JP2008082212A - 送風ファン - Google Patents

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Abstract

【課題】厚みが薄く、回転に伴ってバランスウエイトが離脱しない送風ファン
【解決手段】ハブ22の上端部には、環状部221が径方向内方に向けて突設されている。環状部221には、バランスクリップ40が取り付けられている。バランスクリップ40は、図2に示されているようにコの字形状に形成されている。環状部221とロータホルダ31の軸方向間隙50を一定に確保する必要がある。このため、環状部221の下面に複数の台座2213が周方向に等配されている。ロータホルダ31が台座2213に当接するまで、圧入される。バランスクリップ40を環状部221に取り付けた際に、バランスクリップ40がハブ22上端面から突出しないように、ハブ22上端面よりも環状部221上端面の方が低くなるように形成される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、送風ファンの回転アンバランス修正に関するものである。
現在、電子機器には、電子機器内で発生する熱を放熱するために多くの冷却用の送風ファンが取り付けられている。近年の電子機器は高性能化に伴い発熱量が増加の一途を辿っており送風ファンに要求される冷却特性は高まっている。送風ファンの冷却特性を向上させるには、風量特性及び静圧特性を高める必要がある。この両者を高めるためには送風ファンを高速回転にて駆動する必要がある。その一方で、多くの電子機器は家庭や事務所内で使用する機会が増えたこと等の理由で低騒音化が求められている。高速回転化に伴って増加するのが、インペラの回転による振動値である。インペラは、回転体であるため、回転軸に対して、物理的な回転アンバランスが生じる。つまり、回転軸に対して重心位置の偏心が生じる。回転アンバランス値はゼロにするのが理想的ではあるが、物理的にはほぼ不可能である。よって、回転した際に発生するインペラの回転軸に対する回転アンバランス値をできる限りゼロに近づけるために、回転アンバランスの修正が必要となる。
そこで、特許文献1には、主版と側板の間に設けられた羽根に対して、羽根もしくは側板に対してクリップが取り付けられる回転アンバランス修正方法が開示されている。特許文献1の回転アンバランス修正方法では、径方向外方からクリップを取り付けている。
また、特許文献2には、回転体天面に複数の挿入穴が形成されており、挿入穴に係合可能なスナップフィット構造を有するバランスウエイトからなる回転体のバランス調整装置が開示されている。特許文献2のバランス調整装置では、軸方向にバランスウエイトが挿入されている。
実開昭63−98498 実開平1−152136
ところで、近年の電子機器においては、家庭の室内もしくはオフィス等で使用されることから低騒音化が求められている。特に電子機器内に取り付けられる送風ファンの回転に伴う騒音を低減する必要がある。送風ファンの回転に伴う騒音としては、主にインペラが回転することによる風切音と、インペラが回転することによる振動があげられる。送風ファンの振動は、電子機器筐体と共振して騒音を発生するだけでなく、他の電子部品に悪影響を及ぼす虞がある。このため、送風ファンの振動低減は必須である。
また、近年の電子機器においては電子機器の筐体の小型化が進んでおり、筐体内に送風ファンを配置するスペースに制約がある。送風ファンの冷却能力を十分に発揮するためには、送風ファンの吸気側に吸気の妨害にならないように空間を形成する必要がある。
特許文献1の回転アンバランス修正方法では、インペラに対して径方向外方からバランスクリップが取り付けられている。このため、インペラが高速で回転した場合には、バランスクリップが遠心力によって径方向外方に向けて放出される虞がある。
特許文献2のバランス修正装置においては、回転体の天面にバランスウエイトが軸方向に挿入されている。バランスウエイトを軸方に挿入した場合には、バランスウエイトを挿入するための軸方向のスペースを確保する必要があり、送風ファンの小型が困難である。また、特許文献2のバランスウエイトは回転体の天面から突出しているため、回転に伴ってバランスウエイトから風切音が発生する虞がある。
