JP2008087365A - 液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】静電吸引方式の液体吐出技術を用い、吐出面がフラットであって、良好に電界集中し、安定で耐薬品性に優れ、微細形状の加工適性に優れ、基材上に微細パターン形成が可能な液体吐出ヘッドおよびそれを用いた液体吐出装置を低コストで提供する。
【解決手段】液体吐出装置1、30の液体吐出ヘッド2、31は、液体Lを吐出するノズル10と、ノズル10が形成され形状がフラットなノズルプレート11と、ノズル10の吐出孔13から吐出される液体Lを貯蔵するキャビティ20と、ノズル10内の液体Lと基材K間に静電電圧を印加して静電吸引力を発生させる静電電圧印加手段18と、静電電圧印加手段18による静電電圧の印加を制御する動作制御手段24とを備え、ノズル10の吐出孔13の内部直径が15μm以下であり、少なくともノズルプレート11が1015Ωm以上の体積抵抗を有するフッ素樹脂で構成されている。
【選択図】図1
【解決手段】液体吐出装置1、30の液体吐出ヘッド2、31は、液体Lを吐出するノズル10と、ノズル10が形成され形状がフラットなノズルプレート11と、ノズル10の吐出孔13から吐出される液体Lを貯蔵するキャビティ20と、ノズル10内の液体Lと基材K間に静電電圧を印加して静電吸引力を発生させる静電電圧印加手段18と、静電電圧印加手段18による静電電圧の印加を制御する動作制御手段24とを備え、ノズル10の吐出孔13の内部直径が15μm以下であり、少なくともノズルプレート11が1015Ωm以上の体積抵抗を有するフッ素樹脂で構成されている。
【選択図】図1
Description
本発明は、液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置に係り、フラットノズルを有する電界集中型の液体吐出ヘッドおよびそれを用いた液体吐出装置に関する。
近年、インクジェットでの画質の高精細化の進展および工業用途における適用範囲の拡大に伴い、微細パターン形成および高粘度のインク等の液体吐出の要請がますます強まっている。これらの課題を従来のインクジェット記録法で解決しようとすると、ノズルの微小化や液体の高粘度化により吐出のための駆動電圧が高くなり、ヘッドや装置のコストが非常に高価になってしまう。そのため、現状では実用に適う装置は実現されていない。
このような要請に応え、微小化されたノズルから低粘度のみならず高粘度の液体を吐出させる技術として、液体吐出ヘッドに形成されたノズル内の液体を帯電させ、ノズルと液滴の着弾を受ける対象物となる各種の基材との間に電界を形成し、形成された電界から受ける静電吸引力によって液体を液滴状に吐出させるいわゆる静電吸引方式の液体吐出装置が知られている(例えば、特許文献1〜4等参照)。
特開2004−136656号公報
特開2004−114374号公報
特開2001−38911号公報
国際公開第03/070381号パンフレット
このような静電吸引方式の液滴吐出技術においては、ノズル内の液体やノズルの吐出孔部分に形成されるメニスカスへの電界集中を生じさせることで効率良くより低い印加電圧で液体を吐出させることができる。そのため、ノズルの先端部分をノズルが形成されているノズルプレートから突出させて電界集中を高めるように構成されることも多い。
しかし、ノズルの先端部分をノズルプレートから突出させた構造では、構造が複雑になるため生産性の低下を招いたり、液体吐出ヘッドのクリーニング時にノズルの先端部分が折れるなど操作性に劣るという問題がある。そのため、ノズルやノズルプレートの形状はフラットであることが好ましい。なお、本発明において、フラットとは、ノズルプレートの吐出面からノズルが突出しない、或いは吐出面からのノズルの突出が30μm以下のものを意味し、ワイピングの際に破損等の支障を生じることがないものをいう。
液体吐出ヘッドがフラットであれば、構造が単純であるために生産性に優れ、また、液体吐出ヘッドのクリーニング時における吐出面のワイピングの際にワイパにノズルが引っ掛かって破損することがなく、ヘッドの寿命がその分長くなるという大きな利点がある。
しかし、一方で、フラットな液体吐出ヘッドを用いる場合、ノズル内の液体や吐出孔部分のメニスカスへの電界集中の程度が小さくなるため、印加電圧が低電圧では液体が吐出し難くなるという問題がある。静電吸引力を高めるために印加電圧を上げると、ヘッドと基材間で絶縁破壊が発生してしまい装置を駆動できない場合が生じるという問題もある。
また、このようなフラットなノズルを有する液体吐出ヘッドのノズルを種々の材料を用いて構成することが考えられるが、本発明者の研究により以下のような問題があることが新たに判明した。
ノズルを構成する部材の絶縁性が不足するとノズル先端に形成される液体のメニスカスに十分な電界集中が生じないため液体が吐出されないという問題があるが、一方で、部材の絶縁性が十分であっても、強い電界が長時間加わるため部材の材質の物性が劣化したり変化したりして液体の吐出状態が変わったり吐出が生じなくなるという問題がある。これはノズルを構成する部材の体積抵抗や誘電率などの電気的物性の変化の問題であると考えられる。
また、ノズルを構成する部材の材質と吐出する液体の種類の関係で、液体によってノズルが腐食される場合があるという問題もある。さらに、微細ノズルを有する液体吐出ヘッドおよびそれを用いた液体吐出装置を低コストで製造することも要望されている。
そこで、本発明は、静電吸引方式の液体吐出技術を用い、吐出面がフラットであって、良好に電界集中し、安定で耐薬品性に優れ、微細形状の加工適性に優れ、基材上に微細パターン形成が可能な液体吐出ヘッドおよびそれを用いた液体吐出装置を低コストで提供することを目的とする。
前記の問題を解決するために、請求項1の液体吐出ヘッドは、
