材を介して排出された際に、蓋材上の積雪に対する融雪効率を向上させることができる。
また、前記貯水槽には貯水量が所定量以上となると余剰な水を排出する排水手段が設けられるとともに、該排水手段には排水トラップが設けられたものであってもよい。
この場合、排水手段が設けられることで、地表から融雪水が流入して貯水槽内が所定量以上となることがなく、貯水槽から外気導入管内に水が浸入する虞がない。したがって、外気導入管内が水によって詰まってしまい貯水槽内に高温の空気を導入できなくなったり、外気導入管内にカビが発生してメンテナンスの必要が生じたりするといったことがない。
また、排水手段には排水トラップが設けられているので、融雪用空気が排水手段へと流出するのを防止することができ、融雪用空気は確実に地表へと排出されるため、融雪効率が悪くなるといったことがなく、また、排水手段に連結された下水管などから悪臭が逆流するといった虞もない。
また、前記外気導入管は、前記熱交換を行う部分が硬質塩化ビニル樹脂からなり、その外周面には所定間隔を隔てて複数の環状リブが形成されたものであってもよい。
この場合、外気導入管は、熱交換を行う部分が硬質塩化ビニル樹脂からなり、その外周面に所定間隔を隔てて複数の環状リブが形成されたものであるから、通常の硬質塩化ビニル製の円筒管よりも扁平強度を著しく高くすることができる。
そのため、本発明の外気導入管の熱交換を行う部分は、通常の円筒管よりも高い扁平強度とした状態で、環状リブのない薄肉部分の肉厚を通常の円筒管の1/2から1/4程度まで薄くすることができる。
したがって、外気導入管の熱交換を行う部分における薄肉部分を上記の範囲の肉厚とした場合には、通常の円筒管よりも、外気導入管の熱交換を行う部分内の空気と地中熱との熱交換率を著しく高くさせることができ、また、外気導入管を大幅に軽量化することができるので、運搬および施工現場での取り扱いが容易となり、この空調システムを導入するための初期費用を抑えることができる。
また、前記熱交換を行う部分は、熱伝導率が0.5〜3.0W/m・Kであって、且つ、熱放射率が0.8以上であることが好ましい。
この場合、外気導入管の熱交換を行う部分の熱伝導率は、通常の硬質塩化ビニル樹脂の熱伝導率0.18W/m・Kと比較して、土の熱伝導率0.7〜1.6W/m・Kに近い値であるから、外気導入管の熱交換を行う部分内の空気と地中熱との熱交換が円滑に行われ、熱交換率が向上する。ここで、この外気導入管の熱交換を行う部分の熱伝導率の下限値を0.5W/m・Kとしたのは、熱伝導率がこの値未満であると、外気導入管の熱交換を行う部分がその内部の空気と地中熱との熱交換を阻害してしまう虞があるからである。また、外気導入管の熱交換を行う部分の熱伝導率の上限値を3.0W/m・Kとしたのは、熱伝導率がこの値を超えると、硬質塩化ビニル樹脂の耐食性や成形性などの優れた機能を著しく低下させてしまう虞があるからである。
また、外気導入管の熱交換を行う部分は、熱放射率が0.8以上であるため、熱放射率0.8未満である通常の硬質塩化ビニル管とは異なり、外気導入管の熱交換を行う部分自体に留まる熱量を減少でき、外気導入管の熱交換を行う部分内の空気と地中熱との熱交換率を向上させることができる。
本発明の地熱利用融雪システムは、外気より高温多湿な空気の潜熱と顕熱とを利用して融雪を効率よく行うことができ、また、埋設する管に循環経路を必要としないため設備導入コストを抑制することができ、さらに、熱源として燃料を必要としないためランニングコストを抑制することができるといった効果を奏する。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態における地熱利用融雪システムを示す概略図である。
本実施の形態における地熱利用融雪システム10は、貯水槽30と、外気導入管20と、蓋材40とを備えている。また、図1に示す地熱利用融雪システム10には、外気導入管20内に外気を導入するための送風手段60が設けられている。
