本発明の一実施形態について図1〜図14に基づいて説明すると以下の通りである。
本発明の表面プラズモンポラリトン集束器は、金属膜支持部材と、前記金属膜支持部材の所定の面上に形成された、互いに隣接し合い、隣接する金属膜とは異なる実効屈折率を有する少なくとも2つの金属膜とを備え、前記各金属膜は、隣り合う該各金属膜の境界線の少なくとも一部が曲線であり、かつ、前記金属膜支持部材と接している面とは反対側の面と、隣接する該金属膜における該金属膜支持部材と接している面とは反対側の面とが面一であることを特徴としている。
本発明の表面プラズモンポラリトン集束器は、光に対するレンズと同等の役割を、表面プラズモンポラリトンに対して持つものである。光に対するレンズの形状は、入射面の形状と、出射面の形状と、中心厚とにより決定される。表面プラズモンポラリトン集束器の形状も、同様に、入射境界線の形状と、出射境界線の形状と、中心距離とによって決定される。
なお、入射境界線とは、表面プラズモンポラリトン集束器において、表面プラズモンポラリトンが1回目に通過する、隣り合う金属膜間の境界線である。また、出射境界線とは、表面プラズモンポラリトン集束器において、表面プラズモンポラリトンが入射境界線を通過した後に通過する、隣り合う金属膜間の境界線である。入射境界線は、表面プラズモンポラリトン集束器において1つだけ存在するが、出射境界線は2つ以上存在することもある。ただし、本発明の表面プラズモンポラリトン集束器の場合は、入射境界線のみを有する構成であってもかまわない。
入射境界線のみを有する場合にも、または入射境界線および出射境界線を有する場合にも、隣り合う各金属膜の境界線における曲線部分の形状としては、表面プラズモンポラリトンを集束可能であればよく、円弧、楕円弧、双曲線、放物線の他、これらに高次の関数による変調を加えた形状等でもよい。なお、隣り合う各金属膜の境界線における曲線部分の形状として、高次の関数による変調を加えた形状の場合でも、焦点とは、元の円弧、楕円弧、双曲線、放物線の焦点を指すものとする。
〔第1実施形態〕
まず、入射境界線のみを有する本発明の第1実施形態に係る表面プラズモンポラリトン集束器1について、図1〜4を参照して説明する。図1は、本実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器1の概略構成を示す上面図および斜視図である。なお、図中の矢印は表面プラズモンポラリトン4の伝播方向を示している。
本実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器1は、図1に示すように、金属膜支持部材5と、第1金属膜2と、第2金属膜3とから構成されている。
本実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器1は、表面プラズモンポラリトン4を、第1金属膜2から第2金属膜3に対して伝播させることにより、第1金属膜2と第2金属膜3との間に形成された境界線において表面プラズモンポラリトン4の伝播方向を変換させ、第2金属膜3上において表面プラズモンポラリトン4を集束させるためのものであり、光記録や光アシスト磁気記録等に用いられる記録装置に好適に用いることができる。
なお、本実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器1では、表面プラズモンポラリトン4が第1金属膜2から第2金属膜3へと伝播する構成であればよく、表面プラズモンポラリトン4を第1金属膜2において発生させる構成であってもよいし、表面プラズモンポラリトン導波路の一部として用いられる構成であってもよい。第1金属膜2に表面プラズモンポラリトン4を発生させる方法については後述するので、ここでは説明は省略する。
金属膜支持部材5は、第1金属膜2および第2金属膜3を形成するための土台となるものである。なお、図1においては、金属膜支持部材5は所定の厚みを有した板として記載されているが、本発明はこれに限られない。例えば、光源の出射面を金属膜支持部材5とし、第1金属膜2および第2金属膜3を該出射面に形成する構成であってもよい。すなわち、金属膜支持部材5は形状や構成に限定されず、第1金属膜2および第2金属膜3を形成可能な構成であればよい。
また、金属膜支持部材5を利用することにより、第1金属膜2上に表面プラズモンポラリトン4を発生させることが可能であり、この場合には、金属膜支持部材5として透光性を有する基板が用いられる。
この場合、金属膜支持部材5を構成する材料としては、例えば、溶融石英またはBK7(Schott Glass社)のようなクラウンガラスや、F2またはSF11のようなフリントガラスや、ルミセラ(村田製作所)のようなセラミックや、SiO2やサファイヤ等の光学結晶が好適に用いられる。また、上述した材料以外にも、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の光学樹脂が好適に用いられる。また、金属膜支持部材5は、シリコン基板のような特定の波長のみに対して透光性を有する構成であってもよい。
さらに、金属膜支持部材5を利用することにより、第1金属膜2上に表面プラズモンポラリトン4を発生させる場合には、金属膜支持部材5として透光性を有する基板を用いる以外にも、例えば光源の出射面のような他の支持体上に形成された誘電体膜を用いてもよい。上記誘電体膜を構成する誘電体材料としては、透光性を有する材料であればよく、上記基板材料に加えて、MgF2、TiO2、Ta2O3、ZnO、Al2O3、SiN、AlNなどが挙げられる。
第1金属膜2および第2金属膜3は、同じ膜厚で、互いに接するように形成されている。また、第1金属膜2および第2金属膜3は、同じ膜厚であるが、それぞれ異なる種類の金属で構成されているために、実効屈折率が異なる。表面プラズモンポラリトン集束器1において、第1金属膜2の実効屈折率をn1とし、第2金属膜3の実効屈折率をn2とした場合、n1<n2という関係となる。なお、本実施形態の第1金属膜2および第2金属膜3の膜厚は、数nm〜数百nmの範囲内であることが望ましい。
第1金属膜2と第2金属膜3との間に形成された境界線は、曲線であり、第2金属膜3から第1金属膜2に向かって凸形状となっている。表面プラズモンポラリトン4の集束は、光の集光と原理的に同じ概念であるために、本実施形態では上記凸形状は、波面収差を少なくすることにより高い集束性能を持たせるため、楕円弧となっている(Lens design fundamentals, Rudolf Kingslake, Academic Pressを参照)。なお、第1金属膜2と第2金属膜3との間に形成された境界線は、少なくとも表面プラズモンポラリトン4が伝播する面に形成されていればよい。
なお、第1金属膜2および第2金属膜3との間に形成された境界線は、この境界線を形成する2種の金属が表面プラズモンポラリトン4の波長以内の幅で混じり合っている場合も含むものとする。また、この場合の境界線とは、2種の金属が混じり合っている幅の中央を取るものとする。
表面プラズモンポラリトン4の第1金属膜2と第2金属膜3との間に形成された境界線による屈折は、光の屈折と原理的に同じ概念であり、その屈折角は、第1金属膜2と第2金属膜3との実効屈折率の比および表面プラズモンポラリトン4の第1金属膜2と第2金属膜3との間に形成された境界線に対する入射角により決まる。
なお、入射角とは、第1金属膜2表面上を表面プラズモンポラリトン4が第1金属膜2と第2金属膜3との間に形成された境界線に対して伝播していく場合に、該境界線の法線に対する表面プラズモンポラリトン4の伝播方向のなす角θ1(θ)(ただし、0度<θ1<90度)と定義する。また、屈折角とは、第1金属膜2から第2金属膜3表面上に表面プラズモンポラリトン4が伝播していく場合に、第1金属膜2と第2金属膜3との間に形成された境界線の法線に対する、第2金属膜3表面における表面プラズモンポラリトン4の伝播方向のなす角θ2(ただし、0度<θ2<90度)と定義する。
ここで、第1金属膜2と第2金属膜3との実効屈折率の比と、第1金属膜2と第2金属膜3との間に形成された境界線に対する表面プラズモンポラリトン4の入射角および屈折角との関係について説明する。
第1金属膜2と第2金属膜3との間に形成された境界線に対する表面プラズモンポラリトン4の入射角および屈折角の関係、すなわち、表面プラズモンポラリトン4の伝播方向の変換の大きさは、光の屈折と同じ原理(Snellの法則)により、
と表される。
本実施形態では、表面プラズモンポラリトン4の伝播方向は、第1金属膜2と第2金属膜3との間に形成された楕円弧の境界線に対して、楕円弧の2つの焦点を結ぶ線に平行であることが望ましい。
表面プラズモンポラリトン4が第1金属膜2と第2金属膜3との間に形成された楕円弧の境界線に対して、楕円弧の2つの焦点を結ぶ線に平行に伝播すると、第1金属膜2と第2金属膜3との間に形成された境界線が第2金属膜3から第1金属膜2に向かって楕円弧に凸型となっており、かつ、第1金属膜2の実効屈折率が第2金属膜3の実効屈折率より小さいために、表面プラズモンポラリトン4は該境界線の外側部分において大きく屈折し、該境界線の中心部分においてほとんど屈折せず、楕円弧の焦点において表面プラズモンポラリトン4が集束する。
すなわち、表面プラズモンポラリトン集束器1においては、該境界線上の各位置における表面プラズモンポラリトン4の屈折角が異なるために、表面プラズモンポラリトン4が第2金属膜3において集束される。
上記構成によると、簡単な構成で、表面プラズモンポラリトンを良好に集束させることができ、さらに曲線部の形状を変えることで、表面プラズモンポラリトンが集束するまでの距離や、集束サイズを変えることができる。
さらに、第1金属膜2と第2金属膜3との間に形成された境界線の楕円弧における楕円の離心率eは、第1金属膜2の実効屈折率n1および第2金属膜3の実効屈折率n2と、
という関係であることが好ましい。
また、上記楕円の焦点距離fは、楕円の半長径をaとすると、
となる。
なお、第1金属膜2と第2金属膜3との間に形成された境界線に達した表面プラズモンポラリトン4を第2金属膜3において全て集束させるためには、該境界線に達した表面プラズモンポラリトン4が全て該境界線を通過するように、第1金属膜2および第2金属膜3の構成を設計することが望ましい。
また、第1金属膜2および第2金属膜3の実効屈折率は、上述したように、構成する金属材料に限られず、表面プラズモンポラリトン4のモード、金属膜の膜厚または金属膜の接する媒質の屈折率に依存する。すなわち、第1金属膜2および第2金属膜3を構成する材料が同一であったとしても、表面プラズモンポラリトン4のモード、膜厚または第1金属膜2若しくは第2金属膜3が接する媒質の屈折率を異ならせることにより、第1金属膜2と第2金属膜3との実効屈折率を異ならせることができる。
