JP2008082352A - 車輪用軸受 - Google Patents

Abstract

【課題】密封装置周りの改良により軸方向寸法を小さくできるようにした車輪用軸受を提供すること。
【解決手段】本発明に係る車輪用軸受は、車輪を取り付けるフランジ２１と外輪部材１の端面との間をラビリンス隙間１０とする。また、外輪部材１のフランジ２１側の端部における内周面に周溝１２を形成する。さらに、環状空間４のフランジ２１側の端部に取り付ける密封装置６は、芯金６１にシール部材６２を一体成型した単一のシール環体とし、シール部材６２の外周側に周溝１２に圧入される圧入部６２ａを形成し、内周側に内輪部材２の外周面とフランジ２１の側面とを接続する曲面部２４に摺接する内周リップ６２ｂを形成する。このようにすることにより、フランジ２１と外輪部材１の端面との間をラビリンス隙間１０として小さくすることができ、加えて密封装置６の軸方向寸法を小さくすることができる。
【選択図】図１

Description

本発明は、外輪部材と内輪部材との間に形成される環状空間の両端部に密封装置を設けた車輪用軸受に関し、特に、外輪部材が車体に固定され、内輪部材が車輪を取り付けるためのフランジを有し、このフランジと外輪部材の側面とが対向する側の密封装置周りの構造に関する。

自動車の車輪を支持する駆動軸用の車輪用軸受の多くは、例えば特許文献１に記載されたようなものであって、図２に示すような複列転がり軸受の構造を有する。すなわち、同図に示すように、多くの駆動軸用の車輪用軸受は、図示しない車体に固定される外輪部材１と図示しない車輪を取り付けるフランジ２１が形成された内輪部材２とを有する。そして内輪部材２の軸孔２２には、バーフィールド型の等速ジョイント３がスプライン嵌合により取り付けられている。したがって、外輪部材１は固定状態であり、内輪部材２は図示しない駆動軸及び車輪とともに回転する状態となっている。

また、外輪部材１と内輪部材２との間に環状空間４が形成され、この環状空間４には保持器５１により保持される転動体５が介装されている。また、環状空間４の両端部には環状空間４を密封する密封装置６，７が設けられている。なお、外輪部材１には、車体に連結するためのフランジ１１が形成され、内輪部材２には、前述のフランジ２１がアウトボード側に形成される他、インナーボード側端部には、一方の転動体５の軌道面を構成する内輪２３が嵌合固定されている。

前記フランジ２１は、外輪部材１のアウトボー側端部よりさらにアウトボード側に突出した位置にあり、この外輪部材１の端部外周よりもさらに径方向外方に突出した形状を成している。したがって、外輪部材１のアウトボード側の端面はフランジ２１の側面と対向する状態に設置されている。なお、フランジ２１の側面と内輪部材２の環状空間４を形成する外周面とは断面円弧状の曲面部２４により接続されている。

このように形成される車輪用軸受において、アウトボード側の密封装置６は、図３に示すように、二つのラジアルシールリップ１６１ａ，１６１ｂと一つのアキシャルシールリップ１６１ｃとを備えたシール部材１６１が環状の芯金１６２に対し一体的に形成されたシールリング単体からなる。芯金１６２は、外周側縁部に外輪部材１の内周面に対し圧入により嵌合固定される、軸方向に所定の長さの円筒部１６２ａを有する。そして、この円筒部１６２ａのアウトボード側端部には、径方向内方（内輪部材２の方向）に延びるフランジ部１６２ｂが形成されている。また、フランジ部１６２ｂの内周側縁部１６２ｃは、環状空間４の内部へ折曲し、その先端が径方向内方にさらに延びる形状に形成されている。また、シール部材１６１を構成する二つのラジアルシールリップ１６１ａ，１６１ｂは、内周側縁部１６２ｃの内周側先端付近から、内輪部材２の外周面に摺接するように形成されている。同じくシール部材１６１を構成するアキシャルシールリップ１６１ｃは、フランジ部１６２ｂの内周側近傍からフランジ１１の側面に向けて、かつ径方向外方に向けて延びるように形成されている。

この密封装置６においては、フランジ１１の側面と外輪部材１の端面との隙間から雨水、泥水、塵埃等の異物が侵入するが、この異物はアキシャルシールリップ１６１ｃと環状空間４のフランジ２１側（外側）に配置されるラジアルシールリップ１６１ａとの２段構えで侵入防止されている。また、環状空間４内に封入されるグリースは、環状空間４のフランジ２１の反対側（内側）に配置されるラジアルシールリップ１６１ｂにより漏洩防止されるように構成されている。

