JP2008088193A - 難燃性ポリエステル共重合体および難燃性ポリエステル繊維 - Google Patents

難燃性ポリエステル共重合体および難燃性ポリエステル繊維 Download PDF

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Abstract

【課題】接炎時の耐ドリップ性が改善されると共に自己消火性も兼ね備え、かつ良好な物性や耐熱性を有する難燃性ポリエステル繊維などを与える難燃性ポリエステル共重合体および該共重合体からからなる難燃性繊維を提供する。
【解決手段】特定のホスファフェナンスレン系の有機リン化合物をリン原子含有量として0.3〜1.5重量%および特定の有機スルホン酸塩をポリエステルの全酸成分(ただし前記有機スルホン酸塩を除く)に対し0.05〜0.5モル%共重合したポリエステル共重合体であって、実質的にカチオン染料に非染性であるポリエステル共重合体とすることにより、耐ドリップ性の優れた難燃性ポリエステルが得られ、該共重合ポリエステルはLOIが27以上の難燃性ポリエステル繊維とすることができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、難燃性ポリエステル共重合体および難燃性ポリエステル繊維に関するものである。さらに詳細には、耐溶融滴下性(耐ドリップ性)と自己消火性に優れた難燃性ポリエステル共重合体および該共重合体からなる難燃性ポリエステル繊維に関するものである。
近年、各種有機高分子材料に対して難燃性の付与が要求され、種々の技術が開発されている。ポリエステルは多くの優れた特性を有するがゆえに繊維、フィルム、樹脂として広く用いられているが、燃焼性が「可燃性」に分類されており、空気中で燃焼する。このため従来からポリエステルの難燃性を高める方法が種々開発されている。
例えばポリエチレンテレフタレートを主とするポリエステル繊維について説明すると、その難燃性を高める方法として(1)後加工法、(2)ブレンド法、(3)共重合法の3つの方法が知られている。
(1)の後加工法は、糸や織編物で処理する方法であり、ハロゲン系難燃剤を浴中法またはパディング法により繊維に吸尽もしくは付着させる方法(特許文献1参照)や、地球環境保全に対する意識の高まりから、より環境負荷の少ない難燃加工技術として、リン系難燃剤を浴中法またはパディング法により繊維に吸尽もしくは付着させる方法(特許文献2参照)などが提案されている。(2)のブレンド法は、難燃剤をポリエステルの製造段階もしくは紡糸段階でポリマーに練り込む方法であるが、技術的に種々の困難性があり、実用化された例は少ない。(3)の共重合法としては、リンを含む共重合性のモノマー(難燃剤)をポリエステルの製造段階で反応系に添加してポリエステルにランダムに共重合する方法が実用化されており、このようなモノマーとしてはカルボキシホスフィン酸系化合物(特許文献3参照)やホスファフェナンスレン系化合物(特許文献4参照)が提案されている。
一方、カチオン染料可染性の難燃性ポリエステル繊維として、上記ホスファフェナンスレン系化合物とスルホン酸金属塩基を有するイソフタル酸とを共重合したポリエステル繊維が提案されている(特許文献5〜8参照)。
しかしながら、上記した方法はいずれもリン化合物の特徴である自己消火性とリン化合物による溶融粘度低下に基づく溶融ドリップ促進効果により繊維が溶融滴下して火源から除かれる作用効果によるドリップ促進型の難燃性付与方法であり、溶融を阻害する混紡繊維製品への適用が難しいことや、皮膚に付着すると火傷の危険性があり、しかもドリップによる二次延焼火災の危険性があるという問題があった。
さらに、上記のカチオン染料可染性の難燃性ポリエステル繊維においては、スルホン酸金属塩基を有するイソフタル酸を相当量使用することに起因して、溶融紡糸時の工程通過性が不良化し、また得られる繊維の強度などの繊維物性や耐熱性などが劣ったものになるという問題点があった。
また、難燃性ポリエステル繊維において、耐ドリップ性を改善する目的で、シリコーン系化合物を添加したもの(特許文献9、10参照)も提案されているが、これらは、シリコーン系化合物自体が可燃性であるため自己消火性が不充分なものになるという問題が避けられない。
このような背景から、接炎時の耐ドリップ性が改善されると共に自己消火性も兼ね備え、かつ良好な物性を有する難燃性ポリエステル繊維が望まれていた。
特開昭62−57985号公報 特開2001−11775号公報 特公昭53−13479号公報 特公昭55−41610号公報 特開昭56−106921号公報 特開2004−107516号公報 特開2005−162817号公報 特開2005−320533号公報 特開2006−233186号公報 特開2006−233406号公報
