JP2008088420A - ポリマー、高分子電解質およびそれを用いてなる燃料電池 - Google Patents

ポリマー、高分子電解質およびそれを用いてなる燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】燃料電池用電解質膜として用いたときに、高度のイオン伝導度に加え、かかるイオン伝導性の湿度依存性が著しく小さいポリマーを提供する。
【解決手段】下記一般式(1a)で表される構造単位を有することを特徴とするポリマー、一般式(1a)で表される構造単位からなるセグメントを有し、共重合様式がブロック共重合のポリマー、このポリマーを含む高分子電解質の提供。さらに該高分子電解質からなる燃料電池用部材の提供。
Figure 2008088420

(式中、a1は1以上の整数を表す。Ar1はイオン交換基を有する2価の芳香族基を表し、Xは2価の電子吸引性基を表す。)
【選択図】なし

Description

本発明は、高分子電解質、なかでも燃料電池用部材として好適に用いられるポリマーに関する。
一次電池、二次電池、あるいは固体高分子型燃料電池等の電気化学デバイスの隔膜を構成する材料として、プロトン伝導性を有する高分子すなわち高分子電解質が用いられている。例えば、ナフィオン(デュポン社の登録商標)をはじめとする、側鎖に超強酸としてのパーフルオロアルキルスルホン酸を有し、主鎖がパーフルオロアルカン鎖である高分子を有効成分とする高分子電解質が、燃料電池用の隔膜材料として用いた場合に発電特性が優れることから、従来主に使用されている。しかしながらこの種の材料は非常に高価であること、耐熱性が低いこと、膜強度が低く何らかの補強をしないと実用的でないことなどの問題が指摘されている。
こうした状況において、上記高分子電解質に替わり得る安価で特性の優れた高分子電解質の開発が近年活発化してきている。
例えば、スルホン酸基が実質的に導入されていないセグメントおよびスルホン酸基が導入されたセグメントを有するブロック共重合体であって、前者のセグメントがポリエーテルスルホンからなり、後者のセグメントがジフェニルスルホンとスルホン酸基を有するビフェノールとのエーテル結合体を繰返し単位とするブロック共重合体が提案され、かかるブロック共重合体をプロトン伝導膜として使用した場合、湿度によるプロトン伝導性の変動(以下、「湿度依存性」と呼ぶことがある)が小さく、燃料電池に好適に適用できることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2003−031232号公報(特許請求の範囲)
しかしながら、上記特許文献1に開示されているブロック共重合体は、プロトン伝導度の湿度依存性としては必ずしも十分に小さいものではなく、さらには、低湿下でのプロトン伝導度自体も十分とはいえなかった。
本発明の目的は、電解質膜として用いるときに、高度のイオン伝導度に加え、かかるイオン伝導性の湿度依存性が著しく小さいポリマーを提供することにある。さらには、該ポリマーを有効成分とする高分子電解質、該高分子電解質を用いてなる燃料電池用部材、該部材を用いてなる高分子電解質型燃料電池を提供することにある。
本発明者等は、燃料電池用イオン伝導膜等に適用される高分子電解質として、より優れた性能を示すポリマーを見出すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成した。
すなわち、本発明は[1]下記一般式(1a)で表される構造単位を有することを特徴とするポリマー
Figure 2008088420
(式中、a1は1以上の整数を表す。Ar1はイオン交換基を有する2価の芳香族基を表し、イオン交換基以外の置換基を有していてもよい。Ar0は置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表し、a1が2以上である場合、複数のAr0は互いに同一でも異なっていてもよい。Xは2価の電子吸引性基を表す。)
を提供する。
このようなポリマーから得られる高分子電解質膜は、プロトン伝導度の湿度依存性が小さく、燃料電池の用途において非常に有用な高分子電解質膜となる。
また、本発明は上記ポリマーの好適な実施形態として、下記[2]を提供する。
[2]下記一般式(1b)で表される構造単位と、下記一般式(1c)で表される構造単位とを有する、[1]記載のポリマー
Figure 2008088420
(式中、Ar1およびXは前記と同義であり、2つのAr1は互いに同一でも異なっていてもよい。)
Figure 2008088420
(式中、Ar0は前記と同義である。)
前記一般式(1a)で表される構造単位は、Xに隣接するAr1のみならず、1以上あるAr0の全てにイオン交換基を有していると好ましく、さらに、このようにイオン交換基を有する芳香族基からなる構造単位が連結してセグメントを形成していると、より好ましい。したがって、下記の[3]〜[5]を提供する。
[3]上記一般式(1a)で表される構造単位が、下記一般式(1)で表される構造単位である、[1]記載のポリマー
Figure 2008088420
(式中、aは2以上の整数を表す。Ar1およびXは前記と同義であり、複数あるAr1は互いに同一でも異なっていてもよい。Xは2価の電子吸引性基を表す。)
[4]下記一般式(2)で表されるセグメントを有する、[3]記載のポリマー。
Figure 2008088420
(式中、Ar1およびXは前記と同義である。fは1以上の整数を表わし、2つのfは互いに同一でも異なっていてもよい。複数あるAr1は互いに同一でも異なっていてもよい。mは繰り返し単位数を表す。)
[5]mが5以上の整数である、[4]記載のポリマー。
また、本発明は上記いずれかのポリマーに係る好適な実施形態として、下記[6]〜[8]を提供する。
[6]Xが、カルボニル基、スルホニル基および1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン基からなる群から選ばれる電子吸引性基である、[1]〜[5]のいずれかに記載のポリマー
[7]Ar1にあるイオン交換基が、主鎖を構成する芳香環に直接結合している、[1]〜[5]のいずれかに記載のポリマー
[8]イオン交換基がスルホン酸基、スルホンイミド基、ホスホン酸基およびカルボキシル基から選ばれる酸基である、[1]〜[7]のいずれかに記載のポリマー
[9]Ar1が下記一般式(4)で表される芳香族基である、[1]〜[8]のいずれかに記載のポリマー
Figure 2008088420
(式中、R1は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基または置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基であり、pは0または1である。)
また、本発明は上記の[4]または[5]に係る好適な実施形態として、下記の[10]、[11]を提供する。
[10]イオン交換基を有するセグメントとして上記上記一般式(2)で表されるセグメントを有し、さらにイオン交換基を実質的に有さないセグメントを有し、共重合様式がブロック共重合である、[4]〜[9]のいずれかに記載のポリマー
[11]イオン交換基を実質的に有さないセグメントが下記一般式(3)で表されるセグメントである、[10]記載のポリマー
Figure 2008088420
(式中、b、c、dは互いに独立に0か1を表し、nは5以上の整数を表す。Ar3、Ar4、Ar5、Ar6は互いに独立に2価の芳香族基を表し、ここでこれらの2価の芳香族基は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基または置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基で、置換されていてもよい。Y、Y’は、互いに独立に直接結合または2価の基を表す。Z、Z’は、互いに独立に酸素原子または硫黄原子を表す。)
本発明のポリマーは、より高度のイオン伝導性と燃料電池用部材としての耐水性を両立するといった点で、そのイオン交換容量を制御することが好ましく、すなわち下記[12]を提供するものである。
[12]イオン交換容量が、0.5meq/g〜4.0meq/gである、[1]〜[11]のいずれかに記載のポリマー
さらに、本発明は上記いずれかのポリマーを用いてなる、下記[13]〜[18]を提供する。
[13]上記いずれかに記載のポリマーを有効成分とする高分子電解質
[14][13]記載の高分子電解質からなる高分子電解質膜
[15][13]記載の高分子電解質と、多孔質基材とからなる高分子電解質複合膜
[16][13]記載の高分子電解質と触媒成分とを含む触媒組成物
[17][14]記載の高分子電解質膜または[15]に記載の高分子電解質複合膜を、イオン伝導膜として用いる高分子電解質型燃料電池
[18][16]記載の触媒組成物を用いて得られる触媒層を備えることを特徴とする高分子電解質型燃料電池
