JP2008090917A - 磁気記録媒体製造用スパッタリングターゲット、及び垂直磁気記録媒体の製造方法並びに垂直磁気記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基板1上に少なくとも磁気記録層6を備えた垂直磁気記録媒体の前記磁気記録層を成膜する際に使用するスパッタリングターゲットであって、このスパッタリングターゲットは強磁性材料と金属酸化物とからなり、その金属酸化物はその金属酸化物中に含まれる酸素の原子数が化学量論比よりも小さくなるようにした。また、このような磁気記録媒体製造用スパッタリングターゲットを用いてスパッタリング法により上記磁気記録層を成膜することにより垂直磁気記録媒体を得る。
【選択図】図1
Description
この垂直磁気記録媒体は、硬質磁性材料の磁気記録層と、軟磁性裏打ち層(あるいは軟磁性層とも呼ぶ。以下同じ。)の二つの磁性層を構成要素としてもつ。このうち、従来の長手磁気記録方式の媒体では用いられていない軟磁性層は、垂直記録用ヘッドの書き込み磁界を収束させる役割を持ち、媒体性能を上げる効果がある。ただし、この軟磁性層が無くても記録は可能なため、軟磁性層を除いた構成となる場合もある。
すなわち、磁性層内の強磁性微粒子が酸化していることが判明した。これは、グラニュラー磁性層の平面TEM(透過型電子顕微鏡)にてスポット元素分析を行ったところ、強磁性微粒子部から酸素原子が検出されたことからわかった。すなわちこれは、一般的に、グラニュラー記録層は、CoCrPt系合金と酸化物とのコンポジットタイプのターゲットを用いてスパッタリング法によって成膜されているが、スパッタリング中に一部の酸素原子が解離し、強磁性微粒子を酸化してしまうものと推察される。面内磁気記録媒体、垂直磁気記録媒体に限らず、CoPt系強磁性微粒子が酸化すると磁気特性が劣化することは一般的に知られている。
すなわち、グラニュラー磁気記録層を成膜するためのスパッタリングターゲットは、通常は例えばCoPt系合金と酸化物から成るが、そのうち酸化物を化学量論比から酸素欠乏した状態にしてスパッタリングターゲットを形成し、このスパッタリングターゲットを用いて磁気記録層を成膜する方法である。
(構成1)基板上に少なくとも磁気記録層を備えた垂直磁気記録媒体の前記磁気記録層を成膜する際に使用するスパッタリングターゲットであって、前記スパッタリングターゲットは、強磁性材料と金属酸化物とからなり、前記金属酸化物は、その金属酸化物中に含まれる酸素の原子数が化学量論比よりも小さいことを特徴とする磁気記録媒体製造用スパッタリングターゲットである。
(構成2)前記金属酸化物は、MOx(Mは金属原子)であらわしたときのxが、最も安定な酸化物において金属1原子に対する酸素原子の組成比(=酸素原子数/金属原子数)の3/4以上であることを特徴とする構成1に記載の磁気記録媒体製造用スパッタリングターゲットである。
(構成3)前記金属酸化物は、その標準生成ギブス自由エネルギーの値が、CoOの標準生成ギブス自由エネルギーの値よりも小さな材料であることを特徴とする構成1又は2に記載の磁気記録媒体製造用スパッタリングターゲットである。
(構成4)前記金属酸化物は、TiO2,SiO2,Ta2O5,Cr2O3,Al2O3,Nb2O5,MnO2,ZrO2から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする構成1乃至3の何れか一に記載の磁気記録媒体製造用スパッタリングターゲットである。
(構成6)基板上に少なくとも磁気記録層を備えた垂直磁気記録媒体であって、前記磁気記録層は、粒界相により分離された強磁性結晶粒からなるグラニュラー構造を有し、前記粒界相は金属酸化物からなり、その金属酸化物中に含まれる酸素の原子数が化学量論比よりも小さいことを特徴とする垂直磁気記録媒体である。
また、このようなスパッタリングターゲットを用いて磁気記録層を形成することにより、グラニュラー磁性層内の強磁性微粒子の酸化を低減し、磁気特性の劣化を抑制することで、良好な記録再生特性が得られ、高密度化に対応可能な垂直磁気記録媒体を提供することができる。
図1は、本発明に係る垂直磁気記録媒体の一実施の形態を説明するための断面模式図である。図1によると、基板1上に、付着層2、軟磁性裏打ち層3、シード層4、下地層(中間層)5、垂直磁気記録層6、垂直磁気記録層のキャップ層7、保護層8、潤滑層9を順次形成して成ることを示している。図1に示す層構成はあくまでも本発明を説明するための好適な一例であって、本発明を何ら限定するものではない。
なお、以上の付着層2、軟磁性裏打ち層3、シード層4、下地層5に用いられる材料、積層構造は、垂直磁気記録層の特性を損わない限りにおいて適宜変更しても何ら差し支えない。
このようなスパッタリングターゲットを用いて垂直磁気記録層を形成することにより、グラニュラー磁気記録層内の強磁性微粒子の酸化を低減し、磁気特性の劣化を抑制することができるので、その結果、良好な記録再生特性が得られ、高情報記録密度化に好適な垂直磁気記録媒体が得られる。
本発明では、例えば上記のような種類の金属酸化物であって、その金属酸化物中に含まれる酸素の原子数を化学量論比未満とした金属酸化物を1種類で、あるいは2種類以上を組み合わせて適用してもよい。