本発明は、上記背景に鑑みなされたもので、その目的は、接炎時の耐ドリップ性が改善されると共に自己消火性も兼ね備え、かつ良好な物性や耐熱性を有する難燃性ポリエステル繊維などを与えることのできる難燃性ポリエステル共重合体および該難燃性ポリエステルからなる繊維を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく、上記したホスファフェナンスレン系化合物を共重合したポリエステルに着目して種々検討した結果、該ホスファフェナンスレン系化合物の特定量を共重合すると共にスルホン酸塩基を有するイソフタル酸の少量を共重合した、実質的にカチオン染料に非染性のポリエステル共重合体は、驚くべきことに、耐ドリップ性が著しく改善されると同時に優れた難燃性を呈し、かつ良好な物性や耐熱性をも有する難燃性ポリエステル共重合体が得られ、本発明の目的が達成できること見出した。本発明はこれらの知見に基づき、さらに研究を重ねた結果、完成したものである。
すなわち、本発明は、以下の難燃性ポリエステル共重合体および該難燃性ポリエステル共重合体からなる繊維に係るものである。
1.下記一般式(1)で表わされる有機リン化合物がポリエステル共重合体中のリン原子の含有量として0.3〜1.5重量%および下記一般式(2)で表わされる有機スルホン酸塩がポリエステル共重合体を構成する全酸成分(ただし前記有機スルホン酸塩を除く)に対して0.05〜0.5モル%となる量でそれぞれ共重合されているポリエステル共重合体であって、実質的にカチオン染料に非染性であることを特徴とする難燃性ポリエステル共重合体。
Figure 2008088193
Figure 2008088193
2.窒素雰囲気下において室温から10℃/分の昇温速度で加熱したときの600℃到達時点における加熱残分量が15重量%以上であり、かつ空気雰囲気下において室温から10℃/分の昇温速度で加熱したときの減量開始温度が405℃以上である、上記1に記載の難燃性ポリエステル共重合体。
3.上記1または2に記載の難燃性ポリエステル共重合体から実質的になる、LOI値(限界酸素指数)が27以上である実質的にカチオン染料に非染性の難燃性ポリエステル繊維。
本発明によれば、燃焼時にドリップを抑制する難燃性の高いポリエステル共重合体を得ることができ、繊維、フィルム、樹脂などの成形体としたときに、耐ドリップ型の優れた難燃性を有し、かつ良好な物性と耐熱性をもつ成形体を得ることができる。特に、本発明の難燃性ポリエステル共重合体を溶融紡糸して製造したポリエステル繊維は、従来のドリップ型難燃性ポリエステル繊維とは異なり耐ドリップ型の難燃性を呈するため、着炎部分のドリップが抑制される。このため、着炎物や溶融物による火傷や延焼の危険性を防ぐことができるので、カーテン、インテリア、椅子張りなどのホーム・リビングテキスタイル用途、衣料用途、産業用途などで好適に用いることができる。
本発明でいうポリエステルとは、テレフタル酸を主たる二官能性カルボン酸成分とし、エチレングリコール、ブチレングリコール、トリメチレングリコールなどを主たるグリコール成分とするポリアルキレンテレフタレート系ポリエステルを主たる対象とする。
かかるポリエステルは任意の方法によって合成される。代表的なポリエステルであるポリエチレンテレフタレート(PET)の場合、通常、テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸ジメチルの如きテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるか又はテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応させるかしてテレフタル酸のグリコールエステルおよび/又はその低重合体を生成させる第一段階の反応と、第一段階の反応生成物を減圧下加熱して所望の重合度になるまで重縮合反応させる第二段階の反応によって製造される。
本発明の難燃性ポリエステル共重合体においては、上記ポリエステルに、第1の必須共重合成分として下記一般式(1)で表わされるホスファフェナンスレン系の有機リン化合物が共重合されていることが必要である。
Figure 2008088193
上記一般式(1)において、Rは1価のエステル形成性官能基であり、R、Rは同一又は異なる基であって、それぞれ1価の炭素原子数1〜10の炭化水素基およびRより選ばれ、Aは2価もしくは3価の有機残基を示す。n1は1または2であり、n2、n3はそれぞれ0〜4の整数を表わす。
かかる有機リン化合物の好ましい具体例としては、下記式(a)〜(c)で表わされる化合物があげられる。
Figure 2008088193
第1必須共重合成分である上記有機リン化合物の共重合量は、ポリエステル共重合体中のリン原子含有量として0.3〜1.5重量%の範囲となる量であることが必要であり、好ましいリン原子の含有量は0.5〜1.0の範囲、より好ましくは0.6〜0.9重量%の範囲である。この有機リン化合物の共重合量があまりに少ないと得られるポリエステル共重合体の自己消火性が不充分なものになる。一方、有機リン化合物の共重合量が多すぎると耐ドリップ性が不足するようになるので、本発明の目的を達成し難い。
本発明の難燃性ポリエステル共重合体には、上記の有機リン化合物の他に、下記一般式(2)で表わされる有機スルホン酸塩が第2の必須共重合成分として共重合されている。
Figure 2008088193
