JP2008088420A - ポリマー、高分子電解質およびそれを用いてなる燃料電池 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、スルホン酸基が実質的に導入されていないセグメントおよびスルホン酸基が導入されたセグメントを有するブロック共重合体であって、前者のセグメントがポリエーテルスルホンからなり、後者のセグメントがジフェニルスルホンとスルホン酸基を有するビフェノールとのエーテル結合体を繰返し単位とするブロック共重合体が提案され、かかるブロック共重合体をプロトン伝導膜として使用した場合、湿度によるプロトン伝導性の変動(以下、「湿度依存性」と呼ぶことがある)が小さく、燃料電池に好適に適用できることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
本発明の目的は、電解質膜として用いるときに、高度のイオン伝導度に加え、かかるイオン伝導性の湿度依存性が著しく小さいポリマーを提供することにある。さらには、該ポリマーを有効成分とする高分子電解質、該高分子電解質を用いてなる燃料電池用部材、該部材を用いてなる高分子電解質型燃料電池を提供することにある。
(式中、a1は1以上の整数を表す。Ar1はイオン交換基を有する2価の芳香族基を表し、イオン交換基以外の置換基を有していてもよい。Ar0は置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表し、a1が2以上である場合、複数のAr0は互いに同一でも異なっていてもよい。Xは2価の電子吸引性基を表す。)
を提供する。
[2]下記一般式(1b)で表される構造単位と、下記一般式(1c)で表される構造単位とを有する、[1]記載のポリマー
(式中、Ar1およびXは前記と同義であり、2つのAr1は互いに同一でも異なっていてもよい。)
(式中、Ar0は前記と同義である。)
[3]上記一般式(1a)で表される構造単位が、下記一般式(1)で表される構造単位である、[1]記載のポリマー
(式中、aは2以上の整数を表す。Ar1およびXは前記と同義であり、複数あるAr1は互いに同一でも異なっていてもよい。Xは2価の電子吸引性基を表す。)
[4]下記一般式(2)で表されるセグメントを有する、[3]記載のポリマー。
(式中、Ar1およびXは前記と同義である。fは1以上の整数を表わし、2つのfは互いに同一でも異なっていてもよい。複数あるAr1は互いに同一でも異なっていてもよい。mは繰り返し単位数を表す。)
[5]mが5以上の整数である、[4]記載のポリマー。
[6]Xが、カルボニル基、スルホニル基および1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン基からなる群から選ばれる電子吸引性基である、[1]〜[5]のいずれかに記載のポリマー
[7]Ar1にあるイオン交換基が、主鎖を構成する芳香環に直接結合している、[1]〜[5]のいずれかに記載のポリマー
[8]イオン交換基がスルホン酸基、スルホンイミド基、ホスホン酸基およびカルボキシル基から選ばれる酸基である、[1]〜[7]のいずれかに記載のポリマー
[9]Ar1が下記一般式(4)で表される芳香族基である、[1]〜[8]のいずれかに記載のポリマー
(式中、R1は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基または置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基であり、pは0または1である。)
[10]イオン交換基を有するセグメントとして上記上記一般式(2)で表されるセグメントを有し、さらにイオン交換基を実質的に有さないセグメントを有し、共重合様式がブロック共重合である、[4]〜[9]のいずれかに記載のポリマー
[11]イオン交換基を実質的に有さないセグメントが下記一般式(3)で表されるセグメントである、[10]記載のポリマー
(式中、b、c、dは互いに独立に0か1を表し、nは5以上の整数を表す。Ar3、Ar4、Ar5、Ar6は互いに独立に2価の芳香族基を表し、ここでこれらの2価の芳香族基は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基または置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基で、置換されていてもよい。Y、Y’は、互いに独立に直接結合または2価の基を表す。Z、Z’は、互いに独立に酸素原子または硫黄原子を表す。)
