JP2004177012A - 熱交換用鋼管杭 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】杭本体外径の1.5〜3倍の外径を有する翼幅の杭ねじ込み用螺旋翼を、杭本体の外周面に1巻き以上突設し、かつ杭の下端に少なくとも掘削爪を備えた鋼管杭であって、杭中空部内に熱交換用配管を有することを特徴とする地熱利用用の熱交換用鋼管杭。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、地中の熱を利用して、空調や輻射冷暖房および給湯等に利用する熱交換用鋼管杭に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
地中の温度は一年中にわたって温度変化が少ない。そのため、夏季は気温に対して地中の温度が低く、冬季は気温に対して地中の温度が高い。そこで、夏季もしくは冬季において杭を利用し、地中と地上との間で熱交換を行うことにより、空調や輻射冷暖房の省エネルギーを実現する地中熱利用装置が提案されている(特開平1−123951号公報)。
しかしながら、特開平1−123951号公報の場合、杭と地中との熱交換の効率を上げることは、記述されておらず、地中の熱を杭に伝えることに関しては、効率が悪いものであった。
【0003】
また、特開平8−184063号公報に、基礎杭の外壁から外側に露出する伝熱体が設けられ、この伝熱体の熱伝導率は基礎杭の熱伝導率よりも大きいことを特徴とする地中蓄熱装置について提案されている。しかしながら、前記特開平8−184063号公報の場合、伝熱体として熱伝導率が違うものを施工する必要があるため、コストが高くなり、杭と伝熱体との接合部の強度も弱いものとなる。
さらに、特開平8−184063号公報には杭の地中への施工に関しては、何も記述されておらず、施工性は考慮されていない。
【0004】
【特許文献1】
特開平1−123951号公報
【特許文献2】
特開平8−184063号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、地中の熱をより効率的に杭内部に伝えることができ、かつ施工性に優れた熱交換用鋼管杭を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、杭本体の外径の1.5〜3倍の外径を有する翼幅の大きな杭ねじ込み用の螺旋翼を、杭の外周面に1巻き以上突設した鋼管杭を利用することにより、螺旋翼が土壌部分との接触面積を広げ、かつ回転埋設方式で施工することにより、杭周囲の土壌を押し広げ、杭周囲の土壌の密度が上がり、熱伝導率が高くなるため、土壌と杭の熱交換の効率を上げることができ、かつ施工性も優れたものになることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0007】
即ち、本発明は、下記の通りである。
1.杭本体外径の1.5〜3倍の外径を有する翼幅の杭ねじ込み用螺旋翼を、杭本体の外周面に1巻き以上突設し、かつ杭の下端に少なくとも掘削爪を備えた鋼管杭であって、杭中空部内に熱交換用配管を有することを特徴とする地熱利用用の熱交換用鋼管杭。
2.前記1.に記載の熱交換用鋼管杭が組み込まれたことを特徴とする地中熱利用装置。
3.杭中空部内に設けられた熱交換用配管の形状が蛇腹状であることを特徴とする2.記載の地中熱利用装置。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき、特にその好ましい態様を中心に、説明する。
本発明の熱交換用鋼管杭は、螺旋翼を有する杭、杭の内部に設置した熱交換用の配管から基本的に構成される。
【0009】
