JP2008088050A - フィルム状炭素材料を製造する方法およびフィルム状炭素材料 - Google Patents

フィルム状炭素材料を製造する方法およびフィルム状炭素材料 Download PDF

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Abstract

【課題】平均繊維径がナノメータレベルのフィブリルが凝集して構成されたポリアセチレンフィルムを前駆体として炭素化した場合に、前駆体の形状をそのまま維持したナノメータレベルの平均繊維径のフィブリル構造を維持した炭素フィブリルが凝集して構成されたフィルム状炭素材料を製造する。
【解決手段】ナノメータレベルの平均繊維径を有するフィブリルが凝集して構成されたポリアセチレンフィルムにヨウ素または臭化ヨウ素をドーパントとしてドーピングする。ヨウ素または臭化ヨウ素をドーピングしたポリアセチレンフィルムを前駆体として、不活性ガス雰囲気中で1000℃〜2500℃の熱処理温度で熱処理する。
【選択図】図8

Description

本発明は、ポリアセチレンフィルムを用いてフィルム状炭素材料を製造する方法に関するものである。
炭素材料は、各種電池の電極用素材、薄型テレビ等の画像用素材、導電用素材、複合材料用素材等、幅広い分野での用途がある。中でも、ナノメータレベルの平均繊維径を有する炭素フィブリルが凝集して構成されたフィルム状炭素は、炭素ナノフィブリルが配向する方向に高い導電性を示す構造を有するため、電流方向を特異な方向に制御したり、磁場を発生させたりすることが可能になることから、エネルギー分野、エレクトロニクス分野等において新たな用途が期待されている。このような特異な構造を有するフィルム状炭素を製造することを目的として、発明者は、以下の特許文献に示すように、ナノメータレベルの平均繊維径を有するフィブリルが凝集して構成されたポリアセチレンフィルムを前駆体として、高温で炭素化することにより、前駆体の形状を維持したナノメータレベルの平均繊維径を有するグラファイト化した炭素フィブリルが凝集して構成されたフィルム状炭素の研究を試みてきた。
例えば、特開2004−115354号公報(特許文献1)には、特定の形態(渦巻き状)に固体構造が制御されたポリアセチレン(特許文献1の図1参照)を前駆体物質として、500℃〜1800℃の温度で熱処理(炭素化)を行うことにより、ナノメータサイズのグラファイト状物質(特許文献1の図2参照)を製造する技術が開示されている。
また、特開2004−269337号公報(特許文献2)には、金属触媒の存在下で、ポリアセチレンを、500℃〜1800℃の温度で熱処理することにより、ナノメータサイズのグラファイト状物質を製造する技術が開示されている。
なお、発明者の研究した技術ではないが、特開昭57−153037号公報(特許文献3の表)には、電子受容体をドーピングしたポリアセチレンを、650℃〜760℃の温度で熱処理することにより、導電性ポリアセチレンを製造する技術が開示されている。
特開2004−115354号公報 図1及び図2 特開2004−269337号公報 特開昭57−153037号公報 表
しかしながら、特許文献1に示されているように、ポリアセチレンフィルムを熱処理(炭素化)しただけでは、ナノメータレベルで見た場合にポリアセチレンの前駆体の形状を維持したフィルム状炭素は得られず(特許文献1の図1及び図2参照)、巨視的に見ても得られた炭素はフィルム状になっていない。これは、不活性ガス雰囲気中でポリアセチレンフィルムの炭素化を行っているものの、炭素化のための熱処理過程で、前駆体のポリアセチレンフィルムが、熱分解、低分子量化、ガス化等を起こすためにその重量が減少し、細分化・粒状化するためであると考えられる(本発明の図13参照)。
また、特許文献2の図1に示すように、ポリアセチレンを金属触媒下で熱処理(炭素化)しても、特許文献1の技術と同様に、ナノメータレベルで見た場合に前駆体の形状を維持するフィルム状炭素を得ることはできず(特許文献2の図1参照)、また巨視的に見ても得られた炭素はフィルム形状になっていない。
なお、特許文献3の技術は、導電性ポリアセチレンの製造を目的とするため(炭素化を目的とするものではないため)、実際に行われた熱処理の温度が650〜760℃と低いことから、特許文献3の技術ではポリアセチレンの一部を炭素化することはできてもグラファイト化することはできない。そのため特許文献3の技術を用いても、本発明が目的とするナノメータサイズの平均繊維径を有するグラファイト化したフィブリルからなるフィルム状炭素材料を得ることはできない。ちなみに、特許文献3の表(実施例7)には、820℃の温度で熱処理した場合にポリアセチレンが分解することが記載されており、特許文献3の技術を用いてもグラファイト化したフィルム状炭素が形成されないことが明らかである。
本発明の目的は、平均繊維径がナノメータレベルのフィブリルが凝集して構成されたポリアセチレンフィルムを前駆体として炭素化した場合に、前駆体の形状をそのまま維持したナノメータレベルの平均繊維径を有するフィブリル構造を維持した炭素フィブリルが凝集して構成されたフィルム状炭素材料を得ることにある。