そのため、本実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器1では、第1金属膜2の実効屈折率と第2金属膜3の実効屈折率とを、互いの膜厚を異ならせることにより、異ならせる構成であってもよい。この場合は、第1金属膜2の金属膜支持部材5と接している面とは反対側の面と、第2金属膜3の金属膜支持部材5と接している面とは反対側の面とは、面一となっていることが望ましい。これにより、第1金属膜2から第2金属膜3へと伝播する表面プラズモンポラリトン4が、第1金属膜2と第2金属膜3との間に形成されたエッジによって散乱することを抑制することができる。その結果、表面プラズモンポラリトン集束器1は、集束した表面プラズモンポラリトン4の強度が強くなるとともに、散乱光によるバックグラウンドノイズの発生を抑制できる。
第1金属膜2および第2金属膜3の表面上を伝播する表面プラズモンポラリトン4は、進行するに伴い強度減衰が起こる。表面プラズモンポラリトン4の強度が1/eになる距離を伝播長と呼び、伝播長は表面プラズモンポラリトン4が伝播する第1金属膜2および第2金属膜3の金属材料および膜厚に依存する。伝播長は、第1金属膜2および第2金属膜3の金属材料および膜厚によって、数十nm〜数十μmまで大きく変化するため、伝播長が短くなりすぎないように、第1金属膜2および第2金属膜3の構成を考慮する必要がある。
表面プラズモンポラリトン4が第1金属膜2および第2金属膜3の表面上を伝播する距離が長すぎると、集束した表面プラズモンポラリトン4の強度が減衰してしまう。そのため、第1金属膜2において表面プラズモンポラリトン4を励起させた場合は、表面プラズモンポラリトン4が励起した位置から集束する位置までの距離(焦点距離)が、また、表面プラズモンポラリトン集束器1以外で励起させた表面プラズモンポラリトン4を第1金属膜2に伝播させる場合には、第1金属膜2の伝播開始位置から集束する位置までの距離が(焦点距離)、伝播長以下であることが望ましい。これにより、表面プラズモンポラリトン4の強度が減衰する前に、表面プラズモンポラリトン4を集束することができるために、強度の強い近接場光を得ることができる。
また、本実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器1では、第1金属膜2における伝播長よりも第2金属膜3における伝播長が長いことが望ましい。特に、第2金属膜3における表面プラズモンポラリトン4の伝播長は、表面プラズモンポラリトン集束器1における表面プラズモンポラリトン4の焦点距離が、表面プラズモンポラリトン4が第1金属膜2と第2金属膜3との間に形成された境界線に対して入射する入射ビーム幅が回折限界より十分大きい必要があることや、十分な干渉効果を得ること等を考慮すると、表面プラズモンポラリトン4の波長の5倍程度であることが望ましい。
これにより、表面プラズモンポラリトン4が第1金属膜2と第2金属膜3との間に形成された境界線を通過してから、集束する位置までの距離を比較的長く設計しても、強度の強い近接場光が得られる。そのため、本実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器1を記録装置などに適用する場合は、光源を近接場光出力部(近接場光出力手段)と十分離して設置することができる。
ところで、焦点距離を短くするためには、第1金属膜2と第2金属膜3、または他の金属膜との実効屈折率の比がある程度大きくなければならず、また、それぞれの金属膜における伝播長が、それぞれの金属膜における表面プラズモンポラリトンの波長より十分長いことが好ましい。
ただし、第1金属膜2および第2金属膜3における伝播長が短くなりすぎないように、金属材料および膜厚を変化させると、第1金属膜2および第2金属膜3の実効屈折率も変化する。そのため、第1金属膜2および第2金属膜3における伝播長が短くなりすぎないように、かつ、表面プラズモンポラリトン4が所望の焦点距離を実現できるように、第1金属膜2および第2金属膜3の構成を考慮することが望ましい。
金属膜を構成する金属材料および膜厚を変化させた場合、該金属膜における実効屈折率および伝播長がどのように変化するか図2を用いて以下に説明する。図2は、Alで構成された金属膜およびAgで構成された金属膜の膜厚を変化させた場合における、該各金属膜の実効屈折率および伝播長の変化を示すグラフである。
図2では、Alで構成された金属膜およびAgで構成された金属膜は両面空気に接している構成であり、周波数が7.5×1014Hzのシンメトリーモードの表面プラズモンポラリトン4を伝播させてシュミレーションしている。図中の実線は上記各金属膜の実効屈折率を示し、点線は該各金属膜における表面プラズモンポラリトン4の伝播長が表面プラズモンポラリトン4の波長に対して何倍かを示している。
図2を参照すると、Alで構成された金属膜およびAgで構成された金属膜は、どちらも膜厚が増加するに伴い実効屈折率が高くなり、伝播長が短くなっている。具体的には、Alで構成された金属膜およびAgで構成された金属膜は、膜厚が約50nmより大きくなると、どちらも伝播長が表面プラズモンポラリトン4の波長と略同一の長さまで短くなる。また、Agで構成された金属膜では、膜厚が約50nmより大きくなると、ほぼ一定の実効屈折率となるが、Alで構成された金属膜では、膜厚が増加するほど実効屈折率が高くなる。
このように、金属膜を構成する材料が異なると、各金属膜の膜厚を変化させた場合における伝播長および実効屈折率の変化が異なる。そのため、第1金属膜2および第2金属膜3の構成を設計する場合には、金属膜における伝播長および実効屈折率が金属膜を構成する材料および金属膜の膜厚に依存することと、金属膜の膜厚を変化させた場合における伝播長および実効屈折率の変化が金属膜を構成する材料に依存することとを考慮して、金属膜を構成する金属材料および金属膜の膜厚を決定することが望ましい。
ここで、本実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器1が、図25に示す金属膜201のように、第1金属膜202と第2金属膜203との膜厚を異ならせることにより実効屈折率を異ならせているのではなく、第1金属膜2と第2金属膜3との膜厚を同一にし、各金属膜を構成する金属材料を異ならせることにより、実効屈折率を異ならせていることの利点について以下に説明する。
図25に示す金属膜201は、例えば、第1金属膜202および第2金属膜203をそれぞれAgから構成し、第1金属膜202の膜厚を100nmとし、第2金属膜203の膜厚を20nmとした場合、図2を参照すると、第1金属膜202と第2金属膜203との実効屈折率の比は1.13となる。
これに対し、本実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器1のように、第1金属膜2および第2金属膜3を異なる金属材料を用いて同じ膜厚で構成した場合、例えば、第1金属膜2をAl、第2金属膜3をAgから構成し、膜厚をそれぞれ100nmとした場合、図2を参照すると、第1金属膜2と第2金属膜3との実効屈折率の比は1.12となる。
したがって、本実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器1の第1金属膜2と第2金属膜3との実効屈折率比は、金属膜201のように第1金属膜202と第2金属膜203との膜厚を異ならせなくても、金属膜201の第1金属膜202と第2金属膜203との実効屈折率比とほぼ同一にすることができる。
また、金属膜201の第1金属膜202、表面プラズモンポラリトン集束器1の第1金属膜2および第2金属膜3における伝播長は、金属膜201の第2金属膜203における伝播長よりも短いが、表面プラズモンポラリトン4の波長に対して約18倍と十分な長さを有しているために、表面プラズモンポラリトン4の減衰には大きな影響を与えない。
次に、図25に示す金属膜201の第1金属膜202のエッジによって生じる表面プラズモンポラリトン4の散乱について図3を参照して説明する。図3は、金属膜201が、例えば、第1金属膜202および第2金属膜203がそれぞれAgから構成されており、第1金属膜202の膜厚が100nm、第2金属膜203の膜厚が100nm以下の場合において、周波数7.5×1014Hzのシンメトリーモードの表面プラズモンポラリトン4が第1金属膜202から第2金属膜203に伝播したときの第1金属膜202のエッジにおけるエッジ強度比および結合効率を示す図である。
なお、エッジ強度比とは、図中の実線で示されており、第1金属膜202のエッジにおける電場強度と、第1金属膜202と第2金属膜203との間に膜厚差がない場合において、第1金属膜202と第2金属膜203との間に形成された境界線における電場強度との比である。
また、結合効率とは、図中の点線で示されており、表面プラズモンポラリトン4が第1金属膜202のエッジを通過した後の電場強度と、第1金属膜202と第2金属膜203との間に膜厚差がない場合において、表面プラズモンポラリトン4が第1金属膜202と第2金属膜203との間に形成された境界線を通過した後の電場強度との比である。
図3に示すように、エッジ強度比は第1金属膜202と第2金属膜203との膜厚差が約20nmのときに最大値となり、それ以外の膜厚差であれば、膜厚差が小さくなるほど、また、膜厚差が大きくなるほどエッジ強度比は小さくなる。このように、第1金属膜202のエッジにおける表面プラズモンポラリトン4の散乱量は、第1金属膜202と第2金属膜203との膜厚差が所定の厚みのときに最大となる。なお、第1金属膜202のエッジにおける表面プラズモンポラリトン4の散乱量は、表面プラズモンポラリトン4の波長または第1金属膜202および第2金属膜203を構成する材料を異ならせることにより変化する。
また、結合効率は、第1金属膜202のエッジに入射した表面プラズモンポラリトン4がエッジにおいて散乱され、エネルギーを失うため、エッジ強度比とは逆の傾向となる。すなわち、第1金属膜202と第2金属膜203との膜厚差が約20nmのときに最小値となり、それ以外の膜厚差であれば、膜厚差が小さくなるほど、また、膜厚さが大きくなるほど結合効率は大きくなる。したがって、例えば、金属膜201の第1金属膜202および第2金属膜203がそれぞれAgから構成されており、第1金属膜202の膜厚が100nm、第2金属膜203の膜厚が20nm(すなわち、膜厚差80nm)の場合、図3に示すように、第1金属膜202のエッジにおいて、表面プラズモンポラリトン4は第1金属膜202を伝播している強度の3.1倍で散乱され、結合効率が0.45となってしまう。
