JP2008098204A - リアクトル装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】リアクトル装置やその周囲の部材から発生する騒音を低減する。
【解決手段】リアクトルは、コア1およびコイル2を有するリアクトルBと、リアクトルBを収納するケース3とを備えている。ケース3を振動減衰率が1(%)以上の材料により構成することにより、リアクトル装置Aやこれに連結される部材から発生する騒音を低減することができる。振動減衰率が特に高い材料として、制振合金、特にMgを主成分とする合金がある。
【選択図】図1

Description

本発明は、主として燃料電池車やハイブリッド車などに搭載されるリアクトル装置の騒音を低減するための対策に関する。
近年、環境問題からハイブリッド車や燃料電池車のような直流電源でモータを駆動する自動車が開発されている。燃料電池車やハイブリッド車などに配置される昇圧コンバータは、電圧を変換するリアクトルを備えている。リアクトルは、コア(鉄心)と、コアの周囲に巻き付けられたコイルとを有している。コイルには交流電流が印加されるので、コア内部には、コイル電流に応じた磁束変化が生じる。また、コアは磁束の変化に応じて歪む磁歪特性を有しているので、リアクトルの駆動時には、コアの歪みに起因する振動,騒音が発生する。一般的に、リアクトル装置は、リアクトルをAl鋳造用合金からなるケースに収納して構成されている(特許文献1)。非特許文献1には、閉ループ状のリアクトルにおいて、10kHz付近(5〜20kHz)の高周波の騒音が発生しやすいことが開示されている。
そこで、特許文献2には、リアクトルを収納するケースの開口を、半連半独構造の発泡部材からなる蓋部材によって塞ぐことにより、内部の振動を抑制し、リアクトル装置から外方に漏れる騒音を低減しようとする技術が開示されている。
特開2006−2006−93553号 特開2005−72198号公報 Reactor Vibration Analysis in Consideration of Coupling between the Magnetic Field and Vibration(IEEE-IAS(Industry Application Society)39TH Annual Meeting,October 3-7,2004 Westin Hotel ,Seattle)
上記特許文献1に開示されるようなAl鋳造用合金からなるケースを用いたリアクトル装置では、リアクトルで発生した振動に起因して、リアクトル装置およびこれに連結される部材から発生する騒音が実用上問題になっている。一方、上記特許文献2に開示されている蓋部材により、リアクトル装置の上方に漏れる騒音を低減することができたとしても、ケース側から伝わる振動に起因する騒音を低減することはできない。反面、発泡部材は蓋部材には適用が可能としても、強度や耐熱性などからみて、ケースを構成する材料として用いることは困難である。
本発明の目的は、ケースに要求される諸特性を損なうことなく、リアクトルから発生した振動,騒音の低減が可能なリアクトル装置を提供することにある。
本発明のリアクトル装置は、リアクトルを収納するケースを、振動減衰率1%以上の金属材料、または金属−セラミックス複合材料によって構成したものである。
これにより、リアクトルで発生した振動がケースに伝わっても、ケース自体の振動の減衰特性により、振動が低減されるので、リアクトル装置またはこれに連結される部材から発生する騒音の低減を図ることができる。また、ケースが金属材料または金属−セラミックス複合材料によって構成されていることで、ケースの耐熱性も確保される。
ケースを構成する材料が、非磁性材料であることにより、コアの磁気回路特性に悪影響を及ぼすことなく、リアクトル装置またはこれに連結される部材から発生する騒音の低減を図ることができる。
ケースを構成する材料がマグネシウムを主成分としていることにより、マグネシウム材料が有する高い制振機能と高い非強度とを利用して、リアクトル装置の軽量化を図りつつ、騒音をより効果的に低減することが可能になる。
本発明のリアクトル装置によると、リアクトルを収納するケースを、振動減衰率が1%以上の金属材料、または金属−セラミックス複合材料によって構成することにより、リアクトル装置またはこれに連結される部材から発生する騒音の低減を図ることができる。
(実施の形態1)
−リアクトル装置の構造−
