JP2008095227A - ポリプロピレン発泡糸 - Google Patents

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Abstract

【課題】生産性、ハンドリング性、軽量性、保温性およびクッション性に富む微細な発泡セルを多数有するポリプロピレン発泡糸を提供する。
【解決手段】メタロセン触媒で重合された、メルトフローレート(MFR)(試験条件:230℃、2.16kg荷重)が4〜30g/10分、融解温度が140℃以下であるポリプロピレンに、発泡剤を配合してなるポリプロピレン発泡組成物より得られることを特徴とするポリプロピレン発泡糸。
【選択図】図1

Description

本発明は、特定のポリプロピレンを主成分とするポリプロピレン発泡糸に関し、より詳細には、糸中に微細な発泡セルを多数有するポリプロピレン発泡糸に関する。
ポリプロピレンから成る発泡糸は、その糸中に気泡を含有することから、軽量性、保温性に優れるものであることは公知である。
このようなポリプロピレン発泡糸の製造方法には、モノフィラメント成形、マルチフィラメント成形やヤーン成形により繊維を製造する手法がある。モノフィラメント成形やヤーン成形は、繊度が100〜10000dtexの太繊維を製造し易いという特徴を有する成形方法であることにより、各種ロープ用原糸、カーペット用基布、フレコン袋、畳表、光輝縁などの製造に、好適に用いられている。
例えば、ポリプロピレン発泡糸からなる畳表は、既に20〜30年前から商品化されているが、発泡糸中の発泡セルサイズの調整が難しいため、該発泡糸の生産速度を数10m/分程度まで落とさなければ、生産できない問題を抱えているのが現状である。
そこで、ポリプロピレンからなる発泡糸などの改良を行うための、多様な提案がこれまでになされている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
例えば、特許文献1では、繊度3,000〜10,000dtexの熱可塑性樹脂線状発泡体で構成される模造イ草において、該熱可塑性樹脂線状発泡体は、その主体となる熱可塑性樹脂と、該樹脂のメルトフローレート(MFR)よりも2以上低いMFRを有する熱可塑性樹脂とを含む混合熱可塑性樹脂で構成されている模造イ草に関する発明が開示され、従来技術比較で、耐久性と生産性とを向上させることができると記載されている。
また、特許文献2では、特定のプロピレン系共重合体を使用した未発泡糸に関する発明であって、これにより、得られる人造イ草の耐摩耗性を向上させることができると、開示されている。
さらに、特許文献3では、紡績糸またはフィラメント糸を内部芯材層として、該内部芯材層に、発泡倍率が1〜2倍の範囲にある熱可塑性発泡樹脂からなる塗膜樹脂層を被覆した線状体であることを特徴とする人工イ草原糸に関する発明であって、これにより、天然イ草比較で耐摩耗性、表面のテカリ、ベタツキ感の向上させることができると、開示されている。
しかしながら、上記特許文献1の発明では、実質MFRの異なる2種類の熱可塑性樹脂のブレンド系であるが、例えばポリプロピレンの場合、融点によっては発泡糸中の発泡セルのサイズが不均一になるため、プロピレン発泡糸が安定して製造できないケースが発生するという、問題を有している。
また、特許文献2の発明では、用いる糸が未発泡であるため、織物にしたときのクッション性に欠けるなどの問題を有している。
さらに、特許文献3の発明では、内部芯材層に発泡樹脂を塗布するといった特殊工程を有するため、製造面でのコストが高いという問題を有している。
上記の様に、100〜10000dtex程度の細いポリプロピレン発泡糸を製造するのは、容易なことではなく、手間のかかる方法を用いなければならない上に、生産性を向上させることが極めて困難であるのが現状であった。
そのため、発泡糸として好適で、生産性の良いポリプロピレンが望まれている。また、軽量性、保温性およびクッション性に富む微細な発泡セルを多数有するポリプロピレン発泡糸が、強く望まれている。
特開2002−180350号公報 特開2004−011072号公報 特開2005−023690号公報
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、生産性、ハンドリング性、軽量性、保温性およびクッション性に富む微細な発泡セルを多数有するポリプロピレン発泡糸を提供することにある。
