本発明の一実施形態について図1〜図13に基づいて説明すると以下の通りである。
本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器は、金属膜支持部材の所定の面上において形成された、互いに隣接し合い、隣接する金属膜とは異なる実効屈折率を有する少なくとも2つの金属膜を備え、表面プラズモンポラリトンを該各金属膜の少なくとも一方から、該表面プラズモンポラリトンを他方の金属膜に伝播させることにより、該各金属膜の境界線において表面プラズモンポラリトンの伝播方向を変換させるものである。
〔第1実施形態〕
まず、本発明の第1実施形態に係る表面プラズモンポラリトン方向変換器1について、図1〜図4を参照して説明する。図1(a)は、本実施形態に係る表面プラズモンポラリトン方向変換器1の概略構成を示す斜視図であり、図1(b)は第1金属膜と第2金属膜との間に形成された境界線の垂線に対する表面プラズモンポラリトンの入射角および反射角を示した上記表面プラズモンポラリトン方向変換器の平面図である。なお、図中の矢印は表面プラズモンポラリトン5の伝播方向を示している。
本実施形態の表面プラズモンポラリトン方向変換器1は、図1(a)および図1(b)に示すように、金属膜支持部材2と、第1金属膜3と、第2金属膜4とから構成されている。
本実施形態の表面プラズモンポラリトン方向変換器1は、表面プラズモンポラリトン5を、第1金属膜3または第2金属膜4から、他方の金属膜に対して伝播させることにより、第1金属膜3と第2金属膜4との間に形成された境界線において表面プラズモンポラリトン5の伝播方向を変換させるためのものであり、光アシスト磁気記録に用いられる磁気記録装置に好適に用いることができる。
なお、本実施形態の表面プラズモンポラリトン方向変換器1は、第1金属膜3または第2金属膜4のどちらかにおいて、表面プラズモンポラリトン5を発生させる構成であってもよい。第1金属膜3または第2金属膜4に表面プラズモンポラリトン5を発生させる方法については後述するので、ここでは説明は省略する。また、本実施形態の表面プラズモンポラリトン方向変換器1は、表面プラズモンポラリトン導波路の一部として用いられる構成であってもよい。以下の説明においては、表面プラズモンポラリトン5を第1金属膜3から第2金属膜4に伝播させる場合の構成について説明する。
金属膜支持部材2は、第1金属膜3および第2金属膜4を形成するための土台となるものである。なお、図1においては、金属膜支持部材2は所定の厚みを有した板として記載されているが、本発明はこれに限られない。例えば、光源の出射面を金属膜支持部材2とし、第1金属膜3および第2金属膜4を該出射面に形成する構成であってもよい。すなわち、金属膜支持部材2は形状や構成に限定されず、第1金属膜3および第2金属膜4を形成可能な構成であればよい。
また、金属膜支持部材2を利用することにより、第1金属膜3または第2金属膜4に表面プラズモンポラリトン5を発生させることが可能であり、この場合には、金属膜支持部材2として透光性を有する基板が用いられる。
この場合、金属膜支持部材2を構成する材料としては、例えば、溶融石英またはBK7(Schott Glass社)のようなクラウンガラスや、F2またはSF11のようなフリントガラスや、ルミセラ(村田製作所)のようなセラミックや、SiO2やサファイヤ等の光学結晶が好適に用いられる。また、上述した材料以外にも、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の光学樹脂が好適に用いられる。また、金属膜支持部材2は、シリコン基板のような特定の波長のみに対して透光性を有する構成であってもよい。
さらに、金属膜支持部材2を利用することにより、第1金属膜3または第2金属膜4に表面プラズモンポラリトン5を発生させる場合には、金属膜支持部材2として透光性を有する基板を用いる以外にも、例えば光源の出射面のような他の支持体上に形成された誘電体膜を用いてもよい。上記誘電体膜を構成する誘電体材料としては、透光性を有する材料であればよく、上記基板材料に加えて、MgF2、TiO2、Ta2O3、ZnO、Al2O3、SiN、AlNなどが挙げられる。
第1金属膜3および第2金属膜4は、同じ膜厚で、互いに接するように形成されている。また、第1金属膜3および第2金属膜4は、同じ膜厚であるが、それぞれ異なる種類の金属で構成されているために、実効屈折率が異なる。
なお、図1(a)および図1(b)では、表面プラズモンポラリトン方向変換器1の形状が長方形となっているが、これに限られない。すなわち、表面プラズモンポラリトン方向変換器1は、同じ膜厚であって、異なる金属材料からなる金属膜が互いに接していればよく、どのような形状であってもかまわない。
表面プラズモンポラリトン5の第1金属膜3と第2金属膜4との間に形成された境界線における屈折は、光の屈折と原理的に同じ概念であり、その屈折角は、第1金属膜3と第2金属膜4との実効屈折率の比および表面プラズモンポラリトン5の第1金属膜3と第2金属膜4との間に形成された境界線に対する入射角により決まる。
なお、入射角とは、図1(b)に示すように、第1金属膜3表面上を表面プラズモンポラリトン5が第1金属膜3と第2金属膜4との間に形成された境界線に対して伝播していく場合に、該境界線の垂線に対する表面プラズモンポラリトン5の伝播方向のなす角θ1(θ)(ただし、0度<θ1<90度)と定義する。また、屈折角とは、第1金属膜3から第2金属膜4表面上に表面プラズモンポラリトン5が伝播していく場合に、第1金属膜3と第2金属膜4との間に形成された境界線の垂線に対する、第2金属膜4表面における表面プラズモンポラリトン5の伝播方向のなす角θ2(ただし、0度<θ2<90度)と定義する。
ここで、第1金属膜3と第2金属膜4との実効屈折率の比と、第1金属膜3と第2金属膜4との間に形成された境界線に対する表面プラズモンポラリトン5の入射角および屈折角との関係について説明する。
第1金属膜3と第2金属膜4との間に形成された境界線に対する表面プラズモンポラリトン5の入射角および屈折角の関係、すなわち、表面プラズモンポラリトン5の伝播方向の変換の大きさは、光の屈折と同じ原理(Snellの法則)により、
と表される。なお、n1は第1金属膜3の実効屈折率であり、n2は第2金属膜4の実効屈折率を示す。すなわち、n1とn2との比が大きければ、第1金属膜3と第2金属膜4との間に形成された境界線において、伝播方向は大きく変換される。
また、第1金属膜3および第2金属膜4の実効屈折率は、上述したように、構成する金属材料に限られず、表面プラズモンポラリトン5のモード、金属膜の膜厚または金属膜の接する媒質の屈折率に依存する。すなわち、第1金属膜3および第2金属膜4を構成する材料が同一であったとしても、表面プラズモンポラリトン5のモード、膜厚または第1金属膜3若しくは第2金属膜4が接する媒質の屈折率を異ならせることにより、第1金属膜3と第2金属膜4との実効屈折率を異ならせることができる。
第1金属膜3と第2金属膜4との間に形成された境界線は、第1金属膜3から第1金属膜3と第2金属膜4との間に形成された境界線に表面プラズモンポラリトン5を伝播させた場合に、入射角θ1が0度<θ1<90度となるように設けられている。なお、第1金属膜3および第2金属膜4との間に形成された境界線は、この境界線を形成する2種の金属が表面プラズモンポラリトン5の波長以内の幅で混じり合っている場合も含むものとする。また、この場合の境界線とは、2種の金属が混じり合っている幅の中央を取るものとする。
第1金属膜3および第2金属膜4の表面上を伝播する表面プラズモンポラリトン5は、進行するに伴い強度減衰が起こる。表面プラズモンポラリトン5の強度が1/eになる距離を伝播長と呼び、該伝播長は表面プラズモンポラリトン5が伝播する第1金属膜3および第2金属膜4の金属材料および膜厚に依存する。上記伝播長は、第1金属膜3および第2金属膜4の金属材料および膜厚によって、数十nm〜数十μmまで大きく変化するため、伝播長が短くなりすぎないように、第1金属膜3および第2金属膜4の構成を考慮する必要がある。
例えば、波長600nmの光によって、Alにより構成された金属膜に表面プラズモンポラリトンを後述するKretchmann配置によって励起させた場合、該金属膜の膜厚を約12nmとすれば、伝播長は約14μmとなる。一方、上記構成において表面プラズモンポラリトンを後述するOtto配置によって励起させた場合は、伝播長は約1.5μmとなる。また、同様に、波長600nmの光によって、Agにより構成された金属膜に表面プラズモンポラリトンをKretchmann配置によって励起させた場合、該金属膜の膜厚を約50nmとすれば、伝播長は約20μmとなる。このように、光の波長、金属膜を構成する金属および金属膜の膜厚、励起方法を調節することにより、伝播長を調節することができる。
ただし、第1金属膜3および第2金属膜4における伝播長が短くなりすぎないように、金属材料および膜厚を変化させると、第1金属膜3および第2金属膜4の実効屈折率も変化する。そのため、第1金属膜3および第2金属膜4における伝播長が短くなりすぎないように、かつ、表面プラズモンポラリトンが所望の大きさの伝播方向の変換を実現できるように、第1金属膜3および第2金属膜4の構成を考慮することが望ましい。
金属膜を構成する金属材料および膜厚を変化させた場合、該金属膜における実効屈折率および伝播長がどのように変化するか図22を用いて以下に説明する。図22は、Alで構成された金属膜およびAgで構成された金属膜の膜厚を変化させた場合における、該各金属膜の実効屈折率および伝播長の変化を示すグラフである。
図22では、Alで構成された金属膜およびAgで構成された金属膜は両面空気に接している構成であり、周波数が7.5×1014Hzのシンメトリーモードの表面プラズモンポラリトン5を伝播させてシミュレーションしている。図中の実線は上記各金属膜の実効屈折率を示し、点線は該各金属膜における表面プラズモンポラリトン5の伝播長が表面プラズモンポラリトン5の波長に対して何倍かを示している。
図22を参照すると、Alで構成された金属膜およびAgで構成された金属膜は、どちらも膜厚が増加するに伴い実効屈折率が高くなり、伝播長が短くなっている。また、Alで構成された金属膜とAgで構成された金属膜とでは、膜厚を変化させた場合における伝播長および実効屈折率の変化が異なっている。
このように、金属膜を構成する材料が異なると、各金属膜の膜厚を変化させた場合における伝播長および実効屈折率の変化が異なる。そのため、第1金属膜3および第2金属膜4の構成を設計する場合には、金属膜における伝播長および実効屈折率が、金属膜を構成する材料および金属膜の膜厚に依存することと、金属膜の膜厚を変化させた場合における伝播長および実効屈折率の変化が、金属膜を構成する材料に依存することとを考慮して、金属膜を構成する金属材料および金属膜の膜厚を決定することが望ましい。
ここで、本実施形態の表面プラズモンポラリトン方向変換器1が、図16に示す金属膜201のように、第1金属膜202と第2金属膜203との膜厚を異ならせることにより実効屈折率を異ならせているのではなく、第1金属膜3と第2金属膜4との膜厚を同一にし、各金属膜を構成する金属材料を異ならせることにより、実効屈折率を異ならせていることの利点について以下に説明する。
図16に示す金属膜201は、例えば、第1金属膜202および第2金属膜203をそれぞれAgから構成し、第1金属膜13の膜厚を100nmとし、第2金属膜14の膜厚を20nmとした場合、図22を参照すると、第1金属膜202と第2金属膜203との実効屈折率の比は1.13となる。
これに対し、本実施形態の表面プラズモンポラリトン方向変換器1のように、第1金属膜3および第2金属膜4を異なる金属材料を用いて同じ膜厚で構成した場合、例えば、第1金属膜3をAl、第2金属膜4をAgから構成し、膜厚をそれぞれ100nmとした場合、図22を参照すると、第1金属膜3と第2金属膜4との実効屈折率の比は1.12となる。
したがって、本実施形態の表面プラズモンポラリトン方向変換器1の第1金属膜3と第2金属膜4との実効屈折率比は、金属膜201のように第1金属膜202と第2金属膜203との膜厚を異ならせなくても、金属膜201の第1金属膜202と第2金属膜203との実効屈折率比とほぼ同一にすることができる。