図1は、実施の形態1におけるリアクトル装置Aの概略構成を示す斜視図である。図1に示すように、本実施の形態のリアクトル装置Aは、高透磁率材料ともいわれる軟磁性材料によって構成されるコア1と、コア1の周囲を環状に取り巻くコイル2とを有するリアクトルBを備えている。後述するように、コア1は、平面形状がほぼトラック形をしていて、セラミックス,ガラス,ガラスエポキシ基板等の非磁性かつ絶縁性材料によって構成されるギャップスペーサを挟んで連結された複数の部分コアによって構成されている。また、コア1は、樹脂製のボビンによって覆われ、コイル2はボビンの外側に巻き付けられている。
コイル2は、角柱状の空間を囲むように螺旋状に巻かれて積層された2つの環状部分21と、環状部分21を接続する接続部分22と、上方に突出する両端の端子23とによって構成されている。コイル2は、ほぼ全体が絶縁性膜で覆われており、1対の端子23のみが絶縁性膜から露出している。コイル2は、2つの環状部分21が接続部22で接続されて一体化されており、通電時には、一方の端子23から、順次2つの環状部分22を経て、他方の端子23に交流電流が流れる。
図2は、本実施の形態におけるケース3の概略構造を示す斜視図である。本実施の形態においては、ケース3は、底付きの容器であり、リアクトルBを収納するとともに、リアクトルBで発生した熱をヒートシンクに伝達するように機能している。ケース3内部の底部には、リアクトルBのコイル2,中ケース4などの下方への突出部を収納する凹部31が形成されており、コア1の両端部(後述するサイド部分コア12)が設置される中間面32とは、所定の高低差が設けられている。この中間面32と内側面33とは、リアクトルBのコア1と接触する部位である。
図3は、リアクトルBを中ケースに収納する手順を説明するための斜視図である。図4は、リアクトルBを中ケースに収納したときの状態を、一部破断して示す斜視図である。図3に示す状態から図4に示す状態までの組立手順は、以下の通りである。まず、中間部分コア10とギャップスペーサ11とを貼り合わせてから、内側ボビン13によって被覆する。その後、コイル2の各環状部分21によって囲まれる空間内に、内側ボビン13とギャップスペーサ11と各中間部分コア10との集合体を嵌合させる。このとき、両端のギャップスペーサ11が、コイル2の環状部分21内で空間に露出した状態となっている。次に、2つのサイド部分コア12を、上記集合体の両端で露出しているギャップスペーサ11に跨るように、取り付ける。これにより、図3の中央部に示す組立体が組み立てられる。また、閉環状のコア1ができあがる。これにより、リアクトルBが形成される。その後、図4に示すように、サイド部分コア12とコイル2とを相互に固定する外側ボビン15を取り付け、その全体を中ケース4に収納し、中ケース4に収納されたリアクトルBをケース3に収納する。なお、一般的な工程では、その後、加熱を伴うポッティングにより、ケース3全体の空隙を樹脂によって満たす。このとき、リアクトルAのうち端子23およびこれに近接する部分を除くほぼ全体は樹脂中に封止される。
図5は、リアクトル装置Aの最終的な組立が終了したときの構造を概略的に示す断面図である。ただし、図5において、中ケース4など主要部材でない部材の図示は省略されている。図5に示すように、ケース3の凹部31に中ケース(図示せず)に覆われたリアクトルBのコイル2の一部が入り込んでおり、リアクトルBのコア1の両端のサイド部分コア12がケース3の中間面32によって支持されている。ケース3は、ヒートシンクでもある架台5の上に設置されている。コア1の両端部とケース3の内側面33の一部および中間面32とは接触しており、コア1からこの接触部を介してケース3に振動や熱が伝達され、さらにケース3から架台5に振動や熱が伝達される。
−ケース3の材料−
本実施の形態におけるケース3は、振動減衰率が1%以上の材料によって構成されている。振動減衰率の高い材料としては、例えば制振材料(制振合金材料)と呼ばれるものがある。制振材料は、作用の相違に応じて、Ni,Fe−Cr合金などの強磁性型、Mg,Mg−Zr合金,MgNi,Mg−Cu−Mn合金などの転位型、Mn−Cu合金、Cu−Mn−Al合金などの双晶型、複数型の作用を併せ持つ片状黒鉛鋳鉄(Fe−C−Si)、Al−Zn合金などの複合型に分類されるが、本発明におけるケース3を構成する材料としては、制振作用の種類は重要でなく、制振作用の大きさが重要である。