本発明の方法は、ポリアセチレンフィルムにヨウ素をドーピングし、このヨウ素をドーピングしたポリアセチレンフィルムを前駆体として、不活性ガス雰囲気中で炭素化することにより、前駆体の形状を維持したナノメータレベルの平均繊維径を有するグラファイト化した炭素フィブリルが凝集して構成されたフィルム状炭素材料を製造する方法である。
本発明では、ポリアセチレンフィルムとして、ナノメータレベルの平均繊維径を有するフィブリルが凝集して構成されたフィルム形状のポリアセチレンを用いる。ここで、「平均繊維径」とは、走査型電子顕微鏡(SEM)等により、フィブリル構造を構成する繊維状組織のうちの所定の数の繊維の直径を測定して、それらを数平均して得られた値を意味する。ナノメータレベルの平均繊維径を有するフィブリルが凝集した構造には、平均繊維径がナノメータオーダのフィブリルが特定方向に配向して凝集した構造や、フィブリルが同心円的に渦巻き状に巻いて構成されている部分が多数凝集した構造を有するものがある。なお、同心円的に渦巻き状に巻いて構成されている部分は、その渦巻き状の凝集構造の直径がミクロン以下の円形の構造を多数有していても良い。なお本発明では、ナノメータレベルの平均繊維径を有するポリアセチレンフィルムとして、平均繊維径が100〜200ナノメータのポリアセチレンフィルムを用いることができる。
本発明では、ポリアセチレンフィルムにドーピングするドーパントとして、電子受容体であるヨウ素を用いる。ヨウ素(I)は、ハロゲン分子であり、ポリアセチレンフィルムにドーピングされた際に電子を受け取る電子受容体として作用する。また、ポリアセチレンフィルムへのドーパントとして、ヨウ素の代わりに臭化ヨウ素を用いてもよい。臭化ヨウ素(IBr)は、ハロゲン間化合物であり、ヨウ素と同様にポリアセチレンフィルムにドーピングされた際に電子を受け取る電子受容体として作用する。ポリアセチレンへの臭化ヨウ素のドーピング条件は、ヨウ素の場合と同じか或いは同じ温度ではドーピング時間がより短い方が良い。
前駆体を炭素化する際の熱処理温度は、1000℃〜2500℃の範囲の温度で熱処理するのが好ましい。熱処理温度が1000℃より低い場合(例えば熱処理温度が500℃〜1000℃の範囲)では、炭素化し得るが構造的には非晶状態である(グラファイト化されない)。また熱処理温度が2500℃より高い場合では炭素化および結晶化の状態はあまり変化しない。これに対して、本発明のように熱処理温度を1000℃〜2500℃の範囲とすると、熱処理温度の上昇とともに全体としてグラファイト化が進行し、より良好な結晶状態となる。
なお、前駆体を熱処理する工程で用いる不活性ガスとしては、アルゴンガスを用いる。
本発明では、ポリアセチレンフィルムにヨウ素等の電子受容体をドーピングする方法として、ポリアセチレン等の共役系高分子の導電性を向上させるために、一般的な公知の方法(例えば、H.Shirakawa et al., J.Chem.Sci.Chem.Comm.,pp578-580(1977)等に記載されている方法)を用いることができる。ドーパントとしての電子受容体のドーピングは、電子受容体をドーピングする共役系高分子が空気中でも化学的に安定な場合は空気中で行っても良いが、共役系高分子が空気中で化学的に不安定な場合には、不活性ガス雰囲気中で行うのが望ましい。したがって、空気中で化学的に不安定なポリアセチレンフィルムを用いる本発明では、不活性ガス雰囲気中で電子受容体のドーピングを行う。
電子受容体のドーピングは、電子受容体がヨウ素の場合は、常温常圧でポリアセチレンフィルムをヨウ素ガスに触れさせるだけで良い。例えば、室温付近の温度で且つ大気圧下の不活性ガス雰囲気中で、ポリアセチレンフィルムをガス状のヨウ素に0.5時間以上さらす。この場合、ヨウ素のガス圧力は、常圧で室温付近でのヨウ素の蒸気圧で良い。このように、電子受容体としてヨウ素をドーピングしたポリアセチレンフィルムの前駆体は、ナノメータレベルの寸法を有する高分子フィブリルが凝集して構成されたフィルム形状の前駆体となる。またヨウ素の代わりにドーパントとして臭化ヨウ素を用いる場合も、上述のヨウ素を用いる場合と同じように、常温常圧で良いが、ドーピングの時間は、ヨウ素の場合よりも短く、ヨウ素の場合の10%程度の時間で十分効果がある。
ここで、ポリアセチレンフィルムに、電子受容体としてヨウ素をドーピングした場合の炭素化の機構について説明する。まず、ヨウ素のイオン(I 及びI )とポリアセチレン分子との間では、電荷移動錯体が形成されることが知られている(例えば S.Roth et al., Advances in Physics, Vol.36, pp385-462(1987)参照)。すなわち、ポリアセチレンにヨウ素をドーピングすると、ポリアセチレン分子に正孔が生じ、この正孔の発生により、ポリアセチレン分子に高い導電性が生じる。このような条件下で、ヨウ素をドーピングしたポリアセチレン分子を高温で熱処理(炭素化)すると、ヨウ素−ポリアセチレン分子間の電荷移動錯体が高温で化学反応を起こす。具体的には、ポリアセチレン分子から水素を取り去り、ヨウ化水素(HI)を生成することにより、ポリアセチレンから生成した炭素が縮合して、6員環炭素の網目構造を有する炭素物質に変化すると考えられる。この反応は固相反応であるので、前駆体が有する平均繊維径がナノメータサイズのフィブリル形状やこのフィブリルが凝集して形成する組織構造(すなわち前駆体が有している全ての構造)がそのまま炭素化後も維持されている。その結果、巨視的な大きさのフィルム状の前駆体がそのままの形状で巨視的な大きさのフィルム状の炭素物質となる。