液体を吐出するノズルと、
前記ノズルが形成され形状がフラットなノズルプレートと、
前記ノズルの吐出孔から吐出される液体を貯蔵するキャビティと、
前記ノズル内の液体と基材間に静電電圧を印加して静電吸引力を発生させる静電電圧印加手段と、
前記静電電圧印加手段による前記静電電圧の印加を制御する動作制御手段と
を備え、
前記ノズルの吐出孔の内部直径が15μm以下であり、
少なくとも前記ノズルプレートが1015Ωm以上の体積抵抗を有するフッ素樹脂で構成されていることを特徴とする。
液体を吐出するノズルと、
前記ノズルが形成され形状がフラットなノズルプレートと、
前記ノズルの吐出孔から吐出される液体を貯蔵するキャビティと、
前記ノズル内の液体と基材間に静電電圧を印加して静電吸引力を発生させる静電電圧印加手段と、
前記静電電圧印加手段による前記静電電圧の印加を制御する動作制御手段と
を備え、
前記ノズルの吐出孔の内部直径が15μm以下であり、
少なくとも前記ノズルプレートが1015Ωm以上の体積抵抗を有するフッ素樹脂で構成されていることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、静電電圧印加手段からノズルに静電電圧を印加して、ノズル内の液体と対向電極に支持された基材との間に電界を生じさせ、静電力によりノズルの吐出孔に液体のメニスカスを形成させる。その際、ノズルプレートがフッ素樹脂で構成されているためノズルプレートの吐出面での液体の広がりが防止され、メニスカスが隆起する。メニスカス先端部に非常に強い電界集中が生じ、電界の強い静電力によりメニスカスが引きちぎられて1〜10μm程度の径の液滴となる。液滴は静電力により加速され、基材に引き寄せられて着弾する。その際、液滴は、静電力の作用でより近い所に着弾しようとするため、基材に対する着弾の際の角度等が安定し、着弾が正確に行われる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記フッ素樹脂は、PTFE、PFAまたはFEPで構成されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明によれば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)製或いはFEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)製のノズルプレートを有する液体吐出ヘッドにより、前記請求項1に記載の発明の作用が実現される。
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記ノズルプレートは、少なくとも前記ノズルの内壁が親液化されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明によれば、例えば白金スパッタリング等の手法により内壁が親液化されたノズルに液体が充填され、帯電されてその吐出孔から吐出される。
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記ノズルの吐出孔に液体のメニスカスを形成するための圧力発生手段を備えることを特徴とする。
請求項4に記載の発明によれば、静電電圧印加手段からノズルに静電電圧を印加して、ノズル内の液体と対向電極に支持された基材との間に電界を生じさせ、液体を吐出すべきノズルに対応する圧力発生手段に駆動電圧を印加して圧力を生じさせてノズルの吐出孔に液体のメニスカスを形成させる。その際、ノズルプレートがフッ素樹脂で構成されているためノズルプレートの吐出面での液体の広がりが防止され、メニスカスが隆起する。メニスカス先端部に非常に強い電界集中が生じ、電界の強い静電力によりメニスカスが引きちぎられて1〜10μm程度の径の液滴となる。液滴は静電力により加速され、基材に引き寄せられて着弾する。その際、液滴は、静電力の作用でより近い所に着弾しようとするため、基材に対する着弾の際の角度等が安定し、着弾が正確に行われる。
請求項5に記載の液体吐出装置は、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドと、
前記基材を裏面から支持する対向電極と
を備えることを特徴とする。
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドと、
前記基材を裏面から支持する対向電極と
を備えることを特徴とする。
請求項5に記載の発明によれば、前記各請求項に記載の液体吐出ヘッドから吐出された液体が、対向電極に裏面から支持された基材に着弾する。
請求項1に記載の発明によれば、液体吐出ヘッドは、ノズルプレートが1015Ωm以上の非常に高い体積抵抗を有するフッ素樹脂で構成され、しかも、ノズル径が15μm以下に形成されるため、ノズル内の液体やメニスカスで高度な電界集中が生じる。また、ノズルプレートがフッ素樹脂で構成されているためノズルの吐出孔に形成されたメニスカスが吐出面に広がらずにメニスカスの隆起が保持される。そのため、フラットな吐出面を有する液体吐出ヘッドであっても静電吸引方式により低い電圧の印加で微細な液体を効果的に吐出することが可能となり、効果的に微細パターン形成を行うことが可能となる。
また、フッ素樹脂は、長時間高い電界が加わっても体積抵抗や誘電率等の材質の電気的物性が経時的にほとんど変化しないため、ノズルプレートをフッ素樹脂で構成することで、ノズルプレートに長時間高電界が加わってもその電気的物性が変化せず、安定した液体の射出性能を維持することが可能となる。
さらに、ノズルプレートの吐出面がフラットに形成されているため、生産性に優れ、クリーニング時にノズルの破損等を生じることを防止可能であるほか、ノズルプレートの吐出面に撥液層等を形成する必要がないため、撥液層のノズル内部への入り込み等による液体の吐出精度が損なわれることはなく、液体の吐出を良好に行うことが可能となる。また、液体吐出ヘッドの製造工程が簡略化され、液体吐出ヘッドや液体吐出装置のコストダウンを図ることが可能となる。
