JP2008086306A - 改質乾燥卵白及びその製造方法、並びに改質乾燥卵白を含有する食品 - Google Patents

改質乾燥卵白及びその製造方法、並びに改質乾燥卵白を含有する食品 Download PDF

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Abstract

【課題】保水性、ゲル強度及びしなやかさ等が改質され、風味等に悪影響を与えずに種々の食品に利用して優れた品質改良効果を有する改質乾燥卵白及びその製造方法、並びに改質乾燥卵白を含有する食品を提供する。
【解決手段】改質乾燥卵白はpHが9.5以上であり、製品25gを250mL容量のバイアル瓶に密封して75℃で24時間保存した後の前記バイアル瓶内の二酸化炭素濃度が1%以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、加熱凝固時の保水性、ゲル強度及びしなやかさ等が改質され、かつ、風味等に悪影響を与えずに種々の食品に利用して優れた品質改良効果が得られる改質乾燥卵白及びその製造方法、並びに改質乾燥卵白を含有する食品に関する。
乾燥卵白は、生卵白に比べて長期保存が可能であり、輸送コストが低く、保管スペースも少なくてすむことから、種々の食品の原料として使用されている。この乾燥卵白は、保存中に卵タンパク質中のアミノ基と反応してメイラード反応を起こし、褐変、不快臭の発生等の品質低下が生じないように、液卵白を脱糖処理した後に、噴霧乾燥、パンドライ、凍結乾燥、真空乾燥等の種々の方法で乾燥処理されて製造されている。脱糖処理は通常、酵母、酵素、細菌等を用いて行われる。これらの脱糖処理における適正pHは弱酸性〜中性であるため、脱糖処理時には一般にクエン酸等の酸剤が添加されてpHの調整が行われる。このため、得られた乾燥卵白のpHは一般的に中性付近となる。
また、乾燥卵白は、単に卵白原料として用いられる他に、畜肉加工食品、水産加工食品、麺類等の種々の加工食品の歩留まり向上や食感改良するための品質改良剤としても利用されている。このような用途においては、乾燥卵白を加熱凝固して得られた加熱凝固物(ゲル)の保水性が高いこと、ゲル強度が高いこと、しなやかであること等が望まれており、従来より、保水性、ゲル強度、しなやかさ等の点から乾燥卵白の性質を改質した乾燥卵白が提案されている。
例えば、特許第3244586号公報(特許文献1)には、脂肪酸を添加することにより、しなやかさを改質した乾燥卵白が提案されている。しかしながら、この技術では、脂肪酸により不快な味や臭いが生じる場合がある。
また、特開平11−266836号公報(特許文献2)には、炭酸ナトリウム等のアルカリ性の塩類を添加してpHを9.3以上に調整した液卵白を10分間保持した後に乾燥することにより、保水性を改質した乾燥卵白が提案されている。しかしながら、添加したアルカリ性の塩類が最終製品に残存するため、食品に添加した場合に食味や物性の点で悪影響を与える場合がある。
特許第3244586号公報 特開平11−266836号公報
本発明は、添加剤を用いずに加熱凝固時の保水性、ゲル強度及びしなやかさ等が改質された乾燥卵白及びその製造方法、並びに改質乾燥卵白を含有する食品を提供する。
本発明はまた、添加剤を用いないことから、風味等に悪影響を与えずに種々の食品に利用して優れた品質改良効果が得られる改質乾燥卵白及びその製造方法を提供する。
鶏卵の液卵白には二酸化炭素が溶存していることが知られている。また、液卵白を脱糖処理した後、乾燥処理する一般的な乾燥卵白の製造方法において、乾燥処理後の乾燥卵白の水戻し溶液のpHが乾燥前の液卵白のpHに比べて上昇する傾向があることが知られている。その理由は、液卵白中に溶存する二酸化炭素が乾燥処理時に放出されるため、乾燥卵白中には二酸化炭素がほとんど残存していないからであると従来考えられていた。
これに対して、本願発明者は、脱糖処理時の有機酸の添加量が少ない、あるいは、有機酸を添加しないで製造したpH9以上の乾燥卵白は、乾燥卵白中に二酸化炭素がある程度残存していること、この乾燥卵白は、適切に乾熱処理することにより乾燥卵白に含まれる二酸化炭素を散失させることができること、並びに、二酸化炭素を散失させてpHを上昇させた乾燥卵白は、アルカリ性の塩類を加えてpHを上昇させた場合に比べて、乾熱処理しても煮えが生じ難く、保水性に加えて、ゲル強度、しなやかさの点からも充分に改質でき、かつ、従来から行われているアルカリ性の塩類や脂肪酸等の添加剤を加えて保水性を改質する方法に比べて、風味等の悪影響を与えずに種々の食品に利用して優れた品質改良効果が得られることを見出して、遂に本発明に係る改質乾燥卵白およびその製造方法を完成するに至った。
本発明の一態様に係る改質乾燥卵白は、
pHが9.5以上であり、製品25gを250mL容量のバイアル瓶に密封して75℃で24時間保存した後の前記バイアル瓶内の二酸化炭素濃度が1%以下である。本発明において、「製品」とは、改質乾燥卵白をいうものとする。
上記改質乾燥卵白において、製品1質量部に対して、7質量部の清水を加えて加熱凝固して得られる加熱凝固物の離水率が3%以下であることができる。
上記改質乾燥卵白において、製品1質量部に対して、7質量部の清水を加えて加熱凝固して得られる加熱凝固物のゲル強度が400g以上であることができる。
上記改質乾燥卵白において、製品1質量部に対して、7質量部の清水を加えて加熱凝固して得られる加熱凝固物の圧縮距離が10mm以上であることができる。
本発明の一態様に係る食品は、上記改質乾燥卵白を含有する。
本発明の一態様に係る冷凍食品は、上記改質乾燥卵白を含有する。
本発明の一態様に係る畜肉加工食品は、上記改質乾燥卵白を含有する。
本発明の一態様に係る水産加工食品は、上記改質乾燥卵白を含有する。
本発明の一態様に係る麺類は、上記改質乾燥卵白を含有する。
本発明の一態様に係る卵加工食品は、上記改質乾燥卵白を含有する。
本発明の一態様に係る改質乾燥卵白の製造方法は、
乾燥後のpHが9以上となるように液卵白を乾燥処理して乾燥卵白を製する工程と、
前記乾燥卵白中の二酸化炭素を散失させる工程と、
を含む。
本発明において、「二酸化炭素を散失させる」とは、二酸化炭素を雰囲気中に放出させた後、この二酸化炭素を除去することをいう。
上記改質乾燥卵白の製造方法において、前記乾燥卵白中の二酸化炭素を散失させる工程によって、該乾燥卵白のpHを上昇させることができる。
上記改質乾燥卵白の製造方法において、前記乾燥卵白中の二酸化炭素を散失させる工程が、該乾燥卵白を、該乾燥卵白から雰囲気中に放出される二酸化炭素を除去しながら、乾熱処理する工程であることができる。この場合、前記乾熱処理の温度が45〜120℃であることができる。また、前記乾熱処理は、前記乾燥卵白から放出された二酸化炭素を換気により除去しながら行われることができる。さらに、前記乾熱処理は、前記乾燥卵白から放出された二酸化炭素を二酸化炭素吸収剤に吸収させながら行われることができる。さらに、前記乾熱処理は、乾燥卵白の水分含量が4%以上の状態で1日以上行われることができる。
上記改質乾燥卵白の製造方法において、前記乾燥卵白中の二酸化炭素を散失させる工程によって、前記乾燥卵白中の二酸化炭素の濃度を1%以下にすることができる。
上記改質乾燥卵白の製造方法において、前記乾燥卵白中の二酸化炭素を散失させる工程によって、前記乾燥卵白のpHを9.5以上にすることができる。
上記改質乾燥卵白によれば、添加剤を用いずに加熱凝固時の保水性、ゲル強度及びしなやかさ等が改質されている。また、上記改質乾燥卵白は、添加剤を使用していないため、風味等に悪影響を与えずに種々の加工食品に利用して優れた品質改良効果を奏することができる。したがって、これら加工食品の需要を拡大することができる。