上記貯水槽30は、後述する外気導入管20から導入された高温の空気を加湿するためのものである。貯水槽30は、開口部が地表に臨むように地中に埋設されており、内部に水33が貯水されている。
貯水槽30としては、水漏れを生じなければ特に限定するものではなく、例えば、一般的なコンクリートや高熱伝導コンクリートを用いたもの、地面を開削して貯水槽30を形成しその表面を遮水シートで覆ったもの、透水性の低い土壌の際には地面を開削して貯水槽30を形成したものなどがあげられる。
なお、貯水槽30の壁面及び底面は、貯水槽30内の水33が壁面及び底面を介して地中熱と熱交換することができるような材質とすることが好ましく、これにより、貯水槽30内の水33は外気温度と比べて比較的高い温度を有することができる。
例えば、乾球温度5℃相対湿度30%の外気を外気導入管20内で熱交換させて、乾球温度15℃相対湿度15%の空気を生成した場合、この空気を貯水槽30内に導入すると理論的には乾球温度13℃相対湿度25%程度の空気が生成されるはずであり、この空気の比エンタルピーは18kJ/kg(DA)を有することとなる。しかしながら、実際は、貯水槽30内の水33が地中熱と熱交換を行い水33の温度が比較的高くなっているため、貯水槽30内の空気は乾球温度13℃でありながら相対湿度40%を上回る値となっており、より高湿度の融雪用空気を生成することができた。そして、この融雪用空気の比エンタルピーは22kJ/kg(DA)と、理論値よりも4kJ/kg(DA)も上昇させることができ、潜熱による融雪効果も向上させることができる。ここで、比エンタルピーとは、0℃の乾き空気「ドライエア(DA)」を基準として、乾き空気1kg(DA)当たりの熱量「kJ/kg(DA)」を表したものをいう。
貯水槽30の貯水量は、特に限定するものではないが、底面から30mm以上とするのが好ましい。この貯水量が30mm未満であると、貯水槽30の面積が広い場合に水33が貯水槽30内に行き渡らないことが生じたり、本システム10を運転休止させた場合に貯水槽30内の水33が凍結したりする虞がある。
また、貯水槽30には貯水量が所定量以上となると余剰な水33を排出する排水手段31が設けられるとともに、この排水手段31には排水トラップ32が設けられたものであってもよい。
この場合、排水手段31が設けられることで、地表から融雪水51が流入して貯水槽30内が所定量以上となることがなく、貯水槽30から外気導入管20内に水33が浸入する虞がない。したがって、外気導入管20内が水によって詰まってしまい貯水槽30内に高温の空気を導入できなくなったり、外気導入管20内にカビが発生してメンテナンスの必要が生じたりするといったことがない。
また、排水手段31には排水トラップ32が設けられているので、融雪用空気が排水手段31へと流出するのを防止することができ、融雪用空気は確実に地表へと排出されるため、融雪効率が悪くなるといったことがなく、また、排水手段31に連結された下水管などから悪臭が逆流するといった虞もない。
上記外気導入管20は、地中に埋設され、外気を導入するとともに該導入した外気と地中熱との間で熱交換を行わせることにより外気よりも高温の空気を生成してこれを貯水槽30内に導入するためのものである。外気導入管20は、図1に示すように、外気を所定深さまで導入する導入部21、この導入部21から導入された外気と地中熱との熱交換を行う熱交換部22、及び、熱交換部22により熱交換された高温の空気を貯水槽30内に排出する排出部23を備えている。
上記導入部21は、後述する送風手段60により地上の一端から外気が導入され、また、他端が熱交換部22に連結されている。
上記熱交換部22は、一端が導入部21に連結され、他端が排出部23に連結されている。
熱交換部22は、硬質塩化ビニル樹脂を用いている。これは、硬質塩化ビニル樹脂が、酸やアルカリなど様々な環境下において良好な耐食性を有しており、また、材料コストおよび製造コストが比較的安価であるためである。