[12]イオン交換容量が、0.5meq/g〜4.0meq/gである、[1]〜[11]のいずれかに記載のポリマー
[13]上記いずれかに記載のポリマーを有効成分とする高分子電解質
[14][13]記載の高分子電解質からなる高分子電解質膜
[15][13]記載の高分子電解質と、多孔質基材とからなる高分子電解質複合膜
[16][13]記載の高分子電解質と触媒成分とを含む触媒組成物
[17][14]記載の高分子電解質膜または[15]に記載の高分子電解質複合膜を、イオン伝導膜として用いる高分子電解質型燃料電池
[18][16]記載の触媒組成物を用いて得られる触媒層を備えることを特徴とする高分子電解質型燃料電池
(式中、a1は1以上の整数を表す。Ar1はイオン交換基を有する2価の芳香族基を表し、イオン交換基以外の置換基を有していてもよい。Ar0は置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表し、a1が2以上である場合、複数のAr0は互いに同一でも異なっていてもよい。Xは2価の電子吸引性基を表す。)
ここで、「イオン交換基」とは、本発明のポリマーを膜の形態である電解質膜として用いたとき、イオン伝導を発現する基であり、「イオン交換基を有する」とはAr1にある芳香環に直接イオン交換基が結合している形態や、原子または原子団を介してイオン交換基がAr1にある芳香環に結合している形態を含む概念である。
また、該膜は、吸水に係る寸法安定性にも優れており、電池の稼動・停止の繰返しに伴う、高分子電解質膜の吸水膨潤、乾燥収縮によるストレスが極めて低減できることから、該膜の劣化を抑制することができ、電池自体の長寿命化を達成するものである。
これらのイオン交換基は、部分的にあるいは全てが、金属イオンや4級アンモニウムイオンなどで交換されて塩を形成していてもよいが、燃料電池用高分子電解質膜などとして使用する際には、実質的に全てが遊離酸の状態であることが好ましい。
なお、上述のとおり、該イオン交換基は、上記一般式(1a)で表される構造単位を有するポリマーにおいて、その主鎖を構成する芳香環に、直接結合していても、連結基を介して結合している形態でもよいが、主鎖を構成する芳香環に直接結合していることが、市場から容易に入手できる材料を用いて本発明のポリマーを容易に製造することができるため好ましい。
(式中、aは2以上の整数を表す。Ar1およびXは前記と同義であり、複数あるAr1は互いに同一でも異なっていてもよい。Xは2価の電子吸引性基を表す。)
なお、上記一般式(1)で表す構造単位において、イオン交換基を有する芳香族基Ar1において、電子吸引性基Xから遠い基であるほど、電子吸引効果を受け難いので、aは、2〜4の範囲が好ましく、製造上容易である点からみれば、aが2であると特に好ましい。
具体的に一般式(1)で表される構造単位を例示すると、下記(1−1)〜(1−26)などが挙げられる(ここで、(1−13)〜(1−15)にある「−Ph」はフェニル基を表す)。
(式中、A、A’はそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキレン基または炭素数1〜6のフッ素置換アルキレン基を表し、A’が複数ある場合、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。kは1〜4の整数を表し、Tはイオン交換基を表し、*は結合手を表す。)
なお、上記において「フッ素置換アルキレン基」とはアルキレン基の炭素原子に結合している水素原子の一部または全部がフッ素原子に置き換わった基を意味する。
(式中、Ar1、Xは前記と同義である。fは1以上の整数を表わし、2つのfは互いに同一でも異なっていてもよい。mは繰り返し単位数を表す。)
(式中、R1は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基または置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基であり、pは0または1である。)