また、フッ素樹脂は、耐薬品性に優れるとともに、射出成型やインプリント、ホットエンボス、プレス等による成型に適用できるので、ノズルプレートを低コストで製造することが可能となり、液体吐出ヘッドや液体吐出装置の製造コストをより低減することが可能となる。
請求項2に記載の発明によれば、PTFEやPFA、FEPは体積抵抗が1016Ωmと非常に高く、長時間高電界が加わってもその電気的物性がほとんど変化しない。そのため、ノズルプレートに用いるフッ素樹脂として特に優れており、前記請求項に記載の発明の効果をより有効に発揮させることが可能となる。
請求項3に記載の発明によれば、例えば白金スパッタリング等の手法によりノズルの内壁が親液化されることで、ノズルへの液体の充填性が向上するため、液体の帯電や吐出をスムーズに行うことが可能となり、前記各請求項に記載の発明の効果をより効果的に発揮させることが可能となる。
請求項4に記載の発明によれば、液体を吐出すべきノズルに対応する圧力発生手段に駆動電圧を印加して圧力を生じさせてノズルの吐出孔に液体のメニスカスを形成させるため、前記各発明の効果に加え、個別のノズルを電気的に絶縁し個別に吐出したノズルのみに静電気力を発生させるための電圧を印加させる必要がなく、電導性の液体を各ノズルに分岐して導入でき、液体の種類の制約が小さいため、ヘッド製造のコストを抑制することができる。
請求項5に記載の発明によれば、前記各請求項に記載の液体吐出ヘッドを用いた液体吐出装置において、前記ノズル内の液体と基材間に静電電圧を印加して静電吸引力を発生させるための正殿電圧印加手段として、前記基材を裏面から支持する対向電極を備えることにより、前記ノズル内の液体と基材間に静電電圧を確実かつ効果的に印加することができる。
以下、本発明に係る液体吐出ヘッドおよびそれを用いた液体吐出装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施形態に係る液体吐出装置の全体構成を示す断面図である。なお、本実施形態に係る液体吐出ヘッド2および液体吐出装置1は、いわゆるシリアル方式或いはライン方式等の各種の液体吐出装置に適用可能である。
図1は、第1の実施形態に係る液体吐出装置の全体構成を示す断面図である。なお、本実施形態に係る液体吐出ヘッド2および液体吐出装置1は、いわゆるシリアル方式或いはライン方式等の各種の液体吐出装置に適用可能である。
本実施形態に係る液体吐出装置1は、インク等の帯電可能な液体Lの液滴Dを吐出する複数のノズル10を有する液体吐出ヘッド2と、液体吐出ヘッド2のノズル10に対向する対向面を有するとともにその対向面で液滴Dの着弾を受ける基材Kを支持する対向電極3とを備えている。
液体吐出ヘッド2のうち対向電極3に対向する側には、複数のノズル10が形成されたノズルプレート11が設けられている。ノズルプレート11は、1015Ωm以上の体積抵抗を有するフッ素樹脂で構成されている。本実施形態では、ノズルプレート11を構成するフッ素樹脂として、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)やFEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)のテフロン(登録商標)樹脂が用いられている。
液体吐出ヘッド2は、ノズルプレート11の対向電極3や基材Kに対向する吐出面12からノズル10が突出されない、或いは例えば後述する図2(D)に示すように突出したとしてもノズル10が30μm程度しか突出しないフラットな吐出面を有するヘッドとして構成されている。
本実施形態では、各ノズル10は、ノズルプレート11に穿孔されて形成されており、各ノズル10には、それぞれノズルプレート11の吐出面12に吐出孔13を有する小径部14とその背後に形成されたより大径の大径部15との2段構造とされている。ノズル10の小径部14および大径部15は、それぞれ断面円形で対向電極側がより小径とされたテーパ状に形成されており、小径部14の吐出孔13の内部直径すなわちノズル径が10μm、大径部15の小径部14から最も離れた側の開口端の内部直径が75μmとなるように構成されている。
なお、ノズル径は15μm以下になるように構成される。また、ノズル10の形状は前記の形状に限定されず、例えば、図2(A)〜(E)に示すように、形状が異なる種々のノズル10を用いることが可能である。また、ノズル10は、断面円形状に形成する代わりに、断面多角形状や断面星形状等であってもよい。
ノズル10の内壁17は親液化されていることが好ましい。本実施形態では、液体Lとして水を溶媒とするインクを用いる場合を想定して、ノズル10内への液体Lの充填性を向上させるためにノズル10の内壁17が例えば白金スパッタリング等の手法を用いて親水化されている。
また、後述する帯電用電極16やボディプレート19との接着性を高めるためにノズルプレート11の帯電用電極16等との接着面も親水化されている。なお、例えば液体Lとして油性のインクを用いる液体吐出ヘッド2の場合には、ノズル10の内壁17が親油化される。
具体的には、本実施形態では、プレス等の方法で例えば厚さ100μmのPTFEシートにノズル10を加工し、その接着面側から接着面とノズル10の内壁17に対してエキシマレーザを照射し、さらに接着面側から接着面とノズル10の内壁17に対して白金スパッタリングによりそれらの表面に例えば0.01μmのスパッタ膜を形成して、接着面とノズル10の内壁17が親水化される。