次に、図16に示す金属膜201の第1金属膜202のエッジによって生じる表面プラズモンポラリトン5の散乱について図23を参照して説明する。図23は、金属膜201が、例えば、第1金属膜202および第2金属膜203がそれぞれAgから構成されており、第1金属膜202の膜厚が100nm、第2金属膜203の膜厚が100nm以下の場合において、周波数7.5×1014Hzのシンメトリーモードの表面プラズモンポラリトン5が第1金属膜202から第2金属膜203に伝播したときの第1金属膜202のエッジにおけるエッジ強度比および結合効率を示す図である。
なお、エッジ強度比とは、図中の実線で示されており、第1金属膜202のエッジにおける電場強度と、第1金属膜202と第2金属膜203との間に膜厚差がない場合において、第1金属膜202と第2金属膜203との間に形成された境界線における電場強度との比である。
また、結合効率とは、図中の点線で示されており、表面プラズモンポラリトン5が第1金属膜202のエッジを通過した後の電場強度と、第1金属膜202と第2金属膜203との間に膜厚差がない場合において、表面プラズモンポラリトン5が第1金属膜202と第2金属膜203との間に形成された境界線を通過した後の電場強度との比である。
図23に示すように、エッジ強度比は第1金属膜202と第2金属膜203との膜厚差が約20nmのときに最大値となり、それ以外の膜厚差であれば、膜厚差が小さくなるほど、また、膜厚差が大きくなるほどエッジ強度比は小さくなる。このように、第1金属膜202のエッジにおける表面プラズモンポラリトン5の散乱量は、第1金属膜202と第2金属膜203との膜厚差が所定の厚みのときに最大となる。なお、第1金属膜202のエッジにおける表面プラズモンポラリトン5の散乱量は、表面プラズモンポラリトン5の波長または第1金属膜202および第2金属膜203を構成する材料を異ならせることにより変化する。
また、結合効率は、第1金属膜202のエッジに入射した表面プラズモンポラリトン5がエッジにおいて散乱され、エネルギーを失うため、エッジ強度比とは逆の傾向となる。すなわち、第1金属膜202と第2金属膜203との膜厚差が約20nmのときに最小値となり、それ以外の膜厚差であれば、膜厚差が小さくなるほど、また、膜厚さが大きくなるほど結合効率は大きくなる。したがって、例えば、金属膜201の第1金属膜202および第2金属膜203がそれぞれAgから構成されており、第1金属膜202の膜厚が100nm、第2金属膜203の膜厚が20nm(すなわち、膜厚差80nm)の場合、図23に示すように、第1金属膜202のエッジにおいて、表面プラズモンポラリトン5は第1金属膜202を伝播している強度の3.1倍で散乱され、結合効率が0.45となってしまう。
このように、図16に示した金属膜201の構成では、第1金属膜202のエッジにおいて、表面プラズモンポラリトン5が多量に散乱し、利用可能な表面プラズモンポラリトン5の強度が低下してしまう。そのため、本実施形態の表面プラズモンポラリトン方向変換器1のように、第1金属膜3と第2金属膜4との間において、膜厚差がない構成であることが好ましい。上述したように、第1金属膜3と第2金属膜4との膜厚が同一であったとしても、構成する金属材料を異ならせることにより、第1金属膜3の実効屈折率と第2金属膜4の実効屈折率との間に差を出すことが可能である。さらに、図23に示すように、第1金属膜3と第2金属膜4との膜厚を同一とすることにより、表面プラズモンポラリトン5は、第1金属膜3と第2金属膜4との間に形成された境界において散乱することなく伝播される。
なお、第1金属膜3および第2金属膜4を構成する材料としては、表面プラズモンポラリトン5が伝播可能な金属であればよいが、伝播長が長くなるため、電気伝導率の高い金属を用ことが好ましい。第1金属膜3および第2金属膜4に好適に用いられる材料としては、例えば、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)等の貴金属や、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)等がある。
ここで、本実施形態の表面プラズモンポラリトン方向変換器1における表面プラズモンポラリトン5の伝播方向の変換を、FDTD法(finite-difference time-domain method)を用いたシミュレーションにより図2を参照して確認する。図2は、表面プラズモンポラリトン方向変換器1の第1金属膜3および第2金属膜4の金属膜支持部材2に接している面とは反対側の面上における、表面プラズモンポラリトン5の位相分布を示す図である。
FDTD法に用いられる表面プラズモンポラリトン方向変換器1は、第1金属膜3および第2金属膜4が、それぞれAlおよびAgによって膜厚10nmに構成されている。表面プラズモンポラリトン方向変換器1の第1金属膜3から第2金属膜4へと、表面プラズモンポラリトン5を入射角45度で入射させる。その結果、図2に示す波面の方向から、表面プラズモンポラリトン5が、第1金属膜3と第2金属膜4との間に形成された境界線において屈折し、伝播方向を変換していることが確認された。なお、このときの実効屈折率は、後述するOtto配置で励起した場合に対応している。
次に、表面プラズモンポラリトン方向変換器1における、表面プラズモンポラリトン5の第1金属膜3および第2金属膜4に対する入射角と屈折角との関係について、図3および図4を参照して説明する。図3は、表面プラズモンポラリトン方向変換器1において、表面プラズモンポラリトン5の入射角と屈折角との関係を示すグラフである。図4は、表面プラズモンポラリトン方向変換器1において、第1金属膜3および第2金属膜4の膜厚と表面プラズモンポラリトンの屈折角との関係を示すグラフである。なお、図4では、表面プラズモンポラリトン5の第1金属膜3と第2金属膜4との間に形成された境界線に対する入射角を45度とし、第1金属膜3および第2金属膜4を、それぞれAlおよびAgから構成し、同じ膜厚にしている。
図3に示すように、表面プラズモンポラリトン5が第1金属膜3から第1金属膜3と第2金属膜4との間に形成された境界線に入射するときの入射角が大きくなるほど、表面プラズモンポラリトン5が該境界線から第2金属膜4に出射する屈折角も大きくなる。
また、図4に示すように、第1金属膜3および第2金属膜4の膜厚を厚くすると、第1金属膜3および第2金属膜4の実効屈折率が変化し、表面プラズモンポラリトン5が屈折しにくくなっていることがわかる。
また、図示しないが、表面プラズモンポラリトン方向変換器1の第1金属膜3および第2金属膜4を構成する金属材料および膜厚を変化させ、第1金属膜3と第2金属膜4との間に形成された境界線における屈折角の変化について調べた。
まず、第1金属膜3を構成する金属材料をAlとし、膜厚を10nmとした場合、第2金属膜4を構成する金属材料をCuとし、膜厚を10nmとすると、第1金属膜3と第2金属膜4との間に形成された境界線における屈折角は約17度となる。
次に、第1金属膜3を構成する金属材料をAlとし、膜厚を10nmとした場合、第2金属膜4を構成する金属材料をAuとし、膜厚を10nmとすると、第1金属膜3と第2金属膜4との間に形成された境界線における屈折角は約19度となる。
ここでは、第1金属膜3を構成する材料をAlに固定したが、第1金属膜3を他の材料から構成したとしても、実効屈折率比に対応した同様の結果が得られることは、容易に予測される。また、第1金属膜3および第2金属膜4を基板上に設けても、実効屈折率比に対応した同様の結果が得られることは容易に予測される。
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態の表面プラズモンポラリトン方向変換器11について図5、図6、図23および図24に基づいて説明する。図5は、本発明の第2実施形態に係る表面プラズモンポラリトン方向変換器11の概略構成を示す斜視図である。なお、第1実施形態の表面プラズモンポラリトン方向変換器1における構成要素と、同等の機能を有する構成要素については同一の符号を付記している。
本発明の第1実施形態に係る表面プラズモンポラリトン方向変換器1では、第1金属膜3および第2金属膜4は、異なる材料を用いて構成することにより、実効屈折率を異ならせている。金属膜の実効屈折率は、上述したように、表面プラズモンポラリトン5のモード、金属膜の膜厚、金属膜を構成する材料、金属膜の接する媒質の屈折率に依存する。そこで、本実施形態では、第1金属膜および第2金属膜の膜厚を異ならせることにより、該第1金属膜および該第2金属膜の実効屈折率を調整する構成について説明する。
表面プラズモンポラリトン方向変換器11は、図5に示すように、金属膜支持部材12と、第1金属膜13と、第2金属膜14とから構成されている。
第1金属膜13および第2金属膜14は、所定の厚みを有する板状の金属膜支持部材12の面上において、互いに接するように形成されている。第1金属膜13および第2金属膜14は、第1金属膜13の膜厚が第2金属膜14の膜厚よりも厚く、第1金属膜13の金属膜支持部材12と接している面とは反対側の面と、第2金属膜14の金属膜支持部材12と接している面とは反対側の面(図5の矢印記載面)とが面一となるように構成されている。
すなわち、金属膜支持部材12は、第1金属膜13が形成されている部分と第2金属膜14が形成されている部分とでは、厚みが異なっている。なお、金属膜支持部材12は、図5では所定の厚みを有する板として記載されているが、本発明はこれに限られない。つまり、金属膜支持部材12は形状や構成に限定されず、第1金属膜13の金属膜支持部材12に接している面とは反対側の面と、第2金属膜14の金属膜支持部材12に接している面とは反対側の面とが面一となるような構成であればよい。金属膜支持部材12を構成する材料としては、第1実施形態における金属膜支持部材2と同一であるので、ここでは説明は省略する。
このように、第1金属膜13および第2金属膜14は、それぞれの膜厚を異ならせることにより、互いに実効屈折率を異ならせている。このような構成により、1種類の金属材料を用いることにより、膜厚を変えることで実効屈折率を調整することができる。
なお、図5では、表面プラズモンポラリトン方向変換器11の形状が長方形となっているが、これに限られない。すなわち、表面プラズモンポラリトン方向変換器11は、膜厚の異なる金属膜が互いに接しており、かつ、隣接する各金属膜の金属膜支持部材12と接している面とは反対側の面が面一となる構成であればよく、どのような形状であってもかまわない。
また、第1金属膜13と第2金属膜14との間に形成された境界線は、第1金属膜13から第1金属膜13と第2金属膜14との間に形成された境界線に表面プラズモンポラリトン5を伝播させた場合に、入射角θ1が0度<θ1<90度となるように設けられている。
ここで、本実施形態の表面プラズモンポラリトン方向変換器11における表面プラズモンポラリトン5の伝播方向の変換を、FDTD法(finite-difference time-domain method)を用いたシミュレーションにより図6を参照して確認する。図6は、表面プラズモンポラリトン方向変換器11の第1金属膜13および第2金属膜14の金属膜支持部材12に接している面とは反対側の面上における、表面プラズモンポラリトン5の位相分布を示す図である。
FDTD法に用いられる表面プラズモンポラリトン方向変換器11は、第1金属膜13および第2金属膜14が、それぞれAgによって構成されている。さらに、第1金属膜13の膜厚が50nm、第2金属膜14の膜厚が10nmに構成されている。表面プラズモンポラリトン方向変換器11の第1金属膜13から第2金属膜14へと、表面プラズモンポラリトン5を入射角45度で入射させる。その結果、図6に示す波面の方向から、表面プラズモンポラリトン5が、第1金属膜13と第2金属膜14との間に形成された境界線において屈折し、伝播方向を変換していることが確認された。
ただし、第1金属膜13の膜厚が第2金属膜14の膜厚より厚いために、第1金属膜13の膜厚のエッジが現れ、表面プラズモンポラリトン5の一部が散乱され、伝播光となってしまう。そのため、図6に示した位相分布が、第1実施形態の表面プラズモンポラリトン方向変換器1における表面プラズモンポラリトン5の伝播を示した図2の位相分布と比較して乱れてしまう。本実施形態では、第1金属膜13の膜厚を第2金属膜14の膜厚より厚くした構成であるが、膜厚を逆にした場合であっても、実効屈折率比に対応した同様の結果が得られることは、容易に予測される。