このように、図25に示した金属膜201の構成では、第1金属膜202のエッジにおいて、表面プラズモンポラリトン4が多量に散乱し、利用可能な表面プラズモンポラリトン4の強度が低下してしまう。そのため、本実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器1のように、第1金属膜2と第2金属膜3との間において、膜厚差がない構成であることが好ましい。上述したように、第1金属膜2と第2金属膜3との膜厚が同一であったとしても、構成する金属材料を異ならせることにより、第1金属膜2の実効屈折率と第2金属膜3の実効屈折率との間に差を出すことが可能である。さらに、図3に示すように、第1金属膜2と第2金属膜3との膜厚を同一とすることにより、表面プラズモンポラリトン4は、第1金属膜2と第2金属膜3との間に形成された境界において散乱することなく伝播される。
また、金属膜の実効屈折率を異ならせるためには、図26に示した表面プラズモンレンズ211のように、金属膜215の一方の面に屈折率の異なる第1誘電体層213および第2誘電体層214を設けることにより、第1誘電体層213が設けられている側の実効屈折率と、第2誘電体層214が設けられている側の実効屈折率とを異ならせることもできる。
ここで、本実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器1が、図26に示す表面プラズモンレンズ211のように、金属膜215の一方の面上に設けられた誘電体層の屈折率を異ならせることにより実効屈折率を異ならせているのではなく、第1金属膜2と第2金属膜3との膜厚を同一にし、各金属膜を構成する金属材料を異ならせることにより、実効屈折率を異ならせていることの利点について図4を参照して以下に説明する。図4は、Auで構成された金属膜、Alで構成された金属膜およびAgで構成された金属膜上に設けられた誘電体の屈折率を変化させた場合における、該各金属膜の実効屈折率および伝播長の変化を示すグラフである。
図4では、屈折率2.0の基板上に、Auで構成された金属膜、Alで構成された金属膜およびAgで構成された金属膜をそれぞれ膜厚100nmで設けた構成であり、周波数が5.5×1014Hzのシンメトリーモードの表面プラズモンポラリトン4を伝播させてシュミレーションしている。図中の実線は上記各金属膜の実効屈折率を示し、点線は該各金属膜における表面プラズモンポラリトン4の伝播長が表面プラズモンポラリトン4の波長に対して何倍かを示している。
図26に示す表面プラズモンレンズ211を、例えば、金属膜215をAlから構成し、第1誘電体層213の屈折率を1(空気)とし、第2誘電体層214の屈折率を2とした場合には、図4に示すように、金属膜215の第1誘電体層213が設けられている側と第2誘電体層214が設けられている側との実効屈折率比は非常に大きくなる。また、例えば、金属膜215をAgから構成した場合も、金属膜215をAlから構成した場合と同様に、第1誘電体層213の屈折率を1(空気)とし、第2誘電体層214の屈折率を2としたときは、図4に示すように、金属膜215の第1誘電体層213が設けられている側と第2誘電体層214が設けられている側との実効屈折率比は非常に大きくなる。しかしながら、第2誘電体層214の屈折率を2とした場合には、伝播長が表面プラズモンポラリトン4の波長の数倍程度と短くなる。
このように、図26に示した表面プラズモンレンズ211の構成では、金属膜215の第1誘電体層213が設けられている側と第2誘電体層214が設けられている側との実効屈折率比を、表面プラズモンポラリトン4の十分な集束を起こすことを実現するためには、第2誘電体層214の屈折率を大きくする必要があり、金属膜215の第2誘電体層214が設けられている側における伝播長が非常に短くなってしまう。そのため、本実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器1のように、第1金属膜2と第2金属膜3との金属材料を異ならせることにより、実効屈折率を異ならせている構成であることが好ましい。
図2〜図4において示したように、金属膜における実効屈折率および伝播長は、金属膜を構成する金属材料、金属膜の膜厚、金属膜の接する材料、表面プラズモンポラリトンの周波数および表面プラズモンポラリトンのモードに依存するが、本実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器1のように、第1金属膜2および第2金属膜3を異なる金属材料を用いて構成することにより、設計自由度がより高くなることは明らかである。
なお、第1金属膜2と第2金属膜3を構成する材料としては、表面プラズモンポラリトン4が伝播可能な金属であればよいが、伝播長が長くなるため、電気伝導率の高い金属を用ことが好ましい。第1金属膜2および第2金属膜3に好適に用いられる材料としては、例えば、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)等の貴金属や、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)等がある。
なお、本実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器1は、同一の膜厚を有した第1金属膜2と第2金属膜3との間に境界線が形成されている。すなわち、第1金属膜2の金属膜支持部材5と接している面とは反対側の面と第2金属膜3の金属膜支持部材5と接している面とは反対側の面とは面一となっている。しかしながら、現実的には、表面プラズモンポラリトン集束器を作成する際に、上記境界線において膜厚差がまったくない状態にすることは困難である。現在の成膜装置においては、膜厚制御は、領域の大きさにも依るが、膜厚の±5%程度である。よって、本実施形態において、「同じ膜厚」および「面一」とは、膜厚の5%までの膜厚差を含むものとする。
図8において、例えば、第1金属膜2および第2金属膜3の膜厚を100nmとする場合、第1金属膜2と第2金属膜3との膜厚差は5nmとなる。このとき、図23に示すように、エッジ強度比が約1.9、結合効率が約0.6となるが、この値は表面プラズモンポラリトン4の散乱にそれほど大きな影響を与えない。また、金属膜の表面には表面ラフネスと呼ばれる凹凸が生じる。凹凸の大きさは金属膜の下の材料、該下の材料の表面状態と金属膜の材料との相性および膜厚に依存する。このような表面ラフネスがある場合は、金属膜の膜厚として、金属膜のいくつかの位置における膜厚の平均値を取るものとする。したがって、位置(x,y)における膜厚をh(x,y)、金属膜の面積をSとすると、平均膜厚haは、
となる。
次に、本実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器1によって、第2金属膜3に集束された表面プラズモンポラリトン4を、光記録または光アシスト磁気記録に利用するために近接場光として取り出す方法について以下に説明する。
表面プラズモンポラリトン4を近接場光として取り出すためには、2つの近接場光利用方法がある。以下に2つの近接場光利用方法について説明する。
1つめの近接場光利用方法は、例えば、表面プラズモンポラリトン4を光記録または光アシスト磁気記録に用いる場合に、第2金属膜3において集束された表面プラズモンポラリトン4に対して記録媒体等の対象物を近づけることによって、表面プラズモンポラリトン4自体の近接場光を用いる方法である。このとき、上記対象物と表面プラズモンポラリトン集束器1とは、表面プラズモンポラリトン4の波長の4分の1以内の範囲にまで近づければよい。ただし、この方法では、集束された表面プラズモンポラリトン4の回折限界より小さいスポットを生成することはできない。
2つめの近接場光利用方法は、第2金属膜3において集束された表面プラズモンポラリトン4を、金属膜上に形成された近接場光出力部(近接場光出力手段)によって散乱させて、別の近接場光として取り出す方法であり、以下の2つの方法がある。
1つめの方法としては、表面プラズモンポラリトン集束器1の第2金属膜3のエッジにおいて散乱させる方法である。第2金属膜3のエッジは、第2金属膜3の外周部分となる端部であってもよいし、第2金属膜3に開口部を設けた場合は、開口部の端部であってもよい。
2つめの方法としては、第2金属膜3上に微小突起等の突起部を形成する方法である。上記突起部としては、例えば、第2金属膜3上に設けられた金属微粒子であってもよい。
このように、2つめの近接場光利用方法では、本実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器1の用途に応じて、近接場光出力部として、前記金属膜の金属端または前記金属膜に設けられた開口、スリットあるいは金属突起を用いることが好ましい。
なお、表面プラズモンポラリトン4は進行するに伴い強度減衰が起こるために、強い近接場光を得るためには、第1金属膜2と第2金属膜3との間に形成された境界線から、第2金属膜3のエッジまたは突起部までの距離が、表面プラズモンポラリトン4の伝播長より短いことが望ましい。
また、2つめの近接場光利用方法における1つめの方法および2つめの方法は、散乱体を表面プラズモンポラリトン4の集束位置に設けることが望ましい。これにより、表面プラズモンポラリトン集束器1において集束された表面プラズモンポラリトン4を効率良く近接場光として取り出すことが可能となる。
〔第2実施形態〕
次に、入射境界線のみを有する本発明の第2実施形態に係る表面プラズモンポラリトン集束器11について図5を参照して説明する。図5は、第2実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器11の概略構成を示す上面図および斜視図である。なお、図中の矢印は表面プラズモンポラリトン4の伝播方向を示している。また、第1実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器1における構成要素と、同等の機能を有する構成要素については同一の符号を付記している。
本実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器11は、図5に示すように、金属膜支持部材5と、第1金属膜12と、第2金属膜13とから構成されている。本実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器11において、第1金属膜12の実効屈折率をn10とし、第2金属膜13の実効屈折率をn20とした場合、n10>n20という関係となる。
表面プラズモンポラリトン集束器11では、表面プラズモンポラリトン4は、第2金属膜13から第1金属膜12へと伝播する構成であり、第1金属膜12において表面プラズモンポラリトン4が集束される。すなわち、第1実施形態が第1金属膜2から第1金属膜2より実効屈折率の大きい第2金属膜3へ表面プラズモンポラリトン4が伝播する構成であるのに対し、本実施形態では第2金属膜13から第2金属膜13より実効屈折率の小さい第1金属膜12へと表面プラズモンポラリトン4が伝播する構成である。