以下、本発明の一実施形態に係る改質乾燥卵白及びその製造方法、ならびに改質乾燥卵白を含む食品について説明する。なお、本実施形態において、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
1.改質乾燥卵白
本実施形態に係る改質乾燥卵白は、pHが9.5以上であり、製品25gを250mL容量のバイアル瓶に密封して75℃で24時間保存した後の前記バイアル瓶内の二酸化炭素濃度が1%以下である。
製品25gを250mL容量のバイアル瓶に密封して75℃で24時間保存した後の前記バイアル瓶内の二酸化炭素濃度は、本実施形態に係る改質乾燥卵白に含まれる二酸化炭素の量を反映する。したがって、前記バイアル瓶内の二酸化炭素濃度が高いほど、本実施形態に係る改質乾燥卵白に含まれる二酸化炭素の量が多いといえる。
具体的には、前記バイアル瓶中の二酸化炭素の濃度は、製品25gを250mL容量のバイアル瓶に密封して75℃の恒温機で24時間保存した後、恒温機から取り出して1分以内に前記バイアル瓶内の二酸化炭素濃度を二酸化炭素濃度計(PBI-Dansensor社製 Check Point O2/CO2)で測定される。
また、後述する実施例に示すように、製品25gを250mL容量のバイアル瓶に密封して75℃で24時間保存することにより、改質乾燥卵白から二酸化炭素を充分に放出させることができる。すなわち、製品25gを250mL容量のバイアル瓶に密封して75℃で24時間以上保存した後の前記バイアル瓶内の二酸化炭素濃度は、同条件にて24時間以上保存した後の前記バイアル瓶内の二酸化炭素濃度とほとんど変わらない。
本発明において、「乾燥卵白」とは、液卵白を噴霧乾燥、パンドライ、凍結乾燥、真空乾燥等の種々の方法で乾燥して得られた卵白をいう。また、本発明において、「(改質)乾燥卵白のpH」とは、pHメーター(商品名「MP225」、メトラー・トレド社製)にて測定された、1質量部の(改質)乾燥卵白に対して、7質量部の清水を加えて溶解させた溶液のpH値をいう。
本実施形態に係る改質乾燥卵白によれば、pHが9.5以上であり、かつ前記バイアル瓶内の二酸化炭素濃度が1%以下であることにより、高い保水性を有し、ゲル強度及びしなやかさ等が改質されている。すなわち、本実施形態に係る改質乾燥卵白は、前記バイアル瓶内の二酸化炭素濃度が1%以下であることにより、二酸化炭素の含有量が低く、これによりpHが9.5以上とされている。したがって、本実施形態に係る改質乾燥卵白は、優れた保水性を有し、また、アルカリ性の塩類を加えてpHを上昇させた場合に比べて乾熱処理しても煮えが生じ難いことから、ゲル強度及びしなやかさの点からも優れている。
また、本実施形態に係る改質乾燥卵白は二酸化炭素を吸収しにくいため、大気中に常温保存しても二酸化炭素の吸収によってpHが低下して、保水性及びゲル強度が低下したり、しなやかさが失われたりすることがない。
本実施形態に係る改質乾燥卵白におけるpHの好ましい範囲は9.5〜10.9である。本実施形態に係る改質乾燥卵白はアルカリ剤を含まないか、あるいは含有するアルカリ剤が少量であるため、後述するように二酸化炭素を除去しながら乾熱処理しても、pHは10.9以下に留まる。なお、食品工業的に大量生産する観点からは、前記pHまで上昇した乾燥卵白を安定して製造するには、後述する乾熱処理条件を煮え等が発生しないように微調整しながら行う必要があり製造コストがかかって経済的でないことから、本実施形態に係る改質乾燥卵白のpHは好ましくは10.7以下である。また、本実施形態に係る改質乾燥卵白において、改質効果がより得られ易いことから、pHは好ましくは9.5以上であり、より好ましくは10以上、さらに好ましくは10.2以上である。
1.1.保水性
本実施形態に係る改質乾燥卵白はまた、製品25gを250mL容量のバイアル瓶に密封して75℃で24時間保存した後の前記バイアル瓶内の二酸化炭素濃度が1%以下、好ましくは0.8%以下であることにより、高い保水性を有する。
ここで「保水性」とは、以下の方法で測定した離水率により評価することができる。すなわち、本発明において、「離水率」とは、乾燥卵白1質量部に対して7質量部の清水を加えて加熱凝固して得られた加熱凝固物の離水率をいう。この離水率の値が小さいほど保水性に優れているといえる。
本実施形態に係る改質乾燥卵白の離水率は、具体的には、好ましくは3%以下、より好ましくは2.7%以下、特に好ましくは2.5%以下である。
離水率は、以下の手順(a)〜(e)で測定された値である。
(a)1質量部の乾燥卵白に対して、7質量部の清水を加えて溶解し、折径60mmのナイロン製のケーシングに充填して80℃で40分間加熱して加熱凝固物を製する。
(b)加熱凝固物を5℃で24時間保存する。
(c)保存後の加熱凝固物を室温(20℃)に3時間放置して品温20℃にする。
(d)加熱凝固物をケーシングから取り出して、長さ方向に対して直角に厚さ3cmにカットする。
(e)110mm径のろ紙(定性濾紙No.2)5枚を重ねた上にカットした加熱凝固物を、カットした面のいずれか片方が底面となるようにのせた後、1時間室温に放置して、放置前後の加熱凝固物の質量変化から下記式により離水率を求める。
Figure 2008086306
また、本実施形態に係る改質乾燥卵白は、好ましくは水分含量を調整した乾燥卵白を乾熱処理することにより、ゲル強度、しなやかさの点からも充分に改質されたものである。
1.2.ゲル強度
本発明において、乾燥卵白の加熱凝固物の「ゲル強度」とは、乾燥卵白1質量部に対して7質量部の清水を加えて加熱凝固して得られた加熱凝固物の硬さを示す値である。ゲル強度が強いほど硬さに優れているといえる。
ゲル強度は、以下の方法で評価することができる。すなわち、ゲル強度は、前述の(a)〜(d)と同様にして調製された、加熱凝固物のカット品のゲル強度をFUDOH RHEO METER NRM-2010J-CW((株)レオテック製)で測定した値である。具体的には、ゲル強度は、加熱凝固物のカット品をカットした面のいずれか片方が底面となるように測定テーブルに置き、球形Φ8mmプランジャーを使用し、テーブル上昇速度6cm/分の条件でゲル強度(破断応力)を測定した値である。
本実施形態に係る改質乾燥卵白のゲル強度は、具体的には、好ましくは400g以上、より好ましくは420g以上、さらに好ましくは440g以上である。
1.3.しなやかさ
また、しなやかさは、以下の方法で測定した圧縮距離により評価することができる。すなわち、圧縮距離は、乾燥卵白1質量部に対して7質量部の清水を加えて加熱凝固して得られた加熱凝固物のしなやかさを示す値である。具体的には、圧縮距離は、前述の(a)〜(d)と同様にして調製された、加熱凝固物のカット品の圧縮距離をFUDOH RHEO METER NRM-2010J-CW((株)レオテック製)で測定した値である。つまり、加熱凝固物のカット品をカットした面のいずれか片方が底面となるように測定テーブルに置き、球形Φ8mmプランジャーを使用し、テーブル上昇速度6cm/分の条件で圧縮距離(プランジャーがゲル表面に接してから破断するまでに移動した距離)を測定した値である。圧縮距離が大きいほど、しなやかさに優れているといえる。
本実施形態に係る改質乾燥卵白の圧縮距離は、具体的には、好ましくは10mm以上、より好ましくは12mm以上、特に好ましくは13mm以上である。