また、熱交換部22の形状は、図2に示すように、外周面に所定間隔を隔てて複数の環状リブ22aが形成されたものが用いられる。これにより、本実施の形態の熱交換部22は、通常の円筒管に比べ扁平強度を飛躍的に向上させることができ、結果として、本実施の形態の熱交換部22は通常の円筒管より高い扁平強度とした状態で、環状リブ22aのない薄肉部分22bの肉厚を通常の円筒管の1/2〜1/4とすることができる。したがって、熱交換部22の薄肉部分22bを上記の範囲の肉厚とした場合には、通常の円筒管よりも、熱交換部22内の空気と地中熱との熱交換率を著しく高くすることができ、また、熱交換部22を大幅に軽量化(例えば、60%前後くらいに)することができるので、運搬および施工現場での取り扱いを容易に行える。
また、このように熱交換部22は扁平強度が高いため、地面を開削して熱交換部22を地中に埋設する際の埋め戻し土に制約がない。したがって、開削した際に発生した土を再び埋め戻しに使用することができ、軽い砂などを新たに用意する必要がないため、工事の施工コストを削減することができる。
上記熱交換部22の環状リブ22a同士の間隔は、熱交換部22の内径に対して8〜15%の長さとなるように形成するとよく、また、環状リブ22aの厚みは、3〜7mm程度とするとよく、さらに、環状リブ22aの高さは、熱交換部22の内径に対して2〜10%程度となるように形成するとよい。熱交換部22の環状リブ22aをこのような構造とすることにより、熱交換部22は、地中に埋設するには十分な扁平強度が得られ、且つ、熱交換に最も寄与する熱交換部22の薄肉部分22bの領域を十分に確保することができる。
また、熱交換部22は、熱伝導率が0.5〜3.0W/m・Kであって、且つ、熱放射率が0.8以上であることが好ましい。
この場合、熱交換部22の熱伝導率は、通常の硬質塩化ビニル樹脂の熱伝導率0.18W/m・Kと比較して、土の熱伝導率0.7〜1.6W/m・Kに近い値であるから、熱交換部22内の空気と地中熱との熱交換が円滑に行われ、熱交換率が向上する。ここで、この熱交換部22の熱伝導率の下限値を0.5W/m・Kとしたのは、熱伝導率がこの値未満であると、熱交換部22がその内部の空気と地中熱との熱交換を阻害してしまう虞があるからである。また、熱交換部22の熱伝導率の上限値を3.0W/m・Kとしたのは、熱伝導率がこの値を超えると、硬質塩化ビニル樹脂の耐食性や成形性などの優れた機能を著しく低下させてしまう虞があるからである。
また、熱交換部22は、熱放射率が0.8以上であるため、熱放射率0.8未満である通常の硬質塩化ビニル管とは異なり、熱交換部22自体に留まる熱量を減少でき、熱交換部22内の空気と地中熱との熱交換率を向上させることができる。
上記したように、熱交換部22の熱伝導率を0.5〜3.0W/m・Kとし、且つ、熱放射率を0.8以上とするためには、硬質塩化ビニル樹脂に熱伝導率の高い材料および熱放射率の高い材料を含有させるとよい。
上記熱交換部22の熱伝導率を向上させるために含有させる材料としては、特に限定するものではなく、例えば、鉄、すず、亜鉛、金、銅、銀、クロム、チタン、マグネシウムなどの金属やそれらの酸化物、アルミナや窒化珪素などの無機材料、および、カーボングラファイトなどをそれぞれ単体でまたは複数を混合したものなどがあげられる。
この熱伝導率を上げる含有物の形状としては、特に限定するものではないが、例えば、粒状のものや針状のものなどがあげられる。
上記粒状の含有物を硬質塩化ビニル樹脂内に含有させた場合、この含有物は硬質塩化ビニル樹脂中で海島構造となってしまい、それぞれの含有物が硬質塩化ビニル樹脂中で分断された状態となることが多い。その場合、含有物を介した熱の伝導が不十分となるため、熱伝導率の高い材料を含有させても熱交換部22の熱伝導率を向上させる効果が少なくなってしまう。