上記一般式(2)において、Zは芳香族炭化水素基または脂肪族炭化水素基、Xはエステル形成性官能基、XはXと同一もしくは異なるエステル形成性官能基あるいは水素原子、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属または第4級ホスホニウム、mは1または2を示す。
すなわち、上記式(2)中のZは、芳香族炭化水素基または脂肪族炭化水素基であり、好ましくは炭素数6〜15の芳香族炭化水素基または炭素数10以下の脂肪族炭化水素基である。特に好ましいZは、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、とりわけベンゼン環である。また、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属または第4級ホスホニウムであり、mは1または2である。なかでもMがアルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウムもしくはカリウム)または第4級ホスホニウムであり、かつmが1であるものが好ましい。
は上述のようにエステル形成性官能基を示し、XはXと同一もしくは異なるエステル形成性官能基を示すかあるいは水素原子を示すが、エステル形成性官能基であるのが好ましい。かかるエステル形成性官能基としてはポリエステル共重合体の主鎖または末端に反応して結合する基であればよく、具体的には下記の基を挙げることができる。
Figure 2008088193
上記一般式(2)で表わされる有機スルホン酸塩の好ましい具体例としては、3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸カリウム、3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸リチウム、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸カリウム、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸リチウム、3,5−ジ(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、3,5−ジ(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸カリウム、3,5−ジ(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸リチウム、2,6−ジカルボメトキシナフタレン−4−スルホン酸ナトウリム、2,6−ジカルボメトキシナフタレン−4−スルホン酸カリウム、2,6−ジカルボメトキシナフタレン−4−スルホン酸リチウム、2,6−ジカルボキシナフタレン−4−スルホン酸ナトリウム、2,6−ジカルボメトキシナフタレン−1−スルホン酸ナトリウム、2,6−ジカルボメトキシナフタレン−3−スルホン酸ナトリウム、2,6−ジカルボメトキシナフタレン−4,8−ジスルホン酸ナトリウム、2,6−ジカルボキシナフタレン−4,8−ジスルホン酸ナトリウム、2,5−ビス(ヒドロエトキシ)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、m−Naスルホ安息香酸メチル、m−Naスルホ安息香酸、α−ナトリウムスルホコハク酸、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸エチルトリブチルホスホニウム、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸ベンジルトリブチルホスホニウム、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸フエニルトリブチルホスホニウム、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラフエニルホスホニウム、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸ブチルトリフエニルホスホニウム、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸ベンジルトリフエニルホスホニウム、3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム、3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸エチルトリブチルホスホニウム、3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸ベンジルトリブチルホスホニウム、3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸フエニルトリブチルホスホニウム、3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸テトラフエニルホスホニウム、3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸エチルトリフエニルホスホニウム、3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸ブチルトリフエニルホスホニウム、3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸ベンジルトリフエニルホスホニウム、3−カルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム、3−カルボキシベンゼンスルホン酸テトラフエニルホスホニウム、3−カルボメトキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム、3−カルボメトキシベンゼンスルホン酸テトラフエニルホスホニウム塩、3,5−ジ(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム、3,5−ジ(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸テトラフエニルホスホニウム、3−(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム、3−(β−ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンゼンスルホン酸テトラフエニルホスホニウム、4−ヒドロキシエトキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム、2,6−ジカルボキシナフタレン−4−スルホン酸テトラブチルホスホニウム、m−テトラブチルホスホニウムスルホ安息香酸メチル、m−テトラブチルホスホニウムスルホ安息香酸、α−テトラブチルホスホニウムスルホコハク酸等をあげることができる。上記有機スルホン酸塩は1種のみを単独で用いても、2種以上併用してもよい。
かかる有機スルホン酸塩をポリエステル共重合体に共重合させる割合は、ポリエステル共重合体を構成する全酸成分(ただし、有機スルホン酸塩を除く)に対して0.05モル%以上0.5モル%未満の範囲であり、0.1〜0.4モル%の範囲が好ましい。共重合割合が0.05モル%より少ないと得られるポリエステル共重合体の耐ドリップ性が不足するようになり、0.5モル%を超えるとポリエステル共重合体の自己消火性が不充分なものになるばかりでなく、最終的に得られる繊維などの成形体の強度などの物性および耐熱性が低下するようになる。
このように上記の有機リン化合物と有機スルホン酸塩とをそれぞれ特定量共重合したときに限り、耐ドリップ性と自己消火性を兼ね備えた共重合体となるという格別の効果が発現するのであり、このことは本発明者らにとっても予想外のことであった。
本発明のポリエステル共重合体は、有機スルホン酸塩の共重合量が少ないために実質的にカチオン染料に非染性である。本発明においてカチオン染料に非染性とは、後述する実施例に記載する染色方法で染色したとき、該染色後の染色評価が評点3以下となるものをいう。
上記の有機リン化合物および有機スルホン酸塩をポリエステル中に共重合するには、前述したポリエステルの合成が完了する以前の任意の段階で、好ましくは第2段階の反応の初期以前の任意の段階で添加すればよい。
本発明の難燃性ポリエステル共重合体には必要に応じて任意の添加剤、たとえば着色防止剤、耐熱剤、艶消剤、着色剤、無機微粒子等が含まれていてもよい。
このようにして製造される難燃性ポリエステル共重合体は、TGA熱重量測定装置を用いた分析において、窒素雰囲気下で室温から10℃/分の昇温速度で加熱したときの600℃到達時点における加熱残分量が15重量%以上、特に20〜25重量%であって、かつ空気雰囲気下で室温から10℃/分の昇温速度で加熱したときの減量開始温度が405℃以上、特に410〜415℃、であることが、耐ドリップ型の難燃性を得る上で好ましい。このような好ましい特性を有する共重合体は、各成分の共重合比を適宜調整することにより得ることが出来る。
本発明の難燃性ポリエステル共重合体を成形するには、格別の方法を採用する必要はなく、通常のポリエステルの溶融成形法が任意に採用される。例えば、繊維になす場合、紡出する繊維は中空部を有しない中実繊維であっても、中空部を有する中空繊維であってもよい。また紡出する繊維の横断面における外形や中空部の形状は、円形であっても異形であってもよい。製糸方法としては、500〜2500m/分の速度で溶融紡糸し、延伸・熱処理する方法、1500〜5000m/分の速度で溶融紡糸し、延伸と仮撚加工を同時に又は引続いて行う方法、5000m/分以上の高速で溶融紡糸し、用途によっては延伸工程を省略する方法等の製糸条件を任意に採用すればよい。
このようにして難燃性ポリエステル共重合体から溶融紡糸法によって製造された難燃性ポリエステル繊維は、LOI値(限界酸素指数)が27以上、特に28〜31の範囲内であることが好ましい。繊維のLOI値(限界酸素指数)が27未満では他繊維と混用する用途分野などにおいて難燃性が不足する場合があるので好ましくない。
