JP2008101049A - 有機無機複合組成物及び有機無機複合体並びにそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】有機無機複合組成物及び有機無機複合体において、有機合成樹脂の構造体としての耐熱性・摩擦摩耗特性を始めとする諸特性を向上させること。
【解決手段】ポリ乳酸エマルションに水を加えて均一な溶液とし(S10)、水ガラスを攪拌しながら添加し(S11)、これに硫酸を攪拌しながら加えてポリ乳酸樹脂微粒子とシリカ微粒子とを凝集させる(S12)。凝集物を濾過して水洗し、これを2回繰り返し(S13)、30℃で20時間乾燥して(S14)、有機無機複合組成物としてのポリ乳酸/シリカ複合組成物1が得られる。ポリ乳酸/シリカ複合組成物1を、回転式粉砕機で粉砕して(S15)、粉砕物10重量部に対して、ノボラック型フェノール樹脂81重量部、ヘキサミン9重量部を加えて良く混合し(S16)、混合物を加圧加熱成形することによって(S17)、有機無機複合体2としての平板の試験片が得られる。
【選択図】図1
【解決手段】ポリ乳酸エマルションに水を加えて均一な溶液とし(S10)、水ガラスを攪拌しながら添加し(S11)、これに硫酸を攪拌しながら加えてポリ乳酸樹脂微粒子とシリカ微粒子とを凝集させる(S12)。凝集物を濾過して水洗し、これを2回繰り返し(S13)、30℃で20時間乾燥して(S14)、有機無機複合組成物としてのポリ乳酸/シリカ複合組成物1が得られる。ポリ乳酸/シリカ複合組成物1を、回転式粉砕機で粉砕して(S15)、粉砕物10重量部に対して、ノボラック型フェノール樹脂81重量部、ヘキサミン9重量部を加えて良く混合し(S16)、混合物を加圧加熱成形することによって(S17)、有機無機複合体2としての平板の試験片が得られる。
【選択図】図1
Description
本発明は、熱可塑性樹脂を始めとする有機合成樹脂の諸特性を向上させるためにシリカ微粒子を微細にかつ均一に分散させた有機無機複合組成物、及びその有機無機複合組成物を微細に粉砕して有機合成樹脂と混合させてなる有機無機複合体並びにそれらの製造方法に関するものである。なお、本明細書及び特許請求の範囲、要約書において、「有機合成樹脂」とは、狭い意味での有機合成樹脂即ち熱可塑性樹脂・熱硬化性樹脂を意味するものであって、ゴム等のエラストマーは含まない意味で用いるものとする。
近年、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂材料或いはポリ乳酸樹脂等の熱可塑性樹脂材料の性能、特に耐摩耗性及び耐熱性を向上させるため、有機無機ハイブリッド化が行われている。例えば、特許文献1に記載された発明においては、アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックスと水ガラスを混合した後、このラテックスを酸水溶液に滴下してゴム分を凝固させることを特徴とするケイ酸−NBR複合材料とその製造方法について開示している。これによって、NBR中においてケイ酸が極めて微細な状態で均一に分散しており、機械的強度が大きくかつ高い減衰性能を示すとしている。
また、特許文献2に記載された発明においては、水中への自己水分散性樹脂の乳化プロセスを用いて、多価金属アルコキシドやその加水分解縮合物である金属酸化物ゾルを含有した自己水分散性樹脂の乳化液滴を形成し、該液滴中で、多価金属アルコキシドの加水分解、重縮合によるゲル化反応を起こすことによって、有機無機ハイブリッド粒子を形成する有機無機ハイブリッド粒子の水性分散体の製造方法について開示している。これによって、同一の粒子内に有機高分子領域と無機高分子領域の分布した複合粒子であって、耐摩耗性・耐溶剤性・高弾性率等の無機粒子としての特徴と、柔軟性・造粒性等の有機粒子としての特徴を併せ持つ複合粒子が得られるとしている。
特開2006−2011号公報
特開2006−169390号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載されたケイ酸−NBR複合材料は、ゴム材料の複合化に関するものであり、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂材料或いはポリ乳酸樹脂等の熱可塑性樹脂材料の性能を向上させるものではない。したがって、ゴム材料特有の表面硬度の低さ等の理由から、耐摩耗性に優れた材料とすることはできない。また、上記特許文献2に記載された有機無機ハイブリッド粒子は、ナノメートルレベルの粒子としての研磨剤としての用途しか示されておらず、構造体としての有機合成樹脂の性能を改良するものではない。