このような場合には、硬質塩化ビニル樹脂内に、粒状の材料と針状の材料とを混在させて含有させるのが好ましい。これにより、粒状の含有物が硬質塩化ビニル樹脂中に海島構造となって含有物同士が互いに分断された状態となっていても、針状の含有物を混在させることで海島構造の粒状の含有物を針状の含有物がそれぞれ繋げることとなり、含有物の含有量をそれほど多くしなくても熱交換部22の熱伝導率を向上させることができる。
この熱伝導率を上げる含有物の硬質塩化ビニル樹脂への含有量としては、上記熱伝導率を達成するためには1〜50wt%程度必要であるが、熱交換部22の耐食性や扁平強度などの性能および成形性などを考慮すると3〜33wt%とするとよく、さらに3〜20wt%の範囲とするのが好ましい。
また、上記熱交換部22の熱放射率を向上させるために含有させる材料としては、特に限定するものではなく、例えば、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化マンガン、珪酸ナトリウム、炭化ケイ素、カーボンブラック、酸化マグネシウム、および、天然の蛇紋石などがあげられる。
ここで、上記した熱放射率を向上させる材料のうち、酸化マグネシウム以外は硬質塩化ビニル樹脂に含有させても上記した熱伝導率を向上させることができず、さらには熱伝導率を低下させてしまうものもあるため、熱放射率を向上させる材料と熱伝導率を向上させる材料との含有量を調整することが重要である。
この放射率を上げる含有物の形状としては、特に限定するものではなく、例えば、粒状のものや針状のものなどがあげられる。
この放射率を上げる含有物の硬質塩化ビニル樹脂への含有量は、少なすぎると放射率を上昇させる効果が少なく、多すぎると成形性が悪くなるため、1〜33wt%程度とするのが好ましく、さらには3〜20wt%程度とするのが好ましい。
また、硬質塩化ビニル樹脂に各種粘度調整剤や界面活性剤を添加して成形性を向上させてもよい。
さらに、硬質塩化ビニル樹脂に付加的機能を有する材料を添加してもよく、このような材料としては、例えば、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、耐光性改良剤、難燃剤、結露防止剤、充填剤、着色剤、補強剤、および、繊維などがあげられる。
上記熱交換部22の成形方法としては、特に限定するものではなく、例えば、押出成形によって硬質塩化ビニル樹脂の円筒体を成形した後、この樹脂が凝固する前に円筒体の外周面にコルゲートマシンで環状リブ22aを成形する方法や、中空成形、回転成形、射出成形などによって熱交換部22の最終形状を一気に成形する方法などがあげられる。
熱交換部22の内径としては、特に限定するものではなく、例えば、100〜400mmとするのが好ましい。この熱交換部22の内径が100mm以下であった場合、後述する送風手段60によって熱交換部22内の風速を制御する場合に、送風手段60の送風量を僅かに調節しただけで、熱交換部22内の風速が大きく変化してしまうため、熱交換部22内の風速の制御が難しくなってしまう。また、この熱交換部22の内径が400mm以上であった場合、熱交換部22の重量が重くなってしまうため、運搬および施工現場での取り扱いが容易でなくなってしまい、施工コストが高額になってしまう。
上記排出部23は、一端が熱交換部22に連結され、他端が貯水槽30内に設置されており、また、この他端側には、熱交換された高温の空気を貯水槽30内に排出させる排出口24が設けられている。
上記排出口24としては、特に限定するものではなく、例えば、図3に示すように側方にのみ空気が排出されるようなもの、図4に示すように下方にのみ空気が排出されるようなもの、及び、図5に示すように側方と下方との両方に空気が排出されるようなものなどがあげられる。
上記の図4及び図5に示すような排出口24は、下方に空気が排出されるようになっており、排出口24から排出された高温の空気が貯水槽30内の水面に向けられている。
この場合、排出口24によって熱交換された高温の空気が貯水槽30内の水面に向かって排出されるため、この高温の空気を貯水槽30内に普通に排出するより加湿されやすく、融雪用空気の湿度をより高湿にすることができる。したがって、この融雪用空気が後述する蓋材40を介して排出された際に、蓋材40上の雪50に対する融雪効率を向上させることができる。
