JP2008082505A - ベルト式無断変速機用転がり軸受、及びベルト式無断変速機 - Google Patents

ベルト式無断変速機用転がり軸受、及びベルト式無断変速機 Download PDF

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徹 植田
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Abstract

【課題】接線力に起因する表面起点型はく離を防止すること。
【解決手段】外輪14の軌道面の平均粗さを0.08μm以上とした(外輪14の転動面を粗くした)。そのため、純転がりに近い運動をし、転動体16のすべりが抑制されるので、外輪14と転動体16との間の接線力が低下し、接線力に起因する表面起点型はく離を防止でき、ベルト式無断変速機用転がり軸受の寿命を向上することができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、自動車のベルト式無断変速機の回転軸を支持するためのベルト式無断変速機用転がり軸受に関する。
従来、この種の技術としては、外輪をベルト式無断変速機の変速機ケースの一部に内嵌固定し、内輪を入力側回転軸又は出力側回転軸に外嵌支持して、それら両回転軸を変速機ケースの内側に回転自在に支持する転がり軸受がある(例えば、特許文献1参照)。
また、一般に、ベルト式無断変速機の運転時には、各可動部にCVTフルードを供給して、それら各可動部及び転がり軸受を潤滑するようになっている。CVTフルードには、トルクコンバータ、歯車機構、油圧機構、湿式クラッチ等を円滑に作動させて動力を伝達するためにトラクション係数の高い(例えば、0.09以上)潤滑油が用いられる。
特開2003−336703号公報
しかしながら、上記従来の技術にあっては、トラクション係数の高い潤滑油を用いているため、ベルト式無断変速機に使用される転がり軸受は、内外輪と転動体との間に作用する接線力(トラクション)が増大し、表面起点型のはく離寿命が短くなる恐れがあった。
本発明は、上記従来技術の未解決の課題を解決することを目的とするものであって、表面起点型はく離寿命を向上可能なベルト式無断変速機用転がり軸受を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明に係るベルト式無断変速機用転がり軸受は、内周面に軌道面を有する外輪と、外周面に軌道面を有する内輪と、その外輪の軌道面と内輪の軌道面との間に回転自在に配された複数の転動体と、を備え、前記外輪を固定の部分に内嵌支持し、前記内輪をベルト式無断変速機を構成するプーリと共に回転する部分に外嵌支持して、前記プーリを前記固定の部分に回転自在に支持するベルト式無断変速機用転がり軸受であって、前記外輪の軌道面の平均粗さが0.08μm以上で且つ0.5μm以下であることを特徴とする。
なお、前記転動体の転動面の平均粗さは、0.03μm以下であってもよい。
一方、本発明に係るベルト無断変速機にあっては、前記請求項1又は2に記載のベルト式無断変速機用転がり軸受を備えたことを特徴とする。
このような構成によれば、転動体のすべりを抑制することができ、CVTフルードのトラクション係数が高くても(例えば、0.09以上であっても)、内外輪と転動体との間の接線力を低下し、表面起点型はく離寿命を向上することができる。
以下、本発明ベルト式無断変速機用転がり軸受を、ベルト式無断変速機に適用した場合の実施形態を図面に基づいて説明する。
<ベルト式無断変速機の構成>
ベルト式無断変速機は、図1に示すように、入力側機構1、出力側機構2及び無端ベルト3を含んで構成される。
入力側機構1は、両端が1対の転がり軸受4、4によって回転自在に支持され、エンジン等の駆動源5により、トルクコンバータ等の発進クラッチ6を介して回転駆動される入力側回転軸7と、入力側回転軸7の中間部で1対の転がり軸受4、4の間に位置する部分に設けられた駆動側プーリ8と、駆動側プーリ8の溝幅を拡張可能な駆動側アクチュエータ9と、を含んで構成される。
また、出力側機構2は、両端が1対の転がり軸受10、10によって回転自在に支持された出力側回転軸11と、出力側回転軸11の中間部で1対の転がり軸受10、10の間に位置する部分に設けられた従動側プーリ12と、従動側プーリ12の溝幅を拡張可能な従動側アクチュエータ13と、を含んで構成される。
無端ベルト3は、駆動側プーリ8と従動側プーリ12とに掛け渡され、駆動源5から発進クラッチ6及び入力側回転軸7を介して駆動側プーリ8に伝達された動力を従動側プーリ12(出力側回転軸11)に伝達する。