表面プラズモンポラリトン集束器11では、第2金属膜13から第2金属膜13より実効屈折率の小さい第1金属膜12へと表面プラズモンポラリトン4が伝播するために、第1実施形態と同じように、第1金属膜12と第2金属膜13との間に形成された境界線を楕円弧とすると、表面プラズモンポラリトン4は第1金属膜12において拡散してしまう。
そのため、第1金属膜12と第2金属膜13との間に形成された境界線は、曲線となっており、第2金属膜13から第1金属膜12に向かって凸形状である。本実施形態では上記凸形状は、波面収差を少なくすることにより高い集束性能を持たせるため、双曲線となっている。上記構成により、本実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器11は、表面プラズモンポラリトン4の集束サイズが小さくなるために、集束した電場強度が高くなり、強度の強い近接場光を得ることができる。したがって、例えば、上記構成の表面プラズモンポラリトン集束器を記録装置に適用すると、集束サイズが非常に小さいために、記録媒体に対して微小マークを記録することが可能となる。
さらに、第1金属膜12と第2金属膜13との間に形成された境界線の双曲線の離心率eは、第1金属膜12の実効屈折率n10および第2金属膜13の実効屈折率n20と、
という関係であることが好ましい。
また、上記双曲線の焦点距離fは、双曲線の2つの焦点から双曲線への距離の差を2aとすると、
となる。
本実施形態では、表面プラズモンポラリトン4の伝播方向は、第1金属膜12と第2金属膜13との間に形成された双曲線の境界線に対して、双曲線の2つの焦点を結ぶ線に平行であることが望ましい。
表面プラズモンポラリトン4が第1金属膜12と第2金属膜13との間に形成された双曲線の境界線に対して、双曲線の2つの焦点を結ぶ線に平行に伝播すると、第1金属膜12と第2金属膜13との間に形成された境界線が第2金属膜13から第1金属膜12に向かって双曲線に凸型となっており、かつ、第1金属膜12の実効屈折率が第2金属膜13の実効屈折率より小さいために、表面プラズモンポラリトン4は該境界線の外側部分において大きく屈折し、該境界線の中心部分においてほとんど屈折せず、双曲線の焦点において表面プラズモンポラリトン4が集束する。
なお、本実施形態の第1金属膜12および第2金属膜13は、第1金属膜12と第2金属膜13との間に形成された境界線が双曲線であること以外、すなわち、各金属膜を構成する金属材料、各金属膜の膜厚、各金属膜の接する材料、表面プラズモンポラリトン4の波長、表面プラズモンポラリトン4のモード等の自由度は、第1実施形態の第1金属膜2および第2金属膜3と同様に設定可能であるために、ここでは説明は省略する。
〔第3実施形態〕
次に、入射境界線および出射境界線を有する本発明の第3実施形態に係る表面プラズモンポラリトン集束器21について図6を参照して説明する。図6は、第3実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器の概略構成を示す上面図および斜視図である。なお、図中の矢印は表面プラズモンポラリトン4の伝播方向を示している。また、第1実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器1における構成要素と、同等の機能を有する構成要素については同一の符号を付記している。
本実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器21は、図6に示すように、金属膜支持部材5と、第1金属膜22と、第1金属膜22に囲まれた第2金属膜23とから構成されている。
なお、本実施形態の第1金属膜22および第2金属膜23は、第2金属膜23が第1金属膜22に囲まれている構成であること以外、すなわち、各金属膜を構成する金属材料、各金属膜の膜厚、各金属膜の接する材料、表面プラズモンポラリトン4の波長、表面プラズモンポラリトン4のモード等の自由度は、第1実施形態の第1金属膜2および第2金属膜3と同様に設定可能であるために、ここでは説明は省略する。
本実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器21は、第2金属膜23が第1金属膜22に囲まれているために、表面プラズモンポラリトン4を第1金属膜22から第2金属膜23へと伝播させると、表面プラズモンポラリトン4は第2金属膜23を通り抜けて、再び第1金属膜22へ伝播される。そのため、表面プラズモンポラリトン4は、第1金属膜22と第2金属膜23との間に形成された境界線を2回通過することになる。すなわち、表面プラズモンポラリトン4は、入射境界線および出射境界線を通過する。なお、本実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器21において、入射境界線の2つの焦点を結ぶ線と出射境界線の2つの焦点を結ぶ線は互いに平行である。
このため、表面プラズモンポラリトン4は、第1金属膜22と第2金属膜23との間に形成された境界線において、2回伝播方向が変換され、より急峻に集束される。
なお、本実施形態では第2金属膜23を第1金属膜22で囲むことにより、表面プラズモンポラリトン4が第1金属膜22と第2金属膜23との間に形成された境界線を2回通過する設計としているが、本発明はこれに限られない。つまり、第1金属膜22および第2金属膜23は、第1金属膜22、第2金属膜23、第1金属膜22の順番に隣接して設けられていてもよい。また、第3金属膜を用いて、第1金属膜22と第2金属膜23との間に形成された境界線を入射境界線とし、第2金属膜23と第3金属膜との間に形成された境界線を出射境界線としてもよい。この場合、第2金属膜の実効屈折率をn2とし、第3金属膜の実効屈折率をn3とすると、n2>n3であることが望ましい。
〔第4実施形態〕
次に、入射境界線および2つの出射境界線を有する本発明の第4実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器31について図7を参照して説明する。図7は、第4実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器31の概略構成を示す上面図および斜視図である。なお、図中の矢印は表面プラズモンポラリトン4の伝播方向を示している。また、第1実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器1における構成要素と、同等の機能を有する構成要素については同一の符号を付記している。
本実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器31は、図7に示すように、金属膜支持部材5と、第1金属膜32と、第1金属膜32に囲まれた第2金属膜33および第3金属膜34とから構成されている。本実施形態の第1金属膜32および第2金属膜33は、第3実施形態の第1金属膜22および第2金属膜23と同一の構成であるので、ここでは説明は省略する。
本実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器31が第3実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器21と異なる構成は、第3金属膜34が設けられていることである。第3金属膜34は、第1金属膜32および第2金属膜33とは異なる金属材料から構成されており、実効屈折率が異なる。
また、表面プラズモンポラリトン集束器31は、図7に示すように、第1金属膜32と第3金属膜34との間に形成された境界線が、第3実施形態の第1金属膜22と第2金属膜23との間に形成された境界線の表面プラズモンポラリトン4の出射境界線と平行となっている。
そのため、本実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器31を伝播する表面プラズモンポラリトン4は、第1金属膜32と第2金属膜33との間に形成された境界線、第2金属膜33と第3金属膜34との間に形成された境界線および第3金属膜34と第1金属膜32との間に形成された境界線を介して、第1金属膜32へと出射される。すなわち、表面プラズモンポラリトン4は、2つの出射境界線を通過することとなり、入射境界線および2つの出射境界線において、3回伝播方向を変換することが可能となる。
したがって、本実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器31は、光の場合のアクロマートレンズと同様の構成となり、表面プラズモンポラリトン4の集束性能が良くなる。
〔第5実施形態〕
次に、入射境界線および出射境界線を有する本発明の第5実施形態に係る表面プラズモンポラリトン集束器41について、図8〜13を参照して説明する。図8は、第5実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器41の概略構成を示す斜視図である。なお、図中の矢印は表面プラズモンポラリトン4の伝播方向を示している。また、図8中では、第1金属膜42を上面から見た場合の形状が長方形となっており、以下の説明においては、第1金属膜42の長手方向をx軸方向、長手方向に垂直な方向をy軸方向、第1金属膜42および第2金属膜43の膜厚方向をz方向とする。また、第1実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器1における構成要素と、同等の機能を有する構成要素については同一の符号を付記している。
本実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器41は、図8に示すように、金属膜支持部材5と、第1金属膜42と、第1金属膜42に囲まれた第2金属膜43とから構成されている。第2金属膜43は、楕円弧と直線とに囲まれた形状をしており、直線部分は楕円弧部分における楕円の2つの焦点を結んだ線に対して垂直に設けられている。
なお、本実施形態の第1金属膜42および第2金属膜43は、第2金属膜43の形状が楕円弧と直線とに囲まれた形状であること以外は、第3実施形態の第1金属膜22および第2金属膜23と同一であるために、ここでは説明は省略する。また、図8では、第1金属膜42を上面から見た場合の形状が長方形となっているが、本発明はこれに限られない。第1金属膜42の形状としては、円形や多角形等、目的に応じて適宜設定すればよい。
表面プラズモンポラリトン集束器41では、表面プラズモンポラリトン4は、第1金属膜42の第2金属膜43の楕円弧部分側から直線部分側に向かって、楕円弧部分の楕円の2つの焦点を結んだ線と平行に伝播する。