かかるブロック共重合体において、イオン交換基を有するセグメントを構成する構造単位として、上記一般式(1)以外の構造単位を有していてもよいが、該イオン交換基を有するセグメントの全量を100重量%としたとき、一般式(1)で表される構造単位が50重量%以上が好ましく、70重量%以上であると、さらに好ましく、実質的に一般式(1)で表される構造単位が100重量%、すなわちイオン交換基を有するセグメントが全て、上記一般式(2)で表されるセグメントから構成されているブロック共重合体が特に好ましい。
なお、イオン交換基を有するセグメントを構成する上記一般式(1)で表される構造単位以外のものとしては、下記一般式(10)で表される構造単位が好適である。
(式中、Ar10はイオン交換基を有する2価の芳香族基を表す。)
上記ブロック共重合体中にある、一般式(2)で表されるセグメントと他のイオン交換基を有するセグメントにあるイオン交換基導入量は、かかるセグメントの合計重量当たりのイオン交換基当量で表して、2.5meq/g〜10.0meq/gが好ましく、さらに好ましくは3.5meq/g〜9.0meq/gであり、特に好ましくは4.5meq/g〜7.0meq/gである。
該イオン交換基導入量が2.5meq/g以上であると、イオン交換基同士が密接に隣接することとなり、イオン伝導性がより高くなるので好ましく、一方、イオン交換基導入量を示すイオン交換容量が10.0meq/g以下であると、製造がより容易であるので好ましい。
該イオン交換基を実質的に有さないセグメントは、上記のように、その繰返し単位当たりで計算してイオン交換基が0.1個以下であるものであり、構造単位当たりのイオン交換基が0、すなわちイオン交換基が実質的に皆無であると特に好ましい。
ここで、一般式(3)におけるb、c、dは互いに独立に0か1を表す。nは5以上の整数を表し、5〜200であると好ましい。nの値が小さいと、成膜性や膜強度が不十分であったり、耐久性が不十分であったりするなどの問題が生じやすくなるため、nは10以上であると特に好ましい。また、nを5以上、好ましくは10以上とするには、一般式(3)のブロックにおけるポリスチレン換算数平均分子量で表して、2000以上、好ましくは3000以上であると十分である。
該イオン交換容量が0.5meq/g以上であると、プロトン伝導性がより高くなり、燃料電池用の高分子電解質としての機能がより優れるので好ましい。一方、イオン交換基導入量を示すイオン交換容量が4.0meq/g以下であると、耐水性がより良好となるので好ましい。
ここで、イオン交換基の導入方法は、予めイオン交換基を有するモノマーを重合する方法であっても、イオン交換基を導入可能な部位を有するモノマーからポリマーを製造した後に、該ポリマーにある、該導入可能な部位にイオン交換基を導入する方法であってもよい。中でも、前者の方法であると、イオン交換基の導入量や、置換位置を的確に制御することができるので、より好ましい。また、電子吸引性基Xに隣接する芳香族基Ar1は、スルホン化等の求電子反応は極めて起こり難い傾向がある。したがって、予め一般式(1a)で表される構造単位を誘導するモノマーは、予め電子吸引性基Xとともに、イオン交換基またはイオン交換基に容易に転化できる基を併せ持つものを使用することが好ましい。
(式中、Ar0、Ar1、Xおよびa1は前記と同義である。Qは縮合反応時に脱離する基を表す。複数あるAr0は互いに同一でも異なっていてもよく、2つのAr1は互いに同一でも異なっていてもよく、2つのa1は互いに同一でも異なっていてもよく、2つのQは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
(式中、Ar1、XおよびQは前記と同義である。2つのQは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
下記一般式(5c)で表されるモノマーと、
(式中、Ar0およびQは前記と同義である。2つのQは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
を共重合すれば、下記一般式(1b)で表される構造単位と一般式(1c)で表される構造単位とを有し、A1とA0が直接結合で連結された構造を有するポリマー、すなわち一般式(1a)で表される構造単位を有するポリマーが得られる。
(式中、Ar1およびXは前記と同義であり、2つのAr1は互いに同一でも異なっていてもよい。)
(式中、Ar0は前記と同義である。)