ノズルプレート11の前記接着面には、例えばNiP等の導電素材よりなりノズル10内の液体Lを帯電させるための帯電用電極16が層状に設けられている。本実施形態では、帯電用電極16は、ノズル10の大径部15の内壁17まで延設されており、ノズル内の液体Lに接するようになっている。
また、帯電用電極16には、静電吸引力を生じさせるための静電電圧を印加する静電電圧印加手段としての帯電電圧電源18に接続されている。本実施形態では、単一の帯電用電極16がすべてのノズル10内の液体Lに接触しているため、帯電電圧電源18から帯電用電極16に静電電圧が印加されると、全ノズル10内の液体Lが同時に帯電され、ノズル10や後述するキャビティ20内の液体Lと対向電極3に支持された基材Kとの間に静電吸引力が発生するようになっている。
帯電用電極16の背後には、ボディプレート19が設けられている。ボディプレート19の前記各ノズル10の大径部15の開口端に面する部分には、それぞれ開口端にほぼ等しい内径を有する略円筒状の空間が形成されており、各空間は、ノズル10の吐出孔13から吐出される液体Lを一時貯蔵するためのキャビティ20とされている。
ボディプレート19の背後には、可撓性を有する金属薄板やシリコン等よりなる可撓層21が設けられており、可撓層21により液体吐出ヘッド2内の液体Lが外部に漏出しないようになっている。
なお、ボディプレート19には、キャビティ20に液体Lを供給するための図示しない流路が形成されている。具体的には、ボディプレート19としてのシリコンプレートをエッチング加工してキャビティ20、図示しない共通流路、および共通流路とキャビティ20とを結ぶ流路が設けられている。共通流路には、外部の図示しない液体タンクから液体Lを供給する図示しない供給管が連絡されており、供給管に設けられた図示しない供給ポンプにより或いは液体タンクの配置位置による差圧により流路やキャビティ20、ノズル10等の内部の液体Lに所定の供給圧力が付与されるようになっている。
本実施形態では、可撓層21の外面の各キャビティ20に対応する部分には、それぞれ圧力発生手段としての圧電素子アクチュエータであるピエゾ素子22が設けられており、ピエゾ素子22には、素子に駆動電圧を印加して素子を変形させるための駆動電圧電源23が電気的に接続されている。
ピエゾ素子22は、駆動電圧電源23からの駆動電圧の印加により変形して、ノズル内の液体Lに圧力を生じさせてノズル10の吐出孔13に液体Lのメニスカスを形成させるようになっている。なお、圧力発生手段は、本実施形態のような圧電素子アクチュエータのほかに、例えば、静電アクチュエータやサーマル方式等を採用することも可能である。
駆動電圧電源23および前述した帯電電圧電源18は、それぞれ動作制御手段24に接続されており、それぞれ動作制御手段24による制御を受けるようになっている。
動作制御手段24は、本実施形態では、CPU25やROM26、RAM27等が図示しないBUSにより接続されて構成されたコンピュータからなっており、CPU25は、ROM26に格納された電源制御プログラムに基づいて帯電電圧電源18および各駆動電圧電源23を駆動させてノズル10の吐出孔13から液体Lを吐出させるようになっている。
具体的には、動作制御手段24は、電源制御プログラムに基づいて静電電圧印加手段である帯電電圧電源23による前記帯電用電極16への静電電圧の印加を制御して、ノズル10やキャビティ20内の液体Lを帯電させ、液体Lと基材Kとの間に静電吸引力を発生させるなっている。また、動作制御手段24は、電源制御プログラムに基づいて各駆動電圧電源23を駆動させて各ピエゾ素子22をそれぞれ変形させて、ノズル10内の液体Lに圧力を生じさせてノズル10の吐出孔13に液体Lのメニスカスを形成させるようになっている。
液体吐出ヘッド2の下方には、基材Kを裏面から支持する平板状の対向電極3が液体吐出ヘッド2の吐出面12に平行に所定距離離間されて配置されている。対向電極3と液体吐出ヘッド2との離間距離は、0.1〜3mm程度の範囲内で適宜設定される。
本実施形態では、対向電極3は接地されており、常時接地電位に維持されている。そのため、前記帯電電圧電源18から帯電用電極16に静電電圧が印加されると、ノズル10の吐出孔13の液体Lと対向電極3の液体吐出ヘッド2に対向する対向面との間に電位差が生じて電界が発生するようになっている。また、帯電した液滴Dが基材Kに着弾すると対向電極3はその電荷を接地により逃がすようになっている。
なお、接地に関しては、本実施形態に限定されず、対向電極3を接地させる代わりに帯電用電極16を接地させたり、両者とも接地せず液滴Dが基材Kに着弾するとその電荷を逃がすように帯電電圧電源18を制御するように構成することも可能である。
また、対向電極3または液体吐出ヘッド2には、液体吐出ヘッド2と基材Kとを相対的に移動させて位置決めするための図示しない位置決め手段が取り付けられており、これにより液体吐出ヘッド2の各ノズル10から吐出された液滴Dは、基材Kの表面に任意の位置に着弾可能とされている。
さらに、液体吐出装置1により吐出を行うことができる液体Lは、国際公開第2006/011403号パンフレットに記載された液体等を挙げることができる。また、液体吐出装置1は、パターニング手段として用いる場合には、同パンフレットに記載された用途等に応用することができる。
ここで、本実施形態に係る液体吐出ヘッド2における液体Lの吐出原理について説明する。
本実施形態では、帯電電圧電源18から帯電用電極16に静電電圧を印加して、全ノズル10の吐出孔13の液体Lと対向電極3の液体吐出ヘッド2に対向する対向面との間に電界を生じさせる。また、駆動電圧電源23から液体Lを吐出すべきノズル10に対応するピエゾ素子22に駆動電圧を印加してピエゾ素子22を変形させ、それにより液体Lに生じた圧力でノズル10の吐出孔13に液体LのメニスカスMを形成させる。