本発明者等は、上記課題を解決するため、種々の研究を重ねた結果、原料樹脂として、特定のポリプロピレン発泡組成物を用いることによって、微細な発泡セルを多数有するポリプロピレン発泡糸を生産性良く得られることを見出し、これらの知見に基き、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、メタロセン触媒で重合された、メルトフローレート(MFR)(試験条件:230℃、2.16kg荷重)が4〜30g/10分、融解温度が140℃以下であるポリプロピレンに、発泡剤を配合してなるポリプロピレン発泡組成物より得られることを特徴とするポリプロピレン発泡糸が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、発泡倍率が1.1〜6倍であることを特徴とするポリプロピレン発泡糸が提供される。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、ポリプロピレンがプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体であることを特徴とするポリプロピレン発泡糸が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、発泡剤が熱分解型化学発泡剤であることを特徴とするポリプロピレン発泡糸が提供される。
さらに、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、発泡剤が重曹系発泡剤であり、ポリプロピレン100重量部に対し0.05〜3.0重量部配合されることを特徴とするポリプロピレン発泡糸が提供される。
本発明は、上記した如く、特定のポリプロピレン発泡組成物より得られることを特徴とするポリプロピレン発泡糸に係るものであるが、その好ましい態様としては、次のものが包含される。
(1)前記ポリプロピレンは、プロピレン単独重合体又はプロピレン・α−オレフィン共重合体であることを特徴とする上記のポリプロピレン発泡糸。
(2)溶融紡糸法、特にモノフィラメント成形法により得られることを特徴とする上記のポリプロピレン発泡糸。
本発明のポリプロピレン発泡糸は、紡糸工程において、通常の未発泡糸の生産速度と同一水準で生産することが可能であるだけでなく、更には、該発泡糸中に微細な発泡セルを多数有するものであり、そのため、生産性、ハンドリング性、軽量性、保温性およびクッション性に富むものであって、畳表や光輝縁、カーペット等へ、好適に用いることができるという効果を奏する。
以下に、本発明の実施の形態を、項目毎に詳細に説明する。
1.ポリプロピレン発泡組成物
本発明のポリプロピレン発泡糸は、メタロセン触媒で重合された、特定の物性を有するポリプロピレンに、発泡剤を配合してなるポリプロピレン発泡組成物より得られる。
2.ポリプロピレン
本発明に使用されるポリプロピレンは、メタロセン触媒により重合されたプロピレン単独重合体又はプロピレン・α−オレフィン共重合体である。メタロセン触媒で重合されたポリプロピレンは、チーグラー・ナッタ型触媒等に比べて、分子量分布及び組成分布が均一であるため、発泡糸に微細な発泡セルを作るのに好適である。
前記ポリプロピレンは、プロピレンの単独重合体、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体のいずれであってもよいが、プロピレンとα−オレフィンの共重合体、特に、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体が好ましい。
好ましく用いられるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体は、プロピレンから誘導される構成単位を主成分としたプロピレンとα−オレフィンのランダム共重合体である。
コモノマーとして用いられるα−オレフィンは、好ましくはエチレンまたは炭素数4〜18のα−オレフィンである。具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1等を挙げることができる。また、α−オレフィンとしては、1種または2種以上の組み合わせでもよい。
かかるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体の具体例としては、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体、プロピレン・1−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1−オクテンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体等が挙げられる。
プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体中のプロピレン単位の量は、特に制限は無いが、好ましくは88〜99.5重量%、より好ましくは91〜99重量%である。ここでプロピレン単位及びα−オレフィン単位は、下記の条件の13C−NMR法によって、計測される値である。
装置:日本電子社製 JEOL−GSX270
濃度:300mg/2mL
溶媒:オルソジクロロベンゼン
ポリプロピレンの重合に用いるメタロセン触媒とは、(i)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物(いわゆるメタロセン化合物)と、(ii)メタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒と、必要により、(iii)有機アルミニウム化合物とからなる触媒であり、公知の触媒は、いずれも使用できる。メタロセン化合物は、好ましくはプロピレンの立体規則性重合が可能な架橋型のメタロセン化合物であり、より好ましくはプロピレンのアイソ規則性重合が可能な架橋型のメタロセン化合物である。各成分について説明する。
(i)メタロセン化合物としては、例えば、特開昭60−35007号、特開昭61−130314号、特開昭63−295607号、特開平1−275609号、特開平2−41303号、特開平2−131488号、特開平2−76887号、特開平3−163088号、特開平4−300887号、特開平4−211694号、特開平5−43616号、特開平5−209013号、特開平6−239914号、特表平7−504934号、特開平8−85708号の各公報に開示されている。
更に、具体的には、メチレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン1,2−(4−フェニルインデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(4−メチルシクロペンタジエニル)(3−t−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(2−メチル−4−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(3’−t−ブチル−5’−メチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[4−(1−フェニル−3−メチルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(フルオレニル)t−ブチルアミドジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4,(1−ナフチル)−インデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(3−フルオロビフェニリル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス[1−(2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス[1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリドなどのジルコニウム化合物が例示できる。上記において、ジルコニウムをチタニウム、ハフニウムに置き換えた化合物も同様に使用できる。場合によっては、ジルコニウム化合物とハフニウム化合物等の混合物を使用することもできる。また、クロリドは、他のハロゲン化合物、メチル、イソブチル、ベンジル等の炭化水素基、ジメチルアミド、ジエチルアミド等のアミド基、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシド基、ヒドリド基等に置き換えることができる。
これらの内、インデニル基あるいはアズレニル基を珪素あるいはゲルミル基で架橋したメタロセン化合物が好ましい。