本発明のポリマーは、燃料電池用部材、中でもイオン伝導膜として用いた場合、イオン伝導度の湿度依存性が小さく、好適なイオン伝導膜を提供できる。この湿度依存性に係る効果は、本発明のポリマーを高分子電解質型燃料電池の触媒層に適用した場合にも好適である。特に、本発明のポリマーのイオン交換基が酸基であるとき、燃料電池用プロトン伝導膜として用いると、その燃料電池は高い発電効率を示すものが得られる。このように、本発明のポリマーは、特に燃料電池の用途において工業的に極めて有用である。
本発明のポリマーは、下記一般式(1a)で表される構造単位を有することを特徴とする。
Figure 2008088420
(式中、a1は1以上の整数を表す。Ar1はイオン交換基を有する2価の芳香族基を表し、イオン交換基以外の置換基を有していてもよい。Ar0は置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表し、a1が2以上である場合、複数のAr0は互いに同一でも異なっていてもよい。Xは2価の電子吸引性基を表す。)
ここで、「イオン交換基」とは、本発明のポリマーを膜の形態である電解質膜として用いたとき、イオン伝導を発現する基であり、「イオン交換基を有する」とはAr1にある芳香環に直接イオン交換基が結合している形態や、原子または原子団を介してイオン交換基がAr1にある芳香環に結合している形態を含む概念である。
上記一般式(1a)において、「電子吸引性基」とは、ハメット則のσ値が正である基である。本発明においては、ハメット置換基定数がパラ置換で+0.01以上となる電子吸引基が好適であり、−CO―(カルボニル基)、−SO2−(スルホニル基)、−C(CF32−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン基)であると、特に好ましい。
本発明者は、上記一般式(1a)で表される構造単位を有するポリマーは、膜の形態に転化したときに、イオン伝導度の湿度依存性が著しく小さい膜を得ることができることを見出した。これは燃料電池用部材として、電池起動時の低湿状態においても電池が稼動し易く、ある程度の湿度まで向上した場合においても安定的な発電性能を得るという優れた効果を発現することができる。定かではないが、電子吸引性基Xに隣接する芳香族基Ar1にイオン交換基を有していると、Xの電子吸引性によって、該イオン交換基のイオン解離性が向上して、このような湿度依存性を発現することが推定される。また、燃料電池用部材として使用するためには、燃料電池作動にとって発生する過酸化物やラジカルに対する耐久性が求められることがある。上記一般式(1a)で表される構造単位を有するポリマーは、この点においても電子吸引性基Xの効果により、このような耐久性にも優れるという効果を発現し得ることが期待される。
また、該膜は、吸水に係る寸法安定性にも優れており、電池の稼動・停止の繰返しに伴う、高分子電解質膜の吸水膨潤、乾燥収縮によるストレスが極めて低減できることから、該膜の劣化を抑制することができ、電池自体の長寿命化を達成するものである。
Ar0は置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。該置換基としてはイオン交換基またはイオン交換基を有する基であってもよい。a1は1以上の整数を表わす。a1の上限は、Ar0の種類、殊にAr0がイオン交換基を有するか否かにより、上述の好適なイオン交換容量を満たす範囲で選択することができる。製造上の容易さも勘案すれば、a1は10以下が好ましく、5以下がより好ましく、3以下がさらに好ましい。
本発明のポリマーは、上記一般式(1a)で表される構造単位と、他の構造単位との共重合体でもよい。かかる共重合体である場合、一般式(1a)で表される構造単位の含有率は5重量%〜80重量%が好ましく、15重量%〜60重量%であると、燃料電池用の高分子電解質膜として使用した場合、高度のイオン伝導度に加えて、耐水性が向上するので、特に好ましい。
また、一般式(1a)におけるイオン交換基を有する2価の芳香族基Ar1は、単環性芳香族基であると特に好ましい。かかる単環性芳香族基としては、例えば、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基などが挙げられる。
Ar1は、イオン交換基を有することを特徴とするが、イオン交換基以外の置換基を有していてもよい。該置換基としては、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基または置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基が挙げられる。
置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−メチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基などの炭素数1〜20のアルキル基、及びこれらの基にフッ素原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基などが置換され、その総炭素数が20以下であるアルキル基などが挙げられる。
また、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、2,2−ジメチルプロピルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、イコシルオキシ基などの炭素数1〜20のアルコキシ基、及びこれらの基にフッ素原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基などが置換され、その総炭素数が20以下であるアルコキシ基などが挙げられる。
置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、アントラセニル基などのアリール基、及びこれらの基にフッ素原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基などが置換され、その総炭素数が20以下であるアリール基などが挙げられる。
置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基としては、例えばフェノキシ基、ナフチルオキシ基、フェナントレニルオキシ基、アントラセニルオキシ基などのアリールオキシ基、及びこれらの基にフッ素原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基などが置換され、その総炭素数が20以下であるアリールオキシ基などが挙げられる。
置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基としては、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基などの炭素数2〜20のアシル基、及びこれらの基にフッ素原子、ヒドロキシル基、ニトリル基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基などが置換され、その総炭素数が20以下であるアシル基などが挙げられる。
Ar1にあるイオン交換基としては、酸基または塩基性基のどちらも適用できるが、酸基が通常使用される。該酸基としては、弱酸基、強酸基、超強酸基などの酸基が挙げられるが、強酸基、超強酸基が好ましい。酸基の例としては、例えば、ホスホン酸基(−PO32)、カルボキシル基(−COOH)などの弱酸基;スルホン酸基(−SO3H)、スルホンイミド基(−SO2−NH−SO2−R。ここでRはアルキル基、アリール基等の一価の置換基を表す。)などの強酸基が挙げられ、中でも、強酸基であるスルホン酸基、スルホンイミド基が好ましく使用される。また、フッ素原子等の電子吸引性基でAr1および/またはスルホンイミド基の置換基(−R)上の水素原子を置換することにより、かかる電子吸引性基の効果で前記の強酸基を超強酸基として機能させることもできる。
これらのイオン交換基は、部分的にあるいは全てが、金属イオンや4級アンモニウムイオンなどで交換されて塩を形成していてもよいが、燃料電池用高分子電解質膜などとして使用する際には、実質的に全てが遊離酸の状態であることが好ましい。
なお、上述のとおり、該イオン交換基は、上記一般式(1a)で表される構造単位を有するポリマーにおいて、その主鎖を構成する芳香環に、直接結合していても、連結基を介して結合している形態でもよいが、主鎖を構成する芳香環に直接結合していることが、市場から容易に入手できる材料を用いて本発明のポリマーを容易に製造することができるため好ましい。
また、一般式(1a)におけるAr0は上記のとおり、Ar1と同様のイオン交換基を有する2価の芳香族基であってもよいし、イオン交換基を有していなくてもよい。その他の説明は、Ar1と同様である。