また、上記の図3及び図4に示すような排出口24は、側方に空気が排出されるようになっているため、貯水槽30が大きい場合であっても、排出された空気を貯水槽30内全域に行き渡らせることができる。
さらに、排出口24は、上方に向かって空気を排出するような構造を避けることが好ましい。排出口24が上方に向かって空気を排出する構造であると、外気導入管20内で高温となった空気が貯水槽30内で加湿される間もなく、蓋材40を介して地表に排出されてしまうため、この地表に排出される空気は高温で低湿となってしまい、潜熱による融雪効果が得られず顕熱による融雪しかできなくなってしまうためである。
なお、排出部23には、貯水槽30から外気導入管20へと空気や水が逆流するのを防ぐための逆止弁25が設けられるとよく(例えば、図3、4及び5)、これにより、外気導入管20内に水、ほこり及び虫などが侵入する虞がなくなり、外気導入管20内にカビや汚れなどが発生するといったことがない。
上記蓋材40は、道路や歩道などの表面層を構成するものである。蓋材40は、貯水槽30の開口に設けられ、貯水槽30内で生成された高温多湿の融雪用空気を地表へ排出させることができ、また、地表からの融雪水51の流入を許容することができる。これにより、外気よりも高温多湿な融雪用空気を蓋材40上の雪50に対して排出させることができるので、融雪用空気の顕熱による融雪効果だけでなく、融雪用空気中の水分が雪50表面に結露した際に発生する潜熱により、効率的に融雪することができる。
また、融雪によって発生する融雪水51は、蓋材40を介して貯水槽30内へと流入し貯水されていくため、融雪水51が地表に留まり蒸発して周辺の空気や地表の潜熱を奪い、融雪効率が悪くなるといったことがなく、また、外気導入管20から貯水槽30内に導入される高温の空気を加湿するために、貯水槽30内に貯水された融雪水51を利用することができる。
蓋材40としては、貯水槽30内の融雪用空気を地表へ排出させることができ、また、地表からの融雪水51の流入を許容することができるものであれば、特に限定するものではなく、例えば、透水性タイル、透水性アスファルト、及び、透水性コンクリートなどがあげられる。
なお、融雪する面積が広範囲に及び貯水槽30の面積が広い場合、図1に示すように1枚の蓋材40を端部のみで支える構造では、蓋材40の強度を確保するのが困難であるため、蓋材40を端部以外の部分でも支えることが可能な構造とするとよい。
このように蓋材40を端部以外の部分でも支えることが可能な構造としては、特に限定するものではなく、例えば、貯水槽30内に複数の支柱を設置して蓋材40を支える構造や、図6に示すような複数の細孔が開口された天板に複数の脚が設けられた蓋材載置部材41を貯水槽30内に並べその上から蓋材40を設置する構造などがあげられる(図7参照)。
また、上記したように貯水槽30の面積が広い場合、1枚の蓋材40のみを用いる構造とすると、蓋材40が大きく重すぎて、蓋材40の運搬及び設置の作業が煩瑣になることから、図7に示すように、複数枚の蓋材40を用いるとよい。
上記送風手段60は、外気導入管20内に外気を導入するためのものである。送風手段60としては、特に限定するものではなく、例えば、回転数を制御することができるファンなどを用いるのが好ましい。このようなファンを用いることで、外気導入管20の熱交換部22内の風速をファンの回転数を制御することによって行えるため、熱交換部22内で空気の流速が速すぎて空気と地中熱との熱交換が不十分になるといったことがない。また、上記したような内径が100〜400mmの範囲の熱交換部22を用いた場合、送風手段によって熱交換部22内の空気の流速を12m/s以下となるように制御すると、熱伝交換部22内の空気と地中熱との熱交換を良好に行わせることができる。