そこで、本発明は、熱可塑性樹脂を始めとする有機合成樹脂の構造体としての諸特性を向上させるために、シリカ微粒子を微細にかつ均一に分散させてなる有機無機複合組成物、及びその有機無機複合組成物を微細に粉砕して有機合成樹脂と混合させてなる有機無機複合体、並びにそれらの製造方法を提供することを課題とするものである。
請求項1の発明にかかる有機無機複合組成物は、有機合成樹脂中にシリカ粒子が微細に、かつ、略均一に分散してなる有機無機複合組成物であって、前記有機合成樹脂の水性エマルションに水ガラスを混合して、更に、酸を加えることによって前記有機合成樹脂及びシリカゾルを凝集させて得られたものである。
請求項2の発明にかかる有機無機複合組成物は、有機合成樹脂中にシリカ粒子が微細に、かつ、略均一に分散してなる有機無機複合組成物であって、前記有機合成樹脂の水性エマルションにシリカゾルを混合して凝集させて得られたものである。
請求項3の発明にかかる有機無機複合組成物は、請求項2の構成において、前記シリカゾルは、水ガラスを酸で中和してまたは水ガラスをイオン交換して得られたものである。
請求項4の発明にかかる有機無機複合組成物は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つの構成において、前記有機合成樹脂は、熱可塑性樹脂であるものである。
請求項5の発明にかかる有機無機複合組成物は、請求項1乃至請求項4のいずれか1つの構成において、前記有機合成樹脂は、ポリ乳酸であるものである。
請求項6の発明にかかる有機無機複合組成物の製造方法は、有機合成樹脂中にシリカ粒子が微細に、かつ、略均一に分散してなる有機無機複合組成物の製造方法であって、前記有機合成樹脂の水性エマルションに水ガラスを混合して均一な混合液を製造する工程と、前記均一な混合液に酸を加えることによって前記有機合成樹脂及びシリカゾルを凝集させる工程と、凝集させて得られた組成物を水で洗浄して乾燥する工程とを具備するものである。
請求項7の発明にかかる有機無機複合組成物の製造方法は、有機合成樹脂中にシリカ粒子が微細に、かつ、略均一に分散してなる有機無機複合組成物の製造方法であって、シリコンアルコキシドを加水分解して、または水ガラスをイオン交換して、または水ガラスを酸で中和してシリカゾルを得る工程と、有機合成樹脂の水性エマルションに前記シリカゾルを加えて前記有機合成樹脂及び前記シリカゾルを凝集させる工程と、凝集させて得られた組成物を水で洗浄して乾燥する工程とを具備するものである。
請求項8の発明にかかる有機無機複合組成物の製造方法は、請求項6または請求項7の構成において、前記有機合成樹脂は、ポリ乳酸であるものである。
請求項9の発明にかかる有機無機複合体は、請求項1乃至請求項8のいずれか1つに記載の有機無機複合組成物を細かく粉砕して、熱可塑性樹脂と加熱混練してまたは熱硬化性樹脂と混練して均一に混合して得られたものである。
請求項10の発明にかかる有機無機複合体は、請求項9の構成において、前記熱可塑性樹脂は、ポリ乳酸であるものである。
請求項11の発明にかかる有機無機複合体の製造方法は、請求項1乃至請求項8のいずれか1つに記載の有機無機複合組成物を細かく粉砕して粉砕物を得る工程と、前記粉砕物を熱可塑性樹脂と加熱混練または熱硬化性樹脂と混練する工程とを具備するものである。
請求項12の発明にかかる有機無機複合体の製造方法は、請求項11の構成において、前記熱可塑性樹脂は、ポリ乳酸であるものである。
請求項1の発明にかかる有機無機複合組成物は、有機合成樹脂中にシリカ粒子が微細に、かつ、略均一に分散してなる有機無機複合組成物であって、有機合成樹脂の水性エマルションに水ガラスを混合して、更に、酸を加えることによって有機合成樹脂及びシリカゾルを凝集させて得られる。ここで、有機合成樹脂としては、ポリ乳酸樹脂・アクリル樹脂・ポリプロピレン樹脂・ポリスチレン樹脂・ナイロン樹脂等の熱可塑性樹脂を始めとして、フェノール樹脂・エポキシ樹脂・ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂等の、種々の有機合成樹脂を用いることができる。
このように、本発明にかかる有機無機複合組成物は、有機合成樹脂の水性エマルションに水ガラスを混合して、更に、酸を加えることによって有機合成樹脂及びシリカゾルを凝集させてなることから、シリカ微粒子が有機合成樹脂中に均一に分散した有機無機複合組成物となる。したがって、単にシリカの微粉末を有機合成樹脂中に混合したものとは異なり、緻密な構造が得られるため強度が大幅に向上し、耐摩耗性等の諸特性も向上する。
このようにして、熱可塑性樹脂を始めとする有機合成樹脂の構造体としての諸特性を向上させるために、シリカ微粒子を微細にかつ均一に分散させてなる有機無機複合組成物となる。
請求項2の発明にかかる有機無機複合組成物は、有機合成樹脂中にシリカ粒子が微細に、かつ、略均一に分散してなる有機無機複合組成物であって、有機合成樹脂の水性エマルションにシリカゾルを混合して凝集させて得られる。ここで、シリカゾルを得る方法としては、シリコンアルコキシドを加水分解する方法、水ガラスを酸で中和する方法、水ガラスをイオン交換する方法、等がある。
このように、本発明にかかる有機無機複合組成物は、有機合成樹脂の水性エマルションにシリカゾルを混合することによって有機合成樹脂及びシリカゾルを凝集させてなることから、シリカ微粒子が有機合成樹脂中に均一に分散した有機無機複合組成物となる。したがって、単にシリカの微粉末を有機合成樹脂中に混合したものとは異なり、緻密な構造が得られるため強度が大幅に向上し、耐摩耗性等の諸特性も向上する。
このようにして、熱可塑性樹脂を始めとする有機合成樹脂の構造体としての諸特性を向上させるために、シリカ微粒子を微細にかつ均一に分散させてなる有機無機複合組成物となる。
請求項3の発明にかかる有機無機複合組成物は、シリカゾルが水ガラスを酸で中和してまたは水ガラスをイオン交換して得られたものである。このように、安価な水ガラスをシリカ源として用いることによって、緻密な構造が得られて強度が大幅に向上し耐摩耗性等の諸特性も向上した有機無機複合組成物を、より低コストで製造することができる。
このようにして、熱可塑性樹脂を始めとする有機合成樹脂の構造体としての諸特性を向上させるために、シリカ微粒子を微細にかつ均一に分散させてなり、より安価に得られる有機無機複合組成物となる。
請求項4の発明にかかる有機無機複合組成物においては、有機合成樹脂が熱可塑性樹脂である。ポリ乳酸樹脂・アクリル樹脂・ポリプロピレン樹脂・ポリスチレン樹脂・ナイロン樹脂等の熱可塑性樹脂は、一般的に(特に汎用性の熱可塑性樹脂の場合)フェノール樹脂・エポキシ樹脂・ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂と比較して、安価であり、かつ成形性に優れる反面、熱硬化性樹脂の方が広い温度領域において耐摩耗性・曲げ強度等の機械的特性については優れており、熱可塑性樹脂は特に高温域において耐摩耗性・曲げ強度等の機械的特性については劣るという特徴を有する。
そこで、熱可塑性樹脂にシリカ微粒子を微細にかつ均一に分散させることによって、熱可塑性樹脂とシリカ微粒子が密着した緻密な構造が得られて、比較的高温域においても強度が大幅に向上し耐摩耗性等の諸特性を向上させることができ、比較的安価であり成形性に優れるという熱可塑性樹脂の特性を活かすことができる有機無機複合組成物を製造することができる。
このようにして、熱可塑性樹脂の構造体としての諸特性を向上させるために、シリカ微粒子を微細にかつ均一に分散させてなる有機無機複合組成物となる。
請求項5の発明にかかる有機無機複合組成物においては、有機合成樹脂がポリ乳酸である。ポリ乳酸は、植物(例えば、トウモロコシ・ジャガイモ等のでんぷん質等)を原料とする熱可塑性樹脂であり、生分解性を有するため、環境に悪影響を与えることなく廃棄することができる。これに対して、一般の石油を原料とする有機合成樹脂を廃棄する際には、焼却することによってCO2 を発生するため、大気中の二酸化炭素量を増加させて地球温暖化を加速することになる。
一方、ポリ乳酸を焼却した場合にも二酸化炭素は発生するが、ポリ乳酸は元々空気中の二酸化炭素を光合成して生成したトウモロコシ・ジャガイモ等のでんぷん質等を原料とするものであるため、発生した二酸化炭素を再びトウモロコシ・ジャガイモ等の植物が吸収することによって、二酸化炭素の循環サイクルが形成されることになり、環境にやさしい有機合成樹脂となる。