本実施形態に係る改質乾燥卵白は、添加剤を用いずに保水性、ゲル強度及びしなやかさ等の点から改質されていることから、風味等の悪影響を与えずに種々の食品に利用することにより優れた品質改良効果が得られる。具体的には、本実施形態に係る改質乾燥卵白は保水性が高いことから、種々の食品において、これら食品の離水を防止して歩留まりを向上することができ、かつ、これらを冷凍した際の冷凍変性防止効果を得ることができる。また、本実施形態に係る改質乾燥卵白はゲル強度が高く、しなやかであることから、これら食品の食感改良効果を得ることができる。
本実施形態に係る改質乾燥卵白を利用する食品としては、ハム、ソーセージ、シュウマイ等の畜肉加工食品、かまぼこ、ちくわ、魚肉ソーセージ等の水産加工食品、中華麺、うどん、蕎麦等の麺類、カスタードクリーム、タマゴサラダ、スクランブルエッグ、卵焼き、オムレツ、茶碗蒸し、プリン等の卵加工食品、マヨネーズ、タルタルソース等の酸性水中油型乳化食品(pH3〜4.5)、カルボナーラソース、コーンスープ等のソース類、ケーキ、クッキー等の焼き菓子、パン、フラワーペースト、お好み焼き、たこ焼き等が挙げられる。更に、これらの冷凍食品や、アイスクリーム、ソフトクリーム等の冷菓が挙げられる。
本実施形態に係る改質乾燥卵白の食品への配合量は、食品の種類によって適宜選択すべきであるが、通常好ましくは0.01〜10%、より好ましくは0.05〜5%である。前記値より改質乾燥卵白の配合量が少ないと、上述の本発明の改質乾燥卵白を配合したときの効果を奏し難く、一方、前記値より配合量を多くしたとしても、配合量に応じた効果が期待し難く経済的でない。
本実施形態に係る改質乾燥卵白は、後述する製造方法によって得ることができる。
2.改質乾燥卵白の製造方法
本発明の一実施形態に係る改質乾燥卵白の製造方法は、乾燥後のpHが9以上となるように液卵白を乾燥処理して乾燥卵白を製する工程と、前記乾燥卵白中の二酸化炭素を散失させる工程とを含む。以下、上記改質乾燥卵白の製造方法について説明する。
2.1.乾燥卵白を製する工程
本実施形態に係る改質乾燥卵白を製するには、まず、液卵白を用意する。液卵白としては、例えば、卵を割卵して卵黄と分離した生液卵白、これにろ過、殺菌、冷凍、濃縮等の処理を施したものの他、卵白中の成分を除去する処理、例えば、糖分を除去する脱糖処理やリゾチームを除去する処理を行なったもの等を用いることができる。これらの液卵白の中でも、後述する乾熱処理中に卵タンパク質中のアミノ基と反応してメイラード反応を起こし、褐変、不快臭の発生等の品質の低下を防止することができる点で、脱糖処理を行った液卵白を用いるのが好ましい。脱糖処理は、酵母、酵素、細菌等を用いて常法により行えばよく、中でも、不揮発性の酸が産出され難く、乾燥後の乾燥卵白のpHを高く調整し易い点から、酵母を用い、具体的には、液卵白中の遊離の糖含有率が好ましくは0.1%以下となるように行うことが好ましい。
次に、前記液卵白を乾燥処理する。本実施形態に係る改質乾燥卵白の製造方法においては、乾燥処理後の乾燥卵白のpHを9以上、好ましくは9.5以上、より好ましくは10以上とする。
一般に、液卵白を酵母脱糖、酵素脱糖等の方法で脱糖処理する際には、これら酵母や酵素の適正pHが弱酸性〜中性であるため、有機酸等の酸剤を添加して液卵白のpHを中性程度とするため、得られる乾燥卵白もpHが7前後となる。
これに対して、本実施形態に係る改質乾燥卵白の製造方法においては、前記脱糖処理の際に有機酸等の酸剤を添加しないか、またはごくわずかの添加に抑えることにより、乾燥卵白のpHを前記特定範囲に調整するのが好ましい。具体的には、用いる液卵白のpHや乾燥処理方法等にもよるが、有機酸等の酸剤を添加せずに酵母で脱糖処理をした場合、pH9.9〜10.1程度の乾燥卵白を得ることができる。また、本発明においては、乾燥処理後の乾燥卵白のpHが高いほうが改質効果を得易いことから、有機酸等の酸剤を添加しない方が好ましいが、脱糖処理効率を上げる等の目的のために、例えば、酸剤としてクエン酸等の有機酸を用いる場合は、脱糖の際の有機酸添加量を液卵白1kgに対して好ましくは1000mg以下、より好ましくは500mg以下、さらに好ましくは200mg以下、特に好ましくは100mg以下とする。
また、乾燥前の液卵白のpHに比べて、乾燥後の乾燥卵白のpHはやや上昇する傾向がある。例えば、乾燥条件にもよるが、通常の噴霧乾燥条件である150〜200℃の熱風で乾燥した場合、pHが1〜3程度高くなるので、これを考慮して、乾燥処理後の乾燥卵白のpHを前記範囲に調整すればよい。
なお、本実施形態に係る改質乾燥卵白の製造方法においては、乾燥卵白のpHを前記特定範囲に調整するために、リン酸三ナトリウム等の少量のアルカリ剤を添加してもよいが、食品に添加した場合に風味や物性の点で悪影響を与える場合があり、また、このような乾燥卵白は、アルカリ剤に由来する塩類により後述する乾熱処理中にタンパク質が熱変性して不溶化するいわゆる煮えが生じ易くなる。したがって、本実施形態に係る改質乾燥卵白の製造方法においては、アルカリ剤の添加量は乾燥前の液卵白1kgに対して好ましくは300mg以下、より好ましくは150mg以下、さらに好ましくは50mg以下である。
乾燥処理は、特に制限はなく、例えば、噴霧乾燥(スプレードライ)、パンドライ、凍結乾燥、真空乾燥等の種々の方法により常法に準じて行えばよい。
以上のように、pHが9以上となるように乾燥処理した乾燥卵白は、二酸化炭素含有量が高いのに対し、前記範囲よりもpHが低い場合は、二酸化炭素を含有量が低い。これは、一般的な方法に準じて、有機酸等の酸剤を添加して脱糖処理された液卵白を乾燥処理して得られたpHが7程度の乾燥卵白は、乾燥処理時に卵白中に溶存する二酸化炭素が放出されやすく、該乾燥卵白中には二酸化炭素がほとんど残存していないためであると推察される。
本実施形態に係る改質乾燥卵白の製造方法は、pH9以上となるように乾燥処理した乾燥卵白を後述するように乾熱処理することにより、二酸化炭素を散失させてpHを上昇させるとともに、保水性等を改質することができる。一方、pHが7程度の乾燥卵白は、加熱しても二酸化炭素をほとんど放出しないことから、乾燥卵白を乾熱処理して二酸化炭素を散失させることにより保水性等を改質する本実施形態に係る改質乾燥卵白の製造方法を応用することが困難である。
2.2.二酸化炭素を散失させる工程
本実施形態に係る改質乾燥卵白の製造方法においては、上述の乾燥卵白を製する工程により得られた乾燥卵白中の二酸化炭素を散失させる工程を含む。ここで、乾燥卵白中の二酸化炭素を散失させる工程によって、乾燥卵白のpHを上昇させることができ、好ましくは乾燥卵白のpHを9.5以上にすることができる。また、乾燥卵白中の二酸化炭素を散失させる工程によって、乾燥卵白中の二酸化炭素の濃度を1%以下にすることができる。
また、乾燥卵白中の二酸化炭素を散失させる工程が、乾燥卵白を、該乾燥卵白から雰囲気中に放出される二酸化炭素を除去しながら、乾熱処理する工程であることができる。すなわち、本発明においては、乾熱処理により二酸化炭素を雰囲気中に放出させた後、この雰囲気中の二酸化炭素を除去することにより、乾燥卵白中の二酸化炭素を散失させることができる。
乾熱処理の温度は、二酸化炭素の放出量が多い点で、好ましくは45℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上、特に好ましくは70℃以上である。一方、乾熱処理の温度があまり高すぎると、乾燥卵白から二酸化炭素が充分に放出される前に、前記乾燥卵白中のタンパク質が変性して、不溶化してしまういわゆる煮えが生じ易い。このため、乾熱処理の温度は好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは90℃以下である。