また、メタロセン化合物は、無機または有機化合物の担体に担持して使用してもよい。該担体としては、無機または有機化合物の多孔質化合物が好ましく、具体的には、イオン交換性層状珪酸塩、ゼオライト、SiO、Al、シリカアルミナ、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThO、等の無機化合物、多孔質のポリオレフィン、スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、オレフィン・アクリル酸共重合体等からなる有機化合物、またはこれらの混合物が挙げられる。
(ii)メタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒としては、有機アルミニウムオキシ化合物(たとえば、アルミノキサン化合物)、イオン交換性層状珪酸塩、ルイス酸、ホウ素含有化合物、イオン性化合物、フッ素含有有機化合物等が挙げられる。
(iii)有機アルミニウム化合物としては、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムセスキハライド、アルキルアルミニウムジハライド、アルキルアルミニウムハイドライド、有機アルミニウムアルコキサイド等が挙げられる。
重合法としては、上記触媒の存在下に、不活性溶媒を用いたスラリー法、溶液法、実質的に溶媒を用いない気相法や、あるいは重合モノマーを溶媒とするバルク重合法等が挙げられる。
本発明で用いるポリプロピレンを得る方法としては、例えば、重合温度やコモノマー量を調節して、分子量および結晶性の分布を適宜制御することにより、所望のポリマーを得ることができる。
かかるポリプロピレンは、メタロセン系ポリプロピレンとして市販されているものの中から、適宜選択し使用することもできる。市販品としては、日本ポリプロ株式会社社製「ウィンテック」(登録商標)等を挙げることができる。
(1)MFR
本発明に用いられるポリプロピレンの物性としては、MFRが4〜30g/10分の範囲であり、好ましくは5〜25g/10分、さらに好ましくは、6〜20g/10分の範囲である。MFRが4g/10分を下回ると、発泡状態が乱れポリプロピレン発泡糸の成形性が著しく低下する。一方、MFRが30g/10分を超えると、発泡糸中のセル個数が著しく減少する。
本発明におけるポリプロピレンのMFRは、JIS K7210の「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に準拠し、試験条件:230℃、2.16kg(21.2N)荷重で測定する値である。
(2)融解温度ピーク(Tm)
また、本発明に用いられるポリプロピレンは、融解温度(融解温度ピーク:Tm)が140℃以下のものである。融解温度が140℃を超えると、ポリプロピレン発泡糸中のセル個数が著しく減少する。また一方、融解温度が120℃未満のポリプロピレンでは、ポリプロピレン発泡糸の生産性(紡糸性)が低下する恐れがある。
本発明における融解温度(Tm)は、示差走査熱量計(DSC)により測定される融解ピーク温度である。DSC測定は、セイコー社製DSCを用い、試料5.0mgを採り、40℃で1分間保持した後、200℃まで10℃/分の昇温速度で融解させたときに現れる融解ピーク温度をTmとした(単位:℃)。ピークが2以上存在する場合は、最も低い温度で現れるピークをTmとした。
3.発泡剤
本発明で用いられる発泡剤は、熱分解型化学発泡剤であり、公知のものであれば如何なるものでも良く、無機化合物、有機化合物のいずれの熱分解型化学発泡剤でも良い。
これらの発泡剤を用いてポリプロピレン発泡糸を製造する場合、ポリプロピレンに直接添加し、タンブラーミキサーやヘンシェルミキサー等により混合した後、溶融紡糸を実施しても良いし、発泡剤を一旦、ポリエチレンやポリプロピレン中に高濃度に分散させたマスターバッチを作製した後、このマスターバッチをポリプロピレン等に添加し、タンブラーミキサーやヘンシェルミキサーなどにより混合しポリプロピレン発泡組成物を得た後、溶融紡糸を実施しても良い。
無機化合物の具体例としては、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等が例示される。一方、有機化合物の具体例としては、アゾジカルボンアミド、アゾビスホルムアミド、イソブチロニトリル、ジアゾアミノベンゼンなどのアジド化合物、N,N’−ジニトロソペンタテトラミン、N,N’−ジメチル−ジニトロテレフタルアミドなどのニトロソ化合物が例示される。