本発明のポリマーが共重合体である場合、その共重合様式は、ランダム共重合、交互共重合、ブロック共重合あるいはグラフト共重合のいずれでもよいが、中でもブロック共重合であると好ましく、かかるブロック共重合に係る好適なポリマーに関しては後述する。
上記一般式(1a)において、上述のとおり電子吸引性基Xにより近い芳香族基Ar0はイオン交換基を有していると、Ar1と同様に電子吸引効果によるイオン伝導度の湿度依存性をより良好にすることが期待される。その観点から、Ar0もイオン交換基である芳香族基、すなわちAr1と同様な芳香族基であると好ましく。換言すれば、上記一般式(1a)で表される構造単位が、下記一般式(1)で表される構造単位であると好ましい。
Figure 2008088420
(式中、aは2以上の整数を表す。Ar1およびXは前記と同義であり、複数あるAr1は互いに同一でも異なっていてもよい。Xは2価の電子吸引性基を表す。)
なお、上記一般式(1)で表す構造単位において、イオン交換基を有する芳香族基Ar1において、電子吸引性基Xから遠い基であるほど、電子吸引効果を受け難いので、aは、2〜4の範囲が好ましく、製造上容易である点からみれば、aが2であると特に好ましい。
以下、好適な構造単位である、一般式(1)で表される構造単位について説明する。
具体的に一般式(1)で表される構造単位を例示すると、下記(1−1)〜(1−26)などが挙げられる(ここで、(1−13)〜(1−15)にある「−Ph」はフェニル基を表す)。
Figure 2008088420
Figure 2008088420
Figure 2008088420
前記(1−1)〜(1−26)においてJは、イオン交換基であるか、イオン交換基を有する基を表し、具体的には下記の群から選ばれる基である。なお、同一構造単位中にある複数のJは互いに同一でも異なっていてもよい。
Figure 2008088420
(式中、A、A’はそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルキレン基または炭素数1〜6のフッ素置換アルキレン基を表し、A’が複数ある場合、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。kは1〜4の整数を表し、Tはイオン交換基を表し、*は結合手を表す。)
なお、上記において「フッ素置換アルキレン基」とはアルキレン基の炭素原子に結合している水素原子の一部または全部がフッ素原子に置き換わった基を意味する。
本発明のポリマーは上記一般式(1a)で表される構造単位、好ましくは上記一般式(1)で表される構造単位を、イオン伝導性を発現するイオン交換基を有する構造単位として含む。そして、そのイオン交換基の導入量は、イオン交換容量で表した場合、0.5〜4.0meq/gであると好ましい。0.5meq/g以上であると、イオン伝導性がより向上し、燃料電池用の高分子電解質としての機能がより優れるので好ましい。一方、該イオン交換容量が4.0meq/g以下であると、耐水性がより良好となるので好ましい。なお、該イオン交換容量は1.0〜3.0meq/gであると、より好ましい。
さらに、好適なポリマーとしては上記一般式(1)で表される構造単位からなるセグメント、すなわち下記一般式(2)で表されるセグメントを分子内に有しているポリマーが挙げられる。このようなポリマーは、特にイオン伝導性に優れるため、より好ましい。
Figure 2008088420
(式中、Ar1、Xは前記と同義である。fは1以上の整数を表わし、2つのfは互いに同一でも異なっていてもよい。mは繰り返し単位数を表す。)
mは、上記一般式(2)における括弧内の構造単位の繰り返し単位数を表し、mは5以上の整数であると好ましく、5〜1000の範囲がより好ましく、さらに好ましくは10〜500である。mの値が5以上であると、より高度のプロトン伝導度が得られ、mの値が1000以下であれば、かかるセグメントの製造がより容易となるので好ましい。
上記一般式(2)で示されるセグメントとしては、かかるセグメントのAr1が下記一般式(4)で表される芳香族基であるセグメントであると好ましい。また、このように芳香環に直接結合しているスルホン酸基は、隣接するXの電子吸引性により、より湿度依存性を小さくする効果に優れる。また、一般式(4)で表される芳香族基まらなるセグメントは、市場から容易に入手できる材料を用いて容易に製造することができるため好ましい。なお、かかる製造に係る好適な例は後述する。
Figure 2008088420
(式中、R1は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基または置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基であり、pは0または1である。)
上記一般式(4)におけるR1は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基またはアシル基から選ばれる置換基であり、かかる置換基としては、上記Ar1の置換基として例示したものと同じであり、後述の製造方法において、その重合反応を阻害しない基である。その置換基の数を表すpは、0または1であり、特に好ましくはpが0、すなわち、このような置換基を有さない芳香族基である。
本発明のポリマーとしては、上記一般式(2)で表されるセグメントを、イオン交換基を有するセグメントとして有し、さらにイオン交換基を実質的に有さないセグメントを併せ持ち、共重合様式がブロック共重合であるポリマー(以下、単に「ブロック共重合体」と呼ぶ)であると、吸水特性が向上する傾向があることから好ましい。また、かかるブロック共重合体は、膜として用いた場合、イオン交換基を有するセグメントとイオン交換基を実質的に有さないセグメントが、それぞれのセグメントを密とする相に分離したミクロ相分離構造を形成し、お互いが連続層をとるように制御することが容易である。これにより、高度のイオン伝導度と吸水特性を両立することができる。
かかるブロック共重合体において、イオン交換基を有するセグメントを構成する構造単位として、上記一般式(1)以外の構造単位を有していてもよいが、該イオン交換基を有するセグメントの全量を100重量%としたとき、一般式(1)で表される構造単位が50重量%以上が好ましく、70重量%以上であると、さらに好ましく、実質的に一般式(1)で表される構造単位が100重量%、すなわちイオン交換基を有するセグメントが全て、上記一般式(2)で表されるセグメントから構成されているブロック共重合体が特に好ましい。
なお、イオン交換基を有するセグメントを構成する上記一般式(1)で表される構造単位以外のものとしては、下記一般式(10)で表される構造単位が好適である。
Figure 2008088420
(式中、Ar10はイオン交換基を有する2価の芳香族基を表す。)
また、上記ブロック共重合体においては、イオン交換基を有するセグメントとして上記一般式(2)で表されるセグメントを有し、さらに、一般式(1)で表される構造単位以外の構造単位からなるセグメント(以下、「他のイオン交換基を有するセグメント」と呼ぶ)を有する形態のポリマーでもよい。他のイオン交換基を有するセグメントとしては、当該セグメントを構成する構造単位当たりにあるイオン交換基数で表して、0.5個以上のイオン交換基を有するセグメントであり、好ましくは、セグメントを構成する構造単位当たり1.0個以上のイオン交換基を有するものが挙げられる。
上記ブロック共重合体中にある、一般式(2)で表されるセグメントと他のイオン交換基を有するセグメントにあるイオン交換基導入量は、かかるセグメントの合計重量当たりのイオン交換基当量で表して、2.5meq/g〜10.0meq/gが好ましく、さらに好ましくは3.5meq/g〜9.0meq/gであり、特に好ましくは4.5meq/g〜7.0meq/gである。
該イオン交換基導入量が2.5meq/g以上であると、イオン交換基同士が密接に隣接することとなり、イオン伝導性がより高くなるので好ましく、一方、イオン交換基導入量を示すイオン交換容量が10.0meq/g以下であると、製造がより容易であるので好ましい。
次に、上記イオン交換基を実質的に有さないセグメントについて説明する。
該イオン交換基を実質的に有さないセグメントは、上記のように、その繰返し単位当たりで計算してイオン交換基が0.1個以下であるものであり、構造単位当たりのイオン交換基が0、すなわちイオン交換基が実質的に皆無であると特に好ましい。
該イオン交換基を実質的に有さないセグメントとして、上記一般式(3)で表されるセグメントが好ましい。
ここで、一般式(3)におけるb、c、dは互いに独立に0か1を表す。nは5以上の整数を表し、5〜200であると好ましい。nの値が小さいと、成膜性や膜強度が不十分であったり、耐久性が不十分であったりするなどの問題が生じやすくなるため、nは10以上であると特に好ましい。また、nを5以上、好ましくは10以上とするには、一般式(3)のブロックにおけるポリスチレン換算数平均分子量で表して、2000以上、好ましくは3000以上であると十分である。