しかしながら、本実施形態の表面プラズモンポラリトン方向変換器11では、第1金属膜13の金属膜支持部材12に接している面とは反対側の面と、第2金属膜14の金属膜支持部材12に接している面とは反対側の面とが面一であるために、光アシスト磁気記録装置へ応用するときに、表面プラズモンポラリトン5の伝播している面を磁気記録媒体に対向させても、該磁気記録媒体との衝突時にエッジが削られるなどの構造変化を受けにくく、経時変化を少なくすることができる。また、表面プラズモンポラリトン5の伝播面のうち金属膜支持部材12に接している面とは反対側の面にエッジがないため、該伝播面での散乱が起きにくく、散乱光によるバックグラウンドノイズの影響が少ない。さらに、表面プラズモンポラリトン5の伝播している面のうち金属膜支持部材12に接している面とは反対側の面に、凹凸がないため、該伝播面の上に別の機能を持つ素子を作成しやすい。
ここで、第1金属膜13と第2金属膜14との間に形成された境界線において、第1金属膜13のエッジが形成されている側のエッジ面と、該エッジ面とは反対側であって面一となっている面一面とにおける表面プラズモンポラリトン5の散乱について図24を参照して説明する。図24は、第1金属膜13および第2金属膜14がそれぞれAgから構成されており、第1金属膜13の膜厚が100nm、第2金属膜14の膜厚が100nm以下の構成であって、上記エッジ面および上記面一面において、周波数7.5×1014Hzのシンメトリーモードの表面プラズモンポラリトン5が第1金属膜13から第2金属膜14に伝播したときの電場強度比を示す図である。なお、図中の実線はエッジの存在する面において、点線は面一面において、第1金属膜13のエッジにおける電場強度と、第1金属膜13と第2金属膜14との間に膜厚差がないときの電場強度との比である。
図24に示すように、上記エッジの存在する面においては、第1金属膜13と第2金属膜14との膜厚差が約20nmのときに電場強度比が約7.5となり、第1金属膜13のエッジにおいて表面プラズモンポラリトン5が多量に散乱するのに対し、上記面一面においては、第1金属膜13と第2金属膜14との膜厚差が50nm以内であれば、ほぼ一定の電場強度比となっている。すなわち、上記面一面においては、第1金属膜13と第2金属膜14との膜厚差が50nm以内であれば、表面プラズモンポラリトン5は第1金属膜13のエッジによる散乱の影響はほとんどなく、散乱光はほとんど発生しない。
また、表面プラズモンポラリトン方向変換器11の上記エッジの存在する面に、第1金属膜13および第2金属膜14の膜厚の差に等しい誘電体膜を設ければ、エッジにおける散乱は起こるが、媒体との衝突を避けられ、別の素子を作成しやすくなる。
なお、本実施形態では、第1金属膜13および第2金属膜14は、同じ金属材料から構成されているものとして記載したが、第1実施形態における表面プラズモンポラリトン方向変換器1の第1金属膜3および第2金属膜4のように、異なる金属材料を用いて構成したとしても、実効屈折率は図22に示した例のようになり、実効屈折率比に対応した同様の結果が得られることは、容易に予測される。
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態の表面プラズモンポラリトン方向変換器21について図7に基づいて説明する。図7は、本発明の第3実施形態に係る表面プラズモンポラリトン方向変換器21の概略構成を示す平面図である。なお、第1実施形態の表面プラズモンポラリトン方向変換器1における構成要素と、同等の機能を有する構成要素については同一の符号を付記している。
表面プラズモンポラリトン方向変換器21は、図7に示すように、第1金属膜22と、第2金属膜23と、第3金属膜24とから構成されている。なお、図示していないが、第1金属膜22、第2金属膜23および第3金属膜24は、金属膜支持部材2の面上に形成されている。
第1金属膜22、第2金属膜23および第3金属膜24は、この順に隣接して形成されており、同じ膜厚を有している。また、第1金属膜22および第2金属膜23は、同じ膜厚であるが、それぞれ異なる種類の金属で構成されているために、実効屈折率が異なる。なお、第1金属膜22および第3金属膜24は、異なる実効屈折率を有していてもよいし、同じ実効屈折率を有していてもよい。第1金属膜22および第3金属膜24が異なる実効屈折率を有している場合は、屈折角の設計自由度がより高くなり、第1金属膜22および第3金属膜24が同じ実効屈折率を有している場合は、すなわち、同一の金属材料で同一の膜厚により構成されている場合は、作成工程が少なくなる。
なお、図7では、表面プラズモンポラリトン方向変換器21の形状が長方形となっているが、これに限られない。また、本実施形態では、第1金属膜22、第2金属膜23および第3金属膜24は、同じ膜厚で構成されており、金属材料を異ならせることによって、実効屈折率を異ならせているが、本発明はこれに限られず、同じ金属材料で構成されており、膜厚を異ならせることによって、実効屈折率を異ならせてもよいし、異なる金属材料で構成されており、かつ、膜厚を異ならせることによって実効屈折率を異ならせてもよい。
すなわち、表面プラズモンポラリトン方向変換器21は、異なる実効屈折率を有する金属膜が互いに接しており、かつ、隣接する各金属膜の金属膜支持部材2と接している面とは反対側の面が面一となる構成であればよく、どのような形状であってもかまわない。
また、第1金属膜22、第2金属膜23および第3金属膜24は、第1金属膜22と第2金属膜23との間に形成された境界線と、第2金属膜23と第3金属膜24との間に形成された境界線とが、平行以外になるように形成されている。
なお、第1金属膜22と第2金属膜23との間に形成された境界線は、第1金属膜22から第1金属膜22と第2金属膜23との間に形成された境界線に表面プラズモンポラリトン5を伝播させた場合に、入射角θ1が0度<θ1<90度となるように設けられている。また、第2金属膜23と第3金属膜24との間に形成された境界線も、第2金属膜23から第2金属膜23と第3金属膜24との間に形成された境界線に表面プラズモンポラリトン5を伝播させた場合に、入射角θ1が0度<θ1<90度(または−90度<θ1<0度)となるように設けられている。
また、上述したように、表面プラズモンポラリトン5は進行するに伴い強度減衰が起こるために、表面プラズモンポラリトン方向変換器21では、第1金属膜22と第2金属膜23との間に形成された境界線から、第2金属膜23と第3金属膜24との間に形成された境界線までの表面プラズモンポラリトン5の伝播距離は、表面プラズモンポラリトン5の伝播長より短いことが好ましい。
ここで、本実施形態の表面プラズモンポラリトン方向変換器21における表面プラズモンポラリトン5の方向変換について説明する。
本実施形態の表面プラズモンポラリトン方向変換器21において、図示しない光源により第1金属膜22において表面プラズモンポラリトン5を励起させる、または外部から第1金属膜22に表面プラズモンポラリトン5を伝播させる。そして、表面プラズモンポラリトン5は、第1金属膜22の表面を伝播し、第1金属膜22と第2金属膜23との間に形成された境界線において屈折する。さらに、表面プラズモンポラリトン5は、第2金属膜23の表面を伝播し、第2金属膜23と第3金属膜24との間に形成された境界線において屈折する。
なお、第1金属膜22、第2金属膜23および第3金属膜24を構成する金属材料や膜厚等については、第1実施形態の表面プラズモンポラリトン方向変換器1と同一であるため、ここでは説明は省略する。
以上のように、第1実施形態、第2実施形態および第3実施形態の表面プラズモンポラリトン方向変換器は、各金属膜の間に境界線が形成されている。現実的には、表面プラズモンポラリトン方向変換器を作成する際に、上記境界線において膜厚差がまったくない状態にすることは困難である。現在の成膜装置においては、膜厚制御は、領域の大きさにも依るが、膜厚の±5%程度である。よって、第1実施形態〜第3実施形態において、「同じ膜厚」および「面一」とは、膜厚の5%までの膜厚差を含むものとする。
図23において、例えば、第1金属膜13および第2金属膜14の膜厚を100nmとする場合、第1金属膜13と第2金属膜14との膜厚差は5nmとなる。このとき、図23に示すように、エッジ強度比が約1.9、結合効率が約0.6となるが、この値は表面プラズモンポラリトン5の散乱にそれほど大きな影響を与えない。また、金属膜の表面には表面ラフネスと呼ばれる凹凸が生じる。凹凸の大きさは金属膜の下の材料、該下の材料の表面状態と金属膜の材料との相性および膜厚に依存する。このような表面ラフネスがある場合は、金属膜の膜厚として、金属膜のいくつかの位置における膜厚の平均値を取るものとする。したがって、位置(x,y)における膜厚をh(x,y)、金属膜の面積をSとすると、平均膜厚haは、
となる。
〔表面プラズモンポラリトン方向変換器の製造方法〕
ここで、本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器の製造方法について、図8の(a)〜(e)に基づいて説明する。図8の(a)〜(e)は、本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器の製造方法を示す断面図である。なお、本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器の製造方法は、上述した表面プラズモンポラリトン方向変換器1、11、21に適用することが可能である。以下の説明では、表面プラズモンポラリトン方向変換器1の製造方法について説明する。
まず、図8の(a)に示すように、金属膜支持部材2上に第1金属膜3をスパッタまたは蒸着により製膜する。そして、第1金属膜3の表面全体に、フォトレジスト6をスピンコーター等により塗布する。このとき、フォトレジスト6がポジ型である場合は、第2金属膜4を形成する部分以外のフォトレジスト6をマスク7により覆う。なお、図8の(a)に示すように、マスク7とフォトレジスト6とを離して設置してもよいし、互いに密着させて露光してもよい。また、マスク7の形状を等倍でフォトレジスト6へ転写してもよいし、縮小してもよい。
次に、フォトレジスト6がマスク7により覆われた状態で、金属膜支持部材2を露光および現像することにより、図8の(b)に示すように、マスク7で覆われていない部分のフォトレジスト6は取り除かれる。
次に、図8の(c)に示すように、フォトレジスト6が除去された部分、すなわち、第2金属膜4を形成する部分の第1金属膜3をエッチングすることにより、第1金属膜3を除去する。このエッチングの過程で、フォトレジスト6で覆われていない部分の第1金属膜3は、すべて取り除かれる。
次に、図8の(d)に示すように、第2金属膜4をスパッタまたは蒸着により製膜し、マスク7で覆われて残ったフォトレジスト6を除去すると、図8の(e)に示すように、第1金属膜3と第2金属膜4とが隣接した構造になる。金属膜表面にバリなどがある場合は、表面を研磨してやればよい。
表面プラズモンポラリトン方向変換器の製造には、ウェットエッチングプロセス、およびイオンエッチングや反応性イオンエッチング(RIE)等のドライエッチングプロセスが用いられる。
なお、上述した表面プラズモンポラリトン方向変換器1の製造方法において、露光には主にアライナーもしくはステッパーが使用される。また、エッチングの代わりにFIB(Focused ion beam)や、ナノインプリントによるプロセスを用いてもよい。
〔表面プラズモンポラリトンの励起方法〕
ここで、本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器における表面プラズモンポラリトンの励起方法について、図18〜21を用いて説明する。以下の説明では、説明を簡略にするために、本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器の代わりに、基板、金属膜および誘電体を備えた表面プラズモンポラリトン励起部を用いて説明する。なお、上記基板は、透光性を有する材料から構成されていればよい。