転がり軸受4、10は、図2に示すように、内周面に軌道面を有する外輪14と、外周面に軌道面を有する内輪15と、その外輪14の軌道面と内輪15の軌道面との間に回転自在に配された複数の転動体16と、を含んで構成される。
そして、転がり軸受4、10は、外輪14をベルト式無断変速機の変速機ケースの一部に内嵌固定し、内輪15を入力側回転軸7又は出力側回転軸11に外嵌支持して、それら両回転軸7、11を変速機ケースの内側に回転自在に支持する。
また、外輪14の転道面の平均粗さRaは、0.08μm≦Ra≦0.5μmとした。
さらに、転動体16の転動面の平均粗さRaは、Ra≦0.03μmとした。
また、ベルト式無断変速機の運転時には、各可動部(入力側機構1、出力側機構2、無端ベルト3)にCVTフルード(トラクション係数が0.09以上の潤滑油)を供給して、それら各可動部及び転がり軸受4、10を潤滑するようにした。
<転がり軸受の作用・効果>
このように、本実施形態のベルト式無断変速機用転がり軸受及びベルト式無断変速機は、外輪14の軌道面の平均粗さを0.08μm以上、好ましくは0.10μm以上とした(外輪14の転動面を粗くした)。そのため、純転がりに近い運動をし、転動体16のすべりが抑制されるので、外輪14と転動体16との間の接線力が低下し、CVTフルードのトラクション係数が高くても(0.09以上でも)、接線力に起因する表面起点型はく離を防止でき、ベルト式無断変速機用転がり軸受の寿命を向上することができる。
即ち、一般に、外輪14の軌道面が粗くなると、外輪14と転動体16との間の接線力が大きくなり、表面起点型はく離寿命が短くなると考えてしまいがちであるが、駆動側の表面粗さが表面起点型はく離寿命に及ぼす影響は小さいため、高面圧位置で駆動側となる外輪14及び内輪15の表面粗さを大きくしても、表面起点型はく離寿命は短くならない。
また、外輪14の軌道面が粗いので、非負荷圏にあっては、遠心力による転動体16の外輪14の軌道面への押しつけによって、転動体16の転動面と外輪14の軌道面との間に転動体16を自転させようとする力を働かせ、転動体16の自転速度を向上できる。そのため、荷重負荷圏と非負荷圏とで転動体16の自転速度の差を低減し、転動体16の自転すべりを小さくして、接線力を低減し、表面起点型はく離寿命を向上できる。
ちなみに、外輪14の軌道面の平均粗さを0.08より小さくする(軌道面を滑らかとする)方法では、入力側回転軸7及び出力側回転軸11(内輪15)の回転数が一定であると、荷重負荷圏に比べ、非負荷圏での転動体16の自転速度が遅くなるので、転動体16がすべってしまい、外輪14と転動体16との接線力が増大し、転動体16の自転速度の低下が大きい場合には、表面起点型はく離寿命が短くなる恐れがある。
さらに、負荷圏にあっても、入力側回転軸7及び出力側回転軸11が停止している状態から、それら回転軸7、11が回転を開始し、転動体16が自転・公転運動を開始したときに、転動体16の転動面と外輪14の軌道面との間に転動体16を自転させようとする力を働かせ、転動体16の自転速度を向上できる。そのため、転動体16の周速が外輪14の周速及び内輪15の周速に近い状態に達するまでに要する時間を短縮し、転動体16の自転すべりを小さくして、接線力を低減し、表面起点型はく離寿命を向上できる。
ちなみに、外輪14の軌道面の平均粗さを0.08より小さくする方法では、自動車が停止している状態から始動するときに、入力側回転軸7及び出力側回転軸11が回転を開始すると、転動体16も自転・公転運動を開始するが、転動体16の周速が外輪14の周速及び内輪15の周速に近い状態に達するまでに多くの時間がかかり、その間に外輪14と転動体16との速度差を生じるので、転動体16がすべりってしまい、外輪14と転動体16との接線力が増大し、表面起点型はく離寿命が短くなる恐れがある。
また、外輪14の転動面の平均粗さを0.5μm以下としたため、外輪14の軌道面の軌道面が粗すぎることによる発熱を低減でき、焼き付きを防止することができる。
また、転動体16の転動面の平均粗さを0.03μm以下、好ましくは0.01μm以下とした(転動体転動面を滑らかにした)。そのため、外輪14及び内輪15と転動体16との接線力を低減し、表面起点型はく離をより確実に防止することができる。
即ち、荷重負荷圏にあっては、外輪14及び内輪15と転動体16との接触に着目すると、玉軸受や自動調心ころ軸受では接触楕円中心部の面圧の高い領域において転動体16の周速は外輪14の周速及び内輪15の周速よりも速くなる。つまり、転動体16が駆動側となり、外輪14及び内輪15が従動側となる。
また、同様に、円すいころ軸受や円筒ころ軸受では、理論的には転動体16のすべりは0となり、純転がりをするが、エッジロード型のはく離を防止するためのクラウニングをころ端面に設けた場合には、接触域中央部で転動体16が駆動側となり、外輪14及び内輪15が従動側となる。