そのため、表面プラズモンポラリトン集束器41において、第1金属膜42の第2金属膜43の楕円弧部分側から直線部分側に向かって表面プラズモンポラリトン4を伝播させると、第1金属膜42と第2金属膜43との間に形成された境界線が第2金属膜43から第1金属膜42に向かって楕円弧に凸型となっており、かつ、第1金属膜42の実効屈折率が第2金属膜43の実効屈折率より小さいために、表面プラズモンポラリトン4は該境界線の外側部分において大きく屈折し、該境界線の中心部分においてほとんど屈折しない。
さらに、第1金属膜42と第2金属膜43との間に形成された境界線の直線部分において、表面プラズモンポラリトン4はさらに屈折され、第1金属膜42表面上において表面プラズモンポラリトン4の集束が起こる。なお、第1金属膜42に対する第2金属膜43の実効屈折率の比が大きいと、焦点距離が短くなり、集束効果が大きくなる。
表面プラズモンポラリトン4の集束効果を高くするには、金属膜の実効屈折率の比、境界形状を適切に設計すればよい。金属膜の実効屈折率は、金属膜材料の組み合わせ・膜厚・金属膜の接する材料によって変えることができる。
また、第2金属膜43のx軸方向における中心距離d1は、発生した表面プラズモンポラリトン4の伝播長以下であることが好ましい。これは、第1金属膜42において表面プラズモンポラリトン4を励起させた場合は、表面プラズモンポラリトン4が励起した位置から集束する位置までの距離(焦点距離)、または、表面プラズモンポラリトン集束器41以外で励起させた表面プラズモンポラリトン4を第1金属膜42に伝播させる場合には、第1金属膜42の伝播開始位置から集束する位置までの距離(焦点距離)が長すぎると、表面プラズモンポラリトン4が集束する前に、表面プラズモンポラリトン4の強度が減衰してしまうためである。
ここで、本実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器41における表面プラズモンポラリトン4の集束について、FDTD法(finite-difference time-domain method)を用いたシミュレーションにより図9を参照して確認する。図9は、表面プラズモンポラリトン集束器41の第1金属膜42および第2金属膜43の表面上における、表面プラズモンポラリトン4の電場強度分布を示す図である。
FDTD法に用いられる表面プラズモンポラリトン集束器41は、第1金属膜42および第2金属膜43が、それぞれAlおよびAgによって膜厚100nmに構成されている。このとき、図2を参照すると、第1金属膜42の実効屈折率は1.02であり、第2金属膜43の実効屈折率は1.14である。第1金属膜42と第2金属膜43との間に形成された境界線の楕円弧部分は、中心距離を2μm、半長径を4.3μm、半短径を2.1μmとしている。図9に示すように、表面プラズモンポラリトン集束器41の第1金属膜42から第2金属膜43へと、周波数が7.5×1014Hzの表面プラズモンポラリトン4を伝播させると、第2金属膜43において表面プラズモンポラリトン4が集束することが確認された。
次に、表面プラズモンポラリトン集束器41における表面プラズモンポラリトン4の集束を図10(a)および図10(b)を参照して電場の位相分布により確認する。図10(a)は、表面プラズモンポラリトン集束器41における表面プラズモンポラリトン4の進行方向の電場成分の位相分布を示す図であり、図10(b)は、表面プラズモンポラリトン集束器41における第1金属膜42および第2金属膜43の表面に垂直な電場成分の位相分布を示す図である。図10(a)および図10(b)におけるいずれの位相分布も、第2金属膜43を通過した後、一度集束し、発散していることがわかる。この収束から発散への変わり目は、図9の電場の集束する箇所とほぼ同じ位置である。
次に、入射境界線の曲率が、表面プラズモンポラリトンの集束効果に与える影響について図11および図12を参照して説明する。
まず、表面プラズモンポラリトン集束器41の第2金属膜43の半長径と表面プラズモンポラリトン4の焦点位置との関係について図11を参照して説明する。図11は、表面プラズモンポラリトン集束器41における第1金属膜42と第2金属膜43との間に形成された境界線の楕円弧部分の半長径と焦点距離との関係を示すグラフである。なお、図11のグラフは、横軸が第1金属膜42と第2金属膜43との間に形成された境界線の楕円弧部分における半長径(μm)を示し、縦軸が該境界線の直線部分から表面プラズモンポラリトン4が集束する位置までの距離である焦点距離(μm)を示す。
ここでは、表面プラズモンポラリトン集束器41の第2金属膜43は、Agから構成されており、第1金属膜42と第2金属膜43との間に形成された境界線の楕円弧部分におけるx軸方向の中心距離d1を2μmとし、離心率を0.87とする。図11に示すように、楕円弧部分の半長径を4.3μm〜6.6μmまで変化させたところ、半長径が大きくなるに伴い、焦点距離もゆるやかに大きくなっているが、半長径に関らず表面プラズモンポラリトン4が集束していることが確認できる。
次に、第1金属膜42と第2金属膜43との間に形成された境界線の楕円弧部分における半長径を4.3μmとし、離心率を0.87とし、x軸方向の中心距離d1を変化させた場合のシミュレーション結果を図12に示す。図12は、表面プラズモンポラリトン集束器41における第1金属膜42と第2金属膜43との間に形成された境界線の楕円弧部分の中心距離と焦点距離との関係を示すグラフである。なお、図12のグラフは、横軸が第1金属膜42と第2金属膜43との間に形成された境界線の楕円弧部分におけるx軸方向における中心距離d1を示し、縦軸が上記境界線の直線部分から表面プラズモンポラリトン4が集束する位置までの距離である焦点距離を示す。
図12に示すように、第1金属膜42と第2金属膜43との間に形成された境界線の楕円弧部分におけるx軸方向の中心距離d1を1.8μm〜2.2μmまで変化させたところ、中心距離d1が大きくなるに伴い、焦点距離が大きく減少しているが、中心距離d1に関わらず、表面プラズモンポラリトン4が集束していることが確認できる。
なお、金属膜支持部材5の構成が変化しても、第1金属膜42と第2金属膜43との実効屈折率比に対応した同様の結果が得られることは容易に予測される。金属膜を基板上に設けた場合の実効屈折率については、非特許文献1に具体的に記載されている。
また、本実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器41で集束された表面プラズモンポラリトン4を散乱させて使用する場合は、図13に示すように、第1金属膜42上にスリット44を設けてもよい。スリット44は、第1金属膜42の表面プラズモンポラリトン4の集束位置から、第1金属膜42と第2金属膜43との間に形成された境界線の直線部分と直交する方向に第1金属膜42の端部まで、第1金属膜42の厚み方向に切り込みが設けられている。これにより、表面プラズモンポラリトン集束器41において集束された表面プラズモンポラリトン4は、スリット44のエッジで散乱され、近接場光として取り出される。なお、本実施形態では表面プラズモンポラリトン4を散乱させるために、スリット44を設けているが、本発明はこれに限られず、金属端または開口または金属突起であってもよい。
〔第6実施形態〕
次に、第5実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器41の変形例である本発明の第6実施形態に係る表面プラズモンポラリトン集束器51について、図14を参照して説明する。図14は、第6実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器51の概略構成を示す斜視図である。なお、図中の矢印は表面プラズモンポラリトン4の伝播方向を示している。また、第1実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器1における構成要素と、同等の機能を有する構成要素については同一の符号を付記している。
本実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器51は、図14に示すように、対物レンズ55(金属膜支持部材)と、第1金属膜52と、第1金属膜52に囲まれた2つの第2金属膜53と、近接場光出力部54(近接場光出力手段)とから構成されている。
本実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器51は、第5実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器41を対物レンズ55上に2つ組み合わせた構成である。そのため、本実施形態の第1金属膜52および第2金属膜53の構成は、第5実施形態の第1金属膜42および第2金属膜43の構成と同一であるので、ここでは説明は省略する。なお、本実施形態では、第1金属膜52および第2金属膜53が形成される土台として、金属膜支持部材5の代わりに対物レンズ55が用いられている。
対物レンズ55は、一方の面が平面、他方の面が凸面で構成されている。本実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器51の第1金属膜52および第2金属膜53は、対物レンズ55の平面上に設けられており、2つの第2金属膜53は、第1金属膜52と第2金属膜53との間に形成された境界線の直線部分が、対物レンズ55の光軸に対して対称に、互いに向き合うように設けられている。そして、2つの第2金属膜53の中間位置には、金属突起からなる近接場光出力部54が設けられている。すなわち、近接場光出力部54は、対物レンズ55の光軸と第1金属膜52とが交わる位置に設けられている。
対物レンズ55の凸面側から入射光56を照射すると、第1金属膜52に対してp偏光であり、かつ、対物レンズ55において所定の角度を有する光線が、後述するKretchmann配置により、2つの第2金属膜53の楕円弧部分側から第1金属膜52の中心に向かって、第1金属膜52上に表面プラズモンポラリトン4を励起する。この表面プラズモンポラリトン4が、それぞれの第2金属膜53の楕円弧部分から直線部分へと通過することにより、第1金属膜52の近接場光出力部54において集束する。
このように、本実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器51は、第5実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器41を2つ組合わせた構成であり、各第2金属膜53において表面プラズモンポラリトン4を近接場光出力部54の1点に集束させることができるために、強度の強い近接場光を得ることができる。また、金属材料の組合せ、境界線の形状により、表面プラズモンポラリトンが集束するまでの距離や、集束サイズを変えることができ、このためのパラメータが多い分、自由な設計が可能となる。