一般的に、表面プラズモンポラリトン励起部で表面プラズモンポラリトンを励起するには、以下に述べる3つの方法、すなわち、第1の励起方法、第2の励起方法および第3の励起方法がある。
第1の励起方法は、基板、金属膜および誘電体層を備えた表面プラズモンポラリトン励起部に、基板側から適切な角度で入射光を入射させる方法である。
この第1の励起方法を用いた表面プラズモンポラリトン励起部の構成には、基板、金属膜および誘電体層の配置の違いによって、Kretchmann配置とOtto配置がある。以下に、Kretchmann配置およびOtto配置について図18および図19に基づいて説明する。
図18は、Kretchmann配置によって構成された表面プラズモンポラリトン励起部301の斜視図である。Kretchmann配置では、図18に示すように、透明基板302上に金属膜303が形成され、金属膜303の透明基板302と接している面とは逆側(光が入射する面とは逆側)の面は、透明基板302より屈折率の小さい誘電体層に(図18に示す構造では空気に相当する)接している。この表面プラズモンポラリトン励起部301で表面プラズモンポラリトンを励起するときは、入射光304を、透明基板302側から透明基板302と金属膜303の界面へ向かって、適切な角度で入射させる。すると、図18に矢印305で示したように、金属膜303内部でプラズモン共鳴が起こり、金属膜303の両面、すなわち、透明基板302と接する面(光が入射する面)およびその反対側の面に、入射光304の波数ベクトルの金属膜303に平行な成分の向き(図18中に矢印305で示した)に進行する表面波として、表面プラズモンポラリトンが発生する。
図19は、Otto配置によって構成された表面プラズモンポラリトン励起部311の斜視図である。Otto配置は、図19に示すように、透明基板302上に透明基板302より屈折率の小さい誘電体層306が形成され、誘電体層306の上に金属膜303が形成されている。この表面プラズモンポラリトン励起部311で表面プラズモンポラリトン305を励起するときは、入射光304を、透明基板302側から透明基板302と金属膜303の界面へ向かって、該界面に対して適切な角度で入射させる。すると、表面プラズモンポラリトン305が、Kretchmann配置と同じく、入射光304の波数ベクトルの金属膜303に平行な成分の向きに進行する表面波として発生する。Kretchmann配置と異なる点は、Otto配置の方が、実効屈折率が高く、かつ、伝播長が短いモードの表面プラズモンポラリトンが励起される。このため、Kretchmann配置により表面プラズモンポラリトン305を励起すると、本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器の隣接する金属膜の境界線における屈折角をそれほど大きくできないが、屈折後の伝播長が十分長くなる。一方、Otto配置により表面プラズモンポラリトン305を励起すると、本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器の隣接する金属膜の境界線における屈折角を大きくできるが、屈折後の伝播長が短くなる。
これら第1の励起方法では、Kretchmann配置およびOtto配置のどちらの配置であっても、入射光304の偏光方向を透明基板302と金属膜303との界面に対してp偏光とすると、最も効率よく表面プラズモンポラリトン305を励起することができる。
また、透明基板302と金属膜303との界面に対する入射光304の入射角度については、表面プラズモンポラリトン305を励起できる角度であれば、特に限定されるものではない。しかしながら、表面プラズモンポラリトン305は、入射光304のエネルギーが変換されるものなので、上記入射角度は、入射光304のエネルギーが最も効率よく表面プラズモンポラリトン305に変換される角度であることが好ましい。すなわち、上記入射角度は、金属膜303に対する入射光304の反射率が最小値になる角度であることが好ましい。このように、最も光の利用効率がよく最適な入射角度は、透明基板302および金属膜303の材料にもよるが、45度近辺である。また、この最適な入射角度は、透明基板302そのものをプリズムにするか、透明基板302をプリズムに接着するなどして実現される。
次に第2の励起方法について、図20に基づいて説明する。図20は、第2の励起方法を用いた表面プラズモンポラリトン方向変換器321の斜視図である。第2の励起方法は、図20に示すように、入射光304を金属膜303のエッジに照射する方法である。この方法において、入射光の偏光方向をエッジに垂直にすると、最も効率よく表面プラズモンポラリトン305を励起できる。金属膜303のエッジに光が照射されると、エッジ部の自由電子が光の電場により揺さぶられ、この振動が金属膜303表面の電子に伝わっていくことで表面プラズモンポラリトン305が発生する。この表面プラズモンポラリトン305は、ほぼ金属膜303のエッジに垂直な方向に進行する。
上記第2の励起方法によると、エッジに垂直な偏光方向をもつ成分が入射光に含まれていれば、表面プラズモンポラリトン305を励起できる。つまり、金属材料の屈折率および膜厚等の選択の自由度が増す。
入射光304をエッジに入射させる角度としては、金属膜303に対して垂直に入射させてもよく、第1の励起方法のように、透明基板302と金属膜303の界面に対して適切な角度、つまり表面プラズモンポラリトンを発生させるために適切な角度で入射させてもよい。
入射光304を金属膜303に対して垂直に入射させた場合、透明基板302は平行平面基板でよく、プリズムなどを用いる場合に比べて設計しやすく、また小型化に向いている。また、入射角誤差の許容範囲が第1の励起方法より広いため、組立てが容易であり、製造時間およびコストをともに削減することができる。
一方、透明基板302と金属膜303の界面に対して、表面プラズモンポラリトン305を励起するのに適した角度で入射光304を入射させた場合、エッジ以外の部分に入射した光によって表面プラズモンポラリトン305が励起され、かつエッジ部では自由電子の振動から発生する表面プラズモンポラリトン305が励起されることになる。よって、この場合には、エッジ部のみを用いて表面プラズモンポラリトン305を励起するよりも光の利用効率が高くなる。
また、上記第2の励起方法における入射光照射部である上記エッジは、金属膜に開口またはスリット(以下、開口部等とする)を設けることで、所望の位置に作製することができる。
次に、第3の励起方法について、図21に基づいて説明する。図21は、第3の励起方法を用いた表面プラズモンポラリトン方向変換器331の斜視図である。第3の励起方法は、図21に示すように、入射光304を金属膜303の回折格子307に適切な角度で照射する方法である。回折格子307で回折された光の波数が、表面プラズモンポラリトンの波数と一致することにより、表面プラズモンポラリトンが励起できる。入射角度については、表面プラズモンポラリトン305を励起できる角度であれば、特に限定されるものではない。しかしながら、表面プラズモンポラリトン305は、入射光304のエネルギーが変換されるものなので、上記入射角度は、入射光304のエネルギーが最も効率よく表面プラズモンポラリトン305に変換される角度であることが好ましい。すなわち、上記入射角度は、金属膜303に対する入射光304の反射率が最小値になる角度であることが好ましい。回折格子307の格子間隔は、入射角度と表面プラズモンポラリトンの波数にも依るが、波長程度である。
以下に説明する本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器の実施形態において、表面プラズモンポラリトンを発生させる場合は、第1の励起方法を用いてもよいし、第2の励起方法または第3の励起方法を用いてもよい。また、基板と金属膜と誘電体層の配置は、Kretchmann配置であってもOtto配置であってもよい。
また、入射光304の照射面積をレンズまたはビームエキスパンダー等で小さくすると、入射光の照射される領域を、近接場光出力部までの距離が表面プラズモンポラリトンの伝播長以下になる領域に絞り込むことができるので、入射光304の利用効率が高くなる。入射光304をレンズで絞った場合、入射光304はいろいろな入射角の光線を含むこととなり、表面プラズモンポラリトンを励起する最適条件から合わない光線も含まれることになる。しかしながら、照射面積を小さくすることが可能なので、入射光304の利用効率も高く、発生する表面プラズモンポラリトンの発生領域も所望の面積にまで小さくすることができるという利点がある。
〔光アシスト磁気記録装置〕
次に、本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器を用いて光アシスト磁気記録を行う光アシスト磁気記録装置50について、図9を参照して説明する。図9は、本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器を用いた光アシスト磁気記録装置50の斜視図である。
光アシスト磁気記録装置50は、図9に示すように、スピンドル51と、駆動部52と、制御部53とを備えている。光アシスト磁気記録装置50は、光と磁気によって、磁気記録媒体54に情報を記録するためのものである。
スピンドル51は、磁気記録媒体54を回転させるスピンドルモータに相当するものである。
駆動部52は、アーム55と、回転軸56と、スライダ部(情報記録再生ヘッド)57とを備えている。アーム55は、ディスク形状の磁気記録媒体54の略半径方向にスライダ部57を移動させるためのものであり、スイングアーム構造の支持部である。アーム55は、回転軸56によって支持されており、回転軸56を中心に回転することが可能となっている。スライダ部57は、磁気記録媒体54に対して、近接場光および磁界を照射するためのものであり、本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器を備えている。
制御部53は、アクセス回路59と、記録用回路60と、スピンドル駆動回路61と、制御回路58とを備えている。アクセス回路59は、スライダ部57を磁気記録媒体54の所望の位置に走査するために、駆動部52におけるアーム55の回転位置を制御するためのものである。記録用回路60は、スライダ部57における近接場光の強度およびレーザ光の照射時間を制御するためのものである。スピンドル駆動回路61は、磁気記録媒体54の回転駆動を制御するためにスピンドル51を駆動するものである。制御回路58は、アクセス回路59、記録用回路60およびスピンドル駆動回路61を統括的に制御するためのものである。
〔スライダ部の比較例〕
上述したように、光アシスト磁気記録装置50は、スライダ部57に本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器が設けられている。そこで、まず本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器が設けられていないスライダ部を比較例として、図10を参照して説明する。図10は、スライダ部57の比較例であるスライダ部97を磁気記録媒体54側から見た平面図である。
スライダ部97は、光源30と、近接場光励起部(近接場光励起手段)31と、磁界発生部33と、磁気シールド層34と、再生素子35と、スライダ36とを備えている。
光源30は、スライダ部97へ搭載することを考慮すると小型であることが好ましく、半導体レーザが好ましい。
近接場光励起部31は、光源30からの光(伝播光)により近接場光を励起するためのものである。近接場光励起部31は、光源30の出射面側に製膜された金属膜の中心近傍に設けられており、光源30からの光の波長より小さい径を有する微小開口である。そのため、光源30から光を照射すると、近接場光励起部31において近接場光が発生する。
なお、近接場光励起部31は、本比較例では微小開口としているが、これに限られない。つまり、近接場光励起部31は、上記金属膜に設けられた金属微粒子であってもよい。また、光源30から近接場光励起部31に光を照射するための方法としては、光源30からの光をグレーティングやプリズム等に斜入射することによって行ってもかまわない。また、本比較例では、光源30および近接場光励起部31は、一体化して駆動部52に搭載されているが、個別に設けてもよい。