本発明の難燃性ポリエステル共重合体は、フィルムやシート等の成形物にすることもでき、その際任意の成形条件を採用することができる。例えば製膜後一方向のみに張力をかけて異方性を持たせる方法、同時に又は任意の順序で二方向に延伸する方法、二段以上の多段延伸する方法等、任意の方法や条件が採用される。
かくして本発明によれば、燃焼時にドリップを抑制する難燃性の高いポリエステル共重合体を得ることができ、繊維、フィルム、シート、樹脂成型品などの成形体になしたときに耐ドリップ型の優れた難燃性の成形体を得ることができる。そして、本発明のポリエステル共重合体を溶融紡糸して製造したポリエステル繊維は、従来のドリップ型難燃性ポリエステル繊維とは異なり、耐ドリップ型の難燃性を呈するため、着炎部分のドリップが抑制される。このため、着炎物や溶融物による火傷や延焼の危険性を防ぐことができるので、カーテン、インテリア、椅子張りなどのホーム・リビングテキスタイル用途、衣料用途、産業用途などで好適に用いることができる。
以下、実施例および比較例をあげて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の部および%は、特に断らない限り、それぞれ重量部および重量%を示す。また、各測定値は以下の方法で測定される値である。
(1)600℃到達時点における加熱残分量:
TGA熱重量測定装置(メトラートレド社製熱重量測定装置TGA851e)を用いた分析において、乾燥ポリマー試料を窒素雰囲気下で室温から10℃/分の昇温速度で加熱したときの600℃到達時点における加熱残分量を室温における測定開始時の試料重量に対する比率(%)で表示した。
(2)減量開始温度:
TGA熱重量測定装置(メトラートレド社製熱重量測定装置TGA851e)を用い、乾燥ポリマー試料を空気雰囲気下で室温から10℃/分の昇温速度で加熱したときの熱重量曲線を測定し、JIS K 7120に従って減量開始温度を求めた。
(3)ポリマー試験小片の燃焼試験:
幅5mm、厚さ2mm、長さ5cmのポリマー試験小片を垂直に把持して、着火器具(岩谷産業製ガスマッチプロII)の炎を長さ30mmに調節し、試験小片の下端の中央部分に10秒間接炎し、試験小片に着火させた。消炎すれば更に10秒間接炎して試験小片の燃焼状況を観察した。燃焼状況は以下の表1に示す耐ドリップ性および難燃性の評価基準に基づいて判定した。耐ドリップ性および難燃性とも評点が高いほど良好である。
Figure 2008088193
(4)糸強度:
オリエンテック社製テンシロンRTC−1210A型を用いた引張試験を行い、その強伸度曲線から求めた(糸長20cm、引張速度20cm/分)。
(5)繊維布帛のLOI値(限界酸素指数):
JIS L 1091 E−3号(ガラス繊維ミシン縫い)に従って測定した。
(6)カチオン染料染色性:
布帛を精錬、プリセット後、カチオン染料のCathilon Black CDFH(登録商標、保土谷化学(株)製)8%owfで芒硝3g/L、酢酸0.3g/Lを含む染浴中にて130℃で45分間染色後、ソーピング、乾燥、ファイナルセットを施した後、布帛の黒色度を以下の表2に示す基準で視感判定した。評点3以下はカチオン染料可染繊維として不合格である。
Figure 2008088193
[実施例1]
テレフタル酸ジメチル100部、3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸ナトリウム0.16部(テレフタル酸ジメチルに対して0.1モル%)、エチレングリコール60部、酢酸マンガン4水塩0.06部(テレフタル酸ジメチルに対して0.03モル%)、整色剤として酢酸コバルト4水塩0.004部(テレフタル酸ジメチルに対して0.003モル%)およびエーテル副生防止剤として酢酸ナトリウム3水塩0.02部(テレフタル酸ジメチルに対して0.03モル%)をエステル交換缶に仕込み、窒素ガス雰囲気下4時間かけて140℃から220℃まで昇温して生成するメタノールを系外に留去しながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応終了後、安定剤としてリン酸トリメチル0.026部(テレフタル酸ジメチルに対して0.036モル%)を加えた。次いで10分後に三酸化アンチモン0.04部(テレフタル酸ジメチルに対して0.027モル%)を添加し、同時に過剰のエチレングリコールを追出しながら240℃まで昇温した後重合缶に移した。
重合缶に上記式(a)で示される有機リン化合物の63%エチレングリコール溶液15.4部(ポリエステル共重合体中のリン原子として0.64%)を添加した後、1時間かけて760Torrから1Torrまで減圧し、同時に1時間30分かけて240℃から280℃まで昇温した。1Torr以下の減圧下、重合温度280℃で更に2時間重合を行った。得られたポリマーを常法に従ってチップ化した。このチップをTGA熱重量測定および燃焼試験に供した。その結果は後掲の表3に示す通りであった。