図6は、各種材料の(振動)減衰係数(%)と引張強さとをマップにして示す図である。図6に示される材料のうち振動減衰率が1%以上のものを列挙すると、18−8ステンレス鋼,0.45%C鋼,0.95%C鋼,可鍛鋳鉄(パーライト地),球状黒鉛鋳鉄(パーライト地),フェライト系ステンレス鋼,極軟鋼,Mg合金(AZ81A),Pb,片状黒鉛鋳鉄(FC−10),12Cr鋼,高炭素片状黒鉛鋳鉄,Ni,Fe,Al−Zn合金,TiNi,Mn−Cu合金,Cu−Al−Ni合金,Mg−MgNi合金,Mg−Zr合金がある。そのうち制振合金と呼ばれるものは、図中□印で表示されている材料であって、いずれも1%以上の振動減衰率を有している。
また、図6には、記載されていないが、制振合金としては、Fe−Cr−Al合金,Fe−Cr−Al−Mn合金,Fe−Al−Si合金,Fe−Cr−Si−Al合金,Fe−Cr−Mo合金,Co−Ni合金,Mg−Cu−Mn合金,Fe−Ni−Mn合金,Fe−Mn−Cr合金,Cu−Mn−Al合金,Cu−Mn−Al−Sn合金,Cu−Zn−Al合金,Mn−Cu−Ni−Fe合金などがある。
鉄,銅などの材料で構成されるリアクトルBは一般に相当の重量を有しているので、リアクトル装置Aのケース3は、高い振動減衰率だけでなく、高い強度を有している必要がある。また、リアクトルBは、コイル2に流れる高周波電流によって高温状態になるので、これにつながるケース3も耐熱性が要求される。したがって、本発明のリアクトル装置Aのケース3は、発泡材料などの高分子材料でなく、金属材料,合金材料、その他の無機材料によって構成されていることが好ましい。また、金属材料であっても、従来のリアクトル装置のケース材料として採用されているAl鋳造用合金は、ダイキャスト性に優れた材料であるが、反面、図6に示されるように、振動減衰率が1(%)以下(約0.3(%))であり、制振作用に乏しい。したがって、リアクトル装置のケースを構成する材料として、従来のAl鋳造用合金を用いても、振動減衰率が小さく、リアクトル装置Aから発生する騒音の低減を図ることは困難である。
それに対し、ケース3を構成する材料として、18−8ステンレス鋼,0.45%C鋼,0.95%C鋼,可鍛鋳鉄(パーライト地),球状黒鉛鋳鉄(パーライト地),フェライト系ステンレス鋼,極軟鋼,Mg合金(AZ81A)(鋳物用Mg合金),Pb,片状黒鉛鋳鉄(FC−10),12Cr鋼,高炭素片状黒鉛鋳鉄,Ni,Fe,Al−Zn合金,TiNi,Mn−Cu合金,Cu−Al−Ni合金,Mg−MgNi合金,Mg−Zr合金,Fe−Cr−Al合金,Fe−Cr−Al−Mn合金,Fe−Al−Si合金,Fe−Cr−Si−Al合金,Fe−Cr−Mo合金,Co−Ni合金,Mg−Cu−Mn合金,Fe−Ni−Mn合金,Fe−Mn−Cr合金,Cu−Al−Ni合金,Cu−Mn−Al合金,Cu−Mn−Al−Sn合金,Cu−Zn−Al合金,Mn−Cu−Ni−Fe合金などを選択することにより、リアクトル装置Aまたはこれに連結される部材から発生する騒音を低減することができる。すなわち、図5に示す構造において、リアクトルBの駆動時に、リアクトルBで発生した振動がケース3で減衰されて、架台5には弱い振動しか伝わらない。したがって、ケース3や架台5から発生する騒音のレベルが低減されることになる。
また、リアクトルBの駆動時には、コイル3に流れる高周波電流に起因して多量の熱が発生するので、リアクトル装置Aのケース3からヒートシンクとして機能する架台5までの放熱路を確保することが望まれる。ケース3を構成する材料として、高分子材料や汎用セラミックスに比べて熱伝導率の高い金属材料または合金材料を採用することにより、ケース3の内側面33および中間面32を経由する放熱路を確保することができる。
ただし、ケース3は、必ずしも放熱路を確保する機能を有している必要はなく、振動抑制の作用効果を発揮することができる限り、熱伝導率の小さい材料、例えばセラミックスなどでもよい。他の手段によって、放熱路を確保することが不可能ではないからである。
一方、リアクトルBの駆動時には、コイル2に高周波電流が流れ、コア1は磁気回路を構成している。したがって、ケース3が磁性体であると、コイル2に高周波電流が流れたときに、ケース3も磁化されて、コア1の磁気回路の特性に影響を与える場合がある。そこで、上記材料のうち、非磁性材料である,Mg合金(AZ81A),Al−Zn合金,TiNi,Mn−Cu合金,Cu−Al−Ni合金,Mg−MgNi合金,Mg−Zr合金,Co−Ni合金,Mg−Cu−Mn合金,Cu−Al−Ni合金,Cu−Mn−Al合金,Cu−Mn−Al−Sn合金,Cu−Zn−Al合金,Mn−Cu−Ni−Fe合金などを選択することにより、リアクトルの特性に影響を与えることなく、リアクトル装置Aまたはこれに連結される部材から発生する騒音を低減することができる。