また、一般式(3)におけるAr3、Ar4、Ar5およびAr6は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基または置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基で、置換されていてもよい2価の芳香族基であり、単環性芳香族基であると特に好ましい。かかる単環性芳香族基としては、例えば、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基などが挙げられる。ここで、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基および置換基を有していてもよいアシル基の例示は、上記Ar1の置換基として例示したものと同じである。
上記一般式(3)におけるZ、Z’は、互いに独立に酸素原子または硫黄原子を表す。 また、一般式(3)におけるY、Y’は、互いに独立に直接結合または2価の基を表すものであるが、中でも、−CO−(カルボニル基)、−SO2−(スルホニル基)、−C(CH32−(2,2−イソプロピリデン基)、−C(CF32−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン基)または9,9−フルオレンジイル基であると好ましい。
上記一般式(3)で表されるセグメントの好ましい代表例としては、例えば以下のものが挙げられる。なお、nは上記一般式(3)と同じ定義である。
Figure 2008088420
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上記ブロック共重合体は一般式(2)で表されるセグメントを、イオン交換基を有するセグメントとして有するが、該ブロック共重合体のイオン交換基の導入量は、イオン交換容量、すなわち該ブロック共重合体全重量当たりのイオン交換基当量で表したとき、0.5meq/g〜4.0meq/gが好ましく、さらに好ましくは1.0meq/g〜3.0meq/gである。
該イオン交換容量が0.5meq/g以上であると、プロトン伝導性がより高くなり、燃料電池用の高分子電解質としての機能がより優れるので好ましい。一方、イオン交換基導入量を示すイオン交換容量が4.0meq/g以下であると、耐水性がより良好となるので好ましい。
また、本発明のポリマーは、分子量が、ポリスチレン換算の数平均分子量で表して、5000〜1000000であることが好ましく、中でも15000〜400000であることが特に好ましい。
次に、本発明のポリマーを得る上で、好適な製造方法について説明する。
ここで、イオン交換基の導入方法は、予めイオン交換基を有するモノマーを重合する方法であっても、イオン交換基を導入可能な部位を有するモノマーからポリマーを製造した後に、該ポリマーにある、該導入可能な部位にイオン交換基を導入する方法であってもよい。中でも、前者の方法であると、イオン交換基の導入量や、置換位置を的確に制御することができるので、より好ましい。また、電子吸引性基Xに隣接する芳香族基Ar1は、スルホン化等の求電子反応は極めて起こり難い傾向がある。したがって、予め一般式(1a)で表される構造単位を誘導するモノマーは、予め電子吸引性基Xとともに、イオン交換基またはイオン交換基に容易に転化できる基を併せ持つものを使用することが好ましい。
イオン交換基を有するモノマーを用いて、本発明のポリマーを製造する方法としては、例えば、ゼロ価遷移金属錯体の共存下、下記一般式(5a)で示されるモノマーを縮合反応により重合することにより製造し得る。
Figure 2008088420
(式中、Ar0、Ar1、Xおよびa1は前記と同義である。Qは縮合反応時に脱離する基を表す。複数あるAr0は互いに同一でも異なっていてもよく、2つのAr1は互いに同一でも異なっていてもよく、2つのa1は互いに同一でも異なっていてもよく、2つのQは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
または、下記一般式(5b)で表されるモノマーと、
Figure 2008088420
(式中、Ar1、XおよびQは前記と同義である。2つのQは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
下記一般式(5c)で表されるモノマーと、
Figure 2008088420
(式中、Ar0およびQは前記と同義である。2つのQは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
を共重合すれば、下記一般式(1b)で表される構造単位と一般式(1c)で表される構造単位とを有し、A1とA0が直接結合で連結された構造を有するポリマー、すなわち一般式(1a)で表される構造単位を有するポリマーが得られる。
Figure 2008088420
(式中、Ar1およびXは前記と同義であり、2つのAr1は互いに同一でも異なっていてもよい。)
Figure 2008088420
(式中、Ar0は前記と同義である。)
本発明の好適なポリマーである、上記一般式(1)で表される構造単位からなるポリマーを得る場合は、たとえば、下記一般式(5)で表されるモノマーを縮合反応により重合すればよい。
Figure 2008088420
(式中、Ar1、X、Qおよびfは前記と同義である。2つのQは互いに同一であっても異なっていてもよく、2つのfは互いに同一であっても異なっていてもよく、2つ以上あるAr1は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
また、上記一般式(5)で表されるモノマーと、上記一般式(5c)で表されるモノマーとを縮合反応により重合することもできる。
また、上記の好適なブロック共重合体の製造を行う場合、例えば、ゼロ価遷移金属錯体の共存下、上記一般式(5)で表されるモノマーと、下記一般式(6)で表されるイオン交換基を実質的に有さないセグメントの前駆体(以下、「セグメント前駆体」と略記することもある。)を縮合反応により重合する方法や、ゼロ価遷移金属錯体の共存下、上記一般式(5)で示されるモノマーを重合して、一般式(2)で表されるセグメントを誘導する前駆体を得、かかる前駆体を下記一般式(6)で表される化合物と縮合させる方法が例示される。
Figure 2008088420
(式中、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6、b、c、d、n、Y、Y’、Z、Z’、Qは前記と同義である。)
上記一般式(5)、(5a)、(5b)、(5c)および(6)におけるQは、縮合反応時に脱離する基を表すが、その具体例としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、p−トルエンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、下記に示すようなホウ素原子を含む基などが挙げられる。
Figure 2008088420
(RaおよびRbは、互いに独立に水素原子または有機基を表し、RaとRbとが結合して環を形成していてもよい。)
以下、本発明の好適なポリマーである、ブロック共重合体の製造方法について詳述する。
上記一般式(5)で表されるモノマーは、好ましいイオン交換基であるスルホン酸基で例示すると、4、4’−ジクロロ−2、2’−ジスルホベンゾフェノン、4、4’−ジブロモ−2、2’−ジスルホベンゾフェノン、4、4’−ジクロロ−3、3’−ジスルホベンゾフェノン、4、4’−ジブロモ−3、3’−ジスルホベンゾフェノン、5、5’−ジクロロ−3、3’−ジスルホベンゾフェノン、5、5’−ジブロモ−3、3’−ジスルホベンゾフェノン、ビス(4−クロロ−2−スルホフェニル)スルホン、ビス(4−ブロモ−2−スルホフェニル)スルホン、ビス(4−クロロ−3−スルホフェニル)スルホン、ビス(4−ブロモ−3−スルホフェニル)スルホン、ビス(5−クロロ−3−スルホフェニル)スルホン、ビス(5−ブロモ−3−スルホフェニル)スルホンなどが挙げられる。
また、他のイオン交換基の場合は、上記に例示したモノマーのスルホン酸基を、カルボキシル基、ホスホン酸基などのイオン交換基に置き換えて、選択することができ、これら他のイオン交換基を有するモノマーも市場から容易に入手できるか、公知の製造方法を用いて、製造することが可能である。
さらに上記に例示するモノマーのイオン交換基が塩の形もしくは保護基で保護されていてもよく、特に、イオン交換基が塩の形もしくは保護基で保護されているモノマーを用いることが、重合反応性の観点から好ましい。塩の形としては、アルカリ金属塩が好ましく、特に、Li塩、Na塩、K塩の形が好ましい。