本実施形態のように、ノズルプレート11の体積抵抗が高くなると、図3にシミュレーションによる等電位線で示すように、ノズルプレート11の内部に、吐出面12に対して略垂直方向に等電位線が並び、ノズル10の小径部14の液体LやメニスカスMに向かう強い電界が発生する。
特に、図3でメニスカスMの先端部では等電位線が密になっていることから分かるように、メニスカスMの先端部では非常に強い電界集中が生じる。そのため、電界の強い静電力によりメニスカスMが引きちぎられてノズル内の液体Lから分離されて液滴Dとなる。さらに、液滴Dは静電力により加速され、対向電極3に支持された基材Kに引き寄せられて着弾する。その際、液滴Dは、静電力の作用でより近い所に着弾しようとするため、基材Kに対する着弾の際の角度等が安定し、着弾が正確に行われる。
また、ノズル10の吐出孔13に形成されたメニスカスMが吐出面12に広がるとメニスカスMの先端部の電界集中が弱くなってしまう。しかし、本実施形態では、前述したようにノズルプレート11がフッ素樹脂で構成されているから液体Lの吐出面12での面方向への広がりが防止され、メニスカスMの好適な形状が維持されるため、メニスカスMの先端部の電界集中が弱まることがない。
このように、本実施形態に係る液体吐出ヘッド2における液体Lの吐出原理を利用すれば、フラットな吐出面を有する液体吐出ヘッド2においても、高い体積抵抗を有するノズルプレート11を用い、吐出面12に対して垂直方向の電位差を発生させることで強い電界集中を生じさせることができ、正確で安定した液体Lの吐出状態となる。そして、ノズルプレート11がフッ素樹脂で構成されているためメニスカスMが確実かつ適切に形成される。
定量的には、発明者らが各種の絶縁体で形成したノズルプレート11を用いて行った実験およびシミュレーション実験では、図4に示すように、電界強度はノズルプレート11に用いる絶縁体の体積抵抗に強く依存するという知見が得られた。図4は、ノズルプレート11に用いる絶縁体の体積抵抗を1014〜1018Ωmとした場合に、静電電圧を印加し始めた後、メニスカス先端部の電界強度が変化していく様子を計算したものである。なお、図4で(i)〜(iv)の曲線はそれぞれ体積抵抗が異なる絶縁体の結果を表しており、(i)は体積抵抗が1014Ωmの場合、(ii)は1015Ωmの場合、(iii)は1016Ωmの場合、(iv)は1018Ωmの場合をそれぞれ示している。また、空気の体積抵抗を1020Ωmとして計算した。
図4に示すように、ノズルプレート11に用いる絶縁体はイオン分極するが、その体積抵抗が1014Ωmの場合には静電電圧を印加し始めて100秒後にはメニスカス先端部の電界強度が大きく低下する。この静電電圧の印加開始からメニスカス先端部の電界強度が低下し始めるまでの時間は空気の体積抵抗とノズルプレート11に用いる絶縁体の体積抵抗の比で決まるが、本実験により、ノズルプレート11に用いる絶縁体の体積抵抗が大きいほどメニスカス先端部の電界強度が低下し始めるまでの時間が遅くなる、すなわち必要な強い電界強度が得られる時間が長くなり、良好な静電吸引力が得られる時間が長くなるという知見が得られた。
なお、シミュレーション実験は、下記の実験条件に基づいて電界シミュレーションソフトである「PHOTO-VOLT」(商品名、株式会社フォトン製)で電流分布解析モードによるシミュレーションにより行った。また、下記ノズルプレート11の厚さとは、本実施形態では、ノズル10の小径部14の長さと大径部15の長さの和に等しい。
[実験条件]
ノズルプレート11の吐出面12と対向電極3の対向面との距離:1.0mm
ノズルプレート11の厚さ:125mm
ノズル径:10μm
静電電圧:1.5kV
駆動電圧:20V
ノズルプレート11の吐出面12と対向電極3の対向面との距離:1.0mm
ノズルプレート11の厚さ:125mm
ノズル径:10μm
静電電圧:1.5kV
駆動電圧:20V
また、ノズル10から液体Lすなわち液滴Dを吐出するためには、メニスカスMの先端部の電界強度が1.5×107V/m以上であることが必要であり、メニスカス先端部の電界強度が実用上必要な1000秒間(約15分間)維持されるためには、図4からノズルプレート11の体積抵抗が1015Ωm以上であることが実用上必要となる。この結果は実機による実験でも確認されている。
本発明では、前述したようにノズルプレート11はフッ素樹脂で構成されており、その中でも体積抵抗は1016Ωm以上であれば、前記条件を満たす。また、本実施形態で用いられるPTFE、PFA、FEPは、体積抵抗が1016Ωm以上であり、前記条件を満たしている。
一方、体積抵抗が1015Ωm以上の絶縁体を用いてノズルプレート11を作製しても、ノズル10内の液体Lがノズルプレート11に吸収されて体積抵抗が低下し、液滴Dが吐出されない場合がある。しかし、ノズルプレート11がフッ素樹脂で構成されていれば、フッ素樹脂には液体がほとんど吸収されないから、体積抵抗が低下することはない。これは、たとえノズル10の内壁17を親液化しても変わらない。
また、前記シミュレーションにおいて、ノズル径を変化させた場合のメニスカスMの先端部の電界強度を図5に示す。この結果から、メニスカスMの先端部の電界強度はノズル径にも依存し、メニスカスMの先端部の電界強度が1.5×107V/m以上であるためにはノズル径が15μm以下であることが必要である。この結果は、実機による実験でも確認されている。
さらに、前記各条件を満たす材質で形成されたノズルプレート11であっても、例えばポリプロピレン(PP)やポリエチレンテレフタレート(PET)等では高い電界が長時間加えられると体積抵抗や誘電率等の材質の電気的物性が経時的に変化して、液体Lの射出性能が変化してしまう。しかし、本実施形態のようにPTFE、PFA、FEPのようなフッ素樹脂を用いると、後述する実施例に示されるように、そのような長時間高電界が加わってもノズルプレート11の電気的物性が経時的にほとんど変化しない。