特に、図6に示されるように、Mg−Zr合金,Mn−Cu合金,Mg−MgNi合金,Al−Zn合金,Mn−Cu合金,Cu−Al−Ni合金,TiNiは、振動減衰率が20(%)以上であり、ケース3をこれらの制振合金材料によって構成することにより、上述の騒音低減効果を顕著に発揮することができる。
また、金属のうちでも、Mgは、比重が約1.74(アルミニウムの約2/3,鉄の1/4)であり、実用金属のうちでは最も軽い金属である。一方、引張強さは、アルミニウムにひけを取らないので、単位重量当たりの強度である比強度が大きい。反面、純マグネシウムは、耐食性が悪いので、合金化して耐食性を改善することが好ましい。さらに、Mgは、Ag,Cu,Au,Al,Wに次ぐ熱伝導率を有する材料であり、ケース3を構成する材料として、Mgを主成分とする合金を選択しても、リアクトルBの熱をヒートシンクである架台5に放出する機能が損なわれることはない。よって、ケース3を構成する材料として、マグネシウムを主成分とする合金を選択することにより、リアクトル装置Aの軽量化を図りつつ、高い振動減衰機能を利用して、リアクトル装置Aまたはこれに連結される部材から発生する騒音を低減することができる。
本実施の形態のコア1は、大電流かつ高周波領域において用いられるリアクトルに適した構造であり、燃料電池車やハイブリッド車などに搭載されるものである。本発明のリアクトル装置は、上述のような騒音の低減効果を発揮する限り、車載用のものに限定されるものではない。ただし、自動車においては、リアクトル装置またはこれに連結される部材から発生する騒音が、使用上問題となるので、本発明のリアクトル装置を車載用リアクトル装置に適用することにより、顕著な効果を発揮することができる。
(他の実施の形態)
上記実施の形態においては、リアクトルBのコア1の側部とケース3の内側面とが直接接触している構造を採用したが、当該接触部にバネが介在していてもよいものとする。その場合、バネにより振動減衰効果がさらに向上することになる。ただし、上記実施の形態において振動減衰率の高い材料(制振合金)によってケース3を構成することにより、バネを介在させてなくても、ケース3またはこれに連結される部材から発生する騒音を低減することができる、という利点が得られる。
上記開示された本発明の実施の形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むものである。
本発明のリアクトルおよびリアクトル装置は、ハイブリッド車、燃料電池車や、工場・家庭用電力供給システムにおいて、たとえば昇圧コンバータなどの一部品として利用することができる。
実施の形態におけるリアクトル装置の概略構造を示す斜視図である。 実施の形態におけるケースの概略構造を示す斜視図である。 リアクトルを中ケースに収納する手順を説明するための斜視図である。 リアクトルを中ケースに収納したときの状態を、一部破断して示す斜視図である。 リアクトル装置の最終的な組立が終了したときの構造を概略的に示す断面図である。 各種材料の(振動)減衰係数(%)と引張強さとをマップにして示す図である。
符号の説明
A リアクトル装置
B リアクトル
1 コア
2 コイル
3 ケース
4 中ケース
5 架台
10 中間部分コア
11 ギャップスペーサ
12 サイド部分コア
15 外側ボビン
21 環状部分
22 接続部分
23 端子
31 凹部
32 中間面
33 内側面

Claims (3)

  1. 磁気回路を構成するコアと、該コアに巻き付けられたコイルと、前記コアおよびコイルを収納するケースとを備えたリアクトル装置であって、
    前記ケースは、振動減衰率1%以上の金属材料、または金属−セラミックス複合材料によって構成されている、リアクトル装置。
  2. 請求項1記載のリアクトル装置において、
    前記ケースを構成する材料は、非磁性材料である、リアクトル装置。
  3. 請求項1または2記載のリアクトル装置において、
    前記ケースを構成する材料は、マグネシウムを主成分としている、リアクトル装置。
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