JP2008091065A - リチウム二次電池の注液方法およびその注液装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】注液ノズル内に電解液の液膜が生じるのを効果的に防止しながらも、電池ケース内での電解液の吸液速度に適応するように注液ノズル内の流量を抑制して注液できるリチウム二次電池の注液方法およびその注液方法を忠実に具現化した注液装置を提供する。
【解決手段】電池ケース29内を所定の真空度に真空引きし、所定量の有機電解液を注入した注液ホッパー11の一時貯液室12を電池ケース29内の圧力に対し所定値だけ高い圧力差が生じる真空度に真空引きし、注液ホッパー11の注液口11aを開いて一時貯液室12の有機電解液を圧力差により注液口11aおよび注液ノズル18を介して電池ケース29内に注液する。注液ノズル18として、有機電解液の表面張力による液膜が生じない内径φ2を有し、且つ有機電解液の極板群30への含浸速度に適応する有機電解液の流量を設定する流量抑制部材53が内壁面に設けられたものを用いる。
【選択図】図5
Description
本発明は、リチウム二次電池の製造過程における極板群が収納された電池ケース内に所定量の有機電解液を注液する工程での電解液の注液方法およびその注液方法を具現化した注液装置に関するものである。
リチウム二次電池は、電池ケース内に極板群を収納したのちに有機電解液を注液し、電池ケースの開口部を密閉状態に閉塞する工程を経て製造される。有機電解液の注液工程では、電池ケース内に注入した比較的粘性の高い有機電解液が、正、負の極板をセパレータを介在させて高密度に積層または積層状態で渦巻状に巻回されてなる極板群の小さな隙間に浸透させ難いために、所定量の有機電解液を含浸させるまでに長い時間を要する。
電解液を速やかに極板群に含浸させるために、従来では、電解液を注入した電池ケースの開口部に気密状態で接続した真空ポンプを駆動させて電池ケース内を減圧することにより、電池ケース内の減圧に伴って極板群の隙間に存在する空気を気泡として電解液の液面に浮上させることが行われていた。ところが、この注液手段では、電解液の極板群への浸透を或る程度促進できるが、極板群の隙間に存在する空気が微細な気泡となるため、この微細な気泡が、極板群の表面に付着したりして電解液の液面に速やかに浮上しないので、電解液の注液時間を短縮することができない。
また、有機電解液の注液時間をさらに短縮するために、上述の減圧手段に加えて、電解液を充填した電池ケースの開口部を閉塞した状態で電池ケース内の有機電圧液を不活性ガス、エアー圧あるいは遠心力で加圧したりすることにより、電解液を極板群に強制的に含浸させるように図った装置も知られている。しかし、この注液装置は、電池ケース内での含浸速度よりも電解液の電池ケースへの注液速度が速くなって、電解液の液溢れや飛散などが生じ易く、しかも、電池ケース内の加圧状態を解除して大気圧に戻した瞬間に、極板群の隙間で加圧されて小さく押し潰されていた気泡が大きく膨張するため、極板群の隙間に一旦含浸させた有機電解液が電池ケースの外部に飛び出してしまう問題がある。
そこで、従来では、上述した問題の解消を図るために、以下に説明する種々の注液装置が提案されている。先ず、第1の注液装置は、極板群が予め収納された電池ケースの開口部を閉塞シリンダによって気密に閉塞して、吸引部を介して接続された減圧機の駆動によって電池ケース内を減圧した状態でピストンを駆動することにより、一時貯液室の内の有機電解液を注液管から電池ケース内に注入するとともに、減圧機の駆動制御によって電池ケース内を減圧状態から加圧状態に変えて、有機電解液の極板群への浸透を促進するように図っている(特許文献1参照)。
上記注液装置では、注液管の上端が一時貯液室内の電解液の液面よりも上方に突出されており、一時貯液室内に注入された電解液を注液管に流入させずに貯留した状態において、電池ケースの内部を減圧し、ピストンが一時貯液室内の電解液の液面を押し上げて電解液を注液管を介し電池ケース内に注液するようになっている。