なお、前記シミュレーションでは、図6に示すように、ノズルプレート11の厚さを変化させた場合にもメニスカスMの先端部の電界強度が変化するという知見が得られた。この結果から、メニスカスMの先端部で1.5×107V/m以上の電界強度を得るためには、ノズルプレート11の厚さが75μm以上であることが好ましいことが分かる。
また、図5に示したノズル径とメニスカスMの先端部の電界強度との関係および図6に示したノズルプレート11の厚さとメニスカスMの先端部の電界強度との関係は、本実施形態のような小径部14および大径部15よりなる2段構造のノズル10の場合のみならず、1段構造、すなわち、単純なテーパ状のノズルや円筒状のノズル、或いは多段構造のノズルの場合でも同様のシミュレーション結果が得られている。
次に、本実施形態に係る液体吐出ヘッド2および液体吐出装置1の作用について説明する。
図7は、本実施形態に係る液体吐出装置における液体吐出ヘッドの駆動制御を説明する図である。本実施形態では、液体吐出装置1の動作制御手段24は、帯電電圧電源18から帯電用電極16に一定の静電電圧VCを印加させる。これにより、液体吐出ヘッド2の各ノズル10には常時一定の静電電圧VCが印加され、液体吐出ヘッド2内の液体Lと対向電極3に支持された基材Kとの間に電界が生じる。
また、それと同時に、ノズル10の吐出孔13付近で、ノズルプレート11の内部に、吐出面12に対して略垂直方向に等電位線が並ぶようになり、ノズル10の小径部14内の液体Lに向かう強い電界が発生する。
さらに、動作制御手段24が、液滴Dを吐出させるべきノズル10に対応するピエゾ素子22に対して駆動電圧電源23からパルス状の駆動電圧VDを印加させると、ピエゾ素子22が変形してノズル内部の液体Lの圧力が上昇し、ノズル10の吐出孔13では、図中Aの状態からメニスカスMが隆起して、図中BのようにメニスカスMが大きく隆起した状態となる。
その際、本実施形態では、ノズルプレート11がフッ素樹脂で構成されているため、ノズル10の吐出孔13に形成されたメニスカスMが吐出面12に広がらず、メニスカスMの隆起が保持される。
このように隆起したメニスカスMの先端部では高度な電界集中が生じ、電界強度が非常に強くなり、メニスカスMに対して前記静電電圧VCにより形成された電界から強い静電力が加わる。そして、この強い静電力による吸引により図中Cのようにメニスカスが引きちぎられ、径が1〜10μm程度の微細な液滴Dが形成される。液滴Dは、電界で加速されて対向電極方向に吸引され、対向電極3に支持された基材Kに着弾する。
その際、液滴Dには空気の抵抗等が加わるが、前述したように、静電力の作用で液滴Dはより近い所に着弾しようとするため、基材Kに対する着弾方向がぶれることなく安定し、基材Kに正確に着弾する。また、ノズル10では、図中Dのように液滴Dが引きちぎられた分だけ液面が後退するが、キャビティ20から液体Lが補充されて、速やかに図中Aの状態に戻る。
なお、ピエゾ素子22に印加する駆動電圧VDとしては、本実施形態のようにパルス状の電圧とすることも可能であるが、この他にも、例えば、電圧が漸増した後漸減するいわば三角状の電圧や、電圧が漸増した後一旦一定値を保ちその後漸減する台形状の電圧、或いはサイン波の電圧を印加するように構成することも可能である。また、図8(A)に示すように、ピエゾ素子22に常時電圧VDを印加しておいて一旦切り、再度電圧VDを印加してその立ち上がり時に液滴Dを吐出させるようにしてもよい。また、図8(B)、(C)に示すような種々の駆動電圧VDを印加するように構成してもよく適宜決定される。
以上のように、本実施形態に係る液体吐出ヘッド2および液体吐出装置1によれば、液体吐出ヘッド2は、ノズルプレート11が1015Ωm以上の非常に高い体積抵抗を有するフッ素樹脂で構成され、しかも、ノズル径が15μm以下に形成されるため、ノズル10の小径部14内の液体LやメニスカスMで高度な電界集中が生じる。そのため、フラットな吐出面12を有する液体吐出ヘッド2であっても静電吸引方式により効果的に液体を吐出することが可能となる。
また、ノズルプレート11がフッ素樹脂で構成されているため、ノズル10の吐出孔13に形成されたメニスカスMが吐出面12に広がらずにメニスカスMの隆起が保持される。そのため、前記効果が確実かつ適切に保証される。
このように、本実施形態に係る液体吐出ヘッド2および液体吐出装置1は、ノズルプレート11の吐出面12がフラットに形成されているため、生産性に優れ、クリーニング時にノズル10の破損等を生じることを防止可能であるほか、メニスカスMの先端部に電界集中を効果的に生じさせることができるため低電圧の静電電圧の印加でも効率良くかつ正確に液体を吐出することが可能となる。
また、フッ素樹脂は、高体積抵抗であると同時に、誘電率や体積抵抗等の電気特性が安定しており、長時間電界にさらされてもその吐出状態が変わらず良好であった。しかも、樹脂材料であるため、射出成型やホットエンボス、インプリント、プレス等の大量生産に適した製法を適宜選択でき、製造コストの低減に有利である。
また、ポリプロピレン等を用いる場合にはノズルプレート11の吐出面12への液体Lの広がりを阻止するために撥液層等を形成する必要があるが、フッ素樹脂を用いることでそのような撥液層を形成する必要がなくなり、液体吐出ヘッド2の製造工程が簡略化されるとともに液体吐出ヘッド2のコストダウンを図ることが可能となる。
さらに、ノズルプレート11の吐出面12に撥液層を形成する場合には、図9(A)に示すようにノズル10の吐出孔13の部分で撥液層28の立ち上がり角度にムラを生じたり、図9(B)に示すようにノズル10の内部に撥液層28が回り込んだりして、撥液層28がノズル形状に影響を与えて液滴の吐出精度が悪化する場合があるが、本発明では撥液層28を形成する必要がないから撥液層による吐出精度の悪化は生じない。なお、図9では、帯電用電極16等が省略されている。