(式中、Ar1、X、Qおよびfは前記と同義である。2つのQは互いに同一であっても異なっていてもよく、2つのfは互いに同一であっても異なっていてもよく、2つ以上あるAr1は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
また、上記一般式(5)で表されるモノマーと、上記一般式(5c)で表されるモノマーとを縮合反応により重合することもできる。
(式中、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6、b、c、d、n、Y、Y’、Z、Z’、Qは前記と同義である。)
(RaおよびRbは、互いに独立に水素原子または有機基を表し、RaとRbとが結合して環を形成していてもよい。)
上記一般式(5)で表されるモノマーは、好ましいイオン交換基であるスルホン酸基で例示すると、4、4’−ジクロロ−2、2’−ジスルホベンゾフェノン、4、4’−ジブロモ−2、2’−ジスルホベンゾフェノン、4、4’−ジクロロ−3、3’−ジスルホベンゾフェノン、4、4’−ジブロモ−3、3’−ジスルホベンゾフェノン、5、5’−ジクロロ−3、3’−ジスルホベンゾフェノン、5、5’−ジブロモ−3、3’−ジスルホベンゾフェノン、ビス(4−クロロ−2−スルホフェニル)スルホン、ビス(4−ブロモ−2−スルホフェニル)スルホン、ビス(4−クロロ−3−スルホフェニル)スルホン、ビス(4−ブロモ−3−スルホフェニル)スルホン、ビス(5−クロロ−3−スルホフェニル)スルホン、ビス(5−ブロモ−3−スルホフェニル)スルホンなどが挙げられる。
また、他のイオン交換基の場合は、上記に例示したモノマーのスルホン酸基を、カルボキシル基、ホスホン酸基などのイオン交換基に置き換えて、選択することができ、これら他のイオン交換基を有するモノマーも市場から容易に入手できるか、公知の製造方法を用いて、製造することが可能である。
さらに上記に例示するモノマーのイオン交換基が塩の形もしくは保護基で保護されていてもよく、特に、イオン交換基が塩の形もしくは保護基で保護されているモノマーを用いることが、重合反応性の観点から好ましい。塩の形としては、アルカリ金属塩が好ましく、特に、Li塩、Na塩、K塩の形が好ましい。
(式中、Ar7はイオン交換基を導入することで、上記一般式(1)のAr1となり得る2価の芳香族基を表し、Q、X、fは前記と同義である。)
また、本発明のブロック共重合体の製造を行う方法としては、例えば、ゼロ価遷移金属錯体の共存下、上記一般式(7)で表されるモノマーと、イオン交換基を有さないモノマーの代わりに、上記一般式(6)で表されるイオン交換基を実質的に有さないセグメントの前駆体を縮合反応により共重合し、その後、公知の方法に準じてイオン交換性基を導入することにより製造し得る。
かかる例示の化合物は、市場から容易に入手できるか、市場から容易に入手できる原料を用いて製造することが可能であり、例えば、上記(6a)で示される末端に脱離基Qを有するポリエーテルスルホンは、住友化学(株)製スミカエクセルPESなどの市販品を入手することも可能であり、これを一般式(6)で表されるセグメント前駆体として用いることもできる。また、nは上記と同義であり、これらの化合物のポリスチレン換算数平均分子量で2000以上、好ましくは3000以上であるものが選択される。
上記ゼロ価遷移金属錯体は遷移金属にハロゲンや後述の配位子が配位したものであり、後述の配位子を少なくとも一つ有するものが好ましい。ゼロ価遷移金属錯体は市販品でも別途合成したものいずれを用いてもよい。
ゼロ価遷移金属錯体の合成方法は、例えば遷移金属塩や遷移金属酸化物と配位子とを反応させる方法等の公知の方法が挙げられる。合成したゼロ価遷移金属錯体は、取り出して使用してもよいし、取り出すことなく、in situで使用してもよい。
配位子としては、例えばアセテート、アセチルアセトナート、2,2’−ビピリジル、1,10−フェナントロリン、メチレンビスオキサゾリン、N,N,N’N’−テトラメチルエチレンジアミン、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェノキシホスフィン、1,2−ビスジフェニルホスフィノエタン、1,3−ビスジフェニルホスフィノプロパンなどが挙げられる。