なお、本実施形態では第5実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器41を2つ組合わせた構成が記載されているが、本発明はこれに限られず、2つ以上の表面プラズモンポラリトン集束器41を組合わせた構成であってもよい。
また、本実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器51では、近接場光出力部54として金属突起を設けることにより、集束した表面プラズモンポラリトン4を近接場光として取り出しているが、本発明はこれに限られない。つまり、近接場光出力部54として、第1金属膜52に微小開口が設けられていてもよく、この場合は、入射光56が直接微小開口に照射されることによっても、近接場光が発生する。
なお、上述した第1実施形態〜第6実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器は、隣接する各金属膜がすべて同じ膜厚であり、該金属膜上はすべて空気である場合について説明したが、該各金属膜の膜厚を変えてもよいし、該各金属膜上に別の誘電体を設けてもよい。
〔表面プラズモンポラリトン集束器の製造方法〕
ここで、本発明の表面プラズモンポラリトン集束器の製造方法について、図15(a)〜図15(e)に基づいて説明する。図15(a)〜図15(e)は、本発明の表面プラズモンポラリトン集束器の製造方法を示す断面図である。なお、本発明の表面プラズモンポラリトン集束器の製造方法は、上述した表面プラズモンポラリトン集束器1、11、21、31、41、51に適用することが可能である。以下の説明では、表面プラズモンポラリトン集束器1の製造方法について説明する。
まず、図15(a)に示すように、金属膜支持部材5上に第1金属膜2をスパッタまたは蒸着により製膜する。そして、第1金属膜2の表面全体に、フォトレジスト7をスピンコーター等により塗布する。このとき、フォトレジスト7がポジ型である場合は、第2金属膜3を形成する部分以外のフォトレジスト7をマスク6により覆う。なお、図15(a)に示すように、マスク6とフォトレジスト7とを離して設置してもよいし、互いに密着させて露光してもよい。また、マスク6の形状を等倍でフォトレジスト7へ転写してもよいし、縮小してもよい。
次に、フォトレジスト7がマスク6により覆われた状態で、金属膜支持部材5を露光および現像することにより、図15(b)に示すように、マスク6で覆われていない部分のフォトレジスト7は取り除かれる。
次に、図15(c)に示すように、フォトレジスト7が除去された部分、すなわち、第2金属膜3を形成する部分の第1金属膜2をエッチングすることにより、第1金属膜2を除去する。このエッチングの過程で、フォトレジスト7で覆われていない部分の第1金属膜2は、すべて取り除かれる。
次に、図15(d)に示すように、第2金属膜3をスパッタまたは蒸着により製膜し、マスク6で覆われて残ったフォトレジスト7を除去すると、図15(e)に示すように、第1金属膜2と第2金属膜3とが隣接した構造になる。金属膜表面にバリなどがある場合は、表面を研磨してやればよい。
表面プラズモンポラリトン集束器の製造には、ウェットエッチングプロセス、およびイオンエッチングや反応性イオンエッチング(RIE)等のドライエッチングプロセスが用いられる。
なお、上述した表面プラズモンポラリトン集束器1の製造方法において、露光には主にアライナーもしくはステッパーが使用される。また、エッチングの代わりにFIB(Focused ion beam)や、ナノインプリントによるプロセスを用いてもよい。
また、図13に示した第5実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器41のように、第1金属膜42上にスリットを設ける場合には、図15(f)に示すように、エッチング、FIB、ナノインプリント等の方法により、スリットや開口を設けることが可能である。また、図14に示した第6実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器51における近接場光出力部54のような金属突起を第1金属膜52上に設ける場合には、第1金属膜52上の所望の位置に突起を形成すればよい。
〔表面プラズモンポラリトンの励起方法〕
ここで、本発明の表面プラズモンポラリトン集束器における表面プラズモンポラリトンの励起方法について、図20〜23を用いて説明する(Surface Plasmons on smooth and rough surfaces and on gratings, Heinz Raether, Springer-Verlag, 1988 p.118〜p.123参照)。以下の説明では、説明を簡略にするために、基板、金属膜および誘電体を備えた表面プラズモンポラリトン励起部を用いて説明する。
一般的に、表面プラズモンポラリトン励起部で表面プラズモンポラリトンを励起するには、以下に述べる3つの方法、すなわち、第1の励起方法、第2の励起方法および第3の励起方法がある。
第1の励起方法は、基板、金属膜および誘電体層を備えた表面プラズモンポラリトン励起部に、基板側から適切な角度で入射光を入射させる方法である。
この第1の励起方法を用いた表面プラズモンポラリトン励起部の構成には、基板、金属膜および誘電体層の配置の違いによって、Kretchmann配置とOtto配置がある。以下に、Kretchmann配置およびOtto配置について図20および図21に基づいて説明する。
図20は、Kretchmann配置によって構成された表面プラズモンポラリトン励起部301の斜視図である。Kretchmann配置では、図20に示すように、透明基板302上に金属膜303が形成され、金属膜303の透明基板302と接している面とは逆側(光が入射する面とは逆側)の面は、透明基板302より屈折率の小さい誘電体層に(図20に示す構造では空気に相当する)接している。この表面プラズモンポラリトン励起部301で表面プラズモンポラリトンを励起するときは、入射光304を、透明基板302側から透明基板302と金属膜303の界面へ向かって、適切な角度で入射させる。すると、図20に矢印305で示したように、金属膜303内部でプラズモン共鳴が起こり、金属膜303の両面、すなわち、透明基板302と接する面(光が入射する面)およびその反対側の面に、入射光304の波数ベクトルの金属膜303に平行な成分の向き(図20中に矢印305で示した)に進行する表面波として、表面プラズモンポラリトンが発生する。
図21は、Otto配置によって構成された表面プラズモンポラリトン励起部311の斜視図である。Otto配置は、図21に示すように、透明基板302上に透明基板302より屈折率の小さい誘電体層306が形成され、誘電体層306の上に金属膜303が形成されている。この表面プラズモンポラリトン励起部311で表面プラズモンポラリトン305を励起するときは、入射光304を、透明基板302側から透明基板302と金属膜303の界面へ向かって、該界面に対して適切な角度で入射させる。すると、表面プラズモンポラリトン305が、Kretchmann配置と同じく、入射光304の波数ベクトルの金属膜303に平行な成分の向きに進行する表面波として発生する。Kretchmann配置と異なる点は、Otto配置の方が、実効屈折率が高く、かつ、伝播長が短いモードの表面プラズモンポラリトンが励起される。このため、Kretchmann配置により表面プラズモンポラリトン305を励起すると、本発明の表面プラズモンポラリトン集束器の隣接する金属膜の境界線における屈折角をそれほど大きくできないが、屈折後の伝播長が十分長くなる。一方、Otto配置により表面プラズモンポラリトン305を励起すると、本発明の表面プラズモンポラリトン集束器の隣接する金属膜の境界線における屈折角を大きくできるが、屈折後の伝播長が短くなる。
これら第1の励起方法では、Kretchmann配置およびOtto配置のどちらの配置であっても、入射光304の偏光方向を透明基板302と金属膜303との界面に対してp偏光とすると、最も効率よく表面プラズモンポラリトン305を励起することができる。
また、透明基板302と金属膜303との界面に対する入射光304の入射角度については、表面プラズモンポラリトン305を励起できる角度であれば、特に限定されるものではない。しかしながら、表面プラズモンポラリトン305は、入射光304のエネルギーが変換されるものなので、上記入射角度は、入射光304のエネルギーが最も効率よく表面プラズモンポラリトン305に変換される角度であることが好ましい。すなわち、上記入射角度は、金属膜303に対する入射光304の反射率が最小値になる角度であることが好ましい。このように、最も光の利用効率がよく最適な入射角度は、透明基板302および金属膜303の材料にもよるが、45度近辺である。また、この最適な入射角度は、透明基板302そのものをプリズムにするか、透明基板302をプリズムに接着するなどして実現される。
次に第2の励起方法について、図22に基づいて説明する。図22は、第2の励起方法を用いた表面プラズモンポラリトン励起部321の斜視図である。第2の励起方法は、図22に示すように、入射光304を金属膜303のエッジに照射する方法である。この方法において、入射光の偏光方向をエッジに垂直にすると、最も効率よく表面プラズモンポラリトン305を励起できる。金属膜303のエッジに光が照射されると、エッジ部の自由電子が光の電場により揺さぶられ、この振動が金属膜303表面の電子に伝わっていくことで表面プラズモンポラリトン305が発生する。この表面プラズモンポラリトン305は、ほぼ金属膜303のエッジに垂直な方向に進行する。
上記第2の励起方法によると、エッジに垂直な偏光方向をもつ成分が入射光に含まれていれば、表面プラズモンポラリトン305を励起できる。つまり、金属材料の屈折率および膜厚等の選択の自由度が増す。
入射光304をエッジに入射させる角度としては、金属膜303に対して垂直に入射させてもよく、第1の励起方法のように、透明基板302と金属膜303の界面に対して適切な角度、つまり表面プラズモンポラリトンを発生させるために適切な角度で入射させてもよい。
入射光304を金属膜303に対して垂直に入射させた場合、透明基板302は平行平面基板でよく、プリズムなどを用いる場合に比べて設計しやすく、また小型化に向いている。また、入射角誤差の許容範囲が第1の励起方法より広いため、組立てが容易であり、製造時間およびコストをともに削減することができる。