このようにして、環境にやさしい有機合成樹脂の構造体としての諸特性を向上させるために、シリカ微粒子を微細にかつ均一に分散させてなる有機無機複合組成物となる。
請求項6の発明にかかる有機無機複合組成物の製造方法は、有機合成樹脂中にシリカ粒子が微細に、かつ、略均一に分散してなる有機無機複合組成物の製造方法であって、有機合成樹脂の水性エマルションに水ガラスを混合して均一な混合液を製造する工程と、均一な混合液に酸を加えることによって有機合成樹脂及びシリカゾルを凝集させる工程と、凝集させて得られた組成物を水で洗浄して乾燥する工程とを具備する。ここで、有機合成樹脂としては、ポリ乳酸樹脂・アクリル樹脂・ポリプロピレン樹脂・ポリスチレン樹脂・ナイロン樹脂等の熱可塑性樹脂を始めとして、フェノール樹脂・エポキシ樹脂・ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂等の、種々の有機合成樹脂を用いることができる。
有機合成樹脂の水性エマルションに水ガラスを混合することによって、いずれも水性であることから、均一な混合液を得ることができる。この均一な混合液に酸を加えることによって、有機合成樹脂の微粒子と水ガラスが酸で中和されて生じたシリカゾルとが微細な単位で凝集し、有機合成樹脂とシリカとが微細にかつ均一に分散された組成物が得られる。そして、安価な水ガラスをシリカ源として用いることによって、緻密な構造が得られて強度が大幅に向上し耐摩耗性等の諸特性も向上した有機無機複合組成物を、より低コストで製造することができる。
このようにして、熱可塑性樹脂を始めとする有機合成樹脂の構造体としての諸特性を向上させるために、シリカ微粒子を微細にかつ均一に分散させてなり、より安価に得られる有機無機複合組成物の製造方法となる。
請求項7の発明にかかる有機無機複合組成物の製造方法は、有機合成樹脂中にシリカ粒子が微細に、かつ、略均一に分散してなる有機無機複合組成物の製造方法であって、シリコンアルコキシドを加水分解して、または水ガラスをイオン交換して、または水ガラスを酸で中和してシリカゾルを得る工程と、有機合成樹脂の水性エマルションにシリカゾルを加えて有機合成樹脂及びシリカゾルを凝集させる工程と、凝集させて得られた組成物を水で洗浄して乾燥する工程とを具備する。
シリコンアルコキシドを加水分解して、または水ガラスをイオン交換して、または水ガラスを酸で中和してシリカゾルを製造し、このシリカゾルを有機合成樹脂の水性エマルションに加えることによって、有機合成樹脂の微粒子とシリカゾルとが微細な単位で凝集し、有機合成樹脂とシリカとが微細にかつ均一に分散された組成物が得られる。こうして、緻密な構造が得られて強度が大幅に向上し耐摩耗性等の諸特性も向上した有機無機複合組成物を製造することができる。
このようにして、熱可塑性樹脂を始めとする有機合成樹脂の構造体としての諸特性を向上させるために、シリカ微粒子を微細にかつ均一に分散させてなり、より安価に得られる有機無機複合組成物の製造方法となる。
請求項8の発明にかかる有機無機複合組成物の製造方法においては、有機合成樹脂がポリ乳酸である。ポリ乳酸は、植物(例えば、トウモロコシ・ジャガイモ等のでんぷん質等)を原料とする熱可塑性樹脂であり、生分解性を有するため、環境に悪影響を与えることなく廃棄することができる。これに対して、一般の石油を原料とする有機合成樹脂を廃棄する際には、焼却することによってCO2 を発生するため、大気中の二酸化炭素量を増加させて地球温暖化を加速することになる。
一方、ポリ乳酸を焼却した場合にも二酸化炭素は発生するが、ポリ乳酸は元々空気中の二酸化炭素を光合成して生成したトウモロコシ・ジャガイモ等のでんぷん質等を原料とするものであるため、発生した二酸化炭素を再びトウモロコシ・ジャガイモ等の植物が吸収することによって、二酸化炭素の循環サイクルが形成されることになり、環境にやさしい有機合成樹脂となる。
このようにして、環境にやさしい有機合成樹脂の構造体としての諸特性を向上させるために、シリカ微粒子を微細にかつ均一に分散させてなる有機無機複合組成物の製造方法となる。