この注液装置では、閉塞シリンダで閉塞した電池ケース内を、電解液の注液前に減圧機の駆動により減圧して電池ケース内の空気を排気するので、極板群の隙間に存在する空気も排気される。これにより、電池ケースに注入した電解液は、極板群の微細な隙間への浸透を促進されながら、極板群に含浸される。そののち、電池ケースの圧力が大気圧近くまで徐々に上昇されることにより、電解液が極板群に強制的に含浸される。
また、第2の注液装置は、電池ケース内に注入すべき電解液の全量を所定量ずつに分割計量してカップ部材に供給し、このカップ部材を電池ケースの開口部に近接させ、カップ部材と電池ケースとを収容する注液ブース内を減圧した状態で、カップ部材から電池ケース内に所定量の電解液を注液したのちに、注液ブース内を大気に開放し、この一連の工程を電解液の分割回数だけ繰り返して、電池ケース内に全電解液量を注入することにより、電解液の注液工程を円滑に遂行できるように図っている(特許文献2参照)。
さらに、第3の注液装置は、電池ケースの開口部を気密に封口する閉塞部と、その一端側が閉塞部に接続されるとともに他端側に電解液が供給される注入ラインと、この注入ラインの途中に設けられ、電池ケース内の極板群に含浸させる所定量の電解液を貯留する貯留部と、この貯留部を第1の気圧まで減圧する第1の減圧部と、貯留部内を大気開放する大気開放部と、電池ケース内を第1の気圧よりも低い第2の気圧まで減圧する第2の減圧部とを備えている(特許文献3参照)。
この注液装置では、貯留部内を第1の気圧まで減圧することによって電解液を脱泡し、電池ケース内を貯留部の内部以上の高い真空度に減圧することによって電解液の極板群への浸透を促進し、貯留部内を大気開放することによって電解液を加圧して電解液の極板群への含浸を促進するように図っている。
特許第3467135号公報
特開平9−274907号公報
特開平11−73942号公報
上記従来の何れの注液装置においても、正、負の極板をセパレータを介在させて高密度に積層または積層状態で渦巻状に巻回されてなる極板群の小さな隙間に、リチウム二次電池に用いられる比較的粘性の高い有機電解液を浸透させ難いために、有機電解液の極板群への含浸速度に限界があり、注液ノズル内を流動する有機電解液の流速を制限して、電解液の注液速度が電解液の極板群への含浸速度を超えないように設定する必要がある。そこで、従来では、図7に示すように、注液ノズル60として、内径φ1が1.5〜3mm程度の比較的細い管材を用いることにより、注液ノズル60内を流動する有機電解液の流速を遅くなるように抑制している。
しかしながら、上述のように内径φ1が小さい注液ノズル60を用いるときには、図7の注液ホッパー61内部の一時貯液室62内の有機電解液(図示せず)を注液ノズル60を介して電池ケース内に注液した後に、注液ノズル60における一時貯液室62に近接した上端箇所に有機電解液の表面張力によって液膜63が生じ、この液膜63が注液ノズル60の上端開口部を閉塞するので、比較的高い粘性によって一時貯液室12の内壁面に付着して残存した有機電解液が、上記液膜63によって流下を阻止されて注液ノズル60と一時貯液室62の注液口64との境界箇所の周辺に残存してしまう。このような電解液の残液が生じた場合には、電池ケースへの注液量が所定値よりも減少して、注液量にばらつきが生じる結果、注液精度が悪くなって電池容量の低下を招く。
しかも、注液ノズル60の上端部および一時貯液室62内の注液口64の周辺に残った電解液は、時間の経過に伴って注液ノズル60の内壁面を伝って滴下し、電解液の注液が完了して次工程に搬送中の電池ケースに付着したり、注液装置上に滴下したのち飛散したりする不具合が発生する。この滴下する有機電解液は、電池ケースや注液装置を汚損するだけでなく、腐食性を有していることから、他の部材や機器に転移して付着した場合には、それらの動作が不安定となる悪影響を与える恐れがある。さらに、有機電解液はリチウム二次電池における高価な材料の一つであるから、上述のように電池ケース外に滴下することによる液ロスは大きな経済的損失となる。