なお、上記車両用軸受のインナーボード側の密封装置７については詳しくは説明しないが従来よく用いられているシールリップ付きのシールリングと金属環のみから成るスリンガとを組み合わせたパックシールが用いられている。
特開２００２−３９１９５号公報

しかしながら、上述の車輪用軸受においては、軸方向の長さをコンパクト化する点についてなお改善の余地が残されていた。すなわち、二つのラジアルシールリップ１６１ａ，１６１ｂは、略軸方向と平行な内輪部材２の外周面に摺接するように形成されていた、このため、フランジ２１の側面と外輪部材１のアウトボード側端面との間の距離が大きくなっていた。また、従来の車輪用軸受においては、密封装置６の芯金１６２の円筒部１６２ａが外輪部材１の内周面に圧入固定されるため、所定の軸方向長さを必要としていた。このため、密封装置６の軸方向の長さが大きくなる傾向にあった。このような結果、外輪部材１のアウトボード側端面から転動体５までの距離が大きくなっていた。

本発明は、このような従来技術に存する問題点に鑑み成されたものであって、車輪を取り付けるフランジが形成される側の密封装置周りの改良により軸方向寸法を小さくできるようにした車輪用軸受を提供することを目的とする。

本発明に係る車輪用軸受は、車体に取り付けられる外輪部材と、この外輪部材に転動体を介して軸心回りに回転可能に支持される内輪部材とを有する。また、内輪部材には外輪部材の端部より軸心方向に突出した位置において外輪部材の外周より径方向外方に突出するフランジが形成されるとともに、フランジの側面と内輪の外周面とは曲面部で接続されている。さらに、外輪部材と内輪部材との間には環状空間が形成され、この環状空間の両端には密封装置が配置されている。そして、本発明に係る車輪用軸受は、このような構成において、前記外輪部材の前記フランジ側の端部の内周面に周溝が形成されている。また、前記フランジ側の端部に配置された密封装置は、芯金にシール部材を一体成型した単一のシール環体とし、シール部材の外周側に前記周溝に圧入されて嵌合固定される圧入部が形成されるとともに、シール部材の内周側に前記曲面部に摺接する内周リップが形成されている。そして、前記外輪部材と内輪部材とは、前記フランジの側面と前記外輪部材の端面との間にラビリンス隙間を形成するように構成されていることを特徴とする。

上記のように構成された本発明に係る車輪用軸受によれば、車輪を取り付けるフランジが形成された側の密封装置が、芯金にシール部材を一体成型した単一のシール環体とし、シール部材の外周側に形成された圧入部が前記周溝に圧入により嵌合固定される構造としているので、従来のように外輪部材の内周面に嵌合固定される円筒部を用いる必要がない。したがって、円筒部に必要とする軸方向長さが節約され、車輪用軸受の軸方向寸法を小さくすることが可能となる。また、内周リップがフランジと内輪部材の外周面とを接続する曲面部に摺接するようにしているので、フランジの側面と外輪部材の端面との間をラビリンス隙間として構成することが可能になるとともに、環状空間の端面から転動体までの距離を小さくすることが可能になった。このように、本発明に車輪用軸受によれば、フランジの側面と外輪部材の端面との間をラビリンス隙間として構成することと、これに加えて、密封装置の軸方向寸法及び環状空間の端面から転動体までの距離が小さくなることにより、車輪用軸受の軸方向寸法を小さくすることが可能となる。また、上記のように構成された車輪用軸受においては、外部からの雨水、泥水、塵埃などの異物の侵入は、概ね前記フランジの側面と前記外輪部材の端面との間に形成されるラビリンス隙間により防止される。また、このラビリンス隙間を通過して侵入した異物は、密封装置を形成する環状空間の外側のラジアルシールリップにより防止される。

また、前記芯金は、径方向に延びる平板状の中心部と、この中心部の外周側に一体的に形成されるものであって、前記周溝の径方向内方において周溝に対向するように環状空間の軸方向内部側へ折曲する外縁部とを備えている。さらに、前記芯金は、中心部の内周側に一体的に形成されるものであって、前記外縁部と同方向に折曲し、その先端を、軸方向における周溝の内側壁面付近で径方向内方にさらに折曲した内縁部を備えているものとすることが好ましい。このように構成すると、芯金の外縁部により圧入部の剛性が強化されるので、密封装置の軸方向長さをより小さくすることが可能となる。また、芯金が所定間隔の環状空間の中で軸方向に複数屈曲するように形成されているので、芯金の剛性を大きくすることができるとともに、芯金とシール部材との一体密着性を向上させることが可能となる。

また、本発明は、複列の車輪用軸受に適用することができる。この場合には、軸方向寸法を小さくすることに代えて転動体の球心間距離を大きくすることができる。このようにすれば、荷重が作用する作用点間距離を大きくすることができ、軸受の剛性を向上させることができる。