請求項9の発明にかかる有機無機複合体は、請求項1乃至請求項8のいずれか1つに記載の有機無機複合組成物を細かく粉砕して、熱可塑性樹脂と加熱混練してまたは熱硬化性樹脂と混練して均一に混合して得られる。ここで、熱可塑性樹脂としては、ポリ乳酸樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ナイロン(ポリアミド)樹脂等を始めとして種々の熱可塑性樹脂を用いることができる。また、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂を始めとして、種々の熱硬化性樹脂を用いることができる。
このように、本発明にかかる有機無機複合体は、まず有機合成樹脂とシリカゾルを微細にかつ均一に混合した後、一旦硬化させて細かく粉砕することによって、シリカゾルに有機合成樹脂が密着して熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂との親和性が向上した有機無機複合組成物粉末が得られる。これを熱可塑性樹脂と加熱混練してまたは熱硬化性樹脂と混練して均一に混合することによって、有機無機複合組成物粉末が熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂中に均一に分散した有機無機複合体となる。したがって、単にシリカ等の微粉末を熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂中に混合したものとは異なり、緻密な構造が得られるため強度が大幅に向上し、耐摩耗性等の諸特性も向上する。
このようにして、熱可塑性樹脂を始めとする有機合成樹脂の構造体としての諸特性を向上させるために、シリカ微粒子を微細にかつ均一に分散させてなる有機無機複合組成物を微細に粉砕して有機合成樹脂と混合させてなる有機無機複合体となる。
請求項10の発明にかかる有機無機複合体においては、熱可塑性樹脂がポリ乳酸である。ポリ乳酸は、植物(例えば、トウモロコシ・ジャガイモ等のでんぷん質等)を原料とする熱可塑性樹脂であり、生分解性を有するため、環境に悪影響を与えることなく廃棄することができる。これに対して、一般の石油を原料とする有機合成樹脂を廃棄する際には、焼却することによってCO2 を発生するため、大気中の二酸化炭素量を増加させて地球温暖化を加速することになる。
一方、ポリ乳酸を焼却した場合にも二酸化炭素は発生するが、ポリ乳酸は元々空気中の二酸化炭素を光合成して生成したトウモロコシ・ジャガイモ等のでんぷん質等を原料とするものであるため、発生した二酸化炭素を再びトウモロコシ・ジャガイモ等の植物が吸収することによって、二酸化炭素の循環サイクルが形成されることになり、環境にやさしい有機合成樹脂となる。
このようにして、環境にやさしい熱可塑性樹脂の構造体としての諸特性を向上させるために、シリカ微粒子を微細にかつ均一に分散させてなる有機無機複合体となる。
請求項11の発明にかかる有機無機複合体の製造方法は、請求項1乃至請求項8のいずれか1つに記載の有機無機複合組成物を細かく粉砕して粉砕物を得る工程と、粉砕物を熱可塑性樹脂と加熱混練または熱硬化性樹脂と混練する工程とを具備する。
このように、本発明にかかる有機無機複合体の製造方法は、まず有機合成樹脂とシリカゾルを微細に、かつ、均一に混合した後、一旦硬化させて細かく粉砕することによって、シリカゾルに有機合成樹脂が密着して熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂との親和性が向上した有機無機複合組成物粉末が得られる。これを熱可塑性樹脂と加熱混練または熱硬化性樹脂と混練して均一に混合することによって、有機無機複合組成物粉末が熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂中に均一に分散した有機無機複合体となる。したがって、単にシリカ等の微粉末を熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂中に混合したものとは異なり、緻密な構造が得られるため強度が大幅に向上し、耐摩耗性等の諸特性も向上する。
このようにして、熱可塑性樹脂を始めとする有機合成樹脂の構造体としての諸特性を向上させるために、シリカ微粒子を微細にかつ均一に分散させてなる有機無機複合組成物を微細に粉砕して有機合成樹脂と混合させてなる有機無機複合体の製造方法となる。