本発明のフィルム状炭素材料を製造する方法では、上述の1000℃〜2500℃の熱処理温度で熱処理する工程を行わずに、ポリアセチレンフィルム(フィルム形状のポリアセチレン)に電子受容体としてヨウ素または臭化ヨウ素をドーピングする工程の後に、ヨウ素または臭化ヨウ素をドーピングしたポリアセチレンフィルムの前駆体の形状を維持したナノメータレベルの平均繊維径を有する炭素フィブリルが凝集して構成されたフィルム形状の炭素材料を作り、このフィルム形状の炭素材料を再熱処理することにより、前駆体の形状を維持したナノメータレベルの平均繊維径を有するグラファイト化した炭素フィブリルが凝集して構成されたフィルム状炭素材料を製造しても良い。このような再熱処理を行うことにより確実にグラファイト化することができる。
再熱処理を行う前のフィルム形状の炭素材料を作る工程では、ヨウ素または臭化ヨウ素をドーピングしたポリアセチレンフィルムを前駆体として、不活性ガス雰囲気中で500℃以上の熱処理温度で熱処理することにより前駆体を炭素化する。なおこの時点では完全にグラファイト化はしていない。ここで熱処理温度を500℃以上としたのは、熱処理により炭素化が行われる十分な温度であればよいことを意味する。したがって、実際の熱処理温度は、500℃〜1000℃の範囲とするのが好ましい。さらに好ましくは700℃〜900℃の範囲が良い。なお、熱処理温度が500℃より低い場合は、脱水素が不十分であり、十分な炭素化まで進行しない。
次に、フィルム形状の炭素材料を再熱処理する工程では、フィルム形状の炭素材料を作る工程で熱処理して炭素化したフィルム形状の炭素材料を室温に戻してから再熱処理を行う。再熱処理の温度は、2000℃〜3000℃の温度が好ましい。再熱処理の温度が2000℃より低い場合は、完全にはグラファイト化されず、再熱処理の温度が3000℃より高い場合は熱処理装置上で困難である。
このような再熱処理する方法を用いると、まずフィルム形状の炭素材料を作る工程(熱処理温度が500℃〜1000℃の範囲)では炭素化するのみで、構造的には非晶状態である。そして再熱処理する工程では、再熱処理の温度が2000℃で、グラファイト化した結晶状態となる。再熱処理温度が2500℃〜3000℃付近でナノメータサイズの結晶化の進行がほぼ止まり、全体として最も高い結晶状態となる。
なお、上記各温度での熱処理または再熱処理の時間は、15分〜1時間程度の範囲とするのが好ましい。
このように本発明のフィルム状炭素材料を製造する方法を用いると、平均繊維径がナノメータレベルのフィブリルが凝集して構成されたポリアセチレンフィルムを前駆体として炭素化した場合に、前駆体の形状をそのまま維持したナノメータレベルの平均繊維径のフィブリル構造を維持した炭素フィブリルが凝集して構成されたフィルム状炭素材料を得ることができる。
本発明のフィルム状炭素材料は、上述した本発明のフィルム状炭素材料を製造する方法により製造することができる。本発明のフィルム状炭素材料は、ナノメータレベルの平均繊維径を有するフィブリルが凝集して構成されたポリアセチレンフィルムを原材料として炭素化されて、前記フィブリルの形状を維持した状態でグラファイト化した炭素フィブリルが凝集して構成されたフィルム状炭素材料である。このようなフィルム状炭素材料は、炭素ナノフィブリルが配向する方向に高い導電性を示し、それと直角な方向は低い導電性を示すので、導電性の異方性を有する構造であるため、電流方向を特異な方向に制御すること、または磁場を発生させること等ができる可能性がある。
本発明によれば、ナノメータレベルの平均繊維径を有するフィブリルが凝集して構成された形状を有するポリアセチレンフィルムを炭素化した場合に、ポリアセチレンフィルム内でフィブリルが凝集した形状をほぼ維持したナノメータサイズのグラファイト化された炭素フィブリルが凝集して構成されたフィルム状炭素材料を製造することができる。
以下、本発明のフィルム状炭素材料を製造する方法の実施の形態の一例について、適宜、図を用いて説明する。本発明の実施の形態では、まずフィルム形状のポリアセチレン(ポリアセチレンフィルム)に電子受容体をドーピングする工程を実施する。この例では、ポリアセチレンフィルムとして、ヘリカル型ポリアセチレンフィルムを用いる。図1は、本発明の実施の形態で用いるポリアセチレンフィルムを構成するポリアセチレンの構造式である。このポリアセチレンフィルムは、図2乃至図6に示すように、ナノメータレベルの平均繊維径を有するフィブリルが凝集して構成されている。本実施の形態で用いるポリアセチレンフィルムの平均繊維径は100〜200ナノメータとなっている。なお、この例では、走査型電子顕微鏡(SEM)により、フィブリル構造を構成する繊維状組織のうちの100本以上の数の繊維の直径を測定して、それらを数平均して得た値を平均繊維径としている。