ゼロ価ニッケル錯体としては、例えばビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)、(エチレン)ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケルなどが挙げられ、中でも、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)が、反応性、ポリマーの収率、ポリマーの高分子量化という観点から好ましく使用される。
ゼロ価パラジウム錯体としては、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)が挙げられる。
これらゼロ価遷移金属錯体は、上記のように合成して用いてもよいし、市販品として入手できるものを用いてもよい。
ゼロ価遷移金属錯体の合成方法は例えば、遷移金属化合物を亜鉛やマグネシウムなどの還元剤でゼロ価とする方法などの公知の方法が挙げられる。合成したゼロ価遷移金属錯体は、取り出して使用してもよいし、取り出すことなくin situで使用してもよい。
還元剤としては、亜鉛、マグネシウム、水素化ナトリウム、ヒドラジンおよびその誘導体、リチウムアルミニウムヒドリドなどが挙げられる。必要に応じて、ヨウ化アンモニウム、ヨウ化トリメチルアンモニウム、ヨウ化トリエチルアンモニウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムなどを併用することもできる。
該配位子となりうる化合物の例としては、前述の、配位子として例示した化合物等が挙げられ、汎用性、安価、縮合剤の反応性、ポリマーの収率、ポリマーの高分子量化の点でトリフェニルホスフィン、2,2’−ビピリジルが好ましい。特に、2,2’−ビピリジルは、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)と組合せると重合体の収率向上や、重合体の高分子量化が図れるので、この組合せが好ましく使用される。配位子の添加量は、ゼロ価遷移金属錯体に対して、通常、遷移金属原子基準で、0.2〜10モル倍程度、好ましくは1〜5モル倍程度使用される。
なお、還元剤を用いて遷移金属化合物からゼロ価遷移金属錯体を合成する場合、生成するゼロ価遷移金属錯体が上記範囲となるように設定すればよく、例えば、遷移金属化合物の量を、全モノマーの総モル量に対して、0.01モル倍以上、好ましくは0.03モル倍以上とすればよい。使用量の上限は限定的ではないが、使用量が多すぎると後処理が煩雑になる傾向があるために、5.0モル倍以下であることが好ましい。また、還元剤の使用量は、全モノマーの総モル量に対して、例えば、0.5モル倍以上、好ましくは1.0モル倍以上とすればよい。使用量の上限は限定されないが、使用量が多すぎると後処理が煩雑になる傾向があるために、10モル倍以下であることが好ましい。
またゼロ価遷移金属錯体と、上記一般式(5)で示される化合物および/または上記一般式(7)で示される化合物と必要に応じて共重合される他のモノマーおよび/または上記一般式(6)で示される前駆体とを混合する方法は、一方をもう一方に加える方法であっても、両者を反応容器に同時に加える方法であってもよい。加えるに当っては、一挙に加えてもよいが、発熱を考慮して少量ずつ加えることが好ましいし、溶媒の共存下に加えることも好ましい。
溶媒量は、特に限定されないが、あまりにも低濃度では、生成した高分子化合物を回収しにくくなることもあり、また、あまりにも高濃度では、攪拌が困難になることがあることから、溶媒、上記一般式(5)で示される化合物および/または上記一般式(7)で示される化合物と、必要に応じて共重合される他のモノマーおよび/または上記一般式(6)で示される前駆体との総量を100重量%としたとき、溶媒量が好ましくは99.95〜50重量%、より好ましくは99.9〜75重量%となるような溶媒量が好ましく使用される。
また、生成したポリマーのスルホン酸基が塩の形である場合、燃料電池に係る部材として使用するために、スルホン酸基を遊離酸の形にすることが好ましく、遊離酸への変換は、通常酸性溶液での洗浄により可能である。使用される酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸などが挙げられ、好ましくは希塩酸、希硫酸である。
上記のとおり、本発明のポリマーにおいて、ブロック共重合体である場合について詳述したが、上記一般式(5a)で表されるモノマーの重合、上記の一般式(5b)で表されるモノマーと一般式(5c)で表されるモノマーの共重合、または一般式(5)で表されるモノマーの重合においても、この製造方法を参考にすれば、容易に実施することができる。