また、イオン交換基の導入を重合後に行い、本発明の共重合体の製造を行う方法としては、例えば、ゼロ価遷移金属錯体の共存下、下記一般式(7)で表されるモノマーと、必要に応じてイオン交換基を有さないモノマーを縮合反応により共重合し、その後、公知の方法に準じてイオン交換性基を導入することにより製造し得る。
Figure 2008088420
(式中、Ar7はイオン交換基を導入することで、上記一般式(1)のAr1となり得る2価の芳香族基を表し、Q、X、fは前記と同義である。)
また、本発明のブロック共重合体の製造を行う方法としては、例えば、ゼロ価遷移金属錯体の共存下、上記一般式(7)で表されるモノマーと、イオン交換基を有さないモノマーの代わりに、上記一般式(6)で表されるイオン交換基を実質的に有さないセグメントの前駆体を縮合反応により共重合し、その後、公知の方法に準じてイオン交換性基を導入することにより製造し得る。
ここで、Ar7は、フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基または炭素数2〜20のアシル基で置換されていてもよいが、Ar7は少なくともひとつのイオン交換基を導入可能な構造を有する2価の単環性芳香族基である。該2価の単環性芳香族基としては、例えば、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基などが挙げられる。置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基または置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基としては、上記のAr1の置換基として例示したものと同じものが挙げられる。
Ar7におけるイオン交換基を導入可能な構造としては、芳香環に直接結合している水素原子を有しているか、イオン交換基に変換可能な置換基を有していることを示す。イオン交換基に変換可能な置換基としては、重合反応を阻害しない限り特に制限はないが、例えば、メルカプト基、メチル基、ホルミル基、ヒドロキシ基、ブロモ基、などが挙げられ、後述するスルホン酸基の導入のような求電子置換反応の場合は、芳香環に結合している水素原子もイオン交換基に変換可能な置換基と見なすことができる。なお、一般式(7)で表されるモノマーの具体例としては、例えば3,3’−ジクロロベンゾフェノン、3,3’−ジブロモベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジブロモベンゾフェノン、ビス(3−クロロフェニル)スルホン、ビス(3−ブロモフェニル)スルホン、ビス(4−クロロフェニル)スルホン、ビス(4−ブロモフェニル)スルホンから選ばれる化合物に、上記に例示したイオン交換基に変換可能な置換基を有するものが挙げられる。
イオン交換基の導入方法としてスルホン酸基の場合を例として挙げると、重合して得られた共重合体を濃硫酸に溶解あるいは分散することにより、あるいは有機溶媒に少なくとも部分的に溶解させた後、濃硫酸、クロロ硫酸、発煙硫酸、三酸化硫黄などを作用させることにより、水素原子をスルホン酸基に変換する方法を挙げることができる。
また、上記一般式(7)で表されるモノマーがメルカプト基を有すると、重合反応終了時にメルカプト基を有する共重合体を得ることができ、該メルカプト基を、酸化反応によりスルホン酸基に変換することができる。縮合反応時、メルカプト基は保護基で保護されていることが好ましい。
次に、カルボキシル基の導入方法を例として挙げると、酸化反応により、メチル基、ホルミル基をカルボキシル基に変換する方法や、ブロモ基をMgの作用により−MgBrとした後、二酸化炭素を作用させカルボキシル基に変換するなどの公知の方法が挙げられる。
ホスホン酸基の導入方法を例として挙げると、ブロモ基を、塩化ニッケルなどのニッケル化合物の共存下、亜リン酸トリアルキルを作用させてホスホン酸ジエステル基とした後、これを加水分解してホスホン酸基に変換する方法や、ルイス酸触媒の共存下、三塩化リンや五塩化リンなどを用いてC−P結合を形成させ、続いて必要に応じ酸化及び加水分解してホスホン酸基に変換する方法とする方法、高温でリン酸無水物を作用させ、水素原子をホスホン酸基に変換する方法などの公知の方法が挙げられる。
スルホンイミド基の導入方法を例として挙げると、縮合反応または置換反応により、前述のスルホン酸基をスルホンイミド基に変換する方法などの公知の方法が挙げられる。
このように、イオン交換基に変換可能な置換基を有するモノマー、または当該モノマーを重合して得られる、イオン交換基に変換可能な置換基を有するポリマーから、かかる置換基をイオン交換基に変換することで、本発明のポリマーを製造することもできるが、上述のとおり、イオン交換基の導入が求電子置換反応である場合、Xに隣接するAr7は比較的求電子置換反応を受け難いため、求電子置換反応を用いる以外の手段により、イオン交換基を導入することが好ましい。
次に、上記一般式(6)で表されるセグメント前駆体の好適な代表例を挙げる。これらの例示の中で、Qは上記と同義である。
Figure 2008088420
Figure 2008088420
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Figure 2008088420
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かかる例示の化合物は、市場から容易に入手できるか、市場から容易に入手できる原料を用いて製造することが可能であり、例えば、上記(6a)で示される末端に脱離基Qを有するポリエーテルスルホンは、住友化学(株)製スミカエクセルPESなどの市販品を入手することも可能であり、これを一般式(6)で表されるセグメント前駆体として用いることもできる。また、nは上記と同義であり、これらの化合物のポリスチレン換算数平均分子量で2000以上、好ましくは3000以上であるものが選択される。
縮合反応による重合は、ゼロ価遷移金属錯体の共存下に実施される。
上記ゼロ価遷移金属錯体は遷移金属にハロゲンや後述の配位子が配位したものであり、後述の配位子を少なくとも一つ有するものが好ましい。ゼロ価遷移金属錯体は市販品でも別途合成したものいずれを用いてもよい。
ゼロ価遷移金属錯体の合成方法は、例えば遷移金属塩や遷移金属酸化物と配位子とを反応させる方法等の公知の方法が挙げられる。合成したゼロ価遷移金属錯体は、取り出して使用してもよいし、取り出すことなく、in situで使用してもよい。
配位子としては、例えばアセテート、アセチルアセトナート、2,2’−ビピリジル、1,10−フェナントロリン、メチレンビスオキサゾリン、N,N,N’N’−テトラメチルエチレンジアミン、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェノキシホスフィン、1,2−ビスジフェニルホスフィノエタン、1,3−ビスジフェニルホスフィノプロパンなどが挙げられる。
ゼロ価遷移金属錯体としては、例えばゼロ価ニッケル錯体、ゼロ価パラジウム錯体、ゼロ価白金錯体、ゼロ価銅錯体などが挙げられる。これら遷移金属錯体の中でもゼロ価ニッケル錯体、ゼロ価パラジウム錯体が好ましく用いられ、ゼロ価ニッケル錯体がより好ましく用いられる。
ゼロ価ニッケル錯体としては、例えばビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)、(エチレン)ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケルなどが挙げられ、中でも、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)が、反応性、ポリマーの収率、ポリマーの高分子量化という観点から好ましく使用される。
ゼロ価パラジウム錯体としては、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)が挙げられる。
これらゼロ価遷移金属錯体は、上記のように合成して用いてもよいし、市販品として入手できるものを用いてもよい。
ゼロ価遷移金属錯体の合成方法は例えば、遷移金属化合物を亜鉛やマグネシウムなどの還元剤でゼロ価とする方法などの公知の方法が挙げられる。合成したゼロ価遷移金属錯体は、取り出して使用してもよいし、取り出すことなくin situで使用してもよい。