図2(A)は、ポリアセチレンのキラルネマチック液晶(N*−LC)の一部を偏光顕微鏡により140倍で撮影した写真であり、図2(B)は図2(A)のキラルネマチック液晶(N*−LC)に基づいて構築したキラルネマチック液晶反応場を走査型電子顕微鏡(SEM)により240倍で撮影した写真である。また図3(A)は図2(B)のキラルネマチック液晶反応場で合成したヘリカル型ポリアセチレンフィルムのドメイン構造をSEMにより250倍で撮影した写真であり、図3(B)は図3(A)のヘリカル型ポリアセチレンフィルムのドメイン構造の一部をSEMにより15000倍で撮影した写真である。さらに図4は、水平配向型ポリアセチレンフィルムのドメイン構造の一部をSEMにより20000倍で撮影した写真である。また図5は、垂直配向型ポリアセチレンフィルムのドメイン構造の一部をSEMにより20000倍で撮影した写真である。図6は、配向ヘリカル型ポリアセチレンフィルムのドメイン構造の一部をSEMにより5000倍で撮影した写真である。
本実施の形態では、まず、この図1に示すポリアセチレンから、ナノメータサイズの平均繊維径を有するフィブリルが多数凝集して形成された組織構造を有するポリアセチレンフィルムを合成した。このようなポリアセチレンフィルムは具体的に以下のような手順で合成した。まず重合触媒であるTi(O-n-Bu)−AlEt(チーグラ・ナッタ触媒)に対して安定なフェニルシクロヘキシル(PCH)系液晶のPCH302とPCH304の等モル混合ネマチック液晶(N−LC)に、液晶基を二置換した軸性キラルビナフチル誘導体である(R)-or(S)-(PCH506)-Binolをキラルドーパントとして添加することにより、図2(A)に示すキラルネマチック液晶(N*−LC)を作った。そして調製した液晶溶媒に重合触媒を加え、図2(B)に示す不斉液晶反応場を構築した。この反応場にアセチレンガス(99.9999%)を、室温以下(10〜15℃)、所定の圧力(10〜100Torr)で導入して、図3(B)に示すヘリカル型ポリアセチレンフィルムを合成した。合成したヘリカル型ポリアセチレンフィルムの膜厚は1〜5μm程度であった。
なお、本実施の形態では、ポリアセチレンフィルムとしてヘリカル型ポリアセチレンフィルムを用いたが、これ以外のポリアセチレンフィルム(図4〜図6に示す水平配向型ポリアセチレンフィルム、垂直配向型ポリアセチレンフィルムおよび配向ヘリカル型ポリアセチレンフィルム等をポリアセチレンフィルムとして用いてもよいのはもちろんである。ヘリカル型ポリアセチレンフィルム以外のポリアセチレンフィルム(図4〜図6に示すポリアセチレンフィルム等)については、特に条件は示さないが、ポリアセチレンのフィブリルが凝集する条件を適宜制御することにより合成することができる。
次にドーパントとして電子受容体をドーピングしたポリアセチレンフィルムを前駆体として、不活性ガス雰囲気中で熱処理する工程を実施する。本実施の形態では、ポリアセチレンフィルムとして上述のように合成したヘリカル型ポリアセチレンフィルムを用い、これにヨウ素をドーピングした。ヨウ素のドーピングは、室温、無酸素状態のアルゴン雰囲気下(ヨウ素の融点、114℃、蒸気圧0.31mmHg)の密閉容器中で10時間行った。無酸素状態のアルゴン雰囲気下の密閉容器中で行うのは、ポリアセチレンフィルムが空気中では不安定なために、酸化しないようにするためである。またヨウ素は、密閉容器中に入れて固体のヨウ素が昇華して気化したガス状のヨウ素としてドーピングした。ガス状のヨウ素は、電子を受け取ってイオンとなり易いため、常温でもドーピングを行うことができる。なお、この例では、ヨウ素のドーピングを室温で行っているが、ドーピングの速度を速くする場合は、常温よりも高い温度でドーピングすれば良い。
本実施の形態では、ヘリカル型ポリアセチレンフィルムにドーピングするヨウ素のドーピング量は、ヘリカル型ポリアセチレンフィルムとヨウ素とのモル比が1:0.25となるように制御した。ヘリカル型ポリアセチレンフィルムとヨウ素とのモル比が1:0.25となるヨウ素のドーピング量は、化学量論的に成立しうる範囲に含まれるものである。このような条件でヨウ素のドーピングを行うと、ヘリカル型ポリアセチレンフィルムに対して炭素収率が高く、しかもフィルムの形状をそのまま維持した上で、ポリアセチレンが有するナノメータサイズのフィブリル構造を残したフィルム状炭素材料を得ることができる。
なお、ドーパントとして、ヨウ素の代わりに臭化ヨウ素を用いる場合も、上述のヨウ素をドーピングする場合と同様に、室温、無酸素状態のアルゴン雰囲気下(臭化ヨウ素は融点が40℃程度なので、室温付近で気化しやすい)の密閉容器中で行った。この場合、ドーピングの時間は10分である。