そこで、本発明の目的は、送風ファンの軸方向の厚みが薄く形成され、回転に伴ってバランスウエイトが離脱しないアンバランス修正機構を備えた送風ファンを得ることにある。
かかる目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の送風ファンは、電動式の送風ファンであって、有蓋円筒状のロータホルダと、該ロータホルダの内周面に固定される略環状のロータマグネットと、前記ロータホルダの内面側に収容され、前記ロータマグネットとの間で回転軸を中心とするトルクを発生する電機子と、前記ロータホルダの外側面に固定される円筒状周壁部を有するハブと、前記ハブに形成され、回転することで空気流を発生する複数の羽根と、を備え、前記ハブの回転軸方向における上端部には、前記ロータホルダの蓋部の外周部付近を覆うように径方向内方に向けて突出される環状部が形成されおり、該環状部と前記ロータホルダとが前記回転軸方向において間隙を有することを特徴とする。
本発明の請求項2に記載の送風ファンは、請求項1に記載の送風ファンであって、前記環状部の径方向先端よりも外方側において、前記環状部の径方向内方先端の前記回転軸方向よりも肉厚が薄い部位が形成されていることを特徴とする。
本発明の請求項3に記載の送風ファンは、請求項1または2に記載の送風ファンであって、前記環状部の上面が、前記ハブの上端部端面に対して前記ロータホルダ側に形成されていることを特徴とする。
本発明の請求項4に記載の送風ファンは、請求項1乃至3のいずれかに記載の送風ファンであって、前記環状部の内周面において前記ロータホルダ側のエッジにテーパ面が形成されていることを特徴とする。
本発明の請求項5に記載の送風ファンは、請求項1乃至4のいずれかに記載の送風ファンであって、前記環状部と前記ロータホルダの前記回転軸方向の間隙が0.4mm以上1.0mm以下であることを特徴とする。
本発明の請求項6に記載の送風ファンは、請求項1乃至5のいずれかに記載の送風ファンであって、前記環状部上面において、周方向に複数の凸部が配列されていることを特徴とする。
本発明の請求項7に記載の送風ファンは、請求項1乃至6のいずれかに記載の送風ファンであって、前記環状部の下面に複数の台座が周方向に配列されており、該台座とロータホルダとが軸方向において当接していることを特徴とする。
本発明の請求項8に記載の送風ファンは、請求項7に記載の送風ファンであって、前記環状部の台座が形成されている箇所に対応する上面側に周方向の幅が台座と同じもしくはそれより大きい位置確認用凸部が形成されていることを特徴とする。
本発明の請求項9に記載の送風ファンは、請求項8に記載の送風ファンであって、前記ハブ、前記羽根を含むインペラが合成樹脂による射出成型によって形成されており、前記位置確認用凸部上に射出成型時に金型内に樹脂を射出するゲートにおいて固化した合成樹脂の切断痕が形成されていることを特徴とする。
本発明の請求項10に記載の送風ファンは、請求項1乃至9のいずれかに記載の送風ファンであって、前記環状部にバランスウエイトが取り付けられていることを特徴とする。
本発明の請求項11に記載の送風ファンは、請求項1乃至10のいずれかに記載の送風ファンであって、前記バランスウエイトは、コの字形状のバランスクリップであって、コの字形状の先端部同士を離間した際に復元力が発生し、前記環状部に対して径方向外方に向けて、前記環状部を前記回転軸方向において上下から挟持するように前記バランスクリップが取り付けられていることを特徴とする。
本発明の請求項12に記載の送風ファンは、請求項11に記載の送風ファンであって、前記バランスクリップが、金属製の薄肉板をプレス加工することによって形成されていることを特徴とする。
本発明の請求項13に記載の送風ファンは、請求項2乃至12のいずれかに記載の送風ファンであって、前記バランスクリップの先端に係止部が形成されており、前記バランスクリップを前記環状部に取り付けた際に前記環状部に係止されることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、ハブの上端部に径方向内方に向けて突出される環状部が形成されているため、環状部にバランスクリップを固定することが可能である。また、バランスクリップが径方向外方に向けて挿入されるため、インペラが高速回転した際、バランスクリップがインペラ外方に放出されることがない。