したがって、乾熱処理の温度は上述の理由により、45〜120℃が好ましい。45〜120℃で乾熱処理することにより、前記乾燥卵白中のタンパク質の変性を防ぎつつ、前記乾燥卵白中の二酸化炭素を効率的に放出させることができる。また、乾熱処理の温度は50〜120℃がより好ましく、60〜100℃がさらに好ましく、70〜100℃が特に好ましく、70〜90℃が最も好ましい。
このような乾燥卵白中からの二酸化炭素の放出は、35℃程度の雰囲気温度下に放置するだけではほとんど認められず、上述の特定温度以上で乾熱処理することにより初めて認められることから、乾燥卵白に含まれる二酸化炭素は、何らかの形でタンパク質と結合した状態で存在していると考えられる。
上述したように、特定温度以上で乾燥卵白を乾熱処理して該乾燥卵白中の二酸化炭素が散失したかどうかは、乾熱処理前後の乾燥卵白の一部をサンプリングして、下記測定方法によりそれぞれ測定した値を比較することにより判断できる。
例えば、前記pH9以上となるように乾燥処理した乾燥卵白25gを、本発明の二酸化炭素を除去しながら行う乾熱処理を施さずに、250mL容量のバイアル瓶に密封して75℃で24時間保存した後の前記バイアル瓶内の二酸化炭素濃度は通常、2〜4%程度となる。
これに対して、本実施形態に係る改質乾燥卵白の製造方法においては、上記乾燥卵白を二酸化炭素を除去しながら乾熱処理することにより、同様に測定された前記バイアル瓶内の二酸化炭素濃度を1%以下(より好ましくは0.8%以下)にすることができる。
二酸化炭素を除去しながら行う乾熱処理によって二酸化炭素を散失させることにより、乾燥卵白のpHは通常、0.01〜1程度上昇する。このため、乾熱処理後の乾燥卵白のpHを9.5以上(好ましくは10以上、より好ましくは10.2以上)となるように二酸化炭素を散失させるのが好ましい。上述したように有機酸等の酸剤を添加せずに脱糖処理して乾燥卵白を製造しても、得られる乾燥卵白のpHは、用いる液卵白のpHや乾燥処理方法等にもよるが、通常10.1以下に留まるが、本発明によれば、乾熱処理後の乾燥卵白中の二酸化炭素を上述のように散失させることにより、アルカリ剤を添加しなくても乾燥卵白のpHを10.2以上とすることができる。
本実施形態に係る改質乾燥卵白の製造方法においては、上述した二酸化炭素を散失させる乾熱処理と同時に又はその後に、乾燥卵白の水分含量が一定量以上の状態で一定時間以上乾熱処理することにより、ゲル強度及びしなやかさを改質することができる。この場合、改質効果が得られ易いことから乾燥卵白の水分含量が4%以上(より好ましくは5%以上)の状態で、1日以上(より好ましくは2日以上)乾熱処理することが好ましい。一方、水分含量が高すぎたり乾熱処理時間が長すぎたりすると煮えが生じ易いことから、前記乾熱処理する際には、乾燥卵白の水分含量を好ましくは12%以下、より好ましくは10%以下とし、乾熱処理時間を好ましくは30日以下、より好ましくは21日以下とするとよい。
このような乾熱処理を行うには、乾熱処理開始時点の乾燥卵白の水分含量を、好ましくは4〜12%、より好ましくは5〜10%として乾熱処理すればよいが、後述する乾熱処理方法によっては、乾熱処理時に乾燥卵白の水分含量が低下する場合がある。したがって、このような乾燥卵白の水分含量が低下する方法で乾熱処理する場合は、乾熱処理開始時点の乾燥卵白の水分含量を調整することに加えて、乾熱処理後最終的に得られる改質乾燥卵白の水分含量が3%以上(好ましくは4%以上)になるように乾燥卵白の水分蒸発を防ぎながら1日以上かけて乾熱処理することが好ましい。
本発明において、「(改質)乾燥卵白の水分含量」は、赤外線水分計((株)ケツト科学研究所、FD−600)によって測定される。
乾熱処理を施す乾燥卵白の水分含量を調整する方法は、特に制限はないが、例えば、乾燥卵白を製造する際の乾燥条件を調節する方法や、乾燥卵白に加水する方法が挙げられる。具体的には、通常の噴霧乾燥条件である150〜200℃の熱風で乾燥した場合、乾燥卵白の水分含量は6〜7%程度となるので、これをそのまま、あるいは、加水して調整すればよい。
また、乾燥卵白の水分含量が好ましくは4%以上の状態で乾熱処理する際には、乾熱処理温度が低すぎても改質効果が得られ難く、一方、このように水分含量が調整された乾燥卵白は、水分が高く煮えが生じ易いため、乾熱処理の温度が高すぎるのは好ましくない。したがって、このようにしてゲル強度及びしなやかさを改質する場合の乾熱処理温度は、好ましくは60〜90℃であり、より好ましくは60〜80℃である。
上述のpH9以上の乾燥卵白を45℃以上で乾熱処理して放出された二酸化炭素は、二酸化炭素の濃度が大気よりも高い雰囲気下(例えば、乾熱処理後の雰囲気下(乾燥卵白から放出された二酸化炭素を含む雰囲気下))において、該雰囲気温度が前記温度より下がると、再び乾燥卵白に吸収される傾向がある。
このため、本実施形態に係る改質乾燥卵白の製造方法では、二酸化炭素を除去しながら乾熱処理する。二酸化炭素を除去しながら乾熱処理する方法としては、乾燥卵白から放出された二酸化炭素を換気により除去しながら行う方法や、乾燥卵白から放出された二酸化炭素を二酸化炭素吸収剤に吸収させながら行う方法が挙げられ、具体的には、例えば、以下の第1〜第3の方法が挙げられる。
第1の方法は、乾燥卵白をバットなどの平坦な容器に厚さが1mmから10cm程度に広げ、該容器を加熱空気が換気されている恒温機、乾燥機、熱蔵庫等に保存する方法である。第1の方法によれば、後述する第2の方法と比較して、比較的短時間で二酸化炭素を散失することができる。
第1の方法において、乾燥卵白から二酸化炭素を短時間で散失させるためには、乾熱処理温度を上げる必要がある。この場合、二酸化炭素が充分に散失される前に乾燥卵白が煮えやすく、一方、換気量を増やすと、空気の流れにより乾燥卵白が庫内で舞い上がることがある。また、乾燥卵白から二酸化炭素は徐々に放出されるため、あまり乾熱処理時間が短くても乾燥卵白に含まれる二酸化炭素を充分に散失させ難い傾向がある。このため、第1の方法においては、乾熱処理温度と換気量を調節して、少なくとも好ましくは3時間以上、より好ましくは6時間以上かけて、乾燥卵白中の二酸化炭素を散失させることが好ましい。
第2の方法は、乾燥卵白を二酸化炭素透過性がある容器に容器詰めし、該容器を加熱空気が換気されている恒温機、乾燥機、熱蔵庫等に保存する方法である。第2の方法は衛生管理上好ましい。第2の方法では、例えば好ましくは20〜80μm厚(より好ましくは30〜70μm厚)のポリエチレンフィルムからなるパウチに封入し、パウチの外表面の大部分が換気されている加熱空気に接触した状態で乾熱処理することができる。パウチの厚さが前記範囲よりも厚い場合、二酸化炭素の透過が充分に行われないことがあり、一方、パウチの厚さが前記範囲よりも薄い場合、強度が不十分で作業性が悪くなることがある。
ここで、「パウチの外表面の大部分」とは、パウチの外表面の70%以上をいうものとし、好ましくは80%以上である。
また、乾燥卵白が封入されたパウチを複数作製して乾熱処理を行う場合、二酸化炭素を透過しやすくするために、各パウチ間にスペースが設けられた状態で各パウチを配置するのが好ましい。具体的には、例えば、乾燥卵白10〜20kgがそれぞれ封入された複数の包装体を、金網でできた棚に重ねずに並べて、容器の外表面の大部分が換気されている加熱空気に接触した状態で乾熱処理する方法などが挙げられる。