また、フッ素樹脂は耐薬品性に優れており、液体吐出ヘッド2のノズルプレート11に用いる材料として大きなメリットを有する。
なお、本実施形態では、ピエゾ素子22の変形によりメニスカスMを隆起させる構成としているが、圧力発生手段はこのようにメニスカスMを隆起させることができる機能を有するものであればよく、この他にも、例えば、ノズル10やキャビティ20の内部の液体Lを加熱するなどして気泡を生じさせ、その圧力を用いるように構成することも可能である。
また、本実施形態では、対向電極3を接地する場合について述べたが、例えば、帯電電圧電源18から対向電極3に電圧を印加して、対向電極3と帯電用電極16との電位差が1.5kV等の所定の電位差になるように帯電電圧電源18を動作制御手段24で制御し、帯電電圧電源18と対向電極3とをあわせて静電電圧印加手段とするように構成することも可能である。
さらに、本実施形態では、帯電用電極16がノズルプレート11のノズル10の内壁17に形成されているが、液体Lを介しメニスカスMに導通することができれば、帯電用電極16の設置位置は例えば前述した外部の液体タンク等でもよく、限定されない。
[第2の実施の形態]
図10は、第2の実施形態に係る液体吐出装置の全体構成を示す断面図である。なお、本実施形態では、第1の実施形態に係る液体吐出装置1における場合と同様の構成や機能を有する部材については第1の実施形態と同一の符合を付して説明する。
図10は、第2の実施形態に係る液体吐出装置の全体構成を示す断面図である。なお、本実施形態では、第1の実施形態に係る液体吐出装置1における場合と同様の構成や機能を有する部材については第1の実施形態と同一の符合を付して説明する。
本実施形態に係る液体吐出装置30は、液体吐出ヘッド31と対向電極3とを備えている。本実施形態に係る液体吐出ヘッド31においても、第1の実施形態と同様に、ノズル10の吐出孔13の内部直径は15μm以下であり、ノズルプレート11が1015Ωm以上の体積抵抗を有するフッ素樹脂で構成されている。本実施形態においても、ノズルプレート11を構成するフッ素樹脂として、PTFE、PFAまたはFEP等のフッ素樹脂が用いられている。
本実施形態が第1の実施形態と異なる点は、液体吐出ヘッド31がピエゾ素子等の圧力発生手段を備えていない点であり、ノズル10内の液体Lに帯電用電極16を介して帯電電圧電源18から静電電圧を印加して帯電させて吐出させるように構成されている。
そのため、帯電用電極16は、各ノズル10の周囲にそれぞれ独立に設けられており、動作制御手段24は帯電電圧電源18から各ノズル10に対応する帯電用電極16に個別に静電電圧を印加させるように制御するようになっている。
また、圧力発生手段を用いないことで第1の実施形態では可撓層21とされていた層を外面から支持する手段がなくなるため、ボディプレート19の背後には、可撓層21に代えて、より硬質の樹脂等からなる絶縁性の隔壁層32が設けられており、この隔壁層32により液体吐出ヘッド2内の液体Lが外部に漏出しないようになっている。
本実施形態に係る液体吐出ヘッド31における液体Lの吐出原理は、第1の実施形態と同様である。
すなわち、帯電電圧電源18から液体Lを吐出すべきノズル10に対応する帯電用電極16に静電電圧を印加して、そのノズル10内の液体Lと対向電極3の液体吐出ヘッド2に対向する対向面との間に電界を生じさせて、静電力によりノズル10の吐出孔13に液体LのメニスカスMを形成させる。その際、ノズルプレート11がフッ素樹脂で構成されているため液体Lの吐出面12での広がりが防止され、メニスカスMが確実に隆起する。
また、ノズルプレート11がフッ素樹脂で構成されていて体積抵抗が高いため、図3に示した場合と同様に、ノズルプレート11の内部に、吐出面12に対して略垂直方向に等電位線が並び、ノズル10の小径部14の液体LやメニスカスMに向かう強い電界が発生する。
特に、メニスカスMの先端部では非常に強い電界集中が生じる。そのため、電界の強い静電力によりメニスカスMが引きちぎられてノズル内の液体Lから分離されて液滴Dとなる。さらに、液滴Dは静電力により加速され、対向電極3に支持された基材Kに引き寄せられて着弾する。その際、液滴Dは、静電力の作用でより近い所に着弾しようとするため、基材Kに対する着弾の際の角度等が安定し、着弾が正確に行われる。
以上のように、本実施形態に係る液体吐出ヘッド31および液体吐出装置30によれば、液体吐出ヘッド31は、ノズルプレート11が1015Ωm以上の非常に高い体積抵抗を有し長時間電界に暴露されても電気特性が安定なフッ素樹脂で構成され、しかも、ノズル径が15μm以下に形成されるため、ノズル10の小径部14内の液体LやメニスカスMで高度な電界集中が生じる。
しかも、ノズルプレート11がフッ素樹脂で構成されているため、ノズル10の吐出孔13に形成されたメニスカスMが吐出面12に広がらずにメニスカスMの隆起が確実かつ適切に保持される。そのため、フラットな吐出面12を有する液体吐出ヘッド31であっても静電吸引方式により効果的に液体を吐出することが可能となり、前記第1の実施形態の効果がまったく同様に発揮される。
[実験]
ノズルプレート11に長時間高電界が加わった場合の電気的物性の経時的変化を調べるために、下記表1に示される各樹脂プレートPを図11に示すように上下から電極E1、E2で挟み、両電極間に1000Vの電圧を印加し、電極間に流れる電流の経時的変化を観測した。
ノズルプレート11に長時間高電界が加わった場合の電気的物性の経時的変化を調べるために、下記表1に示される各樹脂プレートPを図11に示すように上下から電極E1、E2で挟み、両電極間に1000Vの電圧を印加し、電極間に流れる電流の経時的変化を観測した。