本発明に用いられる熱交換用鋼管杭は、杭本体の外径の1.5〜3倍の外径を有する翼幅の大きな杭ねじ込み用の螺旋翼を、杭の外周面に1箇所以上突設した鋼管杭である。杭本体の外径については、敷地の状態、使用態様に応じ、任意に決めれば良いが、好ましい範囲としては、100mm〜300mmである。螺旋翼の径は、1.5倍以上3倍以下である。1.5倍未満の場合、放熱(吸熱)面積が小さく、効率をあげることが難しい。また、3倍を超えてしまうと螺旋翼に発生する曲げ応力が大きくなり、螺旋翼の厚みを厚くする必要が生じる。さらに、螺旋翼と鋼管杭の本体との溶接部分の性能を確保するために、充分な溶接を行うことが必要となり高価になる。また、この螺旋翼のピッチは、螺旋翼の外径のほぼ4分の1の長さが好ましい。杭長に関しては、使用態様に応じ任意に決めれば良いが、好ましい範囲としては、3m以上40m以下である。螺旋翼の厚みは6〜20mmが好ましい。螺旋翼は杭の外周面の同じ高さに1箇所突設する場合には、ほぼ1巻きにわたり取り付けることが好ましい。また、同じ高さに複数枚突設する場合には、4分の1巻き以上半巻き以下が好ましい。また、螺旋翼を複数枚取り付ける場合には、螺旋方向を同じにする必要があり、同じ高さに取り付ける場合には、ほぼ等間隔に固定されていることが好ましい。
【0010】
螺旋翼を取り付ける位置は、杭本体の下端部および下端部近傍の外周面に少なくとも1箇所突設されているのが好ましい。また、複数の螺旋翼を違う高さに取り付ける場合には、螺旋翼の高さ方向の相対的な位置は、螺旋翼の上端、下端部からそれぞれ5cm以上離すことが好ましい。
掘削爪、および掘削刃は鋼製で、鋼管杭の下端に取り付けられている。杭本体の外径が145mmよりも小さい場合には、掘削刃を取り付けなくてもよい。
【0011】
熱交換用杭の先端は閉塞されているか、もしくは杭の途中で障壁により杭内部が区切られていることが好ましい。この場合、杭を埋設前に、閉塞もしくは杭内部を区切ってあっても良いし、杭埋設後に、閉塞もしくは杭内部を区切っても構わない。内部を区切る場合、その上部の空間と下部の空間は、連通していないことが好ましい。杭を閉塞する方法としては、蓋等を杭の先端、杭の途中に溶接する方法、杭埋設後にセメント、接着剤等を杭の内部から杭の先端に落としこみ、閉塞する方法等が挙げられる。杭の途中で障壁により杭内部を区切る場合には、杭の継ぎ手で蓋等を付けると手間が省けてよい。
【0012】
杭の施工方法は、残土の発生がない回転埋設方式で行うことが好ましい。また、回転埋設方式で施工することにより、埋設時に掘削軟化した土砂を杭側面に押し出し圧縮するため、杭周縁の土砂の密度は高くなり、熱伝導率は上がる。このため、熱交換の効率は良くなる。
杭の内部に設置する熱交換用の配管は、杭内に熱媒体を流入する送り管と杭内から熱媒体を流出する還り管を備えていれば良く、杭内の配管は、連続的につながっていても、繋がっていなくても良い。連続的に繋がっている場合、好ましくはU字状の配管になっていることが好ましい。配管の材質は、金属製、プラスチック製のものを任意に用いればよいが、好ましいものとしては、金属製では、銅管、ステンレス管、アルミ管、および鋼管が挙げられ、プラスチック製としては、架橋ポリエチレン管、ポリ塩化ビニル管、ポリプロピレン管、強化プラスチック製配管、ポリブデン管等が挙げられる。配管の径は、杭本体の内径、使用態様に合わせて選択すれば良いが、好ましい範囲は3mm以上100mm以下である。さらに好ましい範囲は5mm以上50mm以下である。また、1本の杭の内部に通す配管の本数は複数本あっても良い。
【0013】
また、杭内の配管の形状は、通常の凹凸のないもの、管壁形状が長さ方向に波型をした蛇腹パイプ(フレキシブルパイプ)、配管に放熱板(フィン)を取り付けたもの等が挙げられる。特に好ましいものは、蛇腹パイプであり、凹凸の形状が熱交換の表面積を広げ、かつ配管内の熱媒体の流れが、乱流となるため、熱交換効率が上がる。また、蛇腹パイプは巻物であるため施工現場までの運搬が簡単であり、折れ曲がり性に優れているため、杭内への出し入れ等の施工性に優れている。
【0014】
配管を通す熱媒体は、水、オイル、不凍液、空気などである。
また配管が、杭の内部空間で連通している場合には、配管を通す熱媒体と、杭の内部空間を埋める充填材は同一である必要はなく、この場合の充填材としては、水、オイル、不凍液、コンクリート、モルタル、砂、砂利、軽量気泡コンクリートの粉砕物、金属片、鋼球、ステンレス製球体等が挙げられる。
地中熱利用装置としてシステムを構築する場合、熱交換用鋼管杭の他に、循環用のポンプ、建物内の冷暖房用の配管、建物内の配管と熱交換用鋼管杭を連結するための配管等が挙げられる。
【0015】
循環用のポンプは、熱媒体を循環するのに十分な能力を備えているものであれば良い。
建物内の配管と地熱利用熱交換用鋼管杭の熱媒体を流す配管、および複数の熱交換用鋼管杭を連結する配管は、材質、配管径に関しては、使用態様に応じ任意に決めればよく、配管の周りに断熱処理を施しても良い。