第2の方法は、第1の方法に比べると二酸化炭素を散失させるのに時間がかかるが、乾燥卵白の水分含量が高い状態で長時間保持され易いので、上述したように乾熱処理前の水分含量を適正な値に調整して、乾燥卵白の水分含量が4%以上の状態で、1日以上乾熱処理することにより、しなやかさ及びゲル強度を充分に改質することができて好ましい。
第3の方法は、乾燥卵白から放出される二酸化炭素を二酸化炭素吸収剤に吸収させながら乾熱処理する方法である。第3の方法は、上述した第1または第2の方法と組み合わせて行うことができる。
例えば、二酸化炭素吸収剤を乾燥卵白と同一包材内に封入して乾熱処理する方法、あるいは、乾燥卵白が封入された包材が二酸化炭素透過性の高い包材である場合、その外側に二酸化炭素吸収剤を配置させて乾熱処理を行う方法が挙げられる。
二酸化炭素吸収剤の使用量が多いほど、乾燥卵白から放出された二酸化炭素を速やかに吸収させることができる。具体的には、乾熱処理温度等にもよるが、10kgの乾燥卵白に対して2000〜6000mLの吸収能を有する二酸化炭素吸収剤を使用すればよい。
第3の方法は、水分含量が高い状態に保持したまま、二酸化炭素のみを選択的に除去できる。このため、上述したように乾熱処理前の水分含量を適正な値に調整しておくことにより、第2の方法と同様にしなやかさ及びゲル強度を充分に改質することができて好ましい。
3.特徴
本実施形態に係る改質乾燥卵白およびその製造方法の特徴を説明するために、比較対照として、刊行物に記載された乾燥卵白について説明する。
(i)特許第2820385号公報に記載の乾燥卵白
例えば、特許第2820385号公報には、アルカリ性に調整した乾燥卵白を熱蔵庫等で加熱処理することにより、ゲル強度を改質した乾燥卵白が提案されている。しかしながら、前記公報記載の乾燥卵白では、加熱処理する乾燥卵白のpHが高い程、改質効果が得られ易いものの、pHを高くするためにアルカリ性の塩類を添加する必要があり、この場合、添加したアルカリ性の塩類が最終製品に残存するため、食品に添加した際に食味や物性の点で悪影響を与える場合がある。
また、特許第2820385号公報には、アルカリ性の乾燥卵白を加熱処理することにより、ゲル強度を改質する方法が開示されている。しかしながら、この方法は、加熱処理する乾燥卵白のpHが高い程、改質効果が得られ易いものの、pHを高くするためにアルカリ性の塩類を添加する必要があり、当該塩類により乾熱処理中にタンパク質が熱変性して不溶化するいわゆる煮えが生じ易くなる場合がある。
(ii)本実施形態に係る改質乾燥卵白およびその製造方法
これに対して、本実施形態に係る改質乾燥卵白およびその製造方法によれば、アルカリ性の塩類を添加してpHを上昇させるのではなく、乾熱処理により二酸化炭素を散失させてpHを上昇させることにより改質されているため、食品に添加した場合に食味や物性の点で悪影響を与えることがない。さらに、乾熱処理中にタンパク質が熱変性して不溶化しにくいため、保水性、ゲル強度、しなやかさが充分に改質される。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。たとえば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(たとえば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び結果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
上記のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。
4.実施例
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されない。
4.1.実施例1
殻付卵を割卵分離して得られた液卵白10kgにパン用酵母20gを添加し35℃で4時間脱糖処理を行った。次に、この脱糖液卵白を170℃で噴霧乾燥し乾燥卵白(pH10.0、水分含量7%)を得た。この乾燥卵白1kgと二酸化炭素吸収剤(二酸化炭素吸収能500mL、三菱ガス化学(株)製、商品名「エージレスC−500PS」)をアルミ袋(層構成と厚さは、外側からPET12μm、ナイロン15μm、アルミ7μm、CPP70μm)に充填密封した後、この包装体を75℃の恒温機に保存して75℃、2日間の乾熱処理を行い、実施例1の改質乾燥卵白を得た。
4.2.実施例2
殻付卵を割卵分離して得られた液卵白1000kgにパン用酵母2kgを添加し35℃で4時間脱糖処理を行った。次に、この脱糖液卵白を170℃で噴霧乾燥し乾燥卵白(pH10.0、水分含量7%)を得た。この乾燥卵白を10kgずつ厚み60μmのポリエチレン袋に充填密封し、これらの包装体を、庫内の加熱空気が換気されている庫内温度75℃の熱蔵庫に保存して75℃、14日間の乾熱処理を行い、実施例2の改質乾燥卵白を得た。なお、乾熱処理する際には、乾燥卵白の包装体を熱蔵庫内の金網でできた棚に一袋ずつ重ねずに並べ、各包装体の外表面の80%程度が庫内の加熱空気に接触した状態で乾熱処理した。
4.3.実施例3
殻付卵を割卵分離して得られた液卵白10kgに10%クエン酸溶液200gとパン用酵母20gを添加し35℃で4時間脱糖処理を行った。次に、この脱糖液卵白を170℃で噴霧乾燥し乾燥卵白(pH9.5、水分含量7%)を得た。この乾燥卵白1kgを厚み60μmのポリエチレン袋に充填密封した後、この包装体を75℃の恒温機に保存して定期的に恒温機内の加熱空気を換気しながら75℃、14日間の乾熱処理を行い、実施例3の改質乾燥卵白を得た。なお、乾燥卵白の包装体は、外表面の70%程度が恒温機内の加熱空気に接触した状態となるように静置して乾熱処理した。
4.4.実施例4
殻付卵を割卵分離して得られた液卵白10kgにパン用酵母20gを添加し35℃で4時間脱糖処理を行った。次に、この脱糖液卵白を170℃で噴霧乾燥し乾燥卵白(pH10.0、水分含量7%)を得た。この乾燥卵白をバットに厚さが1cmとなるように広げて入れ、これを加熱空気が換気されている乾燥機に保存して75℃、6時間の乾熱処理を行い、実施例4の改質乾燥卵白を得た。
4.5.比較例1
実施例1において、乾熱処理を行わない以外は実施例1と同様の方法で製して、比較例1の乾燥卵白を得た。
4.6.比較例2
実施例1において、25℃の恒温機で25℃、7日間の乾熱処理を行った以外は、実施例1と同様な方法で製して、比較例2の乾燥卵白を得た。
4.7.比較例3
実施例1において、アルミ袋に二酸化炭素吸収剤を封入しないで乾熱処理を行った以外は実施例1と同様な方法で製して、比較例3の乾燥卵白を得た。
4.8.比較例4
実施例2において、厚み60μmのポリエチレン袋に換えて厚み100μmのポリエチレン袋を用い、かつ更に、この乾燥卵白を充填密封したポリエチレン袋をクラフト袋に入れて乾熱処理を行った以外は実施例2と同様な方法で製して、比較例4の乾燥卵白を得た。
4.9.比較例5
実施例3において、脱糖処理前の10%クエン酸溶液の添加量を350gに増やした以外は実施例3と同様に脱糖処理後噴霧乾燥して乾燥卵白(pH7.2、水分含量7%)を得た。さらに、この乾燥卵白を、乾熱処理時間を、14日間から7日間に変えた以外は実施例3と同様に乾熱処理して、比較例5の乾燥卵白を得た。
4.10.比較例6
殻付卵を割卵分離して得られた液卵白10kgにパン用酵母20gを添加し35℃で4時間脱糖処理を行った。この脱糖処理液卵白に10%水酸化ナトリウム溶液を500g加えた後、170℃で噴霧乾燥し、乾燥卵白(pH10.8、水分含量7%)を得た。さらに、得られた乾燥卵白1kgを、二酸化炭素吸収剤を封入しない以外は、実施例1と同様にして乾熱処理を行った。つまり、この乾燥卵白をアルミ袋に充填密封した後、恒温機内で75℃、2日間の乾熱処理を行い比較例6の乾燥卵白を得た。得られた比較例6の乾燥卵白は煮えが生じていた。