還元剤により、遷移金属化合物からゼロ価遷移金属錯体を発生させる場合、使用される遷移金属化合物としては、通常、2価の遷移金属化合物が用いられるが0価のものを用いることもできる。なかでも2価ニッケル化合物、2価パラジウム化合物が好ましい。2価ニッケル化合物としては、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル、ニッケルアセテート、ニッケルアセチルアセトナート、塩化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、臭化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、ヨウ化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)などが挙げられ、2価パラジウム化合物としては塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、パラジウムアセテートなどが挙げられる。
還元剤としては、亜鉛、マグネシウム、水素化ナトリウム、ヒドラジンおよびその誘導体、リチウムアルミニウムヒドリドなどが挙げられる。必要に応じて、ヨウ化アンモニウム、ヨウ化トリメチルアンモニウム、ヨウ化トリエチルアンモニウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムなどを併用することもできる。
上記遷移金属錯体を用いた縮合反応の際、ポリマーの収率向上の観点から、用いたゼロ価遷移金属錯体の配位子となりうる化合物を添加することが好ましい。添加する化合物は使用した遷移金属錯体の配位子と同じであっても異なっていてもよい。
該配位子となりうる化合物の例としては、前述の、配位子として例示した化合物等が挙げられ、汎用性、安価、縮合剤の反応性、ポリマーの収率、ポリマーの高分子量化の点でトリフェニルホスフィン、2,2’−ビピリジルが好ましい。特に、2,2’−ビピリジルは、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)と組合せると重合体の収率向上や、重合体の高分子量化が図れるので、この組合せが好ましく使用される。配位子の添加量は、ゼロ価遷移金属錯体に対して、通常、遷移金属原子基準で、0.2〜10モル倍程度、好ましくは1〜5モル倍程度使用される。
ゼロ価遷移金属錯体の使用量は、上記一般式(5)で示される化合物および/または上記一般式(7)で示される化合物と、必要に応じて共重合される他のモノマーおよび/または上記一般式(6)で示される前駆体の総モル量(以下、「全モノマーの総モル量」と呼ぶ)に対して、0.1モル倍以上である。使用量が過少であると分子量が小さくなる傾向があるので、好ましくは1.5モル倍以上、より好ましくは1.8モル倍以上、より一層好ましくは2.1モル倍以上である。使用量の上限は特に制限はないが、使用量が多すぎると後処理が煩雑になる傾向があるために、5.0モル倍以下であることが好ましい。
なお、還元剤を用いて遷移金属化合物からゼロ価遷移金属錯体を合成する場合、生成するゼロ価遷移金属錯体が上記範囲となるように設定すればよく、例えば、遷移金属化合物の量を、全モノマーの総モル量に対して、0.01モル倍以上、好ましくは0.03モル倍以上とすればよい。使用量の上限は限定的ではないが、使用量が多すぎると後処理が煩雑になる傾向があるために、5.0モル倍以下であることが好ましい。また、還元剤の使用量は、全モノマーの総モル量に対して、例えば、0.5モル倍以上、好ましくは1.0モル倍以上とすればよい。使用量の上限は限定されないが、使用量が多すぎると後処理が煩雑になる傾向があるために、10モル倍以下であることが好ましい。
また反応温度は、通常0〜250℃の範囲であるが、生成する高分子の分子量をより高くするためには、ゼロ価遷移金属錯体と上記一般式(5)で示される化合物および/または上記一般式(7)で示される化合物と必要に応じて共重合される他のモノマーおよび/または上記一般式(6)で示される前駆体とを45℃以上の温度で混合させることが好ましい。好ましい混合温度は通常45℃〜200℃であり、とりわけ好ましくは50℃〜100℃程度である。ゼロ価遷移金属錯体、上記一般式(5)で示される化合物および/または上記一般式(7)で示される化合物と必要に応じてイオン交換基を有さないモノマーおよび/または上記一般式(6)で示される前駆体とを混合させた後、通常45℃〜200℃程度、好ましくは50℃〜100℃程度で反応させる。反応時間は、通常0.5〜24時間程度である。
またゼロ価遷移金属錯体と、上記一般式(5)で示される化合物および/または上記一般式(7)で示される化合物と必要に応じて共重合される他のモノマーおよび/または上記一般式(6)で示される前駆体とを混合する方法は、一方をもう一方に加える方法であっても、両者を反応容器に同時に加える方法であってもよい。加えるに当っては、一挙に加えてもよいが、発熱を考慮して少量ずつ加えることが好ましいし、溶媒の共存下に加えることも好ましい。
これらの縮合反応は、通常、溶媒存在下に実施される。かかる溶媒としては、例えばN、N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどの非プロトン性極性溶媒。トルエン、キシレン、メシチレン、ベンゼン、n−ブチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒。テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジブチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジメルカプトエタン、ジフェニルエーテルなどのエーテル系溶媒。酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチルなどのエステル系溶媒。クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン化アルキル系溶媒などが例示される。なお、括弧内の表記は溶媒の略号を示すものであり、後述する表記において、この略号を用いることもある。
生成する高分子の分子量をより高くするためには、高分子が十分に溶解していることが望ましいので、高分子に対する良溶媒であるテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、DMF、DMAc、NMP、DMSO、トルエンが好ましい。これらは2種以上を混合して用いることもできる。なかでもDMF、DMAc、NMP、DMSO、及びこれら2種以上の混合物が好ましく用いられる。
溶媒量は、特に限定されないが、あまりにも低濃度では、生成した高分子化合物を回収しにくくなることもあり、また、あまりにも高濃度では、攪拌が困難になることがあることから、溶媒、上記一般式(5)で示される化合物および/または上記一般式(7)で示される化合物と、必要に応じて共重合される他のモノマーおよび/または上記一般式(6)で示される前駆体との総量を100重量%としたとき、溶媒量が好ましくは99.95〜50重量%、より好ましくは99.9〜75重量%となるような溶媒量が好ましく使用される。
かくして本発明のポリマー、特に好ましいブロック共重合体が得られるが、生成した共重合体の反応混合物からの取り出しは常法が適用できる。例えば、貧溶媒を加えることでポリマーを析出させ、濾別などにより目的物を取り出すことができる。また必要に応じて、更に水洗や、良溶媒と貧溶媒を用いての再沈殿など、通常の精製方法により精製することもできる。
また、生成したポリマーのスルホン酸基が塩の形である場合、燃料電池に係る部材として使用するために、スルホン酸基を遊離酸の形にすることが好ましく、遊離酸への変換は、通常酸性溶液での洗浄により可能である。使用される酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸などが挙げられ、好ましくは希塩酸、希硫酸である。
上記のとおり、本発明のポリマーにおいて、ブロック共重合体である場合について詳述したが、上記一般式(5a)で表されるモノマーの重合、上記の一般式(5b)で表されるモノマーと一般式(5c)で表されるモノマーの共重合、または一般式(5)で表されるモノマーの重合においても、この製造方法を参考にすれば、容易に実施することができる。
以下、好適なブロック共重合体の代表例を例示する。なお、イオン交換基を有するセグメントは、上述の好適な構造単位からなるセグメントとして例示するものである。
Figure 2008088420
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かかるブロック共重合体の具体例は、上記一般式(2)で表されるイオン交換基を有するブロックと、上記一般式(3)で表されるブロックとが直接結合している形態で例示したが、適切な原子または原子団を介して結合している形態であってもよい。また、かかるブロック共重合体の具体例において、イオン交換基を有するブロックが
Figure 2008088420
で表される構造単位に加え、
Figure 2008088420
とを有するポリアリーレン系ブロックであってもよい。
上記に示す、本発明のポリマーは、いずれも燃料電池用の部材として好適に用いることができる。