そこで、上述の電解液の液膜63の発生を防止するために、内径の大きな注液ノズルを用いることが考えられるが、そのような注液ノズルを用いた場合には、内部を流動する電解液の流速が速くなり過ぎて、電解液の注液速度が電解液の極板群への含浸速度を超えてしまい、電解液の電池ケースからの液溢れや飛散が発生する。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、注液ノズル内に電解液の液膜が生じるのを効果的に防止しながらも、電池ケース内での電解液の吸液速度に適応するように注液ノズル内の流量を抑制して注液できるリチウム二次電池の注液方法およびその注液装置を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明のリチウム二次電池の注液方法は、電池ケース内を所定の真空度に真空引きする工程と、所定量の有機電解液を注入した注液ホッパー内の一時貯液室を前記電池ケース内の圧力以上の圧力の真空度に真空引きする工程と、前記注液ホッパーの注液口を開いて前記一時貯液室内の前記有機電解液を前記圧力差により前記注液口およびこれに連接された注液ノズルを介して前記電池ケース内に注液する工程とを有し、前記電池ケース内に注液ノズルを介して有機電解液を注液する工程において、前記注液ノズルとして、有機電解液の表面張力による液膜が生じない内径を有し、且つ有機電解液の極板群への含浸速度に適応する有機電解液の流量を設定する流量抑制部材が内壁面に設けられたものを用いることを特徴としている。
請求項2に係る発明のリチウム二次電池の注液装置は、電池ケースを収納する内部が密閉空間とされる注液チャンバと、所定量の有機電解液を貯留する一時貯液室が内部に設けられた注液ホッパーと、前記一時貯液室の注液口を開閉するホッパー開閉弁と、上端が前記注液口に連接され、且つ下端が前記電池ケースの開口部に近接して対向される注液ノズルと、前記電池ケース内を所定の真空度に減圧する電池ケース減圧手段と、前記注液ホッパーの一時貯液室内を前記電池ケース内の圧力以上の圧力の真空度に減圧するチャンバ減圧手段とを備え、前記注液ノズルが、有機電解液の表面張力による液膜が生じない内径を有し、且つ有機電解液の極板群への含浸速度に適応する有機電解液の流量を設定する流量抑制部材が内壁面に設けられていることを特徴としている。
請求項3に係る発明は、請求項2の発明のリチウム二次電池の注液装置における注液ノズルの内壁面に設けられる流量抑制部材が、前記注液ノズルの上端からこれの内径の約1.5倍の離間距離だけ離れた位置に配設されている。
請求項4に係る発明は、請求項2または3の発明のリチウム二次電池の注液装置における注液ノズルの下端開口が、所定角度で斜めに切断した形状を有する液出口に形成され、流量抑制部材が、台形状の縦断面形状を有して、前記注液ノズルの内壁面における前記液出口の下端の先鋭導液端に対し径方向で相対向する配置で設けられている。
請求項1の発明では、注液工程の終了時に粘性の高い有機電解液の表面張力により注液ノズルの上端開口部に液膜を発生しようとする作用が生じるが、注液ノズルが有機電解液の表面張力による液膜が生じない大きな内径を有しているので、液膜となる前に有機電解液の表面張力が減衰して有機電解液が注液ノズル内に流下するので、液膜が形成されない。そのため、注液工程の終了後に注液ホッパーの内壁面に付着している有機電解液は、注液ホッパーの注液口から注液ノズル内に流入して、流量抑制部材により一時的にせき止められて付着のち、自重により流下するので、注液ノズルにおける流量抑制部材と注液口との間の内周壁に環状形状に付着することを抑制する。この有機電解液の微小な量の一時的な付着は、注入すべき有機電解液の種類が変わらない限り同一の粘性抵抗を有する有機電解液により形成されることから、注液すべき有機電解液の粘性の相違に応じた内径の注液ノズルを設けることにより、付着条件が同じで、注液工程の終了時の付着を確実に抑制できる。そのため、電池ケースへの注液量は、ばらつきが生じることなく常に所定値に維持されるので、注液精度の向上に伴って所要の電池容量を確実に確保できる。
また、注液ノズルには、有機電解液の極板群への含浸速度に適応する有機電解液の流量を設定する流量抑制部材が注液ノズルの内壁面に設けられているので、液膜の発生を防止する目的で内径の大きい注液ノズルを用いているにも拘らず、有機電解液の極板群への含浸速度に適応する注液速度に制御することができるから、電解液の電池ケースからの液溢れや飛散が発生することがない。しかも、有機電解液の注液速度は、注液ノズルの流量抑制部材で制御するので、電池ケースと一時貯液室との間の圧力差を高精度に制御する必要がない。