請求項2に記載の発明によれば、環状部の径方向内方に厚肉部が形成されることによって、環状部にバランスウエイトを取り付けた際に、容易に離脱されないように構成されている。
以下、本発明の実施形態について、図1乃至図10を参照して説明する。なお、本発明の実施形態における説明では便宜上各図面の上下方向を「上下方向」とするが、実際の取り付け状態における方向を限定するものではない。また、説明の便宜上、回転軸に平行な方向を軸方向とし、回転軸を中心とする半径方向を径方向として示している。
図1は本発明にかかる実施形態を示す送風ファンの断面図である。図2は、本発明にかかる実施形態のバランスウエイト保持機構を示す断面図である。図3は、本発明にかかる実施形態のバランスウエイト保持機構を示す断面図である。図4は、本発明にかかる実施形態のハブを示す斜視図である(羽根21を省略)。図5は、本発明にかかる実施形態を示す回転体の平面図である。
送風ファン1は、外部から電流が供給されることで回転駆動する略有蓋円筒状のロータホルダ31に複数の羽根21を有するインペラ2が取り付けられた構成をしている。ロータホルダ31はシャフト32を有し、ロータホルダ31の中央部にてシャフト32の一端部が締結固定されている。
ベース部12の中心部には、略円筒状の軸受ハウジング1021が形成されており、軸受ハウジング1021の内周面に形成される2つの段差部にボールベアリング341、342が固定されている。ボールベアリング341、342は、外輪と内輪との間に複数のボールが介在されることで、外輪に対して内輪が回転自在に構成されている。シャフト32はボールベアリング341、342の内輪の内周面に挿通され、軸受部が構成される。前記段差とボールベアリング342の軸方向間隙には、ボールベアリング341、342に所定の予圧を加えるためにコイルスプリング390が介在されている。シャフト32の先端には、環状溝321が形成されている。ワイヤーリング391が、環状溝321に固定されることでシャフト32がボールベアリング342から抜けないように構成されている。軸受部の構成は上記に限定されず、例えば含油軸受等のすべり軸受を採用しても良い。
ステータ3は、軸受ハウジング1021の外周部に支持される。ステータ3は、ステータコア35と、コイル37と、インシュレータ36と、回路基板38と、で構成される。ステータコア35はステータコア35の上下端部及び各ティース部を絶縁するように絶縁部材で形成されたインシュレータ36によって囲繞され、ティース部にインシュレータ36を介してコイル37が巻回される。ステータ3の下端部には、インペラ2の回転駆動を制御する回路基板38が配置される。回路基板38は電子部品(図略)がプリント基板上に実装され一連の駆動制御回路が形成されることによって構成される。回路基板38はコイル37の一端と電子部品とが電気的に接続され、インシュレータ36下部に固着される。外部から供給された電流をICやホール素子を含む電子部品を介してコイル37に流すことにより、ステータコア35に磁界が発生する。
インペラ2は、略円筒状のハブ22と、回転することで空気流を発生する複数の羽根21が放射状にハブ22の外周側面に配設されている。インペラ2の内周面には、送風ファン1外部への漏洩磁束を低減するロータホルダ31と、ロータホルダ31の内周に取り付けられ内周に多極着磁されたロータマグネット33と、が備えられる。ロータホルダ31の中心に締結固定されたシャフト32をボールベアリング341、342に挿入することによって、ロータマグネット33とステータコア35とが径方向において対向するように配置される。コイル37に電流が流れることによってステータコア35から発生する磁界と、多極着磁されたロータマグネット33が形成する磁界との相互作用により、インペラ2に回転トルクが発生し、インペラ2がシャフト32を回転軸として回転する。回転しているロータマグネット33の磁束の変化をホール素子にて検出し、ドライブICによって回転制御されることによって、安定したインペラ2の回転が制御されている。インペラ2が回転駆動することにより空気が羽根21によって下方向に押し出され、軸方向に気流が発生する。