4.11.試験例1−1
二酸化炭素濃度の測定方法を検証するために、実施例2で得られた改質乾燥卵白25gを250mL容量のバイアル瓶に密封して、75℃で12時間、24時間保存した後の前記バイアル瓶内の二酸化炭素濃度を測定した。また、同様にして、比較例4で得られた乾燥卵白25gを250mL容量のバイアル瓶に密封して、75℃で1時間、6時間、12時間、18時間、24時間保存した後のバイアル瓶内の二酸化炭素濃度を測定した。その結果を表1に示す。
表1に示すように、保存時間が長くなるにつれて二酸化炭素の濃度が増加したが、12時間を越えると二酸化炭素濃度はほぼ一定となった。したがって、二酸化炭素濃度の測定方法において、製品25gを250mL容量のバイアル瓶に密封して75℃で保存する時間を24時間にすることは、乾燥卵白中の二酸化炭素の含有量を測定するために有効であることが確認された。
Figure 2008086306
4.12.試験例1−2
二酸化炭素濃度の測定方法を検証するために、比較例1で得られた乾燥卵白25gを250mL容量のバイアル瓶に密封して、25℃、35℃、45℃、55℃、75℃、で24時間保存した後の前記バイアル瓶内の二酸化炭素濃度を上述の実施形態に記載された方法にて測定した。その結果を表2に示す。
下記表に示すように、保存温度が45℃未満であると、二酸化炭素が充分に放出されず、一方、保存温度が75℃であると、二酸化炭素が充分に放出することが理解できる。したがって、二酸化炭素濃度の測定方法において、製品25gを250mL容量のバイアル瓶に密封して24時間保存する際の温度を75℃にすることは、乾燥卵白中の二酸化炭素の含有量を測定するために有効であることが確認された。
Figure 2008086306
4.13.試験例1−3
二酸化炭素濃度の測定方法を検証するために、比較例4で得られた乾燥卵白25gを250mL容量のバイアル瓶に密封して75℃の恒温機で24時間保存した後、恒温機から20℃の室内に移動し、20秒後、40秒後、1分後、5分後、10分後の前記バイアル瓶内の二酸化炭素濃度を上述の実施形態に記載された方法にて測定した。その結果を下記の表3に示す。
下記の表に示すように、75℃で保存した後、20℃の室内に移動して、1分後、5分後、10分後と移動後の放置時間が長くなるにつれて、乾燥卵白に二酸化炭素が再び吸収され、バイアル瓶内の二酸化炭素濃度が低下したが、1分以内であれば、二酸化炭素濃度はほぼ一定となった。したがって、二酸化炭素濃度の測定方法において、製品25gを250mL容量のバイアル瓶に密封して75℃で24時間保存した後1分以内に二酸化炭素の濃度を測定することは、乾燥卵白中の二酸化炭素の含有量を測定するために有効であることが確認された。
Figure 2008086306
4.14.試験例2
実施例1〜4並びに比較例1〜5で得られた各乾燥卵白のpH、二酸化炭素濃度、水分含量、離水率、ゲル強度及び圧縮距離を、上述の実施形態に記載された方法にて測定した。その結果を表4に示す。
表4に示すように、実施例1〜4の改質乾燥卵白によれば、pHが9.5以上でかつ二酸化炭素濃度が1%以下であることにより、加熱凝固物の離水率が3%以下であり、保水性に優れていることが理解できる。中でも、水分含量が4%以上の状態で1日以上乾燥卵白を乾熱処理した実施例1〜3の改質乾燥卵白は、保水性に加えて、ゲル強度としなやかさの点からも優れていることが理解できる。
これに対して、比較例1〜5の乾燥卵白では、二酸化炭素濃度が1%以下であってもpHが9未満であるか、又はpHが9以上であっても二酸化炭素濃度が1%を超えるため、加熱凝固物の離水率が3%を超え、保水性およびゲル強度に劣り、しなやかさに欠けることが理解できる。
Figure 2008086306
4.15.試験例3
実施例2及び比較例4で得られた各乾燥卵白について、上記試験例2で二酸化炭素濃度及びpHを測定した後、25℃の大気中で3ヵ月間保存した後に、上記試験例2で行った方法と同様の方法にて二酸化炭素濃度及びpHを再び測定した。その結果を表5に示す。
表5に示すように、実施例2及び比較例4のいずれの乾燥卵白においても、25℃の大気中で3ヵ月間保存した前後では、二酸化炭素濃度はほとんど変わらなかった。
Figure 2008086306
4.16.試験例4
本試験例においては、乾熱処理温度を検討するために以下の試験を行った。
殻付卵を割卵分離して得られた液卵白1000kgにパン用酵母2kgを添加し35℃で4時間脱糖処理を行った後、この脱糖液卵白を170℃で噴霧乾燥し乾燥卵白(pH10.0、水分含量7%)を得た。次に、この乾燥卵白を1kgずつ厚み60μmのポリエチレン袋に充填密封した後、25、35、50、60、75、85℃の恒温機に包装体の外表面の70%程度が加熱空気に接触した状態となるように静置保存して、定期的に恒温機内の加熱空気を換気しながらそれぞれ10日間の乾熱処理を行い、各場合における乾熱処理後の乾燥卵白のpH、二酸化炭素濃度、離水率、ゲル強度及び圧縮距離を上述の実施形態に記載された方法にて測定した。その結果を表6に示す。
表6に示すように、乾熱処理温度が35℃以下であると、二酸化炭素が充分に放出されず、一方、乾熱処理温度が50℃以上であると二酸化炭素の充分に放出されることが理解できる。また、本試験例においては、乾熱処理後の乾燥卵白に煮えは発生しなかった。
Figure 2008086306
4.17.試験例5
本試験例においては、乾熱処理時間を検討するために以下の試験を行った。殻付卵を割卵分離して得られた液卵白1000kgにパン用酵母2kgを添加し35℃で4時間脱糖処理を行った後、この脱糖液卵白を170℃で噴霧乾燥し乾燥卵白(pH10.0、水分含量7%)を得た。次に、この乾燥卵白を1kgずつ厚み60μmのポリエチレン袋に充填密封した後、75℃の恒温機に包装体の外表面の70%程度が加熱空気に接触した状態となるように静置保存して、定期的に恒温機内の加熱空気を換気しながらそれぞれ0、7、14、21日間の乾熱処理を行い、各場合における乾熱処理後の乾燥卵白のpH、二酸化炭素濃度、水分含量、離水率、ゲル強度及び圧縮距離を上述の実施形態に記載された方法にて測定した。結果を表7に示す。
表7に示すように、乾熱処理時間が7日間、14日間、21日間と長くなるにつれて、保水性に加えて、ゲル強度としなやかさの点からも改質されることが理解できる。なお、乾熱処理時間が30日を越えると煮えが発生した。
Figure 2008086306
4.18.試験例6
本試験例においては、乾熱処理前の乾燥卵白のpHを検討するために以下の試験を行った。
殻付卵を割卵分離して得られた液卵白各10kgに、10%クエン酸溶液をそれぞれ0、270、300gずつとパン用酵母20gずつを添加し、35℃で4時間の脱糖処理をそれぞれ行った。次に、これらの脱糖液卵白を170℃の条件で噴霧乾燥して各乾燥卵白(水分含量7%)を得た。得られた乾燥卵白のpHはそれぞれ10.0、8.5、7.4であった。各乾燥卵白のpH及び二酸化炭素濃度を上述の実施形態に記載された方法にて測定した。その結果を表8に示す。
更に、これらの乾燥卵白を1kgずつ厚み60μmのポリエチレン袋に充填密封した後、これら包装体を75℃の恒温機に包装体の外表面の70%程度が加熱空気に接触した状態となるように静置保存して、定期的に恒温機内の加熱空気を換気しながらそれぞれ75℃、7日間の乾熱処理を行い、各場合における乾熱処理後の乾燥卵白のpH、二酸化炭素濃度、離水率、ゲル強度及び圧縮距離を同様に測定した。結果を表8に示す。