なお、該発泡剤は、単独で用いても良く、2種以上併用しても良い。
本発明においては、発泡剤の配合量は、前記ポリプロピレン100重量部に対し、0.05〜3.0重量部、好ましくは0.5〜2.5重量部、より好ましくは1.0〜2.0重量部である。発泡剤の配合量が0.05重量部未満であると、ほとんど発泡しないため、好ましくない。一方、発泡剤の配合量が3.0重量部を超えると、過発泡となり、発泡セルの均一微細化が困難となるため、紡糸が不可能となり好ましくない。
4.付加的成分(添加剤)
本発明で使用されるポリプロピレン発泡組成物には、前記ポリプロピレン及び前記発泡剤の他に、通常ポリプロピレンに使用される公知の酸化防止剤、中和剤、光安定剤、紫外線吸収剤、無機充填剤、ブロッキング防止剤、滑剤、帯電防止剤、金属不活性剤および他の樹脂などの各種添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤およびチオ系酸化防止剤などが例示でき、中和剤としてはステアリン酸カルシウムやステアリン酸亜鉛などの高級脂肪酸塩類が例示でき、光安定剤および紫外線吸収剤としてはヒンダードアミン類、ニッケル錯化合物、ベンゾトリアゾール類、ベンゾフェノン類などが例示できる。
また、無機充填剤およびブロッキング防止剤としては、炭酸カルシウム、シリカ、ハイドロタルサイト、ゼオライト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなどが例示でき、滑剤としてはステアリン酸アマイドなどの高級脂肪酸アマイド類が例示できる。
更に、帯電防止剤としては、グリセリン脂肪酸モノエステルなどの脂肪酸部分エステル類が例示でき、金属不活性剤としてはトリアジン類、フォスフォン類、エポキシ類、トリアゾール類、ヒドラジド類、オキサミド類などが例示できる。
これら添加剤の配合量は、ポリプロピレン100重量部に対し、0.0001〜3重量部、好ましくは0.001〜1重量部である。
上記添加剤成分の配合方法としては、重合で得られたポリプロピレンパウダーに、直接添加剤を予備混合して溶融混練混合する方法、また、予め添加剤を高濃度にしたマスターバッチを、ポリプロピレンにブレンドする方法等がある。溶融混練に用いられる混合機或いは混練機としては、例えば、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、Vブレンダー、タンブラーミキサー、リボンブレンダー、バンバリーミキサー、ニーダーブレンダー、ブラベンダープラストグラフ、ロール、一軸スクリュー押出造粒機、二軸スクリュー押出造粒機等を挙げることができる。また、溶融混練温度は、一般に100〜300℃で行われる。
5.ポリプロピレン発泡糸の成形方法
本発明のポリプロピレン発泡糸は、溶融紡糸法、具体的にはマルチフィラメント成形法、モノフィラメント成形法やヤーン成形法等によって得ることができる。
特に、モノフィラメント成形では、繊度が100〜10000dtexの糸を得るのに適した製法として広く用いられている。その成形概要は、以下の通りである。
ポリプロピレン発泡組成物を押出機により溶融させた後、孔径0.3〜3mm、紡糸ノズルヘッドから、溶融ストランドが押し出される。溶融ストランドは、紡糸ノズル直下10〜500mmに据え付けてある冷却水槽へ導入され溶融ストランドは冷却固化される。冷却固化されたストランドは、複数の繰出ロールにより延伸槽へと運ばれる。繰出ロール速度は、通常数m〜数10m/分で実施される。延伸槽でストランドは、効率よく延伸される。延伸槽は、湿式と乾式タイプがあり、湿式の場合は、通常60〜100℃の加熱水が用いられる。乾式の場合では、熱板あるいはオーブンが用いられる。温度は、通常60〜160℃の範囲内である。延伸されたストランドは、場合によっては熱セットを施された後に巻き取り機へと運ばれる。
本発明の発泡糸の形態は単独繊維であっても良く、他の樹脂との複合繊維(例えば、芯鞘構造、海島構造、サイドバイサイドなど)であっても良い。他の樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等を挙げることができる。
6.ポリプロピレン発泡糸の物性
(1)発泡倍率
ポリプロピレン発泡糸の発泡倍率は、1.1〜6倍、好ましくは1.2〜5.5倍に調整されていると良い。発泡倍率が1.1倍未満では、微細発泡セルが多数発現していないため、好ましくない。また、発泡倍率が6倍を超えると、発泡糸の生産は技術的に難度が高く、現実的ではない。