ベース部12は、回路基板38と軸方向において対向する位置に配置されており、回路基板38外径とほぼ同一径の略円板形状に形成される。ベース部12はハウジング10と4本のリブ13にて連結されている。ただし、リブ13の本数は4本に限定されず、例えば3本でも5本でも良い。ハウジング10は、インペラ21の外周を囲むように形成され、インペラ21が回転することによって発生する空気流の空気流路である風洞部11を備えている。またハウジング10上端部および下端部の外周は矩形枠状の正方形にて形成され、正方形の四隅には径方向外方に突出したフランジ部14が形成されており、各フランジ部14には、送風ファン1を機器に取り付ける際にビス等の取り付け具を挿入する取り付け孔14aが形成されている。4本のリブ13は周方向に等配されている。
ハブ22の上端部には、図2及び図3に示されているように環状部221が径方向内方に向けて突設されている。環状部221には、図2に示されているようにバランスクリップ40が取り付けられている。
本実施形態における回転体は、主に羽根21、ハブ22、ロータホルダ31、ロータマグネット33、シャフト32で構成されている。羽根21とハブ22とは、樹脂射出成型にて一体で形成されている。ロータホルダ31は、プレス加工にて形成されている。これらの部品は、少なくとも回転軸を中心とする回転アンバランスを有している。
回転アンバランスとは、回転軸(回転体の回転中心軸)と部品の重心とが一致していない状態をいう。例えば、回転軸と部品の重心が一致していない状態で、前記部品を回転させた場合に、前記部品の重心は回転軸を中心に回転することになる。重心の位置が回転軸から離れるに従い、回転アンバランスの値は大きくなる。回転アンバランス値は、アンバランス量(質量:g)とアンバランスのある位置(回転軸からの半径:cm)の積で表される。よって、回転アンバランス値は、主にg・cmという単位で表される。例えば、回転体が1.0(g・cm)という回転アンバランス値を有していた場合、回転アンバランスが発生している方向とは回転軸に対して反対の方向側の半径1.0cmの位置に1.0gのバランスウエイトが取り付けられた場合には、理論上の回転アンバランス値は0(g・cm)になる。回転アンバランス値の修正は主に、回転アンバランスが発生している位置の軸対象の位置に回転アンバラスを相殺するようにバランスウエイトが取り付けられる。
部品は量産される加工条件及び加工環境の変化に伴い、必ずしも安定した精度の寸法で仕上げられない。よって、部品の回転アンバランス値は一定のバラツキを有している。量産品において回転アンバランス値が0(g・cm)の部品を形成することは物理的に不可能である。ただし、部品を加工する段階である程度まで回転アンバランス値が低くなるように加工は工夫されている。回転アンバランス値を有する部品同士が組み合わされる際に、回転アンバランスが相殺されるように組み合わされる。ただし、組み合わせる部品の同軸度が異なる虞があるため、回転アンバランスが相殺されるように組み合わせられたとしても、回転アンバランスが改善されない虞がある。つまり、量産品に使用される加工部品を組み合わせて回転体を構成した場合に、回転アンバランスを0(g・cm)にすることは不可能である。
本実施形態においては、上述したとおり、環状部221にバランスクリップ40が取り付けられることによって、回転アンバランスが修正される。特に回転アンバランス値が大きい回転体に限っては複数のバランスクリップ40が取り付けられることによって回転アンバランスが修正される。バランスクリップ40は、ステンレス等の防錆性を有する金属材料によって形成されている。金属材料は、樹脂等に比べ比重が大きいため、小さい体積で所望の回転アンバランス修正が可能である。ただし、使用される材料はステンレスを含む金属材料に限定されず、適宜変更可能である。本実施形態のバランスクリップ40は、図2に示されているようにコの字形状に形成されている。上述のとおり、バランスクリップ40は、ステンレス(弾性力を有する材料)で形成されているため、コの字形状の両端を離間するように荷重を加えた際に離間する方向とは逆方向に復元力が発生する。バランスクリップ40は、前記復元力を利用して、環状部221に固定される。バランスクリップ40は、順送式のプレス成型法によって加工されている。これによりバランスクリップ40は生産性が非常に高く、安価なバランスクリップ40を得ることが可能である。