例えば、光源30および近接場光励起部31を一体化する場合は、上述したように、光源30の出射面に直接金属膜を製膜し、微小開口を作成する等の加工を施すことによって近接場光励起部31を作成してもよい。この場合、一体化された光源30および近接場光励起部31が、共にスライダ36に搭載される。このように、光源30および近接場光励起部31を一体化すると、スライダ部97を構成する部品点数が少なくなり、組立て精度が上がるため、信頼性が上がる。また、スライダ部97が小型になるという利点がある。
また、光源30および近接場光励起部31を個別に設ける場合は、光源30からの光を近接場光励起部31に導く手段を別途設ける必要がある。なお、光を近接場光励起部31に導く手段としては、レンズまたはミラーなどの光学部品の組み合わせでもよいし、光ファイバーのような導波路を用いてもよい。
このように、光源30および近接場光励起部31を個別に設けた場合には、光源30と近接場光励起部31とが空間的に離れて設置されるため、光源30が近接場光励起部31で発生する熱の影響を受けることがなく、光の発振が安定するという利点がある。
磁界発生部33は、磁気記録媒体54へ磁界をかけ、記録マークを記録するためのものであり、NiFe,NiFeTaなどの磁性材料からなる。一般的には、磁界発生部33の一部にコイルを巻き、このコイルに流す電流の方向により、記録磁界の方向を制御する。
磁気シールド層34は、再生素子35が磁界発生部33の磁界を読み取らないように、磁界発生部33の磁界を遮るためのものである。磁気シールド層34は、例えば、磁界発生部33と同様に、NiFe,NiFeTa等の磁性材料を用いて構成されていてもよい。磁気シールド層34は、スライダ36と隣接して設けられ、スライダ36が設けられている側とは反対側には磁界発生部33が設けられ、磁界発生部33から再生素子35を隔離するように再生素子35を囲っている。
再生素子35は、磁気記録媒体54に記録された記録マークを読み出す役割と、記録する際のトラッキングの役割とを有している。再生素子35としては、例えば、GMR(Giant Magneto Resistive)やTMR(Tunneling Magneto Resistive)などを用いればよい。また、再生素子35が磁気記録媒体54からの漏洩磁界を検出できるように、磁界発生部33からの磁界を防ぐために、再生素子35の周囲には磁気シールド層34が設けられている。
また、再生素子35は熱の影響を受けやすく、熱による劣化や破壊等が生じるために、熱の影響を考慮してスライダ部97を設計する必要がある。しかしながら、スライダ部97では、磁界発生部33および再生素子35に加えて光源30を搭載しており、多量の熱が発生する。
そこで、再生素子35を熱の影響から守るために、熱源である光源30および近接場光励起部31から再生素子35を離すことが好ましい。そのため、光源30は、磁界発生部33の磁気シールド層34が設けられている側とは反対側に設けられている。さらに、再生素子35は、磁気シールド層34内の中心からスライダ36側よりに設けられている。
スライダ36は、スライダ部97と磁気記録媒体54との距離を制御するためのものである。スライダ36は、磁気記録媒体54に面する側の面に、スライダ部97の磁気記録媒体54からの浮上高さを制御するための凹凸構造が設けられている。なお、図10においては、スライダ36に作成される浮上高さ制御用の凹凸構造は省略している。
近接場光励起部31で励起された近接場光および磁界発生部33で発生する磁界は、発生位置から離れるにしたがって強度が落ちるとともに、強度分布が広がるので、近接場光励起部31および磁界発生部33を磁気記録媒体54に対してできるだけ近づけることが好ましい。
さらに、再生素子35も、磁気記録媒体54からの漏洩磁界を読む際、隣のマークからの漏洩磁界の影響を少なくするため、磁気記録媒体54に対してできるだけ近づけることが好ましい。
すなわち、スライダ部97は、スライダ36により、できるだけ磁気記録媒体54に近づけることが好ましく、一般的に、数nm程度であることが好ましい。スライダ36を構成する材料としては、AlTiC基板やZrO2基板が好適に用いられる。また、光源30として、半導体レーザをスライダ36と一体形成するために、スライダ36は半導体レーザ材料から構成されていてもよい。
本比較例のスライダ部97では、近接場光励起部31において励起された表面プラズモンポラリトン5は、励起した光の偏光方向(図の矢印)に平行な方向、すなわち活性層に平行な方向に進行してしまう。そのため、近接場光が磁界発生部33とは離れた位置で発生してしまい、スライダ部97を光アシスト磁気記録装置に適用するには好ましくない。
また、スライダ部97においては、光源30を90°回転させることにより、表面プラズモンポラリトン5を磁界発生部33へ進行するように励起することも可能であるが、この場合、光源30をスライダ部に一体で形成するのは難しいため、光源30以外を一体で形成した後に、磁界発生部33の側面に貼り付けることになる。しかしながら、光源30を後から貼り付ける場合、光源30の位置を磁界発生部33の位置に対して精密に調整しなければ、近接場光と記録用磁界の位置がずれてしまい、記録マークの広がりを引き起こす。
〔スライダ部の第1実施例〕
そこで、近接場光励起部31において励起された表面プラズモンポラリトン5を、磁界発生部33近傍に伝播させるために、本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器を用いたスライダ部57の構成について図11を参照して説明する。図11は、スライダ部の第1実施例に係るスライダ部57を磁気記録媒体54側から見た平面図である。なお、図11において、スライダ36に設けられる浮上高さ制御用の凹凸構造は省略している。また、比較例のスライダ部97における構成要素と、同等の機能を有する構成要素については同一の符号を付記し、説明を省略している。
本実施例のスライダ部57には、表面プラズモンポラリトン方向変換器1と、光源30と、近接場光励起部31と、近接場光出力部(近接場光出力手段)32と、磁界発生部33と、磁気シールド層34と、再生素子35と、スライダ36とが搭載されている。なお、本実施例のスライダ部57には、上述した表面プラズモンポラリトン方向変換器1、11、21のいずれを搭載してもかまわないが、ここでは表面プラズモンポラリトン方向変換器1について述べる。
表面プラズモンポラリトン方向変換器1は、光源30の出射面に直接第1金属膜3および第2金属膜4を製膜し、近接場光励起部31として第1金属膜3に微小開口を設けている。すなわち、本実施形態のスライダ部57では、光源30の出射面が表面プラズモンポラリトン方向変換器1の金属膜支持部材2としての役割を有している。なお、光源30の出射面に形成される表面プラズモンポラリトン方向変換器1の構成は、上述した構成に限られず、光源30の出射面に金属膜支持部材2として透光性を有する材料から構成された誘電体層を製膜してから、第1金属膜3および第2金属膜4を該誘電体層の上に製膜する構成であってもよい。
なお、本実施例では、表面プラズモンポラリトン方向変換器1の第1金属膜3から第2金属膜4に表面プラズモンポラリトン5を伝播させる構成を前提として、第1金属膜3に近接場光励起部31を設けているが、本発明はこれに限られない。つまり、表面プラズモンポラリトン方向変換器1の第2金属膜4から第1金属膜3に表面プラズモンポラリトン5を伝播させる構成を前提として、第2金属膜4に近接場光励起部31を設けてもよい。すなわち、本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器を構成する各金属膜の少なくとも1つに近接場光励起部31が設けられる構成であればよい。
近接場光出力部32は、表面プラズモンポラリトン方向変換器1の磁気記録媒体54に面している面上であって、磁界発生部33近傍に設けられた金属突起である。近接場光出力部32は、表面プラズモンポラリトン方向変換器1を伝播してきた表面プラズモンポラリトン5を近接場光(局所的表面プラズモンポラリトン)に変換し、該近接場光を磁気記録媒体54の記録面に対して照射することにより、磁気記録媒体54を局所的に加熱し、その局所部分のみに記録マークを記録するためのものである。
近接場光出力部32として金属突起を設けることにより、表面プラズモンポラリトン5が伝播する面を磁気記録媒体54に対向させた配置にし、近接場光励起部31の微小開口で発生した近接場光が磁気記録媒体54に照射されても、金属突起の高さの分だけ強度が減衰しており、磁気記録媒体54への影響を小さくすることができる。また、近接場光出力部32は、開口部、スリットまたは金属膜そのもののエッジであってもかまわない。また、近接場光出力部32は、近接場光励起部31からの表面プラズモンポラリトン5の伝播する距離を、表面プラズモンポラリトン5の伝播長より短い構成にすることが好ましい。これにより、表面プラズモンポラリトン5の強度減衰が少ない分、近接場光出力部32において、強い強度の近接場光を発生させることができる。
なお、上述した以外の構成要素は、比較例のスライダ部97と同一の構成および配置であるので、ここでは説明は省略する。
上記構成にすることにより、簡易な構成で近接場光励起部31において励起された表面プラズモンポラリトン5を磁界発生部33近傍に伝播することが可能となる。
また、本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器を用いることにより、光源30を90°回転させた場合であっても、光源30以外を一体で形成した後に、磁界発生部33の側面に貼り付けたとき、近接場光励起部31の位置を磁界発生部33の位置に対して精密に調整することができる。
〔スライダ部の第2実施例〕
次に、スライダ部の第2実施例に係るスライダ部67について図12を参照して説明する。図12は、スライダ部の第2実施例に係るスライダ部67を磁気記録媒体54側から見た平面図である。なお、図12において、スライダ36に設けられる浮上高さ制御用の凹凸構造は省略している。
第2実施例に係るスライダ部67の各構成要素は、第1実施例のスライダ部57の各構成要素と同一の機能を有しており、配置のみが異なっている。以下に、スライダ部67の配置について説明する。
本実施例のスライダ部67は、図12に示すように、スライダ36に磁界発生部33が隣接して設けられており、磁界発生部33のスライダ36が設けられている側とは反対側において、磁気シールド層34および表面プラズモンポラリトン方向変換器1が磁界発生部33に隣接して設けられている。再生素子35は、磁気シールド層34に囲まれた状態で、磁界発生部33から離れた位置に設けられている。
上記構成では、スライダ部67を磁気記録媒体54側から見た場合に、磁気シールド層34を第1実施例のスライダ部57の磁気シールド層34と比較して半分程度の大きさとし、磁界発生部33に表面プラズモンポラリトン方向変換器1と隣接して設けるために、スライダ部67を小型化することが可能である。
さらに、磁気シールド層34に囲まれた再生素子35を、磁界発生部33から離れた位置であって、表面プラズモンポラリトン方向変換器1側よりに設けることにより、再生素子35を熱および磁界の影響から守りつつ、再生素子35と近接場光出力部32および磁界発生部33との距離を小さくすることができる。これにより、トラッキングエラーを小さくすることができ、より正確にトラッキングを行うことができる。
したがって、本実施例のスライダ部67では、装置を大型化することなく、かつ、再生素子35が光源30、近接場光出力部32および磁界発生部33からの影響を受けることなく、正確なトラッキングを行うことができる。
〔スライダ部の第3実施例〕
次に、スライダ部の第3実施例に係るスライダ部77について図13を参照して説明する。図13は、スライダ部の第3実施例に係るスライダ部77を磁気記録媒体54側から見た平面図である。なお、図13において、スライダ36に設けられる浮上高さ制御用の凹凸構造は省略している。
第3実施例に係るスライダ部77の各構成要素は、第1実施例のスライダ部57の各構成要素と同一の機能を有しており、配置のみが異なっている。以下に、スライダ部77の配置について説明する。