また、この電圧の印加を24時間連続して行い、一旦電圧の印加を切って樹脂プレート11を除電し、再び1000Vの電圧の連続印加を行った。そして初期状態と24時間印加後に再度電圧を印加した状態との樹脂プレート11の誘電率および体積抵抗の変化を観測した。
[材料]
実験に用いた材料を表1に示す。実験には、実施例1〜3としてPTFE、PFA、FEPを、また比較例1〜5としてPE(ポリエチレン)、PP、PET、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PI(ポリイミド)を用いた。
実験に用いた材料を表1に示す。実験には、実施例1〜3としてPTFE、PFA、FEPを、また比較例1〜5としてPE(ポリエチレン)、PP、PET、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PI(ポリイミド)を用いた。
[結果]
その結果の例を図12に示す。図12(A)は樹脂プレートPとしてPTFEを用いた場合、図12(B)はPENを用いた場合を示している。これらのグラフのカーブすなわち電圧の印加時間に対する電流値の変化率からその樹脂プレートPの誘電率を算出することができ、また、電圧の印加時間が経過して電流値が一定になった時点での電流値からその樹脂プレートPの体積抵抗を算出することができる。なお、図12(A)、(B)ではともに初期状態における電流値が●で、また24時間電圧印加後に電圧の印加を切り再度電圧が印加された状態における電流値が○で表されている。
その結果の例を図12に示す。図12(A)は樹脂プレートPとしてPTFEを用いた場合、図12(B)はPENを用いた場合を示している。これらのグラフのカーブすなわち電圧の印加時間に対する電流値の変化率からその樹脂プレートPの誘電率を算出することができ、また、電圧の印加時間が経過して電流値が一定になった時点での電流値からその樹脂プレートPの体積抵抗を算出することができる。なお、図12(A)、(B)ではともに初期状態における電流値が●で、また24時間電圧印加後に電圧の印加を切り再度電圧が印加された状態における電流値が○で表されている。
これらのグラフから分かるように、樹脂プレートPがPENの場合には誘電率および体積抵抗が初期状態と24時間電圧印加後とでは大きく変化するのに対して、樹脂プレートPがPTFEの場合にはそれらがほとんど変化しない。
初期状態の誘電率や体積抵抗に対して24時間電圧印加後の誘電率や体積抵抗がそれぞれ10%以上変化した場合を誘電率や体積抵抗に変化あり、変化が10%未満の場合を変化なしとすると、表1に示すように、実施例1〜3は誘電率、体積抵抗ともに変化なし、比較例1〜5では誘電率、体積抵抗ともに変化ありという結果になった。
[評価]
誘電率や体積抵抗は、樹脂プレートPの厚さが薄いほど24時間電圧印加後の変化が現れ易いが、表1に示すように、実施例1〜3では比較例1〜5と厚さが同等或いはそれらより薄い厚さでありながら誘電率や体積抵抗がほとんど変化しなかった。このように、PTFE、PFA、FEP等のフッ素樹脂は、長時間高電界が加わっても電気的物性が経時的に変化し難い材質ということができ、本発明のノズルプレート11に用いる材料として好適な材料と言うことができる。
誘電率や体積抵抗は、樹脂プレートPの厚さが薄いほど24時間電圧印加後の変化が現れ易いが、表1に示すように、実施例1〜3では比較例1〜5と厚さが同等或いはそれらより薄い厚さでありながら誘電率や体積抵抗がほとんど変化しなかった。このように、PTFE、PFA、FEP等のフッ素樹脂は、長時間高電界が加わっても電気的物性が経時的に変化し難い材質ということができ、本発明のノズルプレート11に用いる材料として好適な材料と言うことができる。
1、30 液体吐出装置
2、31 液体吐出ヘッド
3 対向電極
10 ノズル
11 ノズルプレート
13 吐出孔
17 内壁
18 静電電圧電源(静電電圧印加手段)
20 キャビティ
22 ピエゾ素子(圧力発生手段)
24 動作制御手段
K 基材
L 液体
M メニスカス
2、31 液体吐出ヘッド
3 対向電極
10 ノズル
11 ノズルプレート
13 吐出孔
17 内壁
18 静電電圧電源(静電電圧印加手段)
20 キャビティ
22 ピエゾ素子(圧力発生手段)
24 動作制御手段
K 基材
L 液体
M メニスカス
Claims (5)
- 液体を吐出するノズルと、
前記ノズルが形成され形状がフラットなノズルプレートと、
前記ノズルの吐出孔から吐出される液体を貯蔵するキャビティと、
前記ノズル内の液体と基材間に静電電圧を印加して静電吸引力を発生させる静電電圧印加手段と、
前記静電電圧印加手段による前記静電電圧の印加を制御する動作制御手段と
を備え、
前記ノズルの吐出孔の内部直径が15μm以下であり、
少なくとも前記ノズルプレートが1015Ωm以上の体積抵抗を有するフッ素樹脂で構成されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。 - 前記フッ素樹脂は、PTFE、PFAまたはFEPで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記ノズルプレートは、少なくとも前記ノズルの内壁が親液化されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
- 前記ノズルの吐出孔に液体のメニスカスを形成するための圧力発生手段を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
- 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドと、
前記基材を裏面から支持する対向電極と
を備えることを特徴とする液体吐出装置。
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