次にヨウ素をドーピングしたヘリカル型ポリアセチレンフィルムを前駆体としてヘリカル型ポリアセチレンフィルムが炭素化するまで熱処理を次のようにして行った。まず、合成したヘリカル型ポリアセチレンフィルムをニッケル箔(厚さ0.1mm)または炭素板(厚さ2mm)の間に挟み、真空電気炉を用いてアルゴンガス雰囲気下、800℃で1時間(昇温速度10℃/minで)熱処理した。熱処理して得られたフィルム状炭素材料の構造を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。図7(A)は本発明の実施の形態であるヨウ素をドーピングしたポリアセチレンフィルムを800℃で熱処理して得られたフィルム状炭素材料のドメイン構造の一部をSEMにより10000倍で撮影した写真であり、(B)は図7(A)のフィルム状炭素材料のドメイン構造の一部をSEMによりさらに拡大して40000倍で撮影した写真である。これらの写真を用いたSEM観察により、800℃で熱処理して得られたフィルム状炭素材料中の炭素フィブリルの形状は、熱処理前のヘリカル型ポリアセチレンフィルム中のフィブリルの形状をほぼ完全に維持している。すなわち、本実施の形態によれば、ナノメータサイズの組織構造が高度に構造制御されたフィルム状炭素材料を製造することができることが確認された。
この800℃の熱処理で得られたフィルム状炭素材料を、真空電気炉を用いてアルゴンガス雰囲気下、2600℃でさらに1時間(昇温速度20℃/minで)熱処理してグラファイト化した。グラファイト化して得られたフィルム状炭素材料の構造を走査型電子顕微鏡(SEM)及び透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察した。図8(A)は図7(A)のフィルム状炭素材料をさらに2600℃で熱処理して得られたフィルム状炭素材料のドメイン構造をSEMにより1500倍で撮影した写真であり、図8(B)は図8(A)のフィルム状炭素材料のドメイン構造をSEMによりさらに20000倍で撮影した拡大写真である。これらの写真を用いたSEM観察により、2600℃で熱処理してグラファイト化した場合でも、得られたフィルム状炭素材料の形状は、熱処理前のヘリカル型ポリアセチレンフィルムを構成するフィブリルの形状をほぼ完全に維持している。これにより、ナノメータサイズの組織構造が高度に構造制御されたフィルム状炭素材料をグラファイト化できることが確認できた。
なお、この例では、800℃で炭素化して得られたフィルム状炭素材料を、一旦室温で冷却してからこのフィルム状炭素材料をさらに2600℃で熱処理し、グラファイト化してフィルム状炭素材料(グラファイト)を得ているが、800℃で炭素化して得られたフィルム状炭素材料を、そのまま連続して再昇温して、2600℃でグラファイト化してもよい。
図9は、本発明の他の実施の形態である臭化ヨウ素をドーピングしたポリアセチレンフィルムを800℃で熱処理して得られたフィルム状炭素材料のドメイン構造の一部を、SEMにより5000倍で撮影した写真である。図9に示されるように、臭化ヨウ素をドーピングした場合でも、800℃で熱処理して得られたフィルム状炭素材料中の炭素フィブリルの形状は、熱処理前のヘリカル型ポリアセチレンフィルム中のフィブリルの形状をほぼ完全に維持している。このように、ヨウ素の代わりに臭化ヨウ素をドーピングすることによっても、ナノメータサイズの組織構造が高度に構造制御されたフィルム状炭素材料を製造することができることが確認された。なお、本明細書では、臭化ヨウ素をドーピングして800℃で熱処理して得られたフィルム状炭素材料を再熱処理した場合のSEM写真(図8に対応する2600℃で再熱処理した場合の写真)は特に示していないが、2600℃で再熱処理してグラファイト化した場合でも、得られたフィルム状炭素材料の形状は、熱処理前のヘリカル型ポリアセチレンフィルムを構成するフィブリルの形状をほぼ完全に維持することを確認している。したがって、ヨウ素の代わりに臭化ヨウ素をドーピングした場合でも、ナノメータサイズの組織構造が高度に構造制御されたフィルム状炭素材料をグラファイト化することができる。また、ヨウ素の代わりに臭化ヨウ素をドーピングする場合においても、800℃で炭素化して得られたフィルム状炭素材料を一旦室温で冷却してから2600℃で再熱処理してグラファイト化してもよいし、800℃で炭素化して得られたフィルム状炭素材料を、そのまま連続して再昇温して2600℃でグラファイト化してもよい。
ここで、本実施の形態でヨウ素をドーピングしたヘリカル型ポリアセチレンフィルムの熱処理における化学ドーピングの効果を、示差熱分析(DTA/TG)により検討した。図10(A)はヨウ素をドーピングする前のポリアセチレンフィルムを示差熱分析(0℃〜1000℃)により分析した結果を示すグラフであり、図10(B)はヨウ素をドーピングした後のポリアセチレンフィルムを示差熱分析(0℃〜1000℃)により分析した結果を示すグラフである。これらのグラフを検討した結果、ヨウ素をドーピングすることにより分子間架橋及び熱分解に対応するピーク(300℃〜500℃付近のDTAピーク)の消滅がみられた。これは、ヘリカル型ポリアセチレンフィルムの熱分解・ガス化の消滅に起因すると考えられ、本実施の形態の目的であるヘリカル型ポリアセチレンの構造を高度に保持したフィルム状炭素材料(グラファイトを含む)の生成を裏付けるものと考えられる。さらに、この示差熱分析から、ヨウ素をドーピングすることにより熱処理によるヘリカル型ポリアセチレンの重量減少を非常に小さくすることができる。この結果は、炭素収率が高くなっていることを示すものと考えられる。実際にヨウ素ドーピング後のヘリカル型ポリアセチレンフィルムを800℃及び2600℃で処理したフィルム状炭素材料は、炭素収率が高い(70〜80%)フィルム状で得られることが分かった。しかも完全にこれらのフィルム状炭素材料は、ヘリカル型ポリアセチレンのドメイン構造やらせん構造を高度に保持していた。