スライダ部77は、図13に示すように、スライダ36および磁界発生部33を一体で形成した後に、光源30がスライダ36の側壁に貼り付けられる。このとき、光源30の出射面が、磁気記録媒体54に対して垂直となるように設けられる。そして、表面プラズモンポラリトン方向変換器1が、光源30の出射面から磁界発生部33まで形成される。さらに、磁気シールド層34および再生素子35が、磁界発生部33のスライダ36が設けられている側とは反対側に形成される。
なお、本実施例では、上述したように、表面プラズモンポラリトン方向変換器1は、光源30の出射面から磁界発生部33まで形成されている。すなわち、表面プラズモンポラリトン方向変換器1を構成する第1金属膜3および第2金属膜4の少なくとも一部が光源30の出射面に形成されている構成であるが、本発明はこれに限られず、第1金属膜3および第2金属膜4の全てが光源30の出射面に形成されていてもよい。また、近接場光励起部31は、表面プラズモンポラリトン方向変換器1の光源30の出射面に形成された部分に設けられている。
上記構成により、光源30の出射面から出射された光は、近接場光励起部31において表面プラズモンポラリトン5に変換され、表面プラズモンポラリトン5は磁気記録媒体54に対して垂直な面において近接場光出力部32へと伝播する。
このように、光源30の出射面が、磁気記録媒体54に対して垂直な面内にあるために、光源30からの伝播光が磁気記録媒体54に照射されることを抑制することができる。そのため、バックグラウンドノイズを抑制することができる。
また、表面プラズモンポラリトン方向変換器1の表面プラズモンポラリトン5が伝播している面が磁気記録媒体54に向いていないため、近接場光出力部32として金属突起を設けることにより、あらかじめ近接場光励起部31と近接場光出力部32との高さを変えておかなくても、磁気記録媒体54から近接場光出力部32および磁界発生部33までの高さを等しくすることができる。また、表面プラズモンポラリトン方向変換器1の表面プラズモンポラリトン5が伝播している面が磁気記録媒体54に向いていないため、本実施例のスライダ部77では、表面プラズモンポラリトン方向変換器1のエッジ部を近接場光出力部32としても、表面プラズモンポラリトン方向変換器1を伝播している表面プラズモンポラリトン5が磁気記録媒体54に照射されることを抑制することができる。そのため、バックグラウンドノイズを抑制することができる。
〔光アシスト磁気記録装置50の動作〕
次に、光アシスト磁気記録装置50の動作について図9を参照して説明する。
光アシスト磁気記録装置50が磁気記録媒体54に対して情報を記録または再生等を行うとき、つまり動作時には、制御部53中のスピンドル駆動回路61は、磁気記録媒体54が設置されたスピンドル51を適切な回転数で回転させる。また、制御部53中のアクセス回路59は、駆動部52を動かすことによって、上述したスライダ部57、67、77を磁気記録媒体54上の所望の場所へと走査する。
記録用回路60は、決められた強度および時間間隔で光源30を発光させ、かつ、磁界発生部33に磁界を発生させる。具体的には、記録用回路60は、光源30を発光させることにより、近接場光励起部31に光が照射され、近接場光励起部31において表面プラズモンポラリトン5が励起される。励起された表面プラズモンポラリトン5は、近接場光励起部31から表面プラズモンポラリトン方向変換器1、11、21により近接場光出力部32へ伝播され、近接場光出力部32において局所的表面プラズモンポラリトンとして磁気記録媒体54へ照射される。これとほぼ同時に、記録用回路60は、磁界発生部33に磁界を発生させることにより、近接場光および磁界を、同時に磁気記録媒体54に対して照射することができる。
なお、光源30が常に発光していても、磁界発生部33により生じる磁界の向きが変調されていれば、この磁界の向きに対応して磁気記録媒体54へ記録することができる。
なお、近接場光と磁界の位置がずれる場合は、磁界より先に近接場光が磁気記録媒体54に照射される配置にすることが好ましい。
以上のようにして光源30の発光に対応した強さ、時間間隔で発生する局所的磁界により、磁気記録媒体54にマークが記録される。制御回路58では、光源30の発光、駆動部52の動作、スピンドル51の回転を総括し、各回路に指示を出すことで、所望の場所に所望の記録ができるようにしている。
磁気記録媒体54は、光と磁気によって記録される光磁気記録媒体であり、記録時には、磁気記録媒体54の記録層が近接場光出力部32から発生する近接場光により昇温され、磁界発生部33から発生する磁界を印加されることによって、記録層内部の磁気モーメントの向きが反転される。この磁気モーメントの反転した部分が記録マークとなる。
磁気記録媒体54の記録マークのサイズは、近接場光により十分昇温された領域と磁場が照射された領域との重なりで決まる。よってスポット径の小さい近接場光を生じる近接場光出力部32を用いることで、記録密度を向上することができる。また、磁気記録媒体54の記録マークの形成速度すなわち記録速度は記録層の昇温速度に依存し、この昇温速度は加えられる近接場光の強度に依存する。つまり、照射される近接場光の強度が強いと、磁気記録媒体54を必要な温度まで昇温する時間が短くなるため、転送レートを向上させることができる。
〔光回路〕
また、本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器は、上述したような光アシスト磁気記録装置以外に、光通信システムおよび光コンピューターの光回路における方向変換器並びに光通信システムの多重通信方式の光回路における分波器および合波器としても好適に用いることができる。
光通信システムおよび光コンピューターの光回路において、光信号を表面プラズモンポラリトンに変換して用いるためには、表面プラズモンポラリトンの伝播方向を任意の方向に変換・分岐可能な構成とする必要がある。
そこで、従来から、光通信システムおよび光コンピューターの光回路における表面プラズモンポラリトンの方向変換器として、特許文献2に開示された金属膜201および表面プラズモンレンズ211や、非特許文献2に開示された金属微粒子401等が提案されている。非特許文献2に開示された金属微粒子401は、図25に示すように、複数の金属微粒子401を隣接して並べ、電気双極子を順に励起していくことにより、点線で示される表面プラズモンポラリトンの伝播方向を変換・分岐させるものである。
しかしながら、光通信システムおよび光コンピューターの光回路における表面プラズモンポラリトンの方向変換器として、特許文献2に開示された金属膜201または表面プラズモンレンズ211を用いた場合は、上述したように、エッジにおいて表面プラズモンポラリトンが散乱してしまうために、信号強度が低下してしまい、S/N比が低下する。さらに、このような段差があると、他の部材と物理的な干渉を招く可能性があり、設計自由度が低下してしまう。
また、光通信システムおよび光コンピューターの光回路における表面プラズモンポラリトンの方向変換器として、非特許文献2に開示された金属微粒子401を用いた場合は、表面プラズモンポラリトンを任意の方向に、かつ、任意の強度比で伝播させるためには、表面プラズモンポラリトンの偏光方向や、金属微粒子401の大きさおよび配置間隔等を調整するという、精密で困難な作業が必要となる。
これに対し、光通信システムおよび光コンピューターの光回路における表面プラズモンポラリトンの方向変換器として、本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器を用いることにより、簡易な構成で、表面プラズモンポラリトンを任意の方向に伝播することができる。さらに、エッジにおける表面プラズモンポラリトンの散乱を抑制することができるために、信号強度が低下するのを抑制することが可能である。
また、本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器は、光通信システムにおける多重通信方式の光回路の分波器および合波器として好適に用いることができる。
光通信システムにおける多重通信方式とは、通信路の大容量化を実現するために、多くの光信号を同時に同一通信路で通信を行うことである。光通信システムにおける多重通信方式としては、大きく分けて、複数の異なる周波数を有する光信号を混合して多重化する周波数分割多重方式と、時間軸上で光信号を多重化する時分割多重方式とがある。
ここで、光通信システムにおける多重通信方式の光回路の一例として、周波数分割多重方式の光回路について、図26を参照して説明する。図26は、周波数分割多重方式の光回路の一例を示す図である。
周波数分割多重方式の光回路501は、図26に示すように、分波器(表面プラズモンポラリトン分波手段)502と、変調器503と、合波器(表面プラズモンポラリトン合波手段)504とから構成されている。ここでは、周波数分割多重方式の光回路501は並列型であるために、分波器502と合波器504との間で変調器503が並列に3つ設けられている。
なお、周波数分割多重方式の光回路501における光信号の分波数は、3つに限られない。周波数分割多重方式の光回路501は、光信号の分波数に応じて、分波器502と合波器504との間に設けられる変調器503の数が変化する。
次に、周波数分割多重方式の光回路501を用いて光信号を多重化させる方法について説明する。まず、分波器502は、光回路501に送られてきた3つの異なる周波数ω1、ω2、ω3を有する1つの光信号を、周波数毎に3つの光信号に分波し、該各光信号を並列に設けられた3つの変調器503にそれぞれ伝播する。そして、変調器503は、上記光信号に対応した変調信号に基づいて該光信号を変調し、合波器504に伝播する。合波器504は、各変調器503から受信した上記各光信号を混合することにより多重化させる。
次に、光通信システムにおける多重通信方式の光回路の他の一例として、時分割多重方式の光回路について、図27を参照して説明する。図27は、時分割多重方式の光回路の一例を示す図である。
時分割多重方式の光回路511は、図27に示すように、分岐器(表面プラズモンポラリトン分岐手段)512と、変調器513と、遅延器514と、合波器(表面プラズモンポラリトン統合手段)515とから構成されている。ここでは、時分割多重方式の光回路511は並列型であるために、1つの変調器513と1つの遅延器514とが1組となり、分岐器512と合波器515との間で並列に3組設けられている。
なお、時分割多重方式の光回路511における光信号の分岐数は、3つに限られない。時分割多重方式の光回路511は、光信号の分岐数に応じて、分岐器512と合波器515との間に設けられる変調器513および遅延器514の数が変化する。
次に、時分割多重方式の光回路511を用いて光信号を多重化させる方法について説明する。まず、分岐器512は、光回路511に送られてきた1つの光信号を、3つの光信号に分岐し、該各光信号を並列に設けられた3つの変調器513にそれぞれ伝播する。そして、変調器513は、上記各光信号に対応した変調信号に基づいて該光信号を変調し、変調器513と組み合わされた遅延器514に該光信号を伝播する。遅延器514は、3つに分岐された上記各光信号を合波した際に時間軸上で互いに重ならないようにするために、上記光信号に遅延を与えるとともに、該光信号を合波器515に伝播する。合波器515は、各遅延器514から受信した上記各光信号を混合することにより多重化させる。
すなわち、周波数分割多重方式の光回路501では、複数の異なる周波数を有する1つの光信号を、分波器502において周波数毎に分波する構成であるのに対し、時分割多重方式の光回路511では、1つの周波数を有する1つの光信号を、分岐器512において複数の光信号に分岐する構成である。
上述した周波数分割多重方式の光回路501において、光回路501に送られてきた光信号が分波器502に伝播される前に、該光信号を表面プラズモンポラリトンに変換することにより、分波器502および合波器504として本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器を用いることが可能である。