請求項2の発明では、注液ノズルが、有機電解液の表面張力による液膜が生じない内径を有し、且つ有機電解液の極板群への含浸速度に適応する有機電解液の流量を設定する流量抑制部材が内壁面に設けられているので、請求項1に係る発明の注液方法を忠実に具現化して、その注液方法と同様の効果を確実に得ることができる。
請求項3の発明では、流量抑制部材を、注液ノズルの上端からこれの内径の約1.5倍の離間距離だけ離れた位置に配設しているので、付着する有機電解液を、注液工程の終了時毎に恒常的に注液ノズルの内周面に付着して残存させないため、時間の経過に伴って注液ノズルの内壁面を伝って滴下することがなく、電解液の注液が完了して次工程に搬送中の電池ケースに滴下する有機電解液が付着したり、注液装置上に滴下した有機電解液が飛散したりする不具合が発生することがなくなり、腐食性を有する有機電解液の付着により電池ケースや注液設備を汚損させる恐れがないとともに、液ロスによる経済的損失も生じない。
請求項4の発明では、流量抑制部材が、台形状の縦断面形状を有して、注液ノズルの内壁面における液出口の下端の先鋭導液端に対し径方向で相対向する配置で設けられているので、有機電解液を流量抑制部材の台形状の上部斜面に沿って流動させることによって先鋭導液端に向けて流下するようにガイドするので、注液ノズルの注液口から流出するときの有機電解液の液切れ性が有効に向上する。
以下、本発明の最良の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施の形態に係るリチウム二次電池の注液方法を具現化した注液装置を示す要部破断した正面図である。この注液装置は、鉛直に配置された複数のスライドガイド支柱2と、これらスライドガイド支柱2に沿ってスライドしながら上下動する複数の支持筒体3と、隣接する各2つの支持筒体3をこれらに架け渡された配置で相互に連結する上,下部連結フレーム4,7とにより、昇降枠体1が構成されており、この昇降枠体1は、支持筒体3と上,下部連結フレーム4,7との摺動により、スライドガイド支柱2に沿って上下動する。各スライドガイド支柱2の各々の上端面上には、これらに架け渡す配置でメインフレーム8が固着されており、このメインフレーム8上にはメインシリンダ9が固定されている。このメインシリンダ9は、これのピストンロッド9aの先端部が上部連結フレーム4の上面に固定されて、昇降枠体1を介して後述の注液ユニット10を上下動させる。
上記注液ユニット10は、内部空間が一時貯液室12となった注液ホッパー11と、この注液ホッパー11の底部の注液口11aを開閉するホッパー開閉弁13と、このホッパー開閉弁13がピストンロッド14aの先端部に固着されて当該ホッパー開閉弁13を開閉制御する弁開閉シリンダ14と、上端部が上記注液口11aに液密に嵌着されて垂設された注液ノズル18と、上記ピストンロッド14aを気密状態で摺動自在に挿通させた状態で注液ホッパー11の上端開口部を開閉自在に密閉する蓋体17と、後述する注液チャンバ27を備えて構成されている。
上記弁開閉シリンダ14は、そのピストンロッド14aを垂下させた配置で、上部連結フレーム4の下面に固定され、そのピストンロッド14aは、蓋体17および保持部材19に摺動自在に挿通されている。蓋体17には、一時貯液室12を後述の真空ポンプに連通接続する接続管20の先端部が挿通状態で気密に取り付けられている。注液ノズル18は、その上端部がシール部材21を介して取付プレート22に液密に取り付けられており、この取付プレート22は、注液ホッパー11の外部下面に当てがわれた状態で、複数本の固定ねじ23により注液ホッパー11に固定されている。したがって、固定ねじ23で連結された注液ホッパー11と注液ノズル18とは、取付ねじ24を挿抜することによって下部連結フレーム7に対し着脱自在に固定されている。本発明はこの注液ノズル18の形状および取付形態に特徴を有しており、この点についての詳細は後述する。