建物内に配管を設置する場所としては、壁、床、天井、屋根、基礎等が挙げられる。また、この配管は、床暖房温水パネル等のパネル内に組み込まれていても構わない。
この他に、必要に応じ地中を通ってきた熱媒体を加熱するための、ボイラー、ヒートポンプ等を組み入れても構わない。
【0016】
地熱利用用の熱交換鋼管杭を地熱利用装置として使用する場合、その杭は、地盤改良のために建物の基礎の下に埋設されている基礎杭を利用しても良いし、建物の基礎の下以外の場所に、埋設されている杭を利用しても良い。基礎の下に埋設されている基礎杭を利用する場合、基礎敷設後に杭内の熱媒体を流す配管に問題が起きた場合、メンテナンスは出来なくなるが、その場合、杭内の熱媒体を流す配管と並列にして、バイパスの配管を杭の外を通して準備し、問題がおきた時には、コック等で流れを切り替えることにより、対応することが出来る。基礎の下以外の場所の例を挙げると、庭等の建物周縁の空き地、道路、駐車場、空き地等である。このような場所では、問題が起きた場合には上部から配管を引き出す等の作業を行うことにより、メンテナンスを行うことができる。
【0017】
基礎の下に埋設されている基礎杭を利用する場合には、杭上端の蓋もしくは杭本体に加工を施し、熱媒体を流す配管を杭本体の外に出し、他の杭から出た熱媒体を流す配管、建物内の配管等と連結させる必要がある。連結させるための配管は、基礎に埋設しても良いし、基礎下の土壌を通しても良いし、配管を横に出し、土壌の上を通しても良い。
以下、本発明の実施例に基づいて説明する。
【0018】
【実施例1】
図2に示すようなシステムを組み、評価実験を行った。杭は図1に示すように、螺旋翼を杭本体下端部に1枚取り付け、かつ杭の下端に掘削爪と掘削刃を備えた鋼管杭(旭化成(株)製、商標「EAZET」)を使用している。杭本体の外径は165.2mmであり、螺旋翼部の外径は350mmである。杭長は6000mmである。杭の施工は回転埋設工法により行った。この杭を2本使用し、杭内を通る配管を直列で繋げている。杭本体内の配管は、ステンレス製の連通したフレキシブル管を使用しており、配管の外径が10mmのものを1本の杭に2本通している。熱媒体は水を用いており、杭内部の空間も水で充填している。建物内の配管は床温水パネル(ノーリツ製)を利用しており、約10畳の部屋に床温水パネルを約8畳分敷設している。このときの建物内の配管の総延長距離は約80mである。建物と杭を結ぶ配管は銅管を使用し、保温材を巻いている。熱媒体の循環は、出力75Wの循環ポンプを使用している。尚、実験は東京都内で行った。
評価は、熱媒体を1週間連続で循環した後で、杭内へ流入する直前の水温と杭から流出した水温、および流量を2時間測定し、そこから、地中から得られた熱量を算出することにより行った。評価結果を表1に示す。
【0019】
【比較例1】
実施例1と同一のシステム構成で、杭のみ杭本体の外周部に突出物のない鋼管杭を用いた。評価の方法は実施例1と同じである。評価結果を表1に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
【発明の効果】
本発明により、地中の熱をより効率的に杭内部に伝えることができ、かつ施工性に優れた熱交換用鋼管杭を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】螺旋翼を有する鋼管杭の一例を示す模式図である。
【図2】地中熱利用装置のシステム構成の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
1.鋼管杭
2.螺旋翼
3.掘削爪
4.掘削刃
5.螺旋翼を有する鋼管杭
6.配管
7.建物内の配管
8.循環ポンプ
Claims (3)
- 杭本体外径の1.5〜3倍の外径を有する翼幅の杭ねじ込み用螺旋翼を、杭本体の外周面に1巻き以上突設し、かつ杭の下端に少なくとも掘削爪を備えた鋼管杭であって、杭中空部内に熱交換用配管を有することを特徴とする地熱利用用の熱交換用鋼管杭。
- 請求項1に記載の熱交換用鋼管杭が組み込まれたことを特徴とする地中熱利用装置。
- 杭中空部内に設けられた熱交換用配管の形状が蛇腹状であることを特徴とする請求項2記載の地中熱利用装置。
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