次に、本実施の形態の地熱利用融雪システム10によって蓋材40上の積雪50を融かす方法について図1を用いて説明する。
まず、送風手段60によって外気を外気導入管20の導入部21内へと導入し、その外気を導入部21に連結された熱交換部22内に到達させる。この外気は熱交換部22内の導入部21側から排出部23側に移動する間に、熱交換部22を介して地中熱と熱交換を行い、高温で低湿な空気となる。この高温低湿な空気は、送風手段60の送風によって熱交換部22に連結された排出部23へと移動し、排出部23に設けられた排出口24から貯水槽30内へと排出され、貯水槽30内の高湿な空気と混合されて外気よりも高温多湿な融雪用空気となる。
この高温多湿な融雪用空気は、外気導入管20の排出口24からの送風によって、貯水槽30の開口に設けられた蓋材40を介して地表に排出され、蓋材40上の積雪50と接触することとなる。そして、高温多湿の融雪用空気内の水分が、雪50の表面で結露して、その際に生じる潜熱により雪50を融かしていき、さらに、外気よりも高温の融雪用空気は、その顕熱によっても雪50を融かしていくこととなる。
最後に、融雪によって生じた融雪水51は、蓋材40を介して貯水槽30内に流入し、貯水槽30内の空気の加湿に使用され、余剰な水33は排水手段31により貯水槽30外に排出される。
次に、本実施の形態の地熱利用融雪システム10(実施例)と従来の地熱利用融雪システム10(比較例)とで比較実験を行った結果について説明する。
ここで、全ての実施例および比較例の地熱利用融雪システム10における共通する構造は、地上に配置した送風手段60の直下から外気導入管20の導入部21を2mの深さまで垂直に埋設し、その導入部21の下端に長さ50mの熱交換部22の一端を接続して地中に埋設し、その熱交換部22の他端に排出部23の下端を接続して垂直に貯水槽30内に引き込み、さらに蓋材40を貯水槽30の開口に設けた(図7参照)。
また、全ての実施例および比較例において、外気導入管20の熱交換部22は、内径250mmのものを用い、また、導入部21及び排出部23には、汎用VU管(硬質塩化ビニル薄肉管)を用い、さらに、送風手段60は、送風量を700m3/hとした。
また、全ての実施例および比較例において、貯水槽30は、底面が1000mm×3000mmで深さが310mmとされており、十分に底面積が広いため、蓋材載置部材41を用いてその上に複数枚の蓋材40を載置させることし、詳しくは、天板が1000mm×1000mmで高さが250mmの蓋材載置部材41(図6参照)を貯水槽30内に3つ並べ、その上に500mm角で厚みが60mmの蓋材40を12枚載置させた(図7参照)。
また、全ての実施例および比較例2において貯水槽30内の貯水量は、水位が40mmとなるように排水手段31を設けている。
また、実施例2及び3で用いられた熱交換部22は、硬質塩化ビニル樹脂からなり、その外周面に所定間隔を隔てて複数の環状リブ22aが形成されたものであり、実施例1、比較例1及び2で用いられた熱交換部22は、汎用VU管である。また、実施例3で用いられた熱交換部22は、硬質塩化ビニル樹脂中に平均粒径12μmのアルミナを10wt%、長さ300μmのカーボン短繊維を3wt%、および、酸化マグネシウムを5wt%含有させて、熱伝導率0.6W/m・Kおよび熱放射率0.82とした熱交換部22を用いた。
また、比較例1の地熱利用融雪システム10は、実施例1の地熱利用融雪システム10における貯水槽30内の水33を予め空にしておいたものであり、また、比較例2の地熱利用融雪システム10は、実施例1の熱利用融雪システム10に排水トラップ32を設けなかったものである。
本実験はこれらの実施例および比較例の地熱利用融雪システム10を用いて、冬場に蓋材40上の積雪50を融かすことを目的として行った。また、本実験における評価項目としては、外気の乾球温度及び相対湿度、貯水槽30内の乾球温度及び相対湿度(実験開始から60分経過後の乾球温度及び相対湿度)、並びに、蓋材40上の5cmの雪50(密度0.2g/cm3、温度−5℃)を融雪するのに要した時間(以下、融雪時間という)を評価した。