で表される構造単位に加え、
とを有するポリアリーレン系ブロックであってもよい。
本発明のポリマーは、燃料電池等の電気化学デバイスのイオン伝導膜、とりわけ好適なイオン交換基である酸基を有するものではプロトン伝導膜として、好ましく使用される。なお、以下の説明においては、上記プロトン伝導膜の場合を主として説明する。
この場合は、本発明のポリマーは、通常、膜の形態で使用される。膜へ転化する方法(製膜法)には特に制限はないが、溶液状態より製膜する方法(溶液キャスト法)を用いて製膜することが好ましい。
具体的には、本発明のポリマーを適当な溶媒に溶解し、その溶液をガラス板上に流延塗布し、溶媒を除去することにより製膜される。製膜に用いる溶媒は、本発明の共重合体が溶解可能であり、その後に除去し得るものであるならば特に制限はなく、DMF、DMAc、NMP、DMSO等の非プロトン性極性溶媒、あるいはジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好適に用いられる。これらは単独で用いることもできるが、必要に応じて2種以上の溶媒を混合して用いることもできる。中でも、DMSO、DMF、DMAc、NMPがポリマーの溶解性が高く好ましい。
さらに燃料電池用途においては水管理を容易にするために、無機あるいは有機の微粒子を保水剤として添加することも知られている。これらの公知の方法はいずれも本発明の目的に反しない限り使用できる。また、膜の機械的強度の向上等を目的として、電子線・放射線等を照射して架橋することもできる。
多孔質基材としては、上述の使用目的を満たすものであれば特に制限は無く、例えば多孔質膜、織布、不織布、フィブリル等が挙げられ、その形状や材質によらず用いることができる。多孔質基材の材質としては、耐熱性の観点や、物理的強度の補強効果を考慮すると、脂肪族系高分子、芳香族系高分子、または含フッ素高分子が好ましい。
多孔質基材の膜厚が1μm以上であると、複合化後の強度補強の効果あるいは、柔軟性や耐久性を付与するといった補強効果がより優れ、ガス漏れ(クロスリーク)が発生しにくくなる。また、該膜厚が100μm以下であると、電気抵抗がより低くなり、得られた複合膜が固体高分子型燃料電池のプロトン伝導膜として、より優れたものとなる。該孔径が0.01μm以上であると、本発明の共重合体の充填がより容易となり、100μm以下であると、共重合体への補強効果がより大きくなる。空隙率が20%以上であると、プロトン伝導膜としての抵抗がより小さくなり、98%以下であると、多孔質基材自体の強度がより大きくなり補強効果がより向上するので好ましい。
また、該高分子電解質複合膜と、上記高分子電解質膜とを積層して燃料電池のプロトン伝導膜として用いることもできる。
本発明の燃料電池は、本発明のポリマーを含む高分子電解質膜の両面に、触媒および集電体としての導電性物質を接合することにより製造することができる。
ここで触媒としては、水素または酸素との酸化還元反応を活性化できるものであれば特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、白金または白金系合金の微粒子を触媒成分として用いることが好ましい。白金または白金系合金の微粒子はしばしば活性炭や黒鉛などの粒子状または繊維状のカーボンに担持されて用いられることもある。
また、カーボンに担持された白金または白金系合金を、高分子電解質としてのパーフルオロアルキルスルホン酸樹脂のアルコール溶液と共に混合してペースト化したものを、ガス拡散層および/または高分子電解質膜および/または高分子電解質複合膜に塗布・乾燥することにより触媒層が得られる。具体的な方法としては例えば、J. Electrochem. Soc.: Electrochemical Science and Technology, 1988, 135(9), 2209 に記載されている方法等の公知の方法を用いることができる。
ここで、高分子電解質としてのパーフルオロアルキルスルホン酸樹脂の代わりに、本発明のポリマーを有効成分とする高分子電解質を用い、触媒組成物として用いることもでき、この触媒組成物を用いて得られる触媒層は、本発明の共重合体の優れたプロトン伝導度や、吸水に係る寸法安定性を有するものとなるため、触媒層として好適である。