ここで、周波数分割多重方式の光回路501の分波器502および合波器504として、本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器を用いた場合に、表面プラズモンポラリトン5が分波・合波する仕組みについて説明する。なお、本実施形態の周波数分割多重方式の光回路501における分波器502および合波器504には、上述した表面プラズモンポラリトン方向変換器1、11、21のいずれを用いてもかまわないが、ここでは表面プラズモンポラリトン方向変換器1を用いた場合について述べる。
上述したように、表面プラズモンポラリトン5の第1金属膜3と第2金属膜4との間に形成された境界線における屈折の屈折角は、第1金属膜3と第2金属膜4との実効屈折率の比および表面プラズモンポラリトン5の第1金属膜3と第2金属膜4との間に形成された境界線に対する入射角により決まる。ここで、第1金属膜3および第2金属膜4の実効屈折率は、上述したように、金属膜を構成する金属材料、表面プラズモンポラリトン5のモード、金属膜の膜厚または金属膜の接する媒質の屈折率に依存するだけでなく、表面プラズモンポラリトン5の周波数にも依存する。
そのため、表面プラズモンポラリトン方向変換器1において、第1金属膜3から第2金属膜4へと複数の異なる周波数を有した表面プラズモンポラリトン5を同一の入射角で入射させると、各周波数に対する第1金属膜3および第2金属膜4の実効屈折率が異なるため、表面プラズモンポラリトン5は第1金属膜3と第2金属膜4との間に形成された境界線において周波数毎に異なる方向に屈折する。
したがって、周波数分割多重方式の光回路501の分波器502として、表面プラズモンポラリトン方向変換器1を用いることにより、複数の異なる周波数を有する表面プラズモンポラリトン5を周波数毎に分波させることが可能となる。
また、周波数分割多重方式の光回路501の合波器504として、表面プラズモンポラリトン方向変換器1を用い、表面プラズモンポラリトン5を上述した経路と逆方向に伝播させることにより、周波数毎に分離している複数の表面プラズモンポラリトン5を多重化することができるのは明らかである。
このように、周波数分割多重方式の光回路501の分波器502および合波器504として、本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器を用いることにより、エッジにおける表面プラズモンポラリトン5の散乱を抑制するとともに、設計自由度の高い光回路を得ることができる。
また、周波数分割多重方式の光回路501の分波器502および合波器504として、本発明の第3実施形態の表面プラズモンポラリトン方向変換器21を用いた場合、金属膜間に形成された境界線が1つである表面プラズモンポラリトン方向変換器1、11と比較して、表面プラズモンポラリトン5の分岐・合波を短い距離で行うことができるために、表面プラズモンポラリトン5の強度減衰を抑制することができる。
また、上述した時分割多重方式の光回路511において、光回路511に送られてきた光信号が分岐器512に伝播される前に、該光信号を表面プラズモンポラリトンに変換することにより、分岐器512および合波器515として、本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器を応用した表面プラズモンポラリトン方向変換器41を用いることが可能である。
まず、表面プラズモンポラリトン方向変換器41の構成について、図28を参照して説明する。図28は、時分割多重方式の光回路511の分岐器512および合波器515として用いられる表面プラズモンポラリトン方向変換器41を示す平面図である。なお、第1実施形態の表面プラズモンポラリトン方向変換器1における構成要素と、同等の機能を有する構成要素については同一の符号を付記し、説明を省略している。
表面プラズモンポラリトン方向変換器41は、図28に示すように、第1金属膜42と、第2金属膜43と、第3金属膜44とから構成されている。なお、図示していないが、第1金属膜42、第2金属膜43および第3金属膜44は、金属膜支持部材2の面上に形成されている。
第1金属膜42、第2金属膜43および第3金属膜44は、所定の厚みを有する板状の金属膜支持部材2の面上において、互いに接するように形成されており、各金属膜の金属膜支持部材2に接している面とは反対側の面が面一となるように構成されている。
また、第1金属膜42、第2金属膜43および第3金属膜44は、第1金属膜42と第2金属膜43および第3金属膜44とが異なる実効屈折率を有している。なお、第2金属膜43と第3金属膜44とは異なる実効屈折率を有していてもよいし、同じ実効屈折率を有していてもよい。第2金属膜43と第3金属膜44とが異なる実効屈折率を有している場合は、屈折角の設計自由度がより高くなり、第2金属膜43と第3金属膜44とが同じ実効屈折率を有している場合は、すなわち、同一の金属材料で同一の膜厚により構成されている場合は、作成工程が少なくなる。
ここで、第1金属膜42、第2金属膜43および第3金属膜44の形状について、具体的に説明する。なお、以下の説明においては、図28に示すように、表面プラズモンポラリトン方向変換器41の全体形状が長方形である場合について説明するが、表面プラズモンポラリトン方向変換器41の全体形状はこれに限られない。すなわち、表面プラズモンポラリトン方向変換器41の全体形状は、異なる実効屈折率を有している金属膜が互いに接しており、かつ、各金属膜の金属膜支持部材2に接している面とは反対側の面が面一となるように構成されていればよく、どのような形状であってもかまわない。
表面プラズモンポラリトン方向変換器41は、長手方向の約3分の1が第1金属膜42のみで構成されており、約3分の2が第1金属膜42、第2金属膜43および第3金属膜44により長手方向とは垂直な方向に略3等分されている。
また、表面プラズモンポラリトン方向変換器41の長手方向とは垂直な方向における、第1金属膜42と第2金属膜43との間に形成された境界線および第1金属膜42と第3金属膜44との間に形成された境界線は、第1金属膜42から第1金属膜42と第2金属膜43との間に形成された境界線および第1金属膜42と第3金属膜44との間に形成された境界線に表面プラズモンポラリトン5を伝播させた場合に、入射角θ1が0度<θ1<90度、または−90度<θ1<0度となるように設けられている。
なお、図28では、表面プラズモンポラリトン方向変換器41の長手方向における、第1金属膜42と第2金属膜43との間に形成された境界線および第1金属膜42と第3金属膜44との間に形成された境界線は、表面プラズモンポラリトン方向変換器41の長手方向と平行に設けられているが、これに限られない。
次に、表面プラズモンポラリトン方向変換器41における表面プラズモンポラリトン5の伝播方向の変換について説明する。表面プラズモンポラリトン5を、図28の点線で示すように、第1金属膜42から表面プラズモンポラリトン方向変換器41の長手方向に沿って伝播させた場合、表面プラズモンポラリトン5は、表面プラズモンポラリトン方向変換器41の長手方向とは垂直な方向における、第1金属膜42と第2金属膜43との間に形成された境界線および第1金属膜42と第3金属膜44との間に形成された境界線において、空間的に分岐される。また、上記各境界線に入射しなかった表面プラズモンポラリトン5は、そのまま進行方向に直進する。
すなわち、表面プラズモンポラリトン方向変換器41は、第1金属膜42を伝播する表面プラズモンポラリトン5を分岐させる複数の伝播経路として、第1金属膜42、第2金属膜43および第3金属膜44を有している。また、表面プラズモンポラリトン方向変換器41の長手方向とは垂直な方向における、第1金属膜42、第2金属膜43および第3金属膜44による分割比により、各経路に伝播する表面プラズモンポラリトン5の強度比を変化させることができる。
したがって、時分割多重方式の光回路511の分岐器512として、表面プラズモンポラリトン方向変換器41を用いることにより、表面プラズモンポラリトン5を空間的に複数の方向に、任意の強度比で分岐させることが可能となる。
なお、第1金属膜42、第2金属膜43および第3金属膜44の形状は、上述した形状に限られない。すなわち、第1金属膜42、第2金属膜43および第3金属膜44の形状は、表面プラズモンポラリトン5の伝播方向を空間的に複数の方向に変換可能なように、隣り合う各金属膜の境界線の一部が伝播している表面プラズモンポラリトン5の一部を遮るように設けられていれば、どのような形状であってもかまわない。
また、第1金属膜42、第2金属膜43および第3金属膜44を用いた構成に限られず、例えば、表面プラズモンポラリトン5を2方向に分岐したい場合には、第1金属膜42および第2金属膜43のみを用いた構成としてもよい。
また、表面プラズモンポラリトン5の伝播方向を空間的に複数の方向に変換するためには、上述した構成に限られず、例えば、第1実施形態の表面プラズモンポラリトン方向変換器1の第1金属膜3と第2金属膜4との間に形成された境界線を、第1金属膜3から第2金属膜4に対してくの字形状となる構成としたものを用いてもよい。
また、時分割多重方式の光回路511の合波器515として、表面プラズモンポラリトン方向変換器41を用い、表面プラズモンポラリトン5を上述した経路と逆方向に伝播させることにより、空間的に分岐している複数の表面プラズモンポラリトン5を多重化することができるのは明らかである。
このように、時分割多重方式の光回路511の分岐器112および合波器515として、本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器を応用した表面プラズモンポラリトン方向変換器41を用いることにより、エッジにおける表面プラズモンポラリトン5の散乱を抑制するとともに、設計自由度の高い光回路を得ることができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器は、上記課題を解決するために、表面プラズモンポラリトンの伝播方向を変換する表面プラズモンポラリトン方向変換器であって、金属膜支持部材と、前記金属膜支持部材の所定の面上に形成された、互いに隣接し合い、隣接する金属膜とは異なる実効屈折率を有する少なくとも2つの金属膜とを備え、前記各金属膜は、隣り合う該各金属膜の境界線の少なくとも一部が、該境界線の垂線に対する前記表面プラズモンポラリトンの伝播方向のなす角θが0度<θ<90度または−90度<θ<0度となるように設けられており、かつ、前記金属膜支持部材と接している面とは反対側の面と、隣接する該金属膜における該金属膜支持部材と接している面とは反対側の面とが面一であることを特徴としている。
上記構成により、金属膜支持部材の所定の面上において形成された、互いに隣接し合い、隣接する金属膜とは異なる実効屈折率を有する各金属膜の境界線の少なくとも一部が、該境界線の垂線と該表面プラズモンポラリトンの伝播方向との角θを0度<θ<90度または−90度<θ<0度となるように形成することにより、該表面プラズモンポラリトンの伝播方向を該境界線において屈折させることができる。
そして、上記角θを調節することによって、表面プラズモンポラリトンの伝播方向を調節することができる。そのため、本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器は、金属膜215の膜厚と第1誘電体層213および第2誘電体層214の屈折率とにより、表面プラズモンポラリトンの伝播方向を変換させる特許文献2の表面プラズモンレンズ211の構成に対して、設計自由度が高くなり、表面プラズモンポラリトンの伝播方向を容易に制御することが可能となる。
このとき、金属膜の記金属膜支持部材と接している面とは反対側の面と、隣接する該金属膜における該金属膜支持部材と接している面とは反対側の面とを面一とすることにより、該表面プラズモンポラリトンが隣接する該各金属膜間のエッジにおいて散乱し、照射対象に照射されることを抑制することができる。
その結果、本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器は、隣接する金属膜へ伝播する表面プラズモンポラリトンの強度が強くなるとともに、散乱光によるバックグラウンドノイズの発生を抑制できる。また、本表面プラズモンポラリトン方向変換器の上に、何らかの成膜を行う場合、膜厚差を気にする必要がない。