(2)発泡セル個数
ポリプロピレン発泡糸の発泡セル個数は、未延伸糸の段階で70個/mm以上であることが好ましい。70個/mm未満では、微細発泡セルが多数発現していないため、好ましくない。
本発明での発泡セル個数は、発泡糸の垂直方向の断面から観察される孔数を、断面積で割った値を使用した。
(3)延伸倍率
糸の生産においては、強度を確保するために、延伸工程を必要とする場合が多いため、発泡糸の製造においても、延伸性の良好なものが好ましい。具体的には、延伸倍率が3倍以上、好ましくは6倍以上、延伸できるものが好ましい。
(4)繊度
繊度は、延伸後で1〜10,000dtex、好ましくは10〜5,000dtexに調整されていると良い。1dtex未満の発泡糸の生産は、技術的に何度が高く、現実的でない。一方、10,000dtexを超えると、未延伸糸を紡糸する際、冷却が困難となる為、発泡セルのサイズが不均一となり、好ましくない。
7.ポリプロピレン発泡糸の用途
本発明のポリプロピレン発泡糸は、紡糸性及び延伸性に共に優れており、また、微細なセルが多数存在しているために、軽量性、保温性およびクッション性に富んでいるから、ロープ用原糸、カーペット用基布、フレコン袋、畳表、光輝縁などに、極めて有用な素材である。
以下、本発明を、実施例および比較例により詳しく説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例において使用したポリプロピレンは、以下の通りである。その内容を表1に示す。
PP1:
製造会社/グレード名:日本ポリプロ(株)/ウィンテック(登録商標)WFX4
内容:メタロセン触媒により重合されたエチレン−プロピレンランダム共重合体、MFR7g/10分、融解温度ピーク125℃
PP2:
製造会社/グレード名:日本ポリプロ(株)/ウィンテック(登録商標)WFW4
内容:メタロセン触媒により重合されたエチレン−プロピレンランダム共重合体、MFR7g/10分、融解温度ピーク135℃
PP3:
前記PP2、100重量部に対して、過酸化物として2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチル−パーオキシ)ヘキサン(日本油脂社、商品名パーヘキサ25B)を0.04重量部配合し、ヘンシェルミキサーで500rpm、3分間高速混合した後、φ50mm単軸押出機(ユニオンプラスチック社製)を使用し、押出温度230℃の条件で、溶融、混練、冷却、カットして、ペレット状のエチレン−プロピレンランダム共重合体を調整した。得られたペレットのMFRは、27g/10分、融解温度ピークは、135℃であった。
PP4:
前記PP2、100重量部に対して、過酸化物として2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチル−パーオキシ)ヘキサン(日本油脂社、商品名パーヘキサ25B)を0.06重量部配合し、ヘンシェルミキサーで500rpm、3分間高速混合した後、φ50mm単軸押出機(ユニオンプラスチック社製)を使用し、押出温度230℃の条件で、溶融、混練、冷却、カットして、ペレット状のエチレン−プロピレンランダム共重合体を調整した。得られたペレットのMFRは、38g/10分、融解温度ピークは、135℃であった。
PP5:
製造会社/グレード名:日本ポリプロ(株)/ウィンテック(登録商標)WSX02
内容:メタロセン触媒により重合されたエチレン−プロピレンランダム共重合体、MFR25g/10分、融解温度ピーク128℃
PP6:
製造会社/グレード名:日本ポリプロ(株)/ウィンテック(登録商標)WFX6
内容:メタロセン触媒により重合されたエチレン−プロピレンランダム共重合体、MFR2g/10分、融解温度ピーク125℃
PP7:
製造会社/グレード名:日本ポリプロ(株)/SG02
内容:チーグラー触媒により重合されたエチレン−プロピレンランダム共重合体、MFR16g/10分、融解温度ピーク131℃
PP8:
製造会社/グレード名:日本ポリプロ(株)/ウィンテック(登録商標)WMB3
内容:メタロセン触媒により重合されたエチレン−プロピレンランダム共重合体、MFR8g/10分、融解温度ピーク142℃
PP9:
前記PP8、100重量部に対して、過酸化物として2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチル−パーオキシ)ヘキサン(日本油脂社、商品名パーヘキサ25B)を0.04重量部配合し、ヘンシェルミキサーで500rpm、3分間高速混合した後、φ50mm単軸押出機(ユニオンプラスチック社製)を使用し、押出温度230℃の条件で、溶融、混練、冷却、カットして、ペレット状のエチレン−プロピレンランダム共重合体を調整した。得られたペレットのMFRは、26g/10分、融解温度ピークは、142℃であった。
Figure 2008095227
また、評価は、次のようにして行った。
(1)紡糸性
・押出機:20mmφ異方2軸押出機
・紡糸ノズル:ノズル径:1.0mmφ、孔数:3孔
・紡糸温度:C1/C2/C3/A/D=180℃/220℃/180℃/180℃/180℃
・吐出量:5kg/hr
・糸の冷却方法:水冷(20〜40℃)
・巻取速度:15m/分
上記の条件で、18,000dtexの未延伸糸を得た。
以上の条件で成形を行い、得られたポリプロピレン発泡糸を、下記の基準にて評価し、紡糸性の判定を行った。
○:糸切れもなく安定
×:糸切れが多発し、紡糸不能
(2)延伸倍率
紡糸性の評価で用いたポリプロピレン発泡糸を、以下の条件で延伸し、延伸切れが発生する延伸倍率を評価した。
・延伸方法:沸騰水(95℃以上)中で延伸
・繰り出し速度:20m/分
・巻き取り速度:100m/分
・延伸倍率調整:繰り出し速度を変化させて調整
以上の条件で延伸を行い、下記の基準で延伸性の判定を行った。
◎:6倍超、延伸性がかなり良好
○:3〜6倍、延伸性良好
×:3倍未満、延伸性不良
(3)発泡セル個数
ポリプロピレン発泡糸を垂直に切断し、その断面を日本電子(株)社製電界放出形走査型電子顕微鏡JSM−7401Fにより、倍率200倍で観察して、孔数をカウントした。
その孔数を断面積で割って発泡セル個数とした。
セル個数の多少は、以下の基準で判断した。
◎:80個/mm超、セル数がかなり多く良好
○:70〜80個/mm、セル数が多く良好
×:70個/mm未満、セル数が少なく不良
(4)発泡倍率
紡糸性の評価で用いたポリプロピレン発泡糸の密度と、発泡剤を配合せずに紡糸性の評価で行った条件で得た未発泡のポリプロピレン糸の密度とを、メトラー・トレド(株)社製自動比重測定装置SGM−6にて、それぞれ測定し、以下の式で発泡倍率を求めた。
発泡倍率=未発泡糸の密度/発泡糸の密度
[実施例1]
PP1の100重量部に対し、重曹系発泡剤のマスターバッチである永和化成(株)社製ポリスレンEE275Fを、ドライブレンドで2重量部添加したポリプロピレン発泡組成物を使用し、前記評価を行った。その結果を表2に示す。
実施例1で得られたポリプロピレン発泡糸は、紡糸性及び延伸性が共に良好で、該糸中に多数の緻密な発泡セルを保持していた。その断面図を図1に示す。
[実施例2]
PP2の100重量部に対し、重曹系発泡剤のマスターバッチである永和化成(株)社製ポリスレンEE275Fを、ドライブレンドで2重量部添加したポリプロピレン発泡組成物を使用し、前記評価を行った。その結果を表2に示す。
実施例2で得られたポリプロピレン発泡糸は、紡糸性及び延伸性が共に良好で、該糸中に多数の微細な発泡セルを保持していた。
[実施例3]
PP3の100重量部に対し、重曹系発泡剤のマスターバッチである永和化成(株)社製ポリスレンEE275Fを、ドライブレンドで2重量部添加したポリプロピレン発泡組成物を使用し、前記評価を行った。その結果を表2に示す。
実施例3で得られたポリプロピレン発泡糸は、紡糸性及び延伸性が共に良好で、該糸中に多数の微細な発泡セルを保持していた。
[実施例4]
PP5の100重量部に対し、重曹系発泡剤のマスターバッチである永和化成(株)社製ポリスレンEE275Fを、ドライブレンドで2重量部添加したポリプロピレン発泡組成物を使用し、前記評価を行った。その結果を表2に示す。
実施例4で得られたポリプロピレン発泡糸は、紡糸性及び延伸性が共に良好で、該糸中に多数の微細な発泡セルを保持していた。
[比較例1]
PP4の100重量部に対し、重曹系発泡剤のマスターバッチである永和化成(株)社製ポリスレンEE275Fを、ドライブレンドで2重量部添加したポリプロピレン発泡組成物を使用し、前記評価を行った。その結果を表2に示す。
比較例1で得られたポリプロピレン発泡糸は、紡糸性及び延伸性が共に良好であったが、該糸中に発泡セルの数が少なく、微細なセルも少なかった。