請求項12の発明にかかる有機無機複合体の製造方法においては、熱可塑性樹脂がポリ乳酸である。ポリ乳酸は、植物(例えば、トウモロコシ・ジャガイモ等のでんぷん質等)を原料とする熱可塑性樹脂であり、生分解性を有するため、環境に悪影響を与えることなく廃棄することができる。これに対して、一般の石油を原料とする有機合成樹脂を廃棄する際には、焼却することによってCO2 を発生するため、大気中の二酸化炭素量を増加させて地球温暖化を加速することになる。
一方、ポリ乳酸を焼却した場合にも二酸化炭素は発生するが、ポリ乳酸は元々空気中の二酸化炭素を光合成して生成したトウモロコシ・ジャガイモ等のでんぷん質等を原料とするものであるため、発生した二酸化炭素を再びトウモロコシ・ジャガイモ等の植物が吸収することによって、二酸化炭素の循環サイクルが形成されることになり、環境にやさしい熱可塑性樹脂となる。
このようにして、熱可塑性樹脂を始めとする有機合成樹脂の構造体としての諸特性を向上させるために、シリカ微粒子を微細にかつ均一に分散させてなる有機無機複合組成物を微細に粉砕して、環境にやさしい熱可塑性樹脂と混合させてなる有機無機複合体の製造方法となる。
以下、本発明の実施の形態について、図1乃至図4を参照しつつ説明する。
図1は本発明の実施の形態の実施例1にかかる有機無機複合組成物及び有機無機複合体の製造方法の手順を示すフローチャートである。図2(a)は本発明の実施の形態の実施例1にかかる有機無機複合組成物の熱特性を、(b)は本発明の実施の形態の実施例2にかかる有機無機複合組成物の熱特性を、(c)は比較例1にかかるポリ乳酸の熱特性を、それぞれTG/DTAを用いて測定した結果を示すグラフである。
図3は本発明の実施の形態の実施例1にかかる有機無機複合体及び比較例1にかかるポリ乳酸/フェノール樹脂混合成形体、比較例2にかかるフェノール樹脂の摩擦係数を鈴木式摩擦摩耗試験機で測定した結果を示すグラフである。図4は本発明の実施の形態の実施例1にかかる有機無機複合体及び比較例1にかかるポリ乳酸/フェノール樹脂混合成形体、比較例2にかかるフェノール樹脂の摩耗量を鈴木式摩擦摩耗試験機で測定した結果を示すグラフである。
まず、本発明の実施の形態の実施例1にかかる有機無機複合組成物及び有機無機複合体の製造方法について、図1を参照して説明する。図1に示されるように、本実施の形態の実施例1にかかる有機無機複合組成物の製造方法は、まず有機合成樹脂の水性エマルションとしてのポリ乳酸エマルション(ミヨシ油脂(株)製・ランディPL3000、固形分40%)100gに対して水100gを加え、均一になるように溶液を調整する(ステップS10)。調整した溶液に、3.2mol調整した水ガラス23mlを攪拌しながら添加する(ステップS11)。
そして、これに2規定の硫酸23mlを攪拌しながら加えることによって、ポリ乳酸樹脂微粒子とシリカ微粒子とを凝集させる(ステップS12)。凝集物を濾過して水洗し、これを2回繰り返した(ステップS13)後、30℃で20時間乾燥することによって(ステップS14)、有機無機複合組成物としてのポリ乳酸/シリカ複合組成物1が得られる。以上が、本実施の形態の実施例1にかかる有機無機複合組成物1の製造方法である。
続いて、本実施の形態の実施例1にかかる有機無機複合体の製造方法について説明する。得られた有機無機複合組成物としてのポリ乳酸/シリカ複合組成物1を、回転式粉砕機で粉砕して(ステップS15)、粉砕物10重量部に対して、ノボラック型フェノール樹脂81重量部、ヘキサミン9重量部を加えて良く混合し(ステップS16)、混合物を加圧加熱成形することによって(ステップS17)、有機無機複合体2としての平板の試験片が得られる。
次に、本実施の形態の実施例2にかかる有機無機複合組成物の製造方法について説明する。まず、実施例1と同様に、有機合成樹脂の水性エマルションとしてのポリ乳酸エマルション(ミヨシ油脂(株)製・ランディPL3000、固形分40%)100gに対して水100gを加え、均一になるように溶液を調整する。一方、2規定の硫酸23mlに、3.2mol調整した水ガラス23mlを攪拌しながら添加して、シリカゾルを調整する。そして、上記均一に調整した溶液にシリカゾルを攪拌しながら加えることによって、ポリ乳酸樹脂微粒子とシリカ微粒子とを凝集させる。