本実施形態においては、羽根21、ハブ22、ロータホルダ31、ロータマグネット33、シャフト32を組み合わせた上で、回転体がバランス測定器(回転体の回転アンバランス値を測定する測定器)に装着され、回転体の回転アンバランス値が測定される。バランス測定器には、回転アンバランスが発生している方向と、回転アンバランス値が表示される。バランス測定器の表示に従って、環状部221にバランスクリップ40が取り付けられ、再度、バランス測定器に回転体を装着する。予め規定されている回転アンバランスの規格内に回転アンバランス値が収まるまで、上記工程が繰り返し行われる。バランスクリップ40を取り付けていない状態において回転アンバランス値が規格内の回転体に関しては、バランスクリップ40を取り付ける必要はない。
上述のとおり環状部221にはバランスクリップ40が取り付けられ、回転体の回転アンバランスの修正が行われる。ハブ22の内周面には、ロータホルダ31が圧入固定されている。よって、ロータホルダ31の上面と、環状部221の下面とは軸方向において対向している。この際に、ロータホルダ31の上面と環状部221の下面とは軸方向において、図3に示されているように、間隙50が形成されている。前記間隙50が形成されることで、バランスクリップ40が挿入されるスペースが確保される。前記間隙50の寸法が大きくなり過ぎた場合には、ハブ22の軸方向の高さが大きくなるため、本発明の解決すべき課題を解決することができない。よって、前記間隙50はバランスクリップ40が挿入されるだけの寸法があれば良い。特に前記間隙50が0.4(mm)以上1.0(mm)以下の範囲内の寸法であることが好ましい。本実施形態におけるバランスクリップ40を形成するために用いられる鋼板の肉厚は0.2(mm)である。バランスクリップ40の強度や体積に対する質量を考慮すると0.2(mm)程度の板厚に形成されるのが好ましい。
ロータホルダ31上面の環状部221と軸方向において対向する面は、図1に示されているように、他の面よりも軸方向の高さが低く形成されている。回転体の高さは、ロータホルダ31の内周面側に収容されるステータ3の大きさに依存する。つまりは、ステータ3を収容することが可能な最小のサイズになるようにロータホルダ31が設計される。ロータホルダ31は、コイル37が収容される部位においては、コイル37とロータホルダ31とが接触しないように高さを高くする必要がある。しかし、ロータホルダ31の径方向外方においては、コイル37と接触する虞がないため、低く形成することが可能である。また、低くすることで、環状部221が回転体上面から軸方向上方に向かって極端に突出することがない。よって、ロータホルダ31の上面には、図1に示されているように、環状部221との対向面よりも径方向内方に軸方向上方に向けて傾斜する傾斜面311が形成されている。
ロータホルダ31上面に傾斜面311が形成されることで、環状部221に対してバランスクリップ40が挿入される際に、傾斜面311の傾斜角度とほぼ平行な状態で挿入が開始され、最終的には径方向と平行な状態で挿入が完了する。つまり、間隙50の寸法がバランスクリップ40を形成する鋼板と同じ寸法の場合、物理的に挿入不可能である。よって、0.2(mm)の板厚のバランスクリップ40を挿入するには、0.4(mm)以上の間隙が必要である。また、間隙50の寸法が1.0(mm)より大きい場合には、回転体の軸方向の高さが大きくなり、軸方向にバランスクリップ40を挿入場合と比較してメリットが小さくなる。
電子機器の筐体内を冷却するために用いられる送風ファン1は、大型送風機と比較して回転アンバランスの修正量が少ない。送風ファン1の大半は、回転体の直径が150(mm)以下である。よって、直径が150(mm)以内の部位にバランスクリップ40を取り付ける必要がある。送風ファン1においては、図1及び図5、図6に示されているように、ハブ22外方に複数枚の羽根21が取り付けられている。本実施形態においては、ハブ22(正確には環状部221)にバランスクリップ40が取り付けられている。直径が150(mm)の回転体において、ハブ22の直径は、おおよそ60(mm)程度である。例えば、回転アンバランス修正前の回転アンバランス値が0.3(g・cm)の回転体に対して、回転アンバランス値を0.2(g・cm)以下に修正したい場合の回転アンバランス修正工程を以下に示す。