表8に示すように、乾熱処理前のpHが9以上である乾燥卵白は、乾熱処理前のpHが9未満である乾燥卵白に比べて、二酸化炭素濃度が顕著に高く、二酸化炭素含有量が多いことが理解できる。更に、乾熱処理前のpHが9以上である乾燥卵白は、二酸化炭素を除去しながら乾熱処理することにより、二酸化炭素含有量が大幅に低下してpHが上昇するのに対し、乾熱処理前のpHが9未満である乾燥卵白は、二酸化炭素を除去しながら乾熱処理しても、二酸化炭素含有量があまり変わらずpHもほとんど変化しないことが理解できる。
Figure 2008086306
4.19.試験例7(ハムの製造)
実施例2及び比較例5で得られた各乾燥卵白をそれぞれ配合した二種類のハムを以下のように製造して、保水性向上効果を評価した。まず、ミキサーに清水76.96部、乾燥卵白10部、食塩4部、デキストリン4部、上白糖3部、リン酸塩1部、発色剤0.04部、香辛料0.5部及びグルタミン酸ナトリウム0.5部を入れ、略均一となるように攪拌混合してピックル液を得た。次に、得られたピックル液60部及び豚挽肉100部を脱気ミキサーで充分に攪拌混合した後、折径60mmのナイロン製のケーシングに充填して70℃で40分間加熱してハムを得た。
続いて、これらのハムを一晩保存した後に以下のようにしてそれぞれ離水率を測定した。まず、全体の質量(g)を測定した後、ナイロンケーシングを開封し、ケーシング内面及びハム表面に付着した離水を拭き取りこの離水を拭き取った後のケーシング質量(g)とハム質量(g)を測定した。次に、これらの測定値から、下記の式により離水率(%)を計算した。
Figure 2008086306
表9に示す結果より、実施例2の改質乾燥卵白を配合したハムは、比較例5の乾燥卵白を配合したハムに比べて離水率が少なく、保水性向上効果に優れていることが理解できる。
Figure 2008086306
4.20.試験例8(中華麺の製造)
実施例1、2並びに比較例1、3、4、5で得られた各乾燥卵白を小麦粉100部に対して2部ずつ配合して常法により中華麺を試作し、食感改良効果を評価した。つまり、小麦粉(準強力粉)100部、食塩2部、かんすい1.5部、乾燥卵白2部及び清水35部を用意した。次に、麺用ミキサーに、小麦粉及び乾燥卵白を投入して充分に攪拌して粉体混合した後、更に攪拌しながら、食塩及びかんすいを清水に溶解した練り水をすこしずつ添加して均一になるまで充分に混捏して生地を得た。続いて、得られた生地を製麺機を用い、厚さ1mmに圧延した後、♯24角の切り刃により切り出して中華麺を得、これを90℃の湯で3分間茹でた後、65℃以上のスープに浸して食感を官能的に評価した。
なお、本試験例における評価は成人男女20人(男性:10人、女性:10人)による評価の平均であり、食感の評価は、弾力が強いものから順に「3点、2点、1点、0点」の4段階で行い、表10においては、平均点が2.5点以上のものを「S」、平均値が1.5点以上のものを「A」、平均値が0.5点以上のものを「B」、平均点が0.5点未満のものを「C」と示した。
表10に示す結果より、実施例1、2の改質乾燥卵白を配合した麺類は、食感改良効果が得られたことが理解できる。これに対して、比較例1、3、4、5の乾燥卵白を配合した麺類は食感改良効果がみられなかった。
Figure 2008086306
S:大変弾力が強くて好ましい。
A:やや弾力が弱いが問題のない程度である。
B:やや弾力が弱い。
C:弾力が弱い。
4.21.試験例9(冷凍お好み焼きの製造)
実施例2及び比較例5で得られた各乾燥卵白をそれぞれ配合した2種類の冷凍お好み焼きを以下のように製造して、冷凍変性防止効果を評価した。まず、だし汁140部、小麦粉120部、液全卵120部、すりおろした長芋4部、乾燥卵白4部をボールに入れ、泡立て器でだまがなくなるまで攪拌混合した後、キャベツの千切り130部を更に加えて攪拌混合して生地を得た。次に、得られた生地を200℃に熱して油を引いたホットプレートにて焼成し、お好み焼きを得た。続いて、得られたお好み焼きをポリエチレン製パウチに詰め−40℃にて急速凍結して冷凍お好み焼きを得た。
得られた冷凍お好み焼きを−20℃で1週間保管した後電子レンジ加熱して解凍して食したところ、比較例5の乾燥卵白を配合したお好み焼きは、離水のためにべたついた食感であったのに比べて、実施例2の改質乾燥卵白を配合したお好み焼きは、離水が防止されてべたついておらず、冷凍前の食感が維持されていた。
4.22.試験例10(クリームコロッケ用冷凍食品の製造)
実施例2及び比較例5で得られた各乾燥卵白をそれぞれ配合した2種類の冷凍クリームコロッケを以下のように製造して、冷凍変性防止効果を評価した。まず、攪拌装置付きのニーダーに牛乳78.5部、小麦粉10部、バター10部、乾燥卵白1部及び食塩0.5部を加えて攪拌しながら加熱してクリームコロッケの中種を得た。次に、得られたクリームコロッケの中種を25gずつ−40℃にて急速凍結した後、溶けないように注意しながらバッター液及びパン粉を表面に付け、再度、−40℃にて急速凍結しクリームコロッケ用冷凍食品を得た。
得られたクリームコロッケ用冷凍食品を−20℃で1週間保管した後165℃で5分間油ちょうしてクリームコロッケを得た。これを食したところ、実施例2の改質乾燥卵白を配合したクリームコロッケは、比較例5の乾燥卵白を配合したクリームコロッケに比べて、なめらかな冷凍前の食感が維持されていた。
4.23.試験例11(冷凍グラタンの製造)
実施例2及び比較例5で得られた各乾燥卵白をそれぞれ配合した2種類の冷凍グラタンを以下のように製造して、冷凍変性防止効果を評価した。まず、攪拌装置付きのニーダーに牛乳78.5部、小麦粉10部、バター10部、乾燥卵白1部及び食塩0.5部を加えて攪拌しながら加熱してホワイトソースを得た。次に、得られたホワイトソース250gとマカロニ100gを混合した後、耐熱皿に入れ、表面に粉チーズをふりかけた。これをオーブンで190℃で4分間焼成してグラタンを得た。続いて、得られたグラタンを−40℃にて急速凍結して冷凍グラタンを得た。
得られた冷凍グラタンを−20℃で1週間保管した後電子レンジ加熱して解凍して食したところ、実施例2の改質乾燥卵白を配合したグラタンは、比較例5の乾燥卵白を配合したグラタンに比べて、なめらかな冷凍前の食感が維持されていた。
4.24.試験例12(冷凍シュウマイの製造)
実施例2及び比較例5で得られた各乾燥卵白をそれぞれ配合した2種類の冷凍シュウマイを以下のように製造して、冷凍変性防止効果を評価した。まず、脱気ミキサーに豚挽肉1000部、乾燥卵白20部、酒20部、ごま油16部、食塩12部、砂糖6部、清水140部を投入して、充分に攪拌混合してシュウマイ種を得た。次に、このシュウマイ種をシュウマイ皮で包んで蒸してシュウマイを得た。続いて、得られたシュウマイを−40℃にて急速凍結して冷凍シュウマイを得た。
得られた冷凍シュウマイを−20℃で1週間保管した後電子レンジ加熱して解凍して食したところ、比較例5の乾燥卵白を配合したシュウマイは、ボソボソとした食感であったのに対し、実施例2の改質乾燥卵白を配合したシュウマイは、なめらかな冷凍前の食感が維持されていた。
4.25.試験例13(冷凍卵焼きの製造)