集電体としての導電性物質に関しても公知の材料を用いることができるが、多孔質性のカーボン織布、カーボン不織布またはカーボンペーパーが、原料ガスを触媒へ効率的に輸送するために好ましい。
このようにして製造された本発明の燃料電池は、燃料として水素ガス、改質水素ガス、メタノールを用いる各種の形式で使用可能である。
分子量の測定:
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、下記条件でポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を測定した。なお、該GPCの分析条件としては、下記の条件を用い、分子量測定値に使用した条件を付記した。
条件
GPC測定装置 島津製作所社製 Prominence GPCシステム
カラム 東ソー社製 TSKgel GMHHR-M
カラム温度 40℃
移動相溶媒 DMF(LiBrを10mmol/dm3になるように添加)
溶媒流量 0.5mL/min
乾燥した膜を秤量し、80℃の脱イオン水に2時間浸漬した後の膜重量増加量から吸水量を算出し、乾燥膜に対する比率を求めた。
滴定法により求めた。
交流法で測定した。
23℃相対湿度50%の条件下で乾燥させた膜の面方向の寸法(Ld)と、80℃熱水中に膜を1時間以上浸漬し膨潤させた直後の膜の面方向の寸法(Lw)を測定し、以下のように計算して求めた。
寸法変化率[%]=(Lw−Ld)÷Ld×100[%]
アルゴン雰囲気下、共沸蒸留装置を備えたフラスコに、DMSO130mL、トルエン60mL、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン二カリウム塩8.1g(15.5mmol)、末端クロロ型である下記ポリエーテルスルホン
(住友化学製スミカエクセルPES5200P、Mn=3.6×104、Mw=8.1×104)2.3g、2,2’−ビピリジル5.9g(37.8mmol) を入れて攪拌した。その後バス温を150℃まで昇温し、トルエンを加熱留去することで系内の水分を共沸脱水した後、65℃に冷却した。次いで、これにビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)10.3g(37.4mmol)を加え、内温75℃で5時間攪拌した。放冷後、反応液を大量のメタノールに注ぐことによりポリマーを析出させ濾別。その後6mol/L塩酸による洗浄・ろ過操作を数回繰り返した後、濾液のpHが5を越えるまで水洗を行い、得られた粗ポリマーを乾燥した。その後、粗ポリマーをNMPに溶解し、6mol/L塩酸に注ぐことにより、再沈殿精製を行い、濾液のpHが5を越えるまで水洗を行った後、得られたポリマーを減圧乾燥することにより目的とする下記ブロック共重合体3.0gを得た。分子量測定結果を下記に示す。
得られたブロック共重合体を10重量%の濃度でNMPに溶解し、高分子電解質溶液を調整した。その後、得られた高分子電解質溶液をガラス板上に流延塗布し、常圧下、80℃で2時間乾燥させる事により溶媒を除去した後、塩酸処理、イオン交換水での洗浄を経て、膜厚約40μmの高分子電解質膜を作製した。吸水率、IECおよび寸法変化率の結果を下記に示す。
Mn 1.3×105
Mw 2.4×105
吸水率 76%
IEC 1.62 meq/g
寸法変化率 3.5%
使用した末端クロロ型であるポリエーテルスルホンのポリスチレン換算のMnを基準に、得られたブロック共重合体のMn及びIECから見積もると、mは平均40と算出される。
得られた高分子電解質膜のプロトン伝導度を測定した。温度を50℃とし、湿度を90%RH、60%RH、40%RHとしたときのプロトン伝導度を表1に、湿度を90%RHとし、温度を90℃、70℃、50℃としたときのプロトン伝導度を表2に示す。