凝集物を濾過して水洗し、これを2回繰り返した後、30℃で20時間乾燥することによって、有機無機複合組成物としてのポリ乳酸/シリカ複合組成物が得られる。以上が、本実施の形態の実施例2にかかる有機無機複合組成物の製造方法である。更に、比較例1として、ポリ乳酸エマルション(ミヨシ油脂(株)製・ランディPL3000、固形分40%)をPP(ポリプロピレン)上で成膜させ、30℃で20時間、60℃で1時間乾燥させた。
これらの実施例1にかかる有機無機複合組成物1、実施例2にかかる有機無機複合組成物、及び比較例1としてのポリ乳酸成膜体の熱特性を、TG/DTAを用いて測定した。結果を図2に示す。図2(c)に示されるように、比較例1においては360℃において、温度上昇曲線にピークの発生が見られるとともに、DTA曲線のピークが253.7μVという大きな値を示しており、急激な燃焼が起きていることが示されている。これに対して、図2(a),(b)に示されるように、実施例1にかかる有機無機複合組成物1、実施例2にかかる有機無機複合組成物においてはそのような挙動が見られず、燃焼が抑えられていることが分かる。
また、実施例1にかかる有機無機複合組成物1、実施例2にかかる有機無機複合組成物においては、ポリ乳酸/シリカ複合組成物であることから、耐摩耗性・曲げ強度等の機械的特性が向上している。
このようにして、本実施の形態の実施例1にかかる有機無機複合組成物1及び実施例2にかかる有機無機複合組成物においては、熱可塑性樹脂を始めとする有機合成樹脂としてのポリ乳酸の構造体としての諸特性、即ち耐熱性・耐摩耗性・曲げ強度等を向上させることができる。
続いて、本実施の形態の実施例1にかかる有機無機複合体2としての平板の試験片の機械的特性(摩擦摩耗特性)について、図3及び図4を参照して説明する。比較例1の試験片として、上述した比較例1としてのポリ乳酸成膜体を回転式粉砕機で粉砕し、この粉砕物をノボラック型フェノール樹脂81重量部、ヘキサミン9重量部に対して10重量部加えて良く混合したものを加圧加熱成形して、平板の試験片を作製した。また、比較例2の試験片として、ノボラック型フェノール樹脂81重量部及びヘキサミン9重量部を良く混合したものを加圧加熱成形して、平板の試験片を作製した。
これら3種類の試験片の摺動特性を、鈴木式摩擦摩耗試験機で測定した。摩擦係数の測定結果を図3に、摩耗量の測定結果を図4に示す。図3に示されるように、本実施の形態の実施例1にかかる有機無機複合体2においては、初期から低い摩擦係数を示しており、摺動性に優れていることが分かる。これに対して、比較例1の試験片及び比較例2の試験片においては、PV=1000(kgf/cm2 )・(m/min)以下において高い摩擦係数を示している。
また、図4に示されるように、本実施の形態の実施例1にかかる有機無機複合体2においては摩耗量が非常に少ないのに対して、比較例1の試験片及び比較例2の試験片においては、摩耗量が非常に多い。このように、実施例1にかかる有機無機複合体2においては、ノボラック型フェノール樹脂のみ或いはノボラック型フェノール樹脂にポリ乳酸を混合したものに対して、ポリ乳酸/シリカ複合組成物を微細に粉砕してノボラック型フェノール樹脂に添加することによって、摩擦摩耗特性が優れた成形体となることが分かる。
このようにして、本実施の形態の実施例1にかかる有機無機複合体2においては、有機合成樹脂としてのノボラック型フェノール樹脂の構造体としての摩擦摩耗特性を始めとする機械的諸特性を向上させることができる。
本実施の形態においては、有機無機複合組成物を得るための有機合成樹脂として熱可塑性樹脂としてのポリ乳酸を用いているが、アクリル樹脂・ポリプロピレン樹脂・ポリスチレン樹脂・ナイロン樹脂等のその他の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂・エポキシ樹脂・ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂等の、種々の有機合成樹脂を用いることができる。
また、本実施の形態においては、有機無機複合体を得るための熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂としてノボラック型フェノール樹脂を用いているが、レゾール型フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂を始めとしてその他の熱硬化性樹脂や、ポリ乳酸樹脂・アクリル樹脂・ポリプロピレン樹脂・ポリスチレン樹脂・ナイロン樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることもできる。