ハブ22の直径が50(mm)の部分にバランスクリップ40を取り付けた場合、回転アンバランスの修正に必要なバランスクリップ40の質量は、修正する必要がある回転アンバランス値を半径で割った数値となる。よって、[0.3(g・cm)−0.2(g・cm)]÷25(mm)=0.04(g)である。バランスクリップ40は、回転アンバランスの微調整を考慮して、一つ当りの質量が約0.025(g)で形成される。よって、上記の回転アンバランス修正には、バランスクリップ40が3つ使用される。回転アンバランス修正量が予め大きいと分かっている場合には、比重の大きい材料で形成されたバランスクリップを用いるか、サイズの大きいバランスクリップが用いられる。本発明に関しては、上記の寸法の回転体だけではなく、その他の寸法を有する回転体にも適用可能である。
本実施形態に用いられるバランスクリップ40は、上述のとおり質量が約0.025(g)であるため、0.2mm厚のステンレス材が使用された場合には、環状部221に取り付けた状態において径方向の寸法が約3.0(mm)で、軸方向の寸法が約2.0(mm)のコの字形状となる。よって、バランスクリップ40を軸方向に挿入した場合、バランスクリップ固定構造の軸方向が少なくとも3.0(mm)以上必要である。バランスクリップ40を径方向に挿入され、間隙50が1.0(mm)以上の場合、バランスクリップ固定構造の軸方向が少なくとも3.0(mm)程度必要である。よって、間隙50は1.0(mm)以下に設定するのが好ましい。
環状部221とロータホルダ31の軸方向間隙50を一定に確保する必要がある。このため、図1及び図4に示されているように、環状部221の下面に複数の台座2213が周方向に等配されている。ハブ22にロータホルダ31が圧入される際に、台座2213が形成されていない場合には、間隙50を確保するために、圧入寸法の管理が必要になる。例えば、サーボモータを用いて、圧入寸法の精度を高くする必要がある。しかし、本実施形態においては台座2213が形成されているため、ロータホルダ31が台座2213に当接するまで、圧入すれば良い。よって間隙50の寸法は、台座2213の軸方向の寸法と同様の寸法に形成される。本実施形態においては、圧入機の圧入寸法精度は要求されない。
環状部221のうち台座2213が形成されている部位には、バランスクリップ40を挿入することはできない。よって、環状部221のうち台座2213が形成されている部位に対応する上面側には、図4及び図5に示されているように、位置確認用凸部2214が形成されている。このため、作業者が環状部221にバランスクリップ40を挿入する際に、台座2213が形成されている部位を回転体上面側から確認することができる。
羽根21、ハブ22、環状部221は樹脂射出成型によって一体形成されている。樹脂射出成型は、上下の金型を当接させ、当接することによって形成される上下金型の閉空間に樹脂が射出され、前記閉空間内に樹脂が充填され、上下の金型を離型することによって閉空間形状に固化された樹脂を取り除く加工方法である。前記閉空間の形状をハブ22もしくは羽根21形状に形成することでインペラ2が形成される。樹脂射出成型においては、金型内に樹脂が射出されるゲートが必要である。金型内部と金型外部との境界部にはゲートが形成されており、金型離型と同時に金型内部の樹脂と金型外部の樹脂とが切断される。つまり、樹脂射出成型においては、加工された部品側にゲート切断痕2215が形成される。一般的にゲート切断痕2215は、高い寸法精度が要求されない部位に配置される。例えば、羽根21の表面にゲート切断痕2215が形成した場合には、インペラ2が回転した際に羽根21表面のゲート切断痕2215によって空気流に乱流が生じ易くなり、騒音の原因になる。また、位置決め等の高い寸法が要求される部位にゲート切断痕2215が形成された場合には、ゲート切断痕2215によって、位置決め寸法に狂いが生じ、構造上の問題が発生する虞がある。よって、本実施形態においては、図4及び図5に示されているように、10箇所の位置確認用凸部2214のうち、5箇所にゲート切断痕2215が形成される。特にゲート切断痕2215は突出形成されることが多いため、図4に示されているように、凹部2216内に形成される。このことにより、環状部221上面からゲート切断痕2215が突出することはない。