表1に本実験における実施例および比較例の評価結果を示す。
Figure 2008101378
今回の実験において、全ての実施例の地熱利用融雪システム10は、比較例1及び2の地熱利用融雪システム10と比較して、融雪時間が短く、実施例の地熱利用融雪システム10の融雪効率が良好であることが確認された。
また、比較例1の地熱利用融雪システム10は、貯水槽30内の水33が予め空となっていたため、最初は、外気導入管20から貯水槽30内に導入された高温低湿の空気が蓋材40を介して地表に排出され、顕熱のみで雪50を融かしていた。しかし、その際に生じた融雪水51が貯水槽30内に流下して貯水された後は、潜熱と顕熱との両方で融雪することができ、実施例の地熱利用融雪システム10と比較して融雪時間が長くなったが、融雪は行えるという結果となった。
また、比較例2の地熱利用融雪システム10は、排水トラップ32が設けられていなかったため、貯水槽30内の融雪用空気は雪50で覆われた蓋材40の方には流れず、排水手段31へと流出してしまい地表の雪50を融かすことができなかった。
また、実施例1、実施例2及び実施例3の地熱利用融雪システム10を比較した場合、外気導入管20の熱交換部22に環状リブ22aを形成した実施例2及び実施例3の方が融雪時間を短くすることでき、さらに、熱交換部22の熱伝導率と熱放射率とを改善した実施例3の方が融雪時間を短くすることができた。
本発明における地熱利用融雪システムを示す概略図である。 本発明における外気導入管の熱交換を行う部分(熱交換部)を示す半断面図である。 本発明における外気導入管の排出口を示す概略図である。 本発明における外気導入管の排出口の他の例を示す概略図である。 本発明における外気導入管の排出口のさらに他の例を示す概略図である。 本発明における蓋材載置部材を示す斜視図である。 本発明における地熱利用空調システムの他の例を示す概略図である。
符号の説明
10 地熱利用融雪システム
20 外気導入管
21 導入部
22 熱交換部
22a 環状リブ
22b 薄肉部分
23 排出部
24 排出口
30 貯水槽
31 排水手段
32 排水トラップ
33 水
40 蓋材
50 雪

Claims (5)

  1. 開口部が地表に臨むように地中に埋設された貯水槽と、
    地中に埋設され、外気を導入するとともに該導入した外気と地中熱との間で熱交換を行わせることにより外気よりも高温の空気を生成してこれを該貯水槽内に導入する外気導入管と、
    前記貯水槽の開口部に設けられ、前記外気導入管から導入された高温の空気が前記貯水槽内で加湿されてなる高温多湿の融雪用空気を地表へ排出させる一方、地表からの融雪水の流入を許容する蓋材と、
    を備えたことを特徴とする地熱利用融雪システム。
  2. 前記外気導入管には、熱交換された高温の空気を前記貯水槽内に排出させる排出口が設けられ、
    該排出口が、前記貯水槽内の水面に向けられたことを特徴とする請求項1に記載の地熱利用融雪システム。
  3. 前記貯水槽には貯水量が所定量以上となると余剰な水を排出する排水手段が設けられるとともに、該排水手段には排水トラップが設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の地熱利用融雪システム。
  4. 前記外気導入管は、前記熱交換を行う部分が硬質塩化ビニル樹脂からなり、その外周面には所定間隔を隔てて複数の環状リブが形成されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の地熱利用融雪システム。
  5. 前記熱交換を行う部分は、熱伝導率が0.5〜3.0W/m・Kであって、且つ、熱放射率が0.8以上であることを特徴とする請求項4に記載の地熱利用融雪システム。
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