本発明のポリマーは、燃料電池等の電気化学デバイスのイオン伝導膜、とりわけ好適なイオン交換基である酸基を有するものではプロトン伝導膜として、好ましく使用される。なお、以下の説明においては、上記プロトン伝導膜の場合を主として説明する。
この場合は、本発明のポリマーは、通常、膜の形態で使用される。膜へ転化する方法(製膜法)には特に制限はないが、溶液状態より製膜する方法(溶液キャスト法)を用いて製膜することが好ましい。
具体的には、本発明のポリマーを適当な溶媒に溶解し、その溶液をガラス板上に流延塗布し、溶媒を除去することにより製膜される。製膜に用いる溶媒は、本発明の共重合体が溶解可能であり、その後に除去し得るものであるならば特に制限はなく、DMF、DMAc、NMP、DMSO等の非プロトン性極性溶媒、あるいはジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好適に用いられる。これらは単独で用いることもできるが、必要に応じて2種以上の溶媒を混合して用いることもできる。中でも、DMSO、DMF、DMAc、NMPがポリマーの溶解性が高く好ましい。
膜の厚みは、特に制限はないが10〜300μmが好ましい。膜厚が10μm以上の膜では実用的な強度がより優れるため好ましく、300μm以下の膜では膜抵抗が小さくなり、電気化学デバイスの特性がより向上する傾向にあるので好ましい。膜厚は、溶液の濃度および基板上への塗布厚により制御できる。
また、膜の各種物性改良を目的として、通常の高分子に使用される可塑剤、安定剤、離型剤等を本発明の共重合体に添加することができる。また、同一溶剤に混合共キャストする等の方法により、他のポリマーを本発明の共重合体と複合アロイ化することも可能である。
さらに燃料電池用途においては水管理を容易にするために、無機あるいは有機の微粒子を保水剤として添加することも知られている。これらの公知の方法はいずれも本発明の目的に反しない限り使用できる。また、膜の機械的強度の向上等を目的として、電子線・放射線等を照射して架橋することもできる。
また、本発明のポリマーを有効成分とする高分子電解質を用いたプロトン伝導膜の強度や柔軟性、耐久性のさらなる向上のために、本発明の共重合体を有効成分とする高分子電解質を多孔質基材に含浸させ複合化することにより、複合膜とすることも可能である。複合化方法は公知の方法を使用し得る。
多孔質基材としては、上述の使用目的を満たすものであれば特に制限は無く、例えば多孔質膜、織布、不織布、フィブリル等が挙げられ、その形状や材質によらず用いることができる。多孔質基材の材質としては、耐熱性の観点や、物理的強度の補強効果を考慮すると、脂肪族系高分子、芳香族系高分子、または含フッ素高分子が好ましい。
本発明のポリマーを用いた高分子電解質複合膜を固体高分子型燃料電池のプロトン伝導膜として使用する場合、多孔質基材の膜厚は、好ましくは1〜100μm、さらに好ましくは3〜30μm、特に好ましくは5〜20μmであり、多孔質基材の孔径は、好ましくは0.01〜100μm、さらに好ましくは0.02〜10μmであり、多孔質基材の空隙率は、好ましくは20〜98%、さらに好ましくは40〜95%である。
多孔質基材の膜厚が1μm以上であると、複合化後の強度補強の効果あるいは、柔軟性や耐久性を付与するといった補強効果がより優れ、ガス漏れ(クロスリーク)が発生しにくくなる。また、該膜厚が100μm以下であると、電気抵抗がより低くなり、得られた複合膜が固体高分子型燃料電池のプロトン伝導膜として、より優れたものとなる。該孔径が0.01μm以上であると、本発明の共重合体の充填がより容易となり、100μm以下であると、共重合体への補強効果がより大きくなる。空隙率が20%以上であると、プロトン伝導膜としての抵抗がより小さくなり、98%以下であると、多孔質基材自体の強度がより大きくなり補強効果がより向上するので好ましい。
また、該高分子電解質複合膜と、上記高分子電解質膜とを積層して燃料電池のプロトン伝導膜として用いることもできる。
次に本発明の燃料電池について説明する。
本発明の燃料電池は、本発明のポリマーを含む高分子電解質膜の両面に、触媒および集電体としての導電性物質を接合することにより製造することができる。
ここで触媒としては、水素または酸素との酸化還元反応を活性化できるものであれば特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、白金または白金系合金の微粒子を触媒成分として用いることが好ましい。白金または白金系合金の微粒子はしばしば活性炭や黒鉛などの粒子状または繊維状のカーボンに担持されて用いられることもある。
また、カーボンに担持された白金または白金系合金を、高分子電解質としてのパーフルオロアルキルスルホン酸樹脂のアルコール溶液と共に混合してペースト化したものを、ガス拡散層および/または高分子電解質膜および/または高分子電解質複合膜に塗布・乾燥することにより触媒層が得られる。具体的な方法としては例えば、J. Electrochem. Soc.: Electrochemical Science and Technology, 1988, 135(9), 2209 に記載されている方法等の公知の方法を用いることができる。
ここで、高分子電解質としてのパーフルオロアルキルスルホン酸樹脂の代わりに、本発明のポリマーを有効成分とする高分子電解質を用い、触媒組成物として用いることもでき、この触媒組成物を用いて得られる触媒層は、本発明の共重合体の優れたプロトン伝導度や、吸水に係る寸法安定性を有するものとなるため、触媒層として好適である。
集電体としての導電性物質に関しても公知の材料を用いることができるが、多孔質性のカーボン織布、カーボン不織布またはカーボンペーパーが、原料ガスを触媒へ効率的に輸送するために好ましい。
このようにして製造された本発明の燃料電池は、燃料として水素ガス、改質水素ガス、メタノールを用いる各種の形式で使用可能である。
かくして得られる本発明のポリマーを、プロトン伝導膜および/または触媒層に備えた固体高分子型燃料電池は、発電性能に優れ、長寿命の燃料電池として提供できる。
上記において、本発明の実施の形態について説明を行なったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むものである。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
分子量の測定:
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、下記条件でポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を測定した。なお、該GPCの分析条件としては、下記の条件を用い、分子量測定値に使用した条件を付記した。
条件
GPC測定装置 島津製作所社製 Prominence GPCシステム
カラム 東ソー社製 TSKgel GMHHR-M
カラム温度 40℃
移動相溶媒 DMF(LiBrを10mmol/dm3になるように添加)
溶媒流量 0.5mL/min
吸水率の測定:
乾燥した膜を秤量し、80℃の脱イオン水に2時間浸漬した後の膜重量増加量から吸水量を算出し、乾燥膜に対する比率を求めた。
イオン交換容量(IEC)の測定:
滴定法により求めた。
プロトン伝導度の測定:
交流法で測定した。
吸水膨潤時の寸法変化率:
23℃相対湿度50%の条件下で乾燥させた膜の面方向の寸法(Ld)と、80℃熱水中に膜を1時間以上浸漬し膨潤させた直後の膜の面方向の寸法(Lw)を測定し、以下のように計算して求めた。
寸法変化率[%]=(Lw−Ld)÷Ld×100[%]
実施例1
アルゴン雰囲気下、共沸蒸留装置を備えたフラスコに、DMSO130mL、トルエン60mL、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン二カリウム塩8.1g(15.5mmol)、末端クロロ型である下記ポリエーテルスルホン
Figure 2008088420
(住友化学製スミカエクセルPES5200P、Mn=3.6×104、Mw=8.1×104)2.3g、2,2’−ビピリジル5.9g(37.8mmol) を入れて攪拌した。その後バス温を150℃まで昇温し、トルエンを加熱留去することで系内の水分を共沸脱水した後、65℃に冷却した。次いで、これにビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)10.3g(37.4mmol)を加え、内温75℃で5時間攪拌した。放冷後、反応液を大量のメタノールに注ぐことによりポリマーを析出させ濾別。その後6mol/L塩酸による洗浄・ろ過操作を数回繰り返した後、濾液のpHが5を越えるまで水洗を行い、得られた粗ポリマーを乾燥した。その後、粗ポリマーをNMPに溶解し、6mol/L塩酸に注ぐことにより、再沈殿精製を行い、濾液のpHが5を越えるまで水洗を行った後、得られたポリマーを減圧乾燥することにより目的とする下記ブロック共重合体3.0gを得た。分子量測定結果を下記に示す。