同様に、本発明の他の実施の形態において臭化ヨウ素をドーピングしたヘリカル型ポリアセチレンフィルムの熱処理における化学ドーピングの効果も、示差熱分析(DTA/TG)により検討した。図11は、臭化ヨウ素をドーピングした後のポリアセチレンフィルムを示差熱分析(0℃〜1000℃)により分析した結果を示すグラフである[なお、臭化ヨウ素をドーピングする前の状態については、図10(A)を参照]。図11に示されるように、臭化ヨウ素をドーピングした場合でも、ヨウ素をドーピングした場合と同様に、分子間架橋及び熱分解に対応するピーク(300℃〜500℃付近のDTAピーク)の消滅がみられた。図11が示す示差熱分析結果は、ヨウ素の代わりに臭化ヨウ素をドーピングした場合でも、ヘリカル型ポリアセチレンの構造を高度に保持したフィルム状炭素材料(グラファイトを含む)が生成されることを裏付けている。また、この図11の示差熱分析結果は、臭化ヨウ素をドーピングすることによっても熱処理によるヘリカル型ポリアセチレンの重量減少を非常に小さくすることができ、炭素収率が高くなっていることを示している。ヨウ素をドーピングした場合と同様に、臭化ヨウ素をドーピングした後のヘリカル型ポリアセチレンフィルムを800℃及び2600℃で処理したフィルム状炭素材料は、炭素収率が高い(70〜80%)フィルム状で得られることも確認した。
また、上記の800℃及び2600℃の熱処理で得られたフィルム状炭素材料(グラファイトを含む)の構造のX線回折(XRD)を測定した。図12(A)はヨウ素をドーピングする前と後のポリアセチレンフィルムをそれぞれ800℃で熱処理して得られた炭素化物をX線回折装置により測定した結果を示すグラフであり、図12(B)は図12(A)の炭素化物をそれぞれさらに2600℃で熱処理して得られた炭素化物をX線回折装置により測定した結果を示すグラフである。これらのXRD測定により、2600℃熱処理試料は結晶性が高いことを確認した。具体的には、XRDの回折像は、ヨウ素ドーピング後に2600℃で熱処理して得られたフィルム状炭素材料のTEM観察で確認したように、ヘリカル型ポリアセチレンのフィブリルの長軸と平行にグラファイト構造が配向していることを裏付けるものと考えられる。また、特に図示しないが、TEMでの高分解能での観察から、グラファイト構造がナノフィブリルに沿って成長している様子を視覚的に確認した。
このように、事前にナノメータサイズでフィブリル構造に制御されたヘリカル型ポリアセチレンフィルムの炭素化では、炭素化前にヨウ素をドーピングすることにより、事前にナノメータサイズで構造制御されたヘリカル型ポリアセチレンフィルムのフィブリル構造を、炭素化後のフィルム状炭素材料(グラファイトフィルムを含む)にほぼ完全に反映することができた。したがって、本実施の形態で得られたフィルム状炭素材料は、高度に構造制御されたフィブリル構造を有することから未知の物理的特性を発揮する新たな炭素材料として期待でき、ナノサイズの炭素フィブリルが凝集して構成された組織構造を有する大型のフィルム状炭素材料の実用的な生産が期待できる。
なお、ポリアセチレンフィルムは空気中で化学的に不安定であるため、ヨウ素のドーピングは不活性ガス雰囲気中で行うのが望ましい。またヨウ素のドーピングは、常圧で且つ室温付近でヨウ素のガスをポリアセチレンフィルムに0.5時間以上触れさせるだけで良い。
また炭素化のための熱処理の熱処理温度は、ポリアセチレンフィルムを炭素化する場合は、一般的には500℃以上であればよい。但しポリアセチレンフィルムの場合には、熱処理温度が500℃〜1000℃の範囲では炭素化するのみで、構造的には非晶状態である。熱処理温度が1000℃〜2500℃の場合では、全体としてグラファイト化が熱処理温度の上昇とともに進行するが、グラファイト結晶部分はナノメータサイズである。2500〜3000℃で結晶化の進行が非常にゆるやかとなり、全体として高い結晶状態となりやすい。グラファイト化のための熱処理の方法としては、500℃〜1000℃の範囲で炭素化を行い、その後、続けて昇温或いは室温に冷却してから再昇温して、2000〜3000℃の温度範囲で熱処理を行っても良い。
次に、本発明における熱処理温度の最適範囲(臨界的意義)を確認した。表1は、本発明の実施の形態(ヨウ素ドーピング)及び他の実施の形態(臭化ヨウ素ドーピング)で得られたフィルム状炭素材料について、各熱処理温度におけるフィブリル構造及び結晶性を示す表である。
表1に示すフィブリル構造及び結晶性は、上述したSEM観察、示差熱分析及びX線回折分析の各条件に準じて確認した。表1では、フィブリル構造を○または×で評価した。このフィブリル構造の評価では、SEM観察及び示差熱分析の結果、熱処理前のヘリカル型ポリアセチレンフィルムを構成するフィブリル構造を維持しているものは「○」とし、維持していないものは「×」とした。また表1では、結晶性を◎、○、△、×で評価した。この結晶性の評価では、X線回折分析の結果、結晶性が非常に高いものはほぼ完全にグラファイト化されているものと判断して「◎」とし、結晶性が高いものはグラファイト化されているものと判断して「○」とし、結晶性がやや低いものについてはグラファイト化が不十分であるが一部はグラファイト化されているものと判断して「△」とし、結晶性が低いものについてはグラファイト化されていないものと判断して「×」とした。なお、表1では、「◎」及び「○」の評価だけでなく「△」の評価(一部でもグラファイト化が確認できたもの)についても、本発明の効果(グラファイト化)が得られたものと判断している。