実施例2及び比較例5で得られた各乾燥卵白をそれぞれ配合した2種類の冷凍卵焼きを以下のように製造して、冷凍変性防止効果を評価した。まず、ミキサーに液全卵70部、砂糖8部、澱粉9部、乾燥卵白3部、食塩0.3部、みりん1部、醤油1部、だし汁22部を投入して、攪拌混合して卵混合液を得た。次に、卵混合液を鍋で焼成して卵焼きを得た。続いて、得られた卵焼きを−40℃にて急速凍結して冷凍卵焼きを得た後、ポリエチレン製パウチに詰めて−20℃の冷凍庫に保存した。
これらの冷凍卵焼き1ヵ月間保存した後に以下のようにしてそれぞれ離水率を測定した。まず、ポリエチレン製パウチに詰めた冷凍卵焼きを冷凍庫から出し、20℃の室内に置いて解凍した。この際、いずれの冷凍卵焼きもパウチ内面に離水は見られなかった。次に、それぞれの卵焼きを、3cm(縦)×9cm(横)×2cm(高さ)のサイズの直方体にカットし、この直方体の質量(A)を測定した。続いて、ろ紙を2枚重ね、この2枚重ねのろ紙上に、得られた直方体を高さが2cmとなるようにのせ、更にこの直方体の上にろ紙2枚をのせた。その上に200gの重り(底面が卵焼きの底面(3×9cm)の長方形よりも大きい重り)を、その重りの荷重が卵焼きの上面全体に均等にかかるようにのせ、30分間放置した後の直方体の質量(B)を測定した。次に、これらの測定値から、下記の式により離水率(%)を計算した。
Figure 2008086306
下記表11に示す結果より、実施例2の改質乾燥卵白を配合した冷凍卵焼きは、比較例5の乾燥卵白を配合した冷凍卵焼きに比べて離水率が少なく、冷凍変性防止効果に優れていることが理解できる。
Figure 2008086306
4.26.試験例14(茶碗蒸しの製造)
実施例2で得られた乾燥卵白を配合した茶碗蒸しを以下のように製造して、離水防止効果を評価した。まず、ミキサーに液全卵25部、澱粉2部、乾燥卵白2部、醤油1部、食塩0.3部、だし汁70部を投入して、攪拌混合して卵混合液を得た。次に、卵混合液を耐熱樹脂性成形容器に充填し、スチーマーで85℃で40分間加熱して茶碗蒸しを得た。また、対照として、乾燥卵白を配合しなかった他は同様にして茶碗蒸しを製造した。
得られた茶碗蒸しを5℃で3日保存した後、表面の離水の状態を評価したところ、実施例2の改質乾燥卵白を配合した茶碗蒸しは、乾燥卵白を配合していない対照の茶碗蒸しに比べて、表面の離水が防止されていた。
4.27.試験例15(魚肉ソーセージの製造)
実施例2で得られた乾燥卵白を配合した魚肉ソーセージを以下のように製造して、食感改良効果を評価した。まず、対照として以下のように魚肉ソーセージを製造した。つまり、冷凍すり身500gを擂潰機に投入して擂り潰し、続いて、食塩15部、澱粉90部、ラード50部、砂糖8部、グルタミン酸ナトリウム5部、香辛料2.5部、色素1部及び清水230部を順次加えて混合した。次に、この混合物を脱気処理した後、折径48mmのナイロン製のケーシングに充填して120℃で20分間加熱して魚肉ソーセージを得た。続いて、この対照配合の冷凍すり身の20%を実施例2で得られた乾燥卵白の水戻し液(乾燥卵白1部に対して清水7部を加えたもの)に置き換えた他は、対照と同様にして、魚肉ソーセージを製造した。
これらの魚肉ソーセージを1日保存した後にそれぞれゲル強度及び圧縮距離を測定した。下記表12に示す結果より、実施例2の改質乾燥卵白を配合した魚肉ソーセージは、改質乾燥卵白を配合していない対照品に比べてゲル強度が高く、圧縮距離が長いことから食感が改良されていることが理解できる。
なお、前記ゲル強度及び圧縮距離は、FUDOH RHEO METER NRM-2010J-CW((株)レオテック製)を用い、球形Φ5mmプランジャーを使用し、テーブル上昇速度6cm/分の条件で測定した値である。
Figure 2008086306
4.28.試験例16(蒲鉾の製造)
実施例2及び比較例5で得られた各乾燥卵白をそれぞれ配合した二種類の蒲鉾を以下のように製造して、食感改良効果を評価した。まず、冷凍すり身800部を擂潰機に投入して擂り潰し、続いて、食塩30部、澱粉70部、乾燥卵白25部、砂糖10部、グルタミン酸ナトリウム10部、みりん40部、及び清水775部を順次加えて混合した。次に、この混合物を脱気処理した後、折径60mmのナイロン製のケーシングに充填して90℃で30分間加熱して蒲鉾を得た。
これらの蒲鉾を10℃で1日保存した後にそれぞれゲル強度を測定した。下記表13に示す結果より、実施例2の改質乾燥卵白を配合した蒲鉾は、比較例5の乾燥卵白を配合した蒲鉾に比べてゲル強度が高く、食感が改良されていることが理解できる。
なお、前記ゲル強度は、試験例15と同様にして測定した値である。
Figure 2008086306

Claims (19)

  1. pHが9.5以上であり、製品25gを250mL容量のバイアル瓶に密封して75℃で24時間保存した後の前記バイアル瓶内の二酸化炭素濃度が1%以下である改質乾燥卵白。
  2. 製品1質量部に対して、7質量部の清水を加えて加熱凝固して得られる加熱凝固物の離水率が3%以下である請求項1記載の改質乾燥卵白。
  3. 製品1質量部に対して、7質量部の清水を加えて加熱凝固して得られる加熱凝固物のゲル強度が400g以上である請求項1又は2に記載の改質乾燥卵白。
  4. 製品1質量部に対して、7質量部の清水を加えて加熱凝固して得られる加熱凝固物の圧縮距離が10mm以上である請求項1乃至3のいずれかに記載の改質乾燥卵白。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載の改質乾燥卵白を含有する食品。
  6. 請求項1乃至4のいずれかに記載の改質乾燥卵白を含有する冷凍食品。
  7. 請求項1乃至4のいずれかに記載の改質乾燥卵白を含有する畜肉加工食品。
  8. 請求項1乃至4のいずれかに記載の改質乾燥卵白を含有する水産加工食品。
  9. 請求項1乃至4のいずれかに記載の改質乾燥卵白を含有する麺類。
  10. 請求項1乃至4のいずれかに記載の改質乾燥卵白を含有する卵加工食品。
  11. 乾燥後のpHが9以上となるように液卵白を乾燥処理して乾燥卵白を製する工程と、
    前記乾燥卵白中の二酸化炭素を散失させる工程と、
    を含む改質乾燥卵白の製造方法。
  12. 前記乾燥卵白中の二酸化炭素を散失させる工程によって、該乾燥卵白のpHを上昇させる請求項11記載の改質乾燥卵白の製造方法。
  13. 前記乾燥卵白中の二酸化炭素を散失させる工程が、該乾燥卵白を、該乾燥卵白から雰囲気中に放出される二酸化炭素を除去しながら、乾熱処理する工程である請求項11又は12記載の改質乾燥卵白の製造方法。
  14. 前記乾燥卵白中の二酸化炭素を散失させる工程によって、前記乾燥卵白中の二酸化炭素の濃度を1%以下にする請求項11乃至13のいずれかに記載の改質乾燥卵白の製造方法。
  15. 前記乾燥卵白中の二酸化炭素を散失させる工程によって、前記乾燥卵白のpHを9.5以上にする請求項11乃至14のいずれかに記載の改質乾燥卵白の製造方法。
  16. 前記乾熱処理の温度が45〜120℃である請求項13乃至15のいずれかに記載の改質乾燥卵白の製造方法。
  17. 前記乾熱処理は、前記乾燥卵白から放出された二酸化炭素を換気により除去しながら行われる請求項13乃至16のいずれかに記載の改質乾燥卵白の製造方法。
  18. 前記乾熱処理は、前記乾燥卵白から放出された二酸化炭素を二酸化炭素吸収剤に吸収させながら行われる請求項13乃至17のいずれかに記載の改質乾燥卵白の製造方法。
  19. 前記乾熱処理は、乾燥卵白の水分含量が4%以上の状態で1日以上行われる請求項13乃至18のいずれかに記載の改質乾燥卵白の製造方法。
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