Figure 2008088420
得られたブロック共重合体を10重量%の濃度でNMPに溶解し、高分子電解質溶液を調整した。その後、得られた高分子電解質溶液をガラス板上に流延塗布し、常圧下、80℃で2時間乾燥させる事により溶媒を除去した後、塩酸処理、イオン交換水での洗浄を経て、膜厚約40μmの高分子電解質膜を作製した。吸水率、IECおよび寸法変化率の結果を下記に示す。
Mn 1.3×105
Mw 2.4×105
吸水率 76%
IEC 1.62 meq/g
寸法変化率 3.5%
使用した末端クロロ型であるポリエーテルスルホンのポリスチレン換算のMnを基準に、得られたブロック共重合体のMn及びIECから見積もると、mは平均40と算出される。
得られた高分子電解質膜のプロトン伝導度を測定した。温度を50℃とし、湿度を90%RH、60%RH、40%RHとしたときのプロトン伝導度を表1に、湿度を90%RHとし、温度を90℃、70℃、50℃としたときのプロトン伝導度を表2に示す。
実施例2
Figure 2008088420
アルゴン雰囲気下、共沸蒸留装置を備えたフラスコに、DMSO100mL、トルエン50mL、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン二ナトリウム塩3.1g(6.4mmol)、2,5−ジクロロベンゾフェノン 3.8g(15.0mmol)、2,2’−ビピリジル8.4g(53.8mmol) を入れて攪拌した。その後バス温を150℃まで昇温し、トルエンを加熱留去することで系内の水分を共沸脱水した後、65℃に冷却した。次いで、これにビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)14.7g(53.4mmol)を加え、内温70℃で3時間攪拌した。放冷後、反応液を大量のメタノールに注ぐことによりポリマーを析出させ濾別。その後6mol/L塩酸による洗浄・ろ過操作を数回繰り返した後、濾液のpHが5を越えるまで水洗を行い、得られた粗ポリマーを乾燥した。その後、粗ポリマーをNMPに溶解し、6mol/L塩酸に注ぐことにより、再沈殿精製を行い、濾液のpHが5を越えるまで水洗を行った後、得られたポリマーを減圧乾燥することにより目的とする下記共重合体3.0gを得た。分子量測定結果を下記に示す。

得られた共重合体を20重量%の濃度でNMPに溶解し、高分子電解質溶液を調整した。その後、得られた高分子電解質溶液をガラス板上に流延塗布し、常圧下、80℃で2時間乾燥させる事により溶媒を除去した後、塩酸処理、イオン交換水での洗浄を経て、膜厚約40μmの高分子電解質膜を作製した。吸水率、IECの結果を下記に示す。
Mn 1.3×105
Mw 2.4×105
吸水率 125%
IEC 2.34 meq/g
得られた高分子電解質膜のプロトン伝導度を測定した。温度を50℃とし、湿度を90%RH、60%RH、40%RHとしたときのプロトン伝導度を表1に、湿度を90%RHとし、温度を90℃、70℃、50℃としたときのプロトン伝導度を表2に示す。
実施例3
アルゴン雰囲気下、共沸蒸留装置を備えたフラスコに、DMSO200mL、トルエン120mL、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン二ナトリウム塩7.7g(15.0mmol)、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩3.7g(15.0mmol)、末端クロロ型である下記ポリエーテルスルホン
Figure 2008088420
Mn 1.3×105
Mw 2.2×105
Figure 2008088420

Figure 2008088420
表1、表2より、本発明のポリマーは、プロトン伝導度の湿度依存性が小さく、良好であり、低湿度下でのプロトン伝導度そのものが高い。また、本発明のポリマーは、吸水に係る寸法安定性にも優れているため、特に燃料電池の用途において、好適に用いることができる。

Claims (18)

  1. 下記一般式(1a)で表される構造単位を有することを特徴とするポリマー。
    Figure 2008088420
    (式中、a1は1以上の整数を表す。Ar1はイオン交換基を有する2価の芳香族基を表し、イオン交換基以外の置換基を有していてもよい。Ar0は置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表し、a1が2以上である場合、複数のAr0は互いに同一でも異なっていてもよい。Xは2価の電子吸引性基を表す。)
  2. 下記一般式(1b)で表される構造単位と、下記一般式(1c)で表される構造単位とを有する、請求項1記載のポリマー。
    Figure 2008088420
    (式中、Ar1およびXは前記と同義であり、2つのAr1は互いに同一でも異なっていてもよい。)
    Figure 2008088420
    (式中、Ar0は前記と同義である。)
  3. 上記一般式(1a)で表される構造単位が、下記一般式(1)で表される構造単位である請求項1記載のポリマー。
    Figure 2008088420
    (式中、aは2以上の整数を表す。Ar1およびXは前記と同義であり、複数あるAr1は互いに同一でも異なっていてもよい。Xは2価の電子吸引性基を表す。)
  4. 下記一般式(2)で表されるセグメントを有する、請求項3に記載のポリマー。
    Figure 2008088420
    (式中、Ar1およびXは前記と同義である。fは1以上の整数を表わし、2つのfは互いに同一でも異なっていてもよい。複数あるAr1は互いに同一でも異なっていてもよい。mは繰り返し単位数を表す。)
  5. mが5以上の整数である、請求項4記載のポリマー。
  6. Xが、カルボニル基、スルホニル基および1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−プロピリデン基からなる群から選ばれる電子吸引性基である、請求項1〜5のいずれかに記載のポリマー。
  7. Ar1にあるイオン交換基が、主鎖を構成する芳香環に直接結合している、請求項1〜6のいずれかに記載のポリマー。
  8. イオン交換基がスルホン酸基、スルホンイミド基、ホスホン酸基およびカルボキシル基から選ばれる酸基である、請求項1〜7のいずれかに記載のポリマー。
  9. Ar1が下記一般式(4)で表される芳香族基である、請求項1〜8のいずれかに記載のポリマー。
    Figure 2008088420
    (式中、R1は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基または置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基であり、pは0または1である。)
  10. イオン交換基を有するセグメントとして上記一般式(2)で表されるセグメントを有し、さらにイオン交換基を実質的に有さないセグメントを有し、共重合様式がブロック共重合である、請求項4〜9のいずれかに記載のポリマー。
  11. イオン交換基を実質的に有さないセグメントが下記一般式(3)で表されるセグメントである、請求項10に記載のポリマー。
    Figure 2008088420
    (式中、b、c、dは互いに独立に0か1を表し、nは5以上の整数を表す。Ar3、Ar4、Ar5、Ar6は互いに独立に2価の芳香族基を表し、ここでこれらの2価の芳香族基は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基または置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基で、置換されていてもよい。Y、Y’は、互いに独立に直接結合または2価の基を表す。Z、Z’は、互いに独立に酸素原子または硫黄原子を表す。)
  12. イオン交換容量が、0.5meq/g〜4.0meq/gである、請求項1〜11のいずれかに記載のポリマー。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載のポリマーを有効成分とする高分子電解質。
  14. 請求項13に記載の高分子電解質からなる高分子電解質膜。
  15. 請求項13記載の高分子電解質と、多孔質基材とからなる高分子電解質複合膜。
  16. 請求項13記載の高分子電解質と触媒成分とからなる触媒組成物。
  17. 請求項14記載の高分子電解質膜または請求項15記載の高分子電解質複合膜を、イオン伝導膜とする高分子電解質型燃料電池。
  18. 請求項16記載の触媒組成物を用いて得られる触媒層を備える高分子電解質型燃料電池。
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