本発明によれば、フランジの側面と前記外輪部材の端面との間の寸法が小さくすることが可能となるとともに、密封装置に要する軸方向長さも小さくすることが可能となる。これにより、車輪用軸受の軸方向長さを小さくすることが可能となる。また、本発明が複列の車輪用軸受に適用される場合は、軸方向寸法を小さくすることに代えて転動体の球心間距離を大きくして、軸受の剛性を向上させることができる。

以下、本発明の実施の形態について説明する。図１は、本実施の形態に係る密封装置周りの拡大図である。本実施の形態に係る車輪用軸受は、全体的な基本構成は図２に記載の車輪用軸受と同一であるが、車輪を取り付けるフランジ２１側の密封装置周りが図１に記載のように構成される。以下この点を中心に説明するが、図２と共通する部分については図２に従い説明する。

本実施の形態に係る車輪用軸受は、基本構造は図２に記載のものと同一であって、車体に取り付けられる外輪部材１と、この外輪部材１に転動体５を介して軸心回りに回転可能に支持される内輪部材２とを有している。また、内輪部材２には外輪部材１の端部より軸心方向に突出した位置において外輪部材１の外周より径方向外方に突出するフランジ２１が形成されるとともに、フランジ２１の側面と内輪部材２の外周面とは円弧状の曲面部２４で接続されている。さらに、外輪部材１と内輪部材２との間には環状空間４が形成され、この環状空間４の両端には密封装置６，７が配置されている。

そして、このような構成において、図１に示すように、外輪部材１のフランジ２１側の端部の内周面には周溝１２が形成されている。前記フランジ２１側の端部に配置された密封装置６は、芯金６１にシール部材６２を一体成型した単一のシール環体としている。芯金６１は、ステンレス製等の優れた耐食性を有する金属板に対しプレス加工による打ち抜き、折り曲げ及び切削加工を施すことにより製作されたものであって、次のように中心部６１ａ、中心部６１ａの外周側に一体的に形成される外縁部６１ｂ、及び、中心部６１ａの内周側に一体的に形成される内縁部６１ｃを備えている。中心部６１ａは、径方向に延びる平板状に形成されている。外縁部６１ｂは、周溝１２の径方向内方において周溝１２に対向するように環状空間４の軸方向内部側へ折曲するように形成されている。この折り曲げ長さは周溝１２の幅寸法と略同一である。内縁部６１ｃは、中心部６１ａの内周側から外縁部６１ｂと略同一方向に折曲し、その先端を、周溝１２の軸方向内側の壁面付近で径方向内方にさらに折曲するように形成されている。

シール部材６２は、二トリルゴム、アクリルゴム、シリコンゴム、その他の弾性材料から構成されるものであって、焼付け等により芯金６１に一体成型されている。シール部材６２の外周側部分には、外輪部材１の周溝１２に嵌合固定される圧入部６２ａが形成されている。また、シール部材６２の内周側部分には、芯金６１の内縁部６１ｃの先端部を内包する部分から軸方向に分岐して二つの内周リップ６２ｂ，６２ｃが形成されている。フランジ２１側の内周リップ６２ｂは曲面部２４に摺接するように形成され、フランジ２１の反対側（すなわち、環状空間４の内部側）に内周部材の外周面に摺接する内周リップ６２ｃが形成されている。フランジ２１側の内周リップ６２ｂは、その先端縁が曲面部２４の表面に沿ってフランジ２１側を向くように圧接されている。また、フランジ２１の反対側の内周リップ６２ｃは、その先端縁が環状空間４の内部を向くように圧接されている。また、シール部材６２のフランジ２１側の側面には突部６２ｄが形成されている。この突部６２ｄは、密封装置６を積み重ねて保管される場合に、密接するシール部材６２同士が広い面積で密着して相互間の分離性が悪化することを防止するためのものである。

そして、外輪部材１の端部及び密封装置６が上記のように形成されることにより、フランジ２１の側面と外輪部材１の端面との間の隙間を小さくしてラビリンス隙間１０として形成されている。

上記のように構成される本実施の形態に係る車輪用軸受によれば、次のような作用効果を奏することができる。
本実施の形態に係る密封装置６は、芯金６１にシール部材６２を一体成型した単一のシール環体とし、シール部材６２の外周側に形成された圧入部６２ａが周溝１２に圧入により嵌合固定される構造とされているので、従来のように外輪部材１の内周面に嵌合固定される円筒部を用いる必要がない。したがって、円筒部を取り付けるために必要とする軸方向長さが節約され、車輪用軸受の軸方向寸法を小さくすることが可能となる。