また、本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器は、上記各金属膜は、第1金属膜、第2金属膜および第3金属膜がこの順に隣接しており、上記第1金属膜、上記第2金属膜および上記第3金属膜は、該第1金属膜と該第2金属膜との間に形成された境界線と、該第2金属膜と該第3金属膜との間に形成された境界線とが平行以外となるように設けられていてもよい。
表面プラズモンポラリトンの伝播方向は、各金属膜の実効屈折率および該各金属膜の境界に対する垂線と表面プラズモンポラリトンの伝播方向のなす角を調節することによって、調節される。そのため、上記構成により、各金属膜の境界が1つである場合と比較して、より正確に表面プラズモンポラリトンを所定の位置に伝播することができる。
また、本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器は、上記各金属膜は、それぞれ異なる材料からなってもよい。
各金属膜は、異なる材料を用いて構成することにより、実効屈折率を異ならせることができる。そのため、上記構成により、各金属膜を構成する材料を異ならせることにより、該各金属膜の実効屈折率を異ならせることができ、表面プラズモンポラリトンの伝播方向を容易に制御することが可能となる。また、各金属膜を構成する材料を異ならせることによる該各金属膜間の実効屈折率の比は、誘電体を用いた場合より広い範囲を持たせることが可能であるため、該各金属膜間の境界において、表面プラズモンポラリトンの屈折角を大きくすることができる。
また、本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器は、上記各金属膜は、それぞれ同一の膜厚を有していてもよい。
各金属膜は、異なる材料を用いて構成することにより、実効屈折率を異ならせることができるために、該各金属膜の膜厚を同一にすることができる。上記構成により、本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器において、上記各金属膜間においてエッジが現れないために、該エッジにおける表面プラズモンポラリトンの散乱が生じることを抑制でき、隣接する金属膜へ伝播する表面プラズモンポラリトンの強度が強くなるとともに、散乱光によるバックグラウンドノイズの影響も抑制できる。
また、本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器は、上記各金属膜は、それぞれ異なる膜厚を有していてもよい。
各金属膜は、膜厚を異ならせることにより、実効屈折率を異ならせることができる。そのため、上記構成により、各金属膜の膜厚を異ならせることにより、該各金属膜の実効屈折率を異ならせることができる。この場合、各金属膜の金属膜支持部材と接している面とは反対側の面は面一であるために、該表面プラズモンポラリトンが該各金属膜間のエッジにおいて散乱することを抑制することができ、隣接する金属膜へ伝播する表面プラズモンポラリトンの強度が強くなるとともに、散乱光によるバックグラウンドノイズの発生を抑制できる。
また、本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器は、上記第1金属膜および上記第3金属膜は、同一の実効屈折率を有していてもよい。
上記構成により、本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器を作成する際に、第1金属膜および第3金属膜を同じ金属材料により構成することができるために、作成工程を減少させることが可能となる。
また、本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器は、上記第1金属膜と上記第2金属膜との間に形成された境界線と、該第2金属膜と上記第3金属膜との間の形成された境界線との距離が、上記表面プラズモンポラリトンの伝播長より短くてもよい。
上記構成により、第1金属膜または第3金属膜において光源からの光を表面プラズモンポラリトンに変換し、該表面プラズモンポラリトンを該第3金属膜または該第1金属膜に伝播させて近接場光を発生させる場合、該表面プラズモンポラリトンが該第3金属膜または該第1金属膜に伝播されるまでに、該表面プラズモンポラリトンが減衰しない。そのため、上記第1金属膜または上記第3金属膜において、十分な強度の近接場光を発生させることができる。
また、本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器では、隣り合う前記各金属膜の境界線の一部は、伝播している前記表面プラズモンポラリトンの一部を遮るように設けられていてもよい。
上記構成により、伝播している表面プラズモンポラリトンの一部は、隣り合う各金属膜の境界線に入射し、該境界線において屈折する。また、上記境界線に入射した表面プラズモンポラリトン以外の表面プラズモンポラリトンは、該境界線に入射せずに直進する。すなわち、本発明の表面プラズモンポラリトン方向変換器は、上記構成により、伝播している表面プラズモンポラリトンを複数の伝播方向に分岐することが可能である。また、隣接する金属膜数を変化させることにより、表面プラズモンポラリトンの伝播方向の分岐数を自由に変化させることができる。
本発明の情報記録再生ヘッドは、磁気記録媒体に対して記録および再生を行うための光アシスト磁気記録装置に備えられる情報記録再生ヘッドにおいて、上述した表面プラズモンポラリトン方向変換器と、光源と、上記光源から照射された光を表面プラズモンポラリトンに変換する近接場光励起手段と、近接場光を上記磁気記録媒体に照射する近接場光出力手段とを備え、上記表面プラズモンポラリトン方向変換器は、上記表面プラズモンポラリトンを上記近接場光励起手段から上記近接場光出力手段へと伝播することを特徴としている。
上記構成により、近接場光励起部において光源の光から変換された表面プラズモンポラリトンを、磁気記録媒体に近接場光を照射するための近接場光出力手段に伝播することができる。そのため、情報記録再生ヘッドに設けられる、磁界を磁気記録媒体に印加するための磁界発生部と光源とが離れた位置に設けられていても、該磁界発生部の近傍に近接場光出力手段を設けることにより、近接場光と磁界とを近接した位置で磁気記録媒体に対して印加することが可能となる。また、情報記録再生ヘッドに設けられる再生素子が、光源の熱による劣化および磁界発生部からの磁界の影響を妨げるように、かつ、正確なトラッキングができる程度の距離にするための配置自由度が高く、全体の小型・軽量化を図ることができる。
また、本発明の情報記録ヘッドでは、前記表面プラズモンポラリトン方向変換器の前記金属膜支持部材は、透光性を有した基板であり、前記近接場光励起手段は前記基板であり、前記表面プラズモンポラリトン方向変換器に対して該基板が設けられている側から光を斜入射することにより、前記各金属膜の少なくとも1つに表面プラズモンポラリトンを励起してもよい。
上記構成により、表面プラズモンポラリトン方向変換器の構成要素である金属膜支持部材を近接場光励起手段として用いることができるために、表面プラズモンポラリトンを発生させるために他の部材等を表面プラズモンポラリトン方向変換器に設ける必要がない。そのため、表面プラズモンポラリトン方向変換器において容易に表面プラズモンポラリトンを発生させることが可能となり、表面プラズモンポラリトン方向変換器の加工も容易となる。さらに、金属膜支持部材を近接場光励起手段として用いることにより、金属膜上に表面プラズモンポラリトンを発生させると、金属膜の金属膜支持部材と接している面とは反対側の面において、バックグラウンドノイズの発生を抑制することができる。
また、本発明の情報記録再生ヘッドは、前記表面プラズモンポラリトン方向変換器における前記金属膜支持部材の所定の面は、前記光源の光を出射する出射面であり、上記近接場光励起手段は、上記各金属膜の少なくとも1つに設けられていてもよい。
上記構成により、表面プラズモンポラリトン方向変換器の各金属膜が、光源の出射面に形成されているために、該光源から出射される伝播光によるバックグラウンドノイズを抑制することができ、かつ、該各金属膜の少なくとも1つに近接場光励起手段を設けることにより、該金属膜上において該光源の光から表面プラズモンポラリトンを励起することができる。
また、本発明の情報記録再生ヘッドは、上記近接場光励起手段から上記近接場光出力手段までの距離が、上記表面プラズモンポラリトンの伝播長より短くてもよい。
上記構成により、近接場光励起手段において光源の光から変換された表面プラズモンポラリトンが、強度が減衰してしまうまでに近接場光出力手段に伝播されるため、十分な強度の近接場光を発生させることができる。
また、本発明の情報記録再生ヘッドの上記近接場光励起手段は、上記光源から照射された光の波長より小さい微小開口であってもよい。
上記構成によると、光源の光を出射する出射面に設けられている表面プラズモンポラリトン方向変換器の金属膜に近接場光励起手段として微小開口を設け、該光源から該微小開口に光を照射することにより該光を表面プラズモンポラリトンに変換することができる。上記微小開口は表面プラズモンポラリトン方向変換器に設けられているために、表面プラズモンポラリトン方向変換器以外で表面プラズモンポラリトンを励起させ、該表面プラズモンポラリトン方向変換器に伝播させる場合と比較して、表面プラズモンポラリトンの利用効率が高くなる。また、近接場光変換部と光源との間に光学系がないため、部品点数の少ない分作成が容易で、作成精度が高く、小型になる。
また、本発明の情報記録再生ヘッドの上記近接場光発生部は、金属突起であってもよい。
上記構成により、金属突起の高さの分だけ近接場光の強度が減衰する。そのため、表面プラズモンポラリトンの伝播している面を磁気記録媒体に対向させ、表面プラズモンポラリトンを金属突起から構成された近接場光発生部において近接場光に変換し、該近接場光を磁気記録媒体に対して照射した場合も、磁気記録媒体への影響を小さくすることができる。
また、本発明の情報記録再生ヘッドは、上記光源の光の出射面が、上記磁気記録媒体に対して垂直な面内にあってもよい。
上記構成により、光源からの伝播光が磁気記録媒体に照射されることを抑制することができるため、バックグラウンドノイズを抑制することができる。
また、本発明の光アシスト磁気記録装置は、磁気記録媒体に対して記録および再生を行うための光アシスト磁気記録であって、上述した情報記録再生ヘッドを備えることを特徴としている。
上記構成により、エッジにおける表面プラズモンポラリトンの散乱を抑制するとともに、設計自由度の高い光アシスト磁気記録装置を得ることができる。
本発明の光回路は、光通信システムにおける多重通信方式の光回路であって、複数の異なる周波数を有する表面プラズモンポラリトンを周波数毎に分離する表面プラズモンポラリトン分離手段を備えており、前記表面プラズモンポラリトン分離手段は、上述した表面プラズモンポラリトン方向変換器であることを特徴としている。
また、本発明の光回路は、光通信システムにおける多重通信方式の光回路であって、異なる周波数を有する複数の表面プラズモンポラリトンを混合する表面プラズモンポラリトン混合手段を備えており、前記表面プラズモンポラリトン混合手段は、上述した表面プラズモンポラリトン方向変換器であることを特徴としている。
また、本発明の光回路は、光通信システムにおける時分割多重方式の光回路であって、表面プラズモンポラリトンの伝播方向を複数に分岐する表面プラズモンポラリトン分岐手段を備えており、前記表面プラズモンポラリトン分岐手段は、上述した表面プラズモンポラリトン方向変換器であることを特徴としている。
また、本発明の光回路は、光通信システムにおける時分割多重方式の光回路であって、複数の方向から伝播する表面プラズモンポラリトンを統合する表面プラズモンポラリトン統合手段を備えており、前記表面プラズモンポラリトン統合手段は、上述した表面プラズモンポラリトン方向変換器であることを特徴としている。
光通信システムにおける周波数分割多重方式および時分割多重方式の光回路において、表面プラズモンポラリトン分波手段、表面プラズモンポラリトン合波手段、表面プラズモンポラリトン分岐手段および表面プラズモンポラリトン統合手段として、上述した表面プラズモンポラリトン方向変換器を用いることにより、エッジにおける表面プラズモンポラリトンの散乱を抑制するとともに、設計自由度の高い光回路を得ることができる。