更に、本実施の形態においては、有機無機複合組成物を得るための無機材料として水ガラスを原料としたシリカゾルを用いているが、シリコンアルコキシドを原料としたシリカゾルを用いても良い。
本発明を実施するに際しては、有機無機複合組成物及び有機無機複合体のその他の部分の構成、組成、材質、大きさ、形状、数量、製造方法等についても、また有機無機複合組成物の製造方法及び有機無機複合体の製造方法のその他の工程についても、本実施の形態に限定されるものではない。
本発明にかかる有機無機複合組成物及び有機無機複合体は、上述の如く、高強度で耐摩耗性が高く、摩擦係数が小さいという優れた特性を有しているため、自動車におけるブレーキパッドやクラッチディスクといった摩擦材や、摺動材、ギア、軸受け、等に応用することができる。
Claims (12)
- 有機合成樹脂中にシリカ粒子が微細に、かつ、略均一に分散してなる有機無機複合組成物であって、
前記有機合成樹脂の水性エマルションに水ガラスを混合して、更に、酸を加えることによって前記有機合成樹脂及びシリカゾルを凝集させて得られたことを特徴とする有機無機複合組成物。 - 有機合成樹脂中にシリカ粒子が微細に、かつ、略均一に分散してなる有機無機複合組成物であって、
前記有機合成樹脂の水性エマルションにシリカゾルを混合して凝集させて得られたことを特徴とする有機無機複合組成物。 - 前記シリカゾルは、水ガラスを酸で中和してまたは水ガラスをイオン交換して得られたものであることを特徴とする請求項2に記載の有機無機複合組成物。
- 前記有機合成樹脂は、熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の有機無機複合組成物。
- 前記有機合成樹脂は、ポリ乳酸であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の有機無機複合組成物。
- 有機合成樹脂中にシリカ粒子が微細に、かつ、略均一に分散してなる有機無機複合組成物の製造方法であって、
前記有機合成樹脂の水性エマルションに水ガラスを混合して均一な混合液を製造する工程と、
前記均一な混合液に酸を加えることによって前記有機合成樹脂及びシリカゾルを凝集させる工程と、
凝集させて得られた組成物を水で洗浄して乾燥する工程と
を具備することを特徴とする有機無機複合組成物の製造方法。 - 有機合成樹脂中にシリカ粒子が微細に、かつ、略均一に分散してなる有機無機複合組成物の製造方法であって、
シリコンアルコキシドを加水分解して、または水ガラスをイオン交換して、または水ガラスを酸で中和してシリカゾルを得る工程と、
有機合成樹脂の水性エマルションに前記シリカゾルを加えて前記有機合成樹脂及び前記シリカゾルを凝集させる工程と、
凝集させて得られた組成物を水で洗浄して乾燥する工程と
を具備することを特徴とする有機無機複合組成物の製造方法。 - 前記有機合成樹脂は、ポリ乳酸であることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の有機無機複合組成物の製造方法。
- 請求項1乃至請求項8のいずれか1つに記載の有機無機複合組成物を細かく粉砕して、熱可塑性樹脂と加熱混練してまたは熱硬化性樹脂と混練して均一に混合して得られたことを特徴とする有機無機複合体。
- 前記熱可塑性樹脂は、ポリ乳酸であることを特徴とする請求項9に記載の有機無機複合体。
- 請求項1乃至請求項8のいずれか1つに記載の有機無機複合組成物を細かく粉砕して粉砕物を得る工程と、
前記粉砕物を熱可塑性樹脂と加熱混練または熱硬化性樹脂と混練する工程と
を具備することを特徴とする有機無機複合体の製造方法。 - 前記熱可塑性樹脂は、ポリ乳酸であることを特徴とする請求項11に記載の有機無機複合体の製造方法。
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- 2006-10-17 JP JP2006282325A patent/JP2008101049A/ja active Pending
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