上述のように注液ノズル18を吊下形態で注液ホッパー11に取り付ける取付プレート22は、取付ねじ24により、注液チャンバ27と共に下部連結フレーム7に固着されている。このとき、注液ノズル18は、下部連結フレーム7および注液チャンバ27の上壁を挿通して、注液チャンバ27の内部に臨入されている。注液チャンバ27は下方が開口した形状になっており、この注液チャンバ27の上壁には、これの内部空間を後述の真空ポンプに連通接続する接続管28の先端部が挿通状態で気密に取り付けられている。この注液チャンバ27は所定の注液ステーションに配置されており、注液ステーションには、極板群30が予め挿入されたリチウム二次電池用電池ケース29が、図示省略した搬送手段により搬送されて位置決め停止される。電池ケース29には、後工程において封口体(図示せず)に接続される接続リード31が、極板群30に一端を接続されて電池ケース29の開口部から外部導出された状態に取り付けられている。
上記注液装置の配管系統図を示す図2において、注液ホッパー11内部の一時貯液室12は、これに連通接続された接続管20の分岐管路を介して第1真空ポンプ32に接続されているとともに、その第1真空ポンプ32への分岐管路中に第1の電磁弁34が介設されている。一方、注液チャンバ27の内部空間は、これに連通接続された接続管28の分岐管路を介して第2真空ポンプ38に管路接続されているとともに、その第2真空ポンプ38への分岐管路中に第2の電磁弁39が介設されている。また、上記2つの接続管20,28には、それぞれ電磁弁41,42を介設した大気開放用管路が分岐接続されている。
上記注液ホッパー11には、内部に一時貯液室12の真空圧を計測するための設定圧計測用真空ゲージ43が接続されているとともに、この真空ゲージ43の計測圧に基づき第1の電磁弁34を開閉制御する第1の弁制御部47が設けられている。一方、上記注液チャンバ27には、これの内部空間の真空圧を計測するための設定圧計測用真空ゲージ48が接続されているとともに、この真空ゲージ48の計測圧に基づき第2の電磁弁39を開閉制御する第2の弁制御部50が設けられている。また、この注液装置は、有機電解液を貯留する電解液タンク(図示せず)から所定量の有機電解液を液供給ノズル51を介して注液ホッパー11の一時貯液室12内に供給する定量ポンプ52を備えている。
つぎに、上記注液装置による電池ケース29への有機電解液の注液工程について、図3および図4を参照しながら説明する。先ず、注液作業に先立って、電池ケース29内の所望の圧力値が第2の弁制御部50に設定されるとともに、一時貯液室12に対する所望の圧力値が第1の弁制御部47に設定される。図3は電池ケース29内の圧力と有機電解液の吸液時間との関係を示す特性図である。同図において、電池ケース29内を減圧するときの圧力値は、有機電解液の沸点bp以下の圧力値における電解液の吸液時間範囲tを可及的に短縮できる圧力範囲PD内、具体的には−70kpa〜−95kpaの真空度の範囲内における有機電解液の粘性などに対し適した圧力値が選択して設定される。上記圧力範囲PD内に設定すれば、吸液時間tは極めて短い1.1〜1.52分となる。この実施の形態では電池ケース29内の圧力を−95kpaの真空度に設定した場合について以下に説明する。
一方、図4は電池ケース29内の圧力の一時貯液室12の圧力に対する圧力差と注液ノズル18内を流動する電解液の流速との関係を示す特性図であり、同図において、上述のように設定される電池ケース29内の圧力は、一時貯液室12内の圧力に対して、電池ケース29内での有機電解液の極板群30への吸液速度に適応できる注液速度となる圧力差範囲PS、具体的には0〜20kPaの範囲内における有機電解液の粘性などに対し適した圧力値が選択して設定される。上記圧力差範囲PSに設定すれば、注液ノズル18内の有機電解液の流速範囲Cは、0.1〜2m/secの値に抑制できる。この実施の形態では約10kPaの圧力差に設定した場合について以下に説明する。
図1に示すように、注液工程の前段の組立工程において極板群30を挿入された電池ケース29は、注液工程に向け順次搬送されて、注液チャンバ27の下方位置である注液ステーションに位置決め停止される。このとき、注液チャンバ27は、メインシリンダ9の吸引動作により昇降枠体1を介して注液ユニット10が上昇されることにより、搬送されてくる電池ケース29の障害とならない高さ位置に退避されている。電池ケース29が所定の注液ステーションに位置決め停止されたならば、メインシリンダ9の吐出動作により昇降枠体1を介して注液ユニット10が下降されることにより、注液チャンバ27の下端面がシール部材(図示せず)を介して床面に気密に密着して、注液チャンバ27の内部が密閉空間となり、この密閉空間内に電池ケース29が収納された状態となる。