そして、表面起点型はく離は、従動側で生じやすいため、表面起点型はく離寿命に駆動側の表面粗さが顕著な影響を及ぼし、転がり軸受の荷重負荷圏において駆動側となる転動体16の表面粗さが小さいほど表面起点型のはく離寿命は向上する。なお、面圧の高い領域で従動側である外輪14及び内輪15の表面粗さは、表面起点型はく離の寿命にほとんど関係しない。
<実施例>
次に、外輪14の軌道面の平均粗さ、内輪15の軌道面の平均粗さ、及び転動体16の転動面の平均粗さの組み合わせが異なる複数のベルト式無断変速機用転がり軸受(上記実施形態のベルト式無断変速機用転がり軸受)それぞれについて表面起点型はく離寿命を計測した試験(寿命試験)の試験結果を図面に基づいて説明する。
この寿命試験では、試験対象(図3の実施例1〜21、比較例1〜3)として、外輪14、内輪15、転動体16それぞれの材質が高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)である深溝玉軸受6206に、830℃〜850℃のRxガス雰囲気で焼き入れした後、180℃〜240℃の焼き戻しを行ったものを用いた。
また、潤滑油として、CVTフルードNS2に、硬さHV870、サイズ74〜147μmの異物を0.05g混入したものを用い、さらに、試験条件を、試験荷重:Fr=6.4kN、回転数:0(3sec)←→3000min-1(30sec)とした。
そして、図3〜6に示すように、各試験対象それぞれについて、サンプルn=12として表面起点型はく離が発生するまでの時間を調べ、それら時間のワイブルプロットを作成し、ワイブル分布の結果からL10寿命を算出し、その算出結果を比較例1の値(最も短寿命であった実験結果)を「1」としたときの比の値(L10寿命比)を算出した。
なお、表面粗さの測定には、Taylor Hobson製フォームタリサーフを用いた。
この図3〜6より、外輪14の軌道面の平均粗さが0〜0.08μmの範囲では平均粗さが大きくなるほど(外輪14の軌道面が粗くなるほど)L10寿命比が向上し、外輪14の軌道面の平均粗さが0.08μm以上となると寿命比が飽和することがわかる。
また、同様に、内輪15の軌道面の平均粗さが0〜0.08μmの範囲では平均粗さが大きくなるほど(内輪15の軌道面が粗くなるほど)L10寿命比が長くなり、内輪15の軌道面の平均粗さが0.08μm以上となると寿命比が飽和することがわかる。
また、転動体16の転動面の平均粗さが0.03μmより大きい範囲では平均粗さが小さくなるほど(転動体16の転動面が滑らかになるほど)L10寿命比が長くなり、転動体16の転動面の平均粗さが0.03μm以下でL10寿命比が飽和することがわかる。
なお、この実施例では、外輪14、内輪15、転動体16をSUJ2で形成する例を示したが、外輪14の軌道面、内輪15の軌道面、転動体16の転動面の表面硬さがHRC>55であれば、どのような素材であっても同様の効果を得ることができる。
ベルト式無断変速機の概略構成を示す構成図である。 図1の転がり軸受を拡大して示す要部拡大図である。 寿命試験の試験結果を示す一覧表である。 外輪粗さと寿命との関係を説明するための説明図である。 内輪粗さと寿命との関係を説明するための説明図である。 転動体転動面粗さと寿命との関係を説明するための説明図である。
符号の説明
1は入力側機構、2は出力側機構、3は無端ベルト、4及び10は転がり軸受、5は駆動源、6は発進クラッチ、7は入力側回転軸、8は駆動側プーリ、9は駆動側アクチュエータ、11は出力側回転軸、12は従動側プーリ、13は従動側アクチュエータ、14は外輪、15は内輪、16は転動体

Claims (3)

  1. 内周面に軌道面を有する外輪と、外周面に軌道面を有する内輪と、その外輪の軌道面と内輪の軌道面との間に回転自在に配された複数の転動体と、を備え、
    前記外輪を固定の部分に内嵌支持し、前記内輪をベルト式無断変速機を構成するプーリと共に回転する部分に外嵌支持して、前記プーリを前記固定の部分に回転自在に支持するベルト式無断変速機用転がり軸受であって、
    前記外輪の軌道面の平均粗さが0.08μm以上で且つ0.5μm以下であることを特徴とするベルト式無断変速機用転がり軸受。
  2. 前記転動体の転動面の平均粗さが0.03μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の転がりベルト式無断変速機用転がり軸受。
  3. 前記請求項1又は2に記載のベルト式無断変速機用転がり軸受を備えたことを特徴とするベルト式無断変速機。
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