[比較例2]
PP6の100重量部に対し、重曹系発泡剤のマスターバッチである永和化成(株)社製ポリスレンEE275Fを、ドライブレンドで2重量部添加したポリプロピレン発泡組成物を使用し、前記評価を行った。その結果を表2に示す。
比較例2のポリプロピレン発泡組成物は、紡糸性が悪く、ポリプロピレン発泡糸を安定して得ることができなかった。
[比較例3]
PP7の100重量部に対し、重曹系発泡剤のマスターバッチである永和化成(株)社製ポリスレンEE275Fを、ドライブレンドで2重量部添加したポリプロピレン発泡組成物を使用し、前記評価を行った。その結果を表2に示す。
比較例3で得られたポリプロピレン発泡糸は、紡糸性及び延伸性が共に良好であったが、該糸中に発泡セルの数が少なく、微細なセルも少なかった。
[比較例4]
PP8の100重量部に対し、重曹系発泡剤のマスターバッチである永和化成(株)社製ポリスレンEE275Fを、ドライブレンドで2重量部添加したポリプロピレン発泡組成物を使用し、前記評価を行った。その結果を表2に示す。
比較例4で得られたポリプロピレン発泡糸は、紡糸性及び延伸性が共に良好であったが、該糸中に発泡セルの数が少なく、微細なセルも少なかった。その断面図を図2に示す。
[比較例5]
PP9の100重量部に対し、重曹系発泡剤のマスターバッチである永和化成(株)社製ポリスレンEE275Fを、ドライブレンドで2重量部添加したポリプロピレン発泡組成物を使用し、前記評価を行った。その結果を表2に示す。
比較例5で得られたポリプロピレン発泡糸は、紡糸性及び延伸性が共に良好であったが、該糸中に発泡セルの数が少なく、微細なセルも少なかった。
Figure 2008095227
表1、2から明らかなように、本発明の例示である実施例1〜4のポリプロピレン発泡糸は、特に、メタロセン触媒で重合された、メルトフローレート(MFR)が4〜30g/10分、融解温度が140℃以下であるポリプロピレンを用いたポリプロピレン発泡組成物であるため、紡糸性及び延伸性が共に良好で、また、該糸中に多数の微細な発泡セルを保持しているから、軽量性、保温性およびクッション性に富む。一方、比較例1〜5で用いたポリプロピレン発泡組成物は、本発明で規定したポリプロピレンを用いていないため、発泡糸中に、発泡セルの数が少なく、微細なセルも少なかった。そのため、軽量性、保温性およびクッション性に劣ると、いえる。特に、比較例2のポリプロピレン発泡組成物は、メルトフローレート(MFR)が4g/10分未満であるため、紡糸性が悪く、ポリプロピレン発泡糸を安定して得ることができなかった。
本発明のポリプロピレン発泡糸は、紡糸性及び延伸性に共に優れており、また、微細なセルが多数存在しているため、軽量性、保温性およびクッション性に富んでいるから、ロープ用原糸、カーペット用基布、フレコン袋、畳表、光輝縁などに、極めて有用な素材である。さらに、繊維状にしてタイヤの部材として使用し、路面とのグリップ力を高める用途や、のり胞子を付着させ易くする海苔編用途等に、広く用いることができる。
実施例1で得られたポリプロピレン発泡糸の断面の拡大写真である。 比較例4で得られたポリプロピレン発泡糸の断面の拡大写真である。

Claims (5)

  1. メタロセン触媒で重合された、メルトフローレート(MFR)(試験条件:230℃、2.16kg荷重)が4〜30g/10分、融解温度が140℃以下であるポリプロピレンに、発泡剤を配合してなるポリプロピレン発泡組成物より得られることを特徴とするポリプロピレン発泡糸。
  2. 発泡倍率が1.1〜6倍であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン発泡糸。
  3. ポリプロピレンがプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリプロピレン発泡糸。
  4. 発泡剤が熱分解型化学発泡剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリプロピレン発泡糸。
  5. 発泡剤が重曹系発泡剤であり、ポリプロピレン100重量部に対し0.05〜3.0重量部配合されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリプロピレン発泡糸。
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