表1において、まずドーパントを用いない比較例1〜3では、フィブリル構造の評価が「×」となり、熱処理前のヘリカル型ポリアセチレンフィルムを構成するフィブリル構造は完全に崩れたものとなった(図13参照)。なお、比較例1〜3では、フィブリル構造の評価が「×」であるため、結晶性の確認は行っていない。また、ドーパントとしてヨウ素(I)および臭化ヨウ素(IBr)を用いてそれぞれ1000℃より低い熱処理温度(500℃,800℃)で熱処理した比較例4,5および比較例6,7では、フィブリル構造の評価は「○」であるものの、結晶性の評価は「×」となった(図7等参照)。これらの比較例1〜7に対して、ドーパントとしてヨウ素(I)および臭化ヨウ素(IBr)を用いてそれぞれ1000℃〜2500℃(1000℃,1500℃,2000℃及び2500℃)で熱処理した実施例1〜4および実施例5〜8では、フィブリル構造の評価は「○」となり、結晶性の評価も「△」または「○」となった(図8等参照)。これらの結果は、ドーパントとしてヨウ素(I)および臭化ヨウ素(IBr)を用いた場合は、いずれも熱処理温度が1000℃〜2500℃の範囲でグラファイト化されること示している。表1が示すように、本発明では、1000℃〜2500℃の範囲の熱処理温度に臨界的意義が認められる。なお、2500℃よりも高い場合では、結晶化(グラファイト化)は殆ど進行しないことを確認したため、本発明では、熱処理温度の最適範囲を1000℃〜2500℃としている。
次に、本発明における再熱処理温度の最適範囲(臨界的意義)を確認した。表2は、本発明の実施の形態(ヨウ素ドーピング)及び他の実施の形態(臭化ヨウ素ドーピング)で得られたフィルム状炭素材料について、再熱処理温度におけるフィブリル構造及び結晶性を示す表である。
表2に示すフィブリル構造及び結晶性についても、上述したSEM観察、示差熱分析及びX線回折分析の各条件に準じて確認した。また、表2において、フィブリル構造及び結晶性の評価は、上述の表1の場合とほぼ同様の方法で評価した。なお表2では、表1の場合と異なり、「△」の評価(一部しかグラファイト化が確認できなかったもの)については、本発明の効果(高度なグラファイト化)が得られなかったものと判断している。
表2において、ドーパントとしてヨウ素(I)および臭化ヨウ素(IBr)を用いてそれぞれ1500℃の熱処理温度で熱処理した比較例8,9では、フィブリル構造の評価は「○」であるものの、結晶性の評価は「△」となった。これに対して、ドーパントとしてヨウ素(I)および臭化ヨウ素(IBr)を用いてそれぞれ2000℃〜3000℃(2000℃,2600℃及び3000℃)で熱処理した実施例9〜11および実施例12〜14では、フィブリル構造の評価は「○」となり、結晶性の評価は「○」または「◎」となった。これらの結果は、ドーパントとしてヨウ素(I)および臭化ヨウ素(IBr)を用いた場合は、いずれも再熱処理温度が2000℃〜3000℃の範囲でグラファイト化されること示している。また、表2は、2000℃〜3000℃で再熱処を行うと、表1に示す1000℃〜2500℃の熱処理温度で熱処理した場合よりも、熱処理時間の短縮等の点で、高度にグラファイト化しやすい傾向が見られた。表2で示されるように、本発明では、2000℃〜3000℃の範囲で再熱処理することに臨界的意義が認められる。なお、3000℃よりも高い場合では、結晶化(グラファイト化)は殆ど進行しないことを確認したため、本発明では、熱処理温度の最適範囲を2000℃〜3000℃としている。
本発明の実施の形態で用いるポリアセチレンフィルムを構成するポリアセチレン分子の構造式である。 (A)はキラルネマチック液晶(N*−LC)の一部を偏光顕微鏡で撮影した写真であり、(B)は(A)のキラルネマチック液晶(N*−LC)に基づいて構築したキラルネマチック液晶反応場を走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影した写真である。 (A)は図2(B)のキラルネマチック液晶反応場で合成したヘリカル型ポリアセチレンフィルムのドメイン構造をSEMにより撮影した写真であり、(B)は(A)のヘリカル型ポリアエチレンのドメイン構造の一部をSEMにより撮影した写真である。 水平配向型ポリアセチレンフィルムのドメイン構造の一部をSEMにより撮影した写真である。 垂直配向型ポリアセチレンフィルムのドメイン構造の一部をSEMにより撮影した写真である。 配向ヘリカル型ポリアセチレンフィルムのドメイン構造の一部をSEMにより撮影した写真である。 (A)は本発明の実施の形態であるヨウ素をドーピングしたポリアセチレンフィルムを800℃で熱処理して得られたフィルム状炭素材料のドメイン構造の一部をSEMにより撮影した写真であり、(B)は(A)のフィルム状炭素材料のドメイン構造の一部をSEMにより拡大して撮影した拡大写真である。 (A)は図7(A)のフィルム状炭素材料をさらに2600℃で熱処理して得られたフィルム状炭素材料のドメイン構造をSEMにより撮影した写真であり、(B)は(A)のフィルム状炭素材料のドメイン構造をSEMにより拡大して撮影した拡大写真である。 本発明の他の実施の形態である臭化ヨウ素をドーピングしたポリアセチレンフィルムを800℃で熱処理して得られたフィルム状炭素材料のドメイン構造の一部をSEMにより撮影した写真である。 (A)はヨウ素をドーピングする前のポリアセチレンフィルムを示差熱分析により分析した結果を示すグラフであり、(B)はヨウ素をドーピングした後のポリアセチレンフィルムを示差熱分析により分析した結果を示すグラフである。 臭化ヨウ素をドーピングした後のポリアセチレンフィルムを示差熱分析により分析した結果を示すグラフである。 (A)はヨウ素をドーピングする前と後のポリアセチレンフィルムをそれぞれ800℃で熱処理して得られた炭素化物をX線回折装置(XRD)により測定した結果を示すグラフであり、(B)は(A)の炭素化物をそれぞれさらに2600℃で熱処理して得られた炭素化物をX線回折装置(XRD)により測定した結果を示すグラフである。 (A)はヨウ素未ドーピングの配向ヘリカル型ポリアセチレンフィルムのドメイン構造の一部をSEMで撮影した写真であり、(B)は(A)のヨウ素未ドーピングのヘリカル型ポリアセチレンフィルムを400℃で熱処理した状態をSEMで撮影した写真であり、(C)は(A)のヨウ素未ドーピングのポリアセチレンフィルムを450℃で熱処理した状態をSEMで撮影した写真である。

Claims (8)

  1. ナノメータレベルの平均繊維径を有するフィブリルが凝集して構成されたポリアセチレンフィルムにヨウ素を電子受容体としてドーピングし、
    前記ヨウ素をドーピングした前記ポリアセチレンフィルムを前駆体として、不活性ガス雰囲気中で1000℃〜2500℃の熱処理温度で炭素化することにより、前記前駆体の形状を維持したナノメータレベルの平均繊維径を有するグラファイト化した炭素フィブリルが凝集して構成されたフィルム状炭素材料を製造する方法。
  2. ナノメータレベルの平均繊維径を有するフィブリルが凝集して構成されたポリアセチレンフィルムにヨウ素を電子受容体としてドーピングし、
    前記ヨウ素をドーピングした前記ポリアセチレンフィルムを前駆体として、不活性ガス雰囲気中で500℃以上の熱処理温度で炭素化して、前記前駆体の形状を維持したナノメータレベルの平均繊維径を有する炭素フィブリルが凝集して構成されたフィルム形状の炭素材料を作り、
    前記フィルム形状の炭素材料を室温に戻した後、2000℃〜3000℃の温度で再熱処理することにより、前記ナノメータレベルの平均繊維径を有するグラファイト化した炭素フィブリルが凝集して構成されたフィルム状炭素材料を製造する方法。
  3. ナノメータレベルの平均繊維径を有するフィブリルが凝集して構成されたポリアセチレンフィルムに臭化ヨウ素を電子受容体としてドーピングし、
    前記臭化ヨウ素をドーピングした前記ポリアセチレンフィルムを前駆体として、不活性ガス雰囲気中で1000℃〜2500℃の熱処理温度で炭素化することにより、前記前駆体の形状を維持したナノメータレベルの平均繊維径を有するグラファイト化した炭素フィブリルが凝集して構成されたフィルム状炭素材料を製造する方法。
  4. ナノメータレベルの平均繊維径を有するフィブリルが凝集して構成されたポリアセチレンフィルムに臭化ヨウ素を電子受容体としてドーピングし、
    前記臭化ヨウ素をドーピングした前記ポリアセチレンフィルムを前駆体として、不活性ガス雰囲気中で500℃以上の熱処理温度で炭素化して、前記前駆体の形状を維持したナノメータレベルの平均繊維径を有する炭素フィブリルが凝集して構成されたフィルム形状の炭素材料を作り、
    前記フィルム形状の炭素材料を室温に戻した後、2000℃〜3000℃の温度で再熱処理することにより、前記ナノメータレベルの平均繊維径を有するグラファイト化した炭素フィブリルが凝集して構成されたフィルム状炭素材料を製造する方法。
  5. 前記前駆体の形状は、前記ナノメータレベルの平均繊維径を有するフィブリルが凝集して構成された形状である請求項1,2,3または4に記載のフィルム状炭素材料を製造する方法。
  6. ナノメータレベルの平均繊維径を有するフィブリルが凝集して構成されたポリアセチレンフィルムを原材料として炭素化されて、前記フィブリルの形状を維持した状態でグラファイト化した炭素フィブリルが凝集して構成されたフィルム状炭素材料。
  7. 前記ポリアセチレンフィルムが、前記ナノメータレベルの平均繊維径を有するフィブリルが特定方向に配向して凝集した構造である請求項6に記載のフィルム状炭素材料。
  8. 前記ポリアセチレンフィルムが、前記ナノメータレベルの平均繊維径を有するフィブリルが渦巻き状に旋回して構成されている部分が多数凝集した構造を有することを特徴とする請求項6に記載のフィルム状炭素材料。
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