また、このチップを常法に従って乾燥後、孔径0.3mmの円形紡糸孔を24個穿設した紡糸口金を使用して285℃で溶融紡糸した。次いで得られた未延伸糸を、最終的に得られる延伸糸の伸度が30%になるような延伸倍率にて84℃の加熱ローラーと180℃のプレートヒーターを使って延伸熱処理して84デシテックス/24フィラメントで強度は4.4cN/dtexの延伸糸を得た。得られた延伸糸を用いて常法に従って筒編地を製編し、精練、プリセットを施した後、LOI値を測定すると共にカチオン染料染色性試験を行った。その結果は後掲の表3に示す通りであった。
[実施例2〜5および比較例1〜3]
実施例1において使用した3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸ナトリウムおよび酢酸ナトリウム3水塩の使用量を表1に記載した量とする以外は実施例1と同様に実験を行った。その結果は後掲の表3に示す通りであった。
[実施例6〜7および比較例4〜5]
実施例1において使用した上記式(a)で示される有機リン化合物、3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸ナトリウムおよび酢酸ナトリウム3水塩の使用量をそれぞれ表1に記載した量とする以外は実施例1と同様に実験を行った。その結果は後掲の表3に示す通りであった。
[実施例8]
実施例1において使用した上記式(a)で示される有機リン化合物に代えて上記式(b)で示される有機リン化合物を使用する以外は実施例1と同様に実験を行った。その結果は後掲の表3に示す通りであった。
[実施例9]
実施例1において使用した上記式(a)で示される有機リン化合物に代えて上記式(c)で示される有機リン化合物を使用する以外は実施例1と同様に実験を行った。その結果は後掲の表3に示す通りであった。
[実施例10]
実施例1において使用した3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸ナトリウムに代えてm−Naスルホ安息香酸を使用すると共にその添加時期をエステル交換反応終了後とする以外は実施例1と同様に実験を行った。その結果は後掲の表3に示す通りであった。
[実施例11]
実施例1において使用した3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸ナトリウムに代えて2,6−ジカルボキシナフタレン−4−スルホン酸ナトリウムを使用すると共にその添加時期をエステル交換反応終了後とする以外は実施例1と同様に実験を行った。その結果は後掲の表3に示す通りであった。
[実施例12]
実施例1において使用した3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸ナトリウムに代えて3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウムを使用すると共にその添加時期をエステル交換反応終了後とする以外は実施例1と同様に行った。その結果は以下の表3に示す通りであった。
Figure 2008088193
本発明によれば、燃焼時にドリップを抑制する難燃性の高いポリエステル共重合体を得ることができ、該共重合体は、繊維、フィルム、樹脂などの成形体にしたときに、耐ドリップ性の優れた難燃性の成形体を提供することができるので、これらの分野において有効に利用することができる。例えば、本発明のポリエステル共重合体を溶融紡糸して製造したポリエステル繊維は、従来のドリップ型難燃性ポリエステル繊維とは異なり耐ドリップ型の難燃性を呈するため、着炎部分のドリップが抑制され、着炎物や溶融物による火傷や延焼の危険性を防ぐことができるので、カーテン、インテリア、椅子張りなどのホーム・リビングテキスタイル用途、衣料用途、産業用途など広い分野において有用である。

Claims (3)

  1. 下記一般式(1)で表わされる有機リン化合物がポリエステル共重合体中のリン原子の含有量として0.3〜1.5重量%および下記一般式(2)で表わされる有機スルホン酸塩がポリエステル共重合体を構成する全酸成分(ただし、前記有機スルホン酸塩を除く)に対して0.05〜0.5モル%となる量でそれぞれ共重合されているポリエステル共重合体であって、実質的にカチオン染料に非染性であることを特徴とする難燃性ポリエステル共重合体。
    Figure 2008088193
    Figure 2008088193
  2. 窒素雰囲気下において室温から10℃/分の昇温速度で加熱したときの600℃到達時点における加熱残分量が15重量%以上であり、かつ空気雰囲気下において室温から10℃/分の昇温速度で加熱したときの減量開始温度が405℃以上であることを特徴とする請求項1記載の難燃性ポリエステル共重合体。
  3. 請求項1または請求項2に記載の難燃性ポリエステル共重合体から実質的になり、LOI値(限界酸素指数)が27以上であって、実質的にカチオン染料に非染性であることを特徴とする難燃性ポリエステル繊維。
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