バランスクリップ40を環状部221に取り付けた際に、バランスクリップ40がハブ22上端面から突出しないように、ハブ22上端面よりも環状部221上端面の方が低くなるように形成される。これにより、送風ファン1のハブ22上端面側に、送風ファン1とは異なる部品が配置された際に、送風ファン1に衝撃が加わり万が一ハブ22が飛び出して部品と接触したとしても、バランスクリップ40が接触することはない。また、バランスクリップ40は径方向外方に向けて取り付けられるため、インペラ2の回転に伴って、バランスクリップ40に遠心力が働いたとしても、径方向外方に放出されることはない。
環状部221は径方向内方に厚肉部2211が形成されている。厚肉部2211の径方向外方上端にはエッジが形成されており、バランスクリップ40を取り付けた際に、バランスクリップ40がエッジに係止される。これにより、バランスクリップ40はより強固に固定される。特に、本実施形態においては、バランスクリップ40の先端に係止部41が形成されているため、前記エッジに係止部41が係止され、更に強固に固定される。
環状部221の断面形状に関しては、上記には限定されず、例えば、図7に示されているように、環状部221の内方先端側から外方向けて環状部221の肉厚が薄くなるようにテーパ部2217を形成しても良い。図7に示される形状においては、バランスクリップ40の先端に形成される係止部が、テーパ部2217に係止されることにより、バランスクリップ40が環状部に固定される。
また、図8に示されるように、環状部221の下面側にエッジを設けても良い。ただし、この場合は、バランスクリップ40の係止部を下側にして挿入する必要がある。この場合においても、同様の効果を得ることができる。
また、図9に示されるように、環状部221の上面側、下面側の両方にエッジを設けても良い。この場合には、バランスクリップ40のアームの両方に係止部を設ける必要がある。この場合には、バランスクリップ40が、更に強固に環状部221に固定される。環状部221の断面形状は、バランスクリップ40が固定される形状であれば、どのような形状へでも適宜変更可能である。
次に、環状部221の内周下端面にはテーパ面2212(傾斜面)が形成されており、バランスクリップ40を挿入する際に、テーパ面2212に沿ってバランスクリップ40のコの字形状先端が離間するため、テーパ面2212が形成されていない状態と比較してスムーズに挿入される。また、上述したように、バランスクリップ40は、傾斜面311に沿って環状部221に対して斜めに挿入されるので、テーパ面2212が形成されていることで、よりスムーズに挿入される。
次に、環状部221には、図4に示されているように、複数の凸部2217が周方向に配列されている。隣り合う凸部2217同士の間隔は、バランスクリップ40の幅とほぼ同様の寸法に形成されている。このため、バランスクリップ40が環状部221に取り付けられた際に、凸部2217が形成されていることで、バランスクリップ40の周方向の位置が規制される。つまり、バランスクリップ40は、周方向においても、環状部221に対して、ずれないように取り付けられる。図6に示されているように、環状部221の上面に凸部2217が形成されていなくても良い。
本実施形態においては、軸流ファン(軸方向に吸気して、軸方向に排気する送風ファン)について説明をしたが、本発明は、図10に示されているように遠心ファン(軸方向に吸気して、径方向に排気する送風ファン)でも適用可能である。軸流ファンと遠心ファンのハブ形状は、ほぼ同様の形状である。異なる部位は羽根形状である。本発明は、ハブ形状に特徴があるため、軸流ファンの羽根形状には限定されない。
本発明にかかる実施形態を示す送風ファンの断面図である。 本発明にかかる実施形態の要部を示す断面図である。 本発明にかかる実施形態の要部を示す断面図である。 本発明にかかる実施形態のハブを示す斜視図である。 本発明にかかる実施形態を示す回転体の平面図である。 本発明にかかる実施形態の変形例を示す回転体の平面図である。 本発明にかかる実施形態の変形例の要部を示す断面図である。 本発明にかかる実施形態の変形例の要部を示す断面図である。 本発明にかかる実施形態の変形例の要部を示す断面図である。 本発明にかかる実施形態の変形例を示す回転体の平面図である。