基板としアルミノシリケート系アモルファス強化ガラス基板を用い、これを洗浄後、静止対向スパッタ装置内に導入し、付着層としてCrTiを10 nm、軟磁性裏打ち層として、CoTaZrを30 nm、Ru層0.8 nm、CoTaZrを30 nm、シード層としてTaを3nm、下地層としてRuを25 nm、垂直磁気記録層としてArガスを用いて91(Co-10Cr-20Pt)-9TiOxを15 nm、さらに記録層のキャップ層としてPdとCoBの多層膜5nmを順次成膜し、最後にカーボンからなる保護層を5 nm成膜後、真空装置から取り出した。その後、パーフルオロポリエーテルからなる液体潤滑剤層1 nmをディップ法により形成し、垂直磁気記録媒体とした。
さらに成膜された垂直磁気記録層に含まれるTi酸化物の化学量論比の確認のため、ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)を用いて垂直磁気記録層のTi:O原子数比率を算出した。結果は後記の表1に示した。
すなわち、静磁気特性の評価は、Kerr効果測定器を用いて、保磁力(Hc)、及び逆磁区核形成磁界(−Hn)を測定した。
垂直磁気記録層形成用のターゲットの組成に含まれる酸化物について、実施例1とターゲット中のCoCrPtの組成及び体積(Vol%)が同一で、残りの酸化物部分を、モル比でTiO2を95 %、Tiを5%とすることでTiOx(x=1.9)とした以外は、実施例1に記載される方法で垂直磁気記録媒体を作成した。
得られた垂直磁気記録媒体について実施例1と同様の評価を行い、結果は後記の表1に示した。
垂直磁気記録層形成用のターゲットの組成に含まれる酸化物について、実施例1とターゲット中のCoCrPtの組成及び体積(Vol%)が同一で、残りの酸化物部分を、モル比でSiO2を95 %、Siを5%とすることでSiOx(x=1.9)とした以外は、実施例1に記載される方法で垂直磁気記録媒体を作成した。
得られた垂直磁気記録媒体について実施例1と同様の評価を行い、結果は後記の表1に示した。
垂直磁気記録層形成用のターゲットの組成に含まれる酸化物について、実施例1とターゲット中のCoCrPtの組成及び体積(Vol%)が同一で、残りの酸化物部分を、モル比でTa2O5を92.3%、Taを7.7 %とすることでTaOx(x=2.4)とした以外は、実施例1に記載される方法で垂直磁気記録媒体を作成した。
得られた垂直磁気記録媒体について実施例1と同様の評価を行い、結果は後記の表1に示した。
垂直磁気記録層形成用のターゲットの組成に含まれる酸化物について、実施例1とターゲット中のCoCrPtの組成及び体積(Vol%)が同一で、残りの酸化物部分を、TiO2を100 %とすることでTiOx(x=2.0)とした以外は、実施例1に記載される方法で垂直磁気記録媒体を作成した。
得られた垂直磁気記録媒体について実施例1と同様の評価を行い、結果は後記の表1に示した。
垂直磁気記録層形成用のターゲットの組成に含まれる酸化物について、実施例1とターゲット中のCoCrPtの組成及び体積(Vol%)が同一で、残りの酸化物部分を、モル比でTiO2を70 % 、Tiを30%とすることでTiOx(x=1.4)とした以外は、実施例1に記載される方法で垂直磁気記録媒体を作成した。
得られた垂直磁気記録媒体について実施例1と同様の評価を行い、結果は後記の表1に示した。
上記実施例ならびに比較例において作製した垂直磁気記録媒体のHc、Hn、エラーレートを以下の表1にまとめて示した。
2 付着層
3 軟磁性裏打ち層
4 シード層
5 下地層
6 垂直磁気記録層
7 垂直磁気記録層のキャップ層
8 保護層
9 潤滑層
Claims (6)
- 基板上に少なくとも磁気記録層を備えた垂直磁気記録媒体の前記磁気記録層を成膜する際に使用するスパッタリングターゲットであって、
前記スパッタリングターゲットは、強磁性材料と金属酸化物とからなり、前記金属酸化物は、その金属酸化物中に含まれる酸素の原子数が化学量論比よりも小さいことを特徴とする磁気記録媒体製造用スパッタリングターゲット。 - 前記金属酸化物は、MOx(Mは金属原子)であらわしたときのxが、最も安定な酸化物において金属1原子に対する酸素原子の組成比(=酸素原子数/金属原子数)の3/4以上であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体製造用スパッタリングターゲット。
- 前記金属酸化物は、その標準生成ギブス自由エネルギーの値が、CoOの標準生成ギブス自由エネルギーの値よりも小さな材料であることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気記録媒体製造用スパッタリングターゲット。
- 前記金属酸化物は、TiO2,SiO2,Ta2O5,Cr2O3,Al2O3,Nb2O5,MnO2,ZrO2から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一に記載の磁気記録媒体製造用スパッタリングターゲット。
- 基板上に少なくとも磁気記録層を備えた垂直磁気記録媒体の製造方法であって、
請求項1乃至4の何れか一に記載の磁気記録媒体製造用スパッタリングターゲットを用いてスパッタリング法により前記磁気記録層を成膜する工程を含むことを特徴とする垂直磁気記録媒体の製造方法。 - 基板上に少なくとも磁気記録層を備えた垂直磁気記録媒体であって、
前記磁気記録層は、粒界相により分離された強磁性結晶粒からなるグラニュラー構造を有し、
前記粒界相は金属酸化物からなり、その金属酸化物中に含まれる酸素の原子数が化学量論比よりも小さいことを特徴とする垂直磁気記録媒体。
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