一方、注液ユニット10では、弁開閉シリンダ14のピストンロッド14aの吐出動作によって下降されたホッパー開閉弁13で一時貯液室12の注液口11aが液密に閉塞された状態において、蓋体17が注液ホッパー11から取り外されて一時貯液室12の上方が開口され、この一時貯液室12に液供給ノズル51が着脱自在に連結されたのち、定量ポンプ52が駆動されて一時貯液室12内に所定量、つまり単一のリチウム二次電池に必要な量の有機電解液が注入される。そののち、液供給ノズル51が取り外され、注液ホッパー11の開口部が蓋体17により気密に施蓋される。
上述のように注液チャンバ27の内部が密閉空間とされたのちに、第2の弁制御部50は、第2の電磁弁39を開かせて第2の真空ポンプ38により注液チャンバ27内部の密閉空間を高圧で真空引きさせる。これにより注液チャンバ27内部の密閉空間が高速度で減圧されていき、この注液チャンバ27の密閉空間の真空度が設定圧計測用真空ゲージ48により計測される。第2の弁制御部50は、設定圧計測用真空ゲージ48の計測値が所望の−95kpaの真空度に達した否かを常時監視しており、−95kpaの真空度に達したのを検知したときに、第2の電磁弁39を閉じさせる。
電池ケース29は注液チャンバ27の密閉空間に収容されているので、この密閉空間が−95kpaの真空度まで減圧されるのに伴って電池ケース29の内部も同圧に真空引きされる。これにより、電池ケース29内の極板群30の小さな隙間に存在する空気は内部が比較的高い真空度に減圧されているのに伴ってスムーズに外部に排気される。
つぎに、上述の一時貯液室12内への所定量の有機電解液の注入が完了したときに、第1の弁制御部47は、第1の電磁弁34を開かせて、第1真空ポンプ32により注液ホッパー11内部の一時貯液室12を高圧で真空引きさせる。これにより一時貯液室12が高速度で減圧されていき、この一時貯液室12の真空度が設定圧計測用真空ゲージ43により計測される。第1の弁制御部47は、設定圧計測用真空ゲージ43の計測値が−85kpaの真空度に達したか否かを常時監視しており、−85kpaの真空度に達したのを検知したときに、第1の電磁弁34を閉じさせる。
上述のように、第1真空ポンプ32により一時貯液室12内を真空引きして−85kpaの真空度まで高速度で減圧されるので、電池ケース29内の圧力の一時貯液室12の圧力に対する圧力差が10kPaに設定されたことになる。一時貯液室12内に注入されている所定量の有機電解液は、一時貯液室12内が−85kpaの真空度まで減圧されることにより、内部に含有している気泡が効果的に除去される。
つぎに、弁開閉シリンダ14が吸引動作されることにより、ホッパー開閉弁13が上昇して注液ホッパー11の注液口11aが開けられ、一時貯液室12内の有機電解液が注液口11aから注液ノズル18を通って電池ケース29内に注液される。一時貯液室12内の有機電解液の全量が電池ケース29内に注液されたならば、ホッパー開閉弁14が下降して注液ホッパー11の注液口11aが閉じられる。その後、第1の弁制御部47が電磁弁41を開き、第2の弁制御部50が電磁弁42を開いて、一時貯液室12と注液チャンバー27を大気に開放する。これにより、電池ケース29の上部に液溜まりとなっている有機電解液が極板群30に含浸されていき、注液工程が終了する。そののち、メインシリンダ9の吸引動作により注液ユニット10が上昇されるのに伴って注液チャンバ27が電池ケース29の上端よりも上方位置に退避されると、有機電解液の注液が終了した電池ケース29が注液ステーションから次工程に搬送されていく。以下、同様の動作を繰り返す。