符号の説明
1 送風ファン
10 ハウジング
2 インペラ
21 羽根
22 ハブ
221 環状部
3 ステータ
31 ロータホルダ
32 シャフト
33 ロータマグネット
341、342 ボールベアリング
35 ステータコア
36 インシュレータ
37 コイル
38 回路基板
40 バランスクリップ
50 間隙

Claims (13)

  1. 電動式の送風ファンであって、
    有蓋円筒状のロータホルダと、
    該ロータホルダの内周面に固定される略環状のロータマグネットと、
    前記ロータホルダの内面側に収容され、前記ロータマグネットとの間で回転軸を中心とするトルクを発生する電機子と、
    前記ロータホルダの外側面に固定される円筒状周壁部を有するハブと、
    前記ハブに形成され、回転することで空気流を発生する複数の羽根と、
    を備え、
    前記ハブの回転軸方向における上端部には、前記ロータホルダの蓋部の外周部付近を覆うように径方向内方に向けて突出される環状部が形成されおり、該環状部と前記ロータホルダとが前記回転軸方向において間隙を有することを特徴とする送風ファン。
  2. 前記環状部の径方向先端よりも外方側において、前記環状部の径方向内方先端の前記回転軸方向よりも肉厚が薄い部位が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の送風ファン。
  3. 前記環状部の上面が、前記ハブの上端部端面に対して前記ロータホルダ側に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の送風ファン。
  4. 前記環状部の内周面において前記ロータホルダ側のエッジにテーパ面が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の送風ファン。
  5. 前記環状部と前記ロータホルダの前記回転軸方向の間隙が0.4mm以上1.0mm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の送風ファン。
  6. 前記環状部上面において、周方向に複数の凸部が配列されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の送風ファン。
  7. 前記環状部の下面に複数の台座が周方向に配列されており、該台座とロータホルダとが軸方向において当接していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の送風ファン。
  8. 前記環状部の台座が形成されている箇所に対応する上面側に周方向の幅が台座と同じもしくはそれより大きい位置確認用凸部が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の送風ファン。
  9. 前記ハブ、前記羽根を含むインペラが合成樹脂による射出成型によって形成されており、前記位置確認用凸部上に射出成型時に金型内に樹脂を射出するゲートにおいて固化した合成樹脂の切断痕が形成されていることを特徴とする請求項8に記載の送風ファン。
  10. 前記環状部にバランスウエイトが取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の送風ファン。
  11. 前記バランスウエイトは、コの字形状のバランスクリップであって、コの字形状の先端部同士を離間した際に復元力が発生し、前記環状部に対して径方向外方に向けて、前記環状部を前記回転軸方向において上下から挟持するように前記バランスクリップが取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の送風ファン。
  12. 前記バランスクリップが、金属製の薄肉板をプレス加工することによって形成されていることを特徴とする請求項11に記載の送風ファン。
  13. 前記バランスクリップの先端に係止部が形成されており、前記バランスクリップを前記環状部に取り付けた際に前記環状部に係止されることを特徴とする請求項2乃至12のいずれかに記載の送風ファン。
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