アルゴン雰囲気下、共沸蒸留装置を備えたフラスコに、DMSO100mL、トルエン50mL、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン二ナトリウム塩3.1g(6.4mmol)、2,5−ジクロロベンゾフェノン 3.8g(15.0mmol)、2,2’−ビピリジル8.4g(53.8mmol) を入れて攪拌した。その後バス温を150℃まで昇温し、トルエンを加熱留去することで系内の水分を共沸脱水した後、65℃に冷却した。次いで、これにビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)14.7g(53.4mmol)を加え、内温70℃で3時間攪拌した。放冷後、反応液を大量のメタノールに注ぐことによりポリマーを析出させ濾別。その後6mol/L塩酸による洗浄・ろ過操作を数回繰り返した後、濾液のpHが5を越えるまで水洗を行い、得られた粗ポリマーを乾燥した。その後、粗ポリマーをNMPに溶解し、6mol/L塩酸に注ぐことにより、再沈殿精製を行い、濾液のpHが5を越えるまで水洗を行った後、得られたポリマーを減圧乾燥することにより目的とする下記共重合体3.0gを得た。分子量測定結果を下記に示す。
得られた共重合体を20重量%の濃度でNMPに溶解し、高分子電解質溶液を調整した。その後、得られた高分子電解質溶液をガラス板上に流延塗布し、常圧下、80℃で2時間乾燥させる事により溶媒を除去した後、塩酸処理、イオン交換水での洗浄を経て、膜厚約40μmの高分子電解質膜を作製した。吸水率、IECの結果を下記に示す。
Mn 1.3×105
Mw 2.4×105
吸水率 125%
IEC 2.34 meq/g
得られた高分子電解質膜のプロトン伝導度を測定した。温度を50℃とし、湿度を90%RH、60%RH、40%RHとしたときのプロトン伝導度を表1に、湿度を90%RHとし、温度を90℃、70℃、50℃としたときのプロトン伝導度を表2に示す。
アルゴン雰囲気下、共沸蒸留装置を備えたフラスコに、DMSO200mL、トルエン120mL、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン二ナトリウム塩7.7g(15.0mmol)、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩3.7g(15.0mmol)、末端クロロ型である下記ポリエーテルスルホン
Mn 1.3×105
Mw 2.2×105
Claims (18)
- mが5以上の整数である、請求項4記載のポリマー。
- Xが、カルボニル基、スルホニル基および1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン基からなる群から選ばれる電子吸引性基である、請求項1〜5のいずれかに記載のポリマー。
- Ar1にあるイオン交換基が、主鎖を構成する芳香環に直接結合している、請求項1〜6のいずれかに記載のポリマー。
- イオン交換基がスルホン酸基、スルホンイミド基、ホスホン酸基およびカルボキシル基から選ばれる酸基である、請求項1〜7のいずれかに記載のポリマー。
- イオン交換基を有するセグメントとして上記一般式(2)で表されるセグメントを有し、さらにイオン交換基を実質的に有さないセグメントを有し、共重合様式がブロック共重合である、請求項4〜9のいずれかに記載のポリマー。
- イオン交換基を実質的に有さないセグメントが下記一般式(3)で表されるセグメントである、請求項10に記載のポリマー。
(式中、b、c、dは互いに独立に0か1を表し、nは5以上の整数を表す。Ar3、Ar4、Ar5、Ar6は互いに独立に2価の芳香族基を表し、ここでこれらの2価の芳香族基は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基または置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基で、置換されていてもよい。Y、Y’は、互いに独立に直接結合または2価の基を表す。Z、Z’は、互いに独立に酸素原子または硫黄原子を表す。) - イオン交換容量が、0.5meq/g〜4.0meq/gである、請求項1〜11のいずれかに記載のポリマー。
- 請求項1〜12のいずれかに記載のポリマーを有効成分とする高分子電解質。
- 請求項13に記載の高分子電解質からなる高分子電解質膜。
- 請求項13記載の高分子電解質と、多孔質基材とからなる高分子電解質複合膜。
- 請求項13記載の高分子電解質と触媒成分とからなる触媒組成物。
- 請求項14記載の高分子電解質膜または請求項15記載の高分子電解質複合膜を、イオン伝導膜とする高分子電解質型燃料電池。
- 請求項16記載の触媒組成物を用いて得られる触媒層を備える高分子電解質型燃料電池。
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