一方、透明基板302と金属膜303の界面に対して、表面プラズモンポラリトン305を励起するのに適した角度で入射光304を入射させた場合、エッジ以外の部分に入射した光によって表面プラズモンポラリトン305が励起され、かつエッジ部では自由電子の振動から発生する表面プラズモンポラリトン305が励起されることになる。よって、この場合には、エッジ部のみを用いて表面プラズモンポラリトン305を励起するよりも光の利用効率が高くなる。
また、上記第2の励起方法における入射光照射部である上記エッジは、金属膜に開口またはスリット(以下、開口部等とする)を設けることで、所望の位置に作製することができる。
次に、第3の励起方法について、図23に基づいて説明する。図23は、第3の励起方法を用いた表面プラズモンポラリトン励起部331の斜視図である。第3の励起方法は、図23に示すように、入射光304を金属膜303の回折格子307に適切な角度で照射する方法である。回折格子307で回折された光の波数が、表面プラズモンポラリトンの波数と一致することにより、表面プラズモンポラリトンが励起できる。入射角度については、表面プラズモンポラリトン305を励起できる角度であれば、特に限定されるものではない。しかしながら、表面プラズモンポラリトン305は、入射光304のエネルギーが変換されるものなので、上記入射角度は、入射光304のエネルギーが最も効率よく表面プラズモンポラリトン305に変換される角度であることが好ましい。すなわち、上記入射角度は、金属膜303に対する入射光304の反射率が最小値になる角度であることが好ましい。回折格子307の格子間隔は、入射角度と表面プラズモンポラリトンの波数にも依るが、波長程度である。
以下に説明する本発明の表面プラズモンポラリトン集束器の実施形態において、表面プラズモンポラリトンを発生させる場合は、第1の励起方法を用いてもよいし、第2の励起方法または第3の励起方法を用いてもよい。また、基板と金属膜と誘電体層の配置は、Kretchmann配置であってもOtto配置であってもよい。
また、入射光304の照射面積をレンズまたはビームエキスパンダー等で小さくすると、入射光の照射される領域を、近接場光出力部までの距離が表面プラズモンポラリトンの伝播長以下になる領域に絞り込むことができるので、入射光304の利用効率が高くなる。入射光304をレンズで絞った場合、入射光304はいろいろな入射角の光線を含むこととなり、表面プラズモンポラリトンを励起する最適条件から合わない光線も含まれることになる。しかしながら、照射面積を小さくすることが可能なので、入射光304の利用効率も高く、発生する表面プラズモンポラリトンの発生領域も所望の面積にまで小さくすることができるという利点がある。
〔光アシスト磁気記録装置〕
次に、本発明の表面プラズモンポラリトン集束器を用いて光アシスト磁気記録を行う光アシスト磁気記録装置60(記録装置)について、図16を参照して説明する。図16は、本発明の表面プラズモンポラリトン集束器を用いた光アシスト磁気記録装置60の斜視図である。
光アシスト磁気記録装置60は、図16に示すように、スピンドル61と、駆動部62と、制御部63とを備えている。光アシスト磁気記録装置60は、光と磁気によって、磁気記録媒体64に情報を記録するためのものである。
スピンドル61は、磁気記録媒体64を回転させるスピンドルモータに相当するものである。
駆動部62は、アーム65と、回転軸66と、スライダ部(情報記録ヘッド)57とを備えている。アーム65は、ディスク形状の磁気記録媒体64の略半径方向にスライダ部57を移動させるためのものであり、スイングアーム構造の支持部である。アーム65は、回転軸66によって支持されており、回転軸66を中心に回転することが可能となっている。スライダ部57は、磁気記録媒体64に対して、近接場光および磁界を照射するためのものであり、本発明の表面プラズモンポラリトン集束器を備えている。
制御部63は、アクセス回路69と、記録用回路70と、スピンドル駆動回路71と、制御回路68とを備えている。アクセス回路69は、スライダ部57を磁気記録媒体64の所望の位置に走査するために、駆動部62におけるアーム65の回転位置を制御するためのものである。記録用回路70は、スライダ部57における近接場光の強度およびレーザ光の照射時間を制御するためのものである。スピンドル駆動回路71は、磁気記録媒体64の回転駆動を制御するためのものである。制御回路68は、アクセス回路69、記録用回路70およびスピンドル駆動回路71を統括的に制御するためのものである。
〔スライダ部の比較例〕
上述したように、光アシスト磁気記録装置60は、スライダ部57に本発明の表面プラズモンポラリトン集束器が設けられている。そこで、まず本発明の表面プラズモンポラリトン集束器が設けられていないスライダ部を比較例として、図17を参照して説明する。図17は、スライダ部57の比較例であるスライダ部97を磁気記録媒体64側から見た平面図である。
スライダ部97は、光源80と、近接場光励起部(近接場光励起手段)81と、磁界発生部83と、磁気シールド層84と、再生素子85と、スライダ86とを備えている。
光源80は、スライダ部97へ搭載することを考慮すると小型であることが好ましく、半導体レーザが好ましい。
近接場光励起部81は、光源80からの光(伝播光)により近接場光を励起するためのものである。近接場光励起部81は、光源80の出射面側に製膜された金属膜の中心近傍に設けられており、光源80からの光の波長より小さい径を有する微小開口である。そのため、光源80から光を照射すると、近接場光励起部81において近接場光が発生する。
なお、近接場光励起部81は、本実施形態では微小開口としているが、本発明はこれに限られない。つまり、近接場光励起部81は、上記金属膜に設けられた金属微粒子であってもよい。また、光源80から近接場光励起部81に光を照射するための方法としては、光源80からの光をグレーティングやプリズム等に斜入射することによって行ってもかまわない。また、本実施形態では、光源80および近接場光励起部81は、一体化して駆動部62に搭載されているが、個別に設けてもよい。
例えば、光源80および近接場光励起部81を一体化する場合は、上述したように、光源80の出射面に直接金属膜を製膜し、微小開口を作成する等の加工を施すことによって近接場光励起部81を作成してもよい。この場合、一体化された光源80および近接場光励起部81が、共にスライダ86に搭載される。このように、光源80および近接場光励起部81を一体化すると、スライダ部97を構成する部品点数が少なくなり、組立て精度が上がるため、信頼性が上がる。また、スライダ部97が小型になるという利点がある。
また、光源80および近接場光励起部81を個別に設ける場合は、光源80からの光を近接場光励起部81に導く手段を別途設ける必要がある。なお、光を近接場光励起部81に導く手段としては、レンズまたはミラーなどの光学部品の組み合わせでもよいし、光ファイバーのような導波路を用いてもよい。
このように、光源80および近接場光励起部81を個別に設けた場合には、光源80と近接場光励起部81とが空間的に離れて設置されるため、光源80が近接場光励起部81で発生する熱の影響を受けることがなく、光の発振が安定するという利点がある。
磁界発生部83は、磁気記録媒体64へ磁界をかけ、記録マークを記録するためのものであり、NiFe,NiFeTaなどの磁性材料からなる。一般的には、磁界発生部83の一部にコイルを巻き、このコイルに流す電流の方向により、記録磁界の方向を制御する。
磁気シールド層84は、再生素子85が磁界発生部83の磁界を読み取らないように、磁界発生部83の磁界を遮るためのものである。磁気シールド層84は、例えば、磁界発生部83と同様に、NiFe,NiFeTa等の磁性材料を用いて構成されていてもよい。また、磁気シールド層84は、スライダ86と隣接して設けられており、再生素子85を囲っている。また、磁気シールド層84は、スライダ86が接続されている側とは反対側に磁界発生部83が設けられている。
再生素子85は、磁気記録媒体64に記録された記録マークを読み出す役割と、記録する際のトラッキングのためのものである。再生素子85としては、例えば、GMR(Giant Magneto Resistive)やTMR(Tunneling Magneto Resistive)などを用いればよい。また、再生素子85は、磁気記録媒体64からの漏洩磁界を検出するために、磁界発生部83からの磁界を防ぐように、周囲に磁気シールド層84が設けられている。さらに、スライダ部97は、磁界発生部83および再生素子85に加えて、光源80を搭載しているために、再生素子85を、熱による劣化および破壊を抑制するために、熱源である光源80および近接場光励起部81から離す必要がある。そのため、光源80は、磁界発生部83の磁気シールド層84が設けられている側とは反対側に設けられている。さらに、再生素子85は、磁気シールド層84内のスライダ86側に設けられている。
スライダ86は、スライダ部97と磁気記録媒体64との距離を制御するためのものである。スライダ86は、磁気記録媒体64に面する側の面に、スライダ部97の磁気記録媒体64からの浮上高さを制御するための凹凸構造が設けられている。なお、図17においては、スライダ86に作成される浮上高さ制御用の凹凸構造は省略している。
近接場光励起部81で励起された近接場光および磁界発生部83で発生する磁界は、発生位置から離れるにしたがって強度が落ちるとともに、強度分布が広がるので、近接場光励起部81および磁界発生部83を磁気記録媒体64に対してできるだけ近づけることが好ましい。さらに、再生素子85も、磁気記録媒体64からの漏洩磁界を読む際、隣のマークからの漏洩磁界の影響を少なくするため、磁気記録媒体64に対してできるだけ近づけることが好ましい。すなわち、スライダ部97は、スライダ86により、できるだけ磁気記録媒体64に近づけることが好ましく、一般的に、数nm程度であることが好ましい。スライダ86を構成する材料としては、AlTiC基板やZrO2基板が好適に用いられる。また、光源80として、半導体レーザをスライダ86と一体形成するために、スライダ86は半導体レーザ材料から構成されていてもよい。
比較例のスライダ部97では、近接場光励起部81において励起された表面プラズモンポラリトンは、励起した光の偏光方向(図の矢印)に平行な方向、すなわち活性層に平行な方向に進行してしまう。そのため、近接場光が磁界発生部83とは離れた位置で発生してしまい、スライダ部97を光アシスト磁気記録装置に適用するには好ましくない。