つぎに、本発明の特徴とする構成について、図5および図6を参照しながら説明する。図5(a)は注液ノズル18の取付状態の拡大縦断面図、同図(b)は(a)のA−A線断面図である。注液ノズル18は、図7に示した従来の注液ノズル60の内径φ1(3.5〜3mm)の約2.3倍の大きな内径φ2(3.5〜7mm)を有しており、この内径φ2は、図7で説明した有機電解液の表面張力による液膜63が生じない大きさである。また、注液ノズル18の内部にはオリフィス状の流量抑制部材53が設けられており、この流量抑制部材53は、(b)に示すように、注液ノズル18の水平断面積の半分を僅かに超えるほぼ半円形の横断面形状と、(a)に示すように、台形状の縦断面形状とを有している。この流量抑制部材53は、注液ノズル18の上端からこれの内径φ2の約1.5倍の離間距離(3〜14mm)Lだけ離れた位置で、且つ所定角度θ(約60°)で斜めに切断した形状を有する下端開口の液出口18aの下端の先鋭導液端18bに対し径方向で相対向する位置に配設されている。
上記注液ノズル18から電池ケース29に有機電解液を注液する場合には、注液工程の終了時に粘性の高い有機電解液の表面張力により注液ノズル18の上端開口部に液膜を発生しようとする作用が生じるが、注液ノズル18の内径φ2が従来の注液ノズルの内径φ1の約2.3倍と大きいので、液膜となる前に有機電解液の表面張力が減衰して有機電解液が注液ノズル18内に流下するので、液膜が形成されない。そのため、注液工程の終了後に注液ホッパー11の内壁面に付着している有機電解液は、注液ホッパー11の注液口11aから注液ノズル18内に流入したのち、流量抑制部材53により一時的にせき止められるが、液膜が存在しないことにより、自重により直ちに流下して、所定角度θ(約60°)で斜めに切断した形状を有する下端開口の液出口18aの下端の先鋭導液端18bを伝わって電池ケース29に滴下する過程を踏む。
このようにして注液ノズル18における流量抑制部材53と注液口11aとの間の内周壁に環状形状に付着しようとした付着液54は、これの付着箇所である注液口11aから流量抑制部材53までの離間距離Lを上述のように注液ノズル18の内径φ2の約1.5倍に設定することにより、注液工程の終了時毎に恒常的に注液ノズル18の内周面に付着しようとする状態を抑制される。すなわち、この付着液54は、時間の経過に伴って注液ノズル18の内壁を伝って滴下することがなく、ノズル径を大きくしているため、上記実施の形態のように、電池ケース29と一時貯液室12との間に差圧を設けない場合であっても、つまり、付着液54の自重で落下させることが可能になった。そのため、電解液の注液が完了して次工程に搬送中の電池ケース29に滴下する有機電解液が付着したり、注液装置上に滴下した有機電解液が飛散したりする不具合が発生することがなくなるから、腐食性を有する有機電解液の付着により電池ケース29や注液設備を汚損させる恐れがないとともに、液ロスによる経済的損失も生じない。
また、その付着液54は、注入すべき有機電解液の種類が変わらない限り同一の粘性抵抗を有する有機電解液の付着により形成されることから、付着条件が同じで、注液工程の終了時の付着液54を確実に抑制することが可能となる。そのため、電池ケース29への注液量は、ばらつきが生じることなく常に所定値に維持されるので、注液精度の向上に伴って所要の電池容量を確実に確保できる。
さらに、液膜の発生を防止する目的で内径φ2の大きい注液ノズル18を用いているにも拘らず、注液ノズル18の内部に設けた流量抑制部材53により注液ノズル18の内部容積を局部的に小さくしているので、注液ノズル18内を流動する有機電解液の流量を絞ることができるのに伴って、有機電解液の極板群30への含浸速度に適応する注液速度に制御することができるから、電解液の電池ケース29からの液溢れや飛散が発生することがない。これにより、電池ケース29と一時貯液室12との間の圧力差を高精度に抑制する必要がなく、電池ケース29と一時貯液室12とを同一圧力に設定してもよい。
また、流量抑制部材53は、台形状の縦断面形状を有して注液ノズル18の下端開口の液出口18aの先鋭導液端18bに対し径方向で相対向する位置に配設されているので、図5(a)に矢印で示すように、有機電解液を台形状の上部斜面に沿って流動させることによって先鋭導液端18bに向けて流下するようにガイドするので、注液ノズル18の注出口18aから流出するときの有機電解液の液切れ性が有効に向上する。