さらに、内周リップ６２ｂ，６２ｃがフランジ２１と内輪部材２の外周面とを接続する曲面部２４に摺接するようにしているので、フランジ２１の側面と外輪部材１の端面との間をラビリンス隙間１０として構成することが可能になるとともに、環状空間４の端面から転動体５までの距離を小さくすることが可能になった。

フランジ２１の側面と外輪部材１の端面との間をラビリンス隙間１０として構成することと、これに加えて、密封装置６の軸方向寸法及び環状空間４の端面から転動体５までの距離が小さくなることにより、車輪用軸受の軸方向寸法を小さくすることが可能となる。

また、上記のように構成された車輪用軸受においては、フランジ２１の側面と外輪部材１の端面との間にラビリンス隙間１０が形成されているので、雨水、泥水、塵埃等の外部の異物は先ずここで侵入が防止される。また、このラビリンス隙間１０を通過して侵入した異物は、フランジ２１側の内周リップ６２ｂにより防止される。また、環状空間４内に封入されるグリースは、フランジ２１の反対側の内周リップ６２ｃにより漏洩防止される。

また、芯金６１は、環状空間４の内部で軸方向に複数回屈曲する形状に形成されているので、軸方向寸法を抑制しながら芯金６１の剛性を大きくすることができる。また、このように構成することにより芯金６１とシール部材６２との接触面積を大きくすることができるので、芯金６１とシール部材６２との一体密着性が向上する。

また、本実施の形態のように車輪用軸受が複列軸受の場合には、軸方向寸法を小さくすることに代えて、転動体５の球心間距離を大きくすることにより、荷重が作用する作用点間距離を大きくして軸受の剛性を向上させることができる。

上記実施の形態に係る車輪用軸受は、次のように変形することができる。
（１）上記シール部材６２には、フランジ２１の側面に摺接するサイドリップが形成されていないが、サイドリップを付加することによりシール性能を向上させるように構成してもよい。

（２）前述の実施の形態において、内輪部材２は、１個の内輪２３を設けたものとしているが、これに限定されるものではなく、両転動体５を受ける２個の内輪を使用したものとすることもできる。

上記実施の形態は、複列スラスト玉軸受について説明したが、本密封装置６はこのような軸受に限定されるものではない。例えば、複列ラジアル玉軸受としてもよく、また、ラジアルころ軸受、スラストころ軸受などの転がり軸受全般に使用することができる。

本発明の実施の形態に係る車輪用軸受の密封装置周りの断面図である。 一般の駆動軸側車輪用軸受の断面図である。 従来の車輪用軸受の密封装置周りの断面図である。

符号の説明

１…外輪部材、２…内輪部材、４…環状空間、５…転動体、６，７…密封装置、１０…ラビリンス隙間、１２…周溝、２１…フランジ、２４…曲面部、６１…芯金、６１ａ…中心部、６１ｂ…外縁部、６１ｃ…内縁部、６２…シール部材、６２ａ…圧入部、６２ｂ，６２ｃ…内周リップ。

Claims (3)

1. 車体に取り付けられる外輪部材と、この外輪部材に転動体を介して軸心回りに回転可能に支持される内輪部材とを有し、内輪部材には外輪部材の端部より軸心方向に突出した位置において外輪部材の外周より径方向外方に突出するフランジが形成されるとともに、フランジの側面と内輪部材の外周面とは曲面部で接続され、さらに、外輪部材と内輪部材との間には環状空間が形成され、この環状空間の両端には密封装置が配置された車輪用軸受であって、
   前記外輪部材の前記フランジ側の端部の内周面に周溝が形成され、
   前記フランジ側の端部に配置された密封装置は、芯金にシール部材を一体成型した単一のシール環体とし、シール部材の外周側に前記周溝に圧入されて嵌合固定される圧入部が形成されるとともに、シール部材の内周側に前記曲面部に摺接する内周リップが形成され、
   さらに、前記外輪部材と内輪部材とは、前記フランジの側面と前記外輪部材の端面との間にラビリンス隙間を形成するように構成されている
   ことを特徴とする車輪用軸受。
2. 前記芯金は、径方向に延びる平板状の中心部と、この中心部の外周側に一体的に形成されるものであって、前記周溝の径方向内方において周溝に対向するように環状空間の軸方向内部側へ折曲する外縁部と、中心部の内周側に一体的に形成されるものであって、前記外縁部と同方向に折曲し、その先端を軸方向における周溝の内側壁面付近で径方向内方にさらに折曲した内縁部とを備えていることを特徴とする請求項１記載の車輪用軸受。
3. 前記転動体が複列に配置されていることを特徴とする請求項１又は２記載の車輪用軸受。

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