スライダ部97においては、光源80を90°回転させることにより、表面プラズモンポラリトン4を磁界発生部83へ進行するように励起することも可能であるが、この場合、光源80をスライダ部に一体で形成するのは難しいため、光源80以外を一体で形成した後に、磁界発生部83の側面に貼り付けることになる。しかしながら、光源80を後から貼り付ける場合、光源80の位置を磁界発生部83の位置に対して精密に調整しなければ、近接場光と記録用磁界の位置がずれてしまい、記録マークの広がりを引き起こす。
〔スライダ部の第1実施例〕
そこで、近接場光励起部81において励起された表面プラズモンポラリトン4を、磁界発生部83近傍に伝播させるために、本発明の表面プラズモンポラリトン集束器を用いたスライダ部57の構成について図18を参照して説明する。図18は、スライダ部の第1実施例に係るスライダ部57を磁気記録媒体64側から見た平面図である。なお、図18において、スライダ86に設けられる浮上高さ制御用の凹凸構造は省略している。また、比較例のスライダ部97における構成要素と、同等の機能を有する構成要素については同一の符号を付記し、説明を省略している。
本実施例のスライダ部57には、表面プラズモンポラリトン集束器1と、光源80と、近接場光励起部81と、近接場光出力部(近接場光出力手段)82と、磁界発生部83と、磁気シールド層84と、再生素子85と、スライダ86とが搭載されている。なお、本実施例のスライダ部57には、上述した表面プラズモンポラリトン集束器1、11、2131、41、51のいずれを搭載してもかまわないが、ここでは表面プラズモンポラリトン集束器1について述べる。
表面プラズモンポラリトン集束器1は、光源80の出射面に直接第1金属膜2および第2金属膜3を製膜し、近接場光励起部81として第1金属膜2に微小開口を設けている。すなわち、本実施形態のスライダ部57では、光源80の出射面が表面プラズモンポラリトン集束器1の金属膜支持部材5としての役割を有している。なお、光源80の出射面に形成される表面プラズモンポラリトン集束器1の構成は、上述した構成に限られず、光源80の出射面に金属膜支持部材5として透光性を有する材料から構成された誘電体層を製膜してから、第1金属膜2および第2金属膜3を該誘電体層の上に製膜する構成であってもよい。
近接場光出力部82は、表面プラズモンポラリトン集束器1の磁気記録媒体64に面している面上であって、磁界発生部83近傍に設けられた金属突起である。近接場光出力部82は、表面プラズモンポラリトン集束器1によって伝播・集束された表面プラズモンポラリトン4を近接場光(局所的表面プラズモンポラリトン)に変換し、該近接場光を磁気記録媒体64の記録面に対して照射することにより、磁気記録媒体64を局所的に加熱し、その局所部分のみに記録マークを記録するためのものである。
近接場光出力部82として金属突起を設けることにより、表面プラズモンポラリトン4が伝播する面を磁気記録媒体64に対向させた配置にし、近接場光励起部81の微小開口で発生した近接場光が磁気記録媒体64に照射されても、金属突起の高さの分だけ強度が減衰しており、磁気記録媒体64への影響を小さくすることができる。
また、近接場光出力部82は、開口部、スリットまたは金属膜そのもののエッジであってもかまわない。また、近接場光出力部82は、近接場光励起部81からの表面プラズモンポラリトン4の伝播する距離を、表面プラズモンポラリトン4の伝播長より短い構成にすることが好ましい。これにより、表面プラズモンポラリトン4の強度減衰が少ない分、近接場光出力部82において、強い強度の近接場光を発生させることができる。
なお、スライダ部57に第5実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器41または第6実施形態の表面プラズモンポラリトン集束器51を搭載した場合は、スリット44または近接場光出力部54が近接場光出力部82として用いられる。
なお、上述した以外の構成要素は、比較例のスライダ部97と同一の構成および配置であるので、ここでは説明は省略する。
上記構成にすることにより、簡易な構成で近接場光励起部81において励起された表面プラズモンポラリトン4を磁界発生部83近傍に伝播することが可能となる。
また、本発明の表面プラズモンポラリトン集束器を用いることにより、光源80を90°回転させた場合であっても、光源80以外を一体で形成した後に、磁界発生部83の側面に貼り付けたとき、近接場光励起部81の位置を磁界発生部83の位置に対して精密に調整することができる。
〔スライダ部の第2実施例〕
次に、スライダ部の第2実施例に係るスライダ部67について図19を参照して説明する。図19は、スライダ部の第2実施例に係るスライダ部67を磁気記録媒体64側から見た平面図である。なお、図19において、スライダ86に設けられる浮上高さ制御用の凹凸構造は省略している。
第2実施例に係るスライダ部67の各構成要素は、第1実施例のスライダ部57の各構成要素と同一の機能を有しており、配置のみが異なっている。以下に、スライダ部67の配置について説明する。
スライダ部67は、図19に示すように、スライダ86および磁界発生部83を一体で形成した後に、光源80がスライダ86の側壁に貼り付けられる。このとき、光源80の出射面が、磁気記録媒体64に対して垂直となるように設けられる。そして、表面プラズモンポラリトン集束器1が、光源80の出射面から磁界発生部83まで形成される。さらに、磁気シールド層84および再生素子85が、磁界発生部83のスライダ86が設けられている側とは反対側に形成される。
上記構成により、光源80の出射面から出射された光は、表面プラズモンポラリトン集束器1に設けられた近接場光励起部81において表面プラズモンポラリトン4に変換され、表面プラズモンポラリトン4は磁気記録媒体64に対して垂直な面において近接場光出力部82へと伝播する。
このように、光源80の出射面が、磁気記録媒体64に対して垂直な面内にあるために、光源80からの伝播光が磁気記録媒体64に照射されることを抑制することができる。そのため、バックグラウンドノイズを抑制することができる。
また、表面プラズモンポラリトン集束器1の表面プラズモンポラリトン4が伝播している面が磁気記録媒体64に向いていないため、近接場光出力部82として金属突起を設けることにより、あらかじめ近接場光励起部81と近接場光出力部82との高さを変えておかなくても、磁気記録媒体64から近接場光出力部82および磁界発生部83までの高さを等しくすることができる。また、表面プラズモンポラリトン集束器1の表面プラズモンポラリトン4が伝播している面が磁気記録媒体64に向いていないため、本実施例のスライダ部67では、表面プラズモンポラリトン集束器1のエッジ部を近接場光出力部82としても、表面プラズモンポラリトン集束器1を伝播している表面プラズモンポラリトン4が磁気記録媒体64に照射されることを抑制することができる。そのため、バックグラウンドノイズを抑制することができる。
なお、ここでは本発明の表面プラズモンポラリトン集束器を光アシスト磁気記録装置に適用する構成について記載したが、本発明の表面プラズモンポラリトン集束器の適用例としてはこれに限られない。つまり、本発明の表面プラズモンポラリトン集束器が搭載されたスライダ部は、磁界発生部83および再生素子85を備えておらず、近接場光出力部82から照射される近接場光のみで光記録媒体または感光性を有する記録媒体に対して記録を行う構成であってもよい。
近接場光出力部82から照射される近接場光のみで記録を行う場合は、本発明の表面プラズモンポラリトン集束器で発生する近接場光で小さなマークが記録でき、記録密度を上げることができる。また、本発明の表面プラズモンポラリトン集束器によって集束された表面プラズモンポラリトン4が近接場光出力部82によって変換された近接場光は、強度が強いため、転送レートを上げることができる。また、近接場光は発生位置から離れるにしたがって強度が減衰するが、記録装置の表面プラズモンポラリトン集束器では発生位置での強度が十分強いため、記録対象からの距離に余裕を持たせることができる。
〔光アシスト磁気記録装置60の動作〕
次に、光アシスト磁気記録装置60の動作について図16を参照して説明する。
光アシスト磁気記録装置60が磁気記録媒体64に対して情報を記録または再生等を行うとき、つまり動作時には、制御部63中のスピンドル駆動回路71は、磁気記録媒体64が設置されたスピンドル61を適切な回転数で回転させる。また、制御部63中のアクセス回路69は、駆動部62を動かすことによって、上述したスライダ部57、67を磁気記録媒体64上の所望の場所へと走査する。
記録用回路70は、決められた強度、および時間間隔で光源80を発光させ、かつ、磁界発生部83に磁界を発生させる。具体的には、記録用回路70は、光源80を発光させることにより、近接場光励起部81に光が照射され、近接場光励起部81において表面プラズモンポラリトン4が励起される。励起された表面プラズモンポラリトン4は、近接場光励起部81から表面プラズモンポラリトン集束器1、11、21、31、41、51により近接場光出力部82へ伝播・集束され、近接場光出力部82において局所的表面プラズモンポラリトンとして磁気記録媒体64へ照射される。これとほぼ同時に、記録用回路70は、磁界発生部83に磁界を発生させることにより、近接場光および磁界を、同時に磁気記録媒体64に対して照射することができる。
なお、光源80が常に発光していても、磁界発生部83により生じる磁界の向きが変調されていれば、この磁界の向きに対応して磁気記録媒体64へ記録することができる。
なお、近接場光と磁界の位置がずれる場合は、磁界より先に近接場光が磁気記録媒体64に照射される配置にすることが好ましい。
以上のようにして光源80の発光に対応した強さ、時間間隔で発生する局所的磁界により、磁気記録媒体64にマークが記録される。制御回路68では、光源80の発光、駆動部62の動作、スピンドル61の回転を総括し、各回路に指示を出すことで、所望の場所に所望の記録ができるようにしている。
磁気記録媒体64は、光と磁気によって記録される光磁気記録媒体であり、記録時には、磁気記録媒体64の記録層が近接場光出力部82から発生する近接場光により昇温され、磁界発生部83から発生する磁界を印加されることによって、記録層内部の磁気モーメントの向きが反転される。この磁気モーメントの反転した部分が記録マークとなる。
磁気記録媒体64の記録マークのサイズは、近接場光により十分昇温された領域と磁場が照射された領域との重なりで決まる。よってスポット径の小さい近接場光を生じる近接場光出力部82を用いることで、記録密度を向上することができる。また、磁気記録媒体64の記録マークの形成速度すなわち記録速度は記録層の昇温速度に依存し、この昇温速度は加えられる近接場光の強度に依存する。つまり、照射される近接場光の強度が強いと、磁気記録媒体64を必要な温度まで昇温する時間が短くなるため、転送レートを向上させることができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。