さらに、図6に示すように、取付ねじ24を図1の下部連結フレーム7から抜脱することにより、固定ねじ23により一体化された注液ホッパー11と注液ノズル18とを容易に取り外すことができるから、注液すべき有機電解液の粘性の相違に応じて適応する内径φ2を有する注液ノズル18を適宜選択して交換することができる。これにより、有機電解液の極板群30への含浸速度に対応した注液速度を好適に設定することができ、注液時間を効果的に短縮することができる。
この発明に係るリチウム二次電池の注液方法によれば、注液ノズルを有機電解液の表面張力による液膜が生じない内径としたので、注液工程の終了時に有機電解液が液膜となる前に崩壊して注液ノズル内に流下し、液膜が形成されないので、注液工程の終了後に注液ホッパーの内壁面に付着している有機電解液は、注液ノズルにおける流量抑制部材と注液口との間の内周壁に環状形状に恒常的に付着することが抑制され、電池ケースへの注液量をばらつきが生じることなく常に所定値に維持することができ、注液精度の向上に伴って所要の電池容量を確実に確保できる。しかも、注液ノズルの内壁面に、有機電解液の極板群への含浸速度に適応する有機電解液の流量を設定する流量抑制部材を設けたので、電解液の電池ケースからの液溢れや飛散が発生することがない。また、本発明のリチウム二次電池の注液装置によれば、注液ノズルが、有機電解液の表面張力による液膜が生じない内径を有し、且つ有機電解液の極板群への含浸速度に適応する有機電解液の流量を設定する流量抑制部材が内壁面に設けられているので、本発明の注液方法を忠実に具現化して、その注液方法と同様の効果を確実に得ることができる。
11 注液ホッパー
11a 注液口
12 一時貯液室
13 ホッパー開閉弁
18 注液ノズル
18a 液出口
18b 先鋭導液端
27 注液チャンバ
29 電池ケース
30 極板群
53 流量抑制部材
φ1 注液ノズルの内径
L 離間距離
11a 注液口
12 一時貯液室
13 ホッパー開閉弁
18 注液ノズル
18a 液出口
18b 先鋭導液端
27 注液チャンバ
29 電池ケース
30 極板群
53 流量抑制部材
φ1 注液ノズルの内径
L 離間距離
Claims (4)
- 電池ケース内を所定の真空度に真空引きする工程と、
所定量の有機電解液を注入した注液ホッパー内の一時貯液室を前記電池ケース内の圧力以上の圧力の真空度に真空引きする工程と、
前記注液ホッパーの注液口を開いて前記一時貯液室内の前記有機電解液を前記圧力差により前記注液口およびこれに連接された注液ノズルを介して前記電池ケース内に注液する工程とを有し、
前記電池ケース内に注液ノズルを介して有機電解液を注液する工程において、前記注液ノズルとして、有機電解液の表面張力による液膜が生じない内径を有し、且つ有機電解液の極板群への含浸速度に適応する有機電解液の流量を設定する流量抑制部材が内壁面に設けられたものを用いることを特徴とするリチウム二次電池の注液方法。 - 電池ケースを収納する内部が密閉空間とされる注液チャンバと、
所定量の有機電解液を貯留する一時貯液室が内部に設けられた注液ホッパーと、
前記一時貯液室の注液口を開閉するホッパー開閉弁と、
上端が前記注液口に連接され、且つ下端が前記電池ケースの開口部に近接して対向される注液ノズルと、
前記電池ケース内を所定の真空度に減圧する電池ケース減圧手段と、
前記注液ホッパーの一時貯液室内を前記電池ケース内の圧力以上の圧力の真空度に減圧するチャンバ減圧手段とを備え、
前記注液ノズルは、有機電解液の表面張力による液膜が生じない内径を有し、且つ有機電解液の極板群への含浸速度に適応する有機電解液の流量を設定する流量抑制部材が内壁面に設けられていることを特徴とするリチウム二次電池の注液装置。 - 注液ノズルの内壁面に設けられる流量抑制部材は、前記注液ノズルの上端からこれの内径の約1.5倍の離間距離だけ離れた位置に配設されている請求項2に記載のリチウム二次電池の注液装置。
- 注液ノズルの下端開口が、所定角度で斜めに切断した形状を有する液出口に形成され、流量抑制部材が、台形状の縦断面形状を有して、前記注液ノズルの内壁面における前記液出口の下端の先鋭導液端に対し径方向で相対向する配置で設けられている請求項2または3に記載のリチウム二次電池の注液装置。
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